特許第6449765号(P6449765)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6449765腫瘍組織における免疫細胞を定量するための方法及びその応用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6449765
(24)【登録日】2018年12月14日
(45)【発行日】2019年1月9日
(54)【発明の名称】腫瘍組織における免疫細胞を定量するための方法及びその応用
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/574 20060101AFI20181220BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20181220BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20181220BHJP
【FI】
   G01N33/574 D
   G01N33/48 P
   G01N33/53 Y
【請求項の数】16
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2015-516637(P2015-516637)
(86)(22)【出願日】2013年6月14日
(65)【公表番号】特表2015-525349(P2015-525349A)
(43)【公表日】2015年9月3日
(86)【国際出願番号】EP2013062405
(87)【国際公開番号】WO2013186374
(87)【国際公開日】20131219
【審査請求日】2016年5月27日
(31)【優先権主張番号】PCT/IB2012/001446
(32)【優先日】2012年6月14日
(33)【優先権主張国】IB
(73)【特許権者】
【識別番号】591100596
【氏名又は名称】アンスティチュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル
(73)【特許権者】
【識別番号】509033033
【氏名又は名称】ユニベルシテ・パリ・デカルト
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE PARIS DESCARTES
(73)【特許権者】
【識別番号】591140123
【氏名又は名称】アシスタンス ピュブリク−オピトー ドゥ パリ
【氏名又は名称原語表記】ASSISTANCE PUBLIQUE − HOPITAUX DE PARIS
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(74)【代理人】
【識別番号】100078662
【弁理士】
【氏名又は名称】津国 肇
(74)【代理人】
【識別番号】100116528
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 俊男
(74)【代理人】
【識別番号】100146031
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 明夫
(74)【代理人】
【識別番号】100145104
【弁理士】
【氏名又は名称】膝舘 祥治
(74)【代理人】
【識別番号】100122736
【弁理士】
【氏名又は名称】小國 泰弘
(74)【代理人】
【識別番号】100122747
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 洋子
(74)【代理人】
【識別番号】100132540
【弁理士】
【氏名又は名称】生川 芳徳
(74)【代理人】
【識別番号】100125081
【弁理士】
【氏名又は名称】小合 宗一
(72)【発明者】
【氏名】ギャロン,ジェローム
(72)【発明者】
【氏名】パージュ,フランク
(72)【発明者】
【氏名】ムレチニック,ベルンハルト
【審査官】 赤坂 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−515148(JP,A)
【文献】 特表2012−503180(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/032173(WO,A1)
【文献】 HALAMA N et al.,Oncoimmunology,2012年 1月 1日,1(1),62-66
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48−33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.免疫細胞によって発現されるマーカーに特異的に結合する抗体を使用することによる自動スライド染色システムによって得られる組織切片の1つ以上の免疫染色されたスライドを準備する工程、
b.高解像度のスキャンを読み取ることによって工程a.のスライドのデジタル化を進め、これにより、分析しようとするスライドの高精細度のデジタル写真を得る工程、
c.デジタル写真上の組織切片の前記薄片を検出する工程、
d.(i)腫瘍(CT)及び(ii)腫瘍の浸潤周辺部分(IM)を規定するために、組織切片の前記薄片を分析する工程、
e.同じ表面積を有する均一に分布した単位を有する参照サイズ格子を準備する工程であって、前記格子は、分析しようとする腫瘍のサイズに適合している、工程、
e1.参照値と比較することによって免疫染色の品質を確認する工程であって、工程e1の免疫染色の品質の確認が、以下:
− 前記格子の各単位における染色細胞の染色強度の分布を計算すること、
− 前記染色強度の布を前記参照値と比較すること、前記参照値は、前記マーカーの公知の分布を有する参照組織切片の染色細胞の染色強度を代表し、前記染色強度の布が前記参照値から最大で25%異なるとき、前記組織切片のスライドは、正しく染色されており、そして前記染色強度の布が前記参照値から最大で25%異なるものではないとき、前記組織切片のスライドは、正しく染色されていない工程
を含む工程、
f.各単位の染色細胞を検出及び定量し、これにより、各単位の染色された免疫細胞の数又は密度を評価する工程
を含む、腫瘍組織における免疫細胞の数又は密度の評価のための方法。
【請求項2】
各単位の染色細胞の検出及び定量が、腫瘍(CT)及び腫瘍の浸潤周辺部分(IM)で別々に実施される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記抗体が、CD3、CD4、CD8、CD20、CD45RO又はGZMBマーカーに特異的な抗体からなる群より選択される、請求項1及び2のいずれか一項記載の方法。
【請求項4】
以下の組合せ:CD3+CD8、CD3+CD45RO、CD3+CD20、CD3+GZMB、CD8+CD20、CD8+GZMB、CD8+CD45RO、CD20+GZMB、CD20+CD45RO、GZMB+CD45RO、CD4+CD8、CD4+CD45RO、CD4+GZMB、CD4+CD20と、CD3、CD8、CD20、CD45RO、CD4及びGZMBマーカーの中の3つのマーカーの全ての組合せとからなる群より選択される2つ又は3つの抗体が使用される、請求項1ないし3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
自動免疫染色装置が工程a)の実施に使用される、請求項1ないし4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
工程dが、ソフトウェアによって(i)腫瘍(CT)と(ii)腫瘍の浸潤周辺部分(IM)の境界を規定するための組織切片の前記薄片を分析することを含む、請求項1ないし5のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
10×10−9ないし1000×10−9の表面積を有する六角形、正方形又は長方形の単位が使用される、請求項1ないし6のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
各単位の染色された免疫細胞の評価された数又は密度が、
− 染色細胞の最大数、
− 染色細胞の最大密度、
− 染色細胞の数の合計、
− 染色細胞の表面積の合計、
− 染色細胞の密度の合計、
− 染色細胞の平均数、
− 染色細胞の平均密度、
− 染色細胞の最大数、及び
− 染色細胞の数の中央値
からなるA群の数値から選択される、請求項1ないし7のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
− 単個染色細胞、
− 少なくとも3個の染色細胞を含むクラスター中の染色細胞、
− 単個染色細胞又は少なくとも3個の染色細胞を含むクラスター、
− 全ての染色細胞、
− 最も染色された単位、及び
− 無作為な単位
からなるB群から選択される基準に従って、細胞又は単位を検出することをさらに含む、請求項1ないし8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
さらに、以下:
− 腫瘍(CT)及び腫瘍の浸潤周辺部分(IM)から選択された少なくとも一つの腫瘍領域について、所与のマーカーについて、免疫細胞の数又は密度の値を、所与のマーカーについて予め決定された閾値と比較すること、
− 免疫細胞の数又は強度の値が予め決定された閾値より上であるとき、腫瘍に陽性を割り当てること、
− 免疫細胞の数又は強度の値が予め決定された閾値より下であるとき、腫瘍に陰性を割り当てること、
− 陽性の数と陰性の数に基づき組織切片の免疫スコアを決定すること
の工程を含む、組織切片の免疫スコアに関する結果の提供を含む、
請求項1ないし9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
免疫スコアに関する結果の提供が、各腫瘍領域について行われる、請求項10記載の方法。
【請求項12】
免疫スコアに関する結果の提供が、複数のマーカーについて行われる、請求項10又は11記載の方法。
【請求項13】
さらに、その免疫スコアにしたがって患者を群に分類する工程であって、各患者が同一の免疫スコアを有する患者の一つの群に割り当てられる工程を含む、請求項10ないし12のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
工程e1.の免疫染色の品質を確認することを工程f.の染色細胞を検出すること及び定量することの前に行い、そして
組織切片が正しく染色されているとき、工程e1.の免疫染色の品質を確認することの後に、工程f.の染色細胞を検出すること及び定量することを行い、組織切片が正しく染色されていないとき、工程f.の染色細胞を検出すること及び定量することを行わない、請求項1ないし13のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
工程e1.の免疫染色の品質を確認することを工程f.の染色細胞を検出すること及び定量することの後に行い、そして
組織切片が正しく染色されているとき、工程e1.の免疫染色の品質を確認することの後に、工程f.の染色細胞を検出すること及び定量することの間に評価された各単位の染色免疫細胞の数又は密度を検証し、組織切片が正しく染色されていないとき、工程f.の染色細胞を検出すること及び定量することの間に評価された各単位の染色免疫細胞の数又は密度を検証しない、請求項1ないし13のいずれか一項記載の方法。
【請求項16】
参照値が、所与のマーカーの公知の分布を有する参照組織切片の染色細胞の染色強度の平均値、中央値、最小値、及び最大値の少なくとも一つである、請求項1ないし15のいずれか一項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、腫瘍組織における免疫細胞を定量するための方法及びその応用に関する。
【0002】
発明の背景
EP−A−EP1943520及び国際公開公報第2007045996号は、癌の進行及び/又は生存率に関する患者の予後のためのインビトロにおける方法、及び/又は、処置(化学療法、放射線量療法、生物学的療法、免疫療法)に対する応答の予測のためのインビトロにおける方法を記載し、該方法は、以下の工程:
a)前記患者からの腫瘍組織試料において、前記患者の局所獲得免疫反応の状態を示す少なくとも1つの生物学的マーカーを定量する工程;及び
b)前記の少なくとも1つの生物学的マーカーについて工程a)で得られる数値を、同じ生物学的マーカーについての予め決定された参照値と比較し;予め決定された参照値は、前記癌の進行の特定の予後又は前記患者の生存率又は処置応答(例えば、化学療法、放射線療法、生物学的療法、免疫療法)の予測に相関し、これにより「良好な応答者」対「悪い応答者」を予測する工程
を含む。
【0003】
腫瘍組織試料は、(i)全原発性腫瘍(全体として)、(ii)該腫瘍由来の組織試料、(iii)前記腫瘍を直接取り囲む組織からの組織試料(前記組織は、より具体的には腫瘍の「浸潤周辺部分」と命名され得る)、(iv)前記腫瘍と近接したリンパ島、(v)前記腫瘍の最も近くに位置するリンパ節、(vi)術前に実施された腫瘍生検、及び(vii)遠隔転移病巣からなる群より選択され得る。
【0004】
生物学的マーカーは、好ましくは、工程a)において、腫瘍の2つの領域、すなわちそれぞれ(i)腫瘍(CT)及び(ii)腫瘍の浸潤周辺部分(IM)から回収された腫瘍試料において定量される。
【0005】
上記の方法は、組織マイクロアレイ(TMA)上で実施された。しかしながら、プロセスの大半の工程は手作業で実施され、測定の再現性に関する問題が観察され得る。例えば、穿孔すべき腫瘍領域の選択に関する病理医間の相違は、ヘマトキシリン−エオシン対比染色検査に基づいて起こり得る。さらに、病理医によって選択される領域を正確に穿孔する難しさが観察される。このような典型的な間違いは、各工程で起こり得る。これらの文書で記載された方法は、癌患者の生存率を予測するための高い能力を得ることを可能とするが、さらにより良好な品質を有する、特に自動化の再現性を有し結果を比較できる方法に関する研究が現在進行中である。
【0006】
Halama et al, Quantification of prognostic immune cell markers in colorectal cancer using whole slide imagining tumour maps, analytical and quantitative cytology and histology, Vol. 32, 6, Dec 2010, pp.333-340によって強調されているように、組織マイクロアレイ(TMA)を使用したサンプリング用組織プローブは、頻繁に癌組織において観察されるような空間的不均一性のある標的分子の場合には特に問題である。Halama et alは、データ取得のために完全組織スライド顕微鏡を提案する。しかしながら、本研究は、腫瘍の空間的異質性を解釈することのできるパラメータを発生する特別な診断アルゴリズムの実例を示していない。Halamaは、この診断アルゴリズムが作られ、経過観察研究が実施されるまで、腫瘍マップが単一の患者において予後予測因子としての価値を有するかどうかを判定することができないと結論づけている。
【0007】
発明の要約
今回、出願人は、癌に罹患している患者の免疫スコア(すなわちイムノスコア)を得るために、腫瘍組織における免疫細胞の数又は密度の評価のための方法を発見した。
【0008】
腫瘍組織における免疫細胞の数又は密度の評価のための新規な方法の使用は、国際公開公報第200745996号に記載の方法の自動化、繰り返し性及び再現性を確実にし、従って、癌患者の生存率及び処置に対する応答を予測するための研究室間の試験のための標準的な試験法を提供することが驚くべきかつ意外な様式で注記されている。
【0009】
新規な方法は、EP−A−EP1943520及び国際公開公報第2007045996号の方法と比較して、繰り返し性及び再現性に関する問題が特により少ない。
【0010】
好ましい態様の説明
本出願の主題は、それ故、
a.免疫細胞によって発現される抗原に特異的に結合する抗体を使用することによる自動化スライド染色システムによって得られる1つ以上の組織切片の免疫染色された薄片を準備する工程、
b.高解像度のスキャンを読み取ることによって工程a.のスライドのデジタル化を進め、これにより分析しようとするスライドの高精細度(4.6μm/ピクセル又はそれより良好)のデジタル写真が得られる工程、
c.デジタル写真上の組織切片の薄片を検出する工程、
d.(i)腫瘍(CT)及び(ii)腫瘍の浸潤周辺部分(IM)を規定するために、組織切片の薄片を分析する工程、
e.同じ表面積を有する均一に分布した単位を有する参照サイズ格子を準備する工程であって、前記格子は、分析しようとする腫瘍のサイズに適合している、工程、
f.各単位の染色細胞を検出及び定量し、これにより、各単位の染色された免疫細胞の数又は密度を評価する工程
からなる工程を含む、腫瘍組織における免疫細胞の数又は密度の評価のための方法である。
【0011】
典型的には、前記抗体は、免疫細胞によって発現されるタンパク質に特異的であり、より特定すると、免疫細胞表面マーカーに特異的である。例えば、前記抗体は、国際公開公報第2007045996号に記載のようなマーカーに特異的であり得、考えられる免疫細胞は、B細胞、好ましくはT細胞であり得る。例えば、本発明のT細胞は、CD3+細胞(T細胞)、CD8+細胞又はGZMB+細胞(細胞障害性T細胞)、CD4+細胞(ヘルパーT細胞)、CD45RO+細胞(記憶T細胞)の亜群のT細胞である。特定の態様において、前記抗体は、CD3、CD4、CD8、CD20、CD45RO及びGZMBマーカーに特異的である。
【0012】
2つ以上のマーカーが使用される場合、上記の工程は、好ましくは、各マーカーについて別々に実施される。例えば、抗CD3抗体がある組織薄片のために使用され、抗CD8抗体は別の組織薄片、好ましくは組織の隣接薄片のために使用される。異なるマーカーを検出するために使用される抗体が異なって染色される場合、多重の、例えば二重の検出が代替的には行なわれ得る。それ故、各マーカーに対して1つの検出可能なシグナルを利用可能である。
【0013】
免疫組織化学的検査すなわちIHCは、生物学的組織中の抗原に特異的に結合する抗体の原理を使用することによって、細胞における組織切片の抗原(一般的にはタンパク質)を検出する慣用的なプロセスを指す。免疫組織化学的染色は、抗体−抗原の相互作用の可視化を可能とする。それは多くの方法で実施することができる。最も一般的な場合では、抗体を、発色反応を触媒することのできるペルオキシダーゼなどの酵素にコンジュゲーションさせる。あるいは、抗体をフルオレセイン又はローダミンなどのフルオロフォアにタグ化させてもよい。
【0014】
本発明に使用される抗体は、典型的には市販されている。特に、CD3マーカーを本発明の方法の実施に選択する場合、Roche Ventana (Tucson, AZ, USA)から市販されている2GV6抗体が適切であり得る(Chetty R, et al., J Pathol. 173(4): 303-307, 1994)。特にCD8マーカーを本発明の方法の実施に選択する場合、Dako (Denmark)から市販されているC8/144B抗体が適切であり得る(Mason DY, Cordell JL, Gaulard P, Tse AGD, Brown MH. Immunohistological detection of human cytotoxic/suppressor T cells using antibodies to a CD8 peptide sequence. J Clin Pathol 1992:45:1084-8)。
【0015】
プロセスを実施する場合に2つ以上のマーカーを検出することができる。特定の態様において、以下の組合せを使用し得る:CD3+CD8、CD3+CD45RO、CD3+CD20、CD3+GZMB、CD8+CD20、CD8+GZMB、CD8+CD45RO、CD20+GZMB、CD20+CD45RO、GZMB+CD45RO、CD4+CD8、CD4+CD45RO、CD4+GZMB、CD4+CD20、並びにCD3、CD8、CD20、CD45RO、CD4及びGZMBマーカーの中の3つのマーカーの全ての組合せ。本発明を実施するための好ましい条件下で、CD3+CD45RO、CD8+CD45RO及びCD3+CD8の組合せが最も好ましく、より特定すると後者が好ましく、なぜなら、これらの抗体で得られるバックグラウンド染色が低いからである。
【0016】
種々の種類の腫瘍の組織切片を、本発明のプロセスに使用し得る。腫瘍組織試料は、(i)全原発性腫瘍(全体として)、(ii)腫瘍に由来する組織試料(生検)、(iii)切除された腫瘍試料、及び(iv)遠隔転移病巣試料を包含する。
【0017】
染色された組織切片の薄片の具備された1つ以上のスライドを、本発明の方法に使用し得る。通常、良くない染色が得られない限り、1つのマーカーに対して1つの単一のスライドで十分である。
【0018】
例えば、自動的な染色スライドの調製を可能とするBenchMark(登録商標)XTなどの自動免疫染色装置(IHC automate)を、免疫組織化学染色工程a)の実施に使用し得る。
【0019】
工程a.のスライドのデジタル化は、スキャンを読み取ることによって、例えば標準的なサイズ(26mm×76mm)のスライドのスキャンを可能とする高解像度のHamamatsu NanoZoomer(登録商標)2.0-HTスキャナーを用いて行なわれる。このスキャナーは、高精細度デジタル写真(20倍:0.46μm/ピクセルが好ましい)及び(40倍:0.23μm/ピクセル)を提供する。
【0020】
検出、すなわちデジタル写真上の組織切片の薄片の境界の規定は、熟練した技術者、通常、医師によって人工的に行なわれ得るか、又は適切なソフトウェアによって実施され得る。
【0021】
(i)腫瘍(CT)と(ii)腫瘍の浸潤周辺部分(IM)との境界を規定するための組織切片の薄片の分析もまた医師によって人工的に行なわれ得るか、又は適切なソフトウェアによって実施され得る。通常、健康な組織、腫瘍及びその間の浸潤周辺部分に対応する3つの領域が得られる。
【0022】
好ましくは、この工程の前に、組織切片の薄片は、検出されたエレメント及び領域の1つ以上の色、強度、稠密度、空虚度、組織密度、対比染色を使用した核密度、顆粒性、形状、サイズなどの基準に従って、類似の特性の領域へと分類される。
【0023】
工程e.において、分析しようとする腫瘍のサイズに適合させた参照格子が準備される。好ましくは六角形、正方形又は長方形の網の目の格子が使用される。正方形の網の目の格子が特に好ましい。
【0024】
個々の網の目(以下、「単位」という。)の表面積は、例えば、2.5×10−9ないし25×10−6、好ましくは10×10−9ないし1000×10−9、特に100×10−9ないし1000×10−9、より特定すると300×10−9ないし800×10−9、非常に特定すると約650×10−9である。
【0025】
10×10−9ないし1000×10−9、特に100×10−9ないし1000×10−9、より特定すると300×10−9ないし800×10−9、非常に特定すると約650×10−9の表面積を有する六角形、正方形又は長方形の単位が好ましい。
【0026】
500ないし1000μm、好ましくは約800μmの長さの一辺を有する正方形の網の目の参照格子が最も好ましい。なぜなら、このような領域における免疫細胞の適切な代表的な平均が1ないし5000個の細胞の範囲であるからである。
【0027】
好ましい参照格子には、例えば、2ないし5000個、好ましくは10ないし2000個、特に100ないし1000個、より特定すると400ないし700個の単位が与えられている。
【0028】
約800μmの長さの一辺を有する400ないし700個の正方形の単位を有する格子が最も好ましい。
【0029】
単位は、試料の全表面を覆う。
【0030】
対象の細胞の密度は、組織試料の表面積の単位あたり、例えばmmあたりに計測された前記の対象細胞の数として表現され得る。対象の細胞の密度はまた、全細胞又は全細胞亜集団(100%に設定)あたりの特定の細胞サブセット(例えばCD3+T細胞)の比率からなり得る。方法の工程g)において、使用される各生物学的マーカーについて1つを超える定量値を得ることは、1つの生物学的マーカーにつき唯1つの定量値が決められている場合よりも、より正確な最終的な癌の予後又は処置応答の予測を可能とする。
【0031】
腫瘍組織における免疫細胞の数又は密度の評価のための方法に続いてさらなる工程が行なわれ、そこでは染色の品質が、得られる結果の正確度にとって重要なパラメーターであり得る場合、組織の薄片の染色の品質を確認することが重要である。
【0032】
それ故、本発明を実施するための好ましい条件下で、前記方法はさらに、組織の薄片の染色の品質を確認する工程e1.を含む。
【0033】
染色の品質の確認は、好ましくは適切なソフトウェアを用いて、各単位及び分布を示す全腫瘍領域について検出された陽性細胞の染色強度の分布を計算することによって実施され得る。
【0034】
腫瘍領域において検出された全ての陽性染色細胞の関連する(例えば褐色の)染色強度の平均、中央値、最小値及び最大値が、分析される各スライドについて計算され得及び提供され得る。
【0035】
染色強度の数値及び分布を、各マーカーについて決定された参照(正常範囲の強度)と比較することができる。
【0036】
検出工程f.において、各単位の陽性細胞の数を計測する。各単位の表面は公知であるので、単位表面積あたりの陽性細胞の密度もまた公知である。工程f.は、熟練した技術者、通常、医師によって人工的に行なわれ得るか、又は適切なソフトウェアによって実施され得る。前記方法は、患者からの腫瘍組織試料において、癌に対する前記患者の免疫反応の状態を示す少なくとも1つの生物学的マーカーを定量することを可能とする。
【0037】
前記方法は、患者を、その予想される生存率又は癌処置に対するその応答に従って群に分類するために使用され得る。使用される各生物学的マーカーについてのここでの上記の数値を、同じ生物学的マーカーについての予め決定された参照値と比較し得;この予め決定された参照値は、前記癌の進行の特定の予後及び/又は患者の生存率及び/又は癌処置に対する応答(「良好な応答者」対「悪い応答者」)に相関する。
【0038】
以下のパラメーター:
− 染色細胞の全数
− 単位表面積あたりの染色細胞の密度
− 隔離された染色細胞の全数(他の染色細胞と接触していない)
− 染色細胞のクラスター内の染色細胞(少なくとも1個の染色細胞が最少3個の染色細胞と接触している)の全数
を、所与のマーカーに対する各単位の染色細胞を定量するために使用し得る。
【0039】
本発明を実施するための好ましい条件下において、
− 腫瘍の各領域(CT及びIM)を分析する
− 各単位の染色細胞の密度を決定する
− 検出される染色細胞の密度に従って、グラデーション、例えば緑色から赤色(最小密度から最大密度へ)に従って各単位に色を割り当てる。これらの工程は好ましくは適切なソフトウェアによって実施される。
【0040】
好ましくは、各腫瘍領域(CT及びIM)における染色細胞の密度は、最大密度を有する、1ないし1000単位、好ましくは2ないし100単位、より好ましくは3ないし10単位、最も好ましくは3単位の平均密度によって決定される。最大密度を有する単位の選択は、好ましくは、適切なソフトウェアによって実施される。CT及びIM領域の各々について1つの値が得られる。数値が閾値を上回る場合、試料は陽性と判断される。それ故、1つのマーカーについて、4つの可能性が可能である:CT+及びIM+、CT−及びIM−、CT+及びIM−、CT−及びIM+。2つ以上のCD3、CD8、CD20、CD45RO及びGZMBマーカーを使用する場合、同じ可能性が、第2のマーカーについても可能である。
【0041】
本発明者らは、前記方法が、考慮される単位の表面積の30%以上、好ましくは40%以上が細胞で満たされている場合に信頼性があることを発見した。
【0042】
いくつかの単位の平均密度以外の基準が、A群、B群及びC群の亜基準の組合せに好ましくは基づいて可能である。
【0043】
A群
1.陽性細胞の最大数(陽性細胞は、ソフトウェアによって検出された染色細胞を指す)
2.陽性細胞の最大密度
3.陽性細胞数の合計
4.陽性細胞の表面積の合計
5.陽性細胞の密度の合計
6.陽性細胞の平均数
7.陽性細胞の平均密度
8.陽性細胞の最大数
9.陽性細胞の数の中央値
10.陽性細胞の密度の中央値
【0044】
A群において、基準2、5、7及び10が好ましい。なぜなら、それらは分析される組織の表面積を考慮に入れるからである。
【0045】
B群
1.単個陽性細胞
2.少なくとも3個の陽性細胞を含むクラスター中の陽性細胞
3.単個陽性細胞又は少なくとも3個の陽性細胞を含むクラスター
4.全ての陽性細胞
5.最も陽性の単位、好ましくは3つの陽性単位
6.無作為な単位、好ましくは3つの無作為な単位。
【0046】
B群において、基準4及び5が好ましい。なぜなら、基準は検出される全ての陽性細胞を考慮に入れ、3つの最も染色された単位を選択することによって異質性を減少させるからである。一方で、3ないし15個の無作為な単位は、非常に迅速な結果を得ることを可能とする。なぜなら、この手順は、全腫瘍の定量を回避し得るからである。染色スライドの分析の結果は10〜100倍迅速である。
【0047】
C群
1.腫瘍領域CT
2.腫瘍領域IM
3.腫瘍領域CT及びIM
【0048】
C群において、基準3:「腫瘍領域CT及びIM」が好ましい。なぜなら、この方法は、患者を識別するのに最も強力であり、群間のハザード比が最も高いからである。
【0049】
このような基準の組合せの例は、例えば、CD3などの細胞マーカーを含む:
【0050】
【表1】
【0051】
このような基準(A群の亜基準は陽性細胞の数の中央値である)の組合せの他の例としては、例えば、以下が挙げられる:
1− 腫瘍領域CT及びIMにおける単位の全表面積の40%以上の組織表面積を有する、単位における陽性細胞の数の中央値(単個細胞又は少なくとも3個の細胞を含むクラスター)、
2− 腫瘍領域CT及びIMにおける単位の全表面積の40%以上の組織表面積を有する、単位における陽性細胞(単一細胞)の数、
3− 腫瘍領域CT及びIMにおける単位の全表面積の40%以上の組織表面積を有する、単位における陽性細胞(少なくとも3個の細胞を含むクラスター)の数の中央値、
4− 腫瘍領域CT及びIMにおける単位の全表面積の40%以上の組織表面積を有する、単位における陽性細胞(単個細胞又は少なくとも3個の細胞を含むクラスター)の密度の中央値、
5− 腫瘍領域CT及びIMにおける単位の全表面積の40%以上の組織表面積を有する、単位における陽性細胞(単個細胞又は少なくとも3個の細胞を含むクラスター)の数の合計の中央値、
6− 腫瘍領域CT及びIMにおける単位の全表面積の40%以上の組織表面積を有する、単位における陽性細胞(単一細胞)の数の合計の中央値、
7− 腫瘍領域CT及びIMにおける単位の全表面積の40%以上の組織表面積を有する、単位における陽性細胞(少なくとも3個の細胞を含むクラスター)の数の合計の中央値、
8− 腫瘍領域CT及びIMにおける単位の全表面積の40%以上の組織表面積を有する、単位における陽性細胞(単個細胞又は少なくとも3個の細胞を含むクラスター)の密度の合計の中央値、
9− 腫瘍領域CT及びIMにおける単位の全表面積の40%以上の組織表面積を有する、単位における陽性細胞(単個細胞又は少なくとも3個の細胞を含むクラスター)の平均数の中央値、
10− 腫瘍領域CT及びIMにおける単位の全表面積の40%以上の組織表面積を有する、単位における陽性細胞(単一細胞)の平均数の中央値。
【0052】
上記の基準の各組合せについて、各マーカーについて(例えばCD3、CD4、CD8、CD20、CD45RO又はGZMBマーカー)、試料がこの基準により陽性又は陰性と考えられるかどうかを判定することを可能とする閾値が決定される。
【0053】
各領域における各マーカーについて、各方法についての閾値が決定される。閾値は、前記癌患者の集団を使用して、任意の閾値、集団の平均又は中央値に対する閾値を採用して、又は好ましくは患者を識別する最適なp値、又は患者を識別する最適なハザード比、又は患者を識別する最適なiAUC値を使用して決定される。
【0054】
例えばCD3については、適切な数値はおよそ以下である:
【0055】
【表2】
【0056】
これらの数値は、使用されるソフトウェアの校正調整、例えばシグナル強度閾値又は細胞検出、及び分析される患者のタイプ(原発性腫瘍、転移病巣、癌ステージI、II、III、IV)、研究される腫瘍のタイプ(大腸癌、乳癌、肺癌、黒色腫など)に基づいた調整に従って変化する。
【0057】
各マーカーについての各参照閾値は、以下の工程を含む方法を実施することによって予め決定され得る:
m)i)抗癌処置を受け、続いて、抗癌処置の後に癌の再燃又は癌の再発が全くない、Tis、又はT1、又はT2、又はT3又はT4及びN0、又はN1、又はN2、又はN3及びM0又はM1として慣用的には分類される癌患者からの腫瘍組織試料の収集;ii)抗癌処置を受け、続いて、抗癌処置の後に癌の再燃又は再発が起こった、Tis、又はT1、又はT2、又はT3又はT4及びN0、又はN1、又はN2、又はN3及びM0又はM1として慣用的には分類される癌患者からの腫瘍組織試料の収集、からなる群より選択される腫瘍組織試料の少なくとも1つの収集を準備する工程、
n)工程m)で準備された腫瘍組織試料の収集に含まれる各腫瘍組織試料について、前記生物学的マーカーを定量する工程、これにより前記生物学的マーカー及び前記腫瘍組織試料の収集についての定量値の収集が得られる;
o)工程n)の終了時に得られる定量値の前記収集から、前記生物学的マーカーについての平均定量値を計算する工程、これにより、特定の癌の予後又は処置に対する応答に相関する前記生物学的マーカーについての予め決定された参照値が得られる。
【0058】
上記の工程m)の定義に言及される「抗癌処置」は、腫瘍組織試料を収集する前に癌患者が受けた任意の種類の癌療法(放射線療法、化学療法、生物学的療法、免疫療法、及び手術、例えば腫瘍の外科的切除を含む)に関する。
【0059】
最小統計有意値の観点から、閾値参照値は一連の数値であり得る。例えば、1ないし10の仮説上の尺度では、理想の閾値が5であるならば、適切な(例示的な)範囲は4〜6であり得る。それ故、患者は、数値を比較することによって評価され得、5を超える数値は、例えば、良好な予後を示し、5未満の数値は、例えば悪い予後を示す;又は患者は、数値を比較し、尺度で数値を比較することによって評価され得、4〜6の範囲を上回る数値は、例えば良好な予後を示し、4〜6の範囲を下回る数値は、例えば悪い予後を示し、4〜6の範囲内に該当する数値は、中間の予後を示す。
【0060】
上記の閾値を決定するための方法の工程o)の特定の好ましい態様において、患者の実際の臨床転帰に関する前記情報は、(i)無病生存期間(DFS)及び(ii)全生存期間(OS)からなる群より選択される。
【0061】
その予想される生存率に従って患者を群に分類するために、1つを超える生物学的マーカーについての予め決定された参照値が利用できることが好ましい。従って、一般的に、複数の生物学的マーカーについて上記した予め決定された参照値を得るためにいずれか1つの方法を単純に反復することによって、1つ以上の予め決定された参照値(群)が、本明細書に包含される癌に対する免疫応答の状態を示す複数の生物学的マーカーについて決定される。
【0062】
好ましい予め決定された参照値は、悪い癌の予後と良好な癌の予後とを区別する対象の生物学的マーカーの定量値の中央値からなる。
【0063】
特定の予め決定された参照値の正確度は、特定の生物学的マーカーについての定量値を得るために、従って、特定の癌の転帰に関連した平均値(予め決定された参照値)を計算するために使用される組織試料の数と共に増加する。好ましくは、対象の各生物学的マーカーについての非常に関連性の高い予め決定された参照値の観点から、前記の予め決定された参照値は、特定の臨床転帰を辿った同じ複数の癌保有患者を起源とする組織試料で測定された前記マーカーの複数の定量値の平均値からなる。
【0064】
より好ましくは、正確な予め決定された参照値を評価するために、参照値は、特定の生物学的マーカーについての少なくとも50個の定量値から、従って、特定の悪い又は良好な臨床転帰(例えば診断から5年間以上のDFS又はOS)を辿った少なくとも50人の癌保有患者を起源とする組織試料を使用して予め決定される。
【0065】
好ましい態様において、予め決定された参照値は、特定の生物学的マーカーについての少なくとも60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500個以上の定量値から得られる。
【0066】
参照値を予め決定するための他の態様は、EP−A−EP1943520及び国際公開公報第2007045996号に開示されている。
【0067】
本発明の最も好ましい方法は、完全にコンピューター化された方法である。
【0068】
上記の方法は、以下の通りに実施され得る:
【0069】
腫瘍組織試料を調製する。腫瘍組織試料は好ましくはホルマリン中で固定し、パラフィン(ワックス)又はエポキシなどの硬い固定剤に包埋し、これを型に入れ、後に硬化させて容易に切断されるブロックを生産する。材料の薄片を、ミクロトームを使用して調製し、スライドガラス上に置き、染色スライドを得るために、例えばBenchMark(登録商標)XTなどの自動免疫染色装置を使用して免疫組織化学検査にかける。いくつかのマーカーを考慮する場合、異なる染色スライドを調製する。
【0070】
各単位の腫瘍内免疫細胞の数又は密度を、上記の方法に従って評価した場合、上記の基準の組合せの1つが選択され、マーカー又は各マーカーについての数値が得られる。得られた数値を、マーカー及び基準の組合せの閾値/参照値と比較する。
【0071】
得られた数値が閾値/参照値を上回る場合、腫瘍は「+」又は「高い」などの引用が割り当てられ、得られた数値が閾値/参照値よりも下である場合、腫瘍は「−」又は「低い」などの引用が割り当てられる。
【0072】
上記の方法を単一のマーカーを用いて実施し、CT及びIMを別々に考慮する場合、腫瘍及びそれ故、患者は、高い/高い、高い/低い、低い/高い、低い/低いであり得る。3つのカテゴリーの患者を得ることができる:「2つ高い」、「1つ高い」、「0高い」。このような場合、0から2までの免疫スコア(すなわちイムノスコア)を得ることができる。
【0073】
上記の方法を2つのマーカーを用いて実施し、CT又はIMのいずれか(好ましくは)を考慮する場合、腫瘍及びそれ故、患者はまた、高い/高い、高い/低い、低い/高い、低い/低いであり得る。3つのカテゴリーの患者を得ることができる:「2つ高い」、「1つ高い」、「0高い」。またこのような場合、0から2までの免疫スコア(すなわちイムノスコア)を得ることができる。
【0074】
上記の方法を2つのマーカーを用いて実施し、CT及びIMを別々に考慮する場合、腫瘍及びそれ故、患者は、高い/高い/高い/高い、低い/低い/低い/低い、高い/高い/高い/低い、高い/高い/低い/低い、及び高い/低い/低い/低いであり得る。後者の3つについて、評価は、マーカー及び陽性領域CT又はIMには無関係であり得る。
【0075】
任意の慣例を使用し得る。例えば「+」、「陽性」、「高い」、「Hi」は、同じ結果(多くの染色細胞)を評価するために等価である。
【0076】
このような場合、0ないし4の範囲の免疫スコア(すなわちイムノスコア)は以下のように要約され得る:
スコア4:4つの「高い」評価
スコア3:3つの「高い」評価
スコア2:2つの「高い」評価
スコア1:1つの「高い」評価
スコア0:0の「高い」評価
【0077】
本発明による方法は、その再現性、繰り返し性及び日常的な慣行で方法を実施できることのために、有利な特性を有する。
【0078】
本発明のプロセスは、所望であれば全腫瘍についての数値を得ることを可能とし、情報は組織マイクロアレイ(TMA)に限定されない。
【0079】
本発明の範囲は、以下に示された実施例を言及することによってより良く理解され得、その目的は、本発明の利点を説明することである。
【0080】
本発明の主題はまた、参照閾値を含むサポートを含む、上記方法を実施するためのキットである。
【0081】
本発明のさらなる主題は、上記方法を実施するためのソフトウェアの具備されたコンピューターである。
【0082】
上記方法を実施するための好ましい条件はまた、上記で考えられた本発明の他の主題にも適用され、特に、前記の上の方法を実施するためのキットにも適用される。
【図面の簡単な説明】
【0083】
図1図1は、デジタル写真上に検出された組織切片の薄片の写真を示す。
図2図2は、1つ又はいくつかの基準に従って、類似の特性の領域に分けられた図1の組織切片の薄片の写真を示す。
図3図3は、腫瘍及び腫瘍の浸潤周辺部分が規定されている写真2に類似した写真である。
図4図4は、組織切片の3つの領域を示した写真である:上には腫瘍、下には健康な組織、及びこれらの領域間には浸潤周辺部分。
図5図5は、分析される腫瘍(腫瘍及び浸潤周辺部分)のサイズに適合した、正方形の単位を有する参照サイズ格子を示す。腫瘍は灰色であり、V字形である。
図6図6は、典型的な1単位の写真である。黒い点は、染色細胞、すなわち、マーカーを含む細胞に対応する。
図7図7は、ソフトウェアによって検出される全ての陽性細胞についての褐色染色の強度の関数としての、1つの格子単位について得られた染色の品質を示す、代表的な曲線を示す。染色の品質の評価は、好ましくは、組織切片の全ての単位上で実施される。
図8図8は腫瘍の写真である。所与の単位における染色細胞の数に従って、より暗い色又はより暗くない色がソフトウェアによって割り当てられる。
図9図9は、図6の一部の拡大図であり、染色細胞(黒)がより明瞭に明らかとなっている。
図10図10は、本発明を実施するためのシステムのブロック図である。
図11図11及び12は、本発明による方法の工程を実施するための手段の一例を示したプログラミングフロー図である。
図12図11及び12は、本発明による方法の工程を実施するための手段の一例を示したプログラミングフロー図である。
図13図13は、実施例2の定量法、特に腫瘍切片におけるCD3+細胞の検出(結腸直腸癌の全スライド分析)を示す。上の図:組織試料の腫瘍と浸潤周辺部分との境界、次の図、組織切片は3つの領域に分類される:右上の腫瘍、左及び右下の健康な組織、並びに浸潤周辺部分の最も明るい領域。
図14図14は、実施例2の定量法、特に腫瘍切片におけるCD8+細胞の検出を示す(結腸直腸癌の全スライド分析)。上の図:組織試料の腫瘍と浸潤周辺部分との境界、次の図、組織切片は3つの領域に分類される:右上の腫瘍、左及び右下の健康な組織、並びに浸潤周辺部分の最も明るい領域。
図15図15は、無病生存期間の関連p値による最適な閾値の計算を示し(ログランク検定)、p値、対、20ないし2000個のCD3+細胞/mmの密度を示す。
図16図16は、腫瘍の染色薄片の10個の異なる単位についてのCD3及びCD8に対する染色強度の分布の比率についてのヒストグラムを示す。
図17図17〜19は、CD3免疫染色後の細胞の染色強度に関するCT及びIM腫瘍領域に検出される陽性細胞の比率を示すヒストグラムを示す。
図18図17〜19は、CD3免疫染色後の細胞の染色強度に関するCT及びIM腫瘍領域に検出される陽性細胞の比率を示すヒストグラムを示す。
図19図17〜19は、CD3免疫染色後の細胞の染色強度に関するCT及びIM腫瘍領域に検出される陽性細胞の比率を示すヒストグラムを示す。
【0084】
腫瘍の組織切片の3つの領域を示す写真を得るための本発明による1つの手順を図10に示す。
【0085】
手順は、工程10における「組織の境界の限界設定」から始まり、その時、スライドのデジタル写真を、組織切片の境界を得るために分析する。
【0086】
その後、工程12の「組織試料を均質な領域へと区分け」において、領域の色、検出されたエレメント及び領域の対比染色の強度、核領域の密度、稠密度、空虚度、組織密度、顆粒性、形状、サイズなどのパラメーター、又はこれらのパラメーターのいくつかを分析し、組織切片を、前記パラメーターに従って類似の特性を有する均質な領域へと分ける。通常、約1〜10cmの表面積を有する組織試料について、100ないし1000の領域、典型的には2000ないし4000の均質な領域が得られる。
【0087】
その後、工程14の「腫瘍の限界設定」において、コンピューター(又は当業者、通常医師)は、工程12の結果を鑑みて、細胞核のサイズ及び形態、細胞核の色などのパラメーターを考慮して、腫瘍及び浸潤周辺部分の限界をデジタル的に設定する。当業者がこの工程を実施する場合に、例えば、当業者はコンピューターのマウス又はそのタッチペンを使用することができる。
【0088】
その後、工程16の「腫瘍中心及び浸潤周辺部分の限界設定」において、組織切片を3つの領域に分ける:腫瘍、健康な組織及び浸潤周辺部分。ソフトウェアは、腫瘍の境界の各側上で500μmの幅であり、それ故1mmの幅を有する、健康な組織と腫瘍の間の「浸潤周辺部分」と命名された中間領域を規定する。事実、本発明者によってなされた長期の研究により、1mmの幅が、浸潤周辺部分の最も代表的なものであることが証明された。
【0089】
工程18の「腫瘍のサイズに適合させた格子の準備」において、腫瘍のサイズに適合させた長方形の格子及び浸潤周辺部分が作られる。長方形の格子は、典型的には500ないし1000μmの長さ、好ましくは800μmの長さの一辺を有する、正方形の単位から構成される。
【0090】
工程20の「単位あたりの染色細胞単位の数」において、染色細胞を、細胞の色、単一細胞の予想されるサイズ、細胞の形状、又は染色の強度などのパラメーターを考慮して計測する。
【0091】
工程22の「染色細胞数を単位表面積で割る」において、染色(陽性)細胞の数を、単位表面積(例えば、800μmの長さの一辺を有する正方形では0.64×10−6)で割る。このようにして、単位表面積による染色(陽性)細胞の密度が得られる。
【0092】
工程24の「染色細胞の密度による各単位への色の割り当て」において、ソフトウェアは、密度の関数として各単位に色を、例えば明黄色から暗赤色まで割り当てる。
【0093】
以前に記載されているように、この手順は、1つを超えるマーカーが前記方法に使用される場合、各マーカーについて別々に実施され得る。例えば、手順をCD3細胞について、その後CD8細胞について実施する。
【0094】
患者を群に分類するための本発明による1つの手順を図12に示す。この実施例において、以下のパラメーターの組合せが選択された:A、陽性細胞の平均密度、B、3つの最も染色された単位、並びにC、腫瘍領域CT及びIM。
【0095】
手順は、工程30の「腫瘍中心における3つも最も染色された単位の検出」で始まる。「腫瘍中心」は、「腫瘍周辺部分」と対照的に使用される。ソフトウェアは、上記の工程24のデータに従って、3つも最も染色された単位(例えば最も暗い赤い単位)を検出する。
【0096】
工程32の「腫瘍中心における陽性細胞の平均密度の計算」において、染色(陽性)細胞の平均密度を計算する。
【0097】
工程34の「腫瘍中心における陽性細胞の平均密度に関する参照値」において、閾値/参照値が、前記パラメーターの組合せ及び前記マーカーについての閾値/参照値を含むデータベースによって提供される。データベースは、好ましくは、各パラメーターの組合せ及び各マーカーについての閾値/参照値を含む。
【0098】
工程36の「腫瘍中心における陽性細胞の平均密度を参照値と比較」において、工程32の値を、工程34の閾値/参照値と比較し、必要な情報を提供する。工程32の値が工程34の閾値/参照値を上回る場合、試料は例えば「高い」と判断され、逆の場合には「低い」と判断される。
【0099】
手順は、例えば2つのマーカー並びに腫瘍領域CT及びIMについて実施される。
【0100】
スコアは、前記情報から得ることができ、予想される患者の生存率は、信頼できる方法で評価され得る。なぜなら、ヒトによる介入及び評価は最小限に限定されているからである。
【0101】
実施例
実施例1:腫瘍組織の染色スライドの製造
選択された4μmの腫瘍ブロックの2つの組織パラフィン切片を作成し、免疫組織化学的検査のために顕微鏡スライド(Superfrost-plusスライド)上に脱イオン水中で沈着させた。組織パラフィン切片を室温で乾燥させ、56℃〜58℃のオーブン中で一晩インキュベーションした。
【0102】
免疫染色を、CD3及びCD8(CONFIRM CD3 (2GV6, Ventana)及びCD8 (C8/144B; Dako))のための体外診断に認証された抗体を用いて実施した。関連したプロトコールは、ブロッキング、エピトープ回収、及び検出の重要な工程を含んでいた。スライド上の細胞核を染色することを目的とした改変メイヤーヘマトキシリン法を適用して(ヘマトキシリンII、Ventana)、専用のソフトウェアを用いて染色細胞を最適に検出した。Benchmark XT自動装置(Roche-Ventana)と共に使用されたプロトコールは以下であった:
【0103】
【表3】
【0104】
CC1は、僅かに塩基性のpHを有するトリスをベースとした緩衝液である。CD8のための一次抗体希釈剤はK004であった(Clinisciences)。
【0105】
デジタル写真を得るために腫瘍組織の染色スライドをスキャンする
スライドのデジタル画像への数量化を、20倍モードでスキャナー(NanoZoomer 2.0-HT, Hamamatsu)を用いて実施した。デジタル画像のフォーマットは、Definiens Developer XD画像分析システムと適合性であった。スキャンされた画像上の不均質な色を回避するために、ホワイトバランス、明暗及びシェーディングに関する校正を実施した。
【0106】
実施例2:ソフトウェア処理による染色スライドの分析
病理医は、CD3及びCD8についての各免疫組織化学検査のデジタル画像をアップロードし、専用画像分析ソフトウェア(Definiens Developer XD)を用いて分析を始める。
半自動手順は、以下のための工程を含む:
− 組織の自動検出、
− 組織の単位への自動的区分け、
− 人工産物(折り畳み、断裂、気泡など)の手作業による除去、
− デジタルツールとしてのブラシを使用しての、病理医による腫瘍領域の手作業による選択、
− 浸潤周辺部分の自動的検出、
− 腫瘍の各単位における染色細胞の自動的検出、
− 染色細胞の免疫染色及び量を検証するために、ソフトウェアによって検出される陽性細胞の染色強度の分布、平均及び中央値についてのグラフの分析;この分析は各単位上で、組織切片の全ての単位上で実施される、
− 染色強度の数値及び分布を、それぞれCD3及びCD8についての参照値と比較する;染色強度が類似の数値を有するならば(約20%の増減はあるが同じ数値)、試料組織は正確に染色されたと判断され;例は本明細書において以下に示される、
− 各腫瘍領域(CT及びIM)における3つの最も浸潤した単位の同定及び証明、
− 各腫瘍領域における3つの最も浸潤した単位の平均密度の計算。
【0107】
【表4】
【0108】
【表5】
【0109】
患者が各腫瘍領域において各マーカーについて高い又は低いかどうかを決定するために、最も浸潤した3つの単位の平均密度を、参照集団の研究において以前に定義された最適閾値の平均密度と比較する。
【0110】
臨床的に局在化した結腸直腸癌(UICC TNMステージI−II)の参照集団において、患者を無病生存期間に関して区別するための最適閾値は、以下である。
【0111】
【表6】
【0112】
分析された症例では、腫瘍はCD3について高い/高い、CD8について高い/高い。結果として免疫スコアはI−4である。
【0113】
実施例3:無病生存期間についての関連p値による最適な閾値の計算の例(ログランク検定)
無病生存期間についてのp値の計算(ログランク検定)
20ないし2000個のCD3+細胞/mmの各値について、前記数値未満の腫瘍(CT領域)におけるCD3+細胞の密度(下の曲線上の丸い点)を有する患者の数(従って患者群を与える)を決定した。
【0114】
腫瘍における20ないし2000個のCD3+細胞/mmの各閾値(丸い点及び対応する曲線)について患者群を比較するログランク検定のp値を計算した。
【0115】
結果を図15に示す。
【0116】
X軸は、細胞/mmで表現された細胞密度を示し、Y軸はログランクP値を示す(図の下における丸い点及び対応する曲線)。ハザード比(四角い点及び対応する曲線)及びiAUCc統計量(鋭い曲線)も示される。
【0117】
患者は「低い」(所与のカットポイントを下回る)及び「高い」(このカットポイントを上回る)として分類される。20ないし2000個の細胞/mmの数値をこの実施例において試験する。例えば、100個の細胞/mmの数値については、100個のCD3+細胞/mm未満の患者は「低い」群であり、100個以上のCD3+細胞/mmを有する患者は「高い」群である。カプランマイヤー曲線を、高い患者と低い患者を比較してプロットし、ログランクP値を計算する(P=0.01、この実施例において)。
【0118】
結果は、70ないし700個の細胞/mmの数値が、腫瘍内のCD3+について有意である(丸いプロット)(P<0.05)ことを示す(図15参照)。最適なP値の閾値は、最小P値に対応する値によって提供され、これはこの実施例においては200個の細胞/mmで見られる。従って、最適な閾値は200個の細胞/mmで設定される。
【0119】
最適な閾値は、類似のアプローチを使用して、各腫瘍領域内の各マーカーに関して、陽性細胞の密度以外の数値に関して決定され得る。
【0120】
実施例4:免疫組織化学的検査の繰り返し性及び再現性
CD3及びCD8の免疫組織化学的検査についての繰り返し性及び再現性は、異なる方法に従って研究された(3つの最も染色された単位の基準)。
【0121】
繰り返し性方法1:
腫瘍の1つのスライドを免疫染色し(CD3又はCD8について)、スキャナーで数値化する。デジタル画像を10回、同じオペレーターによって画像分析ソフトウェアを用いて分析する(別の言葉で言えば、10回の同じ免疫染色の分析を同じオペレーターによって行なう)。変動係数(CV)を決定する。
【0122】
結果:
CD3;
CT領域についてのCVは3.20%である。
IM領域についてのCVは7.11%である。
腫瘍(CT及びIM)の分析についてのCVは5.16%である。
CD8;
CT領域についてのCVは1.88%である。
IM領域についてのCVは3.07%である。
腫瘍(CT及びIM)の分析についてのCVは2.48%である。
【0123】
繰り返し性方法2:
4つの腫瘍試料を分析する。各腫瘍試料について、4つの隣接スライドを実施する。スライドを同じ実験で免疫染色し(CD3又はCD8について)、同じ操作でスキャナーを用いて数値化する。デジタル画像を、同じオペレーターによって同じ操作で画像分析ソフトウェアを用いて分析する。変動係数(CV)を、隣接スライド間の各IHC(CD3又はCD8)について決定する。
【0124】
結果:
CD3;腫瘍1〜4番
CT領域についてのCVは5.41%である。
IM領域についてのCVは10.59%である。
腫瘍(CT及びIM)の分析についてのCVは8.00%である。
CD8;腫瘍1〜4番
CT領域についてのCVは8.73%である。
IM領域についてのCVは9.09%である。
腫瘍(CT及びIM)の分析についてのCVは8.91%である。
【0125】
再現性方法1:
組織マイクロアレイ(TMA)からの腫瘍試料の1つのスライドを分析する。スライドを免疫染色し(CD3又はCD8について)、スキャナーで数値化する。デジタル画像を、CD3については12回の操作及び24回の操作で同じオペレーターによって画像分析ソフトウェアを用いて分析する(別の言葉で言えば、12回の同じ免疫染色の分析が同じオペレーターによって行なわれる)。
【0126】
− 変動係数(CV)が決定される。
【0127】
結果:
CD3;TMAスポットについてのCVは1%未満である。
CD8;TMAスポットについてのCVは1%未満である。
【0128】
再現性方法2:
腫瘍試料の1つのスライドを免疫染色し(CD3又はCD8について)、スキャナーで数値化する。デジタル画像を10回、画像分析ソフトウェアを用いて2人のオペレーターによって分析する。変動係数(CV)は両方のオペレーター間で決定される。
【0129】
結果:
CD3;
CT領域についてのCVは3.42%である。
IM領域についてのCVは7.03%である。
腫瘍(CT及びIM)の分析についてのCVは5.23%である。
CD8;
CT領域についてのCVは2.72%である。
IM領域についてのCVは適用不可能である(IMは検出不可能)。
腫瘍(CT)の分析についてのCVは2.72%である。
【0130】
再現性方法3:
2つの腫瘍試料を分析する。各腫瘍試料について、5つの隣接するスライドを実施する(C1〜C5)。スライドを異なる操作で免疫染色し(CD3及びCD8)、異なる操作で数値化する。デジタル写真を画像分析ソフトウェアを用いて2人のオペレーターによって分析する(スライドC1、C3及びC5についてはオペレーター1番;スライドC2及びC4についてはオペレーター2番)。変動係数(CV)は、隣接スライドについて両方の研究者の間で各IHC(CD3及びCD8)について決定される。
【0131】
結果:
CD3;
CT領域についてのCVは17.89%である。
IM領域についてのCVは5.37%である。
腫瘍(CT及びIM)の分析についてのCVは11.68%である。
CD8;
CT領域についてのCVは14.90%である。
IM領域についてのCVは8.71%である。
腫瘍(CT及びIM)の分析についてのCVは2.72%である。
【0132】
実施例5:CD3及びCD8についての免疫染色の品質制御の実行の詳細な例
実施例1に従ってCD3及びCD8について免疫染色された10個の単位を無作為に選択した。単位の強度平均+/−1SDを決定した。
【0133】
得られた平均値は、CD3:239+/−43(範囲282〜196)であり、CD8:217+/−44(範囲:261〜173)である。前記数値は、所与の患者の各試料の免疫染色の品質を検証するための参照値と判断される。上記の範囲は、参照平均値から20%増減の差異に対応する。当業者は、種々の理由から、耐容閾値は広がり得るか(例えば22%又は25%の増減)、又は好ましくは狭くなり得ることを理解している(例えば5%、8%、10%、15%の増減)。
【0134】
チーム1
実施例1に従ってCD3について免疫染色された10個の単位を無作為に選択した。単位の強度平均+/−1SDを決定した。得られた結果は平均=234+/−64である。CD3についての染色強度の分布のヒストグラムは、得られたCD3の染色強度が、CD3の参照染色強度に近く、282〜196の範囲内であることを示す。
【0135】
それ故、試料は、正しく免疫染色されていると判断される。
【0136】
チーム1によって測定された染色された免疫細胞の密度:CT:1795個の細胞/mm、IM:2319個の細胞/mmが実証される。
【0137】
チーム2
同じプロトコールが、チーム1によって調べられたスライドに隣接するスライド上で作業している第2のチームによって実施された。
【0138】
得られた結果は平均=251+/−56であり、282〜196の範囲内である。上記の参照値を鑑みて、それ故、試料は、正しく免疫染色されていると判断される。
【0139】
チーム1によって測定された染色された免疫細胞の密度:CT:1665個の細胞/mm、IM:2198個の細胞/mmが実証される。
【0140】
隣接スライドについてチーム1及びチーム2によって得られた腫瘍領域[腫瘍(CT)のコア及び浸潤周辺部分(IM)]におけるCD3の密度の数値は実際に類似している。
【0141】
チーム3
同じプロトコールが、チーム1によって調べられたスライドに隣接する他のスライドで作業している第3のチームによって実施された。得られた結果は平均=148+/−27である。CD3についての染色強度の分布のヒストグラムは、得られたCD3の染色強度が、CD3の参照染色強度とはかけ離れていることを示す(282〜196の範囲外)。
【0142】
それ故、試料は、不正確に免疫染色されていると判断される。
【0143】
チーム3によって測定された染色された免疫細胞の密度:CT:914個の細胞/mm、IM:1707個の細胞/mmは実証されない。
【0144】
上記の結果は、参照の非存在下、及び免疫染色の品質制御がなされない下、非常に異なりかつ不正確な結果が得られることを示す。
図1
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