(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記中間ギアは、前記駆動ピンが前記コントロールプレートのスロットから離間して回転している間、前記コントロールプレートの隣接するスロット間の凹状円弧部を案内する案内部を持ったボスを有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のシートベルト用リトラクタ。
前記中間ギアは、前記駆動歯部と、前記コントロールプレートの前記被駆動歯部とが噛合していないときに、前記コントロールプレートの隣接する被駆動歯部間の凹状円弧部を案内する案内部を有することを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載のシートベルト用リトラクタ。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の乗員等を座席に安全に保持するためのシートベルト用リトラクタとして、急な加速、衝突又は減速に反応する車体加速度感知手段によってウェビングの引き出しを物理的にロックする緊急ロック機構を備えて、乗員を効果的及び安全に拘束する緊急ロック式リトラクタが用いられている。また、チャイルドシート等を車両シートにシートベルトで固定するためのシートベルト用リトラクタとして、ウェビングを全量引き出したときに作動し、巻取り途中ではウェビングの引出しを阻止し、ウェビングの全量巻取りで作動解除する自動ロック機構を備えたものが用いられている。
【0003】
ところで、緊急ロック機構を備えたシートベルト用リトラクタでは、車両緊急時ではない不必要な時にも、スピンドル(巻取軸)のウェビング引き出し方向の回転がロックされることがある。即ち、車両取付け状態において、ウェビング引き出し状態から巻き取りバネのバネ力に従って急激にウェビングが全量巻き取られたとき、その衝撃で緊急ロック機構が作動して、スピンドルのウェビング引き出し方向の回転がロックされてしまうことがあり、この場合には、ウェビングの引き出しができなくなる。しかもこのとき、ウェビングは全量巻き取り状態にあるので、スピンドルはウェビング巻き取り方向にも回転できず、リトラクタは所謂エンドロック状態に陥るという問題があった。
【0004】
例えば、緊急ロック機構としては、次のようなものがある。一つは、ウェビングの急激な引き出しを感知してスピンドルのウェビング引き出し方向の回転を阻止するもの(ウェビング加速度感知手段:WS)、もう一つは車両の急減速状態を感知してスピンドルのウェビング引き出し方向の回転を阻止するもの(車体加速度感知手段:VSI)である。いずれの場合も、スピンドルと一体回転するロック部材の揺動により、ロック部材の爪を、スピンドルを支持するフレームの内歯に噛み合わせて、スピンドルをロックするようにしている。
【0005】
このようなリトラクタにおいて、エンドロックが起きるケースとしては、次の3つの場合がある。
(1)ウェビング加速度感知手段(WS)の誤作動によるもの。
一般的に、ウェビング加速度感知手段は、急速にベルトを引き出すと、マスの慣性でマス側の回転がスピンドルより遅れることで、ロック部材が外に飛び出して、フレームの内歯に噛み込む、という原理を用いている。ところが、急激なウェビング巻き取り後にウェビングが突っ張ると、勢いでマスがスピンドルに対して相対移動してしまい、ロック部材がフレームの内歯に噛んでしまう場合である。
(2)車体加速度感知手段(VSI)の誤作動によるもの。
ウェビングの急速な巻き取り等に伴い車体加速度感知手段に加速度が入力した際に、慣性部材であるボールが動き、レバーが揺動して、ラッチ部材に噛んでロックする場合である。
(3)ロック部材自体の誤作動によるもの。
ウェビングを巻き取った勢いで、ロック部材自体がフレームの内歯に噛んでしまう場合である。
【0006】
特許文献1に記載のシートベルトリトラクタは、スピンドルの回転をギア列を介して減速させて回転するコントロールプレートと、コントロールプレートに形成されたカム溝内を移動可能に収容される突起部、ラッチリングの外歯と係脱可能な係合歯部、及び加速度センサレバーに当接離脱可能な爪部を有するスイッチレバーと、を備え、コントロールプレートの回転により突起部がカム溝内を移動することでスイッチレバーが揺動する。そして、ウェビングの巻き取り完了時には、爪部を加速度センサレバーに当接させると共にラッチリングの外歯と係合歯部との係合を解除して車体加速度感知手段及びウェビング加速度感知手段のエンドロックを防止している。また、特許文献2,3に記載のシートベルリトラクタは、機構の一部にゼネバ歯車を採用している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、エンドロック防止機構の切換タイミングは、ウェビングの格納状態と、バックルラッチ状態(バックルにタングが差し込まれおり、且つ、ウェビングが最も巻かれている状態、つまり、シートに人が乗っていない状態、以下「空ラッチ状態」とも称す。)の範囲でそれぞれ行われる。エンドロック防止機構は、空ラッチ状態では、ロック手段が機能するように非作動とされ、ウェビング格納状態では、作動することが要求される。
【0009】
空ラッチ状態とウェビング格納状態でのウェビングの引き出し量の差は、車両レイアウトによっては少ない場合があり、シートクッションの変形やウェビングの巻き斑、巻き締まり等に対するマージンも考慮して、エンドロック防止機構の切換タイミングのばらつきを少なくすることが、顧客から求められている。
【0010】
このようなウェビングの引き出し量の差が少ない車両では、切換タイミングが空ラッチ状態とウェビング格納状態との間で確実に行われるように、シートベルト装置ごとに、ウェビングのアンカー縫製によるチューニングが行われており、この場合、コストアップの要因となる。
【0011】
特許文献1に記載のシートベルト用リトラクタのコントロールプレートは、ウェビングがウェビング格納状態から全量引き出されたときに1回転するように、スピンドルの回転によってギア列を介して減速しながら連続回転する。このため、コントロールプレートで揺動駆動されるスイッチレバーの切換えタイミングのばらつきが大きく、上述したチューニングが要求され、改善の余地があった。
【0012】
また、特許文献2及び3に記載のシートベルト用リトラクタは、ウェビングの引出し力、及び巻き取り力を調整して乗員の圧迫感を軽減するテンションリデューサにゼネバ歯車を採用したものであり、本発明のエンドロック防止機構の切換えタイミングを考慮したものではない。
【0013】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、エンドロック防止機構の切換えタイミングのばらつきが小さく、エンドロックの発生を確実に防止することができるシートベルト用リトラクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1) フレームに回転自在に支持され、ウェビングが巻装されるスピンドルと、
前記フレームに係合することで前記スピンドルのウェビング引き出し方向の回転をロックするロック部材と、
前記スピンドルに相対回転可能に支持されると共に、前記スピンドルに対して回転遅れを生じることにより前記ロック部材を作動するステアリングホイールと、
前記ステアリングホイールの外周面に形成された歯部と係止可能な加速度センサレバーを有し、水平方向の加速度を検出する加速度センサと、
前記スピンドルの回転と連動して回転する中間ギアと、
前記中間ギアが1回転する間の所定の位相において前記中間ギアと連動して回転することで、前記スピンドルの回転に対して間欠回転するコントロールプレートと、
ベアリングプレートに揺動自在に軸支され、前記加速度センサレバーに当接離脱可能な爪部と、前記コントロールプレートに形成されたカム溝内を移動可能に収容される突起部と、を有するスイッチレバーと、
を有し、
前記スイッチレバーは、前記コントロールプレートの回転によって前記突起部が前記カム溝内を移動することで、前記加速度センサレバーと前記爪部とが離脱する第1の位置と、前記加速度センサレバーと前記爪部とが当接する第2の位置との間を変位可能に制御され、且つ、前記ウェビングの巻き取り完了時に、前記第2の位置に位置することで、前記加速度センサレバーの作動による前記加速度センサのエンドロックを防止
し、
前記中間ギアは、前記コントロールプレート側に向けて軸方向に突出する駆動ピンを備え、
前記コントロールプレートは、前記駆動ピンが係脱可能で、径方向に沿って形成された複数のスロットを備え、
前記中間ギアと前記コントロールプレートとはゼネバ機構を構成することを特徴とするシートベルト用リトラクタ。
(2) フレームに回転自在に支持され、ウェビングが巻装されるスピンドルと、
前記フレームに係合することで前記スピンドルのウェビング引き出し方向の回転をロックするロック部材と、
前記スピンドルに相対回転可能に支持されると共に、前記スピンドルに対して回転遅れを生じることにより前記ロック部材を作動するステアリングホイールと、
内外周面にそれぞれ内歯及び外歯が形成され、前記フレームに固定されるベアリングプレートに回転自在に配設されたラッチリングと、
前記ラッチリングの内歯と係脱可能な位置で、前記ステアリングホイールに揺動自在に軸支され、前記ステアリングホイールのウェビング引き出し方向の回転を阻止する作動位置と、前記ステアリングホイールのウェビング引き出し方向の回転が阻止されない非作動位置との間を変位するウェビングセンサレバーと、
前記スピンドルの回転と連動して回転する中間ギアと、
前記中間ギアが1回転する間の所定の位相において前記中間ギアと連動して回転することで、前記スピンドルの回転に対して間欠回転するコントロールプレートと、
前記ベアリングプレートに揺動自在に軸支され、前記ラッチリングの前記外歯と係脱可能な係合歯部と、前記コントロールプレートに形成されたカム溝内を移動可能に収容される突起部と、を有するスイッチレバーと、
を有し、
前記スイッチレバーは、前記コントロールプレートの回転によって前記突起部が前記カム溝内を移動することで、前記係合歯部と前記ラッチリングの外歯とが係合可能な第1の位置と、前記係合歯部と前記外歯との係合が解除される第2の位置との間を変位可能に制御され、且つ、前記ウェビングの巻き取り完了時に、前記第2の位置に位置することで、前記ウェビングセンサレバーの作動によるエンドロックを防止
し、
前記中間ギアは、前記コントロールプレート側に向けて軸方向に突出する駆動ピンを備え、
前記コントロールプレートは、前記駆動ピンが係脱可能で、径方向に沿って形成された複数のスロットを備え、
前記中間ギアと前記コントロールプレートとはゼネバ機構を構成することを特徴とするシートベルト用リトラクタ。
(3) フレームに回転自在に支持され、ウェビングが巻装されるスピンドルと、
前記フレームに係合することで前記スピンドルのウェビング引き出し方向の回転をロックするロック部材と、
前記スピンドルに相対回転可能に支持されると共に、前記スピンドルに対して回転遅れを生じることにより前記ロック部材を作動するステアリングホイールと、
内外周面にそれぞれ内歯及び外歯が形成され、前記フレームに固定されるベアリングプレートに回転自在に配設されたラッチリングと、
前記ラッチリングの内歯と係脱可能な位置で、前記ステアリングホイールに揺動自在に軸支され、前記ステアリングホイールのウェビング引き出し方向の回転を阻止する作動位置と、前記ステアリングホイールのウェビング引き出し方向の回転が阻止されない非作動位置との間を変位するウェビングセンサレバーと、
前記ステアリングホイールの外周面に形成された歯部と係止可能な加速度センサレバーを有し、水平方向の加速度を検出する加速度センサと、
前記スピンドルの回転と連動して回転する中間ギアと、
前記中間ギアが1回転する間の所定の位相において前記中間ギアと連動して回転することで、前記スピンドルの回転に対して間欠回転するコントロールプレートと、
前記ベアリングプレートに揺動自在に軸支され、前記ラッチリングの前記外歯と係脱可能な係合歯部と、前記加速度センサレバーに当接離脱可能な爪部と、前記コントロールプレートに形成されたカム溝内を移動可能に収容される突起部と、を有するスイッチレバーと、
を有し、
前記スイッチレバーは、前記コントロールプレートの回転によって前記突起部が前記カム溝内を移動することで、前記係合歯部と前記ラッチリングの外歯とが係合可能であるとともに、前記加速度センサレバーと前記爪部とが離脱する第1の位置と、前記係合歯部と前記外歯との係合が解除されるとともに、前記加速度センサレバーと前記爪部とが当接する第2の位置との間を変位可能に制御され、且つ、前記ウェビングの巻き取り完了時に、前記第2の位置に位置することで、前記ウェビングセンサレバー及び前記加速度センサレバーの作動によるエンドロックを防止
し、
前記中間ギアは、前記コントロールプレート側に向けて軸方向に突出する駆動ピンを備え、
前記コントロールプレートは、前記駆動ピンが係脱可能で、径方向に沿って形成された複数のスロットを備え、
前記中間ギアと前記コントロールプレートとはゼネバ機構を構成することを特徴とするシートベルト用リトラクタ。
(4) 前記駆動ピンは、前記中間ギアの半径の1/2よりも外径側の側面から突出していることを特徴とする
(1)〜(3)のいずれかに記載のシートベルト用リトラクタ。
(5) 前記中間ギアは、前記駆動ピンが前記コントロールプレートのスロットから離間して回転している間、前記コントロールプレートの隣接するスロット間の凹状円弧部を案内する案内部を持ったボスを有することを特徴とする
(1)〜(4)のいずれかに記載のシートベルト用リトラクタ。
(6) フレームに回転自在に支持され、ウェビングが巻装されるスピンドルと、
前記フレームに係合することで前記スピンドルのウェビング引き出し方向の回転をロックするロック部材と、
前記スピンドルに相対回転可能に支持されると共に、前記スピンドルに対して回転遅れを生じることにより前記ロック部材を作動するステアリングホイールと、
前記ステアリングホイールの外周面に形成された歯部と係止可能な加速度センサレバーを有し、水平方向の加速度を検出する加速度センサと、
前記スピンドルの回転と連動して回転する中間ギアと、
前記中間ギアが1回転する間の所定の位相において前記中間ギアと連動して回転することで、前記スピンドルの回転に対して間欠回転するコントロールプレートと、
ベアリングプレートに揺動自在に軸支され、前記加速度センサレバーに当接離脱可能な爪部と、前記コントロールプレートに形成されたカム溝内を移動可能に収容される突起部と、を有するスイッチレバーと、
を有し、
前記スイッチレバーは、前記コントロールプレートの回転によって前記突起部が前記カム溝内を移動することで、前記加速度センサレバーと前記爪部とが離脱する第1の位置と、前記加速度センサレバーと前記爪部とが当接する第2の位置との間を変位可能に制御され、且つ、前記ウェビングの巻き取り完了時に、前記第2の位置に位置することで、前記加速度センサレバーの作動による前記加速度センサのエンドロックを防止し、
前記中間ギアは、外周面の一部の位相に駆動歯部を有し、
前記コントロールプレートは、それぞれ周方向に離間して外周面に設けられた複数の被駆動歯部を備え、
連続回転する前記中間ギアの前記駆動歯部が、前記複数の被駆動歯部に順次噛合して前記コントロールプレートを間欠回転させることを特徴とす
るシートベルト用リトラクタ。
(7) フレームに回転自在に支持され、ウェビングが巻装されるスピンドルと、
前記フレームに係合することで前記スピンドルのウェビング引き出し方向の回転をロックするロック部材と、
前記スピンドルに相対回転可能に支持されると共に、前記スピンドルに対して回転遅れを生じることにより前記ロック部材を作動するステアリングホイールと、
内外周面にそれぞれ内歯及び外歯が形成され、前記フレームに固定されるベアリングプレートに回転自在に配設されたラッチリングと、
前記ラッチリングの内歯と係脱可能な位置で、前記ステアリングホイールに揺動自在に軸支され、前記ステアリングホイールのウェビング引き出し方向の回転を阻止する作動位置と、前記ステアリングホイールのウェビング引き出し方向の回転が阻止されない非作動位置との間を変位するウェビングセンサレバーと、
前記スピンドルの回転と連動して回転する中間ギアと、
前記中間ギアが1回転する間の所定の位相において前記中間ギアと連動して回転することで、前記スピンドルの回転に対して間欠回転するコントロールプレートと、
前記ベアリングプレートに揺動自在に軸支され、前記ラッチリングの前記外歯と係脱可能な係合歯部と、前記コントロールプレートに形成されたカム溝内を移動可能に収容される突起部と、を有するスイッチレバーと、
を有し、
前記スイッチレバーは、前記コントロールプレートの回転によって前記突起部が前記カム溝内を移動することで、前記係合歯部と前記ラッチリングの外歯とが係合可能な第1の位置と、前記係合歯部と前記外歯との係合が解除される第2の位置との間を変位可能に制御され、且つ、前記ウェビングの巻き取り完了時に、前記第2の位置に位置することで、前記ウェビングセンサレバーの作動によるエンドロックを防止し、
前記中間ギアは、外周面の一部の位相に駆動歯部を有し、
前記コントロールプレートは、それぞれ周方向に離間して外周面に設けられた複数の被駆動歯部を備え、
連続回転する前記中間ギアの前記駆動歯部が、前記複数の被駆動歯部に順次噛合して前記コントロールプレートを間欠回転させることを特徴とするシートベルト用リトラクタ。(8) フレームに回転自在に支持され、ウェビングが巻装されるスピンドルと、
前記フレームに係合することで前記スピンドルのウェビング引き出し方向の回転をロックするロック部材と、
前記スピンドルに相対回転可能に支持されると共に、前記スピンドルに対して回転遅れを生じることにより前記ロック部材を作動するステアリングホイールと、
内外周面にそれぞれ内歯及び外歯が形成され、前記フレームに固定されるベアリングプレートに回転自在に配設されたラッチリングと、
前記ラッチリングの内歯と係脱可能な位置で、前記ステアリングホイールに揺動自在に軸支され、前記ステアリングホイールのウェビング引き出し方向の回転を阻止する作動位置と、前記ステアリングホイールのウェビング引き出し方向の回転が阻止されない非作動位置との間を変位するウェビングセンサレバーと、
前記ステアリングホイールの外周面に形成された歯部と係止可能な加速度センサレバーを有し、水平方向の加速度を検出する加速度センサと、
前記スピンドルの回転と連動して回転する中間ギアと、
前記中間ギアが1回転する間の所定の位相において前記中間ギアと連動して回転することで、前記スピンドルの回転に対して間欠回転するコントロールプレートと、
前記ベアリングプレートに揺動自在に軸支され、前記ラッチリングの前記外歯と係脱可能な係合歯部と、前記加速度センサレバーに当接離脱可能な爪部と、前記コントロールプレートに形成されたカム溝内を移動可能に収容される突起部と、を有するスイッチレバーと、
を有し、
前記スイッチレバーは、前記コントロールプレートの回転によって前記突起部が前記カム溝内を移動することで、前記係合歯部と前記ラッチリングの外歯とが係合可能であるとともに、前記加速度センサレバーと前記爪部とが離脱する第1の位置と、前記係合歯部と前記外歯との係合が解除されるとともに、前記加速度センサレバーと前記爪部とが当接する第2の位置との間を変位可能に制御され、且つ、前記ウェビングの巻き取り完了時に、前記第2の位置に位置することで、前記ウェビングセンサレバー及び前記加速度センサレバーの作動によるエンドロックを防止し、
前記中間ギアは、外周面の一部の位相に駆動歯部を有し、
前記コントロールプレートは、それぞれ周方向に離間して外周面に設けられた複数の被駆動歯部を備え、
連続回転する前記中間ギアの前記駆動歯部が、前記複数の被駆動歯部に順次噛合して前記コントロールプレートを間欠回転させることを特徴とするシートベルト用リトラクタ。(9) 前記中間ギアは、前記駆動歯部と、前記コントロールプレートの前記被駆動歯部とが噛合していないときに、前記コントロールプレートの隣接する被駆動歯部間の凹状円弧部を案内する案内部を有することを特徴とする
(6)〜(8)のいずれかに記載のシートベルト用リトラクタ。
【発明の効果】
【0015】
本発明のシートベルト用リトラクタによれば、スイッチレバーは、コントロールプレートのカム溝内を移動可能に収容される突起部及び加速度センサレバーに当接離脱可能な爪部を備える。スイッチレバーは、コントロールプレートの回転によって突起部がカム溝内を移動することで、加速度センサレバーとスイッチレバーの爪部とが離脱する第1の位置と、加速度センサレバーと爪部とが当接する第2の位置との間を変位可能に制御される。スイッチレバーは、ウェビングの巻き取り完了時に、第2の位置に位置するので、加速度センサレバーの作動による加速度センサのエンドロックを防止することができる。また、コントロールプレートは、スピンドルの回転と連動して回転する中間ギアが1回転する間の所定の位相において中間ギアと連動して回転することで、スピンドルの回転に対して間欠回転するので、スピンドルとコントロールプレートとの減速比を変更することなく、第1の位置から第2の位置、また第2の位置から第1の位置へのスイッチレバーの切換えに要する中間ギアの回転角度を短く設計することができ、エンドロック防止機構の作動タイミングのばらつきを最小にすることができる。これにより、切換えタイミングを空ラッチ状態とウェビング格納状態との間で確実に設定することができる。従って、空ラッチ状態とウェビング格納状態との間でウェビングの引き出し量の差が少ない車両であっても、ウェビングのアンカー縫製によるチューニングをシートベルト装置ごとに行う必要がなくなり、コストダウンを図ることができる。
【0016】
また、本発明のシートベルト用リトラクタによれば、スイッチレバーは、コントロールプレートのカム溝内を移動可能に収容される突起部及びラッチリングの外歯と係脱可能な係合歯部を備える。スイッチレバーは、コントロールプレートの回転によって突起部がカム溝内を移動することで、係合歯部とラッチリングの外歯とが係合可能な第1の位置と、係合歯部と外歯との係合が解除される第2の位置との間を変位可能に制御される。スイッチレバーは、ウェビングの巻き取り完了時に、第2の位置に位置するので、ウェビングセンサレバーの作動によるエンドロックを防止することができる。また、コントロールプレートは、スピンドルの回転と連動して回転する中間ギアが1回転する間の所定の位相において中間ギアと連動して回転することで、スピンドルの回転に対して間欠回転するので、上記と同様に、スイッチレバーの切換えに要する中間ギアの回転角度を短く設計することができ、エンドロック防止機構の作動タイミングのばらつきを最小にすることができる。
【0017】
さらに、本発明のシートベルト用リトラクタによれば、スイッチレバーは、上述した突起部に加え、加速度センサレバーに当接離脱可能な爪部、及びラッチリングの外歯と係脱可能な係合歯部の両方を備える構成であってもよい。これにより、スイッチレバーは、コントロールプレートの回転によって突起部がカム溝内を移動することで、係合歯部とラッチリングの外歯とが係合可能であるとともに、加速度センサレバーと爪部とが離脱する第1の位置と、係合歯部と外歯との係合が解除されるとともに、加速度センサレバーと爪部とが当接する第2の位置との間を変位可能に制御される。そして、スイッチレバーは、ウェビングの巻き取り完了時に、第2の位置に位置するので、ウェビングセンサレバー及び加速度センサレバーの作動によるエンドロックを防止することができる。また、コントロールプレートは、スピンドルの回転と連動して回転する中間ギアが1回転する間の所定の位相において中間ギアと連動して回転することで、スピンドルの回転に対して間欠回転するので、上記と同様に、スイッチレバーの切換えに要する中間ギアの回転角度を短く設計することができ、エンドロック防止機構の作動タイミングのばらつきを最小にすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1実施形態)
以下、本発明に係るシートベルト用リトラクタの各実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。本実施形態のシートベルト用リトラクタは、ウェビング加速度感知手段と車体加速度感知手段とを有する緊急ロック機構と、自動ロック機構とを備える。
【0020】
図1に示すように、このシートベルト用リトラクタ1は、ウェビング(図示略)が巻装される金属製(例えば、アルミ合金製)のスピンドル10と、カバー12に収容されてスピンドル10を巻き取り方向に回転付勢するバネ式の巻取装置11と、スピンドル10を回転自在に支持する金属製のコ字状のフレーム13と、ロック部材としての金属製(例えば、鉄製)のロックドック20と、樹脂製のステアリングホイール30と、慣性体としての機能を併せ持つ樹脂製のウェビングセンサレバー40と、フレーム13に固定されるベアリングプレート60と、ベアリングプレート60に回動自在に配設されるラッチリング50と、自動ロック機構70と、スピンドル10の軸14に固定されるドライブギア81、アイドルギア82、及び中間ギア83とで構成されるギア列と、中間ギア83と連結されて間欠回転するコントロールプレート80と、緊急ロック機構を作動状態と非作動状態とに切換えるスイッチレバー90と、スイッチレバー90を付勢する付勢手段としてのリターンスプリング99と、車体の加速度を感知する車体加速度感知手段としての加速度センサ100と、ベアリングプレート60を覆うように、フレーム13に固定されるカバー部材15と、を主に備えている。
なお、中間ギア83及びコントロールプレート80は、間欠駆動機構の一つであるゼネバ機構を構成している。
【0021】
フレーム13は、スピンドル10の軸方向の中央部分を挟んで対向する左右側板13A、13Bを有し、一方の側板13Aの外側に緊急ロック機構及び自動ロック機構が配置され、他方の側板13Bの外側に巻取装置11が配置されている。スピンドル10の一端側の軸14は、ステアリングホイール30、ベアリングプレート60を貫通し、その先端にはドライブギア81が一体回転するように嵌着されている。
【0022】
フレーム13の側板13Aの円形開口の内周には、ロックドック20の爪22が係合可能な多数の内歯17が形成されている。ロックドック20は、スピンドル10の一方の端面と該端面に固着された金属製(例えば、鉄製)のセーフティプレート25との間に確保された空間に変位自在に収容され、オメガスプリング26によって爪22がフレーム13の内歯17から離れるロック解除方向に保持されている。また、ロックドック20は、ステアリングホイール30に形成されたカム孔31(
図3参照)に挿入されるカムピン21を備える。
【0023】
図3に示すように、ステアリングホイール30は、スピンドル10に相対回転可能に支持され、ロックドック20のカムピン21が係合するカム孔31と、ウェビングセンサレバー40の軸孔41に嵌合してウェビングセンサレバー40を揺動自在に支持する凸軸32と、外周面に形成された歯部34とを有している。
【0024】
カム孔31は、スピンドル10に対してステアリングホイール30が相対回転するときに、カムピン21を介してロックドック20の爪22を外方に押し出す。例えば、ウェビング引き出し時に、スピンドル10に対してステアリングホイール30が回転遅れを生じた場合に、スピンドル10とステアリングホイール30の相対回転により、ロックドック20をロック側へ作動させる。そして、外に飛び出させた爪22を、フレーム13の内歯17に噛み合わせることにより、スピンドル10をフレーム13の内歯17にロックさせ、ウェビング引き出し方向の回転を機械的にロックする。
【0025】
ウェビングセンサレバー40は、所定の慣性力を有するように従来のウェビングセンサレバーより比較的大きく形成されており、ラッチリング50の内歯52に係合可能な爪42を備え、ステアリングホイール30の凸軸32に揺動自在に嵌合している。軸孔41に対して爪42と反対側の腕43とステアリングホイール30の突片33との間には、ウェビングセンサスプリング58が装着されて爪42を内方に引っ込める方向(ラッチリング50の内歯52から離間する方向)にウェビングセンサレバー40を回転付勢している。従って、通常時には、爪42がラッチリング50の内歯52と係合しない非作動位置に保持される。即ち、ステアリングホイール30、ウェビングセンサレバー40、ウェビングセンサスプリング58は、ウェビング加速度感知手段を構成する。
【0026】
これにより、乗員の急な移動によりウェビングが引き出され、ウェビングセンサレバー40が慣性力によって回動し、ウェビングセンサレバー40の爪42が外方に突き出されて、ラッチリング50の内歯52に噛合する。これにより、ウェビング加速度感知手段は、ステアリングホイール30のウェビング引き出し方向の回転を阻止する。
【0027】
ラッチリング50は、外周面及び内周面にそれぞれ複数の外歯51及び内歯52が設けられたリング状に形成され、フレーム13に固定されるベアリングプレート60に回転自在に配設されている。なお、
図2に示すように、ステアリングホイール30の歯部34と、ラッチリング50の外歯51とは、軸方向に離間しており、且つ、外歯51は、歯部34よりも径方向内側に形成されている。
【0028】
図4に示すように、ベアリングプレート60には、軸部61、62、63、64及び65が突出して設けられている。軸部61には、アイドルギア82が回動自在に支持され、軸部62には、中間ギア83が回動自在に支持され、軸部63には、コントロールプレート80が回動自在に支持されている。また、軸部64には、スイッチレバー90が揺動自在に支持されている。軸部65には、リターンスプリング99のコイル部99aが嵌合して位置決めされている。
【0029】
そして、ドライブギア81とアイドルギア82の大歯車が噛合し、アイドルギア82の小歯車と中間ギア83が噛合し、更に中間ギア83とコントロールプレート80とが、ゼネバ機構を構成して間欠的に連結されている。
【0030】
従って、スピンドル10の回転が、ドライブギア81、アイドルギア82、中間ギア83のギア列の減速比に従って減速されて中間ギア83に伝えられる。更に、中間ギア83の回転が、ゼネバ機構を介してコントロールプレート80を間欠回転させる。
【0031】
通常のシートベルト用リトラクタでは、ウェビングの全量巻き取りに、略15回転のスピンドル10の回転が必要となるため、スピンドル10に対するコントロールプレート80の減速比は、1/20程度に設定される。即ち、ウェビングを全量引き出した状態から全量巻き取ったとき、コントロールプレート80は、約270°回転する。本実施形態の場合、中間ギア83の1回転が、ゼネバ機構によって、コントロールプレート80の1/5回転(72°)に変換されるように設定されている。即ち、本実施形態では、ドライブギア81、アイドルギア82、中間ギア83よりなるギア列の減速比は、ウェビングを全量引き出した状態から全量巻き取った状態にするときのスピンドル10の回転に対して、中間ギア83が約3.75回転するように設定される。
【0032】
次に、ゼネバ機構について説明する。
図5に示すように、中間ギア83には、コントロールプレート80側に向けて軸方向に突出する駆動ピン88と、中間ギア83の軸孔83aを中心とする略三日月状のボス89と、がコントロールプレート80と対向する中間ギア83の側面に設けられている。ボス89の外周面は、円弧面からなる案内部89aと、案内部89aを構成する円の一部が切欠かれて、軸孔83aに向かって凹となる逃げ部89bが形成されている。なお、駆動ピン88は、中間ギア83の半径の1/2よりも外径側の側面から突出している。
【0033】
コントロールプレート80は、円周方向等間隔に配置されて径方向に延びる5本の腕部96を有する略5角形に形成されている。各腕部96の側面(表面)には、径方向外方に延びる略U字形のスロット97が形成されている。また、隣接する腕部96の間の外周面は、軸孔87に向かって凹となる凹状円弧部98となっている。凹状円弧部98の曲率は、中間ギア83のボス89の案内部89aの曲率と同じに設定されており、中間ギア83のボス89の案内部89aによって案内される。
【0034】
中間ギア83及びコントロールプレート80は、それぞれ軸部62、63に支持されて回転可能である。中間ギア83が回転すると、中間ギア83の駆動ピン88が、コントロールプレート80のスロット97に嵌合して、スロット97内を摺動しながら回転し、中間ギア83が1回転するとき、コントロールプレート80を72°間欠回転させる。このとき、各腕部96の径方向外方の凸状円弧部96aは、ボス89の逃げ部89bと干渉することなく、該逃げ部89bと対向して回転するので、コントロールプレート80の回転がボス89により阻害されることはない。
【0035】
また、コントロールプレート80が72°間欠回転して駆動ピン88がスロット97から外れて離間した後は、中間ギア83が連続して回転する一方、コントロールプレート80は停止する。その際、中間ギア83は、ボス89の案内部89aが、コントロールプレート80の凹状円弧部98と嵌合しながら回転するので、コントロールプレート80の停止状態が保持される。
【0036】
図5に示すように、コントロールプレート80の側面(裏面)には、カム溝85が設けられている。カム溝85には、後述するスイッチレバー90の突起部92が収容されて、スイッチレバー90を揺動制御する。カム溝85は、コントロールプレート80の軸孔87を中心とする円弧状に形成された第1カム部85aと、第1カム部85aより大きな半径で軸孔87を中心とする円弧状に形成された第2カム部85bと、第1カム部85aと第2カム部85bとを滑らかに接続する切換部85cと、を有する。
【0037】
第1カム部85aは、スイッチレバー90の突起部92が第1カム部85a内を移動するとき、スイッチレバー90の係合歯部93が、ラッチリング50の外歯51に係止する第1の位置となるように半径が設定されている(
図8参照)。また、第2カム部85bは、スイッチレバー90の突起部92が第2カム部85b内を移動するとき、スイッチレバー90の係合歯部93が、ラッチリング50の外歯51から離間する第2の位置となるように半径が設定されている(
図9参照)。
【0038】
切換部85cは、ウェビングがスピンドル10に巻き取られた格納状態と、無着座でバックルをラッチさせた状態(空ラッチ状態)との間で切換えが行われるように位相が設定されている。更に、切換部85cは、ゼネバ機構によるコントロールプレート80の回転角速度が最も大きな位相と一致する位置に設定されている。コントロールプレート80の回転角速度が最も大きな位相とは、中間ギア83の駆動ピン88が、軸部62、63の中心を結ぶ直線L上にある位相である。
【0039】
即ち、スイッチレバー90の突起部92が、切換部85cを通過して第1カム部85aから第2カム部85bに移動することにより、ウェビングが無着座でバックルをラッチされた状態からウェビング格納状態となる間に、スイッチレバー90は、係合歯部93と外歯51とが係止した状態(第1の位置)から、該係止が解除された状態(第2の位置)に移行する。また、その逆にも作動する。また、切換部85cが、コントロールプレート80の回転角速度が最も大きな位相と一致するように設定されているので、スイッチレバー90の切り替え動作が短時間(コントロールプレート80の少ない回転)で行われ、ゼネバ機構の利点が最大限利用可能となる。
【0040】
図6に示すように、スイッチレバー90は、長手方向略中央部に設けられた孔部91と、孔部91に対して一方側において、コントロールプレート80側に突出するピン状の突起部92と、コントロールプレート80と反対側に突出する略断面3角形状の係合歯部93と、先端部に設けられた爪部94とを備える。また、スイッチレバー90には、孔部91に対して他方側に、バネ受部95が形成されている。
【0041】
スイッチレバー90は、孔部91がベアリングプレート60の軸部64に嵌合して揺動自在に軸支されている。また、突起部92は、コントロールプレート80のカム溝85に収容され、コントロールプレート80の回転に伴ってカム溝85内を移動する。これにより、スイッチレバー90は、コントロールプレート80によって制御されて揺動する。
【0042】
図4に示すように、リターンスプリング99は、コイル部99aと一対の脚部99b、99cとを備える捻りコイルバネであり、コイル部99aがベアリングプレート60の軸部65に嵌合して位置決めされ、一方の脚部99bがベアリングプレート60の突片66に支持され、他方の脚部99cがスイッチレバー90のバネ受部95に係止されている。これにより、スイッチレバー90は、リターンスプリング99の弾性力によって一方向に付勢されるので、突起部92はコントロールプレート80のカム溝85の一方の側壁86に沿って摺接し(
図5参照)、カム溝85と突起部92との隙間の有無と無関係に一方の側壁86により制御される。
【0043】
図1及び
図7に示すように、加速度センサ100は、ベアリングプレート60とカバー部材15との間に配置されるセンサホルダ101と、センサホルダ101内に格納され、水平方向の加速度に応じて変位するボール102と、軸孔105に挿通される支持軸106により回動自在に配置され、ステアリングホイール30の外周面に形成された歯部34に対してその先端歯先104が接近離間する加速度センサレバー103と、を備える。
【0044】
そして、車体加速度に応じてボール102が移動することにより、加速度センサレバー103が揺動して先端歯先104がステアリングホイール30の歯部34に係合して、ステアリングホイール30をロックする。
【0045】
また、加速度センサレバー103は、軸孔105と反対側に設けられた先端歯先104から横方向に延設された係止片107を有する。係止片107には、スイッチレバー90の爪部94が対向して配置されている。
【0046】
したがって、コントロールプレート80の回転により、スイッチレバー90の突起部92が、切換部85cを通過して第1カム部85aから第2カム部85bに移動することで、スイッチレバー90は、加速度センサレバー103と爪部94とが離脱する第1の位置から、加速度センサレバー103と爪部94とが当接する第2の位置に移行する。
【0047】
自動ロック機構70は、所定のウェビング引き出し操作を行うことで作動して通常時下においてスピンドル10のウェビング引き出し方向への回転阻止を実現する。自動ロック機構70は、スピンドル10の回転が伝達されるドライブギア81と、ベアリングプレート60に揺動自在に支持されるALR用レバー71、及びALR用レバー71に回転可能に支持される2つのALR用ギア72,74を備える自動ロック機構組立体77と、ALR用レバー71の揺動に応じて、ステアリングホイール30の歯部34と係脱するパウル76とを有する。
【0048】
ドライブギア81の側面には、扇状の第1のALR用突部81a(
図4参照)が設けられており、ALR用ギア72、74の側面には、第1のALR用突部81aと当接可能な第2のALR用突部73、第3のALR用突部75がそれぞれ設けられている。そして、所定のウェビング引き出し操作(例えば、ウェビングの全量引出し)が行われると、第1のALR用突部81aと第2のALR用突部73が当接することで、ALR用レバー71が揺動し、パウル76をステアリングホイール30に係合させ、ロック状態とする。一方、所定のウェビング巻取り操作(例えば、ウェビングの全量巻取り)が行われると、第1のALR用突部81aと第3のALR用突部75が当接することで、ALR用レバー71が先とは逆方向に揺動し、パウル76がステアリングホイール30から離脱し、ロック解除となる。
【0049】
次に、本実施形態のシートベルト用リトラクタの作用について
図8〜
図10を参照して説明する。
図8に示すように、シートベルト用リトラクタ1からウェビングが所定量引き出された状態では、スイッチレバー90は、突起部92がコントロールプレート80の第1カム部85aに収容された第1の位置にある。このとき、スイッチレバー90の係合歯部93とラッチリング50の外歯51とが係止して、ラッチリング50の回転が阻止されている。
また、スイッチレバー90の爪部94と加速度センサレバー103の係止片107は離間している。
【0050】
ここで車体に平行方向の加速度が作用すると、ボール102が移動することで加速度センサレバー103が支持軸106を中心として時計方向に回動し、先端歯先104がステアリングホイール30の歯部34に係合してステアリングホイール30の回転が停止する。スピンドル10が更に回転すると、スピンドル10とステアリングホイール30とが相対回転し、カムピン21がカム孔31に嵌合するロックドック20の爪22が外方に押し出され、フレーム13の内歯17に係合してウェビングの引き出しが阻止される。即ち、車体加速度感知手段が作動する。
【0051】
また、乗員の急な移動によりウェビングが引き出されてウェビングセンサレバー40が慣性力により揺動すると、爪42がラッチリング50の内歯52に係合してステアリングホイール30の回転が停止する。そして、スピンドル10が更に回転すると、スピンドル10とステアリングホイール30とが相対回転してロックドック20の爪22が外方に押し出され、フレーム13の内歯17に係合してウェビングの引き出しが阻止される。即ち、ウェビング加速度感知手段が作動する。
【0052】
また、
図8の状態から、
図9に示すようにウェビングがスピンドル10に巻き取られると、スピンドル10の回転は、ドライブギア81、アイドルギア82を介して中間ギア83を時計方向に回転させる。中間ギア83が1回転するごとに、中間ギア83の駆動ピン88が、コントロールプレート80のスロット97に係合して、スロット97内を移動することで、コントロールプレート80を反時計方向に72°ずつ間欠回転させる。
【0053】
図9に示すように、ウェビングの巻き取り完了直前における中間ギア83の回転により、第1カム部85aに収容されている突起部92は、切換部85cを通り第2カム部85b方向に移動する。これにより、スイッチレバー90は、反時計方向に回動して爪部94が加速度センサレバー103の係止片107に接近するとともに、係合歯部93がラッチリング50の外歯51から次第に離間する。
【0054】
係合歯部93が外歯51から離間するタイミングは、無着座でバックルがタング(いずれも図示せず)にラッチされた状態(空ラッチ状態)から全量のウェビングがスピンドル10に巻き取られた状態(ウェビング格納状態)となる間に切り換わるように設定されている。
【0055】
図10は、スイッチレバー90の切換え時(ウェビングの巻き取り完了直前における中間ギア83の回転時)における中間ギア83とコントロールプレート80との位相関係を、コントロールプレートがギア列で連続駆動される従来の駆動機構と比較して示す図である。ギア列で連続駆動される従来の機構の場合、
図10に直線Aで示すように、コントロールプレートは、中間ギアとコントロールプレートのギアの減速比に応じて減速されて一定の角速度で回転する。
【0056】
一方、コントロールプレート80がゼネバ機構で駆動される本実施形態の場合、
図10に曲線Bで示すように、コントロールプレート80は、所定の位相の間だけ駆動され、大きな角速度で所定の角度(図に示す実施例では72°)間欠回転する。なお、コントロールプレート80の角速度は、コントロールプレート80の回転角の中央付近(
図10に示す点P)で最も早く、その前後で次第に遅くなる特性(曲線B)を有する。従って、コントロールプレート80の角速度が最大となる点Pの位相と、スイッチレバー90の突起部92がカム溝85の切換部85cを通過する位置と、を一致させるようにコントロールプレート80を設計すれば、中間ギア83の最小回転角度でのスイッチレバー90の切換えが可能となり、ゼネバ機構の特性を最大に利用することができる。
【0057】
詳細には、スイッチレバー90の切換えに必要なコントロールプレート80の回転角を角度Cとすると、コントロールプレート80を角度Cだけ回転させるために必要な中間ギア83の回転角は、従来の駆動機構の場合は角度Dであるのに対して、本実施形態の場合は角度Eとなり、中間ギア83の少ない回転角度で、スイッチレバー90の切換えに必要なコントロールプレート80の回転角度が得られる。即ち、中間ギア83の少ない回転角度でスイッチレバー90の切換えが可能となる。これにより、スイッチレバー90の切換のタイミングのばらつきが小さくなり、精度のよい切換えが行われる。
【0058】
なお、
図5に示すように、スイッチレバー90がコントロールプレート80のカム溝85に制御されて揺動する際、スイッチレバー90は、リターンスプリング99によって一方向に付勢されているので、突起部92がカム溝85の一方の側壁86に押圧されており、一方の側壁86に沿って摺接する。従って、突起部92とカム溝85との間に隙間(ガタ)がある場合でも、スイッチレバー90は隙間の有無に関係なく一方の側壁86で案内される。従って、エンドロックを防止する機構が作動する切換のタイミングのばらつきが小さくなる。
【0059】
そして、ウェビングの巻き取り完了時には、
図9に示すように、スイッチレバー90の突起部92が、第2カム部85b内に収容され、スイッチレバー90は反時計方向に回動して第2の位置に移動する。爪部94が加速度センサレバー103の係止片107に当接して、スイッチレバー90が加速度センサレバー103の作動を阻止する。即ち、加速度センサ100に水平方向の加速度が作用しても加速度センサ100は作動せず、加速度センサレバー103の作動による加速度センサ100のエンドロックを防止する。また、スイッチレバー90の係合歯部93がラッチリング50の外歯51から完全に離間する。従って、ラッチリング50は、ベアリングプレート60に対して自由回転可能となる。
【0060】
この状態でウェビングセンサレバー40に慣性力が作用してウェビングセンサレバー40が時計方向に回転すると、ウェビングセンサレバー40の爪42がラッチリング50の内歯52に係止するが、ラッチリング50はベアリングプレート60に対して自由に回転可能となっているので、ステアリングホイール30の回転が阻止されることはない。従って、ウェビング加速度感知手段は作動せず、ウェビングの巻き取り完了時に、ウェビングセンサレバー40の作動によるエンドロックが防止される。
【0061】
このように、エンドロック防止機構の作動と非作動との切換えを、1つのスイッチレバー90を制御することで行うことができ、シートベルト用リトラクタ1の機構が簡素化される。更に、スイッチレバー90の切換えは、ゼネバ機構の作用により短期間で行われるので、切換のタイミングのばらつきが小さくなる。
【0062】
以上説明したように、本実施形態のシートベルト用リトラクタ1によれば、スイッチレバー90は、コントロールプレート80のカム溝85内を移動可能に収容される突起部92及び加速度センサレバー103に当接離脱可能な爪部94を備える。スイッチレバー90は、コントロールプレート80の回転によって突起部92がカム溝85内を移動することで、加速度センサレバー103とスイッチレバー90の爪部94とが離脱する第1の位置と、加速度センサレバー103と爪部94とが当接する第2の位置との間を変位可能に制御される。スイッチレバー90は、ウェビングの巻き取り完了時に、第2の位置に位置するので、加速度センサレバー103の作動による加速度センサ100のエンドロックを防止することができる。また、コントロールプレート80は、スピンドル10の回転と連動して回転する中間ギア83が1回転する間の所定の位相において中間ギア83と連動して回転することで、スピンドル10の回転に対して間欠回転するので、スピンドル10とコントロールプレート80との減速比を変更することなく、第1の位置から第2の位置、また第2の位置から第1の位置へのスイッチレバー90の切換えに要する中間ギア83の回転角度を短く設計することができ、エンドロック防止機構の作動タイミングのばらつきを最小にすることができる。これにより、スイッチレバー90の切換えタイミングを空ラッチ状態とウェビング格納状態との間で確実に設定することができる。このため、空ラッチ状態とウェビング格納状態との間でウェビングの引き出し量の差が少ない車両であっても、ウェビングのアンカー縫製によるチューニングをシートベルト装置ごとに行う必要がなくなり、コストダウンを図ることができる。
【0063】
また、スイッチレバー90は、コントロールプレート80のカム溝85内を移動可能に収容される突起部92及びラッチリング50の外歯51と係脱可能な係合歯部93を備える。スイッチレバー90は、コントロールプレート80の回転によって突起部92がカム溝85内を移動することで、係合歯部93とラッチリング50の外歯51とが係合可能な第1の位置と、係合歯部93と外歯51との係合が解除される第2の位置との間を変位可能に制御される。スイッチレバー90は、ウェビングの巻き取り完了時に、第2の位置に位置するので、ウェビングセンサレバー40の作動によるエンドロックを防止することができる。また、コントロールプレート80は、スピンドル10の回転と連動して回転する中間ギア83が1回転する間の所定の位相において中間ギア83と連動して回転することで、スピンドル10の回転に対して間欠回転するので、上記と同様に、スイッチレバー90の切換えに要する中間ギア83の回転角度を短く設計することができ、エンドロック防止機構の作動タイミングのばらつきを最小にすることができる。
【0064】
また、スイッチレバー90は、コントロールプレート80のカム溝85内を移動可能に収容される突起部92、加速度センサレバー103に当接離脱可能な爪部94、及びラッチリング50の外歯51と係脱可能な係合歯部93を備える。スイッチレバー90は、コントロールプレート80の回転によって突起部92がカム溝85内を移動することで、係合歯部93とラッチリング50の外歯51とが係合可能であるとともに、加速度センサレバー103と爪部94とが離脱する第1の位置と、係合歯部93と外歯51との係合が解除されるとともに、加速度センサレバー103と爪部94とが当接する第2の位置との間を変位可能に制御される。そして、スイッチレバー90は、ウェビングの巻き取り完了時に、第2の位置に位置するので、ウェビングセンサレバー40及び加速度センサレバー103の作動によるエンドロックを防止することができる。また、コントロールプレート80は、スピンドル10の回転と連動して回転する中間ギア83が1回転する間の所定の位相において中間ギア83と連動して回転することで、スピンドル10の回転に対して間欠回転するので、上記と同様に、スイッチレバー90の切換えに要する中間ギア83の回転角度を短く設計することができ、エンドロック防止機構の作動タイミングのばらつきを最小にすることができる。
【0065】
また、中間ギア83は、コントロールプレート80側に向けて軸方向に突出する駆動ピン88を備え、コントロールプレート80は、駆動ピン88が係脱可能で、径方向に沿って形成された複数のスロット97を備えており、中間ギア83とコントロールプレート80とは、ゼネバ機構を構成するので、コントロールプレート80が高角速度で回ることができ、スイッチレバー90の切換えに要する中間ギア83の回転角度をより短く設計することができる。
【0066】
また、駆動ピン88は、中間ギア83の半径の1/2よりも外径側の側面から突出しているので、コントロールプレート80の回転角度が大きくなり、スイッチレバー90の切換えに要する中間ギア83の回転角度をさらに短く設計することができる。
【0067】
また、中間ギア83は、駆動ピン88がコントロールプレート80のスロット97から離間して回転している間、コントロールプレート80の隣接するスロット97間の凹状円弧部98を案内する案内部89aを持ったボス89を有するので、コントロールプレート80が回転することなく、コントロールプレート80の停止状態を保持することができる。
【0068】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態のシートベルト用リトラクタを
図11〜
図13を参照して説明する。本実施形態のシートベルト用リトラクタは、コントロールプレートを間欠回転させる間欠駆動機構が異なる以外は、本発明の第1実施形態のシートベルト用リトラクタと同様であるので、同一部分には同一符号又は相当符号を付して説明を簡略化又は省略する。
【0069】
本実施形態の間欠駆動機構は、間欠ギアから構成されている。間欠ギアは、
図13に示すように、外周面の一部の位相にのみ駆動歯部111が設けられ、他の位相は円弧面からなる案内部112aによって形成された小歯車112を有する中間ギア83Aと、周方向に離間して外周面に設けられた複数の被駆動歯部121を有するコントロールプレート80Aと、を備える。周方向に隣接する被駆動歯部121間の外周面は、軸孔122に向かって凹状円弧部123となっている。凹状円弧部123の曲率は、小歯車112の案内部112aの曲率と同じに設定されている。
【0070】
そして、中間ギア83Aが回転すると、小歯車112の駆動歯部111は、コントロールプレート80Aの複数の被駆動歯部121に順次噛合してコントロールプレート80Aを間欠回転させる。また、小歯車112の駆動歯部111と、コントロールプレート80Aの被駆動歯部121とが噛合していないときには、小歯車112の案内部112aが、コントロールプレート80Aの凹状円弧部123に嵌合して、コントロールプレート80Aの停止状態を保持する。
【0071】
図11及び
図12に示すように、本実施形態のコントロールプレート80Aは、45°間隔で形成された8箇所の被駆動歯部121を備える。従って、コントロールプレート80Aは、中間ギア83Aが1回転するごとに45°ずつ間欠回転する。第1実施形態のシートベルト用リトラクタ1と同様に、スピンドル10に対するコントロールプレート80Aの減速比を、1/20程度に設定した場合、ドライブギア81、アイドルギア82、中間ギア83Aよりなるギア列の減速比は、ウェビングを全量引き出した状態から全量巻き取った状態にするときのスピンドル10の回転(15回転)に対して、中間ギア83Aが約6回転するように設定される。
【0072】
即ち、ウェビングを全量引き出した状態から全量巻き取った状態にすると、コントロールプレート80Aは、45°ずつ間欠回転しながら約270°回転するように設定されている。なお、コントロールプレート80Aは、中間ギア83Aと噛合してギア駆動されるので、間欠回転中におけるコントロールプレート80Aの回転角速度は一定である点で第1実施形態のシートベルト用リトラクタ1と異なる。
【0073】
コントロールプレート80Aの間欠回転は、突起部92がカム溝85に収容されているスイッチレバー90を揺動させる。即ち、
図11に示すように、スイッチレバー90の突起部92が、第1カム部85a内を移動するとき、スイッチレバー90は第1の位置にあり、スイッチレバー90の係合歯部93がラッチリング50の外歯51に係止すると共に、スイッチレバー90の爪部94が加速度センサレバー103の係止片107から離間している。
【0074】
また、
図12に示すように、スイッチレバー90の突起部92が、第2カム部85b内を移動するとき、スイッチレバー90は第2の位置にあり、スイッチレバー90の係合歯部93が、ラッチリング50の外歯51から離間すると共にスイッチレバー90の爪部94が加速度センサレバー103の係止片107に係合する。
【0075】
そして、スイッチレバー90の突起部92が、切換部85cを通過して第1カム部85aから第2カム部85bに移動することにより、ウェビングが無着座でバックルをラッチされた状態からウェビング格納状態となる間に、スイッチレバー90は、第1の位置から第2の位置に移行する。
【0076】
このように、スイッチレバー90の切換えは、中間ギア83Aの1回転する間の360°より小さい所定の位相において行われるので、スイッチレバー90の切換のタイミングのばらつきが小さくなり、精度のよい切換えが行われる。
【0077】
図14は、変形例の間欠ギアの側面図であり、コントロールプレート80Aは、60°間隔で形成された6箇所の被駆動歯部121を備える。従って、コントロールプレート80Aは、中間ギア83Aが1回転するごとに60°ずつ間欠回転する。この場合、ドライブギア81、アイドルギア82、中間ギア83Aよりなるギア列の減速比は、ウェビングを全量引き出した状態から全量巻き取った状態にするときのスピンドル10の回転(15回転)に対して、中間ギア83Aが約4.5回転するように設定されている。即ち、ウェビングを全量引き出した状態から全量巻き取った状態にすると、コントロールプレート80Aは、60°ずつ間欠回転しながら270°回転するように設定されている。
【0078】
以上説明したように、本実施形態のシートベルト用リトラクタ1によれば、中間ギア83Aは、外周面の一部の位相に駆動歯部111を有し、コントロールプレート80Aは、それぞれ周方向に離間して外周面に設けられた複数の被駆動歯部121を備え、連続回転する中間ギア83Aの駆動歯部111が、複数の被駆動歯部121に順次噛合してコントロールプレート80Aを間欠回転させるので、スイッチレバー90の切換えに要する中間ギア83の回転角度を短く設計することができ、切換えのばらつきが低減する。
【0079】
また、中間ギア83Aは、駆動歯部111と、コントロールプレート80Aの被駆動歯部121とが噛合していないときに、コントロールプレート80Aの隣接する被駆動歯部121間の凹状円弧部123を案内する案内部112aを有するので、コントロールプレート80Aが回転することなく、コントロールプレート80Aの停止状態を保持することができる。
【0080】
また、本実施形態のコントロールプレート80Aは、カム溝85とスロット97がそれぞれ表裏面に形成される第1実施形態のコントロールプレート80に比べて、薄肉に設計しやすい。
その他の構成及び作用効果については、上記第1実施形態のシートベルト用リトラクタ1と同様である。
【0081】
尚、本発明は、前述した各実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。