特許第6449891号(P6449891)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6449891
(24)【登録日】2018年12月14日
(45)【発行日】2019年1月9日
(54)【発明の名称】安定化蛍光粒子を含むポリマー中間層
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20181220BHJP
   C08L 29/14 20060101ALI20181220BHJP
   C08K 5/09 20060101ALI20181220BHJP
   C08K 5/12 20060101ALI20181220BHJP
【FI】
   C03C27/12 D
   C03C27/12 N
   C08L29/14
   C08K5/09
   C08K5/12
【請求項の数】10
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2016-542036(P2016-542036)
(86)(22)【出願日】2014年9月9日
(65)【公表番号】特表2016-537480(P2016-537480A)
(43)【公表日】2016年12月1日
(86)【国際出願番号】US2014054664
(87)【国際公開番号】WO2015038497
(87)【国際公開日】20150319
【審査請求日】2017年8月30日
(31)【優先権主張番号】61/877,152
(32)【優先日】2013年9月12日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/465,803
(32)【優先日】2014年8月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503316891
【氏名又は名称】ソルティア・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100112634
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 美奈子
(72)【発明者】
【氏名】デリコ,ジョン・ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】トンプソン,ベンジャミン・ブリストル
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ウェンジー
【審査官】 松浦 裕介
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/004162(WO,A1)
【文献】 特開2000−178045(JP,A)
【文献】 米国特許第03434915(US,A)
【文献】 特開昭61−095053(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第102174238(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第101108908(CN,A)
【文献】 特表2012−528778(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0068083(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第102458835(CN,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0076473(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第103228594(CN,A)
【文献】 特開2004−068013(JP,A)
【文献】 特開2012−066954(JP,A)
【文献】 特開平08−119687(JP,A)
【文献】 特開平11−106595(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC C08L 1/00 − 101/14
C08K 3/00 − 13/08
C03C 27/00 − 29/00
DB名 CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)ポリ(ビニルブチラール)、(2)可塑剤、(3)発光顔料及び(4)pK10未満であるカルボン酸を含有してなるポリ(ビニルブチラール)樹脂組成物からなる合わせガラスの中間層であって、
前記(3)発光顔料は、下記式で表される化合物であり、
R−OOC−Ar(OH)−COO−R
(前記式において、Rは、独立して置換基を有してもよいアルキル基、アリル基、又はアリール基であり、Arはアリール基であり、xは1〜4の自然数である)
前記中間層は、黄色度が12未満であり
前記中間層は400〜700nmの蛍光を発するものである、合わせガラスの中間層。
【請求項2】
(1)ポリ(ビニルブチラール)100重量部に対して、(2)可塑剤、(3)発光顔料0.1〜1重量部、及び(4)pK10未満であるカルボン酸を含有してなるポリ(ビニルブチラール)樹脂組成物からなる合わせガラスの中間層であって、
前記(3)発光顔料は、下記式で表される化合物であり、
R−OOC−Ar(OH)−COO−R
(前記式において、Rは、独立して置換基を有してもよいアルキル基、アリル基、又はアリール基であり、Arはアリール基であり、xは1〜4の自然数である)
前記中間層は、黄色度が12未満であり、
前記中間層は400〜700nmの蛍光を発するものである、合わせガラスの中間層。
【請求項3】
前記(4)カルボン酸が構造式:−COOH(式中、は、水素原子、アルキル基、又はアリール基である)で表される化合物である、請求項1又は2に記載の合わせガラスの中間層。
【請求項4】
(3)発光顔料が構造式:
【化1】
(式中、それぞれのRはエチル基である)
を有する、請求項1〜3のいずれかに記載の合わせガラスの中間層。
【請求項5】
(3)発光顔料が、構造式:
【化2】
を有するジエチル2,5−ジヒドロキシテレフタレート(DDTP)を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の合わせガラスの中間層。
【請求項6】
(4)カルボン酸が3〜8のpKを有する、請求項1〜5のいずれかに記載の合わせガラスの中間層。
【請求項7】
(4)カルボン酸が2−エチルヘキサン酸である、請求項1〜6のいずれかに記載の合わせガラスの中間層。
【請求項8】
前記(4)カルボン酸を、前記(3)発光顔料100重量部に対して、5重量部以上配合してなるものである、請求項1〜7のいずれかに記載の合わせガラスの中間層。
【請求項9】
前記ポリ(ビニルブチラール)樹脂組成物からなる合わせガラスの中間層が、前記(1)、(2)及び(3)のみを含有するポリ(ビニルブチラール)樹脂組成物からなる合わせガラスの中間層に比べて、より低い黄色度を有するものである、請求項1〜8のいずれかに記載の合わせガラスの中間層。
【請求項10】
前記合わせガラスの中間層は、2つのガラスの間に積層されて窓又はヘッドアップディスプレイを有する風防ガラスを形成している、請求項1〜9のいずれかに記載の合わせガラスの中間層。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[001]本発明は、多層パネルのためのポリマー中間層、及び少なくとも1つのポリマー中間層シートを有する多層パネルの分野に関する。具体的には、本発明は、ポリマー中間層において用いるための安定化蛍光粒子、及び安定化蛍光粒子を含むポリマー中間層の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
[002]多層パネルは、一般に、基材(例えばガラス、ポリエステル、ポリアクリレート、又はポリカーボネートであるが、これらに限定されない)の2つのシートを含み、その間に1以上のポリマー中間層がサンドイッチされているパネルである。積層多層ガラスパネルは、建築用窓の用途、並びに自動車及び航空機の窓において一般的に用いられている。これらの用途は、一般的には積層安全ガラスと呼ばれる。積層安全ガラスにおける中間層の主要な機能は、ガラスに加えられる衝撃又は力から生起するエネルギーを吸収し、力が加えられてガラスが破損する場合であってもガラスの層を結合した状態で保持し、ガラスが鋭利な小片に砕けるのを阻止することである。更に中間層は、中でも、ガラスに非常により高い遮音等級を与え、UV光及び/又はIR光の透過を減少させ、及び/又は関連する窓の美的魅力を増大させることもできる。中間層は、単一の層、2以上の単一の層の組合せ、共押出した多層、少なくとも1つの単一の層と少なくとも1つの多層の組み合わせ、或いは多層シートの組合せであってよい。光起電用途に関しては、中間層の主要な機能は、商業用途及び家庭用途において電気を生成及び供給するのに用いる光起電ソーラーパネルを封入することである。
【0003】
[003]積層安全ガラス又は多層ガラスパネルは、自動車、鉄道、及び航空機などの輸送産業で多くの異なる用途において用いられている。積層安全ガラスにおいて用いるポリマー中間層はまた、輸送用車両において、例えば自動車のような乗物の運転者の目の高さにおいて計器群のイメージを与えることができる自動車用ヘッドアップディスプレイ(HUD)システムなどにおいて、或いは航空機の操縦室において重要な構成部品としても用いられている。かかるディスプレイによって、運転者は、重要なダッシュボード情報を視覚的に入手しながら正面の道路に集中することが可能になる。かかるヘッドアップディスプレイシステムにおいて用いられる中間層の1つのタイプは、垂直断面がくさび形状の中間層である。くさび形状の中間層は、ヘッドアップディスプレイに必要な風防ガラスを通る正確な光の動きを与えるために用いられる。くさび形状の中間層は正確な光の動きを与えるのに有効であるが、くさび形状の中間層は、時に、断面にわたる異なる厚さのために加工中に取り扱うのが困難である。コアの上に巻きつける場合には、ロールの一方の側(厚さが最も大きい箇所)は他の側よりも大きく、或いは切断した風防ガラスブランクを積層する場合には、積層体の一方の側はより厚いくさびの部分のために他の側よりも厚いか又は高い。
【0004】
[004]ヘッドアップディスプレイはまた、航空用途においても広く用いられている。パイロットの直接視野に取り付けられているシステムは、それら自体及び他の航空機に関する最も重要なデータを表示する。軍事部門において確立されてよく利用されているこれらのシステムはまた、民生部門、特に自動車部門において多くの使用可能性を有している。而して、ナビゲーション装置からの速度、先行する自動車からの距離、又は方向データを、ちょうど運転者の目の高さにおいて表示することができる。運転者は装置を見ながら交通状況を監視することができないので、これらの可能性により自動車の交通安全性が明らかに向上する。例えば、高速道路上における自動車の増加した速度によって、自動車による「ブラインド」走行距離は大きくなる可能性があり、増加した事故率が引き起こされる可能性がある。ヘッドアップディスプレイを有する風防ガラスにおいて用いるための改良された中間層に対する必要性が存在する。
【0005】
[005]風防ガラス及び他の多層ガラスパネル用途のための中間層は、一般に、ポリ(ビニルブチラール)のようなポリマー樹脂(又は複数の樹脂)を1種類以上の可塑剤及び他の添加剤を混合して、押出など(しかしながらこれに限定されない)の当業者に公知の任意の適用可能なプロセス又は方法によって混合物をシートに溶融加工することによって製造されている。2以上の層を含む多層中間層に関しては、共押出及び積層のようなプロセスによって複数の層を結合させることができる。場合によっては、種々の他の目的で他の更なる成分を加えることができる。中間層シートが形成された後に、通常はそれを回収し、下記において議論するように、輸送及び貯蔵のため、及びその後に多層ガラスパネルにおいて用いるためにロール加工する。
【0006】
[006]意図されるポリマー中間層は、ポリ(ビニルブチラール)(PVB)のようなポリ(ビニル)アセタール樹脂、ポリウレタン(PU)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン、ポリオレフィン、エチレンアクリレートエステル共重合体、エチレンブチルアクリレート共重合体、シリコーンエラストマー、エポキシ樹脂、及び上記の考えられる任意の熱可塑性樹脂から誘導される任意の酸共重合体及びアイオノマーを含むが、これらに限定されない。多層積層体としては、多層ガラスパネル及び多層ポリマーフィルムを挙げることができる。幾つかの態様においては、多層積層体中の複数のポリマーフィルムを一緒に積層して多層フィルム又は中間層を与えることができる。幾つかの態様においては、これらのポリマーフィルムには、金属、シリコーン、又は当業者に公知の他の適用可能な被覆のような被覆を与えることができる。当業者に公知のように、接着剤を用いて、多層ポリマーフィルムを構成する個々のポリマーフィルムを一緒に積層することができる。
【0007】
[007]以下において、一般に中間層と組み合わせた多層ガラスパネルを製造する方法の簡単な概説を与える。まず、少なくとも1つのポリマー中間層シート(単一又は多層)を2つの基材の間に配置し、過剰の中間層を端部から切除して組立体を形成する。複数のポリマー中間層シート、又は複数の層を有するポリマー中間層シート(或いは両方の組み合わせ)を2つの基材の間に配置して複数のポリマー中間層を有する多層ガラスパネルを形成することは稀ではない。次に、当業者に公知の適用可能なプロセス又は方法によって、例えばニップローラー、真空バッグ、又は他の脱気メカニズムを用いて組立体から空気を除去する。更に、当業者に公知の任意の方法によって、中間層を部分的に基材に圧着する。最後の工程においては、最終的な一体構造を形成するために、オートクレーブ処理など(しかしながらこれに限定されない)の当業者に公知の高温・高圧積層プロセスによってか、或いは当業者に公知の他のプロセスによって、この予備接着をより永久的にする。
【0008】
[008]多層積層体ガラスパネルの製造における問題の1つは、風防ガラス又はパネルのような最終的な一体型構造体又は積層体において種々の光学欠陥が存在することである。多層ガラスパネルは、ガラスパネルを通したはっきりとした視覚を可能にするために、光学欠陥を含まず、良好な明澄度(又は低い曇り値)を有することが必要である。更に、多層ガラスパネルは審美的に美しいことが必要であり、即ちガラスパネルは黄色のような高いレベルの望ましくない色を有していてはならない。ガラスパネルに新しい特性及び機能性を加える場合には、高い光学明澄度の基準を維持することが重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
[009]曇り又は明澄度の欠如及び増加した色若しくは黄色度のような光学品質欠陥は、多層ガラスパネルの分野における共通の問題である。良好な光学品質は、多層ガラスパネルが風防ガラスのようなより高いレベルの光学的又は視覚的品質を必要とする用途において用いられるものである場合には、特に重要である。これは、ヘッドアップディスプレイ又は他の機構が用いられる風防ガラス又は他の多層ガラスパネルに関しては更により重要である。風防ガラス及び他のガラス用途、特にヘッドアップディスプレイと共に用いるものにおいて用いる多層ガラスパネルを改良する試みにおいて、改良されたヘッドアップディスプレイを与える新しい技術が開発された。技術を向上させる1つの試みは、風防ガラスにおいて蛍光又は発光顔料を用いることである。蛍光又は発光顔料をベースとするヘッドアップディスプレイを用いることは、より容易でより効率的なポリマー中間層の製造、取扱い、及び貯蔵、並びに改良された積層能力などの、くさび形状の中間層を用いるヘッドアップディスプレイを凌ぐ潜在的な有利性を有する。しかしながら、蛍光顔料を用いると、中間層の上及び/又は中における顔料の不均一な分布、劣った光学品質(即ち積層体における増加した色及び曇り)、視覚的欠陥、劣った(過度に高いか又は過度に低い)接着力、増加した製造コスト(即ち、多層中間層の製造に関連するコスト、及び顔料のコスト)など(しかしながらこれらに限定されない)の他の好ましくない犠牲がもたらされる。したがって、ヘッドアップディスプレイ用途において用いることができ、優れた光学的特性及び他の特性を有する中間層、例えば従来の中間層の他の光学的、機械的、及び性能特性の低下なしに、色又は黄色性の形成及び曇りの増加(或いは明澄度の低下)に抵抗するか又はこれを阻止する中間層を開発する必要性が当該技術において存在する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[010]当該技術におけるこれら及び他の問題のために、中でも、蛍光を発し、約12未満の黄色度(YI)値を有するポリマー中間層をここに記載する。一態様においては、ポリ(ビニルブチラール);可塑剤;発光顔料;及び約10未満のpKを有するカルボン酸添加剤を含み;ポリマー中間層は(ASTM−D1003−95又はその同等の規格によって測定して)12未満のYIを有し、そしてポリマー中間層は約400〜700nmの波長において蛍光を発する、ガラス用のポリマー中間層を開示する。幾つかの態様においては、カルボン酸添加剤は、構造式:R−COH(式中、Rは、水素、アルキル基、又はアリール基である)を有する。幾つかの態様においては、可塑剤は、少なくとも約1.460の屈折率を有する少なくとも1種類の高屈折率可塑剤を含む。
【0011】
[011]他の態様においては、ポリ(ビニルブチラール);可塑剤;約0.1〜約1phrの発光顔料;及び約10未満のpKを有するカルボン酸添加剤を含み;ポリマー中間層は12未満のYIを有し、そしてポリマー中間層は約400〜700nmの波長において蛍光を発する、ガラス用のポリマー中間層を開示する。幾つかの態様においては、可塑剤は、少なくとも約1.460の屈折率を有する少なくとも1種類の高屈折率可塑剤を含む。
【0012】
[012]他の態様においては、ポリ(ビニルブチラール);可塑剤;約0.1〜約1phrの構造式:R−OOC−Ar(OH)−COO−R(式中、それぞれのRは、独立して少なくとも1つの炭素原子を有する置換基であり、同一又は異なっていてよく、Arはアリール基であり、xは約1〜4である)を有する顔料である発光顔料;及び約10未満のpKを有するカルボン酸添加剤を含み;ポリマー中間層は12未満のYIを有し、そしてポリマー中間層は約400〜700nmの波長において蛍光を発する、ガラス用のポリマー中間層を開示する。幾つかの態様においては、可塑剤は、少なくとも約1.460の屈折率を有する少なくとも1種類の高屈折率可塑剤を含む。
【0013】
[013]また、多層パネルも開示する。多層パネルは、少なくとも1つの剛性基材、及びここに開示するポリマー中間層又は多層ポリマー中間層を含む。このパネルは、改良された光学特性を有する。
【0014】
[014]また、多層中間層が、ポリ(ビニルブチラール)、可塑剤、発光顔料、及び約10未満のpKを有するカルボン酸添加剤を含み、ポリマー中間層は(ASTM−D1003−95又はその同等の規格によって測定して)12未満のYIを有し、そしてポリマー中間層は約400〜700nmの波長において蛍光を発する、ここに開示するポリマー中間層の製造方法も開示する。ポリマー中間層は多層ポリマー中間層であってよい。
【0015】
[015]幾つかの態様においては、剛性基材(又は複数の基材)はガラスである。他の態様においては、パネルに光起電セルを更に含ませることができ、中間層は光起電セルを封入する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】[016]図1は、蛍光強度に対する蛍光顔料濃度の効果を示すグラフである。
図2】[017]図2は、励起波長における透過率に対する蛍光顔料濃度の効果を示すグラフである。
図3】[018]図3は、異なる添加剤を有する配合物に関するYI及び曇り度%の比較を示す棒グラフである。
図4】[019]図4は、蛍光に対する異なる添加剤の効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[020]熱可塑性樹脂、少なくとも1種類の蛍光又は発光顔料、及びカルボン酸添加剤を用いると、溶融押出した際に、他の物理及び光学特性を犠牲にすることなく、蛍光顔料を有するがカルボン酸添加剤を有しない従来の中間層と比べて減少した色又はより低い黄色度(より少ない変色)、並びに減少したか又はより少ない曇りを有する中間層が生成する。この点に関し、所望の吸収及び発光範囲を有するように選択した蛍光顔料と、約2〜12、又は約2〜10、又は約3〜8、又は約3〜5、又は少なくとも2、又は少なくとも3、又は12以下、又は11以下、又は10以下、又は9以下、又は8以下、又は7以下、又は6以下、或いは5以下のpK範囲内で選択した添加剤を組み合わせると、色又は黄色性、或いは黄色度の変化によって測定される優れた光学特性を有する中間層が得られる。
【0018】
[021]光学品質の他の指標は、例えばHunterLab UltraScan XEによって測定される、ほぼ明澄な試験片によって散漫散乱する光の量の指標である曇りの量(又はパーセント)である。HunterLab UltraScan XEは、ASTM−D1003−95測定手順と同等の手順を用いる。本発明の中間層は、他の性能又は機械的特性を犠牲にすることなく良好な光学品質を有し、例えばくさび型ポリマー中間層よりも改良された製造効率、並びにより容易な貯蔵及び輸送のような他の利益を与える。
【0019】
[022]中でも、熱可塑性樹脂、少なくとも1種類の蛍光又は発光顔料、及びカルボン酸添加剤を含む中間層は、良好な光学特性を有し、及び他の特性が許容しうるように他の特性の変化又は減少が最小である。一態様においては、ガラス用のポリマー中間層は、ポリ(ビニルブチラール);可塑剤;発光顔料;及び約10未満のpKを有するカルボン酸添加剤を含み;ポリマー中間層は12未満のYIを有し、そしてポリマー中間層は400〜700nmの波長において蛍光を発する。幾つかの態様においては、ポリマー中間層は、10未満又は9未満のYIを有する。幾つかの態様においては、カルボン酸添加剤は、構造式:R−COH(式中、Rは、水素、アルキル基、又はアリール基である)を有する。幾つかの態様においては、発光顔料は、構造式:R−OOC−Ar(OH)−COO−R(式中、それぞれのRは、独立して少なくとも1つの炭素原子を有する置換基であり、同一又は異なっていてよく、Arはアリール基であり、xは約1〜4である)を有する顔料である。幾つかの態様においては、Rは10以下の炭素原子を有する置換基であり、xは1又は2である。一態様においては、発光顔料は、構造式:
【0020】
【化1】
【0021】
(式中、それぞれのRはエチル基である)
を有する。幾つかの態様においては、発光顔料は、構造式:
【0022】
【化2】
【0023】
を有するジエチル2,5−ジヒドロキシテレフタレート(DDTP)を含む。幾つかの態様においては、カルボン酸添加剤は約3〜約8のpKを有する。一態様においては、カルボン酸添加剤は2−エチルヘキサン酸である。幾つかの態様においては、ポリマー中間層は、約10未満のpKを有するカルボン酸添加剤を有しない同じ組成を有するポリマー中間層よりも小さいYIを有する。
【0024】
[023]他の態様においては、ガラス用のポリマー中間層は、ポリ(ビニルブチラール);可塑剤;約0.1〜約1phrの発光顔料;及び約10未満のpKを有するカルボン酸添加剤を含み;ポリマー中間層は12未満のYIを有し、そしてポリマー中間層は約400〜700nmの波長において蛍光を発する。幾つかの態様においては、ポリマー中間層は、10未満又は9未満のYIを有する。一態様においては、カルボン酸添加剤は、発光顔料の少なくとも約5重量%の量で存在する。一態様においては、ポリマー中間層は、約10未満のpKを有するカルボン酸添加剤を有しない同じ組成を有するポリマー中間層よりも小さいYIを有する。一態様においては、カルボン酸添加剤は、構造式:R−COH(式中、Rは、水素、アルキル基、又はアリール基である)を有する。一態様においては、発光顔料は、構造式:R−OOC−Ar(OH)−COO−R(式中、それぞれのRは、独立して少なくとも1つの炭素原子を有する置換基であり、同一又は異なっていてよく、Arはアリール基であり、xは約1〜4である)を有する顔料である。幾つかの態様においては、Rは10以下の炭素原子を有する置換基であり、xは1又は2である。一態様においては、発光顔料は、構造式:
【0025】
【化3】
【0026】
(式中、それぞれのRはエチル基である)
を有する。幾つかの態様においては、発光顔料は、構造式:
【0027】
【化4】
【0028】
を有するジエチル2,5−ジヒドロキシテレフタレート(DDTP)を含む。一態様においては、カルボン酸添加剤は約3〜約8のpKを有する。一態様においては、カルボン酸添加剤は2−エチルヘキサン酸である。
【0029】
[024]他の態様においては、ガラス用のポリマー中間層は、ポリ(ビニルブチラール);可塑剤;約0.1〜約1phrの構造式:R−OOC−Ar(OH)−COO−R(式中、それぞれのRは、独立して少なくとも1つの炭素原子を有する置換基であり、同一又は異なっていてよく、Arはアリール基であり、xは約1〜4である)を有する顔料である発光顔料;及び約10未満のpKを有するカルボン酸添加剤を含み;ポリマー中間層は12未満のYIを有し、そしてポリマー中間層は約400〜700nmの波長において蛍光を発する。幾つかの態様においては、ポリマー中間層は、10未満又は9未満のYIを有する。
【0030】
[025]一態様においては、ポリマー中間層を2つの剛性基材の間に積層して、窓又は風防ガラスを形成する。一態様においては、ポリマー中間層は、約10未満のpKを有するカルボン酸添加剤を有しない同じ組成を有するポリマー中間層よりも小さいYIを有する。幾つかの態様においては、Rは10以下の炭素原子を有する置換基であり、xは1又は2である。
【0031】
[026]ポリマー中間層は、しばしば多くの異なる機能のための多くの異なる添加剤を含む。例えば、染料又は顔料のような着色剤を加えて、中間層の全部又は一部の色を変化させることができる。接着力制御剤を加えて、ポリマー中間層がガラス又は他の基材に対して有する接着力のレベルの制御を助けることができる。抗ブロッキング剤、赤外(IR)吸収剤、紫外(UV)吸収剤のような他の添加剤、並びに当業者に公知の多くの他の添加剤を含ませることができる。蛍光又は発光顔料をポリマー中間層に加えて、特定の照明条件下で特別な特性を与えて、例えばヘッドアップディスプレイを与えることができる。蛍光又は発光顔料(並びに任意の他の添加剤)は、ポリマー中間層の1以上の層に加えることができる。
【0032】
[027]中間層に蛍光顔料を加える従来の試みが、中間層シート上に溶媒中の蛍光顔料の溶液を被覆又は噴霧することなどの種々の被覆又は噴霧方法によって行われている。中間層中における蛍光顔料のより均一な分布を与える試みにおいては、ポリマー中間層を押出す前に蛍光顔料を原材料に加えて、ポリマー中間層全体にわたる蛍光顔料のより均一な混合及び分布を可能にした。蛍光顔料は、例えば(所望に応じて他の添加剤と一緒に)可塑剤に加えることができ、可塑剤及び添加剤を混合し、この可塑剤と(所望に応じて)添加剤の混合物を次に樹脂と混合して押出す。押出すと、下記において更に記載するように、顔料によって中間層の増加した色又は黄変がもたらされたことが注目された。
【0033】
[028]本明細書において用いる「蛍光」という用語は、規定の波長において光放射線を吸収した後の(ストークスシフトによる)染料又は顔料による光の放射を指す。本明細書において用いる「蛍光」及び「発光」という用語は、本明細書の記載の全体にわたって互換的に用いることができる。比較すると、非蛍光又は非発光性の染料又は顔料は、規定の波長においてエネルギーを吸収してそれを再放出しないが、その代わりにそれを熱として吸収する(即ち広帯域の放射線)。
【0034】
[029]中間層の所望の特性又は所望の用途に大きく悪影響を与え、例えばポリマー中間層中における他の成分を阻害し、例えばUV吸収剤を阻害し、接着力レベルを増加又は減少させ、変色を引き起すことなどを起こさない限りにおいて、任意の好適な蛍光顔料又は染料を用いることができる。「染料」及び「顔料」という用語は、発光又は蛍光材料を指す場合には互換的に用いることができる。好適な顔料及び染料の例としては、有機及び/又は無機の発色性又は発光性化合物が挙げられるが、これらに限定されない。発光には、蛍光及び/又はリン光プロセス(即ち、電磁放射線による励起、及び電磁放射線の放出)が含まれる。幾つかの態様においては、放出される放射線は励起放射線と異なる波長を有し、幾つかの態様においては、放出される放射線は励起放射線よりも高い波長を有する。
【0035】
[030]本明細書において用いる「短波長紫外スペクトル」とは200nm〜300nmの領域の波長を意味し、「長波長紫外スペクトル」とは300nmより高く約400nmまでの波長を意味し、「可視スペクトル」とは約400〜約700nmの領域の波長を意味し、「近赤外スペクトル」とは約700nmより高く約3000nm以下の波長を意味する。発光成分はまた、所望の場合には可視スペクトル及び近赤外スペクトルなどにおける複数の発光応答が可能なように選択することもできる。
【0036】
[031]幾つかの態様においては、発光顔料は、350nm〜450nm又は390nm〜420nmの範囲の局所励起極大、及び400nm〜800nm又は430nm〜600nmの範囲の局所発光極大を有する。
【0037】
[032]通常は、発光効果は、励起源(例えばランプ又は他の機器)が存在している時間中、或いはその後短時間、例えば一秒未満以内にのみ観察することができる蛍光効果であってよい。或いは幾つかの用途においては、活性化光エネルギーを停止した後の短時間の間に観察することができるリン光効果が望ましい可能性がある。活性化光エネルギーを停止した後に観察されるかかる効果は、しばしば「残光」と呼ばれる。かかる残光時間は、約10分間より長く約200分間以下又はそれ以上、例えば約15分間〜約120分間、或いは約15分間〜約60分間であってよい。
【0038】
[033]発光顔料は、中間層において用いられるポリ(ビニルブチラール)、可塑剤、及び他の添加剤と適合性でなければならない。幾つかの態様においては、発光顔料はポリ(ビニルブチラール)と共に使用して押出すことができなければならない。
【0039】
[034]一態様においては、発光顔料には、ヒドロキシアルキルテレフタレート、例えば式:R−OOC−Ar(OH)−COO−R(式中、それぞれのRは、独立して少なくとも1つの炭素原子を有する置換基であり、同一又は異なっていてよく、Arはアリール基,例えばフェニル環であり、xは約1〜4である)を有するヒドロキシアルキルテレフタレートを含ませることができる。幾つかの態様においては、Rは10以下の炭素原子を有する置換基であり、xは1又は2である。
【0040】
[035]好適な置換基は少なくとも1つの炭素原子を有する。例としては、アルキル、アリル、及びアリール基、或いは所望に応じて塩素、フッ素、又は任意の他の置換基のような置換基を有する置換アリル、アルキル、又はアリール基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
[036]一態様においては、ヒドロキシアルキルテレフタレートの一般的な構造式は
【0042】
【化5】
【0043】
(式中、R基は上記に規定した通りである)
であってよい。一態様においては、発光顔料は、構造式:
【0044】
【化6】
【0045】
(式中、それぞれのRはエチル基である)
を有するジエチル2,5−ジヒドロキシテレフタレート(DDTP)を含む。Rに関する他の置換基を有する顔料を用いることもできる。
【0046】
[037]発光顔料にはまた、以下の顔料:ベンゾピラン類、ナフトピラン類、2H−ナフトピラン類、3H−ナフトピラン類、2H−フェナントロピラン類、3H−フェナントロピラン類、フォトクロミック樹脂、クマリン類、キサンチン類、ナフタル酸誘導体、オキサゾール類、スチルベン類、スチリル類、ペリレン類、ランタニド類、及び/又はこれらの混合物の1つのような第2の顔料を含ませることもできる。
【0047】
[038]幾つかの態様においては、発光顔料は、樹脂100ポンド(45.4kg)あたり約0.1〜約1ポンド(約45.4〜約454g)(phr)、又は0.2〜約0.6phr、又は少なくとも約0.1phr、又は少なくとも約0.2phr、或いは2phr未満の量でポリマー中間層中に存在する。用途によって、所望に応じて他の量を用いることができる。光学明澄度が所望の態様においては、発光顔料は、中間層中に含ませた場合に普通光条件下で視認できるものであってはならない。別の言い方をすると、発光顔料は、通常の昼光条件下において中間層、或いは多層ガラスパネルの透明度又は可視光透過率に悪影響を与えてはならない。
【0048】
[039]本発明者らは、発光顔料を他の原材料と混合し、次に通常の押出温度において押出すと、得られるポリマー中間層は、発光顔料を有しないポリマー中間層よりも高い色又は黄色度及び高い曇り度レベルを有することを見出した。変色又は高い黄色度を減少又は阻止するために、本発明者らは、カルボン酸添加剤のような少量の添加剤を組成物中に加えると、発光顔料の変色及びそれによりもたらされるより高いYIが減少し、許容できる色及び曇り度レベルなどの良好な光学品質を有するポリマー中間層が生成することを見出した。
【0049】
[040]カルボン酸添加剤は、ポリ(ビニルブチラール)及び他の添加剤と適合性である当業者に公知の任意の好適なカルボン酸であってよい。幾つかの態様においては、3未満のpKを有するカルボン酸はポリマーの分解を引き起こす可能性があるので、カルボン酸としては約3より高いpKを有するカルボン酸が特に有用である。幾つかの態様においては、約10より高いようなより高いpK値を有する酸は望ましくない黄色度を減少せず、及び幾つかの場合においては黄色度は実際には増加したので、約10以下のpKを有するカルボン酸が特に好適である。幾つかの態様においては、カルボン酸は、約3〜約10又は約3〜約8のpKを有する。
【0050】
[041]好適なカルボン酸は、式:−C(=O)OH(通常は−COOH又は−COHと記載される)を有する少なくとも1つのカルボキシル官能基(又はカルボキシ基)を有する任意の酸である。カルボン酸は、構造:R−COOH又はR−COH(ここで、Rは、水素、任意のアルキル又はアリール基、或いは当該技術において公知の他の通常の置換基である)を有するものであってよい。一態様においては、RはCH(CHCH(C)であってよい。カルボン酸は、有機酸の最も通常的なタイプの1つである。カルボン酸の例としては、ギ酸(H−COOH)、酢酸(CH−COOH)、メリト酸、安息香酸、シュウ酸、サリチル酸、2−エチルヘキサン酸(CH(CHCH(C)COH)、アジピン酸、マレイン酸、プロピオン酸、タルタル酸、コハク酸、及び当業者に公知の多くの他のものが挙げられるが、これらに限定されない。他の材料との適合性に応じて任意のカルボン酸を用いることができ、幾つかの態様においては、約3〜約10のpK、或いは約3〜8、又は約3〜5、又は少なくとも3、又は少なくとも4、又は10以下、又は9未満、或いは8未満のpKを有するカルボン酸を用いる。
【0051】
[042]用いるカルボン酸の量は、その量が、中間層における黄変を減少又は阻止して(酸添加剤を有しない組成物と比べて増加した黄色度を阻止し)、及び中間層における曇りの形成を減少又は阻止するのに有用であるように選択される。幾つかの態様においては、用いるカルボン酸の量は、発光顔料の量の約5〜約300重量%、又は発光顔料の量の約10〜約200重量%、又は約15〜約50重量%、又は発光顔料の少なくとも5重量%、又は少なくとも10重量%、又は少なくとも15重量%、又は300重量%以下、又は200重量%以下、或いは100重量%以下の範囲であってよい。一態様においては、用いるカルボン酸の量は、用いる発光顔料の量のほぼ半分(即ち50重量%)であるが、当業者であれば、添加剤、用途、及び所望の特性に応じて最も有効な量を決定することができる。
【0052】
[043]本出願全体にわたって用いられる幾つかの技術用語は、発明のより良好な理解を与えるように説明される。本明細書において用いる「ポリマー中間層シート」、「中間層」、及び「ポリマー溶融体シート」という用語は、一般に単一層のシート又は多層中間層を示すことができる。「単一層シート」とは、名称が暗示するように、1つの層として押出された単一のポリマー層である。これに対して、多層中間層には、別々に押出された複数の層、共押出された複数の層、又は別々に共押出された複数の層の任意の組み合わせなどの複数の層を含ませることができる。而して、多層中間層には、例えば、一緒に結合された2以上の単一層シート(「複数層シート」);一緒に共押出された2以上の層(「共押出シート」);一緒に結合された2以上の共押出シート;少なくとも1つの単一層シートと少なくとも1つの共押出シートの組み合わせ;及び少なくとも1つの複数層シートと少なくとも1つの共押出シートの組み合わせを含めることができる。本発明の種々の態様においては、多層中間層は、互いに直接接触して配置されている少なくとも2つのポリマー層(例えば、単一層又は共押出された複数層)を含み、それぞれの層は下記においてより完全に詳説するようにポリマー樹脂を含む。
【0053】
[044]本明細書において用いる「スキン層」とは一般に中間層の外側層を指し、「コア層」とは一般に1つ又は複数の内部層を指す。而して、1つの代表的な態様は、スキン層/コア層/スキン層である。しかしながら、更なる態様は、2つのみの層又は3つより多い層(例えば4、5、6、又は10以下の個々の層)を有する中間層を包含することに留意すべきである。更に、用いる任意の多層中間層は、組成、厚さ、又は層の位置などを操作することによって変化させることができる。例えば、1つの三層ポリマー中間層シートにおいては、2つの外側層又はスキン層には、ポリ(ビニルブチラール)(PVB)樹脂を可塑剤又は複数の可塑剤の混合物と共に含ませることができ、一方、内部層又はコア層には、同じか又は異なるPVB樹脂又は異なる熱可塑性材料を可塑剤及び/又は複数の可塑剤の混合物と共に含ませることができる。而して、スキン/コア/スキン層を有する態様においては、多層中間層シートのスキン層及び1つ又は複数のコア層は、同じ熱可塑性材料又は異なる熱可塑性材料で構成することができることが意図される。任意の層に、所望に応じて当該技術において公知の更なる添加剤を含ませることができる。
【0054】
[045]本明細書において用いる「硬質層」又は「より硬質の層」とは、一般に他の層よりも硬質又はより剛性であり、他の層よりも概して少なくとも2℃高いガラス転移温度を有する層を指す。本明細書において用いる「軟質層」又は「より軟質の層」とは、一般に他の層よりも軟質であり、他の層よりも概して少なくとも2℃低いガラス転移温度を有する層を指す。スキン層/コア層/スキン層構造を有する多層中間層において、幾つかの態様においては、スキン層はより硬質であってよく、コア層はより軟質であってよく、一方、他の態様においては、スキン層はより軟質であってよく、コア層はより硬質であってよい。
【0055】
[046]下記に記載する態様はPVBであるポリマー樹脂に関するが、ポリマーは多層パネルにおいて用いるのに好適な任意のポリマーであってよいことが当業者に理解されるであろう。通常のポリマーとしては、PVB、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、エチレン酢酸ビニル共重合体、上記の組合せなどが挙げられるが、これらに限定されない。PVB、エチレン酢酸ビニル共重合体、及びポリウレタンは、一般に中間層のために有用なポリマーであり;PVBは、蛍光又は発光顔料を含む本発明の中間層と合わせて用いると、ヘッドアップディスプレイを有する風防ガラスにおいて用いるのに特に好適である。
【0056】
[047]改良された光学品質及び減少した黄色度を有する中間層が生成するように選択される発光顔料及びカルボン酸を添加することを議論する前に、中間層(一般的な中間層及び本発明の中間層の両方)及びその形成において見られる幾つかの通常の成分を議論する。
【0057】
[048]PVB樹脂は、公知のアセタール化プロセスによって、ポリビニルアルコール(PVOH)を酸触媒の存在下でブチルアルデヒドと反応させ、分離し、安定化し、樹脂を乾燥させることによって製造される。かかるアセタール化プロセスは、例えば米国特許2,282,057号明細書及び2,282,026号明細書、並びにVinyl Acetal Polymers, Encyclopedia of Polymer Science & Technology, 3版, vol.8, p.381-399, B.E. Wade (2003)(これらの全ての開示事項を参照として本明細書中に包含する)において開示されている。樹脂は、種々の形態で、例えばSolutia Inc.(Eastman Chemical Companyの子会社)からButvar(登録商標)樹脂として商業的に入手できる。
【0058】
[049]本明細書において用いる残留ヒドロキシル含量(PVOHとして計算)とは、加工を完了した後にポリマー鎖上に残留しているヒドロキシル基の量を指す。例えば、PVBは、ポリ(酢酸ビニル)をPVOHに加水分解し、次にPVOHをブチルアルデヒドと反応させることによって製造することができる。ポリ(酢酸ビニル)を加水分解するプロセスにおいては、通常は、全てのアセテート側基がヒドロキシル基に転化するわけではない。更に、ブチルアルデヒドとの反応では、通常は、全てのヒドロキシル基がアセタール基に転化するわけではない。したがって、いかなる最終ポリ(ビニルブチラール)樹脂においても、通常は、残留アセテート基(ビニルアセテート基として)及び残留ヒドロキシル基(ビニルヒドロキシル基として)がポリマー鎖上の側基として存在する。本明細書において用いる残留ヒドロキシル含量は、ASTM−1396によって重量%基準で測定される。
【0059】
[050]種々の態様においては、ポリ(ビニルブチラール)樹脂は、PVOHとして計算して約8〜約35重量%、又は約13〜約30重量%、約9〜約22重量%、又は約15〜約22重量%のヒドロキシル基、或いは幾つかの態様においては、PVOHとして計算して約17.75〜約19.85重量%のヒドロキシル基を含む。樹脂にはまた、ポリビニルエステル、例えばアセテートとして計算して、15重量%未満、13重量%未満、11重量%未満、9重量%未満、7重量%未満、5重量%未満の残留エステル基、又は1重量%未満の残留エステル基を含ませることもでき、残りはアセタール、例えばブチルアルデヒドアセタールであるが、場合によっては他のアセタール基、例えば2−エチルヘキサナールアセタール基、又はブチルアルデヒドアセタールと2−エチルヘキサナールアセタール基の混合物である(例えば米国特許5,137,954号明細書(その全ての開示事項を参照として本明細書中に包含する)を参照)。
【0060】
[051]種々の態様において、中間層が3層のような多層中間層である場合には、1つ又は複数のスキン層及び1つ又は複数のコア層において用いるポリ(ビニルブチラール)樹脂の残留ヒドロキシル含量は、所望の場合には、特定の性能特性を与えるために相違させることができる。例えば、1つ又は複数のコア層に関する樹脂には、PVOHとして計算して約8〜約18重量%、約9〜約16重量%、又は約9〜約14重量%の残留ヒドロキシル基を含ませることができる。例えば、1つ又は複数のスキン層に関する樹脂には、PVOHとして計算して約13〜約35重量%、約13〜約30重量%、又は約15〜約22重量%、或いは幾つかの態様に関しては約17.25〜約22.25重量%の残留ヒドロキシル基を含ませることができる。幾つかの態様においては、スキン層及びコア層において用いる樹脂は逆転させることができる(即ち、コア層により高いレベルの残留ヒドロキシル基を含ませることができる)。また、1つ又は複数のコア層或いは1つ又は複数のスキン層、或いは1つ又は複数のスキン層及び1つ又は複数のコア層の両方に関する樹脂に、ポリビニルエステル、例えばアセテートとして計算して、20重量%未満、15重量%未満、13重量%未満、11重量%未満、9重量%未満、7重量%未満、5重量%未満の残留エステル基、又は1重量%未満の残留エステル基を含ませることもでき、残りは、アセタール、例えばブチルアルデヒドアセタールであるが、場合によっては他のアセタール基、例えば2−エチルヘキサナールアセタール基、又はブチルアルデヒドアセタールと2−エチルヘキサナールアセタールの混合物である。
【0061】
[052]所定のタイプの可塑剤に関し、ポリマー中における可塑剤の相溶性は、概してポリマーのヒドロキシル含量によって決定される。より大きい残留ヒドロキシル含量を有するポリマーは、通常は、減少した可塑剤相溶性又は容量と相関している。これとは逆に、より低い残留ヒドロキシル含量を有するポリマーは、通常は、増加した可塑剤相溶性又は容量をもたらす。一般に、ポリマーの残留ヒドロキシル含量と可塑剤相溶性/容量の間のこの相関を操作及び利用して、適切な量の可塑剤をポリマー樹脂に加えることを可能にし、複数の中間層の間の可塑剤含量の差を安定に維持することを可能にすることができる。
【0062】
[053]本発明のPVB樹脂(又は複数の樹脂)は、通常は、小角レーザー光散乱を用いてサイズ排除クロマトグラフィーによって測定して50,000ダルトン以上、又は約50,000〜500,000、又は約70,000〜約500,000ダルトン、或いは約80,000〜約250,000ダルトンの分子量を有する。本明細書において用いる「分子量」という用語は、重量平均分子量を意味する。
【0063】
[054]本発明の中間層において種々の接着力制御剤(ACA)を用いることができる。中間層配合物中のACAは、ガラスへのシートの接着力を制御して、ガラス積層体の衝撃に対するエネルギー吸収性を与える。本発明の中間層の種々の態様においては、中間層に、樹脂100部あたり約0.003〜約0.15部のACA;樹脂100部あたり約0.01〜約0.10部のACA;及び樹脂100部あたり約0.01〜約0.04部のACAを含ませることができる。かかるACAとしては、米国特許5,728,472号明細書(その全ての開示事項を参照として本明細書中に包含する)に開示されているACA、残留酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、マグネシウムビス(2−エチルブチレート)、及び/又はマグネシウムビス(2−エチルヘキサノエート)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
[055]最終生成物におけるその性能を向上させ、幾つかの更なる特性を中間層に与えるために、他の添加剤を中間層中に導入することができる。かかる添加剤としては、当業者に公知の他の添加剤の中でも、染料、顔料、安定剤(例えば紫外線安定剤)、酸化防止剤、抗ブロッキング剤、難燃剤、IR吸収剤又は遮断剤(例えば酸化スズインジウム、酸化スズアンチモン、六ホウ化ランタン(LaB)、及び酸化タングステンセシウム)、加工助剤、流動向上添加剤、潤滑剤、耐衝撃性改良剤、造核剤、熱安定剤、UV吸収剤、UV安定剤、分散剤、界面活性剤、キレート剤、カップリング剤、接着剤、プライマー、強化添加剤、及び充填剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0065】
[056]本発明の中間層の種々の態様においては、中間層には、約15〜約100phr(樹脂100部あたりの部)の全可塑剤を含ませることができる。全可塑剤含量は上記のように示されるが、中間層が多層中間層である場合には、1つ又は複数のスキン層或いは1つ又は複数のコア層中の可塑剤含量は全可塑剤含量と異なっていてよい。更に、米国特許7,510,771号明細書(その全ての開示事項を参照として本明細書中に包含する)において開示されているように、平衡状態におけるそれぞれの層の可塑剤含量はそれぞれの残留ヒドロキシル含量によって定まるので、1つ又は複数のスキン層及び1つ又は複数のコア層は異なる可塑剤のタイプ及び可塑剤含量を有していてよい。例えば、平衡においては、中間層は2つのスキン層を含んでいてよく、スキン層の合計厚さがコア層のものに等しい場合に約54.3phrの中間層に関する全可塑剤量のためには、それぞれは38phrの可塑剤を有し、コア層は75phrの可塑剤を有していてよい。本発明において用いる可塑剤又は中間層中の任意の他の成分の量は、重量/重量基準の樹脂100部あたりの部(phr)として測定することができる。例えば、30gの可塑剤を100gのポリマー樹脂に加える場合には、得られる可塑化されたポリマーの可塑剤含量は30phrになる。本発明において用いられるように、中間層の可塑剤含量が与えられている場合には、可塑剤含量は、中間層を製造するのに用いた溶融体中の可塑剤のphrに関して求められる。
【0066】
[057]幾つかの態様において、可塑剤は、20より少なく、15より少なく、12より少なく、又は10より少ない炭素原子の炭化水素セグメントを有する。これらの中間層において用いるのに好適な可塑剤としては、中でも多塩基酸又は多価アルコールのエステルが挙げられる。好適な可塑剤としては、例えば、トリエチレングリコールジ(2−エチルヘキサノエート)(3GEH)、テトラエチレングリコールジ(2−エチルヘキサノエート)、トリエチレングリコールジ(2-エチルブチレート)、トリエチレングリコールジヘプタノエート、テトラエチレングリコールジヘプタノエート、ジヘキシルアジペート、ジオクチルアジペート、ヘキシルシクロヘキシルアジペート、ジイソノニルアジペート、ヘプチルノニルアジペート、ジブチルセバケート、及びこれらの混合物が挙げられる。幾つかの態様においては、特に有用な可塑剤は3GEHである。
【0067】
[058]所望に応じて他の可塑剤を用いることもできる。軟質又はコア層のような1以上の層の屈折率を増加させて1つ又は複数の他の層の屈折率に近接させることによって、複数の層(例えば硬質(又はスキン)層と軟質(又はコア)層)の間の屈折率の差を最小にして、それによって多層中間層において色斑の量を最小にすることができる。複数の層の1つの屈折率を増加させる1つの方法は、高屈折率可塑剤を用いることである。本明細書において用いる「高屈折率可塑剤」とは、少なくとも約1.460の屈折率を有する可塑剤である。3GEHのような1つの従来の通常用いられている可塑剤の屈折率は約1.442である。上記に列記した従来の可塑剤の屈折率は、約1.442〜約1.449である。用いることができる高い屈折率を有する可塑剤の例としては、ポリアジペート(約1.460〜約1.485のRI);エポキシド化大豆油のようなエポキシド(約1.460〜約1.480のRI);フタレート及びテレフタレート(約1.480〜約1.540のRI);ベンゾエート(約1.480〜約1.550のRI);及び他の特別な可塑剤(約1.490〜約1.520のRI)が挙げられるが、これらに限定されない。ポリ(ビニルブチラール)樹脂の屈折率は、約1.485〜1.495である。
【0068】
[059]高屈折率可塑剤の例としては、中でも多塩基酸又は多価アルコールのエステル、ポリアジペート、エポキシド、フタレート、テレフタレート、ベンゾエート、トルエート、メリテート、及び他の特別な可塑剤が挙げられるが、これらに限定されない。好適な可塑剤の例としては、ジプロピレングリコールジベンゾエート、トリプロピレングリコールジベンゾエート、ポリプロピレングリコールジベンゾエート、イソデシルベンゾエート、2−エチルヘキシルベンゾエート、ジエチレングリコールベンゾエート、プロピレングリコールジベンゾエート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジベンゾエート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールベンゾエートイソブチレート、1,3−ブタンジオールジベンゾエート、ジエチレングリコールジ−o−トルエート、トリエチレングリコールジ−o−トルエート、ジプロピレングリコールジ−o−トルエート、1,2−オクチルジベンゾエート、トリ−2−エチルヘキシルトリメリテート、ジ−2−エチルヘキシルテレフタレート、ビスフェノールAビス(2−エチルヘキサノエート)、エトキシル化ノニルフェノール、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。幾つかの態様においては、高屈折率可塑剤の例は、ジプロピレングリコールジベンゾエート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジベンゾエート、及びトリプロピレングリコールジベンゾエートである。幾つかの態様においては、本組成物は1種類の高屈折率可塑剤を含む。幾つかの態様においては、本組成物は、複数の高屈折率可塑剤のブレンド、又は高屈折率可塑剤と従来の可塑剤(高い屈折率を有しない)のブレンドを含む。
【0069】
[060]可塑剤は、ポリマーの鎖の間にそれら自体を埋封し、それらを離隔させ(「自由体積」を増加させ)、したがってポリマー樹脂のガラス転移温度(T)を大きく(通常は0.5〜4℃/phr)低下させ、材料をより軟質にすることによって機能する。この点に関し、中間層中の可塑剤の量を調節して、ガラス転移温度(T)に影響を与えることができる。ガラス転移温度(T)は、中間層のガラス状態からゴム状態への転移を示す温度である。一般に、より多い量の可塑剤を装填すると、より低いTがもたらされる。従来の中間層は、一般に、音響(ノイズ減少)中間層に関する約−5℃〜0℃乃至ハリケーン及び航空機用中間層用途に関する約45℃の範囲のTを有する。幾つかの態様に関して特に有用なTは約25℃〜約45℃の範囲であり、又は他の態様に関しては、多層中間層の幾つかの態様に関して特に有用なTは、スキンに関しては約25℃〜約45℃、1つ又は複数のコア層に関しては約−2℃〜約10℃の範囲である。
【0070】
[061]中間層のガラス転移温度はまた中間層の硬質性にも相関し、一般にガラス転移温度がより高いと中間層はより硬質になる。一般に、30℃以上のガラス転移温度を有する中間層は、風防ガラス強度を増加させる。他方において、軟質の中間層(一般に30℃より低いガラス転移温度を有する中間層によって特徴付けられる)は、音響減衰効果(即ち音響特性)に寄与する。本発明の中間層は、約25℃〜約45℃、或いは幾つかの態様においては、スキンに関しては約25℃〜約45℃、及び1つ又は複数のコア層に関しては約−2℃〜約10℃のガラス転移温度を有する。
【0071】
[062]更に、本明細書において記載するポリマー中間層シートは、多層パネル(例えばガラス積層体又は光起電モジュール或いはソーラーパネル)において用いることができるポリマー中間層シートの製造の当業者に公知の任意の好適なプロセスによって製造することができると意図される。例えば、ポリマー中間層シートは、溶液キャスト、圧縮成形、射出成形、溶融押出、メルトブロー、又は当業者に公知のポリマー中間層シートを作成及び製造するための任意の他の手順によって形成することができると意図される。更に、複数のポリマー中間層を用いる態様においては、これらの複数のポリマー中間層は、共押出、ブローンフィルム、ディップコーティング(浸漬塗工法)、溶液コーティング、ブレード、パドル、エアナイフ、印刷、パウダーコーティング(粉末塗装)、スプレーコーティング、又は当業者に公知の他のプロセスによって形成することができると意図される。当業者に公知のポリマー中間層シートを製造するための全ての方法が、本明細書において記載するポリマー中間層シートを製造するために可能な方法として意図されるが、本明細書では、押出及び共押出プロセスによって製造されるポリマー中間層シートに焦点を当てている。本発明の最終多層ガラスパネル積層体及び光起電モジュールは、当該技術において公知のプロセスを用いて形成される。
【0072】
[063]一般に、その殆どの基本的な意味において、押出は、一定の断面形状の物体を生成させるために用いられるプロセスである。これは、最終製品のために所望の断面のダイを通して材料を押出すか又は引き出すことによって行う。
【0073】
[064]一般に、押出プロセスにおいては、上記に記載した任意の樹脂、可塑剤、及び他の添加剤を含む熱可塑性樹脂及び可塑剤を予め混合して押出機装置中に供給する。着色剤及びUV抑制剤のような添加剤(液体、粉末、又はペレット形態)がしばしば用いられ、これらは押出機装置に到達する前に熱可塑性樹脂又は可塑剤中に混合することができる。これらの添加剤は熱可塑性ポリマー樹脂中に導入され、得られるポリマー中間層シートを延伸することによって、ポリマー中間層シートの幾つかの特性、及び最終多層ガラスパネル製品(又は光起電モジュール)におけるその性能が向上する。
【0074】
[065]押出機装置においては、熱可塑性原材料及び可塑剤の粒子、並びに上記に記載の任意の他の添加剤を更に混合及び溶融させて、温度及び組成が概して均一な溶融体を得る。溶融体が押出機装置の終端部に達したら、溶融体を押出機ダイ中に送り出す。押出機ダイは、最終ポリマー中間層シート製品にその外形を与える熱可塑性材料押出プロセスの構成要素である。一般に、ダイは、溶融体がダイから排出される円筒形の外形から生成物の最終外形形状に均一に流れるように設計される。連続的な外形が存在する限りにおいて、ダイによって最終ポリマー中間層シートに複数の形状を与えることができる。
【0075】
[066]特に本出願の目的のためには、押出ダイによって溶融体が連続的な外形に成形された後の状態のポリマー中間層は、「ポリマー溶融体シート」と呼ぶ。プロセスのこの段階においては、押出ダイによって熱可塑性樹脂に特定の外形形状が与えられて、そのようにしてポリマー溶融体シートが形成される。ポリマー溶融体シートは常に高粘稠であり、概して溶融状態にある。ポリマー溶融体シートにおいては、溶融体はシートが概して完全に「固化」する温度には未だ冷却されていない。而して、ポリマー溶融体シートが押出ダイから排出された後は、一般に現在用いられている熱可塑性材料押出プロセスにおける次の工程は、冷却装置によってポリマー溶融体シートを冷却することである。従来用いられているプロセスにおいて用いられている冷却装置としては、スプレージェット、ファン、冷却浴、及び冷却ローラーが挙げられるが、これらに限定されない。冷却工程は、ポリマー溶融体シートを概して均一な非溶融冷却温度のポリマー中間層シートに固化させるように働く。ポリマー溶融体シートとは対比的に、このポリマー中間層シート溶融状態ではなく、高粘稠ではない。むしろ、これは固化された最終形態の冷却されたポリマー中間層シート製品である。本出願の目的のために、この固化及び冷却されたポリマー中間層は、「ポリマー中間層シート」と呼ぶ。
【0076】
[067]押出プロセスの幾つかの態様においては、共押出プロセスを用いることができる。共押出は、ポリマー材料の複数の層を同時に押出すプロセスである。一般に、このタイプの押出は、一定の体積の吐出量の異なる粘度又は他の特性の異なる熱可塑性樹脂溶融体を、溶融し、共押出ダイを通して供給して所望の最終形態にするために2以上の押出機を用いる。共押出プロセスにおける押出ダイから排出される複数のポリマー層の厚さは、一般に、押出ダイを通る溶融体の相対速度を調節すること、及びそれぞれの溶融した熱可塑性樹脂材料を処理する個々の押出機の寸法によって制御することができる。
【0077】
[068]一般に、ポリマー中間層シートの厚さ又はゲージは、約15〜100ミル(約0.38〜約2.54mm)、約15ミル〜60ミル(約0.38〜約1.58mm)、約20ミル〜約50ミル(約0.26〜1.45mm)、及び約15ミル〜約30ミル(約0.38mm〜約0.76mm)の範囲である(多層中間層のスキン層及びコア層は、約2ミル〜約28ミルの厚さを有する)。
【0078】
[069]上述したように、本発明の中間層は、単一層シート又は多層シートとして用いることができる。種々の態様においては、本発明の中間層(単一層シートとしてか、或いは多層シートとしてのいずれか)は、多層パネル中に導入することができる。
【0079】
[070]本発明において用いる多層パネルには、ガラス、アクリル樹脂、又はポリカーボネートのような単一の基材を含ませることができ、その上にポリマー中間層シートが配置され、最も通常的にはポリマー中間層の上にポリマーフィルムが更に配置される。ポリマー中間層シートとポリマーフィルムとの組み合わせは、当該技術において通常は二重層(bilayer)と呼ばれる。二重層構造を有する通常の多層パネルは、(ガラス)/(ポリマー中間層シート)/(ポリマーフィルム)であり、ここでポリマー中間層シートには上述したように複数の中間層を含ませることができ、中間層の少なくとも1つは安定化蛍光粒子を含む。ポリマーフィルムは、平滑で薄くて剛性の基材を提供し、これはポリマー中間層シート単独によって通常得られるものよりも良好な光学特性を与え、性能向上層として機能する。ポリマーフィルムは、ポリマーフィルムそれ自体は必要な貫入抵抗及びガラス保持特性を与えないが、赤外吸収特性のような性能の向上を与えるという点で、本発明において用いるポリマー中間層シートと異なる。ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)は最も通常的に用いられるポリマーフィルムである。
【0080】
[071]更に、多層パネルはソーラーパネルとして当該技術において通常的に知られているものであってよく、このパネルは、この用語が当業者に理解されているように、1つ又は複数のポリマー中間層によって封入されている光起電セルを更に含む。かかる場合においては、中間層はしばしば光起電セルの上に積層され、(ガラス)/(ポリマー中間層)/(光起電セル)/(ポリマー中間層)/(ガラス又はポリマーフィルム)のような構造を有する。
【0081】
[072]本発明の中間層は、最も通常的には、2つの基材、好ましくは1対のガラスシート(或いはポリカーボネート又はアクリル樹脂のような当該技術において公知の他の剛性材料)を、2つの基材の間に配置される中間層と共に含む多層パネルにおいて用いられる。かかる構造の例は(ガラス)/(ポリマー中間層シート)/(ガラス)であり、ここではポリマー中間層シートに上述の多層中間層を含ませることができる。これらの多層パネルの例はいかなるようにも限定することは意図しておらず、当業者であれば本発明の中間層を用いて上記に記載のもの以外の数多くの構造を形成することができることを容易に認識するであろう。
【0082】
[073]通常のガラス積層プロセスは次の工程:(1)2つの基材(例えばガラス)及び中間層を組立体にし;(2)IR放射材又は対流手段によって組立体を短時間加熱し;(3)組立体を、第1の脱気のために加圧ニップロール中に通し;(4)組立体に対して約70℃〜約120℃への2回目の加熱を行って、中間層の端部を封止するのに十分な一時的接着を組立体に与え;(5)組立体を第2の加圧ニップロール中に送って、中間層の端部を更に封止して更なる取扱いを可能にし;そして(6)組立体を、135℃〜150℃の間の温度及び150psig〜200psig(1.14MPa〜1.48MPa)の間の圧力において約30〜90分間オートクレーブ処理する;工程を含む。
【0083】
[074]当該技術において公知であり、商業的に実施されている中間層−ガラスの界面の脱気(工程2〜5)において用いるための他の手段としては、空気を除去するために真空を用いる真空バッグ及び真空リングプロセスが挙げられる。
【0084】
[075]ここに開示するポリマー中間層を説明するために用いられる1つのパラメーターは明澄度であり、これは曇り値又は曇り度(曇り度%)を測定することによって求められる。材料のフィルム又はシートを通過することによって散乱した光は、材料を通して物体を観察すると曇っているか又はくすんでいる領域を生成する可能性がある。而して、曇り値は、試料によって散乱した光を入射光に対して定量化したものである。曇り度に関する試験は、Hunter Associates(Reston, VA)から入手できるモデルD25のようなヘイズメーターを用い、ASTM−D1003−61(1977年再認可)手順Aによって、光源Cを用いて2°の観察角度で行う。本発明の中間層は、約5%未満、約3%、約2%、約1%、約1%未満、又は約0.5%未満の曇り度を有する。本発明の中間層はまた、明澄な(非着色の)中間層に関して(HunterLab UltraScan XE上で測定して)少なくとも70%の最小透過レベル(%T)も有する。着色又は原料着色された中間層に関しては、%Tは所望に応じてより高くすることができる。
【0085】
[076]ポリマーシートの黄色度(YI)は、2.3mmの明澄なガラスの2つの試験片の間に30ゲージのシート試料を積層(及びオートクレーブ処理)することによって、HunterLab UltraScan XEを用い、ASTM法D1925(光源C、観察角度2°)にしたがって、可視スペクトルにおける分光測色法による光透過率から測定した。本発明の種々の態様においては、ポリマーシートは12以下の黄色度を有することができる。
【0086】
[077]蛍光は、Ocean Opticsの365nmのLED光源を用いて測定した。強度は、データを採取するためにSpectraSuiteソフトウエアを用いて、約365nm及び約490nmにおいてカウント数で測定した。
【0087】
[078]パンメル接着力は、ここに開示するポリマー中間層を説明するために用いる他のパラメーターである。パンメル接着力試験は世界中で広く用いられており、30年間以上にわたる標準的なSolutiaの手順である。これは、積層体構造中の中間層に対するガラスの接着力レベルを測定する。ガラスへの中間層の接着力は、ガラス−中間層構造体の耐衝撃性及び長期間安定性に大きな影響を与える。この試験においては、積層体を0°F(−18℃)に冷却し、1ポンド(約0.45kg)のハンマーを用いて、鋼板上において45°の角度で手動で殴打する。次に試料を室温にし、次に中間層に接着していない全ての破砕されたガラスを除去する。中間層に接着して残ったガラスの量を、一組の標準試料と目視比較する。標準試料は、種々の度合いのガラスが中間層に接着して残ったスケールに対応している。例えば、ゼロのパンメル標準試料においては、ガラスは実質的に中間層に接着して残留しない。他方において、10のパンメル標準試料においては、ガラスの実質的に100%が中間層に接着して残留する。パンメル値は、分類して同様の試料に関して平均化される。報告される値は、群に関する平均パンメル値、及び個々の表面に関するパンメル接着力等級の最大範囲を示す。本発明の中間層は、2以上、又は8以下、或いは約2〜約8のパンメル接着力等級を有する。
【0088】
[079]本発明はまた、下記に示す以下の態様1〜13も包含する。
【0089】
[080]態様1は、ポリ(ビニルブチラール);可塑剤;発光顔料;及び約10未満のpKを有するカルボン酸添加剤を含み;ポリマー中間層は12未満のYIを有し、そしてポリマー中間層は約400〜700nmの波長において蛍光を発する、ガラス用のポリマー中間層である。
【0090】
[081]態様2は、ポリ(ビニルブチラール);可塑剤;約0.1〜約1phrの発光顔料;及び約10未満のpKを有するカルボン酸添加剤を含み;ポリマー中間層は12未満のYIを有し、そしてポリマー中間層は約400〜700nmの波長において蛍光を発する、ガラス用のポリマー中間層である。
【0091】
[082]態様3は、カルボン酸添加剤が構造式:R−COH(式中、Rは、水素、アルキル基、又はアリール基である)を有する、態様1又は2のいずれかの特徴を含むポリマー中間層である。
【0092】
[083]態様4は、発光顔料が構造式:R−OOC−Ar(OH)−COO−R(式中、それぞれのRは、独立して少なくとも1つの炭素原子を有する置換基であり、同一又は異なっていてよく、Arはアリール基であり、xは1〜4である)を有する顔料である、態様1〜3のいずれかの特徴を含むポリマー中間層である。
【0093】
[084]態様5は、発光顔料が構造式:
【0094】
【化7】
【0095】
(式中、それぞれのRはエチル基である)
を有する、態様1〜4のいずれかの特徴を含むポリマー中間層である。
【0096】
[085]態様6は、発光顔料が、構造式:
【0097】
【化8】
【0098】
を有するジエチル2,5−ジヒドロキシテレフタレート(DDTP)を含む、態様1〜5のいずれかの特徴を含むポリマー中間層である。
【0099】
[086]態様7は、カルボン酸添加剤が約3〜約8のpKを有する、態様1〜6のいずれかの特徴を含むポリマー中間層である。
【0100】
[087]態様8は、カルボン酸添加剤が2−エチルヘキサン酸である、態様1〜7のいずれかの特徴を含むポリマー中間層である。
【0101】
[088]態様9は、カルボン酸添加剤が発光顔料の少なくとも約5重量%の量で存在する、態様1〜8のいずれかの特徴を含むポリマー中間層である。
【0102】
[089]態様10は、ポリ(ビニルブチラール);可塑剤;約0.1〜約1phrの構造式:R−OOC−Ar(OH)−COO−R(式中、それぞれのRは、独立して少なくとも1つの炭素原子を有する置換基であり、同一又は異なっていてよく、Arはアリール基であり、xは1〜4である)を有する発光顔料;及び約10未満のpKを有するカルボン酸添加剤を含み;ポリマー中間層は12未満のYIを有し、そしてポリマー中間層は約400〜700nmの波長において蛍光を発する、ガラス用のポリマー中間層である。
【0103】
[090]態様11は、ポリマー中間層が、約10未満のpKを有するカルボン酸添加剤を含まない同じ組成を有するポリマー中間層より低いYIを有する、態様1〜10のいずれかの特徴を含むポリマー中間層である。
【0104】
[091]態様12は、可塑剤が、少なくとも約1.460の屈折率を有する少なくとも1種類の高屈折率可塑剤を含む、態様1〜11のいずれかの特徴を含むポリマー中間層である。
【0105】
[092]態様13は、ポリマー中間層が2つの剛性基材の間に積層されて窓又は風防ガラスを形成している、態様1〜12のいずれかの特徴を含むポリマー中間層である。
【実施例】
【0106】
[093]中間層における黄色度(YI)及び色の改良(又は減少)、並びに時間経過に伴うYI及び曇りの変化は、カルボン酸を発光顔料と組み合わせて含む中間層を、カルボン酸を加えない中間層に対して比較することによって最も容易に認識することができる。試料を調製して、酸添加剤を加えることによってYIが減少したかどうかを求めて、次に組成物中における種々の添加剤の最適量を求めた。
【0107】
[094]表1に示す組成物は、約38phrの可塑剤を有するPVB樹脂と可塑剤の混合物を混合及び溶融押出することによって調製した。可塑剤混合物は、以下の成分:ジエチル2,5−ジヒドロキシテレフタレート(DDTP)、添加剤(表中に示す)、及びトリエチレングリコールジ(2−エチルヘキサノエート)(「3GEH」可塑剤)を、他の通常の添加剤(接着力制御剤及びUV安定剤を含む)と一緒に、高剪断混合ブレードを用い、オーバーヘッドミキサーを用いて50℃において30分間混合して溶液を形成することによって調製した。スタンドミキサーを用いて、形成された溶液をポリ(ビニルブチラール)樹脂と混合した。樹脂、可塑剤、顔料(表中に示す)、及び添加剤(表中に示す)の得られた混合物を、次に1.25インチ(3.18cm)の押出機上で押出して、約0.76mm(30ゲージ(30ミル))の厚さを有する中間層シートを形成した。表1の試料は、UV吸収剤、並びに顔料、及び試料C5、C6、及びC7においては添加剤、並びに下表1に示すように固定量の発光顔料(DDTP)を有する、標準的な配合の発光顔料を試験するための対照試料である。UV吸収剤の量は変化させた。試料についてYI及び曇り度%を測定した。試料C1及びC2は、異なる量のUV吸収剤を有し、DDTP又は添加剤を有しない対照試料である。
【0108】
【表1】
【0109】
[095]表1におけるYI及び曇り度%の測定値は、2−エチルヘキサン酸(2−EHA)のような酸添加剤を加えると、酸添加剤を有しない試料と比べてYIが大きく減少することを示す。具体的には、試料C3及びC4は、配合物にDDTPを加えると、YI及び曇り度%の両方が対照試料のC1及びC2と比べて大きく増加し、(試料C5及びC6におけるように)2−エチルヘキサン酸(2−EHA)のような酸添加剤をC3及びC4の配合物に加えると、YI及び曇り度%の両方が、C5及びC6において2−EHAを有しないC3及びC4のYI及び曇り度%と比べて大きく減少することを示す。試料C7によって示されるように、非酸添加剤の通常の酸化防止剤であるLowinox(登録商標)44B25酸化防止剤を加えると、YI又は曇り度%は大きくは減少しない。表1はまた、曇り度%の結果及び蛍光のカウント数によって示されるように、酸添加剤を加えても試料の蛍光又は曇り度%に大きな悪影響を与えないことも示す。2−EHAを組成物に加えると(試料C5及びC6)、曇り度%は実際には添加剤を有しない試料と比べて減少する。
【0110】
[096]発光顔料を組成物に加えた場合に、酸添加剤の添加によって色の制御又はYIの減少(又はYIの劇的な増加の阻止)が促進されたことが判明したら、試料を調製して、異なる量の効果、及び所望のレベルの蛍光を与えるのに用いる発光顔料の最適濃度を求めた。表2における試料は、下表2に示すように、0.3phrの酸添加剤の2−EHA及び他の通常の添加剤(例えば接着力制御剤)を加えた標準的な配合物において、発光顔料の量を変化させることによって発光顔料の効果を試験する試料である。試料は、表1に記載したものと同じ手順及び成分を用い、2−EHAを加え、及び表2に示すように発光顔料を変化させて調製した。発光顔料の量は、0.0005phr〜0.6phrで変化させた。試料についてYI及び曇り度%を測定した。結果を下表2に示す。
【0111】
【表2】
【0112】
[097]表2は、組成物中の発光顔料の量が増加するにつれて、YI及び曇り度%の両方が増加することを示す。蛍光はまた試料C8〜C14についても測定され、結果を図1及び2に示す。図1及び2において示されるように、発光顔料の量は、顔料の量が少なくとも0.1phrになったら、蛍光に対して影響を少ししか有しないか又は全く有しない。図1において示されるように、発光顔料の量が0.2〜0.6phrの間である場合には、0.2phrと0.6phrとで490nmにおける強度の大きな損失はなく、図2において示されるように、0.2phr〜0.6phrの間で励起波長における透過率の大きな差はない。
【0113】
[098]中間層における黄色度(YI)及び色の改良(又は減少)は、カルボン酸を発光顔料と組み合わせて含む中間層を、カルボン酸を加えない中間層に対して比較することによって最も容易に認識することができる。表3における例に関しては、以下の成分及び量:ジエチル2,5−ジヒドロキシテレフタレート(DDTP、0.6phr);添加剤(表3に示すタイプ、0.3phr)及びトリエチレングリコールジ(2−エチルヘキサノエート)(「3GEH」可塑剤、38phr);他の通常の添加剤(接着力制御剤及びUV安定剤を含む);並びにポリ(ビニルブチラール)樹脂(750g);を用いた。次に、得られた混合物を1.25インチ(3.18cm)の押出機上で押出して、約0.76mm(30ゲージ(30ミル))の厚さを有する中間層を形成した。次に、中間層シートを、明澄なガラスの2つの片(それぞれ厚さ2.3mm)の間に積層し、HunterLab UltraScan XE装置を用いてYI及び曇り度%に関して、並びにパンメル接着力レベルに関して評価した。
【0114】
[099]試料1〜9は、発光顔料を有する配合物の色(YI)及び曇り度に対する、異なるpK値を有する異なるカルボン酸添加剤(試料3〜6)、並びに通常の酸化防止剤(試料7〜9)の効果を比較する。試料は上記に記載のようにして調製し、組成及び添加剤、並びに添加剤のpK値を表3に列記する。また、発光顔料又は酸添加剤のいずれも含まない対照試料(試料1)、及び発光顔料を有するが、酸添加剤を有しない対照試料(試料2)も調製及び評価して、同じ中間層配合物を試験し、種々の酸添加剤及び通常の酸化防止剤を有する試料に対して比較した。結果を下表3に示す。
【0115】
【表3】
【0116】
[0100]表3は、約3乃至約10未満の範囲のpKを有する酸添加剤を含む試料に関して、BHT、ヒドロキノン、又はLowinox(登録商標)44B25(商業的に入手できる酸化防止剤)のような他の通常の酸化防止剤を含む試料よりも低いYI値、及びしたがってより低い色又はより低い黄色度が与えられたことを示す。更に、試料の曇り度%値は全て約1.2%以下であり、安息香酸及びサリチル酸はYIと曇り度%値の最も良好な組合せ(即ち、最も低い値、及びしたがって最も少ない量の色及び曇り度)を与えた。DDTP、カルボン酸、又は酸化防止剤を有していなかった試料1は、発光顔料が存在しておらず、したがって黄色度が増加しないので、予想通りに非常に低いYI及び曇り度%値を有していた。DDTPを有していたが、カルボン酸又は他の添加剤を有していなかった試料2は、低い曇り度%を有していたが、非常に高い色(13より大きいYI)を有していた。酸添加剤、特に特定のpKを有するカルボン酸添加剤を加えると、試料3〜6、特に試料3〜5(曇り度%は1.0未満である)において示されるように、許容しうる曇り度%及びYIを有する改良された押出組成物が与えられた。更に、パンメル接着力値によって示されるように、2−エチルヘキサン酸以外のカルボン酸添加剤は接着力レベルを大きく増加させる。
【0117】
[0101]図3は、表3における組成物に関するYI及び曇り度%の比較を示す棒グラフである。図3は、YI及び曇り度%は、発光顔料又はカルボン酸添加剤を有しない対照試料(試料1)においては非常に低い一方で、これらは、発光顔料を有するが、カルボン酸添加剤を有しない対照試料(試料2)に関しては顕著により高いことを示す。図3はまた、対照試料と比較した所定範囲の異なるカルボン酸添加剤及び公知の酸化防止剤(表3に示す)の有効性も示す。表3及び図3におけるデータによって示されるように、全てのカルボン酸添加剤はYI及び曇り度%を減少させ、安息香酸及びサリチル酸は、カルボン酸添加剤として用いた場合に、発光顔料又は蛍光顔料を含む中間層において低い曇り度%を維持しながらYIを減少させるのに最も有効であった。
[0102]更なる試料を試験して、酸添加剤のレベルを変化させることの蛍光に対する効果を求め、酸添加剤の最適量を求めた。表4において列記する種々のレベルの酸添加剤、及び試料10(対照試料であった)以外の全ての試料においては0.6phrのDDTPを用い、上記に記載のようにして試料を調製した。上記に記載のようにして曇り度%及びYIを測定し、結果を下表4及び図4に示す。
【0118】
【表4】
【0119】
[0103]試験した3つの異なるカルボン酸添加剤のそれぞれに関して、カルボン酸添加剤のレベルを0.05〜0.3phrで変化させた。表4は、カルボン酸添加剤のレベル又はタイプを変化させることは、蛍光に大きな影響を与えないことを示す。図4は、組成物の蛍光に対する酸添加剤の効果を示す。表4及び図4の両方によって示されるように、酸添加剤はいずれも、蛍光のレベルに対して悪影響を与えない(又は減少させない)。
【0120】
[0104]結論すると、ここに記載する蛍光顔料を有し且つカルボン酸添加剤を含む中間層は、蛍光顔料を有し、カルボン酸添加剤を有しない中間層を凌ぐ有利性を有する。一般に、特定のpK値を有するカルボン酸添加剤を用いると、蛍光顔料を有する減少したレベルのYI及び曇り度、並びにしたがって向上した光学品質の中間層が得られる。他の有利性は当業者には容易に明らかになるであろう。
【0121】
[0105]好ましい態様であると現在考えられているものを含む幾つかの態様の記載に関連して発明を開示したが、詳細な説明は例示の意図であり、本発明の範囲を限定すると理解すべきではない。当業者に理解されるように、本明細書に詳細に記載されているもの以外の態様は本発明に包含される。発明の精神及び範囲から逸脱することなく、記載されている態様の修正及び変更を行うことができる。
【0122】
[0106]更に、本発明の任意の単一の成分に関して与えられている任意の範囲、値、又は特徴は、互換的な場合には、本発明の任意の他の成分に関して与えられている任意の範囲、値、又は特徴と互換的に用いて、本明細書全体にわたって与えられているそれぞれの成分に関して規定されている値を有する一態様を形成することができることが理解される。例えば、与えられている任意の範囲の可塑剤を含むことに加えて、与えられている任意の範囲の残留ヒドロキシル含量を有するポリ(ビニルブチラール)を含む中間層を形成して、本発明の範囲内であるが、列記するのは煩雑である多くの変形体を形成することができる。更に、フタレート又はベンゾエートのような属又はカテゴリーに関して与えられている範囲はまた、他に示していない限りにおいて、ジオクチルテレフタレートのようなカテゴリーの属又は構成要素の中の種に適用することもできる。
図1
図2
図3
図4