(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも一部が前記バルブスプリングリテーナの側方に配置され、前記第2アームと接触しかつ前記第2アームを前記カムに向けて付勢する他のコイルスプリングを備えている、請求項3に記載の内燃機関。
前記第2アームは、前記第1アームとの連結が解除されているときに前記ローラが第1位置と前記第1位置よりも前記カムから遠い第2位置との間を移動するように前記第1アームに支持され、
前記ローラの少なくとも一部は、前記ローラが前記第2位置にあるときに、前記バルブスプリングリテーナの軸心を通りかつ前記カムシャフトの軸方向に直交する断面において、前記バルブスプリングリテーナの前記第1端部よりも前記第2端部の方、かつ、前記フランジ部よりも前記バルブスプリングリテーナの前記軸心の方に位置するように配置されている、請求項3または4に記載の内燃機関。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明者は、上記内燃機関の利点を活かしつつ、ローラをロッカーアームに対して移動可能に形成することにより、バルブの動作状態を切り換えることのできる可変動弁装置を構成することを検討した。しかし、ローラがロッカーアームに対して移動可能な場合、ローラはバルブスプリングリテーナに対して、より接近することとなる。
【0006】
ローラとバルブスプリングリテーナとの干渉を避けるために、ロッカーアームの位置をバルブスプリングリテーナから遠ざけることが考えられる。しかし、その場合、カムシャフトの位置変更等も必要となり、内燃機関のシリンダヘッドが大型化する。一方、ロッカーアームの位置を変更せずに、バルブスプリングリテーナの位置をロッカーアームから遠ざけることが考えられる。しかし、その場合、必要なバルブリフト量を確保できなくなるおそれがある。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、内燃機関のシリンダヘッドの小型化とバルブリフト量の確保とを両立し得るバルブスプリングリテーナを提供することである。また、本発明の他の目的は、バルブの動作状態を切り換えることができる内燃機関であって、カムおよびロッカーアームの摩耗が少なく、かつ、シリンダヘッドの小型化とバルブリフト量の確保とを両立し得る内燃機関を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るバルブスプリングリテーナは、第1端部および第2端部を有し、前記第1端部から前記第2端部に向かうほど内径が小さくなる第1貫通口が形成された円筒部と、前記円筒部の前記第2端部から前記円筒部の軸方向に沿って延び、前記第2端部から離れるほど内径が大きくなる第2貫通口が形成された円錐形状部と、前記円錐形状部から径方向の外方に延びるフランジ部と、を備える。前記円筒部の外径は、前記第1端部から前記第2端部にかけて一定であり、前記円錐形状部の外径は、前記第2端部から離れるほど大きくなっている。
【0009】
上記バルブスプリングリテーナによれば、円筒部の外径は第1端部から第2端部にかけて一定であるので、円筒部の径方向の外方にスペースを確保することができる。よって、ロッカーアームの位置をバルブスプリングリテーナから遠ざけず、かつ、バルブスプリングリテーナの位置をロッカーアームから遠ざけなくても、ロッカーアームのローラとバルブスプリングリテーナとの干渉を避けることができる。よって、内燃機関のシリンダヘッドの小型化とバルブリフト量の確保とを両立することができる。
【0010】
本発明の好ましい一態様によれば、前記円錐形状部は、前記第2貫通口を区画する内面を有している。前記内面は、前記円錐形状部の軸方向と垂直な垂直面と、前記垂直面から前記軸方向に離れるほど径方向の外方に向かう傾斜面と、を含んでいる。
【0011】
上記態様によれば、バルブスプリングリテーナの第2貫通口の内部空間を大きくすることができる。そのため、バルブスプリングリテーナがバルブと共に移動したときに、バルブスプリングリテーナは他の部材(バルブステムシールなど)と干渉しにくい。よって、シリンダヘッドを大型化しなくてもバルブリフト量を十分に確保することができる。
【0012】
本発明に係る内燃機関は、シリンダヘッドと、前記シリンダヘッドに形成されたポートと、前記シリンダヘッドに組み付けられ、前記ポートを開閉するバルブと、前記シリンダヘッドに回転可能に支持されたカムシャフトと、前記カムシャフトに設けられたカムと、ロッカーアームとを備える。前記ロッカーアームは、前記シリンダヘッドに揺動可能に支持された被支持部および前記バルブに接触する接触部を有する第1アームと、前記第1アームに揺動可能に支持された第2アームと、前記第2アームに回転可能に取り付けられ、前記第1アームの前記被支持部と前記接触部との間に配置されたローラと、を含む。前記内燃機関は、前記第1アームと前記第2アームとを着脱自在に連結する連結機構と、前記バルブに取り付けられたコッタと、前記コッタが嵌め込まれ、前記バルブが貫通するバルブスプリングリテーナと、前記バルブスプリングリテーナに支持される第1スプリング端部と前記シリンダヘッドに支持される第2スプリング端部とを有するコイルスプリングと、を備える。前記バルブスプリングリテーナは、第1端部および第2端部を有し、前記第1端部から前記第2端部に向かうほど内径が小さくなる第1貫通口が形成された円筒部と、前記円筒部の前記第2端部から前記円筒部の軸方向に沿って延び、前記第2端部から離れるほど内径が大きくなる第2貫通口が形成された円錐形状部と、前記円錐形状部から径方向の外方に延び、前記コイルスプリングの前記第1スプリング端部を支持するフランジ部と、を備える。前記円筒部の外径は、前記第1端部から前記第2端部にかけて一定であり、前記円錐形状部の外径は、前記第2端部から離れるほど大きくなっている。
【0013】
上記内燃機関によれば、バルブスプリングリテーナの円筒部の外径は第1端部から第2端部にかけて一定であるので、円筒部の径方向の外方にスペースを確保することができる。よって、ロッカーアームの位置をバルブスプリングリテーナから遠ざけず、かつ、バルブスプリングリテーナの位置をロッカーアームから遠ざけなくても、ロッカーアームのローラとバルブスプリングリテーナとの干渉を避けることができる。したがって、バルブの動作状態を切り換えることができる内燃機関でありながら、カムおよびロッカーアームの摩耗が少なく、かつ、シリンダヘッドの小型化とバルブリフト量の確保とを両立することができる。
【0014】
本発明の好ましい一態様によれば、前記内燃機関は、少なくとも一部が前記バルブスプリングリテーナの側方に配置され、前記第2アームと接触しかつ前記第2アームを前記カムに向けて付勢する他のコイルスプリングを備えている。
【0015】
前述のように、前記内燃機関によれば、ロッカーアームのローラとバルブスプリングリテーナとの干渉を避けながら、ロッカーアームをバルブスプリングリテーナの近傍に配置することができる。そのため、ロッカーアームを従来よりもポートに近い方に配置することができる。それに伴い、他のコイルスプリングを、よりポートに近い位置に配置することができる。したがって、他のコイルスプリングを支持する部材が少なくて済み、軽量化することができる。
【0016】
本発明の好ましい一態様によれば、前記第2アームは、前記第1アームとの連結が解除されているときに前記ローラが第1位置と前記第1位置よりも前記カムから遠い第2位置との間を移動するように前記第1アームに支持されている。前記ローラの少なくとも一部は、前記ローラが前記第2位置にあるときに、前記バルブスプリングリテーナの軸心を通りかつ前記カムシャフトの軸方向に直交する断面において、前記バルブスプリングリテーナの前記第1端部よりも前記第2端部の方、かつ、前記フランジ部よりも前記バルブスプリングリテーナの前記軸心の方に位置するように配置されている。
【0017】
上記態様によれば、ローラとバルブスプリングリテーナとの距離が短い。よって、内燃機関のシリンダヘッドをより一層小型化することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、内燃機関のシリンダヘッドの小型化とバルブリフト量の確保とを両立し得るバルブスプリングリテーナを提供することができる。また、バルブの動作状態を切り換えることができる内燃機関であって、カムおよびロッカーアームの摩耗が少なく、かつ、シリンダヘッドの小型化とバルブリフト量の確保とを両立し得る内燃機関を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。本実施形態に係る内燃機関は、乗り物に搭載され、乗り物の推進源として利用されるものである。乗り物の種類は特に限定されず、自動二輪車、自動三輪車、ATV(All Terrain Vehicle)などの鞍乗型車両であってもよく、自動車であってもよい。例えば
図1に示すように、内燃機関10は自動車5のエンジンルームに配置されていてもよい。
【0021】
本実施形態に係る内燃機関10は、複数の気筒を有する多気筒エンジンである。内燃機関10は、吸気行程、圧縮行程、燃焼行程、および排気行程を行う4ストロークのエンジンである。
図2は、内燃機関10の部分断面図である。
図2に示すように内燃機関10は、クランクケース(図示せず)と、クランクケースに接続されたシリンダボディ7と、シリンダボディ7に接続されたシリンダヘッド12とを備えている。クランクケースの内部には、クランクシャフト(図示せず)が配置されている。シリンダボディ7の内部には、複数のシリンダ6が設けられている。各シリンダ6の内部にはピストン8が配置されている。ピストン8とクランクシャフトとは、コンロッド(図示せず)により連結されている。
【0022】
シリンダヘッド12には、吸気カムシャフト23および排気カムシャフト21が回転可能に支持されている。吸気カムシャフト23には吸気カム23Aが設けられ、排気カムシャフト21には排気カム21Aが設けられている。
【0023】
シリンダヘッド12には、吸気ポート16および排気ポート14が形成されている。吸気ポート16の一端には吸気口18が形成されている。排気ポート14の一端には排気口17が形成されている。吸気ポート16は、吸気口18を通じて燃焼室15と連通している。排気ポート14は、排気口17を通じて燃焼室15と連通している。吸気ポート16は、空気と燃料との混合気を燃焼室15に向かって導入する役割を果たす。排気ポート14は、燃焼室15から排出される排ガスを導出する役割を果たす。
【0024】
シリンダヘッド12には、吸気バルブ22および排気バルブ20が組み付けられている。吸気バルブ22は吸気ポート16の吸気口18を開閉する。排気バルブ20は排気ポート14の排気口17を開閉する。吸気バルブ22および排気バルブ20はいわゆるポペットバルブである。吸気バルブ22は軸部22aおよび傘部22bを有しており、排気バルブ20は軸部20aおよび傘部20bを有している。吸気バルブ22の構成と排気バルブ20の構成とは同様であるので、以下では吸気バルブ22の構成について説明し、排気バルブ20の構成の説明は省略することとする。吸気バルブ22の軸部22aは、円筒状のスリーブ24を介してシリンダヘッド12にスライド可能に支持されている。スリーブ24の一端および吸気バルブ22の軸部22aには、バルブステムシール25が取り付けられている。吸気バルブ22の軸部22aは、スリーブ24およびバルブステムシール25を貫通している。軸部22aの先端には、タペット26が嵌め込まれている。
【0025】
図3に示すように、吸気バルブ22の軸部22aにはコッタ28が取り付けられている。コッタ28は、バルブスプリングリテーナ30に嵌め込まれている。バルブスプリングリテーナ30は、コッタ28を介して吸気バルブ22に固定されている。バルブスプリングリテーナ30は、吸気バルブ22と共に、吸気バルブ22の軸方向に移動可能である。吸気バルブ22はバルブスプリングリテーナ30を貫通している。
【0026】
図4はバルブスプリングリテーナ30の斜視図である。
図5はバルブスプリングリテーナ30の縦断面図である。
図4および
図5に示すように、バルブスプリングリテーナ30は、円筒部34と、円錐形状部36と、円錐形状部36から径方向の外方に延びるフランジ部38とを備えている。
【0027】
円筒部34は円筒形状に形成されており、第1端部34aおよび第2端部34bを有する。円筒部34には、第1端部34aから第2端部34bに向かうほど内径が小さくなる第1貫通口34cが形成されている。円筒部34の外径は、第1端部34aから第2端部34bにかけて一定である。なお、「円筒部34の外径が一定である」とは、円筒部34の外径が実質的に一定であることを意味する。例えば、外径の最大値と最小値との差が外径の平均値に対して±5%以内の場合、外径が実質的に一定であると見なすことができる。ただし、外径の最大値と最小値との差は平均値に対して±3%以内であってもよく、±1%以内であってもよい。
【0028】
円錐形状部36は、円筒部34の第2端部34bから円筒部34の軸方向に沿って延びている。円錐形状部36は円錐形状に形成されており、円錐形状部36の外径は第2端部34bから離れるほど大きくなっている。円錐形状部36には、第2端部34bから離れるほど内径が大きくなる第2貫通口36cが形成されている。円錐形状部36は、第2貫通口36cを区画する内面36dを有している。内面36dは、円錐形状部36の軸方向と垂直な垂直面36aと、垂直面36aから軸方向に離れるほど径方向の外方に向かう傾斜面36bとを含んでいる。
【0029】
図3に示すように、内燃機関10は、吸気バルブ22に対して吸気口18を閉じる向き(
図3の上向き)の力を与えるバルブスプリング32を備えている。バルブスプリング32は、圧縮コイルスプリングからなっており、バルブスプリングリテーナ30に支持される第1スプリング端部32aと、シリンダヘッド12に支持される第2スプリング端部32bとを有している。
【0030】
内燃機関10は、吸気カム23Aから力を受けて吸気バルブ22を開閉するロッカーアーム40を備えている。ロッカーアーム40は、支持部材35を介してシリンダヘッド12に揺動可能に支持されている。
図6はロッカーアーム40および支持部材35の側面図であり、
図7はロッカーアーム40および支持部材35の平面図である。ロッカーアーム40は、第1アーム41、第2アーム42、およびローラ43を含んでいる。
【0031】
図8は、第1アーム41および第2アーム42の分解斜視図である。第1アーム41は、プレート41Aと、プレート41Bと、当接プレート41Cと、連結プレート41Dとを有している。プレート41Aとプレート41Bとは、平行に配置されている。当接プレート41Cおよび連結プレート41Dは、プレート41Aおよびプレート41Bと交差している。また、当接プレート41Cおよび連結プレート41Dは、プレート41Aとプレート41Bとを繋いでいる。プレート41Aには、孔46Aおよび孔48が形成されている。プレート41Bには、孔46Bおよび孔48が形成されている。孔46A、46B、および48は、吸気カムシャフト23(
図3参照)の軸線方向と平行な方向に延びている。
【0032】
図9は
図6のIX−IX線断面図である。
図9に示すように、プレート41Aの孔46Aの周囲には、円筒状のボス部49Aが設けられている。孔46Aの内部には、連結ピン60Aがスライド可能に挿入されている。プレート41Bの孔46Bの周囲には、有底円筒状のカバー部49Bが設けられている。カバー部49Bには孔46Bよりも小径の孔47が形成されているが、孔47はなくてもよい。孔46Bの内部には、連結ピン60Bがスライド可能に挿入されている。また、孔46Bの内部には、スプリング64が配置されている。スプリング64はカバー部49Bと連結ピン60Bとの間に介在しており、連結ピン60Bをプレート41Aの方に付勢している。
【0033】
第2アーム42は第1アーム41の内側に配置されている。すなわち、第2アーム42は、プレート41Aとプレート41Bとの間に配置されている。
図8に示すように、第2アーム42は、プレート42Aと、プレート42Bと、当接プレート42Cと、連結プレート42Dとを有している。プレート42Aとプレート42Bとは、平行に配置されている。当接プレート42Cおよび連結プレート42Dは、プレート42Aおよびプレート42Bと交差している。また、当接プレート42Cおよび連結プレート42Dは、プレート42Aとプレート42Bとを繋いでいる。プレート42Aおよびプレート42Bのそれぞれには、孔50および孔52が形成されている。
【0034】
図9に示すように、プレート42Aの孔50およびプレート42Bの孔50には、円筒状のローラ43が回転可能に支持されている。詳しくは、プレート42Aおよびプレート42Bの孔50には、円筒状のカラー54が挿入されている。ローラ43は、このカラー54に回転可能に支持されている。カラー54の内部には、連結ピン62がスライド可能に挿入されている。カラー54は孔50の内部に配置されているので、連結ピン62は孔50の内部にスライド可能に挿入されている。なお、カラー54は必ずしも必要ではない。連結ピン62がローラ43を回転可能に支持していてもよい。
【0035】
連結ピン60Bの外径は、カラー54の内径以下である。連結ピン60Bは、カラー54の内部に挿入可能に形成されている。連結ピン62の外径は孔46Aの内径以下である。連結ピン62は、孔46Aの内部に挿入可能に形成されている。本実施形態では、カラー54の内径と孔46Aの内径とは等しい。連結ピン60Bの外径と、連結ピン62の外径と、連結ピン60Aの外径とは等しい。
【0036】
図6に示すように、支持部材35と第1アーム41と第2アーム42とは、支持ピン56によって連結されている。支持ピン56は、第1アーム41のプレート41Aの孔48と、プレート41Bの孔48と、第2アーム42のプレート42Aの孔52と、プレート42Bの孔52とに挿入されている。第1アーム41および第2アーム42は、支持ピン56により、支持部材35に揺動可能に支持されている。また、第2アーム42は、支持ピン56により、第1アーム41に揺動可能に支持されている。
【0037】
図9に示すように、ロッカーアーム40の側方には、連結切換ピン66が配置されている。連結切換ピン66は、連結ピン60Aに接近する方向と連結ピン60Aから離反する方向とに移動可能に構成されている。
【0038】
図10に示すように、連結切換ピン66が連結ピン60Aから離れる方向に移動すると、連結ピン60A,62,60Bはスプリング64の力により、
図10の左方にスライドする。これにより、連結ピン60Bは孔46Bの内部および孔50の内部(詳しくは、カラー54の内部)に位置する状態となり、連結ピン62は孔50の内部(詳しくは、カラー54の内部)および孔46Aの内部に位置する状態となる。以下、この状態のことを連結状態と言う。連結状態では、第1アーム41と第2アーム42とは、連結ピン60Bおよび連結ピン62によって連結される。その結果、
図11に示すように、第1アーム41および第2アーム42は一体となって、支持ピン56の軸心を中心として揺動可能となる。
【0039】
図9に示すように、連結切換ピン66が連結ピン60Aの方に移動すると、連結ピン60A,62,60Bは連結切換ピン66によって押され、
図9の右方にスライドする。これにより、連結ピン60Bは孔46Bの内部に位置しかつ孔50の内部に位置しない状態となり、連結ピン62は孔50の内部に位置しかつ孔46Aの内部に位置しない状態となる。以下、この状態のことを非連結状態と言う。非連結状態では、
図12に示すように、連結ピン62は連結ピン60Aおよび連結ピン60Bに対してスライド可能となる。その結果、
図13に示すように、第2アーム42は第1アーム41に対して、支持ピン56の軸心を中心として揺動可能となる。そのため、第2アーム42が支持ピン56の軸心を中心として揺動しても、第1アーム41は揺動しないこととなる。
【0040】
図3に示すように、第1アーム41のうち支持ピン56によって支持された部分(詳しくは、プレート41Aにおける孔48の周囲の部分およびプレート41Bにおける孔48の周囲の部分)は、シリンダヘッド12に揺動可能に支持された被支持部41Sを構成している。当接プレート41Cは、タペット26を介して吸気バルブ22に接触する接触部を構成している。
【0041】
図3に示すように、内燃機関10は、ロッカーアーム40を吸気カム23Aに向けて付勢するロストモーションスプリングとして、圧縮コイルスプリング68を備えている。圧縮コイルスプリング68の内側には、圧縮コイルスプリング68の巻き軸線68dに沿って延びる軸70が配置されている。軸70は、第1端部70aと、第1端部70aよりも第2アーム42の方に配置された第2端部70bとを有している。第1端部70aには、圧縮コイルスプリング68を受けるスプリングシート72が設けられている。
【0042】
圧縮コイルスプリング68は、第1端部68aと、第1端部68aよりも第2アーム42の方に配置された第2端部68bとを有している。第2端部68bには、リテーナ74が支持されている。リテーナ74は、円板状の天板部74aと、円筒状の筒部74bとを有している。筒部74bは、天板部74aから軸70の軸方向に沿って圧縮コイルスプリング68の方に延びている。天板部74aは、圧縮コイルスプリング68の第2端部68bに支持されている。天板部74aは、ロッカーアーム40の第2アーム42の当接プレート42Cと接触している。
【0043】
スプリングシート72と、軸70の少なくとも一部と、圧縮コイルスプリング68の少なくとも一部と、リテーナ74の筒部74bの少なくとも一部とは、シリンダヘッド12に形成された孔76の内部に配置されている。
【0044】
吸気バルブ22、バルブスプリング32、軸70、リテーナ74、圧縮コイルスプリング68、および支持部材35は、互いに平行に配置されている。リテーナ74は、バルブスプリング32と支持部材35との間に配置されている。軸70は、バルブスプリング32と支持部材35との間に配置されている。
【0045】
図2に示すように、吸気バルブ22と同様、排気バルブ20にもバルブスプリング32、バルブスプリングリテーナ30、ロッカーアーム40、支持部材35、圧縮コイルスプリング68等が設けられている。それらの構成は前述の構成と同様であるので、詳しい説明は省略する。
【0046】
本実施形態に係る内燃機関10では、連結切換ピン66の状態を切り換えることにより、吸気バルブ22および排気バルブ20の動作状態を切り換えることができる。
【0047】
すなわち、連結切換ピン66を連結状態に切り換えると、ロッカーアーム40の第1アーム41および第2アーム42は、連結ピン60Bおよび連結ピン62によって連結される(
図10参照)。吸気カムシャフト23の回転に伴って吸気カム23Aがロッカーアーム40のローラ43を押すと、第1アーム41および第2アーム42は一体となって、支持ピン56の軸心を中心として揺動する(
図11参照)。その結果、第1アーム41の当接プレート41Cが吸気バルブ22を押し、吸気ポート16の吸気口18が開かれる。同様に、排気カムシャフト21の回転に伴って排気カム21Aがロッカーアーム40のローラ43を押すと、第1アーム41および第2アーム42は一体となって、支持ピン56の軸心を中心として揺動する。その結果、第1アーム41の当接プレート41Cが排気バルブ20を押し、排気ポート14の排気口17が開かれる。
【0048】
連結切換ピン66を非連結状態に切り換えると、連結ピン60Bおよび連結ピン62による第1アーム41および第2アーム42の連結が解除される(
図9参照)。第2アーム42は第1アーム41に対して揺動可能となる(
図12参照)。吸気カムシャフト23の回転に伴って吸気カム23Aがローラ43を押すと、第2アーム42は支持ピン56の軸心を中心として揺動するが、第1アーム41は揺動しない(
図13参照)。そのため、第1アーム41の当接プレート41Cが吸気バルブ22を押すことはなく、吸気口18は吸気バルブ22によって閉じられたままとなる。同様に、排気カムシャフト21の回転に伴って排気カム21Aがローラ43を押すと、第2アーム42は支持ピン56の軸心を中心として揺動するが、第1アーム41は揺動しない。そのため、第1アーム41の当接プレート41Cが排気バルブ20を押すことはなく、排気口17は排気バルブ20によって閉じられたままとなる。このように、本実施形態では、連結切換ピン66を非連結状態に切り換えることにより、複数の気筒のうちの一部を休止状態にすることができる。例えば、負荷の小さいときに一部の気筒を休止させることとすれば、燃費を向上させることができる。
【0049】
以上のように、本実施形態に係る内燃機関10によれば、ロッカーアーム40は、カム21A,23Aと接触するローラ43を備えている。カム21A,23Aが回転すると、ローラ43も回転する。カム21A,23Aとローラ43とは擦れ合わないので、カム21A,23Aおよびロッカーアーム40の摩耗が少ない。
【0050】
ところで、内燃機関10はバルブ20,22の動作状態を切り換えることができるように構成されている。そのために、ロッカーアーム40は第1アーム41に対して揺動可能な第2アーム42を備え、ローラ43は第2アーム42に支持されている。しかし、このような構成では、ローラ43の移動範囲が大きく、ローラ43は
図3における下方に大きく移動する。ローラ43はバルブスプリングリテーナ30に対して、より接近することになる(
図3において仮想線で示すローラ43参照)。そのため、バルブの動作状態を切り換えることができない内燃機関(すなわち、ローラが移動しない内燃機関)に比べて、ローラ43とバルブスプリングリテーナ30との干渉が懸念される。
【0051】
ローラ43とバルブスプリングリテーナ30との干渉を避けるために、ロッカーアーム40の位置をバルブスプリングリテーナ30から遠ざけることが考えられる。しかし、その場合、カムシャフト21,23の位置変更等も必要となり、シリンダヘッド12が大型化してしまう。一方、ロッカーアーム40の位置を変更せずに、バルブスプリングリテーナ30の位置をロッカーアーム40から遠ざけることが考えられる。しかし、その場合、必要なバルブリフト量を確保できなくなるおそれがある。
【0052】
ところが、本実施形態に係る内燃機関10によれば、バルブスプリングリテーナ30は、円筒部34と円錐形状部36とを備えている(
図4および
図5参照)。円筒部34の外径は、バルブスプリング32の第1スプリング端部32aを支持するフランジ部38の外径よりも小さい。また、円筒部34の外径は第1端部34aから第2端部34bにかけて一定であるので、円筒部34の径方向の外方にスペースを確保することができる。よって、
図3に示すように、ロッカーアーム40の位置をバルブスプリングリテーナ30から遠ざけず、かつ、バルブスプリングリテーナ30の位置をロッカーアーム40から遠ざけなくても、ローラ43とバルブスプリングリテーナ30との干渉を避けることができる。したがって、本実施形態に係る内燃機関10によれば、バルブ20,22の動作状態を切り換えることができる内燃機関でありながら、カム21A,23Aおよびロッカーアーム40の摩耗を低減することができ、かつ、シリンダヘッド12の小型化とバルブリフト量の確保とを両立させることができる。
【0053】
また、本実施形態によれば、
図5に示すように、バルブスプリングリテーナ30の円錐形状部36は、軸方向と垂直な垂直面36aと、垂直面36aから軸方向に離れるほど径方向の外方に向かう傾斜面36bとを含んでいる。そのため、バルブスプリングリテーナ30の第2貫通口36cの内部空間を大きくすることができる。よって、バルブスプリングリテーナ30が吸気バルブ22と共に吸気口18の方に移動したときに、バルブスプリングリテーナ30はバルブステムシール25(
図2参照)などの他の部材と干渉しにくい。また、バルブスプリングリテーナ30が排気バルブ20と共に排気口17の方に移動したときに、バルブスプリングリテーナ30はバルブステムシール25などの他の部材と干渉しにくい。よって、シリンダヘッド12を大型化しなくてもバルブリフト量を十分に確保することができる。
【0054】
また、本実施形態によれば、第2アーム42をカム21A,23Aに向けて付勢するロストモーションスプリングは、少なくとも一部がバルブスプリングリテーナ30の側方に配置された圧縮コイルスプリング68である。上述のように、本実施形態に係る内燃機関10によれば、ロッカーアーム40のローラ43とバルブスプリングリテーナ30との干渉を避けながら、ロッカーアーム40をバルブスプリングリテーナ30の近傍に配置することができる。
図2において、ロッカーアーム40をより下方に配置することができる。そのため、本実施形態によれば、ロッカーアーム40を従来よりもポート14,16に近い方に配置することができる。それに伴い、圧縮コイルスプリング68を、よりポート14,16の近くに配置することができる。したがって、本実施形態によれば、圧縮コイルスプリング68を支持する部材が少なくて済み、シリンダヘッド12をより軽量化することができる。
【0055】
前述の通り、ロッカーアーム40の第2アーム42は、第1アーム41に揺動可能に支持されている。第1アーム41と第2アーム42との連結が解除されているときに、ローラ43は、第1位置(
図3において実線で示す位置)と、第1位置よりもカム21A,23Aから遠い第2位置(
図3において仮想線で示す位置)との間を移動する。
図3において仮想線で示すように、ローラ43が第2位置にあるときに、ローラ43の少なくとも一部は、バルブスプリングリテーナ30の軸心30cを通りかつカムシャフト21の軸方向に直交する断面において、バルブスプリングリテーナ30の円筒部34の第1端部34aよりも第2端部34bの方、かつ、フランジ部38よりもバルブスプリングリテーナ30の軸心30cの方に位置するように配置されている。本実施形態によれば、ローラ43とバルブスプリングリテーナ30との距離が短い。ローラ43およびバルブスプリングリテーナ30をコンパクトに配置することができる。よって、シリンダヘッド12をより一層小型化することができる。
【0056】
ところで、バルブスプリングリテーナ30とコッタ28との間に発生する圧力は、第1端部34aから第2端部34bの方に行くほど大きくなる傾向がある。バルブスプリングリテーナ30によれば、円筒部34の肉厚は、第1端部34aから第2端部34bに向かうにつれて連続的に大きくなっている。そのため、バルブスプリングリテーナ30は、必要な強度を確保しやすい。強度を確保するためにバルブスプリングリテーナ30を大型化する必要がないので、省スペース化および軽量化を図ることができる。
【0057】
以上、本発明の実施の一形態について説明したが、本発明の実施形態が前記実施形態に限定されないことは勿論である。次に、他の実施形態の例について簡単に説明する。
【0058】
前記実施形態では、第1アーム41は、カム21A,23Aと接触しないように構成されている。前記実施形態では、ロッカーアーム40の第1アーム41および第2アーム42を非連結状態に切り換えることにより、バルブ20,22を休止状態にすることとした。しかし、第1アーム41は、ローラ43がカム21A,23Aに押されることにより第2アーム42が揺動を開始した後にカム21A,23Aに接触する接触部を有していてもよい。この場合、第1アーム41および第2アーム42を非連結状態に切り換えることにより、バルブ20,22を開くタイミングおよび閉じるタイミングを変えることが可能である。これにより、バルブ20,22の開いている期間を変更することができる。例えば、内燃機関10の回転数が高い場合にバルブ20,22の開いている期間を長くすることにより、高回転時の性能を向上させることができる。
【0059】
前記実施形態では、内燃機関10は多気筒エンジンである。しかし、内燃機関10は、バルブ20,22の開閉タイミングを変更可変な単気筒エンジンであってもよい。
【0060】
ここに用いられた用語及び表現は、説明のために用いられたものであって限定的に解釈するために用いられたものではない。ここに示されかつ述べられた特徴事項の如何なる均等物をも排除するものではなく、本発明のクレームされた範囲内における各種変形をも許容するものであると認識されなければならない。本発明は、多くの異なった形態で具現化され得るものである。この開示は本発明の原理の実施形態を提供するものと見なされるべきである。それらの実施形態は、本発明をここに記載しかつ/又は図示した好ましい実施形態に限定することを意図するものではないという了解のもとで、実施形態がここに記載されている。ここに記載した実施形態に限定されるものではない。本発明は、この開示に基づいて当業者によって認識され得る、均等な要素、修正、削除、組み合わせ、改良及び/又は変更を含むあらゆる実施形態をも包含する。クレームの限定事項はそのクレームで用いられた用語に基づいて広く解釈されるべきであり、本明細書あるいは本願のプロセキューション中に記載された実施形態に限定されるべきではない。
【課題】バルブの動作状態を切り換えることができ、カムおよびロッカーアームの摩耗が少なく、かつ、シリンダヘッドの小型化とバルブリフト量の確保とを両立し得る内燃機関を提供する。
【解決手段】バルブスプリングリテーナ30は、第1端部34aから第2端部34bに向かうほど内径が小さくなる第1貫通口34cが形成された円筒部34と、円筒部34の第2端部34bから離れるほど内径が大きくなる第2貫通口36cが形成された円錐形状部36と、円錐形状部36から径方向の外方に延びるフランジ部38と、を備える。円筒部34の外径は第1端部34aから第2端部34bにかけて一定であり、円錐形状部36の外径は第2端部34bから離れるほど大きくなっている。