(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6450110
(24)【登録日】2018年12月14日
(45)【発行日】2019年1月9日
(54)【発明の名称】アンテナ回路
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/38 20060101AFI20181220BHJP
H01Q 7/00 20060101ALI20181220BHJP
H05K 1/11 20060101ALI20181220BHJP
H05K 3/24 20060101ALI20181220BHJP
【FI】
H01Q1/38
H01Q7/00
H05K1/11 B
H05K3/24 C
【請求項の数】16
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-165358(P2014-165358)
(22)【出願日】2014年8月15日
(65)【公開番号】特開2015-37327(P2015-37327A)
(43)【公開日】2015年2月23日
【審査請求日】2017年6月14日
(31)【優先権主張番号】201310357214.X
(32)【優先日】2013年8月15日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】502458039
【氏名又は名称】ジョンソン エレクトリック ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ケネス アーサー シニア
【審査官】
佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−217639(JP,A)
【文献】
特開平06−188566(JP,A)
【文献】
特開2002−197435(JP,A)
【文献】
特開2011−239367(JP,A)
【文献】
特開平04−065024(JP,A)
【文献】
実開昭59−089576(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 19/077
H01B 5/14
H01P 5/08
H01Q 1/38
H01Q 7/00
H05K 1/11
H05K 3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板の一側面上のみに配置されたアンテナコイルと、前記基板の前記一側面上に配置され、前記アンテナコイルの内端部と外端部とを電気的に相互結合するように前記アンテナコイルの少なくとも1つのターンを橋絡する薄型クロスオーバー要素とを備え、前記クロスオーバー要素が、前記アンテナコイルの前記ターン上の又は該ターンに隣接する電気絶縁層と、前記電気絶縁層上の第1導電層と、前記第1導電層上にあり前記第1導電層とは異なる導電性材料の第2導電層とを備え、前記基板は、本体部、取付け部及び尾部を備え、前記取付け部は細長いストリップ状で、前記本体部の長手方向側面の対向するコーナー部から延びて前記尾部を取り囲んでいることを特徴とする、アンテナ回路。
【請求項2】
前記第1導電層が、プリント可能な薄膜材料であることを特徴とする、請求項1に記載のアンテナ回路。
【請求項3】
前記第1導電層が、銀及び/又は炭素粒子を含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載のアンテナ回路。
【請求項4】
前記第1導電層が、流動可能な導電性インクであることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載のアンテナ回路。
【請求項5】
前記第1導電層が、非酸化性又は抗酸化性であることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載のアンテナ回路。
【請求項6】
前記第2導電層が、電気メッキ層であることを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載のアンテナ回路。
【請求項7】
前記第2導電層が、銅であることを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載のアンテナ回路。
【請求項8】
前記第1導電層が、前記電気絶縁層に重なり合い、前記アンテナコイルの内端部と外端部とを物理的及び電気的に結合することを特徴とする、請求項1から項7のいずれかに記載のアンテナ回路。
【請求項9】
前記第2導電層が、前記第1導電層に重なり、前記アンテナコイルの前記内端部と前記外端部とを物理的及び電気的に結合することを特徴とする、請求項1から8のいずれかに記載のアンテナ回路。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載のアンテナ回路と、前記アンテナコイルに電気的に結合されたICチップと、を備えた無線周波数無線通信回路であって、チップ取付け部が前記本体部に片持ち支持され、前記アンテナコイルが、前記本体部の周り及び前記チップ取付け部に沿って延び、前記ICチップが、前記アンテナコイルと電気通信するように前記チップ取付け部に取り付けられること特徴とする、無線周波数無線通信回路。
【請求項11】
前記チップ取付け部が、前記本体部及びその上に設けられたアンテナコイルの部分から遠ざかる方向に延びていることを特徴とする、請求項10に記載の無線周波数無線通信回路。
【請求項12】
前記本体部が、前記アンテナコイルに取り囲まれ、表示ユニットを収容するための中央開口を含むことを特徴とする、請求項10又は11に記載の無線周波数無線通信回路。
【請求項13】
前記基板が、前記本体部から延びた位置の、前記チップ取付け部の周囲に設けられたハウジング取付け部をさらに備えることを特徴とする、請求項10から12のいずれかに記載の無線周波数無線通信回路。
【請求項14】
手持ち可能なハウジングと、前記手持ち可能なハウジングの表面のデータ入力ユーザーインターフェースと、前記データ入力ユーザーインターフェースを介して入力されたデータを前記手持ち可能な端末上に表示するための表示画面を有する表示ユニットと、前記手持ち可能なハウジング内にある請求項10から13のいずれかに記載の無線周波数無線通信回路とを備え、前記手持ち可能なハウジングを通して前記表示ユニットが延在することを特徴とする、販売ポイント移動端末。
【請求項15】
基板と、前記基板の一側面上のみに設けられたアンテナコイルと、前記基板の前記一側面上にあり、前記アンテナコイルの少なくとも1つのターンを橋絡して前記アンテナコイルの内端部と外端部とを電気的に相互結合するクロスオーバー要素とを備え、前記クロスオーバー要素が、前記アンテナコイルの少なくとも1つのターンを橋絡するための剛性のある絶縁性ハウジングと、前記電気絶縁性ハウジングを通過して延び、前記アンテナコイルの前記内端部と前記外端部とを電気的に相互結合する導電体と、を備え、前記基板は、本体部、取付け部及び尾部を備え、前記取付け部は細長いストリップ状で、前記本体部の長手方向側面の対向するコーナー部から延びて前記尾部を取り囲んでいることを特徴とする、アンテナ回路。
【請求項16】
前記剛性のある絶縁性ハウジングが、抵抗器ハウジング、ICチップハウジング、及びキャパシタハウジングのうちの少なくとも1つであることを特徴とする、請求項15に記載のアンテナ回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ回路と、無線周波数無線通信回路、例えば、そのようなアンテナ回路を備えるRFID回路及び/又は近フィールド通信(NFC)回路である無線周波数無線通信回路と、該アンテナ回路を利用する販売ポイント移動端末と、単一面型アンテナ回路上に薄型クロスオーバー要素を形成する方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、薄型アンテナ回路を提供するために、フレキシブル回路基板には、その両側の主面に、導電性金属、この場合は銅の層がラミネートされる。次いで、RFID回路、NFC回路、又はその他の無線周波数無線通信回路に使用されるアンテナコイルが、エッチング又は他の方法で前記主面の前面上に形成され、クロスオーバー要素が、前記主面の裏面上に形成される。クロスオーバー要素は、短路接続用の銅製のトラック又はトレースであり、主面の裏面上の残りの銅層を取り除く際に残されたものである。
【0003】
次に、貫通穴又はビアが、主面の前面と裏面との間に形成され、アンテナコイルの内端部をクロスオーバー要素の第1端部に相互接続し、アンテナコイルの外端部をクロスオーバー要素の第2端部に相互接続する。次に、貫通穴はメッキされて、アンテナコイルとクロスオーバー要素とを電気的に接続し、それによってアンテナ回路を形成する。
【0004】
しかしながら、そのように主面から大量の銅を除去することは、著しい無駄及び製造コストの増大の原因となる。貫通穴は、レーザー又は高精度の穿孔技術によってのみ形成することができるので、製造時間が長くなり、穿孔位置の不一致による不良率を潜在的に高めることになる。更に、貫通穴のメッキは、電流の流れを阻害するので、回路抵抗が変化して、作動性能が低下する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、これらの問題の解決手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によると、基板と、該基板上の一側面のみに配置されたアンテナコイルと、該基板の一側面上に配置され、アンテナコイルの内端部と外端部とを電気的に相互結合するようにアンテナコイルの少なくとも1つのターンを橋絡する薄型クロスオーバー要素とを備え、クロスオーバー要素が、アンテナコイルのターン上の又はターンに隣接する、好ましくはオーバープリント可能な電気絶縁層と、該電気絶縁層上の、好ましくはプリント可能な第1導電層と、好ましくは電着された、第1導電層上にあり異なる導電性材料の第2導電層とを含む、アンテナ回路が提供される。
【0007】
好ましくは、アンテナコイルのターン上の又はターンに隣接する電気絶縁層は、オーバープリント可能であり、電気絶縁層上の第1導電層は、プリント可能であり、第2導電層は、第1導電層上にあり、異なる導電性材料が電着される。
【0008】
随意的に、第1導電層は貴金属粒子を含むことができ、この場合、銀粒子を利用することが好ましい。これによって、特に製造時の酸化が低減又は排除される。代替的に又は追加的に、炭素粒子を利用することができる。これは費用削減の助けとなるが、依然として良好な導電性が可能になり、上部に第2導電層を形成するためのベース層がもたらされる。
【0009】
好都合には、第1導電層は流動可能な導電性インクとすることができる。これによって、クロスオーバー要素を迅速かつ容易に基板の一側面上のアンテナコイルを横切るように施工することができる。
【0010】
第2導電層は、電気メッキ層であることが好ましい。これによって、クロスオーバー要素を通って伝わる電流のためのより堅牢な導電経路を提供できる。さらに、第2導電層は、非貴金属とすることができ、例えば、好都合には銅とすることができる。これは、アンテナコイルの抵抗をアンテナコイルのクロスオーバー要素により精密に一致させるのに好都合である。
【0011】
好ましくは、アンテナコイルの内端部及び外端部は少なくとも第1導電層と結合され、第1導電層は電気絶縁層に重ね合わされる。これによって、クロスオーバー要素はアンテナコイルと堅牢に結合し、これによりアンテナ回路の寿命が長くなり、クロスオーバー要素の形状が最小化する。
【0012】
有利には、第2導電層は第1導電層に重ね合わされて、アンテナコイルの内端部と外端部とを電気的に結合するようになっている。第1の導電層と、異なる施工手段によって施工される第2の導電層との両方を利用することによって、クロスオーバー要素によるアンテナコイルの各端部の堅牢な結合が実現する。
【0013】
本発明の第2の態様によると、本発明の第1の態様によるアンテナ回路と、該アンテナ回路に電気的に結合されたICチップとを備え、基板が、本体部と、該本体部に片持ち支持されたチップ取付け部とを含み、アンテナコイルが、本体部の周り及びチップ取付け部に沿って延び、ICチップが、アンテナコイルと電気通信するようにチップ取付け部に取り付けられた、無線周波数無線通信回路が提供される。
【0014】
好ましくは、取付け部分は、本体部から離れる方向に延びる片持ち状の尾部であり、その上にアンテナコイルの一部が設けられる。このことは、アンテナコイルによって境界付けされた本体部の中心領域に構成部品を収容するための開口を設けるのに好都合であり、例えば、この領域内に又はこれを貫通する表示ユニットを収容する。
【0015】
基板は、本体部から及び尾部の周りから延びるハウジング取付け部をさらに備えることができる。これは、チップ取付け部分を保護するだけでなく、無線周波数無線通信回路を装置ハウジング又は支持部に取り付けるための締結位置の数を増加させる。
【0016】
本発明の第3の態様によると、手持ち可能なハウジングと、該手持ち可能なハウジングの表面のデータ入力ユーザーインターフェースと、データ入力ユーザーインターフェースを介して入力されたデータを手持ち可能な端末上に表示するための表示画面を有する表示ユニットと、表示ユニットが通り抜けて延びる手持ち可能なハウジング内にある本発明の第2の態様による無線周波数無線通信回路と、を備える販売ポイント移動端末が提供される。
【0017】
本発明の第4の態様によると、薄型クロスオーバー要素を単一面型アンテナコイル上に形成する方法が提供され、本方法は、a)アンテナ回路の基板の第1側面において、基板の第1側面上のアンテナコイルの少なくとも1つのターンを橋絡する第1導電層を電気絶縁層上にプリントする段階と、b)第1導電層上に第2導電層を電気メッキしてアンテナコイルの内端部と外端部とを電気的に相互結合する段階とを含む。
【0018】
本発明の第5の態様によると、基板と、該基板の一側面上のみのアンテナコイルと、基板の一側面上にあり、アンテナコイルの少なくとも1つのターンを橋絡してアンテナコイルの内端部と外端部とを電気的に相互結合するクロスオーバー要素とを備え、クロスオーバー要素は、アンテナコイルの少なくとも1つのターンを橋絡するための剛性のある絶縁性ハウジングと、電気絶縁性ハウジングを通過して延び、アンテナコイルの内端部と外端部とを電気的に相互結合する導電体と、を備えるアンテナ回路が提供される。
【0019】
本発明の好ましい実施形態が、例示的に、添付図面を参照して以下に説明される。図面において、2以上の図面に現れる同様の構造、要素又は部分には全て、現れる図面の全てにおいて同一の参照番号が付される。図面に示された部品及び形状の寸法は、全て利便性のため及び説明を明確にするために選択されており、必ずしも縮尺通りではない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第1から第4の態様による、アンテナコイルの各端部の間に取り付けられたクロスオーバー要素をもつ、アンテナ回路の第1の実施形態を示す断面図である。
【
図2】主面の前面にアンテナコイルをもつ、イメージ可能な回路基板を示す平面図である。
【
図3】誘電パッチが取り付けられたアンテナコイルを示す、
図2に類似する図である。
【
図4】誘電パッチに取り付けられた、第1導電性トレースを示す図である。
【
図5】
図4に記載の第1導電性トレースに取り付けられた、第2導電性トレースを示す図である。
【
図6】本発明の第5の態様による、アンテナコイルの各端部の間に取り付けられた異なるクロスオーバー要素をもつ、アンテナ回路の第2の実施形態を示す平面図である。
【
図7】
図6に記載のアンテナ回路を拡大し、クロスオーバー要素をより明確に示す図である。
【
図8】クロスオーバー要素を備えたアンテナ回路をもつ、ブロードキャスト型又は非ブロードキャスト型のスマートカード、又は非接触型銀行カードの分解組み立て図である。
【
図9】内部にクロスオーバー要素を備えるアンテナ回路もち、
図8に記載のスマートカード又は銀行カードと協働して使用される、販売ポイント移動端末を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
まず、
図1から
図5までを参照すると、アンテナ回路10の第1の実施形態は、好ましくは可撓性のイメージ可能な、回路基板12と、アンテナコイル14と、薄型クロスオーバー要素16とを備える。可撓性のイメージ可能な回路基板12は、裏面の主面18においては積層されていないので、導電層、トレース、又は回路、特にアンテナコイル14に関連する回路を持たない。詳細には、基板12の裏面の主面18は、プラスチックのメタライズされていない表面を提示しており、好都合には、導電層状皮膜を表面から除去することを必要としないように提供される。
【0022】
本実施形態においては、基板12は、表示ユニット開口22を定める連続した切れ目のない本体部20と、表示ユニット開口22から遠ざかる方向に本体部20の一側面から片持ち状に延びる尾部24と、本体部20の長手方向側面の対向するコーナー部から延びて尾部24を取り囲んで保護する細長いストリップ状取付け部26とを提供するように、打ち抜き加工されるか又は形成される。
【0023】
表示ユニット開口22が形成されているが、必要に応じて、基板には開口がなくてもよく、又は異なる寸法の開口を有することができる。尾部24は、開口22から遠ざかる方向に延びることが好ましいが、追加的に又は代替的に、基板の開口内又は別の開口内に延びることができ、或いは、アンテナコイル14が完全に本体部に設けられる場合には省略することができる。
【0024】
基板12上には取付け開口28が設けられており、アンテナ回路が組み込まれる装置のハウジング、シャーシ、又はモジュールと結合するようになっている。この場合、前述の取付け開口28の2つは、本体部20の対称位置の内側コーナー部に形成され、前述の取付け開口28の2つは、取付け部26の対称位置の内側コーナー部に形成される。
【0025】
この場合、本体部20の表示ユニット開口22は、販売ポイント移動端末すなわちPOS端末23の表示ユニット21を収容するような大きさである。
図9を参照すると、本体部20は、POS端末23の表示ユニット21のスクリーン25の外周の周りに延び、これに対して埋め込まれて、端末ハウジング29の前面27の直下に配置される。しかしながら、端末ハウジング29内のアンテナ回路の他の配置、及び例えばRFD回路又はNFC回路といった無線周波数無線通信回路を形成することを想定することができ、例えば、端末ハウジング29の前面に27に設けられたキーパッド33等のデータ入力ユーザーインターフェース31を取り囲むようにアンテナ回路10を配置することは好都合であり、より大きなアンテナコイルを利用することが可能になる。
【0026】
基板12の本体部20は、アンテナコイル14の内端部30と外端部32とを含む。これら内端部30及び外端部32の両方は、尾部24の近位端34に隣接する。アンテナコイル14は本体部20の周りを延び、内端部30及び外端部32、及び尾部24の自由端である遠位端36で終端し、適切なICチップ37を取り付ける準備ができている(
図8参照)。
【0027】
基板12の前面の主面38は、例えばこの場合は銅製であるか又は銅を含有する、少なくとも1つの導電性被覆が事前に積層されている。アンテナコイル14は、エッチング又は他の適当な処理によって形成され、積層された導電層40は、基板12のプラスチックベース表面42まで部分的に除去され、本体部20の周囲及び尾部24に沿って導電層を残すようになっている。積層された導電性被覆40は、取付け部26からは完全に除去される。
【0028】
従って、クロスオーバー要素16を施工して、内端部30と外端部32との間のアンテナコイル14の部分46と、尾部24とを橋絡する必要がある。本実施形態のクロスオーバー要素16は、アンテナコイル14の単一のコイル、ターン、又はトレースのみを橋絡しているが、必要に応じて、クロスオーバー要素16は、内端部30と外端部32の間を通る複数のコイル、ターン、又はトレースを橋絡することができる。
【0029】
クロスオーバー要素16の施工に関して、以下に
図1及び
図5に加えて
図2から
図4までの図面を参照する。
図2及び
図5に示されているように、電気絶縁層つまり誘電体層48は、この場合、まずアンテナコイル14の内端部30と外端部32との間に延びるトレースの部分46の上部に施工されて重なる。好ましくは、電気絶縁層48は、アンテナコイル14の横方向外側範囲と少なくとも一致する第1寸法と、内端部30と外端部32との間の距離にほぼ一致する第2寸法とをもつ。
【0030】
好都合には、電気絶縁層48は、誘電性のスクリーンプリント可能な紫外線硬化型非溶剤性インクとすることができ、例えば、ウレタンアクリレート結合剤及び/又はマンガンケイ酸塩フィルタを含有することができる。
【0031】
図3及び
図5を参照すると、細長い第1導電層又はトレース50は、電気絶縁層上に、この場合、その最上部に施工される。第1導電層50の長手方向の範囲は、電気絶縁層48に重なるので、アンテナコイル14の内端部30及び外端部32を直接結合する。
【0032】
第1導電層50は、銀等の貴金属粒子を含有したプリント可能な薄膜インクであることが好ましい。貴金属を使用することは、製造時の酸化を防止又は減少させるために好都合であるだけでなく、後続の電気メッキ工程のための適切なベース層を提供する。しかしながら、貴金属は、炭素等の導電性非貴金属粒子に置き換えること、又はこれを追加することが可能である。
【0033】
第1導電層50は、流動性及び硬化性の導電性PTFインクであることが好ましいが、他の誘電性材料及び/又は他の形成方法を考えることができる。
【0034】
図4及び
図5を参照すると、次に、細長い第2導電層又はトレース52が、第1導電層50上に、この場合、その最上部に施工される。第2導電層52は、電気絶縁層48と接触しないが、第1導電層50と結合することが好ましい。また、第2導電層52の長手方向の範囲は、第1導電層50よりも大きい。従って、第2導電層52は、第1導電層50に対し少なくとも長手方向に重なり、アンテナコイル14の内端部30と外端部32とを、第1導電層50の第2結合領域55に隣接する第1結合領域54において直接結合する。
【0035】
第2導電層52は、電気メッキされた金属層であることが好ましく、この場合、銅である。第1導電層50が適切なメッキ可能なベース層を提供するので、第2導電層52は、アンテナコイル14の内端部30と外端部32の両方に電気メッキされ、クロスオーバー要素16を完成させることができる。
【0036】
オーバープリント可能な電気絶縁層48と、プリント可能な第1導電層50と、電着された第2導電層52を生成することで、クロスオーバー要素16は、アンテナコイル14の抵抗と一致するか又は実質的に一致する抵抗を得るように調整することがより容易になる。これによって、電流方向に対する著しい変化がなく、共通の導電性材料の管理が不要なのでアンテナ性能が向上し、これは特にブロードキャスト用アンテナだけでなく読み込み用及び受信用アンテでも有益である。また、基板12の裏面の主面の18上に被覆又は層が全く存在しないことによって薄型アンテナを維持することは、アンテナ回路10が一部を形成する無線周波数無線通信回路を既存のPOS端末設計に組み込むことを可能にする点で有益である。
【0037】
追加的に又は代替的に、この新しいアンテナ回路10は、ブロードキャスト用又は非ブロードキャスト用スマートカード及び/又は非接触型銀行カード72に適用することができる。
図8及び
図9を参照されたい。
【0038】
図8を参照すると、スマートカード70又は非接触型銀行カード72は、上部基板76及び下部基板76から形成されたカード本体74と、その間に配置された回路基板12とを備える。この場合、基板12の尾部24は省略されている。
【0039】
接触パッド80は、回路アンテナ14内に形成され、パッドは外方に向いた電子カード読み取り接点82を含む。
【0040】
ICチップ37は接触パッド80の裏面に取り付けられており、フリップチップ取付け技術又は他の適切な電気的接続方法によって、その間で電気通信を行うようになっている。
【0041】
以下、
図6及び
図7の図面を参照して、アンテナ回路10の第2の実施形態を説明する。第1の実施形態において使用されたものと同一の参照符号は、同一の又類似する部品を示すために用いられており、詳細な説明は省略されている。
【0042】
片面アンテナ回路10は、回路基板12と、回路基板12の前面の主面38上のアンテナコイル14と、回路基板12の前面の主面38上のクロスオーバー要素16とを備える。しかしながら、この場合、クロスオーバー要素116は、内端部30と外端部32との間を通るアンテナコイル14、又はその各ターンを橋絡するための、剛性のある電気絶縁性ハウジング156と、該電気絶縁性ハウジング156を通過してアンテナコイル14の内端部30と外端部32とを電気接続するようになった導電体158とを含む。
【0043】
導電体158は、電気絶縁性コア又は巻型上に形成することができ、これはセラミック製コア又は巻型とすることができる。
【0044】
導電体158は、アンテナコイル14のコイル、トレース、又はターンと同じ材料によって形成されることが好ましい。従って、この場合、導電体158は銅であることが好ましい。
【0045】
導電体158の末端部160は、電気絶縁性ハウジング156から延び、例えば、はんだ付け又はろう付けによって内端部30及び外端部32のそれぞれに直接結合する。
【0046】
この第2の実施形態において、クロスオーバー要素116として、抵抗器162を使用することが好都合であり、例えば、抵抗器162の抵抗は0オームとすることができる。しかしながら、この抵抗器162は、第1の実施形態のクロスオーバー要素116よりも高さのある形状なので、再設計することなく既存の装置デザインに組み込むことはより困難であろう。
【0047】
代替的に、第2の実施形態によるクロスオーバー要素116は、機能性ICチップ、チップキャパシタ、又は他の適切な電子デバイスとすることができる。この場合、必要であれば、電気絶縁性ハウジング156はICチップハウジング又はキャパシタハウジングとすることができる。好ましくは、このような電子デバイスは、クロスオーバーの目的で単独で使用され、結果的に他の何らかの機能をもたず、回路の動的部分を形成しない、ダミー構成要素又は受動構成要素とすることができる。
【0048】
さらに、第2の実施形態の導電体158がアンテナコイル14とは異なる材料である場合、回路抵抗が変化して潜在的性能の低下につながる。
【0049】
従って、第2の実施形態の構成は、スマートカード又は非接触型銀行カードに組み込まれるような、非ブロードキャストの無線周波数無線通信回路により適するであろう。
【0050】
RFID及びNFCが用途として推奨されているが、任意の適切な遠距離用又は近距離用無線周波数無線通信回路を前述のアンテナ回路に使用することができる。
【0051】
回路基板の両面に導電性被覆を必要としないので、薄型を維持して、アンテナ性能を改善するだけでなく消費される材料も著しく低減した片面アンテナ回路を提供することが可能である。
【0052】
本発明の説明及び請求項において、「備える」、「含む」、「含有する」及び「もつ」、及びそれらの派生形の動詞の各々は、具体的な物品又は形状が存在することを示すために包括的な意味で使用されており、追加的な物品又は形状の存在を排除するものではない。
【0053】
明瞭にするために、別々の実施形態の文脈において説明された本発明の幾つかの特徴は、単一の実施形態において組み合わせて構成することができる。反対に、本発明の様々な特徴は、簡潔性のために、単一の実施形態の文脈において説明されているが、これらは別々に又は何らかの適切で部分的組み合わせで提供することができる。
【0054】
前記の実施形態は例示的に提供されており、当業者であれば、請求項によって決定される本発明の範囲から逸脱することなく、種々の他の変更例を理解できるはずである。
【符号の説明】
【0055】
10 アンテナ回路
12 回路基板
14 アンテナコイル
16 クロスオーバー要素
18 主面
20 本体部
21 表示ユニット
22 表示ユニット開口
24 尾部
26 取付け部
28 取付け開口
30 内端部
32 外端部
40 導電性被覆層
50 第1導電層
52 第2導電層
70 スマートカード
72 銀行カード
74 カード本体
156 ハウジング
158 導電体