(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
リポソームとは、リン脂質でできた多重層のカプセル構造のことをいう。その中には水相が内包されている。薬剤を投与する技術としておもに医学・薬学の分野で注目されている。またリポソームは、その構成成分であるリン脂質が、皮膚の角層の中のラメラ層に親和性を有し、ラメラ層において内包される成分を放出するため、皮膚に対して有効な成分を内包させることで、より効果の高い化粧料になることが明らかとなっており、このため化粧料の分野でも利用されている。
リポソームの大きさは100〜300nm(0.1〜0.3μm)が一般的であり、60〜80μmである肌の細胞よりも小さな粒子径であるが、ヒトの角質細胞の間隔は約50nmであるので、リポソームの経皮吸収性を向上させ、保湿効果を発揮させるためには粒子径50nm以下のリポソームを調製することが好ましい。
リポソームは凝集しやすく、リポソームが凝集(合一)するとラメラ液晶となって、リポソームが破壊される(非特許文献1)。このため粒子径を可能な限り小さくすることで、粒子の合一を抑制し、安定性を向上させる発明の提案が、今までに多くなされている。
【0003】
例えば、粒子径が約100nm程度のリポソームが特許文献1(特開平3−5426号公報)、特許文献2(特開平3−181491号公報)、特許文献3(特開平3−218309号公報)等に開示されている。マルトペンタオースセチルアミドでリポソームを安定化剤として用いて粒子径が約30nmのリポソームを調製する発明が特許文献4(特開平5−317677号公報)に開示されている。
【0004】
また、特許文献5(特許第5064717号公報)には、経時安定性の良いリポソームとして、リン脂質1に対して、ステロールの濃度比(質量/質量)が0.01〜0.1であり、HLB12.0〜16.0のポリオキシエチレンステロールエーテル濃度比(質量/質量)が0.01〜0.5であるリポソームが開示されている。さらにまた、特許文献6(特開2003−171257号公報)には、本発明に用いる側鎖にポリエチレングリコール構造を有するアクリル酸又はメタクリル酸系モノマーを構成単位とする重合体が、水分保持機能に優れていること、さらに特許文献7(特開2012−31087号公報)にはポリメタクリル酸メトキシポリエチレングリコールが高分子乳化剤として機能することが記載されているが、いずれもリポソームの検討はなされていない。
リポソームは凝集、合一を経てラメラ液晶となって、カプセル構造が破壊される。これを防止するためには、リポソームの直径を小さくすることが重要であることが知られている。また、リポソームの分子膜内の流動性を適度に保つためにコレステロールを配合することが通常採用されている。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本願は、ポリメタクリル酸メトキシポリエチレングリコール(F成分)を含むリポソームに係る発明であり、さらに詳しくは、リン脂質(A成分)、ステロール(B成分)、HLB12〜18のポリオキシエチレンステロールエーテル(C成分)、多価アルコール(D成分)、水(E成分)、ポリメタクリル酸メトキシポリエチレングリコール(F成分)を含有することを特徴とするリポソーム分散液に関する発明である。
本発明に用いるリン脂質(A成分)としては、卵黄レシチンや大豆レシチン等の天然のリン脂質、レシチン中の不飽和炭素鎖を水素添加により飽和結合に変えた水素添加卵黄レシチン、大豆レシチン等のリン脂質、天然レシチンから精製するか、あるいは合成したホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール等が挙げられる。これらのリン脂質を単独で、あるいは組み合わせて用いることができる。水素添加レシチンあるいは特定のリン脂質の濃度を高めた水素添加レシチンを用いてもよい。特に好ましくは水素非添加レシチンである。
【0013】
本発明に用いるリン脂質としては、天然のレシチンを精製し、ホスファチジルコリン含量を55〜85質量%に調整したものが、安定で、微小なリポソームを調製するために好ましい。ホスファチジルコリン含量が55質量%未満では、リポソーム形成の効率が低下する。ホスファチジルコリン含量が85質量%を超えるとリポソームが凝集しやすくなる。
【0014】
好ましい市販されている水素添加レシチン(水添レシチン)としては、日光ケミカルズ株式会社製 レシノールS−10M(ホスファチジルコリン含量55〜65%)、レシノールS−10E(ホスファチジルコリン含量75〜85%)、日清オイリオ株式会社製、ベイシスLP−60HR(ホスファチジルコリン含量65〜75%)、日本油脂株式会社製 COATSOME NC−61(ホスファチジルコリン含量60%以上)、キューピー株式会社製 卵黄レシチンPL100P(ホスファチジルコリン含量約80%)等が挙げられる。
また水素非添加レシチンとしては、H. Holstein GmbH & Co. KG製Phospholipon 85G、同社製LIPOID P100、日清オイリオ株式会社製 ベイシスLP−20、キューピー株式会社製 卵黄レシチンPL−30を例示できる。
【0015】
本発明のリポソームを調製するときのリン脂質の濃度は0.1〜10質量%が好ましく、1〜2質量%が特に好ましい。
【0016】
本発明に用いるステロール(B成分)としては、動物ステロール、植物ステロール(フィトステロール)、菌類ステロール等が挙げられる。
動物ステロールとしては、例えばコレステロール、コレスタノール、7−デヒドロコレステロールが挙げられる。また、植物ステロール(フィトステロール)としては、シトステロール、スチグマステロール、フコステロール、スピナステロール、ブラシカステロール等が挙げられる。また、植物ステロールの水素添加物であるフィトスタノールが挙げられる。菌類ステロールとしては、例えばエルゴステロールが挙げられる。
【0017】
本発明に用いるステロールとして、市販品を用いることもできる。例えば、タマ生化学株式会社製 フィトステロールS(フィトステロール)、日本精化株式会社製 コレステロールJSCI(コレステロール)、コグニスジャパン株式会社製 GENEROL 122N(フィトステロール)等が挙げられる。
【0018】
本発明のリポソームを調製するときのステロールの濃度(質量/質量)は、リン脂質との濃度比でリン脂質を1としたときに0.01〜0.1が好ましく、0.01〜0.05が特に好ましい。リン脂質1に対して、ステロールの濃度比が0.01未満あるいは0.1を超えるとリポソームの安定性があまり良くない。
【0019】
本発明に用いるポリオキシエチレンステロールエーテル(C成分)としては、ポリオキシエチレンコレステロールエーテル、ポリオキシエチレンコレスタノールエーテル、ポリオキシエチレンフィトステロールエーテル、ポリオキシエチレンフィトスタノールエーテル等が挙げられる。
【0020】
本発明に用いるポリオキシエチレンステロールエーテルのHLBは、12以上18以下である。ポリオキシエチレンステロールエーテルのHLBが12未満あるいは18を超えるとリポソームの安定性が悪くなる。
【0021】
本発明に用いるポリオキシエチレンステロールエーテルとして市販品を用いることができる。例えば、コグニスジャパン株式会社製 GENEROL 122N E10D(ポリオキシエチレン(10)フィトステロール)HLB12.5、日光ケミカルズ株式会社製 NIKKOL BPS−10T(ポリオキシエチレン(10)フィトステロール)HLB12.5、NIKKOL BPS−20T(ポリオキシエチレン(20)フィトステロール)HLB15.5、NIKKOL BPSH−25(ポリオキシエチレン(25)フィトスタノール)HLB14.5、NIKKOL BPS−30(ポリオキシエチレン(30)フィトステロール)HLB18、日本エマルジョン株式会社製 CS−20(ポリオキシエチレン(20)コレステロール)HLB13、CS−24(ポリオキシエチレン(24)コレステロール)HLB14、CS−30(ポリオキシエチレン(30)コレステロール)HLB15等が挙げられる。
【0022】
本発明のリポソームを調製するときのポリオキシエチレンステロールエーテルの濃度(質量/質量)は、リン脂質との濃度比でリン脂質を1としたときに0.01〜0.5が好ましく、0.01〜0.3が特に好ましい。リン脂質1に対して、ポリオキシエチレンステロールエーテルの濃度比が0.01未満であるとリポソームの安定性があまり良くない。ポリオキシエチレンステロールエーテルの濃度比が0.5を超えるとミセル形成等によりリポソームが形成され難くなる。
【0023】
本発明に用いる多価アルコール(D成分)としては、ジプロピレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、イソプレングリコール、1,2−ペンタンジオール等が挙げられる。
本発明のリポソームを調製するときにはジプロピレングリコールを配合することが好ましい。ジプロピレングリコールを配合しないと、沈殿の生成を防ぐことが困難になる場合がある。
本発明のリポソームを調製するために水(E成分)を配合することが必須である。
【0024】
本発明に用いるポリメタクリル酸メトキシポリエチレングリコール(F成分)は、メタクリル酸メトキシポリエチレングリコールを単独重合させて得られるものである。
【0025】
メタクリル酸メトキシポリエチレングリコールは、例えば、ポリエチレングリコールメチルエーテルとメタクリル酸クロリドとを反応させて得ることができる。また、一部は試薬として市販されているものもある。例えば、新中村化学工業株式会社から市販されたNKエステルM−90G(化学名:メトキシポリエチレングリコール#400メタクリレート)や日油株式会社から市販されるブレンマーPME(PME-400:n≒9)をモノマーとして用いることができる。重合体の製造方法については、常法に従えば良く、モノマーを溶媒中で重合開始剤の存在下、反応させて得られる。
この製造方法は、特許文献6、特許文献7に開示された方法である。
重合体の分子量は、その使用目的に応じて種々調整することができるが、通常はポリスチレン換算で1000以上、100000以下であり、好ましくは、2500以上、100000以下である。本発明のリポソームでは、上記重合体が通常0.02〜20質量%、好ましくは、0.1〜4質量%、特に好ましくは1〜4質量%の範囲で含有される。
【0026】
さらにpH調整剤(G成分)を配合し、pHを5〜8に調整することが好ましい。水(E成分)とpH調整剤(G成分)は、例えば、クエン酸バッファーとして用いることができる。
【0027】
本発明のリポソームは、高圧乳化機を用いて調製することができる。リン脂質、ステロール、ポリオキシエチレンステロールエーテルの多価アルコール溶液精製水、pH調整剤を60〜95℃に加温し、ホモミキサーにより分散する。さらに、ポリメタクリル酸メトキシポリエチレングリコールを添加混合し、次いで、高圧乳化機を用いて高圧乳化し、リポソームを調製する。高圧乳化機としてはプライミクス株式会社製 薄膜旋回型高速ホモミキサー(T.Kフィルミックス)、マイクロフルイディックス社製 超高圧ホモジナイザー(マイクロフルイダイザー)、エム・テクニック株式会社製 内部せん断力型ミキサー(クレアミックス)等を用いることができる。
例えば、エム・テクニック株式会社製 内部剪断力型ミキサー(クレアミックス)を用いた場合には、(ローターNo.R1、回転数14,000rpm以上)、(スクリーンNo.T15.5.24、回転数14,000rpm以上)で剪断力をかけることにより、60nm以下のリポソームを調製することができる。あるいはマイクロフルイダイザーを用いる場合は、圧力が2000psiになるようにチャンバーを選択し1回通液で目的のリポソームを得ることができる。
【0028】
本発明のリポソームを調製する際に、リン脂質、ステロール、ポリオキシエチレンステロールエーテル、多価アルコール、ポリメタクリル酸メトキシポリエチレングリコール、精製水、pH調整剤以外にも、本発明の効果を損なわない範囲で非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、油剤、保湿剤、水溶性高分子、抗酸化剤、紫外線吸収剤、キレート剤、防腐剤、抗菌剤、着色剤、香料等を配合することができる。また、アスコルビン酸誘導体、トコフェロール、レチノール誘導体等のビタミン類や植物抽出液等の美容成分を配合し、リポソームに美容成分を内包させることができる。
【0029】
本発明のリポソーム含有化粧料の剤型は、水溶液(リポソームが分散した水溶液を意味する)、水中油型乳化組成物、油中水型乳化組成物、多重乳化組成物、多層状剤のいずれでもよい。また、前記調製したリポソーム分散液をそのまま用いてもよい。本発明のリポソーム含有化粧料は化粧水、乳液、クリーム、美容液、パック、育毛剤、日焼け止め化粧料、リキッドファンデーション、ヘアトリートメント、ヘアリンス等とすることができる。
【0030】
化粧料に本発明のリポソーム分散液を含有させるためには、化粧料製造の最終工程でリポソーム分散液を70℃以下、好ましくは常温で攪拌混合することが望ましい。70℃以上でリポソームを混合すると、リポソームが壊れる恐れがある。化粧料のpHは5〜8であると、リポソームの安定性の点で好ましい。
【0031】
[試験例1]
<リポソームの調製並びにリポソーム粒子径の測定>
下記表1の組成で、実施例1〜5及び比較例1のリポソーム分散液を調製した。
【0033】
リン脂質溶液(リン脂質の多価アルコール溶液)を加温溶解して85℃とし、85℃に加温したステロール等溶液(ステロール、ポリオキシエチレンステロールエーテル等の非イオン性界面活性剤の多価アルコール溶液)を添加し、さらにトコフェロール、セチルポリエチレングリコールヒドロキシエチルパルタミドを添加し混合した。次いで85℃の精製水を添加し、ホモミキサー(プライミクス株式会社製 T.K.ホモミキサーMARK II 2.5型改)で6000rpmの回転数で5分間処理した。室温まで冷却し、クエン酸バッファーを添加し混合した。さらにポリメタクリル酸メトキシポリエチレングリコールを添加し、ホモミキサーで混合し、得られた前処理物をマイクロフルイディックス社製 超高圧ホモジナイザー(マイクロフルイダイザー)、チャンバー:JF12Y、APM:H30Z、を用いて、 圧力:20000 psi 通液回数:1回の条件で処理してリポソーム分散液を得た。
なお、クエン酸バッファーのpHは、6.5に調整したものを用いた。
また、成分Fのポリメタクリル酸メトキシポリエチレングリコールは、特開2012−31087号公報に開示した合成例1で得たものを用いた。
すなわち、100mlナスフラスコに重合開始剤AIBNを0.0403g量り、フラスコ内をアルゴンガスで3回置換した後、30mlの蒸留ベンゼンを加えてAIBNが溶解するまで室温下で攪拌し、これにポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(PEGの平均重合度は9)を5ml加え、60℃で48時間、続いて70℃で24時間加熱し、重合を行い、反応が停止した後目的物を回収した。この化合物は、ポリスチレン換算で数平均分子量Mn=15363、質量平均分子量Mw=35680であった。表中の「FK−90BG」(和光純薬工業(株)製)は、ハンドリングを良くするために、あらかじめポリメタクリル酸メトキシポリエチレングリコール20質量%、1,3−ブチレングリコール30質量%、水50%を混合したものである。
【0034】
得られたリポソームの数平均粒子径を測定した。測定方法は次のとおりである。
[数平均粒子径測定方法]
装置 ;大塚電子株式会社製 ゼータ電位・粒子径測定システム ELSZ-1100ZS
使用セル;標準ガラスセル(石英ガラスセル)
測定方法;動的光散乱法(DLS)
測定条件;25℃にて測定
【0035】
<試験結果>
得られたリポソームの粒子径を表2、
図1に示す。
【0037】
リポソームのサイズは、ポリメタクリル酸メトキシポリエチレングリコールの濃度に依存して小さくなることが確認できた。
【0038】
上記試験例1の試験中に、水素非添加レシチンと水素添加レシチンを用いて調製したリポソームに粒子径の相違が観察されたため、水素非添加レシチンと水素添加レシチンの比較試験を行った。
【0039】
[試験例2]
<リポソームの調製及び粒子径の測定によるリポソーム粒子径の変化の測定>
表3に示すポリメタクリル酸メトキシポリエチレングリコールの濃度で、表1の組成にあわせて調製した比較例1、2および実施例1〜14のリポソーム分散液を調製した。
なお水素添加レシチンはNIKKOLレシノールS−10M(日光ケミカルズ株式会社)を用いた。得られたリポソーム組成物の粒子径を試験例1と同様に測定した。
【0040】
<試験結果>
試験結果を下記表3及び
図2に示す。
【0042】
ポリメタクリル酸メトキシポリエチレングリコールの、リポソームの粒子径を小さくする効果は、水素非添加レシチンと組み合わせることによりその効果がより効果的に発揮されることが判明した。
【0043】
[試験例3]
高温保存に伴うリポソームの粒子径の変化抑制効果試験
<試験方法>
リン脂質を含むリポソームは、脂質多層膜の構造が高温の状態で保存されると、前記したように合一し、ラメラ液晶構造となり、リポソームとしての機能を失う。本発明品は、このような高温保存環境下においても安定であり、合一や凝集が抑制されている。
試験例2で調製した表4のリポソーム(比較例1、実施例1〜7の組成物)を40℃の恒温槽に4週間保管して、リポソームの粒子径の変化を観察した。なお粒子径の測定は、試験例1、2と同様に測定した。
【0044】
<結果>
40℃4週間経過後のリポソームの粒子径は、下記の表4に示すとおり、ポリメタクリル酸メトキシポリエチレングリコールを含むリポソームは、皮膚角層の細胞間隙のサイズである60nmにとどまっており、ポリメタクリル酸メトキシポリエチレングリコール濃度が1%を超えると50nmのオーダーにとどまっていた(実施例4、5)。
【0046】
この試験から、ポリメタクリル酸メトキシポリエチレングリコールは、リポソームの粒子を小さくするだけではなく、高温条件下で発生する凝集や合一によるリポソームの不安定化を抑制することが明らかとなった。
【0047】
[試験例4]
他のメタクリル酸ポリマーとの比較試験
<試験方法>
本発明に用いるポリメタクリル酸メトキシポリエチレングリコールと類似の構造を有する(メタクリル酸グリセリルアミドエチル/メタクリル酸ステアリル)コポリマーは、セラキュート−Lの商品名で市販されている皮膚弾力性改善剤である。この物質をポリメタクリル酸メトキシポリエチレングリコールに代えて配合した比較例3の組成と実施例15の組成(表5に配合を示す)を、試験例1と同様に調製して粒子径を測定した。
【0049】
<結果>
25℃での測定結果を下記表6に示す。
【0051】
比較例3の組成によるリポソームの粒子は実施例15の2倍以上の粒子径であった。また、比較例3の組成によるリポソームは40℃1ヶ月の保存により粒子径が84.9nmとなった。
この試験結果から、ポリメタクリル酸メトキシポリエチレングリコールのリポソームの粒子径を縮小させ、安定化する作用は、ポリメタクリル酸メトキシポリエチレングリコール特有の効果であって、構造に由来するものではないことが考えられる。
【0052】
化粧品処方例
以下に、本発明のリポソームを配合した化粧品の処方例を示す。
処方例1 保湿化粧水
(配合成分) (質量%)
1.実施例4のリポソーム分散液 0.5
2.グリセリン 3
3.1,3−ブチレングリコール 1
4.メチルグルセス−10 0.5
5.ジグリセリン 0.5
6.ジプロピレングリコール 6
7.1,2−ペンタンジオール 1
8.クエン酸 0.01
9.クエン酸ナトリウム 0.1
10.精製水 残余
(製法)
成分10に成分2〜9を撹拌溶解し、加温・冷却した後に成分1を加え、保湿化粧水を調製した。
(化粧品の効果)
処方例1の保湿化粧水は、浸透感がありべたつかず、心地よい使用感触であり、保湿効果に優れていた。また、保存安定性も良好であった。
【0053】
処方例2 保湿美容乳液
(配合成分) (質量%)
1.実施例4のリポソーム分散液 10
2.グリセリン 10
3.1,3−ブチレングリコール 5
4.ベタイン 3
5.ジプロピレングリコール 7
6.クエン酸 0.01
7.クエン酸ナトリウム 0.1
8.キサンタンガム 0.08
9.1,2−ペンタンジオール 1
10.スクワラン 3
11.ジメチコン 1
12.ポリソルベート60 0.8
13.ステアリン酸ソルビタン 0.3
14.精製水 残余
(製法)
成分14へ成分9に加熱分散させた成分8を加え、成分2〜7も加えて撹拌溶解する(水相)。成分10〜13を加熱溶解した中に、先に調整した水相を加え乳化した後、成分1を加えて撹拌して乳化組成物(保湿美容乳液)を調製した。
(化粧品の効果)
処方例2の乳化組成物は、べたつかずにふっくらとうるおう心地よい使用感触であり、保湿効果とその持続に優れていた。また、保存安定性も良好であった。