特許第6450149号(P6450149)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6450149
(24)【登録日】2018年12月14日
(45)【発行日】2019年1月9日
(54)【発明の名称】メンブレンスイッチ
(51)【国際特許分類】
   H01H 13/703 20060101AFI20181220BHJP
   H01H 13/7073 20060101ALI20181220BHJP
【FI】
   H01H13/703
   H01H13/7073
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-224947(P2014-224947)
(22)【出願日】2014年11月5日
(65)【公開番号】特開2016-91798(P2016-91798A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2017年6月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】とこしえ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】稲田 具貞
(72)【発明者】
【氏名】田中 渉
【審査官】 澤崎 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−229776(JP,A)
【文献】 特開平11−312439(JP,A)
【文献】 特開2002−358852(JP,A)
【文献】 特開平10−064363(JP,A)
【文献】 特開平09−115384(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0282585(US,A1)
【文献】 特開平02−228721(JP,A)
【文献】 実開昭61−196420(JP,U)
【文献】 実開昭62−165624(JP,U)
【文献】 特開2016−091796(JP,A)
【文献】 特開2016−091797(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 13/00 − 13/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有するスペーサと、
前記開口部に対応して設けられた第1の電極を有し、第1の粘着層を介して前記スペーサの一方主面に設けられた第1のシートと、
前記開口部を介して前記第1の電極に対向するように設けられた第2の電極を有し、第2の粘着層を介して前記スペーサの他方主面に設けられた第2のシートと、を備えたメンブレンスイッチにおいて、
前記スペーサと前記第1のシートとの間には、平面視において前記開口部の周囲に位置する前記第1の粘着層の第1の縁部が前記開口部の外側に位置することにより形成された第1の間隙が設けられており、
前記第1の縁部と前記第1のシートとの間及び前記第1の縁部と前記スペーサとの間の少なくとも一方に介在するように設けられた第1の増厚部材をさらに備え
下記(1)式を満たすことを特徴とするメンブレンスイッチ。
<D・・・(1)
但し、上記(1)式において、Dは前記第1の増厚部材と前記スペーサとの間及び前記第1の増厚部材と前記第1のシートとの間の少なくとも一方に介在する前記第1の粘着層の厚さであり、Dは前記第1の増厚部材の周囲において、前記第1のシートと前記スペーサとの間に介在する前記第1の粘着層の厚さである。
【請求項2】
請求項1に記載のメンブレンスイッチであって、
前記第1の増厚部材は、少なくとも前記第1の縁部と前記第1のシートとの間に形成されていることを特徴とするメンブレンスイッチ。
【請求項3】
請求項に記載のメンブレンスイッチであって、
前記第1の増厚部材は、前記第1の電極と一体的に形成されていることを特徴とするメンブレンスイッチ。
【請求項4】
請求項に記載のメンブレンスイッチであって、
前記第1の増厚部材は、前記第1の電極から独立して形成されていることを特徴とするメンブレンスイッチ。
【請求項5】
請求項に記載のメンブレンスイッチであって、
互いに離間して配置された複数の前記第1の増厚部材が、前記第1のシートに設けられていることを特徴とするメンブレンスイッチ。
【請求項6】
請求項2,4,5の何れか1項に記載のメンブレンスイッチであって、
前記第1の増厚部材における前記開口部の中心側端部は、平面視において前記開口部の内側に及んでいることを特徴とするメンブレンスイッチ。
【請求項7】
請求項1〜の何れか1項に記載のメンブレンスイッチであって、
前記スペーサと前記第2のシートとの間には、平面視において前記開口部の周囲に位置する前記第2の粘着層の第2の縁部が前記開口部の外側に位置することにより形成された第2の間隙が設けられており、
前記第2の縁部と前記第2のシートとの間及び前記第2の縁部と前記スペーサとの間の少なくとも一方に介在するように設けられた第2の増厚部材をさらに備えたことを特徴とするメンブレンスイッチ。
【請求項8】
請求項1〜の何れか1項に記載のメンブレンスイッチであって、
前記開口部に対応するように前記第1のシート又は前記第2のシートに取り付けられたラバードームをさらに備えたことを特徴とするメンブレンスイッチ。
【請求項9】
請求項に記載のメンブレンスイッチであって、
前記ラバードームの取付部における前記開口部の中心側の端部は、前記第1の増厚部材における前記開口部の中心と反対側の端部よりも、前記開口部の中心から離れる側に位置していることを特徴とするメンブレンスイッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メンブレンスイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
スペーサプレートの開口部を介して対向する電極同士の接点が、キーに対応する位置に配置されたメンブレンスイッチが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−129140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなメンブレンスイッチの上部に、押圧力によって弾性変形するラバードームを装着して構成したキーボードを備えるノートブックパソコンにおいては、使用により、圧力が加わっていなくてもメンブレンスイッチの電極同士が接近した状態になり、当該メンブレンスイッチが予期せずON状態になる場合があるという問題がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、予期せずON状態になることを抑制することができるメンブレンスイッチを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明に係るメンブレンスイッチは、開口部を有するスペーサと、前記開口部に対応して設けられた第1の電極を有し、第1の粘着層を介して前記スペーサの一方主面に設けられた第1のシートと、前記開口部を介して前記第1の電極に対向するように設けられた第2の電極を有し、第2の粘着層を介して前記スペーサの他方主面に設けられた第2のシートと、を備えたメンブレンスイッチにおいて、前記スペーサと前記第1のシートとの間には、平面視において前記開口部の周囲に位置する前記第1の粘着層の第1の縁部が前記開口部の外側に位置することにより形成された第1の間隙が設けられており、前記第1の縁部と前記第1のシートとの間及び前記第1の縁部と前記スペーサとの間の少なくとも一方に介在するように設けられた第1の増厚部材をさらに備え、下記(1)式を満たすことを特徴とする。
<D・・・(1)
但し、上記(1)式において、Dは前記第1の増厚部材と前記スペーサとの間及び前記第1の増厚部材と前記第1のシートとの間の少なくとも一方に介在する前記第1の粘着層の厚さであり、Dは前記第1の増厚部材の周囲において、前記第1のシートと前記スペーサとの間に介在する前記第1の粘着層の厚さである。
【0008】
]上記発明において、前記第1の増厚部材は、少なくとも前記第1の縁部と前記第1のシートとの間に形成されていてもよい。
【0009】
]上記発明において、前記第1の増厚部材は、前記第1の電極と一体的に形成されていてもよい。
【0010】
]上記発明において、前記第1の増厚部材は、前記第1の電極から独立して形成されていてもよい。
【0011】
]上記発明において、互いに離間して配置された複数の前記第1の増厚部材が、前記第1のシートに設けられていてもよい。
【0012】
]上記発明において、前記第1の増厚部材における前記開口部の中心側端部は、平面視において前記開口部の内側に及んでいてもよい。
【0013】
]上記発明において、前記スペーサと前記第2のシートとの間には、平面視において前記開口部の周囲に位置する前記第2の粘着層の第2の縁部が前記開口部の外側に位置することにより形成された第2の間隙が設けられており、前記第2の縁部と前記第2のシートとの間及び前記第2の縁部と前記スペーサとの間の少なくとも一方に介在するように設けられた第2の増厚部材をさらに備えてもよい。
【0014】
]上記発明において、前記開口部に対応するように前記第1のシート又は前記第2のシートに取り付けられたラバードームをさらに備えてもよい。
【0015】
]上記発明において、前記ラバードームの取付部における前記開口部の中心側の端部は、前記第1の増厚部材における前記開口部の中心と反対側の端部よりも、前記開口部の中心から離れる側に位置していてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、スペーサと第1のシートとの間に、当該スペーサの開口部の周囲に位置する第1の粘着層の第1の縁部が、平面視において開口部の外側に位置することにより形成された間隙が設けられている。そして、第1の縁部と第1のシートとの間及び第1の縁部とスペーサとの間の少なくとも一方に介在するように設けられた第1の増厚部材を備えている。これにより、圧力が加わっていなくてもメンブレンスイッチの電極同士が接近した状態になることが防止でき、メンブレンスイッチが予期せずON状態になることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は本発明の実施形態におけるメンブレンスイッチを示す断面図である。
図2図2は本発明の実施形態におけるメンブレンスイッチを構成する第1のシートの内面を示す平面図である。
図3図3(A)及び図3(B)は本発明の実施形態におけるメンブレンスイッチを構成する第1のシートの変形例を示す平面図であり、図3(A)は第1変形例であり、図3(B)は第2変形例である。
図4図4(A)及び図4(B)は本発明の実施形態におけるメンブレンスイッチの作用を説明するための断面図であり、図4(A)は比較例であり、図4(B)は実施例である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1は本実施形態におけるメンブレンスイッチを示す断面図であり、図2は本実施形態におけるメンブレンスイッチを構成する下部シート(第1のシート)の内面を示す平面図であり、図3(A)及び図3(B)は本実施形態におけるメンブレンスイッチを構成する下部シートの第1及び第2変形例をそれぞれ示す断面図である。
【0020】
本実施形態におけるメンブレンスイッチ1は、例えばノートブックパソコンのキーボードに用いられる入力スイッチであり、図1に示すように、スペーサ2と、下部シート3と、上部シート4(第2のシート)と、上部シート4の上部に取り付けられたラバードーム5と、を備えている。なお、メンブレンスイッチ1の用途は特に限定されない。
【0021】
スペーサ2は、所定の厚さを有するシート状の部材であり、例えばポリエチレンテレフタレート(PET:Polyethylene terephthalate)やポリエチレンナフタレート(PEN:Polyethylene naphthalate)等の可撓性を有する絶縁性材料から形成されている。このスペーサ2には、電極31、41(何れも後述)が互いに対向するための円形状の開口部20を有している。開口部20の形状は、図2に示すように、平面視において下部電極31及び上部電極41を包囲する形状であればよく、特に限定されない。例えば、平面視において開口部20が矩形状等であってもよい。
【0022】
スペーサ2の下側主面21には下部粘着層33を介して下部シート3が設けられていると共に、スペーサ2の上側主面22には上部粘着層43を介して上部シート4が設けられている。本実施形態におけるスペーサ2の下側主面21が本発明の一方主面の一例に相当し、上側主面22が本発明の他方主面の一例に相当する。
【0023】
下部シート3は、例えばポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等の可撓性を有する絶縁性材料から構成されている。下部粘着層33は、当該下部シート3の主面32に粘着材を印刷することにより形成されており、スペーサ2と下部シート3との間において、スペーサ2の開口部20の周縁部201を除いた略全面に設けられている。下部粘着層33の下部縁部331は、平面視において、開口部20から所定距離離れて当該開口部20の周囲に位置している。
【0024】
また、本実施形態における下部シート3の主面32には、図2に示すように、下部電極31及び当該下部電極31に接続された引き出し配線34が設けられている。下部電極31及び引き出し配線34は、銀ペーストや銅ペースト等の導電性ペーストを、下部シート3の主面32上に印刷して硬化することにより形成されている。このような印刷の方法としては、スクリーン印刷法やグラビアオフセット印刷法、インクジェット印刷法等を例示することができる。なお、本実施形態において、下部電極31及び引き出し配線34は一体的に形成されているが、それらを個別に形成してもよい。
【0025】
下部電極31の外形は、図2に示すように、スペーサ2の開口部20よりも小さい径の円形状となっており、スペーサ2の開口部20に対応する位置に設けられている。すなわち、平面視において、下部電極31の中心とスペーサ2の開口部20の中心Cとは、相互に略一致している。なお、「中心」とは、平面形状における重心に相当する点を示す。下部電極31の形状は、上記に特に限定されない。例えば、下部電極の外形が、矩形状、メッシュ状又は櫛歯状等であってもよい。
【0026】
本実施形態の下部シート3の主面32における下部電極31の周囲には、図1及び図2に示すように、下部増厚部材35が設けられている。本実施形態における下部増厚部材35は、下部電極31と同様の材料及び方法により下部シート3上に設けられている。なお、下部増厚部材35が下部電極31とは異なる材料及び方法により設けられていてもよい。例えば、下部増厚部材35を絶縁性材料から構成してもよい。
【0027】
下部増厚部材35におけるスペーサ2の開口部20側の端部は、当該開口部20の内側に及んでおり、平面視において下部増厚部材35と開口部20とは重複している。また、下部増厚部材35の高さ(厚さ)は、下部電極31の高さ(厚さ)以上、下部粘着層33の高さ(厚さ)未満となっており、これにより、開口部20の周縁部201において、スペーサ2と下部増厚部材35との間には、下部間隙202が形成されている。なお、下部増厚部材35におけるスペーサ2の開口部20側の端部が開口部20の内側に及んでおらず、当該端部が開口部20の外側に形成されていてもよい。
【0028】
また、下部増厚部材35において開口部20の中心Cから離れる側の端部は、図1に示すように、下部粘着層33の中に埋没している。このため、下部増厚部材35は、下部粘着層33の下部縁部331と下部シート3との間に介在した状態となっている。
【0029】
これにより、本実施形態におけるメンブレンスイッチ1では、下記(2)式が成立している。
<D・・・(2)
但し、上記(2)式において、Dは下部増厚部材35とスペーサ2との間に介在する下部粘着層33の厚さであり、Dは下部増厚部材35の周囲(下部増厚部材35が設けられていない部分)において下部シート3とスペーサ2との間に介在する下部粘着層33の厚さである。
【0030】
なお、下部増厚部材35において下部粘着層33の中に埋没している部分の距離Rは、メンブレンスイッチ1が予期せずON状態になることを抑制する観点から、当該下部増厚部材35のダレ形状(図4(B)左図におけるP´)が形成される部分の距離R以上であることが好ましい。なお、図4(B)左図に示す例では、ダレ形状P´によって、下部粘着層33は下部縁部331に向かうに従って厚さが徐々に小さくなっており、これにより、下部縁部331は縁部332(下部粘着層33とスペーサ2との境界面における縁部)よりも開口20側に形成されている。同様に、上部粘着層43も上部縁部431に向かうに従って厚さが徐々に小さくなっており、これにより、上部縁部431は縁部432(上部粘着層43とスペーサ2との境界面における縁部)よりも開口20側に形成されている。
【0031】
本実施形態では、下部電極31を一定距離離れて取り囲むようにそれぞれ独立した複数(本例において4つ)の下部増厚部材35が設けられており、それらの下部増厚部材35は、平面視においてスペーサ2の開口部20の縁及び下部粘着層33の下部縁部331と重なるように略等間隔で配置されている。各下部増厚部材35は、下部電極31の中心に向かって緩やかに湾曲する楕円形状又は略勾玉状となっている。なお、下部シート3に設けられる下部増厚部材35の数や、当該下部増厚部材35の配置及び形状は特に限定されない。例えば、複数の下部増厚部材35の外形が相互に異なっていてもよい。
【0032】
また、例えば、図3(A)に示すように、2つの下部増厚部材35Bが下部シート3の主面32に設けられていてもよい。図3(A)の例において下部増厚部材35Bは、下部電極31の径よりも小さい径を有する真円状の外形をそれぞれ備えており、下部電極31の中心Cを挟んで引き出し配線34の反対側に設けられている。また、2つの下部増厚部材35Bは、引き出し配線34の延在方向を中心とする線対称位置にそれぞれ配置されていると共に、平面視においてスペーサ2の開口部20の縁及び下部粘着層33の下部縁部331と重なるように配置されている。
【0033】
また、例えば、図3(B)に示すように、下部電極31が下部増厚部材35Cと連続しており、それらが同一の材料から一体的に形成されていてもよい。また、特に図示しないが、例えば、複数の下部増厚部材35の内の一部のみが、下部電極31と一体的に形成され、他の下部増厚部材35は下部電極31から独立して形成されていてもよい。また、下部増厚部材35の一部が相互に繋がっていてもよい。
【0034】
上部シート4も、下部シート3と同様、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等の可撓性を有する絶縁性材料から構成されている。上部粘着層43は、当該上部シート4の主面42に粘着材を印刷することにより形成されており、スペーサ2と上部シート4との間において、スペーサ2の開口部20の周縁部201を除いた略全面に設けられており、上部粘着層43の上部縁部431は、平面視において開口部20から所定距離離れて当該開口部20の周囲に位置している。
【0035】
図1に示すように、上部シート4の主面42には、上部電極41及び当該上部電極41に接続された引き出し配線(不図示)が設けられている。上部電極41及び引き出し配線は、下部電極31と同様の材料及び方法により設けられている。
【0036】
上部電極41の外形は、下部電極31と同様の円形状となっており、スペーサ2の開口部20に対応する位置に設けられている。すなわち、平面視において、上部電極41の中心とスペーサ2の開口部20の中心Cとは、相互に略一致している。なお、上部電極41の形状は、上記に特に限定されない。例えば、上部電極の外形が、矩形状、メッシュ状又は櫛歯状等であってもよい。
【0037】
本実施形態の上部シート4の主面42における上部電極41の周囲には、図1に示すように、上部増厚部材45が設けられている。本実施形態における上部増厚部材45は、下部シート3に設けられた下部増厚部材35を構成する材料及び形成方法と同様の材料及び形成方法で上部シート4に形成されていると共に、下部増厚部材35と同様の形状及び配置となっている(図2参照)。なお、下部シート3の主面32に設けられる下部増厚部材35の平面視における形状及び配置と、上部シート4の主面42に設けられる上部増厚部材45の平面視における形状及び配置と、が相互に異なっていてもよい。
【0038】
上部増厚部材45におけるスペーサ2の開口部20側の端部は、当該開口部20の内側に及んでおり、平面視において上部増厚部材45と開口部20とは重複している。上部増厚部材45の高さ(厚さ)は、上部電極41の高さ(厚さ)以上、上部粘着層43の高さ(厚さ)未満となっている。これにより、開口部20の周縁部201において、スペーサ2と、上部増厚部材45との間には、上部間隙203が形成されている。
【0039】
また、上部増厚部材45において開口部20の中心Cから離れる側の端部は、上部粘着層43の中に埋没している。このため、上部増厚部材45は、上部粘着層43の上部縁部431と上部シート4との間に介在した状態となっている。
【0040】
これにより、本実施形態におけるメンブレンスイッチ1では、下記(3)式が成立している。
<D・・・(3)
但し、上記(3)式において、Dは上部増厚部材45とスペーサ2との間に介在する上部粘着層43の厚さであり、Dは上部増厚部材45の周囲(上部増厚部材45が設けられていない部分)において上部シート4とスペーサ2との間に介在する上部粘着層43の厚さである。
【0041】
なお、下部増厚部材35と同様に、上部増厚部材45において上部粘着層43の中に埋没している部分の距離は、メンブレンスイッチ1が予期せずON状態になることを抑制する観点から、当該上部増厚部材45のダレ形状(図4(B)左図におけるP´)が形成される部分の距離以上であることが好ましい。
【0042】
本実施形態では、下部シート3に下部増厚部材35が設けられていると共に、上部シート4に上部増厚部材45が設けられているが、これらの内の一方の増厚部材を省略してもよい。なお、メンブレンスイッチ1が予期せずON状態になることを抑制する観点から、本実施形態のように、下部シート3及び上部シート4の両方に増厚部材が設けられることが好ましい。
【0043】
本実施形態では、図1に示すように、上部シート4の上側主面にラバードーム5が取り付けられている。ラバードーム5は、当該ラバードーム5の上方に上下動可能な状態で設けられるキートップ(不図示)を介して押圧力が伝達された際、当該キートップを元の位置に復帰させるために設けられるゴム材料等からなる弾性部材である。このラバードーム5は、略カップ状の本体部51と、当該本体部51の縁部から外側に向かって拡がるように形成された平板ドーナツ状の取付部52と、から構成されており、スペーサ2の開口部20に対応する位置に取り付けられている。なお、本実施形態では、ラバードーム5が上部シート4に直接取り付けられているが、特にこれに限定されない。例えば、上部シート4の表面に、PET等から構成されるラバードーム支持部材(不図示)を設け、当該カバー部材を介してラバードーム5を上部シート4に取り付けてもよい。
【0044】
本体部51の内面中央部には、図1中の下方に向けて突出するように形成された突起511が設けられている。取付部52は本体部51の全周に形成された平板ドーナツ状を有しており、当該取付部52の下面523が上部シート4の上側主面に密着している。本体部51及び取付部52の外縁形状は、平面視において互いに同心円状となっている。また、本実施形態において、ラバードーム5の本体部51及び取付部52の外縁形状の中心は、スペーサ2の開口部20の中心Cと略一致している。なお、ラバードーム5の形状は特に上記に限定されない。
【0045】
本実施形態では、図1に示すように、ラバードーム5の取付部52における内縁部521は、平面視において円形状を有している。また、当該内縁部521は、下部増厚部材35における開口部20の中心Cから遠い側の端部から、所定距離Wほど開口部20の中心Cから離れる側に位置している。同様に、内縁部521は、上部増厚部材45における開口部20の中心Cから遠い側の端部から、所定距離Wほど開口部20の中心Cから離れる側に位置している。
【0046】
メンブレンスイッチ1に入力が行われる際は、キートップ(不図示)を介して図1中の上方から印加される押圧力が、ラバードーム5の本体部51の頂部分に伝達される。次いで、当該押圧力によってラバードーム5の取付部52の下面523が上部シート4を押圧し、当該押圧によって下部電極31と上部電極41とが互いに接近する。そして、本体部51の頂部分は図1中の下方向に向かって凹むように変形し、突起511の先端が上部シート4の上側主面に接触した状態で、上部シート4が下部シート3に向かって押圧されることにより、下部電極31と上部電極41とが接触して導通し、入力が行われる。
【0047】
次に、本実施形態におけるメンブレンスイッチ1の作用について説明する。図4(A)及び図4(B)は、本実施形態におけるメンブレンスイッチ1の作用を説明するための断面図であり、図4(A)は比較例であり、図4(B)は実施例である。なお、図4(A)及び図4(B)では、ラバードーム5を省略している。
【0048】
本実施形態では、下部シート3とスペーサ2とを固定するための下部粘着層33は、下部増厚部材35が設けられた下部シート3に粘着材を印刷することにより形成される。同様に、上部シート4とスペーサ2とを固定するための上部粘着層43は、上部増厚部材45が設けられた上部シート4に粘着材を印刷することにより形成される。これにより、粘着層33、43の端部には、図4(A)左図に示すように、ダレ形状Pが形成される。
【0049】
このため、下部粘着層33とスペーサ2との境界面における当該下部粘着層33の縁部332は、下部粘着層33と下部シート3との境界面における当該下部粘着層33の下部縁部331よりも、開口部20の中心Cから離れる側に位置することとなる。同様に、上部粘着層43とスペーサ2との境界面における当該上部粘着層43の縁部432は、上部粘着層43と上部シート4との境界面における当該上部粘着層43の上部縁部431よりも、開口部20の中心Cから離れる側に位置することとなる。
【0050】
これに従い、メンブレンスイッチ1をノートブックパソコンのキーボード等に用いた場合に、当該ノートブックパソコンの筐体に対して加わった外力に起因する押圧力Fがメンブレンスイッチに対して印加されると、図4(A)右図に示すように、下部粘着層33の縁部332及び上部粘着層43の縁部432を支点としてシート3、4が湾曲することとなる。そして、当該湾曲に伴って、電極31、41が互いに接触してスイッチがONしやすくなることによる予期しないON状態が発生し易くなる。また、シート3、4が一度湾曲すると、ダレ形状Pを形成する面がスペーサ2に付着して電極同士が接近した状態になり易くなるため、簡単にオンしてしまうという不都合がある。また、電極同士が接触したままの状態になると電極間でスパークが発生して当該電極が損傷する場合もある。このようなことは、ノートブックパソコンの薄型化に伴ってメンブレンスイッチのスペーサが薄型化されることにより特に生じ易い。
【0051】
これに対し、本実施形態におけるメンブレンスイッチ1では、下部粘着層33の下部縁部331と下部シート3との間に介在するように、下部電極31の周囲に下部増厚部材35が設けられている。これにより、メンブレンスイッチ1に対して押圧力F印加された場合であっても、図4(B)右図に示すように、縁部332を支点とした下部シート3の湾曲が生じ難くなると共に、電極31、41が互いに接近したままの状態になることを回避できるため、予期しないON状態の発生や電極31、41の損傷を抑制することができる。この効果は、予めスペーサ2側に印刷された粘着層や、シート3、4又はスペーサ2に予め貼付された粘着層により、シート3、4及びスペーサ2を相互に固定して構成したメンブレンスイッチにおいても同様に奏する。
【0052】
また、本実施形態のメンブレンスイッチ1では上記(2)式が成立しており、下部粘着層33の端部においてダレ形状P´が形成される部分は、比較例(図4(A)左図におけるP)と比べて相対的に小さくなる。このため、上記の効果をより向上することができる。また、本実施形態では、上部シート4にも同様の上部増厚部材45が設けられていると共に、上記(3)式が成立することにより、上記の効果を一層向上することができる。
【0053】
また、本実施形態では、複数の下部増厚部材35が下部シート3の主面32に互いに離間して設けられていると共に、複数の上部増厚部材45が上部シート4の主面42に互いに離間して設けられている。このため、メンブレンスイッチ1の予期しないON状態の発生や電極31、41の損傷をより効果的に抑制することができる。
【0054】
また、本実施形態の増厚部材35、45における開口部20の中心側端部は、平面視において当該開口部20の内側に位置している。このため、メンブレンスイッチ1に対して外部から押圧力Fが印加された際、下部増厚部材35は下部シート3とスペーサ2との間で挟まれると共に、上部増厚部材45は上部シート4とスペーサ2との間で挟まれることとなる。これにより、メンブレンスイッチ1の予期しないON状態の発生をより一層抑制することができる。
【0055】
また、本実施形態のメンブレンスイッチ1では、図1に示すように、上部シート4の上部にラバードーム5が取り付けられており、当該ラバードーム5の取付面(下面523)における開口部20の中心側の端部は、増厚部材35、45における開口部20の中心と反対側の端部よりも、距離Wほど開口部20の中心から離れる側に位置している。これにより、ラバードーム5の下面523を介して伝わる外力によってシート3、4が湾曲し難くなるため、上記の効果をより一層向上することができる。
【0056】
また、本実施形態では、スペーサ2と下部増厚部材35との間に下部間隙202が形成されていると共に、スペーサ2と上部増厚部材45との間に上部間隙203が形成されている。これにより、メンブレンスイッチ1の入力の際に、下部粘着層33又は上部粘着層43が電極31、41付近にはみ出すことによるスイッチング性の低下を防ぐことができる。
【0057】
さらに、本実施形態では、増厚部材35、45が電極31、41からそれぞれ独立して形成されている。このため、電極31、41を構成する銀等とは異なる材料から増厚部材35、45を構成することができ、メンブレンスイッチ1のコスト低減を図ることも可能となる。
【0058】
本実施形態における下部シート3、下部粘着層33、下部電極31、下部縁部331、下部間隙202、及び下部増厚部材35が、本発明の第1のシート、第1の粘着層、第1の電極、第1の縁部、第1の間隙、及び第1の増厚部材の一例にそれぞれ相当する。また、本実施形態における上部シート4、上部粘着層43、上部電極41、上部縁部431、上部間隙203、及び上部増厚部材45が、本発明の第2のシート、第2の粘着層、第2の電極、第2の縁部、第2の間隙、及び第2の増厚部材の一例にそれぞれ相当する。
【0059】
なお、下部シート3等と上部シート4等とを相互に入れ替えた構成として本発明を適用してもよい。すなわち、本実施形態における下部シート3、下部粘着層33、下部電極31、下部縁部331、下部間隙202、及び下部増厚部材35が、本発明の第2のシート、第2の粘着層、第2の電極、第2の縁部、第2の間隙、及び第2の増厚部材の一例にそれぞれ相当し、本実施形態における上部シート4、上部粘着層43、上部電極41、上部縁部431、上部間隙203、及び上部増厚部材45が、本発明の第1のシート、第1の粘着層、第1の電極、第1の縁部、第1の間隙、及び第1の増厚部材の一例にそれぞれ相当する構成として本発明を適用してもよい。
【0060】
以上に説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0061】
例えば、上述の実施形態では、下部増厚部材35が下部縁部331と下部シート3との間に設けられているが、当該下部増厚部材35が下部縁部331とスペーサ2の下側主面21との間に設けられていてもよい。また、下部縁部331と下部シート3との間、及び、下部縁部331とスペーサ2の下側主面21との間の両方に下部増厚部材35が設けられていてもよい。同様に、上部増厚部材45が上部縁部431とスペーサ2の上側主面22との間に設けられていてもよく、上部縁部431と上部シート4との間、及び、上部縁部431とスペーサ2の上側主面22との間の両方に上部増厚部材45が設けられていてもよい。これらの場合においても、上述した実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0062】
また、上記の場合において、下記(4)式及び(5)式の少なくとも一方を満たしてもよい。
<D・・・(4)
<D・・・(5)
但し、上記(4)式において、Dは下部増厚部材35と下部シート3との間に介在する下部粘着層33の厚さであり、Dは下部増厚部材35の周囲(下部増厚部材35が設けられていない部分)において下部シート3とスペーサ2との間に介在する下部粘着層33の厚さである。また、上記(5)式において、Dは上部増厚部材45と上部シート4との間に介在する上部粘着層43の厚さであり、Dは上部増厚部材45の周囲(上部増厚部材45が設けられていない部分)において上部シート4とスペーサ2との間に介在する上部粘着層43の厚さである。
【0063】
上記(4)式及び(5)式の少なくとも一方を満たす場合には、予期しないON状態の発生や電極31、41の損傷を抑制する効果をより一層向上することができる。
【符号の説明】
【0064】
1・・・メンブレンスイッチ
2・・・スペーサ
20・・・開口部
201・・・周縁部
202・・・下部間隙
203・・・上部間隙
21・・・下側主面
22・・・上側主面
3・・・下部シート
31・・・下部電極
32・・・主面
33・・・下部粘着層
331・・・下部縁部
35・・・下部増厚部材
4・・・上部シート
41・・・上部電極
42・・・主面
43・・・上部粘着層
431・・・上部縁部
45・・・上部増厚部材
5、5B・・・ラバードーム
51・・・本体部
52・・・取付部
521・・・内縁部
523・・・下面
P、P´・・・ダレ形状
図1
図2
図3
図4