(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
機体の特徴部から修理範囲のファスナまでの距離を測る場合、そのファスナの近くに適当な特徴部があるとは限らず、距離相応の誤差が計測値に含まれる。また、人為的な計測ミスを起こす可能性もある。
一方、位置決め治具を用いると位置精度は高いが、修理対象に対応する治具をその都度製作するので修理に時間が掛かり、コストも高い。
そこで、本発明は、修理に必要とする時間およびコストを抑えながら、修理材における加工位置を精度よく特定することのできる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、所定の加工により形成された加工部を含む部材に配置される修理材における加工位置の特定方法であって、修理材が部材に配置される前、部材に存在する加工部に、周囲とは超音波の伝搬特性が異なる部分を含むマーカーを配置するか、あるいは、加工部に空洞を確保するステップと、修理材が部材に配置された後、修理材により覆われた部材に超音波を印加し、超音波により捉えられたマーカーの位置に加工の位置を特定するステップと、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、高価な治具を製作したり、機体の特徴部から加工部までの距離を計測したりすることなく、マーカー、あるいは加工部に確保した空洞を利用して超音波探傷により加工位置を容易に特定することができる。
【0008】
本発明における修理材には、部材を覆う修理パッチと、修理パッチを修理対象の部材に接合する接着材とを含めることができる。
【0009】
本発明においては、空気を内包するマーカーを用いることが好ましい。
空気は、修理材や修理対象部材の材質とは音波の伝搬特性が大きく相違するので、超音波探傷により顕在化されるマーカーの位置を通じて正確な加工位置を容易に特定することができる。
【0010】
加工部が、部材を貫通する貫通孔、または、部材に形成された穴である場合は、修理材が部材に配置される前、加工部の内側の全体をマーカーと封止材とにより埋めて封止することが好ましい。そうすると、損傷箇所を切除する際に加工部の縁に工具が引掛かったりすることなく所望の形状に切除することができる。
【0011】
上記と同じく、加工部が、部材を貫通する貫通孔、または、部材に形成された穴である場合に、マーカーは、マーカーの軸心を志向している形態の指示部材を有する、あるいは当該軸心を志向している形態の空洞を有することが好ましい。
上記形態の指示部材あるいは空洞は、その周囲との音波伝搬特性の相違に基づいて、貫通孔または穴の軸心を示しているので、加工位置を正確に特定することができる。
【0012】
本発明は、特に、硬化前の繊維強化樹脂から形成された修理パッチを有する修理材を用いる場合に適合する。かかる修理パッチ(プリプレグと呼ばれる)に加工部を事前に形成しておくと、加熱硬化により部材に接合する際に加工部の形状変化が生じるので、接合後に加工する必要性が高い。本発明によれば、接合後に修理パッチに覆われる加工部の位置をマーカーを用いた超音波探傷により特定することができる。
【0013】
上述の加工位置の特定方法を含む本発明の修理方法は、所定の加工により形成された加工部を含む部材に配置される修理材を用いるものであって、修理材が部材に配置される前、部材に存在する加工部に、周囲とは超音波の伝搬特性が異なる部分を含むマーカーを配置する第1ステップと、修理材を部材に接合する第2ステップと、修理材により覆われた部材に超音波を印加し、超音波により捉えられたマーカーの位置に加工の位置を特定する第3ステップと、修理材および部材のうち少なくとも修理材に対して加工の位置に加工する第4ステップと、を備えることを特徴とする。
本発明によれば、元の位置と同じ加工位置に間違いなく加工して修理対象を復元することができる。
【0014】
部材に存在する加工部が、部材を貫通する貫通孔である場合は、修理材が部材に配置される前、貫通孔の内側を封止材により封止する封止ステップを備え、第2ステップでは、修理材と部材との間を減圧しながら、修理材を加熱により硬化させ、第4ステップでは、修理材および部材に亘り加工
の位置に加工することで、マーカーおよび封止材を除去することが好ましい。
貫通孔を封止することで加熱時の減圧が可能となり、大気圧に対する圧力差により修理材を部材に押し付けて確実に接合することができる。
また、特定された加工
の位置への加工と同時に、封止材およびマーカーを取り除くことができる。
【0015】
上記封止ステップでは、マーカーと、封止材とによって貫通孔の内側の全体を埋めて封止することが好ましい。
そうすると、損傷箇所を切除する際に貫通孔の縁に工具が引掛かったりすることなく所望の形状に切除することができる。
【0016】
本発明の別の加工位置の特定方法は、加工部が、部材を貫通する貫通孔、または、部材に形成された穴であり、修理材が部材に配置された後、加工部の内側に空洞が残されており、修理材により覆われた部材に超音波を印加し、超音波により捉えられた空洞の位置に加工の位置を特定するステップを備えることを特徴とする。
加工部の内側の一部または全部に残された空洞が、上述のマーカーと同様に機能する。
換言すると、加工部の内側に空洞が残されない場合に、上述のマーカーにより加工部の位置を示すことができる。
【0017】
上述した修理材における加工位置の特定方法、および修理方法は、航空機を構成する部材の修理に適合する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、修理に必要とする時間およびコストを抑えながら、修理材における加工位置を精度よく特定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態では、航空機の機体に使用された複合材の修理について説明する。
本明細書において、「複合材」は、炭素繊維やガラス繊維等の強化樹脂を含む繊維強化樹脂を意味する。
本実施形態では、修理が施される機体の範囲に、ファスナを挿入する貫通孔が含まれる場合の修理について説明する。
【0021】
図1(a)は、複合材から形成されたパネル10を示している。パネル10は、必要な厚みに応じた数だけ重ねられた複数の層からなる。各層は、シート状の繊維基材と、繊維基材に含浸させた樹脂とから構成されている。
パネル10は、アルミニウム合金等の金属材料から形成することもできる。
【0022】
パネル10は、図示しない他の部材と、ファスナ11により締結されている。パネル10にはファスナ11が挿入される貫通孔12が厚み方向に沿って形成されている。
このパネル10が、衝撃により損傷すると、損傷した箇所を含め、強度・剛性を十分に確保するために必要な範囲で修理が必要となる。
【0023】
修理にあたり、パネル10の内部の損傷の状態を調べる超音波探傷が行われる。複合材のパネル10の内部損傷としては、例えば層間剥離を挙げることができる。
この超音波探傷により得られた損傷の大きさや位置、程度に基づいて、パネル10を削り取って除去する範囲13(
図1(a)の一点鎖線の上側)を決定する(
図2:ステップS1)。この除去範囲13には損傷の全体が含まれる。除去された部分は、複合材から形成された修理パッチ14(
図1(d))に置き換えられる。
【0024】
損傷箇所を削り取る前に、除去範囲13(
図1(a))に一部でも含まれる貫通孔12の内側の全体を
図1(b)に示すように樹脂材15により埋める。このとき貫通孔12の内側にマーカー20を配置し、樹脂材15の中に埋設する(
図2:ステップS2)。
樹脂材15は、流動性を有する樹脂材料を貫通孔12の内側に入れて硬化させることにより形成されている。硬化後の樹脂材15は、修理パッチ14が加熱された際にも形状を保持する耐熱性を有している。
樹脂材15により貫通孔12の内側が封止されるので、修理パッチ14の加熱時に真空引きを行うことができる。
【0025】
マーカー20は、貫通孔12に連続する孔を修理パッチ14に加工する位置を示すものであり、
図3(a)および(b)に示すように、略円柱状の外殻20Aの内側に空気ARを内包している。外殻20Aの上端および下端は閉じており、外殻20A内は空洞となっている。外殻20Aは、樹脂や金属等の任意の材料から形成することができる。
マーカー20は、ファスナ11が通される貫通孔12の位置を後から特定するために、修理パッチ14(
図1(d))をパネル10に配置して接合するよりも前に貫通孔12の内側に配置される。マーカー20は、貫通孔12内において、パネル10の除去範囲13よりも下方に位置するように貫通孔12内に設置される。外殻20Aの軸心は、貫通孔12の孔軸(軸心)とほぼ一致させることが好ましい。
このマーカー20は、修理パッチ14が加熱された際にも形状を保持し、空気ARを内包した状態を保つ耐熱性を有している。修理パッチ14がパネル10に接合された後に、このマーカー20を利用して、修理パッチ14に孔加工すべき位置を超音波探傷により特定する。
【0026】
樹脂材15により貫通孔12が埋められている状態で、工具を用いて損傷箇所を削り取り除去する(
図1(c)、
図2:ステップS3)。そうすると、工具が貫通孔12の縁に引っ掛かることなく、円錐台状の所望の切削面16を得ることができる。修理パッチ14と母材(パネル10)との接合面積を十分に確保するため、切削面16はなだらかな傾斜角度に形成される。
なお、
図1では切削面16の底面16Aに貫通孔12が位置しているが、切削面16の斜面16Bに貫通孔12が位置していてもよい。
【0027】
次に、切削面16の形状に対応する修理パッチ14を用意し、切削面16により囲まれた凹部17の内側に配置してパネル10に接合する(
図1(d)、
図2:ステップS4)。
修理パッチ14は、硬化前のプリプレグから形成されている。プリプレグは、凹部17の深さに応じた数だけ重ねられた複数の層からなる。各層は、シート状の繊維基材と、繊維基材に含浸させたエポキシ、ポリイミド、ポリウレタン、不飽和ポリエステル等の熱硬化性樹脂とから構成されている。
修理パッチ14と凹部17の内周面(底面16Aおよび斜面16B)との間には、
図4(a)に示すように、熱硬化性樹脂を含むフィルム状の接着材18を介在させる。そして、ヒーターマット19等を用いて、修理パッチ14および接着材18を加熱して硬化させる。
【0028】
ここで、プリプレグから形成された修理パッチ14に当初から、貫通孔12に対応する位置に孔を形成しておき、加熱硬化により修理パッチ14をパネル10の形状にフィットさせると、その孔の形状に変化が生じる。そのため、修理パッチ14に当初から孔を形成しておくことは難しい。
【0029】
加熱時には、
図4(a)に示すように、修理パッチ14の表面とその周囲をバックフィルム21により覆い、凹部17内を減圧させる。バックフィルム21とパネル10の表面との間は図示しないシーラントにより封止される。
バックフィルム21に設けられたバルブ23に接続された真空ポンプ(図示せず)により凹部17内を減圧させると、大気圧との圧力差により修理パッチ14がパネル10に押圧されるので、修理パッチ14の表面とパネル10の表面とが段差を生じずに滑らかに連続するように、修理パッチ14が成形される。
また、減圧により修理パッチ14の内部が緻密化するので、接着面や修理パッチ14の内部に気泡(ボイド)が生じるのを避けることができる。それによって修理パッチ14がパネル10に確実に接着されるとともに、強度・剛性も担保される。
【0030】
さて、修理パッチ14を成形した後、ファスナ11が挿入される貫通孔12を修理パッチ14に形成する必要がある。修理パッチ14に、元々パネル10に形成されていた貫通孔12と同じ位置に孔加工(孔明け)し、修理パッチ14の裏側で、パネル10に残されている貫通孔12と連続させなくてはならない。
パネル10に残存する貫通孔12は修理パッチ14の裏側に隠れているので、パネル10の表側10Aから貫通孔12を視認することはできない。
機体構造が組み上げられた状態で行われる修理においては、パネル10の裏側10Bにアクセスすることが難しい。もし、パネル10の裏側10Bにアクセスして貫通孔12を視認できたとしても、その貫通孔12を介してパネル10および修理パッチ14に孔加工するために必要な作業スペースを確保することが難しい。
【0031】
そこで、修理品質の検査にも用いられる超音波探傷を利用して、孔加工を施す位置を特定する(
図1(e)、
図2:ステップS5)。貫通孔12に設置しておいたマーカー20(
図3(a)および(b))が内包する空気ARは、その周囲の外殻20Bの材質や、修理パッチ14、パネル10に使われている繊維強化樹脂や、樹脂材15の樹脂とは、超音波の伝搬特性(以下、音波伝搬特性)が大きく相違する。超音波探傷装置は、音波伝搬特性が大きく変化するマーカー20内の空気ARとその周囲の部材との界面で大きく反応してマーカー20を顕在化させる。
【0032】
図4(b)は、超音波探傷装置のプローブ25を修理パッチ14の表面に当て、表面に沿って少しずつ移動させながらマーカー20を検出する様子を示している。プローブ25は、超音波を発振し、修理パッチ14およびパネル10に対して厚み方向に超音波を印加するとともに、印加対象から戻された超音波を受信する。発せられた超音波と受信した超音波との相関に基づいて、プローブ25に接続されたモニタに信号波形が表示される。その信号波形に基づいて、マーカー20の位置を容易に特定することができる。
プローブ25を動かすことで、マーカー20内部の空気ARが存在する範囲、つまりマーカー20の形状や大きさがわかる。仮に、修理パッチ14の内部に気泡が存在していたとしても、気泡はマーカー20よりも微小であり、複数の気泡が集まっていたとしてもそれらは不定形な形状に分布しているので、気泡とマーカー20内部の空気ARとを明確に識別することができる。
【0033】
また、
図1(e)に示すように、気泡22の存在する位置がマーカー20の位置と重なっていたとしても、この後に行われる孔加工により、気泡22が存在する箇所が
図1(f)に示すように除去されるので問題ない。
【0034】
パネル10あるいは修理パッチ14上に定めた原点位置からプローブ25が自走し、プローブ25により走査された範囲から得られた信号を画像化する装置を用いる場合でも、表示画像における濃淡の違い等に基づいてマーカー20の位置を容易に特定することができる。
【0035】
音波伝搬特性は、パネル10・修理パッチ14の内部の繊維と樹脂との間、また、パネル10・修理パッチ14と樹脂材15との間においても相違する。しかし、それらの間の音波伝搬特性の相違よりも、空気ARとその周囲のパネル10・修理パッチ14・樹脂材15との間の相違が顕著に大きいため、空気ARと周囲との界面に対応する位置が、信号波形や画像において埋没せずにコントラストが大きい状態で表示されている。つまり、信号波形や画像においてコントラストが大きいところにマーカー20の位置を特定することができる。
【0036】
特定されたマーカー20の位置は、貫通孔12の位置に相当するので、以上により孔加工位置が特定されている。したがって、修理パッチ14の表面に印を付けておいたマーカー20の位置で修理パッチ14およびパネル10に亘り孔加工し、修理パッチ14およびパネル10に連続した貫通孔12を形成する(
図1(f)、
図2:ステップS6)。
そのとき、元の貫通孔12の径と同等、あるいは少しだけ大きい径で孔加工すると、貫通孔12を埋めていた樹脂材15の全体が削り取られてきれいに除去される。同時に、マーカー20も除去される。
以上で貫通孔12が元の位置に形成されるので、貫通孔12にファスナ11(
図1(a))を通してパネル10と他の部材とを締結し(
図2:ステップS7)、修理を完了する。
【0037】
本実施形態によれば、高価な位置決め治具を用意したり、機体の特徴部からファスナ11までの距離を手作業でケガいたりすることなく、マーカー20を利用した超音波探傷により修理パッチ14上における正確な孔加工位置を容易に特定することができる。
孔加工位置を正確に特定できるので、計測ミスによって本来の位置からずれた位置に孔明けしてしまい、修理をやり直すといった事態を避けることができる。また、正確な位置に孔加工することで、貫通孔12を封止する樹脂材15を残すことなく完全に取り除くことができるので、強度を受け持たない樹脂材15により機体の剛性・強度が低下することも避けることができる。
【0038】
本実施形態のマーカー20は、空気ARを内包する中空の部材に限らず、金属材料から形成された中実な部材であってもよい。
そのマーカーの金属材料と、マーカー20の周囲の繊維強化樹脂とのそれぞれの音波伝搬特性が、超音波探傷によりマーカー20とその周囲とを区別することが可能な程度に相違していることに基づいて、そのマーカーも上述のマーカー20と同様に機能する。
【0039】
貫通孔12の孔径に応じて径が異なる複数種類のマーカー20を用意しておくとよい。
また、除去範囲13(
図1(a))を除去した後のパネル10の残余の部分が薄い場合にも対応できるように、マーカー20の厚み(貫通孔12の孔軸に沿った寸法)を薄くしておくとよい。
【0040】
図5(a)および(b)に、上記実施形態のマーカー20とは異なるマーカー26を示す。
マーカー26は、空気ARを内包する外殻20Aの内側に、マーカー26の軸心20Xを示す指示部材27を有している。指示部材27は、樹脂、金属等の任意の材料から形成することができる。
超音波探傷の測定精度により、得られたマーカー26の径が実際よりも大きく測定される場合がある。そういった場合でも、指示部材27を用いることにより、貫通孔12の軸心の特定が容易となる。
【0041】
指示部材27は、マーカー26の軸心20Xが通るマーカー26の平面中心で2つの部位27A,27Bが交差した十字状であり、その形状が軸心20Xの方向に連続した形態を呈する。
【0042】
指示部材27は、マーカー26の平面中心で3つあるいはそれ以上の部位が交差した放射状に形成することもできる。
【0043】
マーカー26を用いると、マーカー26内の空気ARと指示部材27との音波伝搬特性の相違に基づいて、指示部材27がその周囲から顕在化される。マーカー26は、その軸心20Xが貫通孔12の軸心とほぼ一致するように貫通孔12内に配置されているので、マーカー26の軸心20Xに位置する指示部材27の交点27Xは貫通孔12の軸心をほぼ正確に示している。
そのため、指示部材27の交点27Xの位置を中心に孔加工することで、貫通孔12を元の位置に容易に形成することができる。
【0044】
マーカー26の指示部材27は、
図5(c)に示すように、マーカー26の軸心20Xで欠損していてもよい。その場合も、
図5(a)と同様に、指示部材27を構成する4つの部位271〜274がマーカー26の軸心20Xを志向しており、マーカー26が配置された貫通孔12内の軸心を指示するので上記と同様に機能する。
【0045】
マーカー26は、超音波探傷により指示部材27とその周囲とを区別することが可能な程度に両者の音波伝搬特性が相違する限りにおいて、種々の形態に改変することができる。
例えば、
図6(a)に示すマーカー28では、
図5(a)および(b)の指示部材27に相当する部分が空洞281として形成されている。空洞281は、樹脂や金属から形成された略円柱状のマーカー本体280の内部に形成されているので、空洞281とマーカー本体280との音波伝搬特性の相違に基づいて、マーカー26と同様に機能する。
【0046】
また、
図6(b)に示すマーカー29では、樹脂材料から形成されたマーカー本体290(斜線で示す)の内部に、金属材料から形成された断面十字状の指示部材291が埋設されている。このマーカー29も、樹脂材料と金属材料との音波伝搬特性の違いに基づいて、マーカー26と同様に機能する。
【0047】
さらに、
図6(c)に示すように、樹脂や金属から形成された指示部材27単体でも、指示部材27とその周囲との音波伝搬特性の相違に基づいて、マーカー26と同様に機能させることができる。
【0048】
プリプレグから形成された修理パッチ14の使用に代えて、繊維強化樹脂を予め硬化させた(pre cure)パッチを使用し、そのパッチをパネル10に接着することもできる。さらには、金属材料から形成されたパッチを用いることも可能である。
また、修理パッチ14の使用に代えて、凹部17(
図1(d))内にシート状の繊維基材を積み上げて樹脂を含浸させることもできる。
【0049】
以上で説明した航空機の構造部材に係る実施形態に限らず、本発明は、例えば風車の翼等、複合材から形成された構造物一般の修理に用いることができる。
【0050】
ところで、貫通孔12内の全体を埋める必要がない場合もある。その場合は、例えば、
図3(c)に示すように、貫通孔12の内側に、貫通孔12の高さ(パネル10の厚み方向の寸法)よりも薄いプラグ24を設けて貫通孔12を封止することができる。
そうすると、貫通孔12内のプラグ24が占有する部分以外の領域に空洞120が確保される。その空洞120を利用して超音波探傷により貫通孔12の位置を特定することができるので、上述したマーカー20等を貫通孔12に配置しなくてもよい。
【0051】
図3(c)に示す例では、貫通孔12内を埋める樹脂材15(
図3(a))を孔明け時に除去する必要がないので、パネル10に残された貫通孔12に再孔明けせずにその貫通孔12をそのまま利用することが許容される。その場合は、貫通孔12に連続する孔を修理パッチ14にのみ加工し、ファスナ11によりプラグ24を押し出せばよい。
【0052】
本発明が適用される修理範囲に含まれる加工部としては、貫通孔12の他に、
図7に示す非貫通の穴31や、凹部、窪み等がある。部材32の裏側32Bまで貫通していない穴31は、部材32の表側32Aから加工する必要がある。穴31には例えばブッシュ33が設けられている。
部材32に存在する穴31の内部は空洞であり、穴31を覆う修理パッチ34の表側から超音波探傷を行うことにより、穴31の位置を特定することができるので、その位置で修理パッチ34に対して孔加工を行えばよい。
なお、穴31のように部材32を貫通していない加工部であれば、真空引きのために穴31を封止する必要はない。
【0053】
本発明における修理材は、加熱硬化時に減圧処理されるものには限らず、さらには、修理対象の部材に接合するために加熱による硬化が必要とも限らない。
したがって、修理対象の部材を加工部が貫通していたとしても、その加工部の封止は必要に応じて行えばよい。
【0054】
上記以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。