特許第6450184号(P6450184)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6450184-過熱検出回路及び半導体装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6450184
(24)【登録日】2018年12月14日
(45)【発行日】2019年1月9日
(54)【発明の名称】過熱検出回路及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
   G01K 7/01 20060101AFI20181220BHJP
【FI】
   G01K7/01 C
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-260737(P2014-260737)
(22)【出願日】2014年12月24日
(65)【公開番号】特開2016-121902(P2016-121902A)
(43)【公開日】2016年7月7日
【審査請求日】2017年10月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】715010864
【氏名又は名称】エイブリック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 正一
(72)【発明者】
【氏名】澤井 英幸
【審査官】 平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−205085(JP,A)
【文献】 特開2006−194885(JP,A)
【文献】 特開2008−097805(JP,A)
【文献】 特開2008−058298(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 7/00−7/42
H01L 21/822,27/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
感温部と比較部を備えた過熱検出回路であって、
前記過熱検出回路は、出力部に過熱状態検出信号を所定の遅延時間後に出力する外乱ノイズ除去部を備え、
前記遅延時間は、温度に比例して短くなる
ことを特徴とする過熱検出回路。
【請求項2】
前記外乱ノイズ除去部は、
直列接続された電流源と容量と、を備え、
前記容量に蓄積された電荷に基づき前記過熱状態検出信号を出力する過熱検出回路であって、
前記電流源の電流は、温度の上昇に伴って多くなる
ことを特徴とする請求項1に記載の過熱検出回路。
【請求項3】
前記外乱ノイズ除去部は、
直列接続された電流源と容量と、
前記電流源と前記容量の接続点の電圧を入力するインバータと、を備え、
前記容量に蓄積された電荷に基づき前記過熱状態検出信号を出力する過熱検出回路であって、
前記インバータのしきい値電圧が、温度に比例して低くなる
ことを特徴とする請求項1に記載の過熱検出回路。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の過熱検出回路を有する半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の異常温度を検出する過熱検出回路に関する。
【背景技術】
【0002】
図2に従来の過熱検出回路を示す。従来の過熱検出回路は、基準電圧部210、感温部211、比較部212から構成されている。感温部211は電流源202と感温のためのPN接合素子203を備え、比較部212はコンパレータ204を備えている。コンパレータ204の出力は、過熱検出回路の出力端子Voutに接続される。
【0003】
従来の過熱検出回路は、PN接合素子203に生じる電圧と、基準電圧部210が出力する基準電圧Vrefとを、コンパレータ204が比較判定することにより、過熱状態検出信号を出力する。
【0004】
PN接合素子203に生じる電圧は、通常、負の温度特性を示すため、周囲の温度が高くなり、PN接合素子203に生じる電圧が基準電圧Vrefを下回ると、コンパレータ204が、過熱状態検出信号を過熱検出回路の出力端子Voutに出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−192507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の過熱検出回路は、瞬時の電源変動等の外乱ノイズが発生すると、コンパレータ204が誤って過熱状態検出信号を出力してしまう可能性があるといった問題があった。
本発明は、以上のような問題を解決するために考案されたものであり、外乱ノイズのための誤出力を回避した、過熱検出回路を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従来の問題を解決するために、本発明の過熱検出回路は以下の構成とした。
感温部と、比較部と、出力部に過熱状態検出信号を所定の遅延時間後に出力する外乱ノイズ除去部を備え、遅延時間は温度に比例して短くなる構成とした過熱検出回路。
【発明の効果】
【0008】
本発明の過熱検出回路によれば、瞬時の電源変動等の外乱ノイズよる意図しない誤出力をすることがなく、過熱状態においては、過熱状態検出信号を素早く出力することが可能な過熱検出回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態の過熱検出回路の回路図である。
図2】従来の過熱検出回路に係わる回路図である。
図3】本実施形態の過熱検出回路に係る電流源を示す回路図である。
図4】本実施形態の過熱検出回路に係る電流源の他の例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本実施形態の過熱検出回路の回路図である。
本実施形態の過熱検出回路は、基準電圧部210と、感温部211と、比較部212と、外乱ノイズ除去部110とを備えている。感温部211は、電流源202と、感温のためのPN接合素子203を備えている。比較部212は、コンパレータ204を備えている。外乱ノイズ除去部110は、Nchトランジスタ101と、電流源102と、容量103と、インバータ104を備えている。
【0011】
電流源202とPN接合素子203は、電源端子と接地端子の間に直列に接続されている。コンパレータ204は、反転入力端子に基準電圧部210の出力端子が接続され、非反転入力端子に電流源202とPN接合素子203の接続点が接続される。Nchトランジスタ101は、制御端子にコンパレータ204の出力端子が接続され、ソースは接地端子が接続される。電流源102と容量103は、電源端子と接地端子の間に接続される。インバータ104は、入力端子に電流源102と容量103の接続点が接続され、出力端子が過熱検出回路の出力端子Voutに接続される。
【0012】
次に、本実施形態の過熱検出回路の動作について説明する。
PN接合素子203に生じる電圧は、通常、負の温度特性を示す。周囲の温度が高くなり、PN接合素子21に生じる電圧が基準電圧Vrefを下回ると、コンパレータ204は、過熱状態検出信号(Loレベル)をNchトランジスタ101の制御端子に出力する。Nchトランジスタ101がオフするため、容量103は電流源102の電流で充電される。容量103に生じる電圧が高まり、インバータ104のしきい値電圧に達すると、過熱検出回路の出力端子Voutに、過熱状態検出信号(Loレベル)が出力される。
【0013】
ここで、例えば、瞬時の電源電圧変動等の外来ノイズのため、コンパレータ204が誤って過熱状態検出信号を出力してしまった場合を考える。この時、過熱状態検出信号によって容量103が充電されるが、容量103の電圧がインバータ104のしきい値電圧に達するのに要する時間を超えて継続されなければ、過熱検出回路の出力端子Voutに、過熱状態検出信号は出力されない。すなわち、容量103を充電するのに要する時間を、外乱ノイズの影響を除去できる時間として与えることにより、外乱ノイズのための誤出力を回避した、過熱検出回路の提供が可能となる。
【0014】
一方、過熱状態においては、過熱状態を示す信号を素早く出力する必要がある。そのため、本実施形態の過熱検出回路は、外来ノイズの影響を除去できる時間を温度に比例して短くなるようにしている。
【0015】
具体的には、電流源102の電流が温度の上昇に伴って多くなるようにしている。それにより、温度が高くなるほどより高速に容量103が充電されるため、過熱状態においては過熱状態検出信号を素早く出力することが可能である。
【0016】
図3は、温度に比例して抵抗値が小さくなる抵抗に基づいて、出力電流が温度の上昇に伴って多くなる電流源102の回路図である。
図3(A)では、Pchトランジスタ303と抵抗301を直列に接続し、その接続点の電圧と、基準電圧Vref2の差分を増幅器302で増幅し、その出力をPchトランジスタ303のゲートに入力する。Pchトランジスタ304はPchトランジスタ303とカレントミラー接続されており、Pchトランジスタ304を流れる電流が電流源102の出力電流となる。
【0017】
ここで、Pchトランジスタ303は、抵抗301の抵抗値に反比例する電流を流す。このため、Pchトランジスタ303とカレントミラーの関係にあるPchトランジスタ304の流す電流、即ち電流源102の電流は温度の上昇に伴って多くなる。
【0018】
図3(B)は、図3(A)に対し、Pchトランジスタ303と抵抗301の間にNchトランジスタ305を設け、Nchトランジスタ305と抵抗301の接続点の電圧と、基準電圧Vref2の差分を増幅器302で増幅し、その出力をNchトランジスタ305のゲートに入力する。Pchトランジスタ303のゲートとドレインが接続される。
【0019】
ここで、Pchトランジスタ303は、抵抗301の抵抗値に反比例する電流を流す。このため、Pchトランジスタ303とカレントミラーの関係にあるPchトランジスタ304の流す電流、即ち電流源102の電流は温度の上昇に伴って多くなる。
なお、図3は温度に比例して抵抗値が小さくなる抵抗に基づいて、電流源102の電流が温度の上昇に伴って多くなるような一例であり、この形態に限定される必要はない。
【0020】
図4は、熱電圧に基づいて、出力電流が温度に比例して多くなる電流源102の回路図である。
Pchトランジスタ402とPN接合素子407は、電源端子と接地端子の間に直列接続される。Pchトランジスタ403、抵抗405、PN接合素子408は、電源端子と接地端子の間に直列接続される。増幅器401は、Pchトランジスタ402とPN接合素子407の接点の電圧VAとPchトランジスタ403と抵抗405の接点の電圧VBの差分を増幅し、その出力電圧をPchトランジスタ402、403、404のゲートに入力する。
【0021】
Pchトランジスタ402及びPchトランジスタ403には、熱電圧に比例する電流が流れる。熱電圧は温度に比例するから、Pchトランジスタ402、Pchトランジスタ403の電流は正の温度特性を示す。Pchトランジスタ402、Pchトランジスタ403とカレントミラーの関係にあるPchトランジスタ404を、電流源102として用いることにより、電流源102の電流が正の温度特性を示すことが可能となる。
なお、図4は熱電圧に基づいて、電流源102の電流が正の温度特性を示すようにすることが可能な一例であり、この形態に限定される必要はない。
【0022】
以上説明したように、本実施形態の過熱検出回路によれば、外乱ノイズのための誤出力を回避した過熱検出回路であって、しかも過熱状態検出信号を素早く出力する機能に不都合が生じない過熱検出回路の提供が可能となる。
【0023】
以上の説明で、本実施形態の過熱検出回路は、電流源102の電流が温度の上昇に伴って多くなるようにすると説明したが、インバータ104のしきい値電圧が温度に比例して低くなるようにしてもよい。例えば、インバータ104を成すNchトランジスタのアスペクト比を大きくし、駆動力を高めることにより、インバータ104のしきい値電圧が、おおよそNchトランジスタのしきい値電圧で決められるようにすればよい。即ち、Nchトランジスタのしきい値電圧は通常、温度に比例して低くなるため、インバータ104のしきい値電圧が温度に比例して低くなるように構成できる。以上説明した回路は、一例であり、この形態に限定される必要はない。
【符号の説明】
【0024】
210 基準電圧部
211 感温部
212 比較部
110 外乱ノイズ除去部
202、102 電流源
204 コンパレータ
302、401 増幅器
図1
図2
図3
図4