特許第6450198号(P6450198)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6450198印刷装置、およびコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6450198
(24)【登録日】2018年12月14日
(45)【発行日】2019年1月9日
(54)【発明の名称】印刷装置、およびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 29/38 20060101AFI20181220BHJP
   G06F 3/12 20060101ALI20181220BHJP
【FI】
   B41J29/38 Z
   G06F3/12 308
   G06F3/12 331
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-8113(P2015-8113)
(22)【出願日】2015年1月19日
(65)【公開番号】特開2016-132158(P2016-132158A)
(43)【公開日】2016年7月25日
【審査請求日】2017年11月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142837
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 則彰
(74)【代理人】
【識別番号】100166305
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 徹
(72)【発明者】
【氏名】岡 隆一
【審査官】 上田 正樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−079726(JP,A)
【文献】 特開2001−150774(JP,A)
【文献】 特開平08−070337(JP,A)
【文献】 米国特許第05014221(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 29/38
G06F 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の印刷データ送信装置が接続可能な通信回線に接続される通信部と、
前記通信部により受信した印刷データを記憶する記憶部と、
記録紙を紙送りするローラ機構を有し、前記記憶部に記憶された印刷データに従って印刷機構を駆動させて前記記録紙に印刷を行う印刷部と、
前記通信部により第1の印刷データ送信装置から接続要求を受信したことに応じて他の印刷データ送信装置と自装置とが通信接続されているか否かを判定し、前記他の印刷データ送信装置と自装置とが通信接続されている場合に印刷データの送信開始を待機させるための第1の応答を前記通信部に返信させ、前記他の印刷データ送信装置と自装置との通信接続が終了した後に前記第1の印刷データ送信装置に印刷データの送信を許可するための第2の応答を返信させる制御部と、
を備え
前記第1の応答が、前記記憶部に印刷データを記憶する容量が無いことを表す情報を含み、前記第2の応答が、前記記憶部に記憶可能なデータ容量を表す情報を含む
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記他の印刷データ送信装置と自装置との通信接続が中断された場合に前記記憶部に記憶された印刷データを一括して消去し、前記第2の応答を前記第1の印刷データ送信装置に送信する、
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記記録紙は、ロール状に巻回されることで、中空孔を有するロール紙を構成し、
前記印刷部は、前記ローラ機構により、前記記録紙のうち前記ロール紙から引き出された部分に対して印刷を行う、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の印刷装置。
【請求項4】
複数の印刷データ送信装置が接続可能な通信回線に接続される通信部と、前記通信部により受信した印刷データを記憶する記憶部と、記録紙を紙送りするローラ機構を有し、前記記憶部に記憶された印刷データに従って印刷機構を駆動させて前記記録紙に印刷を行う印刷部と、を備える印刷装置のコンピュータプログラムであって、
コンピュータに、
前記通信部により第1の印刷データ送信装置から接続要求を受信したことに応じて他の印刷データ送信装置と自装置とが通信接続されているか否かを判定させ、
前記他の印刷データ送信装置と自装置とが通信接続されている場合に印刷データの送信開始を待機させるための第1の応答を返信させ、
前記他の印刷データ送信装置と自装置との通信接続が終了した後に前記第1の印刷データ送信装置に印刷データの送信を許可するための第2の応答を返信させ、
前記第1の応答が、前記記憶部に印刷データを記憶する容量が無いことを表す情報を含み、前記第2の応答が、前記記憶部に記憶可能なデータ容量を表す情報を含む ことを特徴とするコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、およびコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、記録紙(感熱紙)に対して印刷を行うプリンタとして、サーマルプリンタが知られている。サーマルプリンタは、印字ユニットの小型軽量化が可能であり、またトナーやインク等も使用せず簡素な構成であること等から、キャッシュレジスターや携帯端末装置等に採用され、各種ラベルや、レシート、チケット等の印刷に広く利用されている。
【0003】
このサーマルプリンタは、ロール状に巻回された用紙に対して印刷を行うものがある。このサーマルプリンタは、連続して印刷データが入力され、印刷データを入力した順序で印刷する。このサーマルプリンタにおいて、印刷データの入力が中断された場合、データの末尾まで達していない印刷データがメモリに記憶された状態となる。この状態で、サーマルプリンタに新たな印刷データが入力されると、当該新たな印刷データは、中断された印刷データに続けて記憶されてしまう。その結果、サーマルプリンタは、中断された印刷データと新たな印刷データとが混在して印刷してしまい、印刷化け(印刷が正しく表示されない現象)が生じる可能性があった。この問題に対し、サーマルプリンタは、印刷データの入力が中断された場合に、メモリに記憶された印刷データを削除し、新たな印刷データを正常に印刷することが行われていた。
【0004】
サーマルプリンタにおいて中断された印刷データをメモリから削除するためには、印刷ジョブの先頭等のデータ区切りを検出する必要がある。例えば、特許文献1には、印刷データに含まれるコマンドを解析してデータ区切りを検出することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−074750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のように印刷データのコマンド解析を実施しても適切なデータ区切りが検出できない場合がある。例えば、上述したサーマルプリンタのように、ロール状に巻回された用紙に対して印刷を行う場合、ページという概念がない。したがって、単に印刷データを解析してもデータ区切りが検出できず、中断された印刷データを削除できない可能性がある。
【0007】
また、サーマルプリンタにLAN回線を介して複数のホストが接続され、複数のホストから印刷データが送信される場合がある。この場合、特定のホストから印刷の中断要求が供給されたことに基づいてメモリの印刷データを一括消去すると、他のホストから送信された印刷データも消去されてしまう可能性がある。他のホストから送信された印刷データの一部が消去されてしまうと、結果的に正常に印刷できず、メモリを一括消去することには問題がある。
【0008】
さらに、サーマルプリンタは、LAN回線に接続された場合、あるホストから印刷データが送信されて印刷を行っている最中に他のホストから印刷データが送信されると、他のホストの印刷は待ち状態となる。この状態において、他のホストから送信された印刷データはメモリ内に一時的に保管されているが、あるホストの印刷が中断して印刷データの送信が中断すると、中断された印刷データがメモリ内に残ってしまい、印刷化けする可能性があった。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、複数のデータ送信元から印刷データが送信されても印刷化けを抑制することができる印刷装置、およびコンピュータプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る印刷装置は、複数の印刷データ送信装置が接続可能な通信回線に接続される通信部と、前記通信部により受信した印刷データを記憶する記憶部と、記録紙を紙送りするローラ機構を有し、前記記憶部に記憶された印刷データに従って印刷機構を駆動させて前記記録紙に印刷を行う印刷部と、前記通信部により第1の印刷データ送信装置から接続要求を受信したことに応じて他の印刷データ送信装置と自装置とが通信接続されているか否かを判定し、前記他の印刷データ送信装置と自装置とが通信接続されている場合に印刷データの送信開始を待機させるための第1の応答を前記通信部に返信させ、前記他の印刷データ送信装置と自装置との通信接続が終了した後に前記第1の印刷データ送信装置に印刷データの送信を許可するための第2の応答を返信させる制御部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る印刷装置は、前記第1の応答が、前記記憶部に印刷データを記憶する容量が無いことを表す情報を含み、前記第2の応答が、前記記憶部に記憶可能なデータ容量を表す情報を含む、ことを特徴とする。
【0012】
本発明に係る印刷装置は、前記制御部は、前記他の印刷データ送信装置と自装置との通信接続が中断された場合に前記記憶部に記憶された印刷データを一括して消去し、前記第2の応答を前記第1の印刷データ送信装置に送信することを特徴とする。
【0013】
本発明に係る印刷装置は、前記記録紙は、ロール状に巻回されることで、中空孔を有するロール紙を構成し、前記印刷部は、前記ローラ機構により、前記記録紙のうち前記ロール紙から引き出された部分に対して印刷を行うことを特徴とする。
【0014】
本発明に係るコンピュータプログラムは、複数の印刷データ送信装置が接続可能な通信回線に接続される通信部と、前記通信部により受信した印刷データを記憶する記憶部と、記録紙を紙送りするローラ機構を有し、前記記憶部に記憶された印刷データに従って印刷機構を駆動させて前記記録紙に印刷を行う印刷部と、を備える印刷装置のコンピュータプログラムであって、コンピュータに、前記通信部により第1の印刷データ送信装置から接続要求を受信したことに応じて他の印刷データ送信装置と自装置とが通信接続されているか否かを判定させ、前記他の印刷データ送信装置と自装置とが通信接続されている場合に印刷データの送信開始を待機させるための第1の応答を返信させ、前記他の印刷データ送信装置と自装置との通信接続が終了した後に前記第1の印刷データ送信装置に印刷データの送信を許可するための第2の応答を返信させる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明を適用した印刷システム1のシステム構成を示すブロック図である。
図2】本発明を適用した印刷システム1において通信端末10と印刷装置20との間で授受される制御パケットの一部を示す図である。
図3】本発明を適用した印刷システム1における動作手順を示すシーケンス図である。
図4】本発明を適用した印刷システム1における動作手順を示すシーケンス図である。
図5】比較例に係る印刷システムの動作を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施形態の印刷システム1について詳細に説明する。
図1は、実施形態の印刷システム1のシステム構成を示すブロック図である。
【0017】
印刷システム1は、複数の通信端末10A、・・・、通信端末10Bと、印刷装置20とを有する。通信端末10A、・・・、通信端末10Bおよび印刷装置20は、LAN(Local Area Network)回線に接続され、LAN回線を介して制御パケット(要求、応答)を送受信すると共にデータを送受信する。
【0018】
通信端末10は、操作インターフェース、通信インターフェース、演算回路、制御回路、および記憶装置を含むコンピュータである。通信端末10A、10Bは、印刷データ生成部12A、12Bと、制御部14A、14Bと、通信部16A、16Bと、を有する。なお、通信端末10A、10B、印刷データ生成部12A、12B、制御部14A、14B、および通信部16A、16Bは、それぞれ、総称する場合には単に通信端末10、印刷データ生成部12、制御部14、および通信部16と呼ぶ。
【0019】
印刷データ生成部12は、アプリケーションソフトウェア等が通信端末10に実装されることにより実現される。なお、印刷データを生成するアプリケーションソフトウェアは任意のものであればよい。印刷データ生成部12は、印刷装置20に送信される印刷データを生成する。印刷データ生成部12は、アプリケーションソフトウェアにより印刷コマンドが生成されたことに応じて、印刷データを制御部14に供給する。
【0020】
制御部14は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサがメモリ(不図示)に記憶されているプログラムを実行することによって機能するソフトウェア機能部である。また、制御部14は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェア機能部であってよい。制御部14は、印刷データ生成部12から供給された印刷データを印刷装置20により印刷させるように制御する。
【0021】
通信部16は、制御部14の制御に従ってLAN回線に信号を供給すると共に、LAN回線から供給された信号を検出する。
【0022】
印刷装置20は、印刷機構、通信インターフェース、制御回路、および記憶装置により実現される。印刷装置20は、通信部22と、制御部24と、印刷部26と、記憶部28とを有する。
【0023】
通信部22は、LAN回線に接続される。これにより、通信部22は、複数の通信端末10(印刷データ送信装置)と通信可能に接続される。記憶部28は、通信部22により受信した印刷データを一時的に記憶する通信バッファとして機能する。
記憶部28には、通信部22により受信した印刷データが順次記憶される。また、記憶部28に記憶された印刷データは、印刷のために不要になったことに応じて順次消去される。なお、記憶部28の容量は、印刷装置20の設計段階で決定されるが、構成の簡素化のために、小さい容量となっている。
【0024】
印刷部26は、熱を加えると発色する記録紙(感熱紙)にサーマルヘッド押し付けることで印刷を行うサーマルプリンタ機構である。また、印刷部26は、記録紙を紙送りするローラ機構を有する。この記録紙は、感熱紙であって、各種ラベルや、レシート、チケットの印刷等に好適に使用される。この記録紙は、ロール状に巻回されることで、中空孔を有するロール紙を構成している。そして、印刷部26は、ローラ機構により、記録紙Pのうちロール紙から引き出された部分に対して印刷を行う。このとき、印刷部26は、制御部24の制御に従って、記憶部28に順次記憶される印刷データに基づいて印刷機構を駆動させ、記録紙に順次印刷を行う。
このような印刷装置20は、通信端末10から順次印刷データが供給されたことに応じて印刷データを記憶部28に順次記憶し、順次印刷を行って、印刷データを記憶部28から順次消去する。すなわち、印刷装置20は、例えばページというデータ区切りがなく、データ受信、データ記憶、印刷、およびデータ消去を繰り返して行う。
【0025】
制御部24は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサが記憶部(不図示)に記憶されているプログラムを実行することによって機能するソフトウェア機能部である。また、制御部24は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェア機能部であってよい。制御部24は、通信部22による通信を制御すると共に、印刷部26による印刷を制御する。
【0026】
図2は、本発明を適用した印刷システム1において通信端末10と印刷装置20との間で授受される制御パケットの一部を示す図である。制御パケットには、TCP(Transmission Control Protocol)ヘッダが含まれる。TCPヘッダには、送信元ポート番号フィールド、送信先ポート番号フィールド、シーケンス番号フィールド、ACK番号フィールド、データオフセットフィールド、予約フィールド、フラグフィールド、ウインドウサイズフィールド、ヘッダチェックサムフィールド、およびアージェントポインタフィールドが含まれる。送信元ポート番号フィールドには、信号送信元が使用しているポート番号が格納される。送信先ポート番号フィールドには、信号送信先が使用しているポート番号が格納される。シーケンス番号フィールドには、送信される印刷データの先頭バイトの番号が格納される。
【0027】
ウインドウサイズフィールドには、データ受信側が受信可能なバッファサイズが格納される。すなわち、ウインドウサイズフィールドには、印刷装置20が一度に受信することができるデータの大きさが格納される。通常、ウインドウサイズフィールドには、記憶部28における空き容量が格納される。しかし、本実施形態の印刷装置20は、後述した特殊処理を行うことにより、ウインドウサイズフィールドに格納する値を制御する。
【0028】
以下、上述した印刷システム1において、複数の通信端末10から印刷装置20に接続要求が発生したときの処理手順について説明する。図3は、本発明を適用した印刷システム1における動作手順を示すシーケンス図である。なお、以下に説明する通信端末10と印刷装置20との通信処理は、TCPに従って実行するものとする。
【0029】
まず、通信端末10Aは、印刷装置20に対して接続要求S1を送信する。印刷装置20は、接続要求S1を受信したことに応じ、制御部24により、既に他の通信端末10と自装置との間でコネクション(通信接続)を開始しているか否かを判定する。印刷装置20は、通信端末10Bから接続要求が送信されていないので、他の通信端末10と自装置との間でコネクションが開始されていないと判定する(ステップST1)。印刷装置20は、接続要求S1を送信した通信端末10Aに対してTCPヘッダを含む制御パケットとして、ウインドウサイズ応答S2を送信する。このとき、制御部24は、記憶部28の実際の空き容量を確認し、当該空き容量であるバッファサイズ(xバイト)をウインドウサイズフィールドに格納する。
【0030】
通信端末10Aは、印刷装置20から送信されたウインドウサイズ応答S2を受信したことに応じ、xバイトの印刷データが送信可能であることを認識する。通信端末10Aは、自身が送信する印刷データを所定のバイト数に分割して、xバイトの印刷データS3を送信する。この印刷データS3は、印刷装置20により受信される。これにより、印刷装置20は、印刷データを順次受信および記憶して、印刷を開始する。
【0031】
印刷装置20は、通信端末10Aから接続要求S1を受信した後、通信端末10Bから接続要求S11が送信されたとする。印刷装置20は、制御部24により、既に他の通信端末10と自装置との間でコネクションを開始しているか否かを判定する。印刷装置20は、通信端末10Aと自装置との間でコネクションが確立されているので、既に他の通信端末10と自装置との間でコネクションが開始されていると判定する(ステップST2)。印刷装置20は、接続要求S11を送信した通信端末10Bに対してTCPヘッダを含む制御パケットとして、ウインドウサイズ応答S12を送信する。このとき、制御部24は、記憶部28の実際の空き容量に拘わらず、バッファサイズがゼロであることをウインドウサイズフィールドに格納する。このウインドウサイズ応答S12は、印刷データの送信開始を待機させるための第1の応答に相当する。
【0032】
通信端末10Bは、印刷装置20から送信されたウインドウサイズ応答S12を受信したことに応じ、印刷データが送信できないことを認識する。通信端末10Bは、以降にウインドウサイズ応答が送信されるまで、印刷データの送信を待機する状態となる(ステップST11)。
【0033】
その後、通信端末10Aは、印刷装置20にコネクションの切断要求S4を送信する。通信端末10Aは、印刷データの送信が終了した、または印刷データの送信を中断したことなどに応じ、切断要求S4を送信する。
【0034】
印刷装置20は、通信端末10Aから切断要求S4を受信したことに応じ、記憶部28に記憶された印刷データに従って印刷を終了する。また、印刷装置20は、切断要求S4を受信したことに応じて、他の通信端末10と自装置との間でコネクションがないと判定する(ステップST3)。そして、印刷装置20は、実際の記憶部28における空き容量をバッファサイズ(yバイト)としてウインドウサイズフィールドに格納して、ウインドウサイズ応答S13を通信端末10Bに送信する。このウインドウサイズ応答S13は、印刷データの送信を許可するための第2の応答に相当する。
【0035】
通信端末10Bは、印刷装置20から送信されたウインドウサイズ応答S13を受信したことに応じ、yバイトの印刷データの送信が許可されたことを認識する。通信端末10Bは、自身が送信する印刷データを所定のバイト数に分割して、yバイトの印刷データS14を送信する。この印刷データS14は、印刷装置20により受信される。これにより、印刷装置20は、印刷データを順次受信および記憶して、印刷を開始する。
以上が、本実施形態における印刷システム1の動作説明である。
【0036】
以下、上述した印刷システム1において、複数の通信端末10から印刷装置20に接続要求が発生したときの他の処理手順について説明する。図4は、本発明を適用した印刷システム1における動作手順を示すシーケンス図である。
印刷装置20は、通信端末10から接続要求S1、S11を受信したことに応じ、バッファサイズがゼロであることがウインドウサイズフィールドに格納されたウインドウサイズ応答S20、S22を返信する。その後、印刷装置20は、既に他の通信端末10と自装置とのコネクションが開始されているか否かを判定する(ステップST1#、ST2#)。
印刷装置20は、通信端末10Aから接続要求S1を受信した時には通信端末10Bと自装置との間でコネクションが開始されていないので、コネクションが開始されていないと判定する(ステップST1#)。また、印刷装置20は、通信端末10Bから接続要求S11を受信した時には通信端末10Aと自装置との間でコネクションが開始されていると判定する(ステップST2#)。
【0037】
以上のように、実施形態の印刷システム1は、印刷装置20により、通信端末10から接続要求を受信したことに応じて他の通信端末10と自装置とが通信接続されているか否かを判定し、他の通信端末10と自装置とが通信接続されている場合に、印刷データの送信開始を待機させるためのウインドウサイズがゼロである応答(第1の応答)を返信させる。その後、印刷装置20は、他の通信端末10と自装置との通信接続が終了した後に他の通信端末10に印刷データの送信を許可するための実際の空き容量の応答(第2の応答)を返信させる。これにより、印刷装置20によれば、複数のデータ送信元(通信端末10)から印刷データが送信されても、単一の通信端末10から印刷データを受信し、他の通信端末10を待機させることができる。この結果、印刷装置20によれば、複数の通信端末10から送信された印刷データが混在することなく、印刷化けを抑制することができる。
【0038】
また、実施形態の印刷システム1において、第1の応答が、記憶部28に印刷データを記憶する容量が無いことを表す情報を含み、第2の応答が、記憶部28に記憶可能なデータ容量を表す情報を含む。これにより、印刷装置20は、既存のTCPを利用して、通信端末10Bに印刷データの送信開始を待機させることができ、新たな構成を追加することなく、簡単に上述した効果を実現できる。
【0039】
さらに、上述した印刷システム1は、アプリケーションソフトウェアを変更せず、TCPを利用して、通信端末10Aと自装置とのコネクションがあるときには通信端末10Bから印刷データが送信されることを抑制できる。これにより、印刷システム1は、例えばアプリケーションソフトウェアの階層における処理を行って、通信端末10が印刷装置20の印刷待ち状態を確認する必要がなく、印刷データを送信開始する前のオーバーヘッドが大きくなることを抑制できる。
【0040】
さらに、上述した印刷システム1は、通信端末10Aから切断要求S4を受信して通信端末10Aと自装置との通信接続が中断された場合には、記憶部28に記憶された印刷データを一括して消去してもよい。そして、印刷装置20は、実際の記憶部28における空き容量を含むウインドウサイズ応答S13を通信端末10Bに送信する。印刷システム1は、通信端末10Aが通信接続されている場合には通信端末10Bから印刷データを送信させないので、記憶部28に記憶された印刷データを一括消去することができ、通信端末10Aの印刷データと通信端末10Bの印刷データとが混在することが無く、印刷化けを抑制することができる。
【0041】
図5は、比較例に係る印刷システムの動作を示すシーケンス図である。比較例に係る印刷システムにおいて、印刷装置は、通信端末A、Bから接続要求S100、S110が送信されると、通信端末A、Bのそれぞれに実際のバッファの空き容量を含むウインドウサイズ応答S103、S112を返信する。すると、印刷装置20は、印刷データS114を受信開始した以降から、通信端末Aから印刷データS103を受信すると同時に、通信端末Bから印刷データS114を受信する状態となる。その後、印刷装置20は、通信端末Aから切断要求S104を受信すると、バッファには印刷データS103と印刷データS114とが混在した状態となり、印刷化けの原因となる。
これに対し、本実施形態の印刷システム1は、複数の通信端末から印刷データを受信する状態とはならないので、印刷化けを抑制することができる。
【0042】
上述した実施形態における印刷装置20の機能をコンピュータで実現するようにしても良い。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現しても良い。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでも良い。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0044】
上述した実施形態は、印刷データの送信開始を待機させるための第1の応答が空き容量がゼロのウインドウサイズ応答であることを説明したが、印刷データの送信開始を待機させる情報を含んでいれば他のコマンドであってもよい。例えば、TCPヘッダのオプションのフィールドに印刷データの送信開始を待機させるためのコマンドを格納することを設定し、印刷装置20と通信端末10との間で当該コマンドを認識させるようにしてもよい。
また、上述した実施形態において、印刷データの送信を許可するための第2の応答が実際の空き容量のウインドウサイズ応答であることを説明したが、印刷データの送信を許可するための情報を含んでいれば他のコマンドであってもよい。例えば、TCPヘッダのオプションのフィールドに印刷データの送信を許可するためのコマンドを格納することを設定し、印刷装置20と通信端末10との間で当該コマンドを認識させるようにしてもよい。
また、通信端末10および印刷装置20は、上述したTCP以外の他のプロトコルを利用して、印刷データの送信開始を待機させるために情報を授受してもよい。
【符号の説明】
【0045】
1…、10…通信端末、12…印刷データ生成部、14…制御部、16…通信部、20…印刷装置、22…通信部、24…制御部、26…印刷部、28…記憶部
図1
図2
図3
図4
図5