(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電源端子と接地端子と出力端子の3端子の半導体装置で構成された、センサ素子に印加される物理量に応じて出力ドライバのオン/オフ状態を切替えるセンサ装置であって、
前記物理量の大小に応じて2値のセンサ出力論理信号を出力するセンサ回路と、
前記センサ出力論理信号が入力され、出力ドライバのオン/オフ状態を切替え制御するアクティブ論理切替回路と、を備え
前記アクティブ論理切替回路は、内部で生成されるアクティブ論理切替信号に応じて、入力された前記センサ出力論理信号の論理を切替える
ことを特徴とするセンサ装置。
【背景技術】
【0002】
半導体装置は、製造後にその機能と特性が製品規格を満たすことを確認するために、ウェハ状態またはパッケージ状態で検査される。常温だけでなく、一般に特性変動や機能不全を起こしやすい高温状態での検査も行うことが望ましいが、周囲温度を上昇させてそのような高温検査を行うためには装置の導入や追加検査時間が必要となり、コスト増加を招く。
従来、そのような課題を解決するために常温状態でチップの接合温度を上昇させて高温検査を実施する試みがなされてきた。
【0003】
図11は、従来の自己発熱による高温検査が可能な半導体装置のブロック図である。従来の半導体装置1は、電源端子2と、接地端子3と、出力端子4と、テスト端子100と、テスト端子100に接続された加熱用抵抗素子101を有している。テスト端子100から電圧または電流を供給して加熱用抵抗素子101を発熱させることにより、チップの接合温度を上昇させた状態で半導体装置を動作させての高温検査が可能となる。
【0004】
また、
図12は特許文献1に開示された、自己発熱による高温検査が可能な半導体装置である。半導体装置1は、電源端子2と、接地端子3と、出力端子4と、検査時の測定に使用されない端子102と、端子102に接続されたESD保護素子等の寄生PN接合103、104を有する。この構成では、端子102から寄生PN接合103または寄生PN接合104に順方向電流を供給することにより、寄生PN接合を発熱させ、チップの接合温度を上昇させた状態で半導体装置を動作させての高温検査が可能となる。
【0005】
このように、専用端子や検査時の測定に使用されない既存端子を利用して、内部素子に自己発熱によって接合温度を上昇させて高温検査を実施している。また、高温検査環境で生成出来る周囲温度の上限が所望温度に満たない場合においても、自己発熱を利用して周囲温度よりも高い接合温度とすることによって所望温度での検査が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】本発明のセンサ装置に関わる第1の状態の磁電変換特性を表す図である。
【
図3】本発明のセンサ装置に関わる第2の状態の磁電変換特性を表す図である。
【
図4】本発明のセンサ装置に関わる出力ドライバ電流及び消費電力の出力電圧依存を表す図である。
【
図5】本発明のセンサ装置に関わるセンサ特性の温度依存を表す図である。
【
図6】本発明のセンサ装置の検査時における測定回路を表す図である。
【
図7】本発明のセンサ装置の検査フローの一例を示すフローチャートである
【
図8】本発明のセンサ装置のアクティブ論理切替回路の一例を示す回路図である。
【
図9】本発明のセンサ装置のアクティブ論理切替回路の他の例を示す回路図である。
【
図10】本発明のセンサ装置の動作を示すタイミングチャートである。
【
図11】従来の高温検査が可能な半導体装置の一例を示すブロック図である。
【
図12】従来の高温検査が可能な半導体装置の他の例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のセンサ装置について図面を参照して説明する。
図1は、本発明のセンサ装置の概念を表すブロック図である。センサ装置は、センサ素子に印加される物理量に応じて出力ドライバ7のオン/オフ状態を切替える。
本発明のセンサ装置1は、電源端子2と、接地端子3と、出力端子4と、センサ回路5と、アクティブ論理切替回路6と、出力ドライバ7を備えている。
【0013】
本実施形態では、センサ装置1は、交番検知型の磁気センサ回路として説明する。
センサ回路5は、入力された鎖交磁束密度の極性と大小に応じてセンサ出力論理信号8を出力する。アクティブ論理切替回路6は、入力されたセンサ出力論理信号8を切替状態に応じて正論理または負論理の出力論理信号をドライバ制御信号9として出力する。出力ドライバ7は、ゲートにドライバ制御信号9が入力され、ドレインが出力端子4に接続された抵抗でプルアップされる。出力ドライバ7は、ドライバ制御信号9が“H”のときにはオン状態となり出力端子4から“L”を出力し、ドライバ制御信号9が“L”のときにはオフ状態となり出力端子4から“H”を出力する。
【0014】
図2は、本発明のセンサ装置の第1の状態での磁電変換特性を表す図である。Binは印加される磁束密度、Voutは出力端子4をチップ外部でプルアップした場合に出力される出力電圧を表す。アクティブ論理切替回路6は、第1の状態において、磁束密度に応じて図示した出力論理になるように設定されている。
図3は、本発明のセンサ装置の第2の状態での磁電変換特性を表す図である。アクティブ論理切替回路6は、第2の状態において、第1の状態と出力論理が反転する設定されている。
【0015】
図4は、出力ドライバのオン状態における出力電流及び消費電力の出力電圧依存を表す図である。通常使用時には、負荷線Lで示すように外部に接続するプルアップ電圧VPUとプルアップ抵抗RPUで電流制限された状態で用いるため、出力電圧は飽和電圧VDSATを上回ることがない。従って、出力ドライバ7は、抵抗領域動作して、抵抗体として振舞う。一方、検査時に外部から出力電圧を印加し、印加された出力電圧が飽和電圧VDSATを上回ると、出力ドライバ7は飽和領域(定電流)動作となり、出力ドライバ7を構成するトランジスタのW/L比とトランスコンダクタンス係数で決まる一定出力電流IOMが流れる。このとき出力ドライバ7の消費電力(すなわち発熱量)はPd=VOUT・IOMとなり、外部から印加する出力電圧VOUTの大小によってチップの発熱量を制御可能である。
【0016】
図5は、本発明のセンサ装置に関わるセンサ特性の温度依存を表す図である。
図5(a)は第1の状態である。Bin<BOPにおいて出力ドライバ7はオフ状態(出力電圧“H”に相当)であり電流が流れないので、チップは、出力ドライバ7が自己発熱しないため接合温度Tjが周囲温度Taにほぼ等しい。S極磁場を印加してBin>BOPとなると、出力ドライバ7がオン(出力電圧“L”に相当)する。このとき、Tj=TaにおけるBOPが測定される。
【0017】
チップは、出力ドライバ7がオン状態で発熱すると加熱され、周囲の環境に依存する熱抵抗と熱容量の積で表される時定数で決まる時間を経て接合温度TjがTa+θ・Pdとなる。ここで、θはチップと周囲環境に依存する熱抵抗、Pdは出力ドライバ7の消費電力である。
【0018】
次に、N極磁場を印加してBin<BRPとなると、出力ドライバ7がオフ状態(出力電圧“H”に相当)となる。このとき、Tj=Ta+θ・PdにおけるBRPが測定される。
【0019】
図5(b)は第2の状態である。Bin<BOPにおいて、出力ドライバ7はオン状態であり、チップは、出力ドライバ7が発熱するためTj=Ta+θ・Pdである。S極磁場を印加してBin>BOPとなると、出力ドライバ7がオフ(出力電圧“H”に相当)する。このとき、Tj=Ta+θ・PdにおけるBOPが測定される。ドライバオフ状態では出力ドライバ7が発熱しないためチップは周囲雰囲気で冷却され、チップと周囲の環境に依存する熱抵抗と熱容量の積で表される時定数で決まる時間を経て接合温度TjはTaとなる。その後、N極磁場を印加しBin<BRPとなると出力ドライバ7がオン(出力電圧“L”に相当)となる。このとき、Tj=TaにおけるBRPが測定される。
【0020】
ここで、Pd=VOUT・IOMであり、Tjの式を変形すると、VOUT=(Tj−Ta)/(θ・IOM)=ΔT/(θ・IOM)と表される。例えば、Tj=125℃、
Ta=25℃、θ=0.2℃/mW、IOM=50mAとすると、出力電圧VOUTは10Vのように与えられる。また、Tj=150℃、Ta=85℃、θ=0.2℃/mW、IOM=50mAとすると、出力電圧VOUTは6.5Vのように与えられる。この出力電圧VOUTは出力端子4に印加可能な定格電圧で、上昇させることが可能なチップの温度の上限が律速される。
【0021】
以上説明したように、第1の状態と第2の状態を切替えながら入力磁束密度を掃引することによって、接合温度TjがTaのときとTa+θ・Pdのときにおけるセンサ磁気特性BOP及びBRPを測定することが可能である。
【0022】
図6は、本発明のセンサ装置の検査時における測定回路を表す図である。電源端子2には電源200が接続され、出力端子4には出力電圧電源201及び電流計202が接続される。電源200は、センサ装置に動作用の電源電圧を供給する。出力電圧電源201は、出力ドライバ7に加熱用の電圧を供給する。電流計202は、加熱電流をモニタリングして出力電圧電源201の出力電圧を調節する。電流計202に電流が流れるか遮断されるかをモニタリングして、入力磁束密度BinがBOPやBRPを超えたか否かを判定することが出来る。
【0023】
図7は、本発明のセンサ装置の検査フローの一例を示すフローチャートである。このような検査フローによって、接合温度TjがTa及びTa+θ・Pdにおけるセンサ磁気特性BOP,BRPを測定することが可能である。この検査フロー実現するためのセンサ装置の回路例を、以下に図を用いて説明する。
【0024】
図8は、本発明のセンサ装置のアクティブ論理切替回路6の一例を示す回路図である。
図8のアクティブ論理切替回路6は、レーザートリミングヒューズ10、プルダウン素
子11、トランジスタ21〜30、インバータ37を有する。レーザートリミングヒュー
ズ10、プルダウン素子11は電源端子2と接地端子3の間に直列に接続され、その中点
電圧はアクティブ論理切替信号12である。レーザートリミングヒューズ10はレーザー
トリミング装置によってウェハ検査工程中で溶断することが可能である。プルダウン素子
11の抵抗値がレーザートリミングヒューズ10の抵抗値に対し十分
大きいとき、アクテ
ィブ論理切替信号12はレーザートリミングヒューズ10が溶断前の状態では “H”、
溶断後の状態では“L”となる。
【0025】
ここで、トランジスタ21〜30とインバータ37は排他的論理和回路40を構成し、その入力の一方はセンサ出力論理信号8、他方はアクティブ論理切替信号12に接続され、その出力はドライバ制御信号9に接続される。レーザートリミングヒューズ10が溶断前の状態では、ドライバ制御信号9はセンサ出力論理信号8の正論理(第1の状態に対応)として出力され、レーザートリミングヒューズ10が溶断後の状態ではドライバ制御信号9はセンサ出力論理信号8の負論理(第2の状態に対応)として出力される。
【0026】
このようにレーザートリミングヒューズ10をレーザーで溶断する前後においてドライバ制御信号9の正負を切替えることが可能である。前述の通り、アクティブ論理切替回路6が第1の状態から第2の状態へ切替えられ、ドライバ制御信号9の正負を切替えることによって、接合温度TjがTa及びTa+θ・Pdでのセンサ特性BOP及びBRPを測定することが可能である。
【0027】
図8のアクティブ論理切替回路6は、レーザートリミングヒューズ10、プルダウン素子11をそれぞれ電源端子2側、接地端子3側に接続してアクティブ論理切替信号12が溶断前には“H”、溶断後に“L”となるように構成しているが、レーザートリミングヒューズ10、プルダウン素子11をそれぞれ接地端子3側、電源端子2側に接続してアクティブ論理切替信号12が溶断前に“L”、溶断後に“H”となるように構成してもよい。
【0028】
また、プルダウン素子11の代わりにゲート端子を接地端子3に接続したディプレッショントランジスタを使用してもよい。トランジスタ21〜30とインバータ37は論理ゲートであるため使用する製造プロセスの最小寸法トランジスタで実現すればよく、追加テストパッドに必要な占有面積(通常100um×100um程度)に比べると遥かに小さい実装面積で実現可能なことは自明である。
【0029】
図9は、本発明のセンサ装置のアクティブ論理切替回路6の他の例を示す回路図である。
図9のアクティブ論理切替回路6は、N型エンハンスメントトランジスタ31〜33、P型エンハンスメントトランジスタ34〜35、N型ディプレッショントランジスタ36、インバータ37、ANDゲート38、D型フリップフロップ39、EXORゲート40を有する。図示しないがD型フリップフロップ39にはリセット端子が設けられており、電源起動後の初期内部状態は“L”となっている。
【0030】
図10は、
図9に示すアクティブ論理切替回路6の動作を示すタイミングチャートである。
N型ディプレッショントランジスタ36は、ゲートが接地端子に接続され、定電流源として動作する。P型エンハンスメントトランジスタ34〜35は、カレントミラー回路として動作し、トランジスタ31〜33にN型ディプレッショントランジスタ36で生成した微小な定電流を所定の係数倍した電流を供給する。トランジスタ31〜33は、電源端子2に接続されたトランジスタ31のゲート電圧が3・VTHよりも低いときにはオフしている。
【0031】
ここで、3・VTHはセンサ装置が通常使用される電源電圧の上限よりも高くなるように、センサ装置を構成するトランジスタの定格電圧よりも低くなるように設定される。このとき、インバータ37の入力信号43は“H”となっており、インバータ37の出力信号である高電圧検出信号41は“L”である。ANDゲート38の出力である切替CLK信号42は、センサ出力論理信号によらず常に“L”であり、D型フリップフロップ39のCLK端子にCLK信号が入力されず、EXORゲート40の一方の入力に接続されるアクティブ論理切替信号12は“H”である。この状態では、EXORゲート40の出力であるドライバ制御信号9は、センサ出力論理信号8の正論理(第1の状態に対応)として出力される。
【0032】
次に、トランジスタ31のゲート電圧が3・VTHを超過すると、トランジスタ31〜33がオンとなり、インバータ37の入力信号43は“L”となる。このとき、高電圧検出信号41は“H”となり、切替CLK信号42はセンサ出力論理信号8と等しくなる。ここでBin>BOPとなるように印加磁束密度を掃引することによって、センサ出力論理信号8を“H”から“L”に遷移させるとともに切替CLK信号42を“H”から“L”に遷移させると、D型フリップフロップ39のCLK端子には立下りCLK信号が入力される。
【0033】
このとき、D型フリップフロップ39は内部状態を“L”(Q=“L”/QX=“H”)から“H” (Q=“H”/QX=“L”)に切替えられ、EXORゲート40の一方の入力に接続されるアクティブ論理切替信号12は“H”から“L”に切替えられる。この状態ではEXORゲート40の出力であるドライバ制御信号9はセンサ出力論理信号8の負論理(第2の状態に対応)として出力される。
【0034】
このように、電源端子2に印加する電圧と印加磁束密度Binによって出力ドライバ7のアクティブ論理を切替えることが可能である。第2の状態から元の第1の状態に復帰させるには、同様に電源端子2の電圧を3・VTHを超過した状態でBin>BOPとなるように磁界を掃引することによって、センサ出力論理信号8を“H”から“L”に遷移させればよい。
【0035】
前述の通り、アクティブ論理切替回路6が第1の状態から第2の状態へ切替えられ、ドライバ制御信号9の正負を切替えることによって、接合温度TjがTa及びTa+θ・Pdでのセンサ特性BOP,BRPを測定することが可能である。
【0036】
図9の回路では、N型エンハンスメントトランジスタ31〜33を3段縦積みの構成としたが、センサが通常使用される電源電圧の範囲やトランジスタの定格電圧を鑑みて任意の段数としてもよく、n段縦積みとした場合の高電圧検出の閾値はn・VTHとなる。
また、N型エンハンスメントトランジスタを使用しているが、P型エンハンスメントトランジスタを使用してもよい。
【0037】
また、定電流源としてゲート端子を接地端子3に接続したディプレッショントランジスタを用いているが、微小な定電流を生成することが出来ればよく、その他の定電流回路を使用してもよい。
また、アクティブ論理切替状態の保持のためにD型フリップフロップを使用しているが、T型やJK型などの他のフリップフロップを用いて適宜前後のゲート構成を変更してもよい。
【0038】
このように電源端子2と、接地端子3と、出力端子4と、センサ回路5と、アクティブ論理切替回路6と、出力ドライバ7とを設け、出力ドライバ7を発熱素子として利用することにより、専用端子を設けることなく、自己発熱を利用した高温検査が可能であり、新規装置の導入や検査時間の増大、テストパッド追加によるチップ占有面積増大に伴うコスト増加を抑制したセンサ装置を提供可能である。
【0039】
明細書中の実施形態においては、レーザートリミングヒューズを用いたアクティブ論理切替回路、高電圧検出回路を用いたアクティブ論理切替回路を説明したが、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の切替回路を適用することが可能である。
また、実施形態ではアクティブ論理切替回路にEXORゲートを使用しているが、複数の並列トランスミッションゲートによるセレクタ回路を使用してもよい。
【0040】
また、明細書中の実施形態においてセンサ回路5は交番検知型磁気スイッチとして説明したが、その他の2値出力の磁気センサ、例えば片極検知型磁気スイッチ、両極検知型磁気スイッチでもよいし、その他の2値出力の物理量センサ、例えば電流スイッチ、加速度スイッチや照度スイッチに適用してもよい。
【0041】
本明細書には発明の好適な実施形態について述べられているが、上記述は本発明の原理の単なる例示であり、従って本発明の範囲および主旨から逸脱することなく様々な変更が、当業者によってなされ得る。