(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般の群管理エレベータにおいては、一台の地震感知器に複数台のエレベータが接続されている場合が多く、エレベータの地震管制運転を確認することを目的として地震感知器を強制的に動作させると、すべてのエレベータの運転が地震管制運転となってしまい、通常運転となっているエレベータがなくなってしまう。
【0005】
ところが、複数台のエレベータを同時に設置する新設物件では、工事使用号機となるエレベータがあったり、引き渡し物件では、顧客の事情によって、すべてのエレベータを停止不可とする場合がほとんどであるため、エレベータの地震管制運転を確認する作業は、休日や深夜といった極めて限られた環境・時間帯でしか実施できないという問題がある。
【0006】
このため、極めて限られた環境・時間帯以外においても、エレベータの地震管制運転を確認する作業を可能とするため、地震管制運転の確認を行う対象号機であるエレベータ以外のエレベータへの地震感知器からの地震感知器動作信号の入力を、制御プログラムを用いて遮断する地震管制運転カット機能を用いる態様が考えられる。
【0007】
前記特許文献1に記載の技術は、メンテナンスツールから管制運転点検不許可信号を入力し、管制運転動作判定手段にて管制運転の動作可否を判定することで、管制運転の点検を行うエレベータ以外のエレベータに対して管制運転を行わない構成となっている。特に、管制運転点検不許可指令が有効時限を保持し、一定時間経過後に、管制運転不可状態が無効となる。このため、点検終了操作を行わなかった場合でも、一定時間経過後に、エレベータの管制機器が正常に接続される。このため、点検終了操作を行わなかった場合でも、地震等で実際に管制機器が動作した際にエレベータが管制運転せず、利用者に迷惑をかけてしまうことを防止することができる。
【0008】
しかしながら、前記特許文献1に記載の技術においては、管制運転点検不許可指令が保持する有効時限が経過しなければ、管制運転不可状態が無効とならない。このため、点検終了操作を行わなかった場合に、有効時限である一定時間が経過する前に地震が発生した場合や、管制運転点検中に地震が発生した場合には、一般利用者が乗車可能な状況にも関わらず、エレベータが管制運転とならず、揺れが続いている状況下においてもエレベータが高速で走行してしまう等のおそれがある。
【0009】
そこで、本発明は、地震発生時にエレベータの運転が地震管制運転とならない設定下であっても、適切な地震管制運転を可能とするエレベータの地震管制運転制御システムおよび、エレベータの地震管制運転制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、地震感知器と、
エレベータ遠隔監視装置と、エレベータ制御装置と、を備えたエレベータの地震管制運転制御システムにおいて、
前記エレベータ制御装置は、前記地震感知器から地震感知器動作信号を受信した場合にエレベータの運転を地震管制運転とする運転モードである地震管制運転許可モードと、前記地震感知器から前記地震感知器動作信号を受信した場合であっても前記エレベータの運転を通常運転とする地震管制運転カットモードと、の間で、前記エレベータの運転モードを切替える地震管制運転モード切替部と、前記エレベータの運転を、前記通常運転とするか前記地震管制運転とするかを判定する地震管制運転判定部と、前記地震管制運転判定部の判定結果に従って、前記エレベータの運転を前記通常運転および前記地震管制運転のいずれかにする地震管制運転切替部と、を備え、前記エレベータ遠隔監視装置は、前記エレベータの運転モードが前記地震管制運転カットモードである間に、緊急地震速報を受信した場合、当該地震管制運転カットモードを解除し、前記地震管制運転許可モードとする解除要求信号を、前記地震管制運転モード切替部に出力する地震管制運転カットモード解除部を備え、前記地震管制運転モード切替部は、前記地震管制運転カットモード時に前記解除要求信号を受信すると、前記エレベータの運転モードを、前記地震管制運転許可モードに切替え、前記地震管制運転判定部は、前記地震感知器から前記地震感知器動作信号を受信し、かつ、当該エレベータの運転モードが、前記地震管制運転許可モードである場合、前記エレベータの運転を、前記地震管制運転とするよう判定する。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、地震発生時にエレベータの運転が地震管制運転とならない設定下であっても、適切な地震管制運転を可能とするエレベータの地震管制運転制御システムおよび、エレベータの地震管制運転制御方法を提供することができる。そして、上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係るエレベータの震管制運転制御システムの一実施形態を図に基づいて説明する。
【0014】
図1は、本発明に係るエレベータの地震管制運転制御システムの一実施形態の構成を示す図である。
【0015】
図1において、本発明に係るエレベータの地震管制運転制御システムは、主として管制センタ1、基地局2、通信装置3、エレベータ遠隔監視装置4、エレベータ5、エレベータ制御装置6、地震感知器7、およびメンテナンスツール8で構成される。管制センタ1は、基地局2に接続され、基地局2にて行われる動作を管制する。基地局2は、例えばテレビ回線、ラジオ回線、インターネット回線等を介して気象庁から配信される緊急地震速報を受信する緊急地震速報受信部21と、この受信した緊急地震速報を、予め定めた所定の緊急信号に変換する信号変換部22と、信号変換部22にて変換した緊急信号を、通信装置3を介してエレベータ遠隔監視装置4へ送信する緊急地震速報配信部23と、を備える。通信装置3は、緊急地震速報配信部23から配信される緊急信号を受信し、この受信した緊急信号をエレベータ遠隔監視装置4へ送信する。
【0016】
緊急地震速報は、地震が発生した直後に、各地に設置した地震計から地震波をキャッチし、震源や規模、予想される揺れの強さ(震度)、強い揺れの到達時刻を、所定の自動制御装置(図示せず)にて自動計算して予想し、これら予測した震源、規模、震度、強い揺れの到達時刻に関する情報を、可能な限り素早く知らせ、地震による強い揺れが発生する前に、各地へ知らせる情報である。
【0017】
エレベータ遠隔監視装置4は、エレベータ制御装置6に接続され、エレベータ5の運転状態を遠隔監視し、エレベータ5の運転動作に異常が発生した場合に、この異常の発生を示す異常信号を、通信装置3を介して基地局2へ送信し、基地局2から管制センタ1へ通知する。エレベータ遠隔監視装置4は、エレベータ5の運転モードが、地震管制運転を実行不可とする地震管制運転カットモードの場合に、この地震管制運転カットモードを解除させて通常の地震管制運転許可モードとさせる地震管制運転カットモード解除部41を備える。地震管制運転カットモード解除部41は、通信装置3を介して基地局2の緊急地震速報配信部23から緊急信号を受信した場合に、設定された地震管制運転カットモードを地震管制運転許可モードに強制的に解除するための解除要求信号を発信する。
【0018】
エレベータ5は、乗客(人)や荷物を乗せる乗りかご51を備える。乗りかご51は、主ロープ52の一端に連結されている。主ロープ52は、滑車であるシーブ53の上側に掛けられ、その他端に釣合おもり54が取り付けられている。乗りかご51は、主ロープ52にて吊り下げ支持され、シーブ53を回転駆動させるモータ55の駆動制御によって、主ロープ52が上下に可動して、乗りかご51が上下に可動する。
【0019】
エレベータ制御装置6は、エレベータ5のモータ55の駆動を制御して、乗りかご51を運転制御する。エレベータ制御装置6は、地震発生時にエレベータ5の乗りかご51を緊急で最寄階へ着床させて休止させる地震管制運転を行うためのエレベータ管制運転装置61を備える。エレベータ管制運転装置61は、地震管制運転カットモード解除部41から発信された解除要求信号を受信する地震管制運転モード切替部62を備える。地震管制運転モード切替部62は、地震管制運転を実行可能とする地震管制運転許可モードと、地震管制運転カットモードとを切り替える。
【0020】
地震管制運転許可モードは、地震感知器7から地震感知器動作信号が送信された場合に、通常通りに、エレベータ5の運転を地震管制運転とする運転モードである。エレベータ5の運転は、地震管制運転モード切替部62によって、通常、地震管制運転許可モードに設定されている。地震管制運転カットモードは、地震感知器7から地震感知器動作信号が送信された場合であっても、エレベータ5の運転を地震管制運転に切替えず、通常運転を継続する運転モードであり、例えばメンテナンスツール8からの要求、すなわち外部からの要求があった場合に設定される。
【0021】
エレベータ制御装置6は、エレベータ5の運転を地震管制運転とするかどうかを判定する地震管制運転判定部63と、エレベータ5の運転を通常運転および地震管制運転のいずれかに切替える地震管制運転切替部64とを備える。地震感知器7は、地震を感知して動作した場合に、地震感知器動作信号を送信する。地震管制運転判定部63は、地震感知器7に接続され、地震感知器7から送信された地震感知器動作信号を受信した場合に、現在の運転モードに応じて、エレベータ5の運転を地震管制運転に切替えるか、または通常運転のままとするかを判定する。地震管制運転切替部64は、地震管制運転判定部
63による判定結果に基づいて、エレベータ5の運転を切替える。
【0022】
メンテナンスツール8は、エレベータ5の保守点検時に使用するものであり、エレベータ5の保守点検時にエレベータ制御装置6に接続することによって、エレベータ5の状態を確認することができるエレベータ保守点検装置である。メンテナンスツール8は、地震管制運転モード切替部62に接続される地震管制運転カットモード設定部81を有する。地震管制運転カットモード設定部81は、エレベータ5の運転を、強制的に地震管制運転許可モードから地震管制運転カットモードに強制的に切替えるための設定要求信号、および解除要求信号を、地震管制運転モード切替部62へ送信する。
【0023】
されに、エレベータ制御装置6の地震管制運転モード切替部62は、メンテナンスツール8の地震管制運転カットモード設定部81から設定要求信号を受信した場合に、エレベータ5の運転モードを地震管制運転カットモードへ切替える。また、地震管制運転モード切替部62は、エレベータ5の運転モードが地震管制運転カットモードに設定されている状態で、メンテナンスツール8の地震管制運転カットモード設定部81、またはエレベータ遠隔監視装置4の地震管制運転カットモード解除部41から解除要求信号を受信した場合に、エレベータ5の運転モードを地震管制運転許可モードへ切替える。地震管制運転モード切替部62は、地震管制運転カットモードに設定を切り替えてから、予め定めた所定時間が経過した場合に、解除要求信号を受信せずとも、地震管制運転許可モードに設定を切替、すなわち切り戻しする。
【0024】
次に、本発明の一実施形態に係るエレベータの地震管制運転制御システムの動作について、
図2および
図3を参照して説明する。
【0025】
まず、地震管制運転カットモードの設定動作および解除動作を、
図2を参照して説明する。
図2は、地震管制運転制御システムによる地震管制運転カットモードの設定動作および解除動作を示すフローチャートである。
【0026】
エレベータ制御装置6にメンテナンスツール8を接続した後、このメンテナンスツール8にて地震管制運転カットモードの設定操作を行うと(S201/YES)、メンテナンスツール8の地震管制運転カットモード設定部81からエレベータ制御装置6の地震管制運転モード切替部62に対して、地震管制運転カットモードの設定要求信号が送信される。このとき、メンテナンスツール8にて地震管制運転カットモードの設定操作を行わなかった場合は(S201/NO)、本S201の処理を繰り返す。
【0027】
上記201/YESの場合は、設定要求信号の受信に基づいて、地震管制運転モード切替部62により、エレベータ5の運転が通常の運転モードである地震管制運転許可モードから地震管制運転カットモードに切替えられる(S202)。
【0028】
この後、上記S202にて、エレベータ5の運転モードを地震管制運転カットモードに設定してから所定時間が経過した場合(S203/YES)は、後述するS207へ進み、エレベータ5の運転モードを地震管制運転カットモードから地震管制運転許可モードに切替える。
【0029】
一方、上記S202にてエレベータ5の運転モードを地震管制運転カットモードに設定してから所定時間が経過していない場合(S203/NO)に、地震が発生し、気象庁から緊急地震速報が配信され、緊急地震速報を基地局2の緊急地震速報受信部21にて受信すると、この受信した緊急地震速報が基地局2の信号変換部22にて緊急信号に変換され、この緊急信号が緊急地震速報配信部23から通信装置3へ送信される(S204/YES)。
【0030】
上記S204/YESの場合は、受信した緊急信号が通信装置3からエレベータ遠隔監視装置4の地震管制運転カットモード解除部41へ送信される(S205)。この後、緊急信号をエレベータ遠隔監視装置4にて受信すると、地震管制運転カットモードを解除する解除指令信号が地震管制運転カットモード解除部41からエレベータ制御装置6の地震管制運転モード切替部62へ送信される(S206)。すると、地震管制運転モード切替部62により、エレベータ5の運転モードが地震管制運転カットモードから地震管制運転許可モードに切替えられる(S207)。
【0031】
一方、緊急地震速報が配信されず、緊急地震速報を基地局2の緊急地震速報受信部21にて受信しない場合(S204/NO)に、メンテナンスツール8にて地震管制運転カットモードの設定を解除する解除操作がされると(S208/YES)、メンテナンスツール8により、地震管制運転カットモードの設定を解除する解除要求信号が、エレベータ制御装置6の地震管制運転モード切替部62へ送信され(S209)、上記S207へ進み、地震管制運転モード切替部62により、エレベータ5の運転モードが地震管制運転カットモードから地震管制運転許可モードに切替えられる。
【0032】
また、メンテナンスツール8にて地震管制運転カットモードの設定を解除する解除操作がなされない場合(S208/NO)は、上記S203へ戻り、地震管制運転カットモードに設定してからの所定時間の経過が判断される。
【0033】
次に、地震管制運転許可モード時に行われる地震管制運転の動作について、
図3を参照して説明する。
図3は、地震管制運転制御システムによる地震管制運転の動作を示すフローチャートである。
【0034】
地震が発生し、地震感知器7が地震を感知して動作すると、地震感知器7から地震感知器動作信号がエレベータ制御装置6の地震管制運転判定部63へ送信される(S301/YES)。このとき、地震感知器7が動作しない場合(S301/NO)は、本S301の処理を繰り返す。
【0035】
上記S301/YESの場合の後、地震管制運転判定部63により、エレベータ5の運転モードが地震管制運転カットモードかどうか判断される(S302)。このとき、エレベータ5の運転モードが地震管制運転カットモードの場合(S302/YES)は、地震管制運転判定部63により、エレベータ5の通常運転を継続すると判断され、地震管制運転切替部
64による地震管制運転への切替えが行われず、エレベータ5の通常運転が継続する(S303)。
【0036】
一方、エレベータ5の運転モードが地震管制運転カットモードでなく、地震管制運転許可モードの場合(S302/YES)は、地震管制運転判定部63により、エレベータ5の運転を地震管制運転に切り換えると判断され、地震管制運転切替部
64により地震管制運転への切替えが行われ、エレベータ5の運転が地震管制運転となる(S304)。
【0037】
上述したように上記一実施形態係るエレベータ5の地震管制運転制御システムによれば、エレベータ5を保守点検または動作確認等するときに、地震の発生に対応した地震管制運転許可モードをカットして、地震発生時に地震管制運転動作しないように設定した設定下であっても、エレベータ5の運転モードを地震管制運転カットモードとしている状況下で地震が発生した場合に、気象庁からの緊急地震速報に基づいて、エレベータ遠隔監視装置4から地震管制運転カットモードを解除させる解除要求信号を、エレベータ制御装置6の地震管制運転モード切替部62へ送信し、エレベータ5の運転を地震管制運転許可モードとする。
【0038】
この結果、エレベータ5の運転モードが地震管制運転カットモードに設定されている場合であっても、地震発生時に、エレベータ5の運転を地震管制運転に切り替えることができる。よって、地震発生時におけるエレベータ5の運転動作をより適切に行うことができ、エレベータ5を利用する利用者や、エレベータ5を保守点検または動作確認等する保守点検者等の安心度をより向上できる。すなわち、地震発生時にエレベータ5の運転が地震管制運転とならない設定下であっても、利用者の安全性を確保することができる。
【0039】
さらに、エレベータ制御装置6の地震管制運転モード切替部62は、エレベータ5の運転モードを地震管制運転カットモードに設定してから所定時間が経過した場合に、エレベータ遠隔監視装置4の地震管制運転カットモード解除部41からの解除要求信号を受信しなくても、エレベータ5の運転モードを地震管制運転許可モードに切替える。したがって、地震管制運転カットモードとする設定要求信号をメンテナンスツール8の地震管制運転カットモード設定部81から送信し、エレベータ5の運転を地震管制運転カットモードとした後に、地震管制運転カットモードを解除する解除要求信号をメンテナンスツール8から送信して、地震管制運転カットモードの解除操作を忘れた場合であっても、所定時間の経過に伴ってエレベータ5の運転モードが地震管制運転許可モードに切り替わる。このため、地震が発生した際にエレベータ5の運転を地震管制運転に切り替えることができ、地震発生時におけるエレベータ5の運転動作をより適切に制御することができる。
【0040】
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形態様が含まれる。例えば、前述した実施形態は、本発明を分りやすく説明するために説明したものであり、本発明は、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。