特許第6450318号(P6450318)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6450318
(24)【登録日】2018年12月14日
(45)【発行日】2019年1月9日
(54)【発明の名称】光受信回路及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/69 20130101AFI20181220BHJP
   H03F 3/08 20060101ALI20181220BHJP
   H03F 1/48 20060101ALI20181220BHJP
【FI】
   H04B10/69
   H03F3/08
   H03F1/48
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-540526(P2015-540526)
(86)(22)【出願日】2014年10月1日
(86)【国際出願番号】JP2014076307
(87)【国際公開番号】WO2015050168
(87)【国際公開日】20150409
【審査請求日】2017年9月15日
(31)【優先権主張番号】特願2013-206967(P2013-206967)
(32)【優先日】2013年10月2日
(33)【優先権主張国】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「超低消費電力型光エレクトロニクス実装システム技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】513065077
【氏名又は名称】技術研究組合光電子融合基盤技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100147991
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 健一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康之
(72)【発明者】
【氏名】岡本 大典
【審査官】 後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−056704(JP,A)
【文献】 特開2014−192510(JP,A)
【文献】 特開2004−95869(JP,A)
【文献】 特開2012−142822(JP,A)
【文献】 特開2012−244293(JP,A)
【文献】 特開2003−124884(JP,A)
【文献】 特開平10−290014(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/69
H03F 1/48
H03F 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトダイオードと、
前記フォトダイオードに電源を供給するトランスインピーダンスアンプと
を備え、
前記フォトダイオードのアノードと前記トランスインピーダンスアンプとの間の配線の特性インピーダンスが、前記フォトダイオードのカソードと前記トランスインピーダンスアンプとの間の配線の特性インピーダンスより高く、
前記フォトダイオードのアノードと前記トランスインピーダンスアンプとの間の配線の特性インピーダンスが、前記トランスインピーダンスアンプの入力インピーダンスより高いことを特徴とする光受信回路。
【請求項2】
前記フォトダイオードのカソードと前記トランスインピーダンスアンプとの間の配線の特性インピーダンスが、前記トランスインピーダンスアンプの入力インピーダンスより低いことを特徴とする請求項1に記載の光受信回路。
【請求項3】
フォトダイオードと、
前記フォトダイオードに電源を供給するトランスインピーダンスアンプと
を備え、
前記フォトダイオードのアノードと前記トランスインピーダンスアンプとの間の配線の特性インピーダンスが、前記フォトダイオードのカソードと前記トランスインピーダンスアンプとの間の配線の特性インピーダンスより高く、
前記フォトダイオードのカソードと前記トランスインピーダンスアンプとの間の配線の下層にグラウンドを有し、前記フォトダイオードのアノードと前記トランスインピーダンスアンプとの間の配線の下層にグラウンドを有しないことを特徴とする光受信回路。
【請求項4】
フォトダイオードと、
前記フォトダイオードに電源を供給するトランスインピーダンスアンプと
を備え、
前記フォトダイオードのアノードと前記トランスインピーダンスアンプとの間の配線の特性インピーダンスが、前記フォトダイオードのカソードと前記トランスインピーダンスアンプとの間の配線の特性インピーダンスより高く、
前記フォトダイオード及び前記トランスインピーダンスアンプがSi基板上に形成されることを特徴とする光受信回路。
【請求項5】
前記フォトダイオードのカソードと前記トランスインピーダンスアンプとの間の配線の下層に有するグラウンドがSi層で形成されることを特徴とする請求項に記載の光受信回路。
【請求項6】
フォトダイオードと、
前記フォトダイオードに電源を供給するトランスインピーダンスアンプと
を備え、
前記フォトダイオードのアノードと前記トランスインピーダンスアンプとの間の配線の特性インピーダンスが、前記フォトダイオードのカソードと前記トランスインピーダンスアンプとの間の配線の特性インピーダンスより高く、
前記フォトダイオード及び前記トランスインピーダンスアンプが、Si基板と表面Si層との間にSiO層が挿入されるSOI基板上に形成されることを特徴とする光受信回路。
【請求項7】
前記フォトダイオードのカソードと前記トランスインピーダンスアンプとの間の配線の下層に有するグラウンドがSOI層で形成されることを特徴とする請求項に記載の光受信回路。
【請求項8】
前記フォトダイオードのカソードと前記トランスインピーダンスアンプとの間の配線に対応するSOI層の部分に選択的にイオン注入されていることを特徴とする請求項に記載の光受信回路。
【請求項9】
フォトダイオードとトランスインピーダンスアンプとを備える光受信回路を製造する方法であって、
フォトダイオードのアノードとトランスインピーダンスアンプとの間の配線が形成されるべき部分のSOI層をエッチングするステップと、
フォトダイオードのカソードとトランスインピーダンスアンプとの間の配線が形成されるべき部分のSOI層にイオン注入するステップと、
SiO層を形成するステップと、
前記フォトダイオードのカソードと前記トランスインピーダンスアンプとの間の配線を前記SiO層上に形成するステップと
を含む方法。
【請求項10】
前記イオン注入するステップは、Si変調器又はGe受光器を形成するためにキャリア注入を行うステップを含むことを特徴とする請求項に記載の光受信回路を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光受信回路及びその製造方法に関し、より詳細には、フォトダイオードとトランスインピーダンスアンプ(TIA)との間の配線による特性劣化を抑制する光受信回路及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信システムの受信機においてはフォトダイオード(PD)が光信号を電流信号に変換する。さらに、PDに接続されたトランスインピーダンスアンプ(TIA)が電流信号を電圧信号に変換して増幅し、次段の回路に伝達する。
【0003】
従来、このような光受信回路を形成する場合には、PDのアノードとTIAとをワイヤボンディングで接続し、PDのカソードはチップコンデンサを介して接地されていた。PDに電源を供給する方法として、PDとTIAとに別個に電源を供給する方法と、TIAからPDに電源を供給する方法とがある。電源の数や電源パッドの数を低減するためには、TIAからPDへ電源を供給することが望ましい。
【0004】
このような光受信回路においては、PDとTIAとを接続する配線は光受信回路の特性に大きく影響し、TIAから出力される電圧信号のアイパターンを劣化させる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、PDとTIAとの間の配線による特性劣化を抑制する光受信回路及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施例において、光受信回路は、フォトダイオードと、フォトダイオードに電源を供給するトランスインピーダンスアンプとを備える。フォトダイオードのアノードとトランスインピーダンスアンプとの間の配線の特性インピーダンスは、フォトダイオードのカソードとトランスインピーダンスアンプとの間の配線の特性インピーダンスより高い。
【0007】
実施例において、フォトダイオードのアノードとトランスインピーダンスアンプとの間の配線の特性インピーダンスは、トランスインピーダンスアンプの入力インピーダンスより高い。
【0008】
実施例において、フォトダイオードのカソードとトランスインピーダンスアンプとの間の配線の特性インピーダンスは、トランスインピーダンスアンプの入力インピーダンスより低い。
【0009】
実施例において、フォトダイオードのカソードとトランスインピーダンスアンプとの間の配線の下層にグラウンドが配置される一方、フォトダイオードのアノードとトランスインピーダンスアンプとの間の配線の下層にグラウンドが配置されない。
【0010】
実施例において、フォトダイオード及びトランスインピーダンスアンプがSi基板上に形成される。
【0011】
実施例において、フォトダイオードのカソードとトランスインピーダンスアンプとの間の配線の下層に配置されるグラウンドがSi層で形成される。
【0012】
実施例において、フォトダイオード及びトランスインピーダンスアンプは、Si基板と表面Si層との間にSiO層が挿入されるSOI基板上に形成される。
【0013】
実施例において、フォトダイオードのカソードとトランスインピーダンスアンプとの間の配線の下層に配置されるグラウンドがSOI層で形成される。
【0014】
実施例において、フォトダイオードのカソードとトランスインピーダンスアンプとの間の配線に対応するSOI層の部分に選択的にイオン注入される。
【0015】
実施例において、フォトダイオードとトランスインピーダンスアンプとを備える光受信回路の製造方法は、フォトダイオードのアノードとトランスインピーダンスアンプとの間の配線が形成されるべき部分のSOI層をエッチングするステップと、フォトダイオードのカソードとトランスインピーダンスアンプとの間の配線が形成されるべき部分のSOI層にイオン注入するステップと、SiO層を形成するステップと、フォトダイオードのアノードとトランスインピーダンスアンプとの間の配線をSiO層上に形成するステップとを含む。
【0016】
実施例において、上記イオン注入するステップは、Si変調器又はGe受光器を形成するためにキャリア注入を行うステップを含む。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】光受信回路の概略図を示す。
図2図1の光受信回路においてTIAから出力される電圧信号を示す。
図3】本発明の実施例による光受信回路の概略図を示す。
図4】光受信回路の概略図を示す。
図5図4の光受信回路においてTIAから出力される電圧信号を示す。
図6】本発明の実施例による光受信回路の概略的な平面図を示す。
図7】本発明の実施例による光受信回路の概略的な平面図を示す。
図8】本発明の実施例による光受信回路の概略的な断面図を示す。
図9】本発明の実施例による光受信回路の概略的な断面図を示す。
図10】本発明の実施例による光受信回路の製造工程のフローチャートを示す。
図11】本発明の実施例による光受信回路の概略的な断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施例を図面を参照しながら以下に詳細に説明する。
【0019】
本発明の実施例によれば、基板にPDを形成し、TIAを基板にフリップチップ実装することにより、PDとTIAとを有する光受信回路が基板上に形成される。この構成により、従来の光受信回路と比較して、必要となる部品の数が少なくなり、集積度を高めることができる。しかし、PDのアノード及びカソードとTIAとの間にある程度の長さの配線が必要となり、この配線が光受信回路の特性に大きく影響する。
【0020】
本願発明者らは、上記のように基板上に光受信回路を形成する際、PDのアノードとTIAとを接続する配線の特性インピーダンスを高くすることによって、光受信回路の特性劣化を抑制できることを発見した。図1(A)及び図1(B)は、上記の特徴を有さない例示的な光受信回路100A及び上記の特徴を有する例示的な光受信回路100Bの概略図をそれぞれ示す。光受信回路100A及び100Bは基板上に形成されてもよい。光受信回路100A及び100Bは、それぞれ、フォトダイオード(PD)102A及び102B、トランスインピーダンスアンプ(TIA)108A及び108B、PDのアノードとTIAとの間の配線104A及び104B、PDのカソードとTIAとの間の配線106A及び106Bを有する。図1において、本発明の実施例による光受信回路の特性改善を明確に説明するために、PDのカソードには電源とコンデンサが接続され、高周波的に接地され、カソード側配線106の影響を無視することができると仮定する。
【0021】
一例として、図1(A)の光受信回路100Aは、PD102AのアノードとTIA108Aとが、例えば50μmの幅を有する長さ500μmの電気配線104Aで接続されるように構成される。例えば、電気配線104Aは、TIA108Aの特性インピーダンスよりも低い特性インピーダンスを有するように構成されてもよい。また、図1(B)の光受信回路100Bは、PD102BのアノードとTIA108Bとが、より小さな10μmの幅及び長さ500μmの電気配線で接続されるように構成される。したがって、図1(B)の光受信回路100Bは、図1(A)に示す通常の構成と比較して、PD102BのアノードとTIA108Bとの間の配線104Bの特性インピーダンスが高い。
【0022】
PD102A及び102Bから出力される電気信号が25GbpsのNRZ信号であると仮定した場合にTIA108A及び108Bから出力される電圧信号の計算結果を図2(A)及び図2(B)に示す。図2(A)は図1(A)に対応し、図2(B)は図1(B)に対応する。図2から明らかなように、図1(B)のようにPDのアノードとTIAとの間の配線のインピーダンスをより高くすることにより、TIAの出力におけるアイ開口が大きくなり、光受信回路の特性が改善される。
【0023】
図3は、本発明の実施例による光受信回路300の概略図を示す。光受信回路300は、PD302、アノード側配線304、カソード側配線306及びTIA308を有する。PD302とTIA308とはアノード側配線304及びカソード側配線306を介して接続される。PD302の電源はTIA308を介して供給される。実施例において、アノード側配線304の特性インピーダンスはカソード側配線306の特性インピーダンスよりも高い。一例として、アノード側配線304の特性インピーダンスはTIA308の入力インピーダンスより高い。また、一例として、カソード側配線306の特性インピーダンスはTIA308の入力インピーダンスより低い。
【0024】
図4及び図5は本発明の実施例の効果を明らかにする。図4(A)は、本発明の実施例と対比させるための、PD402Aのアノード側配線404A及びカソード側配線406Aの両方が高い特性インピーダンスを有する光受信回路400Aを示す。図4(B)は、本発明の実施例による光受信回路400Bを示す。PD402Bのアノード側配線404Bが高い特性インピーダンスを有する一方、カソード側配線406Bが低い特性インピーダンスを有する。一例として、図4(A)のアノード側配線404A及びカソード側配線406A並びに図4(B)のアノード側配線404Bは、1μmの高さ、10μmの幅及び500μmの長さを有する電気配線として構成されてもよい。図4(B)のカソード側配線406Bは、1μmの高さ、90μmの幅及び500μmの長さを有してもよい。すなわち、本発明の実施例による光受信回路400Bにおいては、アノード側配線404Bにおいてインダクタンス成分が付加される一方、カソード側配線406Bにおいてインダクタンス成分が低減される。
【0025】
図5(A)及び図5(B)は、それぞれ、図4(A)及び図4(B)の光受信回路においてPD402A及びPD402Bから出力される電流信号が25GbpsのNRZ信号であると仮定した場合にTIA408A及び408Bから出力される電圧信号のアイパターンを示す。本発明の実施例の光受信回路400Bにより、出力信号のジッタが小さく、立ち上がり時間及び立ち下がり時間が短い良好なアイパターンが得られることが確認される。
【0026】
実施例において、アノード側配線404BはTIA408Bの入力インピーダンスよりも高い特性インピーダンスを有している。また、実施例において、カソード側配線406BはTIA408Bの入力インピーダンスよりも低い特性インピーダンスを有している。本発明の実施例において、アノード側配線404Bはカソード側配線406Bよりも長い配線長を有してもよい。また、アノード側配線404Bはカソード側配線406Bよりも小さな幅を有してもよい。
【0027】
図6は、光集積回路として構成される本発明の実施例による光受信回路600の概略的な平面図を示す。光受信回路600は、基板がシリコン(Si)で形成され、Si基板上にPD602及びTIA608が形成されるように構成されてもよい。実施例において、PD602とTIA608は、特性インピーダンスの高いアノード側配線604及び特性インピーダンスの低いカソード側配線606を介して接続される。例えば、アノード側配線604はカソード側配線606よりも小さな幅を有してもよい。
【0028】
ここでは、PDのアノード及びカソードとTIA間を接続することで配線としたが、PDのアノード側及びカソード側の電極と、TIAの入力側の電極を接続する電極の構造にも適用できる。
【0029】
図7は、光集積回路として構成される本発明の実施例による光受信回路700の概略的な平面図を示す。実施例において、PD702のカソードとTIA708との間の配線の下層にグラウンド722が配置される一方、PD702のアノードとTIA708との間の配線の下層にグラウンドが配置されないように、光受信回路700が構成されてもよい。また、本発明の実施例において、光受信回路700はSi基板上に形成されてもよい。高インピーダンス配線704や低インピーダンス配線706はマイクロストリップラインやコプレーナウェーブガイドで形成されてもよい。グラウンド722はSi層によって形成されてもよい。
【0030】
本発明の実施例において、光受信回路は、Si基板と表面Si層(図示せず)との間に二酸化珪素(SiO)層が挿入された構造を有するSOI(Silicon on Insulator)基板上に形成されてもよい。
【0031】
図8は、本発明の実施例による、PD(図示せず)及びTIA(図示せず)がSOI基板810上に形成される光受信回路800の概略的な断面図を示す。SOI基板においては、Si基板と表面Si層との間にSiO層が挿入される。SOI基板810は、Si層812、BOX(埋め込み酸化膜)(SiO)層814及びSiO層816を積層することにより形成されてもよい。一例として、PDとTIAとの間のアノード側配線804及びカソード側配線806は500μmの長さを有してもよい。Si層812は20Ωcmの抵抗を有してもよい。BOX層814は3μmの厚さを有してもよい。SiO層816は1μmの厚さを有してもよい。アノード側配線804及びカソード側配線806はSOI基板810上に形成され、アノード側配線804はカソード側配線806よりも高い特性インピーダンスを有する。例えば、図8に示すように、アノード側配線804の幅はカソード側配線806の幅よりも小さくてもよい。
【0032】
図9は、本発明の実施例による、SOI基板910上に形成される光受信回路900の概略的な断面図を示す。SOI基板910は、Si層912、BOX層914及びSiO層916から構成される。さらに、カソード側配線906の下層のBOX層914とSiO層916との間にSOI(Si)層918が形成される。図9の実施例によれば、SOI層918の導電性により、グラウンドをSOI層で形成することができる。したがって、アノード側配線904とカソード側配線906が同程度の幅を有する場合であっても、アノード側配線904の特性インピーダンスがカソード側配線906の特性インピーダンスよりも高くなる。
【0033】
図9に示す実施例において、SOI層918のうちカソード側配線906の下部の部分に選択的なイオン注入が行われてキャリアが形成されてもよい。この場合、選択的にイオン注入された部分は、SOI層918の光導波路が形成された他の部分よりも小さな抵抗率を有する。したがって、カソード側配線906の特性インピーダンスがより低くなり、光受信回路900の特性が改善される。
【0034】
図10は、図9に示すような光受信回路900の製造工程を示すフローチャートである。ステップ1002において、フォトダイオードのアノードとトランスインピーダンスアンプとの間の配線が形成されるべき部分のSOI層がエッチングされる。ステップ1004において、フォトダイオードのカソードとトランスインピーダンスアンプとの間の配線が形成されるべき部分の下のSOI層に選択的にイオン注入が行われる。ステップ1012において、カソード側のSOI層918及びアノード側のBOX層914の上にSiO層916が形成される。ステップ1014において、SiO層916上にアノード側配線904及びカソード側配線906が形成される。SOI層918にはSi変調器やGe受光器などの光部品が形成されてもよい。この場合、SOI層918のうちカソード側配線906が形成されるべき部分の下への選択的なイオン注入とともに、光部品が形成される部分にキャリア注入が行われてもよい。
【0035】
図11は、本発明の実施例による、SOI基板1110上に形成される光受信回路1100の概略的な断面図を示す。SOI基板1110は、Si層1112、BOX層1114、第1のSiO層1116及び第2のSiO層1120から構成される。さらに、カソード側の第2のSiO層1120には、グラウンド1122が形成されマイクロストリップラインが形成される。図11の実施例によれば、アノード側配線1104とカソード側配線1106が同程度の幅を有する場合であっても、グラウンド1122の導電性により、アノード側配線1104の特性インピーダンスがカソード側配線1106の特性インピーダンスよりも高くなる。
【0036】
本明細書において、本発明は特定の実施例に関して説明されたが、本明細書に記載された実施例は、本発明を限定的に解釈することを意図したものではなく、本発明を例示的に説明することを意図したものである。本発明の範囲から逸脱することなく他の代替的な実施例を実施することが可能であることは当業者にとって明らかである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11