(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
本実施の形態の耐スケール部材は、ライニング層が形成されており、ライニング層が、フェノール樹脂組成物の硬化物であることを特徴とする。一般に、ライニング層は基材上に形成されるが、ライニング層のみで耐スケール部材を形成できる場合には、基材を設ける必要はない。すなわち、基材及びライニング層がフェノール樹脂組成物の硬化物であってもよい。
【0011】
フェノール樹脂組成物に含有されるフェノール樹脂としては、加熱硬化又は酸硬化が可能なものであれば特に限定されない。具体例としては、レゾール型フェノール樹脂又はクレゾール型フェノール樹脂が挙げられる。
レゾール型フェノール樹脂は、一般に、フェノール、クレゾール、キシレノール、パラアルキルフェノール、パラフェニルフェノール、レゾルシン等に代表されるフェノール類又はその誘導体と、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、フルフラール、アセトアルデヒド等に代表されるアルデヒド類とを用い、それらを、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等に代表されるアルカリ触媒、又はトリメチルアミンやトリエチルアミン等の脂肪族アミンの存在下で反応させた後、必要に応じて、中和処理及び/又は減圧脱水処理を施すことによって調製することができる。なお、このレゾール型フェノール樹脂の調製方法は一例であり、それ以外の方法によって調製されるレゾール型フェノール樹脂も使用可能である。
クレゾール型フェノール樹脂は、上述のレゾール型フェノール樹脂の調整方法において、アルカリ触媒の代わりに、塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸、シュウ酸、トルエンスルホン酸等の有機酸に代表される酸性触媒を用いることによって調製することができる。
【0012】
フェノール樹脂を製造する際のフェノール類とアルデヒド類との使用割合については特に限定されないが、一般にモル比で1:1〜1:3、好ましくは、1:1.5〜1:2.5、より好ましくは1:1.6〜1:2.5、特に好ましくは1:1.8〜1:2.1の範囲である。また、フェノール類、アルデヒド類及び触媒は、単一成分を用いてもよいが、2種以上の成分を組み合わせて用いてもよい。
【0013】
本発明において好ましいレゾール型フェノール樹脂は、温度25℃における粘度が500〜8,000mPa・s、比重が1.15〜1.30、pHが6.0〜7.2、不揮発分が68〜80%に調整された液状のレゾール型フェノール樹脂である。このようなレゾール型フェノール樹脂は、市販されており、例えば、昭和電工株式会社製のショウノール(登録商標)BRL−240、BRL−1017等を用いることができる。
【0014】
本発明におけるフェノール樹脂組成物としては、上記フェノール樹脂をそのまま用いて熱硬化させることもできるが、スケールの付着防止効果及びスケールの除去効果の観点からは、上記フェノール樹脂と酸硬化剤とを含む酸硬化型フェノール樹脂組成物を用いることが好ましい。酸硬化剤を用いることにより、ライニング層の酸性度が高まり、スケールが付着し難い状態を保つことができる。
熱硬化の場合は、繊維強化材等にフェノール樹脂を含浸させて予備加熱し、揮発分を除去しながらBステージ状態(半硬化状態)としたプリプレグを作製した後、これを成形し、さらに加熱して硬化する方法が一般的である。一方、酸硬化型フェノール樹脂組成物を用いる場合は、より低温での硬化が可能なため、ライニング層を形成する基材表面に直接塗布して使用することが可能である。
【0015】
酸硬化型フェノール樹脂組成物に含有される酸硬化剤としては、特に限定されず、当該技術分野において公知のものを用いることができる。酸硬化剤の例としては、ベンゼンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、ナフトールスルホン酸、フェノールスルホン酸、硫酸、リン酸等の有機酸又は無機酸が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。このような酸硬化剤は、一般に市販されており、例えば、昭和電工株式会社製のFRH−50(パラトルエンスルホン酸/リン酸エステル=4/1(質量比)、70%希釈品)等を用いることができる。
【0016】
酸硬化型フェノール樹脂組成物におけるフェノール樹脂及び酸硬化剤の使用量は、それらの種類に応じた量を使用すればよく特に限定されない。一般に、酸硬化型フェノール樹脂組成物の硬化性と安定性との両立の観点から、酸硬化剤の使用量が、フェノール樹脂100質量部に対して、好ましくは0.7〜42質量部、より好ましくは2〜38質量部、最も好ましくは3.5〜35質量部となるようにすればよい。酸硬化剤の使用量が0.7質量部未満であると、硬化に時間がかかりすぎて実用的ではないことがある。一方、酸硬化剤の使用量が42質量部を超えると、短時間でゲル化し易く、十分な可使時間が得られないことがある。
【0017】
フェノール樹脂組成物は、上記の成分に加えて、ライニング層の耐食性、強度及び耐衝撃性を向上させる観点から、繊維強化材及び/又は充填材をさらに含むことができる。
繊維強化材としては、特に限定されず、当該技術分野において公知のものを用いることができる。繊維強化材の例としては、無機繊維及び有機繊維等が挙げられる。より具体的には、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、高密度ポリエチレン繊維、ナイロン(登録商標)繊維、ビニロン繊維等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、繊維材料の形状も特に限定されず、ロービング、テープ状、マット状等のものを用いることができる。
【0018】
繊維強化材の使用量は、特に限定されないが、フェノール樹脂100質量部に対して、好ましくは5〜400質量部、より好ましくは50〜350質量部、最も好ましくは50〜300質量部である。繊維強化材の使用量が5質量部未満であると、所望の強度が得られないことがある。一方、繊維強化材の使用量が400質量部を超えると、耐衝撃性が低下してしまうことがある。
【0019】
充填材としては、特に限定されず、当該技術分野において公知のものを用いることができる。充填材の例としては、シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、炭酸カルシウム、ガラスフレーク等が挙げられる。これらの成分は、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でもガラスフレークは、強度等の観点から、平均厚さが0.1〜10μm、好ましくは1〜8μm、平均粒度が0.01〜2mm、好ましくは0.05〜1.7mmであるものが望ましい。
また、充填材は、フェノール樹脂との馴染みを向上させる観点から、アミノシラン、ビニルシラン、エポキシシラン、アクリルシラン等のシラン処理剤を用いて表面処理を予め行ってもよい。
充填材の使用量は、特に限定されないが、フェノール樹脂100質量部に対して、好ましくは200質量部以下、より好ましくは5〜180質量部、最も好ましくは10〜160質量部である。充填材の使用量が200質量部を超えると、耐衝撃性が低下してしまうことがある。
【0020】
フェノール樹脂組成物は、その硬化物であるライニング層の特性を損なわない範囲内において、当該技術分野において公知の添加剤を配合してもよい。公知の添加剤の例としては、紫外線吸収剤、酸化防止剤、染料、顔料、揺変剤、難燃剤、低収縮剤、有機充填剤、希釈溶剤、表面処理剤、湿潤剤、硬化促進剤、離型剤等を挙げることができる。これらの添加剤の配合割合は、本発明の効果を損なわない範囲であればよく、特に限定されない。
【0021】
上記のような成分を含むフェノール樹脂組成物は、当該技術分野において通常行われる方法、例えば、ニーダー等を用いて上記の成分を混練することによって製造することができる。また、繊維強化材を用いる場合、繊維強化材以外の成分を混練してコンパウンドを作製した後、このコンパウンドを繊維強化材に含浸させることによってフェノール樹脂組成物を製造してもよい。
【0022】
フェノール樹脂組成物は、ライニング材として用いられ、加熱して硬化させることでスケールの付着防止効果及びスケールの除去効果に優れたライニング層を形成することができる。
硬化条件は、特に限定されず、使用するフェノール樹脂組成物に応じて加熱時間及び加熱温度を適宜設定すればよい。例えば、50℃〜150℃の加熱温度では、1〜12時間の加熱時間で硬化させるのが好ましい。
形成されるライニング層の厚さは、部材の種類に応じて適宜設定すればよく、特に限定されない。
【0023】
ライニング層が形成される部材としては、特に限定されず、スケールが付着する様々な部材が挙げられる。部材の例としては、パイプ、ピット等の容器等が挙げられる。この部材を構成する基材としては、特に限定されず、当該技術分野において公知のものを用いることができる。基材の例としては、例えば、炭素鋼、ステンレス、アルミニウム、銅等の金属基材や、FRP基材等が挙げられる。
FRP基材を与えるFRP成形材料としては、特に限定されないが、繊維強化材を含む、ラジカル重合性樹脂組成物やエポキシ樹脂組成物等を用いることができる。また、本発明において、ライニング層が基材も兼ねる場合には、FRP成形材料として上記のフェノール樹脂組成物を用いることもでき、その場合には繊維強化材を必須成分とする必要がある。
【0024】
FRP成形材料に用いられる繊維強化材としては、特に限定されず、当該技術分野において公知のものを用いることができる。FRP成形材料に用いられる繊維強化材は、上記のフェノール樹脂組成物に用いられる繊維強化材と同じものを用いることができる。
【0025】
FRP成形材料に用いられる繊維強化材の使用量は、特に限定されないが、繊維強化材を除いた樹脂成分100質量部に対して、好ましくは5〜400質量部、より好ましくは50〜350質量部、最も好ましくは50〜300質量部である。繊維強化材の使用量が5質量部未満であると、所望の強度が得られないことがある。一方、繊維強化材の使用量が400質量部を超えると、耐衝撃性が低下してしまうことがある。
【0026】
ラジカル重合性樹脂組成物に用いられるラジカル重合性樹脂としては、特に限定されないが、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
不飽和ポリエステル樹脂は、多価アルコールと不飽和多塩基酸(及び必要に応じて飽和多塩基酸)とのエステル化反応による縮合生成物(不飽和ポリエステル)を、スチレン等の重合性モノマーに溶解したものである。不飽和ポリエステル樹脂としては、特に限定されず、「ポリエステル樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社、1988年発行)又は「塗料用語辞典」(色材協会編、1993年発行)に記載されているもの等を用いることができる。また、不飽和ポリエステル樹脂は、市販されており、例えば、昭和電工株式会社製の「リゴラック(登録商標)」シリーズ等を用いることができる。
【0028】
ビニルエステル樹脂(「エポキシアクリレート樹脂」とも称される)は、グリシジル基(エポキシ基)を有する化合物と、アクリル酸等の重合性不飽和結合を有するカルボキシル化合物のカルボキシル基との開環反応により生成する重合性不飽和結合を持つ化合物(ビニルエステル)をスチレン等の重合性モノマーに溶解したものである。ビニルエステル樹脂としては、特に限定されず、「ポリエステル樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社、1988年発行)又は「塗料用語辞典」(色材協会編、1993年発行)に記載されているもの等を用いることができる。また、ビニルエステル樹脂は、市販されており、例えば、昭和電工株式会社製の「リポキシ(登録商標)」シリーズを用いることができる。
【0029】
ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂は、ポリエステル(メタ)アクリレートをスチレン等の重合性モノマーに溶解したものである。ポリエステル(メタ)アクリレートとしては、特に限定されないが、(1)飽和多塩基酸及び/又は不飽和多塩基酸と多価アルコールとのエステル化反応によって得られるポリエステルの末端カルボキシル基にα,β−不飽和カルボン酸エステル基を含有するエポキシ化合物を反応して得られるポリエステル(メタ)アクリレート、(2)飽和多塩基酸及び/又は不飽和多塩基酸と多価アルコールとのエステル化反応によって得られるポリエステルの末端カルボキシル基に水酸基含有アクリレートを反応させて得られるポリエステル(メタ)アクリレート、或いは(3)飽和多塩基酸及び/又は不飽和多塩基酸と多価アルコールとのエステル化反応によって得られるポリエステルの末端水酸基に(メタ)アクリル酸を反応して得られるポリエステル(メタ)アクリレートを用いることができる。
【0030】
ウレタン(メタ)アクリレート樹脂は、ウレタン(メタ)アクリレートをスチレン等の重合性モノマーに溶解したものである。ウレタン(メタ)アクリレートとしては、特に限定されないが、1分子中に2つ以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物と、1分子中に1つ以上の水酸基を有する(メタ)アクリル化合物と、ポリエチレングリコール、ポリエーテルポリオール及びアジペート系ポリエステルポリオールから選ばれるポリオールとを反応させることにより得られるウレタン(メタ)アクリレートを用いることができる。
【0031】
ラジカル重合性樹脂組成物は、上記のラジカル重合性樹脂に加えて、重合性モノマー及び硬化剤等を一般に含む。
重合性モノマーとしては、特に限定されず、当該技術分野において公知のものを用いることができる。重合性モノマーの例としては、スチレン;ビニルトルエン、ジビニルベンゼン等のスチレン系モノマー;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類等が挙げられる。また、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート及び1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等の、分子中に(メタ)アクリロイル基を2個以上有する(メタ)アクリル酸エステル化合物も使用することも可能である。これらの中でも、作業性、コスト及び硬化性の観点から、スチレンが好ましい。また、これらの重合性モノマーは、単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0032】
ラジカル重合性樹脂組成物における重合性モノマーの配合量は、特に限定されないが、ラジカル重合性樹脂及び重合性モノマーの総量に対して、好ましくは20質量%〜80質量%、より好ましくは25質量%〜70質量%、最も好ましくは30質量%〜60質量%である。重合性モノマーの配合量が20質量%未満であると、ラジカル重合性樹脂組成物の粘度上昇によって作業性が低下してしまうことがある。一方、重合性モノマーの配合量が80質量%を超えると、所望の特性を有するFRP基材が得られないことがある。
【0033】
硬化剤としては、特に限定されず、常温硬化、加熱硬化、光硬化等の各種硬化方法に応じて適宜選択して用いればよい。
常温硬化に使用される硬化剤としては、特に限定されず、当該技術分野において公知のものを用いることができる。常温硬化に使用される硬化剤の例としては、ケトンパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド又はジアシルパーオキサイドと還元剤との組み合わせ等が挙げられる。還元剤の例としては、ナフテン酸コバルト、オクチル酸コバルト等のコバルト塩、五酸化バナジウム等のバナジウム化合物、ジメチルアニリン等のアミン類等が挙げられる。これらの中でも、ポットライフ等の観点から、パーオキシエステルとコバルト塩との組み合わせが特に有効である。或いは、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアリルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネート、アゾ化合物等の公知のラジカル重合開始剤を用いてもよい。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
加熱硬化に使用される硬化剤としては、特に限定されず、当該技術分野において公知のものを用いることができる。加熱硬化に使用される硬化剤の例としては、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、3−イソプロピルヒドロパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジクミルヒドロパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、イソブチルパーオキサイド、3,3,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスカルボンアミド等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0035】
光硬化に使用される硬化剤としては、特に限定されず、当該技術分野において公知のものを用いることができる。その中でも、光硬化に使用される硬化剤は、紫外光領域から可視光領域の範囲内の任意の領域に感光性を有する光重合開始剤が有効であり、公知の紫外線重合開始剤や可視光線重合開始剤を使用することが好ましい。
紫外線重合開始剤の例としては、アセトフェノン系、ベンジルケタール系、(ビス)アシルホスフィンオキサイド系等の紫外線重合開始剤が挙げられる。これらの紫外線重合開始剤は、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、短波長の紫外線は、繊維強化材を含むラジカル重合性樹脂組成物(FRP)に対する光透過性が低いことから、比較的長波長、好ましくは380nm以上の可視光領域にまで感光性を有する(ビス)アシルホスフィンオキサイド系等の紫外線重合開始剤を使用することが好ましい。
【0036】
可視光線重合開始剤の例としては、山岡等、「表面」,27(7),548(1989)や、佐藤等、「第3回ポリマー材料フォーラム要旨集」、1BP18(1994)に記載のカンファーキノン、ベンジル、トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、メチルチオキサントン、ビスシクロペンタジエニルチタニウム−ジ(ペンタフルオロフェニル)等の単独開始剤系;有機過酸化物触媒/色素系、ジフェニルヨードニウム塩/色素、ビイミダゾール/ケト化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物/水素供与性化合物、メルカプトベンゾチアゾール/チオピリリウム塩、金属アレーン/シアニン色素、特公昭45−37377号公報に記載のヘキサアリールビイミダゾール/ラジカル発生剤等の複合開始剤系等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0037】
ラジカル重合性樹脂組成物における硬化剤の配合量は、特に限定されないが、ラジカル重合性樹脂及び重合性モノマーの総量100質量部に対して、好ましくは0.02〜15質量部、より好ましくは0.06〜10質量部、最も好ましくは0.1〜7質量部である。硬化剤の配合量が0.02質量部未満であると、硬化反応が十分に進行しないことがある。一方、硬化剤の配合量が15質量部を超えると、所望の特性を有するFRP層が形成されないことがある。
【0038】
エポキシ樹脂組成物に用いられるエポキシ樹脂としては、特に限定されず、当該技術分野において公知のものを用いることができる。エポキシ樹脂の例としては、ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル及びその高分子量同族体、ノボラック型ポリグリシジルエーテル及びその高分子量同族体、1,6ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等の脂肪族系グリシジルエーテル、脂環式エポキシ化合物を用いることができる。なお、脂肪族系グリシジルエーテル等や脂環式エポキシ化合物は、希釈剤として使用してもよい。
【0039】
エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂に加えて、硬化剤を一般に含む。
エポキシ樹脂の硬化剤としては、特に限定されず、当該技術分野において公知のものを用いることができる。エポキシ樹脂の硬化剤の例としては、アミン系化合物、アミド系化合物、酸無水物系化合物、フェノ−ル系化合物等が挙げられる。より具体的には、アミン系化合物として、ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、イミダゾ−ル等が挙げられる。また、アミド系化合物として、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとから合成されるポリアミド樹脂等が挙げられる。また、酸無水物系化合物として、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。また、フェノール系化合物として、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂、レゾルシンノボラック樹脂に代表される多価ヒドロキシ化合物とホルムアルデヒドとから合成される多価フェノールノボラック樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂、ビフェニル変性ナフトール樹脂、アミノトリアジン変性フェノール樹脂やアルコキシ基含有芳香環変性ノボラック樹脂等の多価フェノール化合物が挙げられる。これらの硬化剤は、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
エポキシ樹脂組成物におけるエポキシ樹脂及び硬化剤の使用量は、それらの種類に応じた量を使用すればよく特に限定されないが、一般に、エポキシ樹脂中のエポキシ基1当量に対して、エポキシ基と反応する硬化剤中の官能基の当量が、好ましくは0.3〜2.0当量、より好ましくは0.4〜1.5当量、最も好ましくは0.5〜1.2当量となるようにすればよい。エポキシ基と反応する硬化剤中の官能基の当量が0.3当量未満又は2.0当量を超えると、硬化が不完全になり、所望の特性を有するFRP層が形成されないことがある。
【0041】
ラジカル重合性樹脂組成物及びエポキシ樹脂組成物には、その硬化物であるFRP基材の特性を損なわない範囲内において、当該技術分野において公知の添加剤を配合してもよい。公知の添加剤の例としては、紫外線吸収剤、酸化防止剤、染料、顔料、揺変剤、難燃剤、低収縮剤、無機・有機充填剤、希釈溶剤、表面処理剤、湿潤剤、硬化促進剤、離型剤等を挙げることができる。これらの添加剤の配合割合は、本発明の効果を損なわない範囲であればよく、特に限定されない。
【0042】
FRP成形材料は、硬化させることでFRP基材を形成することができる。
硬化条件は、特に限定されず、使用するFRP成形材料に応じて硬化時間等を適宜設定すればよい。
形成されるFRP基材の厚さは、部材の種類に応じて適宜設定すればよく、特に限定されない。
【0043】
フェノール樹脂組成物を用いて金属基材にライニング層を形成する場合、ライニング層と基材(特に、金属基材)との接着性が十分でない場合がある。このような場合には、基材とライニング層との間にプライマー層を設けることが好ましい。
プライマー層としては、基材及びライニング層との接着性に優れるものであれば特に限定されない。プライマー層を与えるプライマーとしては、特に限定されないが、ラジカル重合性樹脂組成物やエポキシ樹脂組成物等を用いることができる。
プライマーに用いられるラジカル重合性樹脂組成物及びエポキシ樹脂組成物としては、特に限定されず、FRP成形材料に用いられるものと同じものを用いることができる。
【0044】
プライマーは、硬化させることによってプライマー層を形成することができる。プライマーの硬化条件は、特に限定されず、使用するプライマーに応じて条件を適宜設定すればよい。
形成されるプライマー層の厚さは、基材とライニング層との間の接着性を損なわない範囲であれば特に限定されない。
【0045】
実施の形態2.
本実施の形態の耐スケール部材の製造方法は、フェノール樹脂組成物を基材上に塗布して硬化させることでライニング層を形成することを特徴とする。
【0046】
この実施の形態の耐スケール部材の製造方法は、パイプや容器等のような部材自体が予め作製してある場合に行われる方法である。すなわち、この方法では、パイプや容器等の基材の内部表面上に、フェノール樹脂組成物を塗布して硬化させることでライニング層を形成する。
フェノール樹脂組成物の塗布方法及び硬化方法としては、特に限定されず、当該技術分野において公知の方法を用いることができる。
また、ライニング層を形成する前に、アセトン等の溶媒を用いて基材の表面を洗浄しておくことが好ましい。
この実施の形態の耐スケール部材の製造方法によれば、スケールの付着防止効果及びスケールの除去効果に優れる耐スケール部材を製造することができる。
【0047】
実施の形態3.
本実施の形態の耐スケール部材の製造方法は、フェノール樹脂、繊維強化材及び必要に応じて酸硬化剤を含むフェノール樹脂組成物をマンドレルにワインディングした後、硬化させてライニング層を形成する工程と、前記ライニング層上にFRP成形材料をワインディングした後、硬化させてFRP層を形成する工程とを含むことを特徴とする。
【0048】
この実施の形態の耐スケール部材の製造方法は、フィラメントワインディング成形法として一般に知られており、部材の作製と同時にライニング層の形成を行うことができる。この方法に用いられるフェノール樹脂組成物は、繊維強化材を必須成分として含む。
【0049】
ワインディング方法としては、特に限定されず、当該技術分野において公知の方法によって行うことができる。例えば、ワインディングは、フープ巻きやヘリカル巻き等によって行うことができる。
フェノール樹脂組成物及びFRP成形材料の硬化方法としては、特に限定されず、使用するフェノール樹脂組成物及びFRP成形材料の種類に応じて適宜設定すればよい。
この実施の形態の耐スケール部材の製造方法によれば、スケールの付着防止効果及びスケールの除去効果に優れる耐スケール部材を製造することができる。
【0050】
実施の形態4.
本実施の形態の耐スケール部材の製造方法は、FRP成形材料を遠心成形用金型に導入した後、遠心成形して硬化させてFRP層を形成する工程と、前記FRP層上に、フェノール樹脂組成物を導入した後、遠心成形して硬化させてライニング層を形成する工程とを含むことを特徴とする。
【0051】
この実施の形態の耐スケール部材の製造方法は、遠心成形法として一般に知られており、部材の作製と同時にライニング層の形成を行うことができる。
遠心成形の際の条件としては、特に限定されず、使用するFRP成形材料及びフェノール樹脂組成物の種類に応じて適宜設定すればよい。
フェノール樹脂組成物及びFRP成形材料の硬化方法としては、特に限定されず、使用するフェノール樹脂組成物及びFRP成形材料の種類に応じて適宜設定すればよい。
この実施の形態の耐スケール部材の製造方法によれば、スケールの付着防止効果及びスケールの除去効果に優れる耐スケール部材を製造することができる。
【実施例】
【0052】
以下、実施例及び比較例により本発明を詳細に説明するが、これらによって本発明が限定されるものではない。
なお、実施例1〜4は、参考例とする。
(実施例1)
レゾール型フェノール樹脂(昭和電工株式会社製ショウノール(登録商標)BRL−240、固形分70%)100質量部に酸硬化剤(昭和電工株式会社製FRH−50、(パラトルエンスルホン酸/リン酸エステル=4/1(質量比)、70%希釈品))50質量部を加えて混合し、酸硬化型フェノール樹脂組成物を作製した。プライマーとして、可視光硬化型ビニルエステル樹脂組成物(昭和電工株式会社製リポキシ(登録商標)LC−760)を準備した。また、基材として、アセトン洗浄で油分を予め除去した鉄板を基材として準備した。
可視光硬化型ビニルエステル樹脂を鉄板の表面に、15μmの厚さとなるように塗布した後、600Wメタルハライドランプを用い、380〜450nmの光強度が20mW/cm
2となる条件下で10分間光照射して硬化させてプライマー層を形成した。
次に、プライマー層の表面に、調製した酸硬化型フェノール樹脂組成物を250μmの厚さとなるように塗布した後、60℃で2時間加熱し、さらに80℃で3時間加熱することで硬化させてライニング層を形成した。
【0053】
(実施例2)
プライマーとして、エピコート(登録商標)828(油化シェルエポキシ株式会社製)100質量部に2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成株式会社製)2質量部を加えて混合して得られたエポキシ樹脂組成物を用いた。また、レゾール型フェノール樹脂(昭和電工株式会社製ショウノール(登録商標)BRL−240)100質量部に酸硬化剤(昭和電工株式会社製FRH−50)50質量部及びガラスフレーク30質量部を加えて混合し、酸硬化型フェノール樹脂組成物を作製した。さらに、基材として、アセトン洗浄で油分を予め除去したアルミニウム板を基材として準備した。
エポキシ樹脂組成物をアルミニウム材の表面に、20μmの厚さとなるように塗布した後、80℃で1時間加熱し、さらに120℃で2時間加熱することで硬化させてプライマー層を形成した。
次に、プライマー層の表面に、酸硬化型フェノール樹脂組成物を250μmの厚さとなるように塗布した後、60℃で2時間加熱し、さらに80℃で3時間加熱することで硬化させてライニング層を形成した。
【0054】
(実施例3)
レゾール型フェノール樹脂(昭和電工株式会社製ショウノール(登録商標)BRL−240)100質量部に酸硬化剤(昭和電工株式会社製FRH−50)50質量部を加えて混合した後、混合物をガラスクロス(3プライ)に含浸させることで酸硬化型フェノール樹脂組成物を作製した。なお、酸硬化型フェノール樹脂組成物中のガラスクロスの含有量は40質量%とした。また、基材として、アセトン洗浄で油分を予め除去した銅板を基材として準備した。
実施例2で調製したエポキシ樹脂組成物を銅板の表面に、20μmの厚さとなるように塗布した後、80℃で1時間加熱し、さらに120℃で2時間加熱することで硬化させてプライマー層を形成した。
次に、プライマー層の表面に、酸硬化型フェノール樹脂組成物を250μmの厚さとなるように塗布した後、60℃で2時間加熱し、さらに80℃で3時間加熱することで硬化させてライニング層を形成した。
【0055】
(実施例4)
レゾール型フェノール樹脂(昭和電工株式会社製ショウノール(登録商標)BRL−240)をガラスクロスに含浸させ(ガラス含有量40質量%)、100℃で30分予備加熱することによりプリプレグを得た。
次に、このプリプレグを10プライ重ね、ガラス板に挟んだ状態にて150℃で2時間加熱して硬化させることにより、ライニング層からなるFRPを得た。
【0056】
(比較例1)
ライニング層を形成しないこと以外は実施例1と同様にして、プライマー層を表面に有する鉄基材を準備した。
(比較例2)
ライニング層を形成しないこと以外は実施例2と同様にして、プライマー層を表面に有するアルミニウム基材を準備した。
【0057】
(スケール除去性の評価)
実施例1〜4のライニング層、比較例1〜2のプライマー層の表面に、酸性の草津温泉水(PH:1.95、群馬県草津町)、アルカリ性の小野上温泉水(PH:8.9、群馬県渋川市)、水道水(群馬県伊勢崎市)を0.2mL滴下し、23℃/湿度50%の環境下で24時間放置して乾燥させた。この操作を同一箇所で7回繰り返して行い、最後に40℃の乾燥機中で12時間放置し、表面にスケールを形成させた。
次に、水を含んだスポンジに25g/cm
2の荷重を負荷してスケールの拭き取り操作を行い、拭き取りによってスケールが完全に除去される回数を測定した。
【0058】
(表面の酸性度評価)
実施例1〜4のライニング層、比較例1〜2のプライマー層の表面に純水(pH=7)を垂らし、そのpHをpH試験紙で測定した。
上記の各評価結果を表1に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
表1に示されているように、実施例1〜4で形成されたライニング層はスケール除去性が高く、特に、酸硬化剤を用いた実施例1〜3はさらにスケール除去性が高かった。一方、比較例1〜2のプライマー層は、実施例1〜4で形成されたライニング層に比べてスケール除去性が低かった。この結果について考察すると、実施例1〜4で形成されたライニング層の表面はpHが酸性側に振れており、その結果としてスケールが付着し難くなったと考えられる。
【0061】
(実施例5)
レゾール型フェノール樹脂(昭和電工株式会社製ショウノール(登録商標)BRL−240)100質量部に酸硬化剤(昭和電工株式会社製FRH−50)10質量部を加えて混合した後、ガラスサーフェースマットに含浸させることにより、酸硬化型フェノール樹脂組成物を作製した。ここで、酸硬化型フェノール樹脂組成物におけるガラスサーフェースマットの含有量は15質量%とした。
次に、PETフィルムを貼り付けたマンドレルに、酸硬化型フェノール樹脂組成物を巻き付け、60℃で2時間加熱した後、80℃で3時間加熱して硬化させることによりライニング層を形成した。
【0062】
次に、可視光硬化型ビニルエステル樹脂リポキシ(登録商標)LC−760(昭和電工株式会社製)をTガラスロービング(日東紡株式会社製RST−220PA)に含浸させ、これをフィラメントワインディング法で、最初にヘリカル巻きを層厚で0.98mm、次いでフープ巻きを膜厚0.6mm(繊維含有率:50体積%)となるようにワインディングした。ワインディング終了後、紫外線を含む可視光線の光源である600Wメタルハライドランプ3個を配置して、照射面の380〜450nmの光強度が20mW/cm
2になるように成形体を回転させながら15分間光照射することによって硬化し、FRP層(FRP基材)をライニング層上に形成した。その後、脱型してパイプを得た。
【0063】
(実施例6)
レゾール型フェノール樹脂(昭和電工株式会社製ショウノール(登録商標)BRL−240)100質量部に酸硬化剤(昭和電工株式会社製FRH−50)10質量部を加えて混合した後、フェノール樹脂及び酸硬化剤の合計100質量部に対して250質量部の砂(粒径5〜10mmm)を加えてさらに混合し、酸硬化型フェノール樹脂組成物を作製した。
FRP成形材料として、ビニルエステル樹脂(昭和電工株式会社製R−806)100質量部、t−ブチルパーベンゾエート1.0質量部、炭酸カルシウム(CaCO
3)150質量部、砂(粒径2mm以下)150質量部、砂(粒径5〜10mm)250質量部、ガラス繊維(1/4インチ)40質量部を混合して得られたビニルエステル樹脂組成物を用いた。
【0064】
遠心成形用金型にFRP成形材料を投入し、回転させながら100℃で3時間放置することで遠心成形及び硬化を行い、FRP層(FRP基材)を形成した。次に、温度を60℃まで下げて、FRP層上に酸硬化型フェノール樹脂組成物を投入し、回転させながら60℃で2時間加熱した後、80℃で3時間加熱することで遠心成形及び硬化を行い、ライニング層を形成した。その後、脱型してパイプを得た。
【0065】
(実施例7)
レゾール型フェノール樹脂(昭和電工株式会社製ショウノール(登録商標)BRL−240)をガラスサーフェースマットに含浸させ(ガラス含有量15質量%)、100℃で30分予備加熱することにより、揮発物を除去したBステージ状態のガラスサーフェースマットのプリプレグを得た。
次に、PETフィルムを貼り付けたマンドレルに、このプリプレグを巻き付け、150℃で2時間加熱硬化させることにより、ライニング層を形成した。
【0066】
次に、可視光硬化型ビニルエステル樹脂リポキシ(登録商標)LC−760(昭和電工株式会社製)をTガラスロービング(日東紡株式会社製RST−220PA)に含浸させ、これをフィラメントワインディング法で、最初にヘリカル巻きを層厚で0.98mm、次いでフープ巻きを膜厚0.6mm(繊維含有率:50体積%)となるようにワインディングした。ワインディング終了後、紫外線を含む可視光線の光源である600Wメタルハライドランプ3個を配置して、照射面の380〜450nmの光強度が20mW/cm
2になるように成形体を回転させながら15分間光照射することによって硬化し、FRP層(FRP基材)をライニング層上に形成した。その後、脱型してパイプを得た。
【0067】
(比較例3)
酸硬化型フェノール樹脂組成物を用いる代わりに可視光硬化型ビニルエステル樹脂(昭和電工株式会社製リポキシ(登録商標)LC−760)を用い、実施例5と同様の条件で光硬化させることでパイプを得た。
【0068】
(比較例4)
FRP成形材料として、不飽和ポリエステル樹脂(昭和電工株式会社リゴラック(登録商標)1557)100質量部、t−ブチルパーベンゾエート1.0質量部、炭酸カルシウム(CaCO
3)150質量部、砂(粒径2mm以下)150質量部、砂(粒径5〜10mm)250質量部、ガラス繊維(1/4インチ)40質量部を混合して得られた不飽和ポリエステル樹脂を用いた。
遠心成形用金型にFRP成形材料を投入し、回転させながら100℃で1時間放置することで遠心成形及び硬化を行い、FRP層(FRP基材)を形成した。次に、不飽和ポリエステル樹脂(昭和電工株式会社リゴラック(登録商標)1557)100質量部に砂(粒径5〜10mmm)を添加した混合物を、FRP層上に投入し、回転させながら100℃で1時間加熱した後、120℃で2時間加熱することで遠心成形及び硬化を行い、ライニング層を形成した。その後、脱型してパイプを得た。
【0069】
実施例5〜7及び比較例3〜4で得られたパイプを、昭和電工株式会社伊勢崎事業所内の井戸水のラインに設置し、内面のスケール付着状況を1ヶ月後、3ヶ月後及び6ヶ月後に観察した。その結果を表2に示す。なお、表2において、○はスケール付着なし、×はスケール付着ありを表す。
【0070】
【表2】
【0071】
表2に示されるように、フェノール樹脂組成物を用いてライニング層を形成した実施例5〜7のパイプでは、6ヶ月経過後においてもスケールの付着はほとんど確認されなかったのに対し、比較例3のパイプでは3ヶ月後、比較例4では1ヶ月後にスケールの付着が確認された。
【0072】
以上の結果からわかるように、本発明によれば、スケールの付着防止効果及びスケールの除去効果に優れる耐スケール部材及びその製造方法を提供することができる。
【0073】
なお、本国際出願は、2013年10月18日に出願した日本国特許出願第2013−217081号に基づく優先権を主張するものであり、この日本国特許出願の全内容を本国際出願に援用する。