特許第6450462号(P6450462)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6450462チェーン・リンク、およびチェーン・リンクを有する円形チェーン
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6450462
(24)【登録日】2018年12月14日
(45)【発行日】2019年1月9日
(54)【発明の名称】チェーン・リンク、およびチェーン・リンクを有する円形チェーン
(51)【国際特許分類】
   F16G 13/16 20060101AFI20181220BHJP
   H02G 11/00 20060101ALI20181220BHJP
【FI】
   F16G13/16
   H02G11/00 060
【請求項の数】17
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2017-538600(P2017-538600)
(86)(22)【出願日】2016年2月1日
(65)【公表番号】特表2018-506001(P2018-506001A)
(43)【公表日】2018年3月1日
(86)【国際出願番号】EP2016052063
(87)【国際公開番号】WO2016124540
(87)【国際公開日】20160811
【審査請求日】2017年10月19日
(31)【優先権主張番号】202015100472.9
(32)【優先日】2015年2月2日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】507336499
【氏名又は名称】イグス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクター ハフトゥング
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100196117
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 利恵
(72)【発明者】
【氏名】ゲオルク ティサ
【審査官】 川口 真一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/086198(WO,A2)
【文献】 特開平06−092426(JP,A)
【文献】 特表2010−509158(JP,A)
【文献】 特開2001−301940(JP,A)
【文献】 韓国登録特許第10−0890197(KR,B1)
【文献】 特開2002−089632(JP,A)
【文献】 特開平10−238599(JP,A)
【文献】 特開2009−041631(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16G 13/16
H02G 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸(d)のまわりで互いに対して円運動で移動することが可能な2つの接続点間でエネルギー線を受け入れかつ案内するための円形チェーン(1)のためのチェーン・リンクであって、
前記円形チェーン(1)が、円中心点軸(k)を有する円弧形状の本体(2)を具備し、該本体が、周方向(u)において互いに隣接している扇形状の複数のチェーン・リンク(3)から構成され、
該チェーン・リンク(3)が、それらの隣接している連結領域(41、42)において、前記円中心点軸(k)に関して径方向に位置するそれぞれの第1の枢動軸(s1)のまわりで互いに枢動可能に連結され、
前記チェーン・リンクが、ヒンジ継手連結部(5)の形態をした、それぞれの継合部材(51)の枢動連結部を形成するように構成され、かつ、第1の連結領域の形態をした少なくとも1つの連結領域を有し、
該少なくとも1つの連結領域が、前記第1の枢動軸(s1)のまわりでの前記枢動に加えて、前記ヒンジ継手連結部(5)が前記継合部材(51)の少なくとも1つのさらなる相対運動を可能にするように構成される、チェーン・リンク。
【請求項2】
前記円中心点軸(k)に関して周方向である方向(u)における第2の枢動軸(s2)のまわりでの前記継合部材(51)の枢動の形式である前記継合部材(51)の第1の追加的な相対運動、および/または、前記継合部材(51)の長手方向(l)および横断方向(q)に垂直または略垂直な前記継合部材(51)の並進の形式である前記継合部材(51)の第2の追加的な相対運動のために設計される、請求項1に記載のチェーン・リンク。
【請求項3】
前記第1の連結領域(41)が、関連する前記継合部材(51)を案内するための摺動案内手段(52)を有する、請求項1または2に記載のチェーン・リンク。
【請求項4】
第1の連結手段(45)としての前記チェーン・リンク(3)の前記第1の連結領域(41)が、第1のヒンジ開口部(53)を有し、該第1のヒンジ開口部(53)が、前記摺動案内手段(52)として少なくとも実質的に前記円中心点軸(k)上に延在する溝穴断面を有して前記第1の枢動軸(s1)に関して軸上に位置する、請求項3に記載のチェーン・リンク。
【請求項5】
前記第1の枢動軸(s1)に関して径方向の厚さを有する板様の本体(2)を具備し、前記第1のヒンジ開口部(53)が、前記径方向厚さに対して中央に配置される、請求項4に記載のチェーン・リンク。
【請求項6】
さらなる継合部材(51)に、より具体的には該さらなる継合部材(51)の前記第1の連結領域(41)に前記ヒンジ継手連結部(5)を提供するための、前記円中心点軸(k)に関して前記第1の連結領域(41)から周方向に離間された第2の連結領域(42)を有し、
第2の連結手段(46)としての前記第2の連結領域(42)が、ヒンジ開口部(53、54)を通るヒンジ・ピン(58)を受け入れるために、少なくとも実質的に円形の開口部断面を有して前記第1の枢動軸(s1)に関して軸上に位置する少なくとも1つの第2のヒンジ開口部(54)を備えるか、または、第2の連結手段(46)としての前記第2の連結領域(42)が、関連する前記継合部材(51)の前記第1のヒンジ開口部(53)内に係合する少なくとも1つの実質的に円筒形のピン(55)を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載のチェーン・リンク。
【請求項7】
第1の連結手段(45)としての前記チェーン・リンク(3)の前記第1の連結領域(41)が、第1のヒンジ開口部(53)を有し、該第1のヒンジ開口部(53)が、摺動案内手段(52)として少なくとも実質的に前記円中心点軸(k)上に延在する溝穴断面を有し、
前記第1のヒンジ開口部(53)の前記溝穴断面が、関連する前記継合部材(51)の前記少なくとも実質的に円筒形のピン(55)を前記円中心点軸(k)に関して軸方向に受け入れるための、前記第1の枢動軸(s1)に関して径方向に開口したC字形状断面である、請求項6に記載のチェーン・リンク。
【請求項8】
前記チェーン・リンク(3)の前記扇形状の本体(2)が、前記円中心点軸(k)に対して垂直に配置された第2の側面(23)を有し、該第2の側面(23)が、前記エネルギー線を受け入れかつ案内するための、前記第2の側面(23)から軸方向に突出する手段、具体的には輪形状またはアーチ状の保持手段(8)を有し、前記C字形状断面が、前記突出する手段の軸方向に開口するように構成される、請求項7に記載のチェーン・リンク。
【請求項9】
記C字形状断面を有する前記第1のヒンジ開口部(53)が、前記第1の枢動軸(s1)に対する径方向の拡大に関して前記C字形状断面を安定させるために、補強手段(9)、具体的には前記第1の枢動軸(s1)に対して垂直に配置された補強壁(91)を有する、請求項7または8に記載のチェーン・リンク。
【請求項10】
それぞれの前記円中心点軸(k)から周方向に離れるように延在して、前記第1の連結手段(45)を含む少なくとも1つの第1の突出部(43)が前記第1の連結領域(41)に配置され、前記第2の連結手段(46)を含む少なくとも1つの第2の突出部(44)が前記第2の連結領域(42)に配置される、請求項6から9のいずれか一項に記載のチェーン・リンク。
【請求項11】
前記第1の連結領域(41)に、前記第1の突出部(43)の形態をした少なくとも2つの突出部が設けられ、前記第2の連結領域(42)に、前記第2の突出部(44)の形態をした少なくとも3つの突出部が設けられ、前記突出部(43、44)が、前記円中心点軸(k)に関して相互に径方向に隣接した関係で交互に配置される、請求項10に記載のチェーン・リンク。
【請求項12】
回転軸(d)のまわりで互いに対して円運動で移動することが可能な2つの接続点間でエネルギー線(E)を受け入れかつ案内するための円形チェーンであって、
該円形チェーン(1)が、前記エネルギー線のための案内スペース(6)と、請求項1から11のいずれか一項に記載の、周方向(u)において互いに隣接して配置された扇形状の複数のチェーン・リンク(3)で構成された円弧形状の本体(2)と、を有し、
前記チェーン・リンク(3)が、それらの隣り合った連結領域(41、43)において、径方向の第1の枢動軸(s1)を通って、ヒンジ継手連結部(5)においてそれぞれ枢動可能に連結され、
前記ヒンジ継手連結部(5)が、前記第1の枢動軸(s1)のまわりでの前記枢動に加えて、前記継合部材(51)の互いに対するさらなる相対運動を可能にする、円形チェーン。
【請求項13】
前記継合部材(51)が、前記回転軸(d)に関して周方向における第2の枢動軸(s2)のまわりでの前記継合部材(51)の枢動の形式の第1の追加的な相対運動で、かつ/または、前記継合部材(51)の前記長手方向(l)および前記横断方向(q)に垂直または略垂直な少なくとも実質的に軸方向の並進の形式の第2の追加的な相対運動で、互いに対して移動可能であるように配置される、請求項12に記載の円形チェーン。
【請求項14】
隣り合った前記チェーン・リンク(3)に前記ヒンジ連結部(5)を提供する前記チェーン・リンク(3)が、それぞれ、
第1の連結手段(45)を有する第1の連結領域(41)と、
前記回転軸(d)に関して前記第1の連結領域(41)から周方向に離間され、かつ、第2の連結手段(46)を有する第2の連結領域(42)と、を具備し、
隣り合ったチェーン・リンク(3)が、第1の連結領域(41)および第2の連結領域(42)によってそれぞれ連結される、請求項12または13に記載の円形チェーン。
【請求項15】
前記連結手段(45、46)が、それぞれの前記連結領域(41、42)から離れるように前記回転軸(d)に対して周方向に、または接線方向に延在する突出部(43、44)内に、または該突出部(43、44)においてそれぞれ位置合わせされ、
2つの継合部材(51)の前記突出部(43、44)が、互いに歯のように係合するように配置され、かつ、好ましくは遊びを有して互いに横方向に対接するように配置される、請求項14に記載の円形チェーン。
【請求項16】
前記第1の連結手段(45)が、少なくとも1つの第1のヒンジ開口部(53)を有し、該第1のヒンジ開口部(53)が、前記回転軸(d)に関して径方向に位置するとともに、前記回転軸(d)に対して少なくとも実質的に軸方向に延在する溝穴断面を有し、
前記第2の連結手段(46)が、少なくとも1つの第2のヒンジ開口部(54)を有し、該第2のヒンジ開口部(54)が、前記回転軸(d)に関して少なくとも実質的に径方向に位置し、かつ、円形の開口部断面を有し、
連結位置における隣り合ったチェーン・リンク(3)が、一方のチェーン・リンク(3)の前記少なくとも1つの第1のヒンジ開口部(53)が他方のチェーン・リンク(3)の前記少なくとも1つの第2のヒンジ開口部(54)に対して前記第1の枢動軸(s1)に関して軸方向に位置合わせされた関係で配置される形で接合されるように配置され、かつ、前記ヒンジ開口部(53、54)を通るように構成されたヒンジ・ピン(58)により互いに対して枢動可能に保持される、請求項14または15に記載の円形チェーン。
【請求項17】
前記第1の連結手段(45)が、少なくとも1つの第1のヒンジ開口部(53)を有し、該第1のヒンジ開口部(53)が、前記回転軸(d)に関して径方向に位置するとともに、前記回転軸(d)に関して少なくとも実質的に軸方向に延在しかつ前記軸方向に開口したC字形状断面の形態をした溝穴断面を有し、
前記第2の連結手段(46)が、前記回転軸(d)に関して少なくとも実質的に径方向に配置される少なくとも1つのピン(55)を有する、請求項14または15に記載の円形チェーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸のまわりで互いに対して円運動で移動することが可能な2つの接続点間でエネルギー線を受け入れかつ案内する円形チェーンのためのチェーン・リンクに関する。円形チェーンは、円中心点軸を有する円弧形状の本体を具備し、この本体は、周方向において互いに隣接している扇形状の複数のチェーン・リンクから構成され、チェーン・リンクは、それらの隣接している連結領域において、円中心点軸に関して径方向に位置するそれぞれの第1の枢動軸のまわりで互いに枢動可能に連結される。本発明はさらに、そのようなチェーン・リンクを有する円形チェーンに関する。
【背景技術】
【0002】
その種の円形チェーンは一般に、方向変更弧(direction−changing arc)を介して連結された2つのラン(run)を有する。そのような円形チェーンは、例えば、大きな回転角度にわたって高い回転角速度で線(line)が送達される必要がある産業用ロボットに関連して使用される。このことは、本体または本体を構成するチェーン・リンクの相応に良好かつ容易な可動性を必要とする。
【0003】
上述したような種類のチェーン・リンクを含む、上述したような種類の円形チェーンが説明されており(例えば、特許文献1参照)、特許文献1では、径方向の第1の枢動軸を通ってチェーン・リンクが互いに枢動可能に連結される。これにより、良好な可動性がすでに提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国実用新案第202010001084号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、継合部材に対する向上された枢動性(pivotal mobility)を提供する、上述したような種類のチェーン・リンク、および、枢動可能に相互連結されたチェーン・リンクから成る本体を有する上述したような種類の円形チェーンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、上記の目的は、請求項1に記載の特徴によって達成される。有利な発展形態が、添付の特許請求の範囲において説明される。上記の目的は、チェーン・リンクが、それぞれの継合部材とともにヒンジ継手連結部の形態をした枢動連結部を形成するように構成され、かつ、第1の連結領域の形態をした少なくとも1つの連結領域を有し、少なくとも1つの連結領域が、第1の枢動軸のまわりでの枢動に加えてヒンジ継手連結部が継合部材の少なくとも1つのさらなる相対運動を可能にするように構成されるという点において、すでに達成されている。
【0007】
したがって、第1の連結領域には、継合部材のさらなる相対運動を可能にし、したがって継合部材の互いに対する向上された可動性を可能にする、手段が提供される。チェーン・リンクは、継合部材に対する少なくとも2つの自由度を伴って、ヒンジ連結部において枢動され得る。
【0008】
チェーン・リンクの第1の連結領域は、円形チェーンの長手方向に延在する第2の枢動軸のまわりでの継合部材の枢動の形態をした継合部材の第1の追加的な相対運動のために設計されることが好ましい。第2の枢動軸は、円中心点軸に関して周方向または略周方向に延在してもよく、つまり、少なくとも実質的に、相互に隣接している扇形状のチェーン・リンクの周方向に延在してもよい。
【0009】
あるいは、またはさらに、チェーン・リンクの第1の連結領域は、継合部材の並進の形態をした継合部材の第2の追加的な相対運動のために設計されてもよい。並進は、特に、チェーン・リンクまたは円形チェーンの長手方向および横断方向に対して垂直に生じ得る。したがって、並進運動は、チェーン・リンクの平面に対して垂直に行われ得る。枢動軸に関しては、並進運動が枢動軸に対して垂直または略垂直に行われ得ること、したがって並進運動が2つの枢動軸に対して少なくとも実質的に垂直に行われ得ることが、実現される。したがって、方向変更弧を含む領域を除けば、並進運動は、円中心点軸の方向に生じ得る。一方の継合部材の他方の継合部材に対する並進という語は、一方の継合部材の全ての点、つまり継合部材全体が、同じ量だけ他方の継合部材に対して変位される、他方の継合部材に対する一方の継合部材の変位を表すために使用される。
【0010】
ヒンジ連結部は、最大で3つの自由度、すなわち、第1の枢動軸のまわりでの枢動、第2の枢動軸のまわりでの枢動、および、枢動軸に対して垂直な並進を有することができる。
【0011】
ヒンジ連結部により、第1の枢動軸のまわりでの継合部材の枢動において継合部材のための優れた案内を得るとともに、追加的な自由度を伴って、継合部材の互いに対する向上された可動性を得ることが可能になる。以下に説明するように、上述のような種類の円形チェーンと比較すると、高さの違いを克服して、方向変更弧のまわりでの円形チェーンの変位の際によりきつい半径を得ることが可能になる。さらに、特に第2の枢動軸のまわりでの枢動により、円形チェーンに応力を加えるねじり力を回避することができる。
【0012】
本発明によるチェーン・リンクを含む円形チェーンの本体は、例えば、準備完了位置(readiness position)において中心軸のまわりに螺旋状に巻かれる1つまたは複数の層を伴ってヒンジ式に相互連結されたチェーン・リンクを含む、円形リングの形状をした平坦なベルトの基本形状であってもよい。したがって、本体は、円形チェーンのための支持体、「脊柱」として機能し得る。ベルトは、周方向の幅狭側面と、それらを連結する、向かい合ったより大きな側面、つまり第1の側面および第2の側面とを有し得る。少なくとも径方向部分にわたって、第1の側面は、少なくとも実質的に連続的な摺動表面の形態であってもよく、かつ/または、案内スペースの第2の側面に配置されてもよい。
【0013】
さらに、使用位置における本体が、回転方向に捻られたまたは巻かれた第1のラン、第1のランに向かい合う関係で捻られたまたは巻かれた第2のラン、および2つのランを連結する方向変更弧を有する場合、継合部材がその複雑な運動の経路において互いを妨げることがないように、特に方向変更弧の領域、およびランの領域に隣接する領域において、チェーン・リンクの向上された相対的な可動性が必要とされる。ベルトの構造上のサイズの増大、特にベルトの内径の増大により、ある程度の改善が実現され得るが、基本的な問題は変わらない。継合部材の互いに対する少なくとも1つの追加的な運動を伴う枢動により、継合部材は、例えば支障をもたらす誤差を補償するために、その運動により容易に適応することができる。さらに、ベルトのよりきつい円運動が可能になる。したがって、構造上のサイズの縮小も可能になる。
【0014】
準備完了位置における円形チェーンの長手軸が回転軸に対してベルトの周方向に延在する場合に、特に方向変更弧の領域において、長手軸に関してねじり力が生じ得る。そうしたねじり力は、ベルトに有害な応力をもたらし、したがって本体の変位を妨げ得る。摩耗量の増大も考慮されるべきである。追加的な第2の自由度のおかげで、継合部材は、それらの第2の枢動軸のまわりでの枢動により、そのような応力を少なくとも軽減することができる。
【0015】
ヒンジ継手連結部の第3の自由度の形式の、継合部材に関して提供された相対的な並進により、例えば、急な勾配角度を伴う回転軸の方向における勾配を克服することが可能になり、そのような急な勾配角度は、並進なしでは、本体に損害を与える応力も生じさせるか、または、対応する構造上のサイズの増大、つまり勾配の緩和を必要とする。このことは、関連する構造により回転軸の方向に大きな勾配が生じる方向変更弧に隣接する領域において各ランが互いに対して摺動可能に支持される上述の円形チェーンに関して有利であり得る。
【0016】
並進運動の実施は、第1の連結領域が関連する継合部材を案内するための摺動案内手段を有する、構造的に単純な様式で提供され得る。このようにして、継合部材は、摺動案内手段において、または摺動案内手段内で案内され得る。摺動案内手段は、継合部材の互いに対する純粋に直線状の並進運動のために設計されることが好ましい。
【0017】
構造的に単純な様式では、第1の連結手段としてのチェーン・リンクの第1の連結領域は、摺動案内手段として、湾曲していない、つまり直線状の溝穴断面を持つ、第1の枢動軸に関して軸方向に位置する少なくとも1つの第1のヒンジ開口部を有し得る。これにより、継合部材の並進相対運動が溝穴内で行われ得ることが実現される。そのような並進運動は、溝穴断面の長手方向の大きさ内で生じる。溝穴断面の大きさは、並進の方向を決定する。溝穴断面は湾曲していないので、並進は純粋に直線状である。溝穴断面は、円中心点軸の方向に、または少なくとも実質的に円中心点軸の方向に延在することが好ましい。溝穴断面は、チェーン・リンクの円中心点軸に関して第1の枢動軸に垂直に軸方向に細長くてもよい。円中心点軸は、チェーン・リンクの平面に垂直に延在し得る。
【0018】
継合部材は、並進に加えてまたはその代わりに、溝穴内での継合部材の傾きが可能になるように、溝穴内に係合してもよい。傾きは、第2の枢動軸のまわりでの枢動の形態であってもよい。溝穴内での転倒運動により傾きが生じるとき、傾きは第1の枢動軸に垂直である。第2の枢動軸のまわりでの枢動、および溝穴内での並進運動の両方の場合において、それぞれの継合部材は、最後には溝穴断面内で当接して、継合部材の相対運動の範囲を定めることができる。
【0019】
円形チェーンの円弧形状の本体は、円形リング様の構造のものとすることができる。したがって、チェーン・リンクの本体は、具体的には円形リングの分弧の形状で、扇形状の構造のものとすることができる。チェーン・リンクは、円中心点軸に関して軸方向の厚さを伴いかつより大きい2つの側面を有する板様の本体を有することができ、円形チェーンへの取付け位置において、それらの側面は、円形チェーンの第1の側面および第2の側面の一部分を形成する。第1のヒンジ開口部は、厚さに対して中央に配置され得る。溝穴断面の長手方向の大きさは、厚さの95%まで、特に厚さの90%まで、または厚さの約85%までとすることができる。厚さに対する長手方向の大きさの比率が大きいと、それに応じて継合部材の互いに対する可動性が大きくなる。
【0020】
チェーン・リンクの本体は、一体に製造されてもよく、具体的には、プラスチック射出成形の形態で製造されてもよい。
【0021】
チェーン・リンクの発展形態では、チェーン・リンクは、さらなる継合部材とのヒンジ継手連結部を提供するための、より具体的には少なくとも1つの第1のヒンジ開口部を有するさらなる継合部材の第1の係合領域においてヒンジ継手連結部を提供するための、円中心点軸に関して第1の連結領域から周方向に離間された第2の連結領域を有し得る。第2の連結手段としての第2の連結領域は、第1の枢動軸に対して軸方向に位置する少なくとも1つの第2のヒンジ開口部を有し得る。第2のヒンジ開口部は、両方の継合部材のヒンジ開口部を通るヒンジ・ピンを受け入れるための、少なくとも実質的に円形の開口部断面のものとすることができる。
【0022】
あるいは、第2の連結手段としての第2の連結領域に、関連する継合部材の第1のヒンジ開口部内に係合する少なくとも1つの実質的に円筒形のピンを提供することが可能である。そのようなピンは、チェーン・リンク上に一体に形成されてもよい。したがって、この実施形態では、ヒンジ連結部のためにさらなる個別の構成部品は必要とされない。連結領域はそれぞれ、それぞれのチェーン・リンクの端部または端部領域に配置され得る。
【0023】
チェーン・リンクの発展形態では、C字形状断面を有する少なくとも1つの第1のヒンジ開口部は、第1の枢動軸に対する径方向の拡大に関してC字形状断面を安定させるために、補強手段を有し得る。補強手段は、第1の枢動軸に対して垂直に配置され、かつ、C字形状断面に横方向に連結される、補強壁の形態であってもよい。したがって、補強壁は、第1の枢動軸に関して径方向であるC字形状断面からの力を受けることができる。補強壁は、有利には、第1のヒンジ開口部を第1の枢動軸に垂直に中央で分割し得る。
【0024】
円形チェーンのような、チェーン・リンクの扇形状の本体は、円中心点軸に垂直に配置された第2の側面を有することができる。この第2の側面は、そのチェーン・リンクに関連付けられる案内スペースの部分のキャリアの形態とすることができる。第2の側面は、案内スペースの範囲を定めることができる。本体の第2の側面には、エネルギー線を受け入れかつ案内するための、円中心点軸に関して軸方向に突出する手段、具体的には輪形状またはアーチ状の保持手段を設けることが可能である。C字形状断面は、第2の側面と反対の側を向いた表面法線の方向において、または突出する手段の方向において、円中心点軸に関して軸方向に開口した構造を有することが好ましい。具体的には、円形チェーンの少なくとも各第3または第4のチェーン・リンクがそのような保持手段を有する場合に、保持手段は、端部において互いに横方向に当接することにより、第1の枢動軸のまわりでのチェーン・リンクの枢動を制限することができる。このようにして、以下でより詳細に説明されるように、特に円形チェーンの保管および組立中に、ヒンジ連結部によって連結されたチェーン・リンクがC字形状断面から滑り出るのを防ぐことが可能になる。
【0025】
保持手段は、本体と一緒に一体の構成要素を形成してもよい。しかし、保持手段は後で本体に固定され得ることが好ましい。その場合、保持手段は、構成および/または寸法決めに関わるそれぞれの要求に応じて構造的に変化し得る。確かに、しかし必ずではないが、円形チェーンにおけるチェーン・リンクのそれぞれが、保持手段を有し得る。保持手段を備えるチェーン・リンクは、円形チェーンの長さにわたって等しく離間して配置されることが好ましい。
【0026】
チェーン・リンクのさらなる発展形態では、チェーン・リンクがそれぞれの円中心点軸から、周方向に延在するか、または接線方向に離れるように延在して設けられ、第1の連結領域に第1の連結手段を含む少なくとも1つの第1の突出部が配置され、第2の連結領域に第2の連結手段を含む少なくとも1つの第2の突出部が配置されることが、実現され得る。ヒンジ連結部の向上された機械的安定性、および、2つの継合部材の互いに対するより良好な案内のために、第1および第2の突出部を複数設けることが可能である。その場合、第1の連結領域に設けられる第1の突出部の数は、第2の連結領域内の第2の突出部よりも1つだけ少なくてよい。その結果、取付け位置において第1の突出部の軸方向両側に2つの第2の突出部のそれぞれが配置されることになる。
【0027】
取付け位置では、第1のヒンジ開口部および第2のヒンジ開口部またはピンは、枢動軸に関して相互に軸方向に位置合わせされた関係で配置され得る。円形チェーンのチェーン・リンクのより容易な枢動のために、突出部は、第1の枢動軸に関して、それらのそれぞれの端部において丸められた構造のものとされ得ることが好ましい。チェーン・リンクの一実施形態では、第1の突出部の形態をした少なくとも2つの突出部が、第1の連結領域に設けられ、第2の突出部の形態をした少なくとも3つの突出部が、第2の連結領域に設けられ得る。突出部は、円中心点軸に関して相互に径方向に隣接した関係で交互に配置され得る。隣り合ったチェーン・リンクの突出部は、突出部のヒンジ開口部が第1の枢動軸に関して軸方向に位置合わせされた関係で配置される連結位置において、互いに歯のように係合することができる。突出部は、第1の枢動軸に関して軸方向に変位不可能に、横方向に接触し得る。
【0028】
第2の連結手段が、関連する継合部材の第1のヒンジ開口部内に係合する少なくとも1つの少なくとも実質的に円筒形のピンを有する状況では、ピンは、2つの第2の突出部間で第2の枢動軸の方向に延在し得る。開口部C字形状断面を有する第1のヒンジ開口部が、第1の枢動軸に対する径方向の拡大に関して開口部C字形状断面を安定させるために、第1の枢動軸に垂直に配置された補強壁を有する状況では、ピンは、補強壁の領域において2つのピン部分に分割されてもよく、2つのピン部分は、それぞれ、第1の枢動軸に関して自由端を伴って互いに向かって軸方向に延在して、補強壁の係合のための中間スペースを画定する。中間スペースは、補強壁の厚さに等しい軸方向サイズ有してもよい。
【0029】
回転軸のまわりで互いに対して円運動で移動することが可能な2つの接続点間でエネルギー線を受け入れかつ案内するために、上述および後述の実施形態のうちの1つによる円形チェーンが提供され得る。円形チェーンは、エネルギー線のための案内スペースと、周方向において相互に隣り合った関係の、上述および後述の実施形態のうちの1つによる扇形状の複数のチェーン・リンクで構成された、扇形状の本体とを有し得る。チェーン・リンクは、それぞれのヒンジ継手連結部における連結領域において、径方向の第1の枢動軸を通って相互に隣接した関係で枢動可能に連結され得る。
【0030】
ヒンジ継手連結部は、継合部材の追加的な相対運動の形式のさらなる自由度を有することができる。追加的な相対運動は、回転軸に関して周方向または接線方向における第2の枢動軸のまわりでの継合部材の枢動の形態であってもよく、かつ/または、枢動軸に垂直または略垂直な、回転軸に対して少なくとも実質的に軸方向である並進の形態であってもよい。
【0031】
上述のように、隣り合ったチェーン・リンクは、一方の継合部材の第1の連結領域と他方の継合部材の第2の連結領域とによってそれぞれ互いに連結される。円形チェーンの発展形態において、円形チェーンの準備完了位置におけるチェーン・リンクの第1の連結手段は、回転軸に関して少なくとも実質的に軸方向に延在する溝穴形状を有する、回転軸に関して径方向に位置する少なくとも1つの第1のヒンジ開口部を有することができ、第2の連結手段は、少なくとも1つの第2のヒンジ開口部を有することができ、この少なくとも1つの第2のヒンジ開口部は、回転軸に関して少なくとも実質的に径方向に位置し、かつ、円形開口部断面を有する。ヒンジ連結部において、ヒンジ開口部は、第1の枢動軸に関して軸方向に位置合わせされた関係で配置され、かつ、ヒンジ開口部を通るヒンジ・ピンにより互いに対して枢動可能に保持される。
【0032】
あるいは、円形チェーンの準備完了位置における第1の連結手段は、少なくとも1つの第1のヒンジ開口部を有することができ、この第1のヒンジ開口部は、回転軸に関して径方向に位置するとともに、溝穴形状を有し、この溝穴形状は、回転軸に関して少なくとも実質的に軸方向に延在し、かつ、軸方向に開口したC字形状断面の形態である。第2の連結手段は、少なくとも1つのピンを有することができ、この少なくとも1つのピンは、回転軸に関して少なくとも実質的に径方向に配置され、かつ、連結位置において第1のヒンジ開口部を通って係合する。
【0033】
2つの継合部材を連結するために、2つの継合部材の関連する連結領域の第1および第2の連結手段は、継合部材が約90°の角度に置かれる継合位置において、互いに重ね合わせられて、第1のヒンジ開口部のC字形状断面内へのピンの横方向の係合により、係合され得る。次いで、2つの継合部材は、連結手段において、継合位置から、継合部材が約180°の角度に位置する作動位置へ枢動され得る。継合部材は、継合位置において、作動位置での連結部の係脱を防ぐために固定され得る。
【0034】
チェーン・リンク、およびチェーン・リンクを含む円形チェーンの図面に示された複数の実施形態を用いて本発明を以下により詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1a〜1dは、利用可能な連結部および連結部材が省略された、第1の実施形態によるチェーン・リンクの列を含む円形チェーンの第1の実施形態を示す図である。
図2図1に示されるように平坦に横たわる複数のチェーン・リンクを含む円形チェーン部分の斜視図である。
図3図3a〜3eは、保持手段を含まない、図1の円形チェーンのチェーン・リンクを示す図である。
図4】組立の準備が整った、図3に示されるような2つのチェーン・リンクの斜視図である。
図5図5a〜5cは、互いに対して異なる位置にある、相互連結された3つのチェーン・リンクの斜視図である。
図6図4に示されるような2つのチェーン・リンクの組立を3つのステップでそれぞれ示す、斜視図および断面図である。
図7図4に示されるような2つのチェーン・リンクの組立を3つのステップでそれぞれ示す、斜視図および断面図である。
図8図4に示されるような2つのチェーン・リンクの組立を3つのステップでそれぞれ示す、斜視図および断面図である。
図9図9aおよび図9bは、円形チェーンの方向変更弧での相対位置における、組み立てられた2つのチェーン・リンクの斜視図(図9a)および断面図(図9b)である。
図10図10a〜10cは、チェーン・リンクの第2の実施形態の図である。
図11】ヒンジ・ピンの斜視図である。
図12図12aおよび図12bは、図10に示されるような組み立てられた3つのチェーン・リンクの斜視図である。
図13図13a〜13dは、互いに対して所与の位置にある、組み立てられた3つのチェーン・リンクの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1a〜1dは、回転軸dのまわりで互いに対して円運動で移動することが可能な2つの接続点(図示せず)間でエネルギー線(図示せず)を受け入れかつ案内するための円形チェーン1を示す。円形チェーン1は、円中心点軸k(図1dおよび図3a)を含む円弧形状の本体2を有し、この本体は、周方向uにおいて互いに隣接している扇形状の複数のチェーン・リンク3から構成される。チェーン・リンク3は、それらの隣接している連結領域41、42において、ヒンジ継手連結部5の形態をした枢動連結部により、円中心点軸kに関して径方向に位置する第1の枢動軸s1のまわりで互いに枢動可能に連結される。例えば、チェーン・リンク3の第1の実施形態の斜視図である図3aから分かるように、第1の連結領域41の形態をした連結領域が、ヒンジ継手連結部5が第1の枢動軸s1のまわりでの通常の枢動に加えて継合部材51つまりヒンジ式に相互連結されたチェーン・リンク3のさらなる2つの相対運動を可能にするように、設計される。
【0037】
継合部材51の第1の追加的な相対運動は、円中心点軸kに関して周方向である方向uにおける、第2の枢動軸s2のまわりでの継合部材51の枢動である。ここで、継合部材51の第2の追加的な相対運動は、枢動軸s1、s2に垂直または略垂直な並進方向tにおける、継合部材51の並進である。図から分かるように、並進は、チェーン・リンク3または円形チェーン1の長手方向lおよび横断方向qに対して垂直に行われる。したがって、ここでは、ヒンジ継手連結部5は、第1の枢動軸s1のまわりでの枢動、第2の枢動軸s2のまわりでの枢動、および並進方向tにおける並進運動の、3つの自由度を有する。ヒンジ継手連結部5の各継合部材51は、第1の枢動軸s1に関して互いに軸方向に変位し得ない関係で配置される。
【0038】
準備完了位置(図示せず)では、円形チェーン1の本体2は、その基本形状として、中心軸のまわりに螺旋状に巻かれた1つまたは複数の層を伴ってヒンジ式に相互連結されたチェーン・リンク3を含む、平坦な円形ベルト21を有する。ベルト21は、回転軸dに垂直に互いに向かい合う2つの広い側面、つまり第1の側面22および第2の側面23を有し、第2の側面23は、エネルギー線用の案内スペース6のためのキャリアである。円形チェーン1の図1に示された使用位置では、本体2は、回転方向に巻かれたまたは捻られた第1のラン、第1のラン24とは反対の方向に巻かれた第2のラン25、および2つのラン24、25を連結する方向変更弧26を有するように折り返され、第1の側面22は、方向変更弧26において内向き配置される。図1における各図を一瞥すれば、方向変更弧26にわたる本体2の運動は個々のチェーン・リンク3の位置決めの連続的な変更を伴う高度に複雑なものであることが明らかであろう。これにより、ねじり応力および/または曲げ応力が容易にもたらされるが、そのような応力は、チェーン・リンクの互いに対する追加的な相対運動によって相殺され得る。
【0039】
ベルト21のようなチェーン・リンク3はそれぞれ、第1の側面22および第2の側面23を有する本体2を具備し、2つの側面22、23は、円中心点軸kに対して周方向にある狭側面27、および径方向狭側面28により、互いに連結されている。この場合、チェーン・リンク3の連結領域4は、径方向狭側面28にそれぞれ配置され、径方向狭側面28では、継合部材51がヒンジ継手連結部5において連結される。チェーン・リンクはそれぞれ、第1の連結領域41および第2の連結領域42を有し、ヒンジ連結部5を提供するために、一方の継合部材51の第1の連結領域41が、他方の継合部材51の第2の連結領域42に連結される。
【0040】
第1の連結領域41には、円中心点軸kから接線方向に離れるように延在しかつ第1の連結手段45を有する、第1の突出部43が設けられ、第2の連結領域42には、円中心点軸kから接線方向に離れるように延在しかつ第2の連結手段46を有する、第2の突出部44が設けられる。継合部材51の突出部43、44は、交互に歯のように互いに係合する。ここに示されたチェーン・リンク3の実施形態では、4つの第2の突出部44、および3つの第1の突出部43が存在し、第1の突出部43のそれぞれは、両側に第2の突出部44が配置され、かつ、第1の枢動軸s1に関して軸方向に変位し得ない関係でそれらの第2の突出部44に対接する。
【0041】
第1の連結手段45としての第1の突出部43には、第1のヒンジ開口部53を形成するそれぞれの摺動案内手段52が設けられ、第1のヒンジ開口部53は、それに関連する枢動軸s1の方向において軸方向に延在する。摺動案内手段52は、円中心点軸kの方向に長さlにわたって延在する溝穴断面を有する。図4図9に示されるようなチェーン・リンク3の第1の実施形態では、溝穴断面は、C字形状断面を提供する、第2の側面23の表面法線の方向に開口した構造を有し、C字形状断面の各腕部は、平行にかつ円中心点軸kの方向に延在する。第2の連結手段46としての第2の突出部44間には、継合部材51の第1のヒンジ開口部53内に係合してヒンジ継手連結部5を提供するピン55が、横方向に設けられる。各継合部材51の側面22、23が互いに整列する中立位置では、ピン51は、第1のヒンジ開口部53において溝穴断面の長さlの高さの半分の位置に配置される。
【0042】
2つの継合部材51を連結させるための対応する組立が、図6aおよび図6b〜図8aおよび図8bに3つのステップで示されている。第1のヒンジ開口部53は円中心点軸kの方向に開口しているので、各継合部材51は、重ね合わせられて継合位置(図6)において係合され、この継合位置では、各継合部材51は、第1のヒンジ開口部53のC字形状断面内へのピン55の横方向の係合(図7参照)を伴って、約90°の角度で位置決めされる。第1のヒンジ開口部53内にピン55をより容易に係合させるために、第1のヒンジ開口部53は、開口部の縁に向かって漏斗様の形状に広げられた構造を有する。次いで、継合部材51は、継合位置から作動位置に枢動され、この作動位置では、各継合部材は、ここでは180°の角度で図8に示されるように、90°を大きく上回る角度に位置決めされる。作動位置において継合部材51が再度互いに分離するのを防ぐために、ここでは2通りの実施形態で使用される、阻止デバイス7が設けられる。その第1の実施形態では、阻止デバイスは、第2の連結領域42に設けられた阻止開口部72内に係合する阻止突出部71を、第1の連結領域41に有する。阻止開口部72は、継合部材51の組立時に阻止突出部71が阻止開口部72にスムースに滑り込むことができるように、第2の側面23に向かって横方向に開口した構造を有する(図6c)。しかし、第2の側面23から第1の側面22に向かう方向において、阻止開口部72は、横方向の壁73を有し、この壁73は、第2の側面23から第1の側面22に向かう方向において阻止突出部71とともにチェーン・リンク3の運動に対抗し、したがって、第1の側面22の表面法線の方向において第1のヒンジ開口部53とともに継合部材51の軸方向変位を防止する当接部として機能する。このようにして、2つの継合部材51は、所与の距離、ここではC字形状断面の長さlにわたって、しかしそれを越えることなく、作動位置において明らかに往復運動され得る。したがって、継合部材51は、並進方向tにおいて互いに対して変位され得る。阻止突出部71および阻止開口部72を含む阻止デバイス7のこの実施形態は、ここでは2通りに、より具体的には円中心点軸kに対して径方向内向きおよび径方向外向きに提供される。
【0043】
図1および図2から特に分かるように、ここでの各チェーン・リンク3の第2の側面には、円中心点方向において軸方向に輪形状の構造の保持手段8が設けられ、保持手段8は、継合部材51の組立の後、ここでは差込み連結の形態で、継合部材51上に固定され得る。ヒンジ継手連結部5で連結された継合部材51が第1の枢動軸s1のまわりで作動位置から継合位置の方向に戻される場合、第2の側面23に配置された保持手段8は、互いに対して枢動されて、所与の枢動角度に達したときに互いに横方向に当接し得る。このことは、隣り合ったチェーン・リンク3の保持手段8が方向変更弧26を離れるときに互いに対して枢動される限りにおいて、図1にある程度示されている。したがって、保持手段8が横方向に互いに当接し、これによりさらなる枢動を阻止する限りにおいて、保持手段8の寸法を通じて、また、各チェーン・リンク3、または第2もしくは第3のチェーン・リンク3のような各x番目のチェーン・リンク3が保持手段8を備えることを通じて、所与の枢動角度が設定され得る。その配置のおかげで、そのようにして構成された円形チェーン1は、チェーン・リンクが故意ではなく再度分離する恐れを伴わずに、完全に組立済みの状態で保管することができる。
【0044】
円形チェーン1における荷重下での、第1の枢動軸s1に対して径方向の起こり得るC字形状断面の拡大に対抗するために、ここでは第1の枢動軸sに垂直に配置された補強壁91の形態をした、補強手段9が設けられる。ここでは、補強壁91は、C字形状断面の断面全体にわたって延在して、C字形状断面に連結されている。このようにして、第1のヒンジ開口部53は、ここでは2つの同一の部分に分割される。補強壁91の配置は、ピン55が第2の連結領域42において2つのピン部分56に分割されることを必要とする。それらのピン部分56は、それぞれ、第1の枢動軸s1に関して軸方向に互いに向かう自由端を伴って延在して、中間スペース57の範囲を定め、補強壁91は、第1のヒンジ開口部53内へのピン55の係合を伴って、その中間スペース内に係合する。中間スペース57は、第1の枢動軸s1に関して補強壁91の軸方向サイズに等しい軸方向サイズを有する。
【0045】
図5a〜5cは、ヒンジ継手連結部5によって連結された継合部材51の起こり得る主要な相対運動を示す。図5aに示されるように、ここでは3つのチェーン・リンク3が、それぞれに関連付けられたヒンジ継手連結部5に関して第1の枢動軸s1のまわりで枢動され、さらに、第1のヒンジ開口部53の溝穴断面において並進方向tに所与の量aだけ互いに対して変位される。この追加的な並進の運動により、例えば円形チェーン1内の方向変更弧56に対してよりきつい半径が許容される。
【0046】
図5bを参照すると、継合部材51は、それぞれのヒンジ継手連結部5において第2の枢動軸s2のまわりで互いに対して回転されて配置されている。チェーン・リンク3からチェーン・リンク3への第2の枢動軸s2のまわりでのこの連続的な枢動は、ヒンジ式に相互連結された適切な数のチェーン・リンク3があるならば、最後のチェーン・リンクに対する第1のチェーン・リンクの特定の最大枢動角度を設定することが可能であるように継続され得ることが、図5bから容易に分かる。
【0047】
図5cは、ヒンジ継手連結部5を通じて連結された3つのチェーン・リンク3が、階段様の配置に移動されるように、円中心点軸kの方向に純粋に並進の運動で所与の量aだけ互いに対して変位された状況を示す。図5bおよび図5cの2つの追加的な相対運動は、混成形態におけるラン24、25の方向変更弧26への移行領域において特に生じ得る。
【0048】
図10図13は、チェーン・リンク3の第2の実施形態をそれぞれ示す。この実施形態は、上述の第1の実施形態と比べると明らかに単純な構造を有するが、図12aに示されるようなヒンジ継手連結部5を提供するために、図11に示されるようなヒンジ・ピン58をさらに必要とする。
【0049】
詳細には、第1の連結領域41における第1のヒンジ開口部53は、横方向の開口部を伴わない、直線状の溝穴開口部の形態をなしている。チェーン・リンク3の第1の実施形態によるピン55の代わりに、第2の連結手段46としての第2の連結領域42には、円形の開口部断面を有する第2のヒンジ開口部54が提供され、ヒンジ連結部5を作り出す継合部材51のヒンジ開口部53、54は、連結位置において第1の枢動軸s1に関して相互に位置合わせされた関係で配置される。図1図9に示されたチェーン・リンク3の第1の実施形態と同様に、溝穴断面の長さlは、並進方向tにおける継合部材51の相対的な並進の程度を決定する。図10に示された前面の第2のヒンジ開口部54に示されるように、ヒンジ・ピン58は、頭端部においてその第2のヒンジ開口部54にねじ込まれることができ、また、図12aに示されるように、第1の枢動軸s1に関して軸方向に変位し得ない関係で配置され得る。
【0050】
図5a〜5cと同様に、図13a〜13dもまた、相互連結された3つのチェーン・リンク3による基本的な相対的運動形態を示す。図13aを参照すると、3つのチェーン・リンク3の全てが、第1の枢動軸s1のまわりで枢動されており、さらに、並進方向tにおいて互いに対して軸方向に変位されている。第1の枢動軸s1のまわりでの枢動を制限するために、2つの連結領域41、42に当接部59が設けられる。
【0051】
図13bは、第1の枢動軸s1に垂直な第2の枢動軸s2のまわりでのチェーン・リンク3の枢動を示す。チェーン・リンク3が互いに対して所与の量aだけ傾けられていることが、図13bから容易に分かる。図13cもまた、チェーン・リンク3の互いに対する傾きを示し、ここでは、枢動は、第2の枢動軸s2のまわりで図13bとは反対の回転方向に生じている。
【0052】
図13a、図13b、および図13dでは、3つのチェーン・リンク3は、それぞれ、並進方向tにおいて互いに対して所与の量aだけそれぞれの継合部材51に関して変位して配置されている。
【0053】
図9bおよび図13aから特に分かるように、連結領域41、42は、それらの端部に、円形チェーン1の方向変更弧26の半径を定めるために協働する当接部10を備える。
【符号の説明】
【0054】
1 円形チェーン
2 本体
21 ベルト
22 第1の側面
23 第2の側面
24 第1のラン
25 第2のラン
26 方向変更弧
27 周方向狭側面
28 径方向狭側面
3 チェーン・リンク
4 連結領域
41 第1の連結領域
42 第2の連結領域
43 第1の突出部
44 第2の突出部
45 第1の連結手段
46 第2の連結手段
5 ヒンジ継手連結部
51 継合部材
52 摺動案内手段
53 第1のヒンジ開口部
54 第2のヒンジ開口部
55 ピン
56 ピン部分
57 中間スペース
58 ヒンジ・ピン
59 当接部
6 案内スペース
7 阻止デバイス
71 阻止突出部
72 阻止開口部
73 壁
8 保持手段
9 補強手段
91 補強壁
10 当接部
a 量
d 回転軸
k 円中心点軸
l 長さ
s1 第1の枢動軸
s2 第2の枢動軸
u 周方向
t 並進方向
図1a
図1b
図1c
図1d
図2
図3a
図3b
図3c
図3d
図3e
図4
図5a
図5b
図5c
図6a
図6b
図7a
図7b
図7c
図8a
図8b
図8c
図9a
図9b
図10a
図10b
図10c
図11
図12a
図12b
図13a
図13b
図13c
図13d