【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、上記の目的は、請求項1に記載の特徴によって達成される。有利な発展形態が、添付の特許請求の範囲において説明される。上記の目的は、チェーン・リンクが、それぞれの継合部材とともにヒンジ継手連結部の形態をした枢動連結部を形成するように構成され、かつ、第1の連結領域の形態をした少なくとも1つの連結領域を有し、少なくとも1つの連結領域が、第1の枢動軸のまわりでの枢動に加えてヒンジ継手連結部が継合部材の少なくとも1つのさらなる相対運動を可能にするように構成されるという点において、すでに達成されている。
【0007】
したがって、第1の連結領域には、継合部材のさらなる相対運動を可能にし、したがって継合部材の互いに対する向上された可動性を可能にする、手段が提供される。チェーン・リンクは、継合部材に対する少なくとも2つの自由度を伴って、ヒンジ連結部において枢動され得る。
【0008】
チェーン・リンクの第1の連結領域は、円形チェーンの長手方向に延在する第2の枢動軸のまわりでの継合部材の枢動の形態をした継合部材の第1の追加的な相対運動のために設計されることが好ましい。第2の枢動軸は、円中心点軸に関して周方向または略周方向に延在してもよく、つまり、少なくとも実質的に、相互に隣接している扇形状のチェーン・リンクの周方向に延在してもよい。
【0009】
あるいは、またはさらに、チェーン・リンクの第1の連結領域は、継合部材の並進の形態をした継合部材の第2の追加的な相対運動のために設計されてもよい。並進は、特に、チェーン・リンクまたは円形チェーンの長手方向および横断方向に対して垂直に生じ得る。したがって、並進運動は、チェーン・リンクの平面に対して垂直に行われ得る。枢動軸に関しては、並進運動が枢動軸に対して垂直または略垂直に行われ得ること、したがって並進運動が2つの枢動軸に対して少なくとも実質的に垂直に行われ得ることが、実現される。したがって、方向変更弧を含む領域を除けば、並進運動は、円中心点軸の方向に生じ得る。一方の継合部材の他方の継合部材に対する並進という語は、一方の継合部材の全ての点、つまり継合部材全体が、同じ量だけ他方の継合部材に対して変位される、他方の継合部材に対する一方の継合部材の変位を表すために使用される。
【0010】
ヒンジ連結部は、最大で3つの自由度、すなわち、第1の枢動軸のまわりでの枢動、第2の枢動軸のまわりでの枢動、および、枢動軸に対して垂直な並進を有することができる。
【0011】
ヒンジ連結部により、第1の枢動軸のまわりでの継合部材の枢動において継合部材のための優れた案内を得るとともに、追加的な自由度を伴って、継合部材の互いに対する向上された可動性を得ることが可能になる。以下に説明するように、上述のような種類の円形チェーンと比較すると、高さの違いを克服して、方向変更弧のまわりでの円形チェーンの変位の際によりきつい半径を得ることが可能になる。さらに、特に第2の枢動軸のまわりでの枢動により、円形チェーンに応力を加えるねじり力を回避することができる。
【0012】
本発明によるチェーン・リンクを含む円形チェーンの本体は、例えば、準備完了位置(readiness position)において中心軸のまわりに螺旋状に巻かれる1つまたは複数の層を伴ってヒンジ式に相互連結されたチェーン・リンクを含む、円形リングの形状をした平坦なベルトの基本形状であってもよい。したがって、本体は、円形チェーンのための支持体、「脊柱」として機能し得る。ベルトは、周方向の幅狭側面と、それらを連結する、向かい合ったより大きな側面、つまり第1の側面および第2の側面とを有し得る。少なくとも径方向部分にわたって、第1の側面は、少なくとも実質的に連続的な摺動表面の形態であってもよく、かつ/または、案内スペースの第2の側面に配置されてもよい。
【0013】
さらに、使用位置における本体が、回転方向に捻られたまたは巻かれた第1のラン、第1のランに向かい合う関係で捻られたまたは巻かれた第2のラン、および2つのランを連結する方向変更弧を有する場合、継合部材がその複雑な運動の経路において互いを妨げることがないように、特に方向変更弧の領域、およびランの領域に隣接する領域において、チェーン・リンクの向上された相対的な可動性が必要とされる。ベルトの構造上のサイズの増大、特にベルトの内径の増大により、ある程度の改善が実現され得るが、基本的な問題は変わらない。継合部材の互いに対する少なくとも1つの追加的な運動を伴う枢動により、継合部材は、例えば支障をもたらす誤差を補償するために、その運動により容易に適応することができる。さらに、ベルトのよりきつい円運動が可能になる。したがって、構造上のサイズの縮小も可能になる。
【0014】
準備完了位置における円形チェーンの長手軸が回転軸に対してベルトの周方向に延在する場合に、特に方向変更弧の領域において、長手軸に関してねじり力が生じ得る。そうしたねじり力は、ベルトに有害な応力をもたらし、したがって本体の変位を妨げ得る。摩耗量の増大も考慮されるべきである。追加的な第2の自由度のおかげで、継合部材は、それらの第2の枢動軸のまわりでの枢動により、そのような応力を少なくとも軽減することができる。
【0015】
ヒンジ継手連結部の第3の自由度の形式の、継合部材に関して提供された相対的な並進により、例えば、急な勾配角度を伴う回転軸の方向における勾配を克服することが可能になり、そのような急な勾配角度は、並進なしでは、本体に損害を与える応力も生じさせるか、または、対応する構造上のサイズの増大、つまり勾配の緩和を必要とする。このことは、関連する構造により回転軸の方向に大きな勾配が生じる方向変更弧に隣接する領域において各ランが互いに対して摺動可能に支持される上述の円形チェーンに関して有利であり得る。
【0016】
並進運動の実施は、第1の連結領域が関連する継合部材を案内するための摺動案内手段を有する、構造的に単純な様式で提供され得る。このようにして、継合部材は、摺動案内手段において、または摺動案内手段内で案内され得る。摺動案内手段は、継合部材の互いに対する純粋に直線状の並進運動のために設計されることが好ましい。
【0017】
構造的に単純な様式では、第1の連結手段としてのチェーン・リンクの第1の連結領域は、摺動案内手段として、湾曲していない、つまり直線状の溝穴断面を持つ、第1の枢動軸に関して軸方向に位置する少なくとも1つの第1のヒンジ開口部を有し得る。これにより、継合部材の並進相対運動が溝穴内で行われ得ることが実現される。そのような並進運動は、溝穴断面の長手方向の大きさ内で生じる。溝穴断面の大きさは、並進の方向を決定する。溝穴断面は湾曲していないので、並進は純粋に直線状である。溝穴断面は、円中心点軸の方向に、または少なくとも実質的に円中心点軸の方向に延在することが好ましい。溝穴断面は、チェーン・リンクの円中心点軸に関して第1の枢動軸に垂直に軸方向に細長くてもよい。円中心点軸は、チェーン・リンクの平面に垂直に延在し得る。
【0018】
継合部材は、並進に加えてまたはその代わりに、溝穴内での継合部材の傾きが可能になるように、溝穴内に係合してもよい。傾きは、第2の枢動軸のまわりでの枢動の形態であってもよい。溝穴内での転倒運動により傾きが生じるとき、傾きは第1の枢動軸に垂直である。第2の枢動軸のまわりでの枢動、および溝穴内での並進運動の両方の場合において、それぞれの継合部材は、最後には溝穴断面内で当接して、継合部材の相対運動の範囲を定めることができる。
【0019】
円形チェーンの円弧形状の本体は、円形リング様の構造のものとすることができる。したがって、チェーン・リンクの本体は、具体的には円形リングの分弧の形状で、扇形状の構造のものとすることができる。チェーン・リンクは、円中心点軸に関して軸方向の厚さを伴いかつより大きい2つの側面を有する板様の本体を有することができ、円形チェーンへの取付け位置において、それらの側面は、円形チェーンの第1の側面および第2の側面の一部分を形成する。第1のヒンジ開口部は、厚さに対して中央に配置され得る。溝穴断面の長手方向の大きさは、厚さの95%まで、特に厚さの90%まで、または厚さの約85%までとすることができる。厚さに対する長手方向の大きさの比率が大きいと、それに応じて継合部材の互いに対する可動性が大きくなる。
【0020】
チェーン・リンクの本体は、一体に製造されてもよく、具体的には、プラスチック射出成形の形態で製造されてもよい。
【0021】
チェーン・リンクの発展形態では、チェーン・リンクは、さらなる継合部材とのヒンジ継手連結部を提供するための、より具体的には少なくとも1つの第1のヒンジ開口部を有するさらなる継合部材の第1の係合領域においてヒンジ継手連結部を提供するための、円中心点軸に関して第1の連結領域から周方向に離間された第2の連結領域を有し得る。第2の連結手段としての第2の連結領域は、第1の枢動軸に対して軸方向に位置する少なくとも1つの第2のヒンジ開口部を有し得る。第2のヒンジ開口部は、両方の継合部材のヒンジ開口部を通るヒンジ・ピンを受け入れるための、少なくとも実質的に円形の開口部断面のものとすることができる。
【0022】
あるいは、第2の連結手段としての第2の連結領域に、関連する継合部材の第1のヒンジ開口部内に係合する少なくとも1つの実質的に円筒形のピンを提供することが可能である。そのようなピンは、チェーン・リンク上に一体に形成されてもよい。したがって、この実施形態では、ヒンジ連結部のためにさらなる個別の構成部品は必要とされない。連結領域はそれぞれ、それぞれのチェーン・リンクの端部または端部領域に配置され得る。
【0023】
チェーン・リンクの発展形態では、C字形状断面を有する少なくとも1つの第1のヒンジ開口部は、第1の枢動軸に対する径方向の拡大に関してC字形状断面を安定させるために、補強手段を有し得る。補強手段は、第1の枢動軸に対して垂直に配置され、かつ、C字形状断面に横方向に連結される、補強壁の形態であってもよい。したがって、補強壁は、第1の枢動軸に関して径方向であるC字形状断面からの力を受けることができる。補強壁は、有利には、第1のヒンジ開口部を第1の枢動軸に垂直に中央で分割し得る。
【0024】
円形チェーンのような、チェーン・リンクの扇形状の本体は、円中心点軸に垂直に配置された第2の側面を有することができる。この第2の側面は、そのチェーン・リンクに関連付けられる案内スペースの部分のキャリアの形態とすることができる。第2の側面は、案内スペースの範囲を定めることができる。本体の第2の側面には、エネルギー線を受け入れかつ案内するための、円中心点軸に関して軸方向に突出する手段、具体的には輪形状またはアーチ状の保持手段を設けることが可能である。C字形状断面は、第2の側面と反対の側を向いた表面法線の方向において、または突出する手段の方向において、円中心点軸に関して軸方向に開口した構造を有することが好ましい。具体的には、円形チェーンの少なくとも各第3または第4のチェーン・リンクがそのような保持手段を有する場合に、保持手段は、端部において互いに横方向に当接することにより、第1の枢動軸のまわりでのチェーン・リンクの枢動を制限することができる。このようにして、以下でより詳細に説明されるように、特に円形チェーンの保管および組立中に、ヒンジ連結部によって連結されたチェーン・リンクがC字形状断面から滑り出るのを防ぐことが可能になる。
【0025】
保持手段は、本体と一緒に一体の構成要素を形成してもよい。しかし、保持手段は後で本体に固定され得ることが好ましい。その場合、保持手段は、構成および/または寸法決めに関わるそれぞれの要求に応じて構造的に変化し得る。確かに、しかし必ずではないが、円形チェーンにおけるチェーン・リンクのそれぞれが、保持手段を有し得る。保持手段を備えるチェーン・リンクは、円形チェーンの長さにわたって等しく離間して配置されることが好ましい。
【0026】
チェーン・リンクのさらなる発展形態では、チェーン・リンクがそれぞれの円中心点軸から、周方向に延在するか、または接線方向に離れるように延在して設けられ、第1の連結領域に第1の連結手段を含む少なくとも1つの第1の突出部が配置され、第2の連結領域に第2の連結手段を含む少なくとも1つの第2の突出部が配置されることが、実現され得る。ヒンジ連結部の向上された機械的安定性、および、2つの継合部材の互いに対するより良好な案内のために、第1および第2の突出部を複数設けることが可能である。その場合、第1の連結領域に設けられる第1の突出部の数は、第2の連結領域内の第2の突出部よりも1つだけ少なくてよい。その結果、取付け位置において第1の突出部の軸方向両側に2つの第2の突出部のそれぞれが配置されることになる。
【0027】
取付け位置では、第1のヒンジ開口部および第2のヒンジ開口部またはピンは、枢動軸に関して相互に軸方向に位置合わせされた関係で配置され得る。円形チェーンのチェーン・リンクのより容易な枢動のために、突出部は、第1の枢動軸に関して、それらのそれぞれの端部において丸められた構造のものとされ得ることが好ましい。チェーン・リンクの一実施形態では、第1の突出部の形態をした少なくとも2つの突出部が、第1の連結領域に設けられ、第2の突出部の形態をした少なくとも3つの突出部が、第2の連結領域に設けられ得る。突出部は、円中心点軸に関して相互に径方向に隣接した関係で交互に配置され得る。隣り合ったチェーン・リンクの突出部は、突出部のヒンジ開口部が第1の枢動軸に関して軸方向に位置合わせされた関係で配置される連結位置において、互いに歯のように係合することができる。突出部は、第1の枢動軸に関して軸方向に変位不可能に、横方向に接触し得る。
【0028】
第2の連結手段が、関連する継合部材の第1のヒンジ開口部内に係合する少なくとも1つの少なくとも実質的に円筒形のピンを有する状況では、ピンは、2つの第2の突出部間で第2の枢動軸の方向に延在し得る。開口部C字形状断面を有する第1のヒンジ開口部が、第1の枢動軸に対する径方向の拡大に関して開口部C字形状断面を安定させるために、第1の枢動軸に垂直に配置された補強壁を有する状況では、ピンは、補強壁の領域において2つのピン部分に分割されてもよく、2つのピン部分は、それぞれ、第1の枢動軸に関して自由端を伴って互いに向かって軸方向に延在して、補強壁の係合のための中間スペースを画定する。中間スペースは、補強壁の厚さに等しい軸方向サイズ有してもよい。
【0029】
回転軸のまわりで互いに対して円運動で移動することが可能な2つの接続点間でエネルギー線を受け入れかつ案内するために、上述および後述の実施形態のうちの1つによる円形チェーンが提供され得る。円形チェーンは、エネルギー線のための案内スペースと、周方向において相互に隣り合った関係の、上述および後述の実施形態のうちの1つによる扇形状の複数のチェーン・リンクで構成された、扇形状の本体とを有し得る。チェーン・リンクは、それぞれのヒンジ継手連結部における連結領域において、径方向の第1の枢動軸を通って相互に隣接した関係で枢動可能に連結され得る。
【0030】
ヒンジ継手連結部は、継合部材の追加的な相対運動の形式のさらなる自由度を有することができる。追加的な相対運動は、回転軸に関して周方向または接線方向における第2の枢動軸のまわりでの継合部材の枢動の形態であってもよく、かつ/または、枢動軸に垂直または略垂直な、回転軸に対して少なくとも実質的に軸方向である並進の形態であってもよい。
【0031】
上述のように、隣り合ったチェーン・リンクは、一方の継合部材の第1の連結領域と他方の継合部材の第2の連結領域とによってそれぞれ互いに連結される。円形チェーンの発展形態において、円形チェーンの準備完了位置におけるチェーン・リンクの第1の連結手段は、回転軸に関して少なくとも実質的に軸方向に延在する溝穴形状を有する、回転軸に関して径方向に位置する少なくとも1つの第1のヒンジ開口部を有することができ、第2の連結手段は、少なくとも1つの第2のヒンジ開口部を有することができ、この少なくとも1つの第2のヒンジ開口部は、回転軸に関して少なくとも実質的に径方向に位置し、かつ、円形開口部断面を有する。ヒンジ連結部において、ヒンジ開口部は、第1の枢動軸に関して軸方向に位置合わせされた関係で配置され、かつ、ヒンジ開口部を通るヒンジ・ピンにより互いに対して枢動可能に保持される。
【0032】
あるいは、円形チェーンの準備完了位置における第1の連結手段は、少なくとも1つの第1のヒンジ開口部を有することができ、この第1のヒンジ開口部は、回転軸に関して径方向に位置するとともに、溝穴形状を有し、この溝穴形状は、回転軸に関して少なくとも実質的に軸方向に延在し、かつ、軸方向に開口したC字形状断面の形態である。第2の連結手段は、少なくとも1つのピンを有することができ、この少なくとも1つのピンは、回転軸に関して少なくとも実質的に径方向に配置され、かつ、連結位置において第1のヒンジ開口部を通って係合する。
【0033】
2つの継合部材を連結するために、2つの継合部材の関連する連結領域の第1および第2の連結手段は、継合部材が約90°の角度に置かれる継合位置において、互いに重ね合わせられて、第1のヒンジ開口部のC字形状断面内へのピンの横方向の係合により、係合され得る。次いで、2つの継合部材は、連結手段において、継合位置から、継合部材が約180°の角度に位置する作動位置へ枢動され得る。継合部材は、継合位置において、作動位置での連結部の係脱を防ぐために固定され得る。
【0034】
チェーン・リンク、およびチェーン・リンクを含む円形チェーンの図面に示された複数の実施形態を用いて本発明を以下により詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。