特許第6450654号(P6450654)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6450654ピラーガーニッシュに対するスカッフプレートの取付構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6450654
(24)【登録日】2018年12月14日
(45)【発行日】2019年1月9日
(54)【発明の名称】ピラーガーニッシュに対するスカッフプレートの取付構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 13/02 20060101AFI20181220BHJP
   F16B 5/10 20060101ALI20181220BHJP
【FI】
   B60R13/02 Z
   B60R13/02 C
   F16B5/10 G
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-129551(P2015-129551)
(22)【出願日】2015年6月29日
(65)【公開番号】特開2017-13535(P2017-13535A)
(43)【公開日】2017年1月19日
【審査請求日】2018年1月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 由佳
(72)【発明者】
【氏名】松岡 浩治
【審査官】 小河 了一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−179512(JP,A)
【文献】 特開2005−053301(JP,A)
【文献】 特開2008−195257(JP,A)
【文献】 特開2014−046736(JP,A)
【文献】 特開2009−107493(JP,A)
【文献】 特開2010−255802(JP,A)
【文献】 特開2011−162129(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0057009(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 13/02
F16B 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピラーガーニッシュに対するスカッフプレートの取付構造であって、
前記ピラーガーニッシュは、その車両下側かつ車室内側の端部に、前記スカッフプレートが一部重なるようにして取り付けられる板状の取付板部を備え、前記取付板部は、その車室内側の端部に近接して、板面に開口する開口部を有しており、
前記スカッフプレートは、その車室内側の端部に、前記取付板部における前記端部の車室内側面に沿って延在する内側壁部と、前記内側壁部の車両下端部から車室外側に向けて突出するとともに、前記取付板部における前記端部の車両下側面に係止される係止爪と、を備えており、
前記取付板部に対して前記スカッフプレートを車両上方から押し付けるのに伴って、前記スカッフプレートの前記係止爪が前記取付板部の前記車室内側面を押圧して、前記取付板部の前記端部が前記開口部の縮径方向に弾性変形することで、前記スカッフプレートの前記係止爪が前記取付板部における前記端部の前記車両下側面に回り込み、前記開口部の拡径方向への弾性復帰により前記取付板部における前記端部の前記車両下側面に係止されることを特徴とするピラーガーニッシュに対するスカッフプレートの取付構造。
【請求項2】
前記係止爪は、その車両下側面が車室外側に向かうにつれて車両上方に傾斜する傾斜面とされており、
前記傾斜面が前記取付板部の前記車室内側面を押圧して、前記取付板部の前記端部が車室外側に向けて弾性変形することを特徴とする請求項1に記載のピラーガーニッシュに対するスカッフプレートの取付構造。
【請求項3】
前記取付板部は、車室フロア面に沿って延在する平板状をなし、
前記スカッフプレートは、前記取付板部の上方に重なるようにして配されるプレート本体部を更に備え、
前記内側壁部は、前記プレート本体部の車室内側の端部から、前記車室フロア面まで立ち下がる構成とされている請求項1又は請求項2に記載のピラーガーニッシュに対するスカッフプレートの取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピラーガーニッシュに対するスカッフプレートの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、第一の部材と第二の部材とを組付ける部品係合構造として、下記特許文献1のものが知られている。下記特許文献1には、第一の部材に設けられる開口と、開口を架橋する可撓性の架橋体と、第二の部材に設けられる係合爪と、で構成され、開口へ係合爪を挿通することにより第一の部材と第二の部材とを係合状態に組付けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−255802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ピラーガーニッシュに対してスカッフプレートを取り付ける際には、その車室内側の合わせ目に隙間ができないようにして取り付けることが求められる。しかしながら、特許文献1に記載の構造では、仮にピラーガーニッシュに開口を設け、スカッフプレートに係合爪を設けたとしても、両部材を車室内側の端部同士で互いに係合することができず、両部材の寸法誤差や組み付け誤差、または外部からの力による変形等に起因して、車室内側の合わせ目に隙間が生じる虞があり、問題がある。
【0005】
一方、そのような隙間が生じないように、スカッフプレートの車室内側の端部にピラーガーニッシュの車室内側の端部に係止される係止爪を設けた場合には、次のような問題がある。スカッフプレートの形状は、ドア開口の形状やその車室フロアからの高さに応じて、適宜設定される。このため、スカッフプレートは、搭載される車のタイプによっては、その車室内側の端部付近が弾性変形し難い形状とならざるを得ない。そのような弾性変形し難いタイプのスカッフプレートにおいては、スカッフプレート自体を弾性変形させて係止爪をピラーガーニッシュに対して係止することが難しく、容易にピラーガーニッシュに対してスカッフプレートを取り付けることができない。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、スカッフプレートの車室内側の端部に係止爪を設けた場合であっても、ピラーガーニッシュに対してスカッフプレートを容易に取り付けることができ、両部材の車室内側の合わせ目に隙間が生じる事態を抑制可能なピラーガーニッシュに対するスカッフプレートの取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、ピラーガーニッシュに対するスカッフプレートの取付構造であって、前記ピラーガーニッシュは、その車両下側かつ車室内側の端部に、前記スカッフプレートが一部重なるようにして取り付けられる板状の取付板部を備え、前記取付板部は、その車室内側の端部に近接して、板面に開口する開口部を有しており、前記スカッフプレートは、その車室内側の端部に、前記取付板部における前記端部の車室内側面に沿って延在する内側壁部と、前記内側壁部の車両下端部から車室外側に向けて突出するとともに、前記取付板部における前記端部の車両下側面に係止される係止爪と、を備えており、前記取付板部に対して前記スカッフプレートを車両上方から押し付けるのに伴って、前記スカッフプレートの前記係止爪が前記取付板部の前記車室内側面を押圧して、前記取付板部の前記端部が前記開口部の縮径方向に弾性変形することで、前記スカッフプレートの前記係止爪が前記取付板部における前記端部の前記車両下側面に回り込み、前記開口部の拡径方向への弾性復帰により前記取付板部における前記端部の前記車両下側面に係止されることに特徴を有する。
【0008】
本発明のピラーガーニッシュに対するスカッフプレートの取付構造によれば、スカッフプレートの係止爪が取付板部の車室内側面を押圧して、取付板部の端部が開口部の縮径方向に弾性変形することで、スカッフプレートの係止爪が取付板部の端部の車両下側面に回り込み、開口部の拡径方向への弾性復帰により取付板部の端部の車両下側面に係止されるため、例えば低床タイプのスカッフプレートのような内側壁部の高さ寸法が小さく、スカッフプレート自体が弾性変形し難い構成であっても、これを取り付ける際に必要とされる荷重を低減することができる。この結果、低床タイプのスカッフプレートにおいても、その車室内側の端部に係止爪を設けて、取付板部の車室内側の端部に係止することが可能となり、スカッフプレートとピラーガーニッシュの車室内側における合わせ目に隙間が生じる事態を抑制することができる。
【0009】
上記構成において、前記係止爪は、その車両下側面が車室外側に向かうにつれて車両上方に傾斜する傾斜面とされており、前記傾斜面が前記取付板部の前記車室内側面を押圧して、前記取付板部の前記端部が車室外側に向けて弾性変形するものであってもよい。このような構成によれば、スカッフプレートに対して車両下方に向けて力を作用させることにより、傾斜面から取付板部の車室内側面に対して、好適に開口部の縮径方向に沿った力を作用させることができる。
【0010】
上記構成において、前記取付板部は、車室フロア面に沿って延在する平板状をなし、前記スカッフプレートは、前記取付板部の上方に重なるようにして配されるプレート本体部を更に備え、前記内側壁部は、前記プレート本体部の車室内側の端部から、前記車室フロア面まで立ち下がる構成とされていてもよい。このような構成によれば、仮に、取付板部の端部が車室フロア面に向けて立ち下がる形で屈曲するような形状をなす場合に比べて、車室フロア面に対する内側壁部の高さが小さい低床タイプのスカッフプレートを好適に実現することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、スカッフプレートの車室内側の端部に係止爪を設けた場合であっても、ピラーガーニッシュに対してスカッフプレートを容易に取り付けることができ、両部材の車室内側の合わせ目に隙間が生じる事態を抑制可能なピラーガーニッシュに対するスカッフプレートの取付構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係るピラーガーニッシュ及びスカッフプレートを示す側面図(車両を一部切り欠いて車室内側から視た図)
図2図1のピラーガーニッシュ及びスカッフプレートを示す斜視図
図3】ピラーガーニッシュに対するスカッフプレートの取付構造を車両上方かつ車室内側から視た斜視図
図4】ピラーガーニッシュに対するスカッフプレートの取付構造を車両下方かつ車室外側から視た斜視図
図5図4のピラーガーニッシュに対するスカッフプレートの取付構造の取り付け状態を示す斜視図
図6】ピラーガーニッシュに対するスカッフプレートの取付構造の取り付け状態を示す断面図(図5のVI−VI線で切断した図)
図7】ピラーガーニッシュに対してスカッフプレートを取り付ける態様を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態を図1ないし図7によって説明する。本実施形態では、「ピラーガーニッシュに対するスカッフプレートの取付構造」として、車両10に配設されたピラーガーニッシュ20に対してスカッフプレート40を取り付けるための構造を例示する。なお、各図に示した、矢印FR及びRRの方向をそれぞれ車両前方(車両進行方向)及び車両後方とし、矢印IN及びOUTの方向をそれぞれ車室内側及び車室外側とし、矢印UP及びDWの方向をそれぞれ車両上方及び車両下方として説明する。
【0014】
車両10は、図1に示すように、フロントドア開口12とリアドア開口13との間に、車両ボデー15を構成する車両ピラー(所謂、Bピラー、センターピラー)が車両上下方向に沿って延設されている。リアドア開口13は、スライド式で開閉されるスライドドア16で閉塞される。そして、リアドア開口13の前縁において、車両ピラーの車室内側には、ピラーガーニッシュ20が取り付けられている。
【0015】
ピラーガーニッシュ20は、図2に示すように、合成樹脂製とされ、略半筒状をなしている。詳細には、ピラーガーニッシュ20は、車室の側壁をなす主面部21と、主面部21の車両前端から車室外側に向けて立ち上がる前側壁部(不図示)と、主面部21の車両後端から車室外側に向けて立ち上がる後側壁部22と、を備えている。そして、ピラーガーニッシュ20は、主面部21の下端が車室フロア面17に連なるとともに、後側壁部22がリアドア開口13の前縁における車室内側の部分を構成する形で配されている。このピラーガーニッシュ20には、その車両後方にスカッフプレート40(所謂、リアスカッフプレート)が取り付けられるとともに、車両前方にフロントスカッフプレート18(図1参照)が取り付けられている。
【0016】
ピラーガーニッシュ20は、図3に示すように、その車両下側かつ車室内側の端部に、スカッフプレート40が一部重なるようにして取り付けられる板状の取付板部25を備えている。具体的には、ピラーガーニッシュ20には、後側壁部22の下端部から車両後方かつ車室内側に向けて延設される形で、取付板部25が一体的に形成されている。また、ピラーガーニッシュ20には、取付板部25の車両後端部から車両ボデー15に当接する形で立ち上がり、取付板部25を車両下方から支持する当てリブ23が設けられるとともに、取付板部25の車両前方に隣接してスカッフプレート40を車両下方から支持するプレート支持面24が設けられている。
【0017】
取付板部25は、図3及び図6に示すように、車室内外方向かつ車両前後方向、つまり、車室フロア面17に沿って延在する平板状をなす。取付板部25は、平面視にて車室内外方向に長い長方形状をなしている。取付板部25は、スカッフプレート40の後述するプレート本体部43の板厚と所定の隙間43Cの分だけ周囲より一段低くされてなり、スカッフプレート40が取り付けられた状態で、ピラーガーニッシュ20の意匠面とスカッフプレート40の意匠面とが面一状に接続される構成となっている。
【0018】
取付板部25は、図3及び図5に示すように、その車室内側の端部30に近接して、板面25Aに開口する開口部26を有している。この開口部26は、平面視にて、端部30に沿って延びる長方形状をなし、端部30側の開口縁にスカッフプレート40の後述する係止爪48が係止される係り代(以下、被係止部32と呼ぶ)を残す形で形成されている。取付板部25は、開口部26の他に、板面25Aに開口する形で、スカッフプレート40の位置決め突部44が挿入される位置決め孔27と、スカッフプレート40の取付突部45が挿入、係止される取付孔28と、を有する。これら開口部26、位置決め孔27、及び取付孔28は、この順に、車室内側から車室外側に向けて並んで設けられている。なお、位置決め孔27及び取付孔28に、それぞれ位置決め突部44及び取付突部45が嵌合する態様については、後に説明する。
【0019】
端部30は、図7に示すように、開口部26の縮径方向、つまり、車室外側に向けて弾性変形可能とされている。詳細には、端部30は、図3に示すように、その被係止部32が両持ち状(架橋状)に構成されており、被係止部32の車室内外方向における幅寸法が小さい程、また、車両前後方向における長さ寸法が長い程、車室内外方向に沿って弾性変形し易い構成となっている。なお、端部30には、被係止部32の車両前側及び車両後側に、車両前後方向に沿って延びる前リブ34及び後リブ35が形成されており、係止爪48が被係止部32の車両前側又は車両後側に移動することが規制されている。
【0020】
端部30は、図6及び図7に示すように、その車室内側面30Aが車室内側かつ車両上側に位置する角部が面取りされたような形で構成されている。つまり、端部30の車室内側面30Aは、車室内側に向かうにつれて車両下方に下降する傾斜面とされている。一方、端部30は、車室内側かつ車両下側に位置する角部において、車室内側面30Aと車両下側面30Bとが略直角に交わる形をなす。このような構成により、スカッフプレート40の係止爪48が車両上方から端部30に係止され易い一方、車両下側面30Bに係止された係止爪48が車両上方に抜け難い構成が実現されている。なお、端部30に係止爪48を係止する態様については、後に説明する。
【0021】
スカッフプレート40は、図2に示すように、全体としては、リアドア開口13の下縁における車室内側の部分を構成する形で配されている。つまり、スカッフプレート40は、リアドア開口13を介して乗降する乗員の足元に位置しており、本実施形態では、ステップ位置が低い低床タイプのスカッフプレート40について例示する。このタイプのスカッフプレート40が配設されるリアドア開口13は、大開口化され、乗員が乗り降りし易い構成となっている。
【0022】
スカッフプレート40は、図2に示すように、その車両前端部がピラーガーニッシュ20に取り付けられるとともに、その車両後端部がリアドア開口13の後縁を構成する内装材(不図示)に取り付けられている。また、スカッフプレート40は、図4に示すように、車両前端部に車両ボデー15のサイドシル部に当接する当てボス42,42を備えている。このような当てボス42,42は、車両上方からの力(例えば、乗員の踏み付けにより作用する力)によりスカッフプレート40が変形することを抑制し、ピラーガーニッシュ20に係止された係止爪48が、スカッフプレート40の変形に起因して外れる事態を抑制する役目を果たす。なお、スカッフプレート40は、車両ボデー15に対してワイヤハーネス等を固定するためのハーネスクリップ(不図示)等に取り付けられる別の取付構造を更に備えていてもよい。
【0023】
スカッフプレート40は、図3及び図6に示すように、プレート本体部43と、プレート本体部43の車室内側の端部43Bから立ち下がる内側壁部47と、内側壁部47の車両下端部47Bから車室外側に向けて突出するとともに、取付板部25における端部30の車両下側面30Bに係止される係止爪48と、を備えている。つまり、スカッフプレート40は、その車室内側の端部に、内側壁部47と係止爪48を備えている。
【0024】
プレート本体部43は、図2及び図3に示すように、全体としては車両10のサイドシル部を覆う平板状をなし、その車両前端部が取付板部25の上方に重なるようにして配される。以下の説明では、プレート本体部43において、ピラーガーニッシュ20と重ね合わせられる部分を、合わせ部43Aと呼ぶ。
【0025】
合わせ部43Aには、図4及び図6に示すように、取付板部25と対向する面から突出する形で、車室内外方向における中央部に位置決め突部44が設けられるとともに、車室外側の端部に近接して取付突部45が設けられている。なお、合わせ部43Aと取付板部25との間には、取付突部45や係止爪48等の取付構造が嵌合するのに必要なストロークを確保すべく、所定の隙間43Cが設定されている。
【0026】
内側壁部47は、図2に示すように、全体としては、スカッフプレート40の全長に亘って車両前後方向に沿って延びるとともに、車両上下方向に沿って延びる板状をなす。そして、内側壁部47は、図3及び図6に示すように、その車両前端部において、取付板部25における端部30の車室内側面30Aに沿って延在する構成とされている。本実施形態では、内側壁部47は、取付板部25の板厚と、上記隙間43Cの寸法とを合わせた程度の幅寸法(約10mm程度)に設定されており、プレート本体部43と車室フロア面17との段差が小さい構成が実現されている。内側壁部47は、その車室内側面が車室内に臨む意匠面とされており、その車両下端部47Bが車室フロア面17に連なる構成とされている。
【0027】
係止爪48は、図4及び図6に示すように、三角柱状の外形をなし、その車室内側に位置する側面を基端部として内側壁部47の車室外側面に立設されている。詳細には、係止爪48は、内側壁部47の車室外側面に立設された三角形状の3本のリブが互いにその車両上側の辺部において連結されたような形をなす。このような構成により、係止爪48自体は、弾性変形し難い高剛性な構成とされている。そして、係止爪48は、その車両上側面48Aが車室内外方向に沿って延びる面とされるともに、その車両下側面48Bが車室外側に向かうにつれて車両上方に傾斜する傾斜面とされている。
【0028】
続いて、ピラーガーニッシュ20に対してスカッフプレート40を取り付ける態様について、図7によって説明する。なお、図7においては、開口部26が縮径変形する前、つまり自然状態における端部30の位置を2点鎖線で示している。
【0029】
作業者は、スカッフプレート40を、図7の白抜き矢印の方向に沿って移動し、車両ピラーに取り付けられたピラーガーニッシュ20に対して車両上方から近付ける。そして、取付板部25の位置決め孔27及び取付孔28に対して、スカッフプレート40の位置決め突部44及び取付突部45の位置を整合させて、これを挿入していく。この際、取付突部45の係止部45A,45Aが取付孔28の孔縁と干渉するが、車両上方からスカッフプレート40(プレート本体部43)を押し付けて、中空状の取付突部45を車室内外方向に沿って縮径する方向に弾性変形させつつ、さらに取付突部45を取付孔28に挿入する。取付突部45は、係止部45A,45Aが取付孔28を通過すると、弾性復帰して、係止部45A,45Aが取付孔28の孔縁に係止された状態となる(図6参照)。
【0030】
上述の過程で、スカッフプレート40の係止爪48の車両下側面48Bが、取付板部25の端部30の車室内側面30Aに当接する。スカッフプレート40は、位置決め突部44及び取付突部45により、車室内外方向及び車両前後方向に位置決めされているから、端部30には係止爪48から車室外側に向かって力が作用することとなる。また、取付板部25からの反力により、内側壁部47にはその車両上端部を軸として車室内側に向けて回動する方向に力が作用する。内側壁部47の車両下端部47Bの変位量は、内側壁部47の高さ寸法が大きい程、大きくなる傾向にあるが、本実施形態では、内側壁部47の高さ寸法が小さく、車両下端部47Bの変位量が係止爪48の係り代の寸法以下に制限されている。
【0031】
この結果、取付板部25に対してスカッフプレート40を車両上方から押し付けるのに伴って、スカッフプレート40の係止爪48が取付板部25の車室内側面30Aを押圧して、取付板部25の端部30が開口部26の縮径方向に弾性変形する。この際、開口部26の開口幅は、自然状態における開口幅W1より小さい開口幅W2に漸次低減していく(W2<W1)。特に、本実施形態では、係止爪48の車両下側面48Bは車室外側に向かうにつれて車両上方に傾斜する傾斜面とされているから、この傾斜面が取付板部25の車室内側面30Aを押圧して、取付板部25の端部30が車室外側に向けて弾性変形する。また、本実施形態では、係止爪48に近接して設けられた突部(位置決め突部44や取付突部45)が取付板部25の孔(位置決め孔27や取付孔28)に嵌合することにより、係止爪48が車両下方に向けて案内されるから、作業者はスカッフプレート40を車両上方から押圧するだけで、スカッフプレート40の車室外側において視認し難いピラーガーニッシュ20の端部30に、間接的に力を作用させて、これを弾性変形させることが可能となっている。
【0032】
この状態から、さらにスカッフプレート40を押し付けると、開口部の開口幅W2が係止爪48の係り代と同等の寸法だけ小さくなったところで、スカッフプレート40の係止爪48が取付板部25における端部30の車両下側面30Bに回り込む。すると、係止爪48からの押圧力が端部30の車室内側面30Aに作用しなくなり、端部30が開口部26の拡径方向へ弾性復帰する。そして、係止爪48が取付板部25における端部30の車両下側面30Bに係止される。この状態では、スカッフプレート40は、係止爪48及び取付突部45により車両上側へ抜けることが規制された状態となっている。以上の態様により、ピラーガーニッシュ20に対するスカッフプレート40の取り付けが完了する。
【0033】
なお、スカッフプレート40は、必要に応じて、ピラーガーニッシュ20から取り外し可能な構成とされている。具体的には、スカッフプレート40を取り外す場合には、内側壁部47と取付板部25との間に工具等を差し込んで係止爪48と端部30との係合を解除するとともに、スカッフプレート40を車両上方に向けて引っ張って、取付突部45を弾性変形させつつ取付孔28から引き抜けばよい。
【0034】
以上説明したように、本実施形態のピラーガーニッシュ20に対するスカッフプレート40の取付構造によれば、スカッフプレート40の係止爪48が取付板部25の車室内側面30Aを押圧して、取付板部25の端部30が開口部26の縮径方向に弾性変形することで、スカッフプレート40の係止爪48が取付板部25の端部30の車両下側面30Bに回り込み、開口部26の拡径方向への弾性復帰により取付板部25の端部30の車両下側面30Bに係止されるため、例えば低床タイプのスカッフプレート40のような内側壁部47の高さ寸法が小さく、スカッフプレート40自体が弾性変形し難い構成であっても、これを取り付ける際に必要とされる荷重を低減することができる。この結果、低床タイプのスカッフプレート40においても、その車室内側の端部に係止爪48を設けて、取付板部25の車室内側の端部30に係止することが可能となり、スカッフプレート40とピラーガーニッシュ20の車室内側における合わせ目に隙間が生じる事態を抑制することができる。
【0035】
この技術的意義を、以下において、さらに具体的に説明する。係止爪を有する部材を被係止部を有する部材に対して取り付ける場合には、一般的に、係止爪を有する部材側を弾性変形させて係止する取付構造が多用されている。本実施形態のように、係止爪48を有するスカッフプレート40側が弾性変形し難い構成において、スカッフプレート40を、仮に開口部を有しないピラーガーニッシュに係止する場合には、係止爪48を変位させてピラーガーニッシュに対して係止するための荷重が高くなり、また、そのような荷重により係止爪48自体が破損する虞もあり、問題がある。そのような問題を回避するための対策として、スカッフプレートにおける係止爪の位置を、所望の位置より相対的に弾性変形し易い別の位置に設定して、係止爪の変位量を確保する取付構造も考えられる。しかしながら、そのような取付構造では、スカッフプレートとピラーガーニッシュとを所望の位置で係合することができず、車室内側の合わせ目に隙間が生じることが懸念される。このような合わせ目の隙間は、スカッフプレートという部品の性格上、乗員のステップ位置において、車室内に臨む形で形成されることとなり、特に好ましくない。一方、本実施形態では、被係止部32を有するピラーガーニッシュ20に開口部26を設定することで、ピラーガーニッシュ20側を弾性変形させて、係止爪48を係止する取付構造とした。つまり、取り付けの際に直接的に荷重を掛けるスカッフプレート40側ではなく、スカッフプレート40を介して間接的にピラーガーニッシュ20に対して力を作用させ、ピラーガーニッシュ20側を弾性変形させる取付構造とした。この結果、スカッフプレート40の所望の位置に係止爪48を設定した場合であっても、低荷重で、また、係止爪48が破損することなくスカッフプレート40をピラーガーニッシュ20に対して取り付けることが可能となった。
【0036】
さらに、本実施形態のピラーガーニッシュ20に対するスカッフプレート40の取付構造によれば、別体のクリップ等を必要とせず、その形成に大がかりな設備が必要とされない開口部26を設定するのみで、その取り付けを実現することができ、スカッフプレート40の取り付けに係るコストが増大することがない。具体的には、上述した問題を回避するための別の対策として、係止爪による取付構造ではなく、別体のクリップ等を介してスカッフプレートをピラーガーニッシュに取り付ける構造とすることも考えられる。しかしながら、そのような取付構造では、部品点数の増加や組み付け工数の増加に起因して、従来のようなスカッフプレートに一体的に設けられた係止爪による取付構造に比べて、取り付けに係るコストが掛かることが懸念される。一方、本実施形態では、従来と同等の部品点数及び組み付け工数で、ピラーガーニッシュ20に対するスカッフプレート40の取り付けを実現することができる。
【0037】
また、本実施形態では、係止爪48は、その車両下側面48Bが車室外側に向かうにつれて車両上方に傾斜する傾斜面とされており、傾斜面が取付板部25の車室内側面30Aを押圧して、取付板部25の端部30が車室外側に向けて弾性変形する。このため、スカッフプレート40に対して車両下方に向けて力を作用させることにより、傾斜面から取付板部25の車室内側面30Aに対して、好適に開口部26の縮径方向に沿った力を作用させることができる。
【0038】
また、本実施形態では、取付板部25は、車室フロア面17に沿って延在する平板状をなし、スカッフプレート40は、取付板部25の上方に重なるようにして配されるプレート本体部43を更に備え、内側壁部47は、プレート本体部43の車室内側の端部30から、車室フロア面17まで立ち下がる構成とされている。このため、仮に、取付板部25の端部30が車室フロア面17に向けて立ち下がる形で屈曲するような形状をなす場合に比べて、車室フロア面17に対する内側壁部47の高さが小さい低床タイプのスカッフプレート40を好適に実現することができる。
【0039】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば、次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0040】
(1)上記実施形態では、開口部が平面視長方形状をなし、取付板部の端部が両持ち状(架橋状)に構成されるものを例示したが、開口部の形状はこれに限られない。例えば、開口部は、その車室内側の開口縁の一部が車室内側に向けて開放する形状、つまり、取付板部の端部を切り欠いてなる形状をなし、取付板部の端部が片持ち状に構成されるものであってもよい。
【0041】
(2)上記実施形態以外にも、係止爪の形状、位置、配設数は適宜設定可能である。
【0042】
(3)上記実施形態では、取付板部が平板状をなすものを例示したが、取付板部の形状はこれに限られない。例えば、取付板部は車室内側の端部が車両下方に向けて立ち下がる形で屈曲する板状をなしていてもよい。
【0043】
(4)上記実施形態では、取付板部に位置決め孔及び取付孔が設けられるとともに、スカッフプレートに位置決め突部及び取付突部が設けられる構成を例示したが、これらの構成を備えない場合であっても、適宜、本願発明を適用可能である。
【0044】
(5)上記実施形態では、ピラーガーニッシュとしてBピラーガーニッシュを例示するとともに、スカッフプレートとしてリアスカッフプレートを例示したが、ピラーガーニッシュ及びスカッフプレートはこれに限られない。例えば、Bピラーガーニッシュに対するフロントスカッフプレートの取付構造に本願発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0045】
17…車室フロア面、20…ピラーガーニッシュ、25…取付板部、30…端部、30A…車室内側面、30B…車両下側面、40…スカッフプレート、43…プレート本体部、43B…端部、47…内側壁部、47B…車両下端部、48…係止爪、48A…車両上側面、48B…車両下側面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7