(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
[開閉体開閉装置1の全体構成]
図1は、本発明に係る一実施の形態の開閉体開閉装置を示す自動車後部の斜視図であり、
図2は、同開閉装置の側面図である。なお、本実施の形態で示す自動車後部は、開閉体開閉装置の一例である。
【0011】
開閉体開閉装置1は、開口部11を有する開口部材10と、開閉体20と、複数の駆動部30A、30Bと、検知部51(
図5参照)と、スリープ制御部53(
図5参照)と、開閉制御部80と、を備える。以下、駆動部30Aおよび駆動部30Bのいずれかを特定する必要のない限り、便宜上、総称として「駆動部30」という。
【0012】
開閉体開閉装置1は、開閉体20を開口部材10の開口部11に対して開状態と閉状態に遷移させる装置である。
【0013】
[開口部材]
本実施の形態で開閉体開閉装置1の一例として示す自動車後部において、開口部材10は、車体の後部を形成している。開口部11の形状は、矩形状、円形状等のように、どのような形状であってもよい。
【0014】
[開閉体]
開閉体20は、開口部材10の開口部11を開状態または閉状態とする。開口部11の開状態は、車両の後部においては、荷物等の対象物を、開口部11を介して外部から後部荷室へ入出可能とする状態であり、閉状態は、開口部11を閉塞した状態であり、開閉体20は、質量が閉方向に作用するように、開口部材10に開閉自在に取り付けられる。
【0015】
本実施の形態のように、開口部材10が自動車後部の車体である場合、例えばテールゲートが、開閉体20の一例である例えばテールゲートである。
【0016】
開閉体20は、
図1及び
図2に示すように、開閉体20は、開位置と閉位置との間を移動可能に開口部材に対して設けられている。本実施形態においては、開閉体20の上辺部を、開口部11の上縁部側で、この枢着部分を中心に下辺部側を上下に旋回することで、開口部11を開状態または閉状態とする。
【0017】
[駆動部]
複数の駆動部30は、開口部材10の開口部11に対して開閉体20を開方向と閉方向とに移動させる。複数の駆動部30は、それぞれの駆動部30が駆動することにより開閉体20を移動させることで、開閉体20を開口部材10に対して相対移動させて、開口部11を開状態または閉状態とする。それぞれの駆動部30は、開閉体20を、開口部11が開状態となる方向への移動(開方向への移動)と開閉体11が閉方向となる方向への移動(閉方向への移動)とが可能であれば、駆動部それぞれが同方向であって同一駆動量で駆動してもよく、異なる方向の駆動であっても、異なる駆動量での駆動であってもよい。本実施形態においては、各駆動部が同一の駆動を同期して行うように設けられている。
【0018】
複数の駆動部30は、開口部材10と開閉体20とに渡されて、開閉体20が開口部材10に対して相対移動可能に設けられている。開閉体20が開口部材11に対して開口部材に対して旋回移動するために、駆動部30のそれぞれは、開閉体20の旋回に追随して旋回しながら駆動可能なように、開口部材10に対して旋回可能に取り付けられている。
【0019】
具体的には、各駆動部30は、伸縮する棒状をなしており、駆動部30の一端部側に配置され、開口部材10側に接続される駆動本体部と、駆動本体部の他端部(駆動部30に対しては他端部側)から出没可能に取りつけられ、且つ、端部が開閉体20側に接続される進退部とを有する。駆動部30は、駆動本体部に対して進退部を、駆動部30の長手方向に進退させて開閉体20を全閉位置、つまり、開口部11を完全に閉塞する位置と、全開位置、つまり、開口部11が最大限に開状態となる位置とに移動できる。各駆動部30は、モータ等の回転運動を直線方向の伸縮運動に変換することにより、開閉体20を開方向または閉方向へ移動させる。
【0020】
駆動部30は、開閉体20の開閉を可能とするものであれば、その構造、形状や配置位置については特に限定されず、使用個数は特に限定されないが、使用個数が少なくとも2個以上用いられていれば、本実施の形態のように棒状であれば2本以上、配置される。
図1に示すように、本実施の形態では、駆動部30は、自動車後部の左右両側に1本ずつ配置されている。
【0021】
図3は、本実施の形態の開閉体開閉装置の駆動部の一例の要部構成を示す部分断面図であり、
図4は、
図3に示すA−A線断面図である。
【0022】
駆動部30は、本実施形態においては、本体筒部31、スライド筒部32、モータ33、スピンドル34、スピンドルナット35、付勢部材36等を有する。駆動部30では、本体筒部31、モータ33、スピンドル34、付勢部材36等が駆動本体部に対応し、スライド筒部32、スピンドルナット35が、進退部に対応する。
【0023】
本体筒部31は、一端部側が、開口部材10に旋回可能に固定され、他端部側は開口している。本体筒部31の内側には、一端側に、モータ33が配置され、他端部側に、スライド筒部32が、長手方向にスライド移動可能に配置される。
【0024】
なお、本体筒部31の一端側には、一端側の開口を閉塞する固定端部39が設けられる。固定端部39は、ボールソケット部を有する。ボールソケット部に、開口部材10に固定される取付部材12のボールを接続することにより、本体筒部31は、開口部材10に回動自在に接続される。
【0025】
モータ33は、駆動して、駆動本体部に対し、進退部を長手方向に移動させて駆動部30を伸縮させる。モータ33は、電動モータであり、直流モータ又は交流モータである。開閉体開閉装置1が自動車に適用される場合は、自動車の直流電源を用いることができるので、直流モータを適用することが望ましい。なお、モータ33は、モータコネクタ70A、70B(
図5参照)を介して、開閉制御部80に接続され、開閉制御部80により正回転、逆回転の双方の回転駆動が制御される。
【0026】
モータ33には、長手方向で延在し、且つ、スライド筒部32の内側に配置されるスピンドル34の基端部34aが接続される。
【0027】
スピンドル34は、モータ33の回転軸と同軸上に配置され、基端部34aで本モータ33の回転軸に連結されている。スピンドル34は、基端部34a側で本体筒部31にベアリングを介して軸回りに回転自在に配置されている。
【0028】
スピンドル34の外周に雄ねじ部341が形成されており、スピンドルナット35に螺合する。
【0029】
スピンドルナット35は、スピンドル34の回転により駆動され、スピンドル34上をスピンドル34の回転軸方向へ移動する。
【0030】
具体的には、スピンドルナット35は、筒状体であり、基端側の内周面に、スピンドル34の外周の雄ねじ部341と螺合する雌ねじ部35aが設けられている。
【0031】
スピンドル34の先端部は、スピンドルナット35内に配置され、軸受け41が取り付けられている。スピンドル34の先端部は、軸受け41を介してスピンドルナット35内を長手方向に移動自在である。
【0032】
スピンドルナット35の他端部は、スライド筒部32の他端部とともに蓋部37を介してスライド端部40に固定されている。
【0033】
付勢部材36は、スライド端部40を固定端部39から離間する方向に付勢して、駆動部30が支持する開閉体20の自重に抗するように、駆動部30が伸長する方向の力を発生させている。
【0034】
駆動部30により開閉体20を開作動する際、つまり、スライド筒部32を伸長方向に移動させる際に、モータ33がスピンドルナット35を回転させる際に加わる開閉体20の自重による負荷を低減できる。
【0035】
ここでは付勢部材36は、コイルバネであり、スライド筒部32の内側で、且つ、スピンドルナット35の周囲に配置される。付勢部材36は、コイルベース38と、スライド端部40との間に介装される。
【0036】
コイルベース38は、付勢部材36の付勢力により本体筒部31内に固定されるが、接着剤、溶接等により固定されてもよい。
【0037】
スライド筒部32は、長手方向にスライド移動することにより、本体筒部31の他端部から突出し、駆動部30全体として伸縮するよう構成されている。
【0038】
スライド筒部32は、外周に凸部32aを有する。
【0039】
スライド筒部32と、スライド筒部32を囲む本体筒部31との間には、ガイド筒部43が配置される。
【0040】
ガイド筒部43は、本体筒部31の内側に配置され、コイルベース38によって軸周り方向の回転が規制されており、長手方向に延在する溝状のガイド部43aを有する。ガイド部43a内には、スライド筒部32の凸部32aが配置される。スライド筒部32は、長手方向に移動自在であるが、周周り方向への回転が規制される。
【0041】
このように構成された駆動部30において、モータ33を駆動すると、スピンドル34が回転し、この回転により、スライド筒部32を介して長手方向にのみ移動可能に規制されたスピンドルナット35は、長手方向に移動する。このスピンドルナット35の移動にともない進退部は移動して、スライド端部40が、移動する。スライド端部40には開閉体20が接続されているので、開閉体20自体が開方向、或いは閉方向へ移動し、全閉位置、全開位置に位置させることができる。また、開閉体20は、スピンドル34とスピンドルナット35とを螺合して移動され、且つ、付勢部材36により開方向に常時付勢される構造である。これにより、開閉体20が全開位置、或いは、移動途中位置にあっても、外的要因が無ければ閉方向に移動しない。
【0042】
また、モータ33は、電源オフであればフリー状態となる。この状態では、駆動部30が支持する開閉体20を介して手動で移動させることができる。すなわち、開閉体20に対して負荷を掛けて、開閉体20を介してスライド筒部32を長手方向に移動させようとすると、スピンドル34に螺合するスピンドルナット35が追従してフリーな状態で長手方向に伸縮し、開閉体20は、開方向または閉方向に移動できる。
【0043】
開閉体20に外力が加わる等によりモータ33の出力軸が回転させられるとき、モータ33は、ロータ、コイルおよび磁石を有し、逆起電力を発生可能に構成されているので、出力軸の回転数に比例して逆起電力を発生する。開閉制御部80内の電圧検出回路部60(
図5参照)では、この逆起電力に起因する電圧信号を発生させることができる。逆起電力に起因する電圧信号は、例えば、開閉制御部80によるモータ33の回転駆動においてフィードバック制御に利用したり、開閉体20の移動の検知に利用したりすることが可能である。
【0044】
モータ33が電源オフである場合に、例えば、開閉体20の開状態を維持する2つの駆動部30のうちの一方が開閉体20から外れるなどの異常状態によって、1つの駆動部30に過度の外力が負荷されたときには、外力によって開閉体20が閉方向へ移動して、駆動部30は、長手方向へ収縮する。駆動部30の収縮による直線運動は、スピンドル24の回転によってモータ33の回転軸の回転運動に変換される。その結果、モータ33には、逆起電力が発生する。この逆起電力をスリープ状態にある開閉制御部80を起動させる起動信号とすることができ、例えば、開閉制御部80内の電圧検出回路部60(
図5参照)では、この起電力に起因する電圧信号を発生させることができる。発生した起電力に起因する電圧信号は、開閉制御部80による駆動部30の規制制御に利用可能であるが、その詳細については後述する。なお、この起電力については、電圧信号等の電気信号としてスリープ制御部53に入力することでスリープ制御部53による開閉制御部80のスリープOFF制御に利用してもよいし、電力として用いることで開閉制御部80のスリープ状態の解除をしてもよい。この起動信号は、駆動部30の起電力(逆起電力)により発生し、開閉体制御部80を起動して起動状態とさせることができれば、特に限定されるものではない。なお、起動状態とは、起動した状態を意味するが、起動した状態が保持された状態も含んでもよい。
【0045】
[制御系]
図5は、上述の開閉体開閉装置の制御系を示す図である。なお、便宜上、駆動部30Aに対応づけて特定の構成要素に言及する場合、その構成要素の参照符号に記号「A」を付し、駆動部30Bに対応づけてその構成要素に言及する場合、その構成要素の参照符号に記号「B」を付す。
【0046】
[スリープ制御部]
スリープ制御部53は、開閉制御部80の動作モードをスリープモードと非スリープモード(以下「開閉制御モード」という)とに切り替える制御を行う。スリープ制御部53は、例えば、車両の各部を制御するECU(Electronic Control Unit)に組み込まれる。
【0047】
ここで、開閉制御モードとは、開閉制御部80が、開閉体20を開方向または閉方向へ移動させる各駆動部30の開閉制御を実行可能な通常の消費電力状態にある、起動状態のモードである。一方、スリープモードとは、開閉制御部80の全部または一部への給電を停止するまたはクロック周波数を所定の周波数よりも下げて動作する、各駆動部30に対して開閉体20の開閉制御を実行しない低消費電力状態(以下、スリープ状態という)にある、モードである。
【0048】
スリープ制御部53は、所定条件下でスリープON指令信号またはスリープOFF指令信号を開閉制御部80に出力する。スリープON指令信号は、開閉制御部80を開閉制御モードからスリープモードに遷移させて起動状態からスリープ状態にするための制御信号であり、スリープOFF指令信号は、上述の起動信号を含み、開閉制御部80をスリープモードから開閉制御モードに遷移させてスリープ状態から起動状態に復帰させる制御信号、つまり開閉制御部80を起動させる制御信号である。
【0049】
スリープON指令信号をスリープ制御部53から開閉制御部80に出力する条件は、例えば、開閉体20が開状態で停止していること、かつ、その停止状態が所定時間(例えば5分または10分など)経過したこと、という条件を含む。なお、開閉体20が閉状態で停止しているときにも、スリープON指令信号を出力してよい。
【0050】
スリープOFF指令信号をスリープ制御部53から開閉制御部80に出力する条件は、一般には、例えば、ユーザ操作可能な車載スイッチやリモートコントローラー(図示略)から開閉制御部80に対する操作信号が出力されたこと、ユーザが開閉体20を直接操作して開閉体20が開方向または閉方向に操作されたこと、という条件を含んでもよい。駆動部30(具体的にはモータ33)の起電力に起因する電圧信号がスリープ制御部53に入力される構成が採用される場合は、その電圧信号が入力されたときに、スリープ制御部53は、開閉制御部80にスリープOFF指令信号を出力する。
【0051】
[開閉制御部]
(開閉制御部の概略構成)
開閉体開閉装置1の開閉制御部80は、複数の駆動部30を制御する。開閉制御部80は、CPU(Central Processing Unit)50、および、CPU50と各駆動部30A、30Bとの間に接続された電圧検出回路部60A、60Bを備える。開閉制御部80は、例えば、車両の各部を制御するECU(Electronic Control Unit)により構成され、開閉体開閉装置1の各部の制御と監視を行う。例えば、開閉制御部80は、抵抗R1A〜R5Aを含む電圧検出回路部60Aおよび抵抗R1B〜R5Bを含む電圧検出回路部60Bをそれぞれ介して駆動部30A、30Bのモータ33A、33Bにおける電圧信号を検出することにより、駆動部30A、30Bの駆動状態を監視する。
【0052】
CPU50は、図示されないROM(Read Only Memory)から処理内容に応じたプログラムを読み出して図示されないRAM(Random Access Memory)に展開し、展開したプログラムと協働して各種制御を実行する。本実施の形態では、CPU50は、後述する各種判断処理を実行する機能を有するほか、検知部51としての機能を有する。
【0053】
(開閉制御部における検知部としての機能)
検知部51は、駆動部30の動作を検知する。
【0054】
ここで、駆動部30の動作は、駆動部30の動作そのものを示す信号であってもよく、駆動部30の動作に相当する信号であってもよい。駆動部30の動作は、駆動部30の駆動状態に基づいて検知される。例えば、駆動部30の駆動速度に基づいて検知部51は、駆動部の動作を検知する。
【0055】
なお、駆動部30の動作の検知は、どのような構成或いは原理で行っても良く、モータ33への供給電圧または電流やモータ33の起電力の電圧または電流を監視して行うようにしてもよいし、例えばホール素子を用いてモータ33の回転状態を磁気的に検出するようにしてもよい。例えば後者の場合、モータ33の回転軸に設けた円盤に、磁石を周方向に異なる間隔で配置し、これに対向する位置にホール素子を配置する。ホール素子により、モータ33の回転軸の回転にともなって移動する磁石をパルスで捕捉して、この捕捉したパルスから駆動部の駆動速度を算出する。また、検知部51としてカメラ等を用いて駆動部30の動作を検知する構成としてもよい。また、検知部51の個数も、特に限定されるものではないが、1つの検知部で駆動部の作動状態を検知して駆動部それぞれの駆動情報を発しても良いが、駆動部それぞれに対応した駆動部により検知してもよい。
【0056】
本実施の形態では、検知部51は、CPU50に内蔵された電圧計が駆動部30のモータ33への供給電圧やモータ33の起電力の電圧を測定することにより、駆動部30の駆動状態を検知する。
【0057】
(開閉制御部の動作モード)
開閉制御部80は、開閉制御モードのときにスリープ制御部53からスリープON指令信号を受けた場合、スリープモードに遷移して起動状態からスリープ状態となる。開閉制御部80にスリープON指令信号が入力されると、例えば、スリープON指令信号は、開閉制御モードで動作しているCPU50に入力され、CPU50が起動状態からスリープ状態になる。CPU50は、スリープ状態になると、メモリ以外(本実施の形態では主にモータ33)への給電を停止したり、クロック周波数を低減させたりする。これにより、開閉制御部80が起動状態からスリープ状態になる。なお、起動状態からスリープ状態への遷移については、公知の方法を採用することができる。
【0058】
開閉制御部80は、スリープモードのときにスリープ制御部53からスリープOFF指令信号を受けた場合、起動によりスリープ状態から開閉制御モードに遷移してスリープ状態から起動状態に復帰する。開閉制御部80にスリープOFF指令信号が入力されると、例えば、スリープOFF指令信号は、スリープモードで動作しているCPU50に入力され、CPU50がスリープ状態から起動状態に復帰する。CPU50は、スリープ状態から起動状態に復帰すると、停止していた給電を再開したり、低減させていたクロック周波数を復元したりする。これにより、開閉制御部80がスリープ状態から起動状態に復帰する。なお、駆動部30の起電力に起因して生じた起動信号に基づく開閉制御部80の起動状態への復帰については、駆動部30に対する駆動を規制する規制制御を行うことが可能な程度の起動状態であればよく、必ずしも開閉制御部80のすべての機能が起動状態となる必要はない。
【0059】
開閉制御部80は、スリープモードのときに、開閉体20が開状態で停止中であることを前提として、それぞれの駆動部30で生じた起電力が入力された場合に、開閉制御モードに遷移してスリープ状態から起動状態に復帰するようにすることができる。駆動部30Aで起電力が発生すると、例えば、起電力に起因する電圧信号(以下「起電力信号」という)が、電圧検出回路60Aを介して、スリープモードで動作しているCPU50に入力され、これにより、CPU50ひいては開閉制御部80がスリープ状態から起動状態に復帰する。或いは、起電力発生を示すスリープOFF指令信号がスリープ制御部53から、スリープモードで動作しているCPU50に入力され、これにより、CPU50ひいては開閉制御部80がスリープ状態から起動状態に復帰する。駆動部30Bで起電力が発生した場合も同様である。
【0060】
(開閉制御部による規制制御)
開閉制御部80が駆動部30の起電力によりスリープ状態から起動状態に復帰した場合、開閉制御部80は、少なくともこの起電力を発生した駆動部30に対して、駆動部30の駆動を規制する規制制御を行う。
【0061】
そして、開閉制御部80は、起電力信号の電圧レベルを検知部51により検知する。このとき、開閉制御部80は、規制制御された1の駆動部30だけでなく他の駆動部30についても(例えば、駆動部30A、30Bの両方とも)、それぞれの起電力信号の電圧レベルを検知部51により検知し、検知したこれらの電圧レベルを比較する。この比較の結果、駆動部30が相対して正常であると判断された場合は、開閉体20が相対正常状態であるとして駆動部30の規制制御を解除する。なお、この比較の際に、規制制御された1の駆動部30とは別の駆動部30に対応する起電力信号の電圧レベルを検知しない場合、その駆動部30の起電力信号の電圧レベルは0とみなす。また、開閉制御部80は、駆動部30が相対して異常であると判断された場合は、開閉体20が異常状態であるとして規制制御を継続する。
【0062】
なお、規制制御された1の駆動部30の起電力の大きさと他の駆動部30の起電力の大きさとの比較に用いる指標は、上記のような起電力信号の電圧レベルだけに限定されるものではなく、起電力の大きさを表す指標であれば何でもよい。上述では、起電力を示す信号として電圧信号を用いていたが、電流計を有するスリープ制御部を有していれば、起電力を示す信号として電流信号を用いてもよい。
【0063】
また、本実施の形態では、起電力の大きさを比較する場合を例にとって説明しているが、起電力の有無を比較してもよいことは言うまでもない。起電力の有無を比較する場合は、起電力の大きさ(例えば起電力信号の電圧レベル)を検知する必要がなく、開閉制御部80は単に、起電力信号の入力が1の駆動部30のみからあったか複数の駆動部30からあったか、を判定すればよい。また、開閉体20の開状態の維持が解除されたことを起電力により検知することができれば、モータ33による逆起電力に限らず、駆動部30に圧電素子を設け、開閉体20による圧電素子への負荷の有無により異常状態を検知してもよい。
【0064】
開閉体20が開状態で停止して、かつ開閉制御部80がスリープ状態であるときの、駆動部30が相対して異常である状態とは、例えば、起電力を発生した駆動部30の起電力と他の駆動部30の起電力との差が所定の範囲よりも大きい場合であり、例えば、いずれかの駆動部30が故障または破損した状態、或いはいずれか駆動部30が開口部材10から外れた状態であって、別の駆動部30で開閉体20の開状態を維持できず開閉体20が急落下しそうな可能性のある状態などの、異常な状態と認識可能な状態である。例えば2つの駆動部30から同等の起電力がそれぞれ生じることは、駆動部30の自縛機能等により開状態を維持しているはずの駆動部から起電力が生じているために、本来的には異常なのであるが、何等かの外力により開閉体が閉方向から開方向へ移動している状況であって、駆動部30の車体および開閉体への接続には異変の無い状況である。そのため、2つの駆動部30から同等の起電力がそれぞれ生じる状況は、無理な力が車体に加わることも無いので相対的に正常な状態と判定することができる。
【0065】
したがって、開閉制御部80は、複数の駆動部30の起電力(本実施の形態では起電力信号の電圧レベル)を比較する際、これらの起電力の差を、所定の相対異常判断値と比較し、その差(起電力差)が相対異常判断値未満である場合に、駆動部30が相対して正常であると判断する。また、起電力差がその相対異常判断値以上ならば、開閉制御部80は、駆動部30は相対して異常であると判断する。
【0066】
開閉制御部80による駆動部30に対する規制制御は、駆動部30に起電力が発生した直後に駆動部30を規制制御して開閉体20の閉方向への移動を規制する。駆動部30の移動の規制は、例えば、駆動部30のモータ33を短絡回路に接続したり、モータ33にパルス波形の逆電圧/逆電流を与えたりする等により行うことができる。この短絡回路は、例えば、開閉制御部80が備える電圧検出回路部60A、60Bとは別に、電圧検出回路部60A、60Bの抵抗4Rに相当するFETをスイッチ操作することによって短絡可能なブリッジ回路を設けてもよい。モータ33Aを規制させた場合、駆動部30Aを介して開閉体20の閉方向の移動が規制され、モータ33Bを規制させた場合、駆動部30Bを介して開閉体20の閉方向の移動が規制される。つまり、駆動部に対して行われる規制としては、制動であっても逆方向への移動であってもよいが、モータへの負荷を考慮して制動であることが好ましい。
【0067】
なお、駆動部30の移動の規制は、モータの電気的な操作による規制に限定されるものではなく、スライド筒部32やスピンドル34等を摩擦力で拘束して駆動部30の移動を規制するといった方法であってもよい。
【0068】
[開閉体開閉装置の開閉体20の動作規制]
図6は、同開閉体開閉装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【0069】
開閉体開閉装置1では、まず、ステップS10において、開閉体20が開状態で停止しているときに、開閉制御部80が、スリープ制御部53からのスリープON指令信号に従って、スリープ状態となる。この状態は、他の制御によって起動状態とならない状態において、いずれかの駆動部30において起電力が発生するまで継続する。(ステップS15で“N”(NO))
【0070】
いずれかの駆動部30において起電力が発生すると(ステップS15で“Y”(YES))、ステップS20において、開閉制御部80は、スリープ状態から起動状態に復帰する。
【0071】
ステップS30において、開閉制御部80は、起電力が発生した駆動部30に対して、開閉体20の閉方向への移動を規制する規制制御を開始する。これにより、開閉体20の閉方向への移動を減速させ、好ましくは停止させる。
【0072】
ステップS40において、開閉制御部80は、規制制御している1の駆動部30の起電力と、他の駆動部30の起電力とを比較する(駆動部の状態の比較)。
【0073】
ステップS50では、開閉制御部80は、規制制御している駆動部30の起電力と、他の駆動部30の起電力との差異が相対して正常であるか否かを判断する。その差異が正常であれば、規制制御している駆動部30の駆動状態が正常であると判断し、ステップS60に移行して、規制制御を解除する。規制制御を解除して、処理を終了する。
【0074】
差異が正常でなければ、ステップS70に移行して、開閉制御部80は、規制制御を継続する。すなわち、開閉体開閉装置1は、起電力が発生した駆動部30に対して既に開始している規制制御を続行して、処理を終了する。なお、規制制御を継続するに際し、警報出力や警告表示などを行ってもよい。
【0075】
[効果]
このように、本実施の形態では、開閉体20が開状態で停止して、かつ開閉制御部80がスリープモード中である場合、開閉体20に外力が加わることで発生した駆動部30の起電力により開閉制御部80が起動状態となる。開閉制御部80は、起動状態になると直ちに、起電力を発生した駆動部30に対して、その駆動を規制する規制制御を実行する。
【0076】
よって、開閉体20が開状態で停止しておりかつ開閉制御部80がスリープ状態となっている状況下で、いずれかの駆動部30の故障により、開閉体20の開状態での停止を維持できない、開閉体20の異常状態が発生した場合に、実際に開閉体20が異常状態であるか否かの判断を待たずに、単独で異常状態である駆動部30に対する規制制御を開始する。これにより、安全を早期に確保できる。そして、実際の異常状態でなかったことが判明した場合は、上述したように速やかに規制制御を解除すればよい。
【0077】
ここで、開閉体20の異常発生場面における、各事象の時間的な前後関係について、
図7を参照ながら説明する。開閉体開閉装置1において、開閉制御部80がスリープ状態のときに開状態停止中の開閉体20に異常状態が発生する(タイミングt0)と、起電力信号の入力等をトリガーとして開閉制御部80が起動状態に復帰することにより、例えば駆動部30Aの起電力発生が把握される(タイミングt1)。すると直ちに、開閉制御部80により、駆動部30Aに対する規制制御が実行開始され(タイミングt2)、これにより、開閉体20の閉方向への移動が規制される。その後、開閉制御部80において、駆動部30Aの駆動状態と、他の駆動部30Bの駆動状態とが比較される(タイミングt3)。開閉体20に異常が発生しているという事実は、その比較結果により把握される(タイミングt4)。開閉体20の異常状態が判明したことを受け、開閉制御部80では、開閉体20の閉方向移動の規制を続行することが決定され(タイミングt5)、既に開始されている規制制御はそのまま継続される。すなわち、実際に、開閉体20が異常状態になった場合、タイミングt4で開閉体20が異常状態であることを実際に把握する前に、駆動部30Aの起電力発生を把握した直後の時点(タイミングt2)から、開閉体20の閉方向への移動に対して規制を開始する。これにより、開閉体20の急落下等が発生する前に、安全に確実に開閉体20の移動を規制できる。
【0078】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0079】
以上、本発明の実施の形態について説明した。なお、以上の説明は本発明の好適な実施の形態の例証であり、本発明の範囲はこれに限定されない。つまり、上記装置の構成や各部分の形状についての説明は一例であり、本発明の範囲においてこれらの例に対する様々な変更や追加が可能であることは明らかである。