特許第6450702号(P6450702)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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6450702ハードディスクドライブに内蔵されたプラッタに記憶されたデータの読取方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6450702
(24)【登録日】2018年12月14日
(45)【発行日】2019年1月9日
(54)【発明の名称】ハードディスクドライブに内蔵されたプラッタに記憶されたデータの読取方法
(51)【国際特許分類】
   G11B 33/14 20060101AFI20181220BHJP
   G11B 33/12 20060101ALI20181220BHJP
   G11B 21/21 20060101ALI20181220BHJP
   G11B 5/02 20060101ALI20181220BHJP
   G11B 5/00 20060101ALI20181220BHJP
【FI】
   G11B33/14 501V
   G11B33/12 313U
   G11B21/21 E
   G11B5/02 Z
   G11B5/00 D
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-75397(P2016-75397)
(22)【出願日】2016年4月4日
(65)【公開番号】特開2017-188178(P2017-188178A)
(43)【公開日】2017年10月12日
【審査請求日】2017年10月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】500097153
【氏名又は名称】AOSテクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100163212
【弁理士】
【氏名又は名称】溝渕 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100156535
【弁理士】
【氏名又は名称】堅田 多恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(74)【代理人】
【識別番号】100201259
【弁理士】
【氏名又は名称】天坂 康種
(72)【発明者】
【氏名】河西 毅
(72)【発明者】
【氏名】菅野 善之
(72)【発明者】
【氏名】小菅 大樹
(72)【発明者】
【氏名】菅原 一徳
【審査官】 中野 和彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−309636(JP,A)
【文献】 特開平10−222945(JP,A)
【文献】 特開2010−003356(JP,A)
【文献】 特開2001−110178(JP,A)
【文献】 特開昭62−071078(JP,A)
【文献】 特開2001−216096(JP,A)
【文献】 特開平11−353819(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 33/14
G11B 5/00
G11B 5/02
G11B 21/21
G11B 33/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
故障により正常に読み取りできない状態となっているハードディスクドライブ内に記憶されたデータの読取方法であって、
前記ハードディスクドライブの筐体の密閉状態を解除する工程と、
前記密閉状態が解除されたハードディスクドライブを容器に密閉収容する工程と、
前記容器内の気圧を調整する気圧調整工程と、
前記容器内のハードディスクドライブに内蔵されたプラッタから読取/書込ヘッドによりデータの正確な読み取りができたことを検知する検知工程と、
前記気圧調整工程中において、データの正確な読み取りができる状態の該気圧を維持する工程と、
前記気圧を維持した状態で、前記プラッタからデータを読み取り、読み取ったデータを記憶媒体へ移し替える工程と、
を備えることを特徴とするハードディスクドライブ内に記憶されたデータの読取方法。
【請求項2】
前記気圧調整工程は、前記容器内の気圧を漸次下げる調整であることを特徴とする請求項1に記載のハードディスクドライブ内に記憶されたデータの読取方法。
【請求項3】
故障により正常に読み取りできない状態となっているハードディスクドライブ内に記憶されたデータの読取方法であって、
前記ハードディスクドライブの筐体の密閉状態を解除する工程と、
前記密閉状態が解除されたハードディスクドライブの筐体を密閉する工程と、
前記筐体に穿設された孔からヘリウムを注入する工程と、
操作装置の接続線を前記ハードディスクドライブに接続する工程と、
前記筐体に穿設された孔からヘリウムを注入する工程中に、前記ハードディスクドライブに内蔵されたプラッタから読取/書込ヘッドによりデータの正確な読み取りができたことを検知する検知工程と、
前記検知工程にてデータの正確な読み取りが開始されたことの検知情報に基づき、前記ハードディスクドライブからデータの正確な読み取りができる状態に気圧を維持する維持工程と、
前記気圧を維持した状態で、前記プラッタからデータを読み取り、読み取ったデータを記憶媒体へ移し替える工程と、
を備えることを特徴とするハードディスクドライブ内に記憶されたデータの読取方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正常に読み取りのできない状態にあるハードディスクドライブ内に内蔵されたプラッタに記憶されたデータを読み取る読取方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にハードディスクドライブは、空気の満たされた筐体内にプラッタを内蔵している。プラッタは、デジタル的に符号化されたデータを、読み書き可能な磁気面を有する円盤状の記録媒体である。ハードディスクドライブの動作時には、内部でプラッタが高速で回転し、片持ちアーム状の読取/書込ヘッドによりデータが読み書きされるようになっている。
【0003】
尚、読取/書込ヘッドは、動作時にプラッタとの接触を避けるために、プラッタの回転に伴う気流により発生する揚力により読取/書込ヘッド自身が僅かに浮き上がるような構造となっている。一方、読取/書込ヘッドにより、プラッタの表面に同心円状に連続的に並んで記録された情報をそれぞれ正確に読み取るには、動作時に読取/書込ヘッドとプラッタの表面との空隙が高い精度で所定空隙に維持されている必要があるため、読取/書込ヘッドは、自身の浮上移動分を考慮した高さに位置するよう設計されている。
【0004】
ところで、近年ハードディスクドライブの記憶容量を向上させる等の目的でプラッタを内蔵する筐体内に通常の空気の代わりにヘリウムを充填し密閉したものがある(例えば、特許文献1)。ヘリウムは空気の7分の1の密度であり、動作時に空気に比例して発生する気流が激減するため、プラッタの回転時の縦ブレが少なく安定するとともに、プラッタの回転による読取/書込ヘッドの浮上移動を小さくできる。そのため、プラッタ同士の間隙を小さくでき、同じ厚みの筐体により多くの枚数のプラッタを近接して搭載可能となり、記憶容量が向上している。
【0005】
上記したように、ハードディスクドライブは精密機器であるため、些細な故障で正常にプラッタに記憶されたデータの読み取りを行えなくなる場合がある。このような物理的な故障に対応する業者としては、筐体を分解しプラッタを別の筐体に移し替える、又は筐体内の読取/書込ヘッド等の故障部品を交換する、などにより故障したハードディスクドライブのすることで正常にプラッタからデータを読み出し、別のハードディスクドライブに移し替えるという作業が一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−84340号公報(第5頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されているようなヘリウムを充填したハードディスクドライブにあっては、上記した故障の対応時に、筐体を開けて密閉状態を解くとヘリウムが流出する。尚、このようなハードディスクドライブは、筐体内へのヘリウムの充填に特殊な技術を要するばかりか、充填するヘリウムの気圧調整にもノウハウを要するため、ひとたび筐体を開けて密閉状態を解いてしまうと、故障に対応する業者ではヘリウムの再充填は困難である。
【0008】
そして、このようなハードディスクドライブにおいては、ヘリウムが充填された筐体内という環境下における読取/書込ヘッドの浮上移動を想定して読取/書込ヘッドの位置が設計されていることから、通常の空気内で動作させた場合、読取/書込ヘッドに係る揚力が設計より高いために読取/書込ヘッドが必要以上に浮上移動してしまい、プラッタ表面を正確に読み取ることができない虞があった。
【0009】
このように、筐体の開封等により、読取/書込ヘッド及びプラッタの周辺環境がひと度変化すると読取/書込ヘッドとプラッタとの設定距離を再現することが困難となるハードディスクドライブは、これまで行われてきた故障対応では、内蔵されたプラッタからデータを読み取ることができないという問題があった。
【0010】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、正常に読み取りのできない状態となっており、かつ読取/書込ヘッド及びプラッタの周辺環境が変化すると読取/書込ヘッドとプラッタとの設定距離を再現することが困難なハードディスクドライブ内に内蔵されたプラッタに記憶されたデータを読み取ることのできる読取方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、本発明のハードディスクドライブに内蔵されたプラッタに記憶されたデータの読取方法は、
故障により正常に読み取りできない状態となっているハードディスクドライブ内に記憶されたデータの読取方法であって、
前記ハードディスクドライブの筐体の密閉状態を解除する工程と、
前記密閉状態が解除されたハードディスクドライブを容器に密閉収容する工程と、
前記容器内の気圧を調整する気圧調整工程と、
前記容器内のハードディスクドライブに内蔵されたプラッタから読取/書込ヘッドによりデータの正確な読み取りができたことを検知する検知工程と、
前記気圧調整工程中において、データの正確な読み取りができる状態の該気圧を維持する工程と、
前記気圧を維持した状態で、前記プラッタからデータを読み取り、読み取ったデータを記憶媒体へ移し替える工程と、
を備えることを特徴としている。
この特徴によれば、気圧調整工程により容器内の気圧が調整されることで、ハードディスクドライブのプラッタ及び読取/書込ヘッドの周辺環境が、筐体の密閉状態が解除される以前の状態に近づき、更に、データの正確な読み取りができたことを検知したことで、周辺環境が筐体の密閉状態が解除される以前の状態と略同環境となったことが検知される。そのため、この状態でハードディスクドライブを動作させることで、プラッタの回転で生じる読取/書込ヘッドに係る揚力が設計通りとなり、読取/書込ヘッドが所定の高さでプラッタ上に位置するように浮き上がり、プラッタに記録されたデータを正確に読み取ることができる。また、ハードディスクドライブからデータの正確な読み取りができる状態が維持されるため、データを正確に再現することができる。
【0013】
前記気圧調整工程は、前記容器内の気圧を漸次下げる調整であることを特徴としている。
この特徴によれば、気圧調整中に読取/書込ヘッドがプラッタ表面に接触することを防止することができる。
【0014】
前記課題を解決するために、本発明のハードディスクドライブに内蔵されたプラッタに記憶されたデータの読取方法は、
故障により正常に読み取りできない状態となっているハードディスクドライブ内に記憶されたデータの読取方法であって、
前記ハードディスクドライブの筐体の密閉状態を解除する工程と、
前記密閉状態が解除されたハードディスクドライブの筐体を密閉する工程と、
前記筐体に穿設された孔からヘリウムを注入する工程と、
操作装置の接続線を前記ハードディスクドライブに接続する工程と、
前記筐体に穿設された孔からヘリウムを注入する工程中に、前記ハードディスクドライブに内蔵されたプラッタから読取/書込ヘッドによりデータの正確な読み取りができたことを検知する検知工程と、
前記検知工程にてデータの正確な読み取りが開始されたことの検知情報に基づき、前記ハードディスクドライブからデータの正確な読み取りができる状態に気圧を維持する維持工程と、
前記気圧を維持した状態で、前記プラッタからデータを読み取り、読み取ったデータを記憶媒体へ移し替える工程と、
を備えることを特徴としている。
この特徴によれば、再度密閉された筐体にヘリウムが注入されることで、ハードディスクドライブのプラッタ及び読取/書込ヘッドの周辺環境が、筐体の密閉状態が解除される以前の状態に近づき、更に、データの正確な読み取りができたことを検知したことで、周辺環境が筐体の密閉状態が解除される以前の状態と略同環境となったことが検知される。そのため、この状態でハードディスクドライブを動作させることで、プラッタの回転で生じる読取/書込ヘッドに係る揚力が設計通りとなり、読取/書込ヘッドが所定の高さでプラッタ上に位置するように浮き上がり、プラッタに記録されたデータを正確に読み取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施例1におけるハードディスクドライブ内に記憶されたデータの読取装置の構成を示す図である。
図2】(a)は、実施例1における密閉状態のハードディスクドライブを示す図であり、(b)は、同様に、密閉状態を解いた状態のハードディスクドライブを示す図である。
図3】実施例1における容器を示す図である。
図4】実施例1における操作装置を示す図である。
図5】実施例1における容器内にハードディスクドライブを収容する様子を示す図である。
図6】実施例1における容器内の真空引きを行っている様子を示す図である。
図7】実施例1における容器にヘリウムを供給する様子を示す図である。
図8】実施例1における容器内のハードディスクドライブを読取動作させた状態を示す図である。
図9】実施例1における容器内のヘリウムを脱気する様子を示す図である。
図10】読取動作処理を行っていることを示す表示がディスプレイに表示された状態を示す図である。
図11】報知手段を示す表示がディスプレイに表示された状態を示す図である。
図12】実施例2におけるハードディスクドライブ内に記憶されたデータの読取方法の手順を示す図である。
図13】実施例3におけるハードディスクドライブ内に記憶されたデータの読取装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係るハードディスクドライブ内に記憶されたデータの読取方法及び読取装置を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例1】
【0020】
図1は、読取装置1の構成を示す図である。読取装置1は、密閉状態が解除された状態のハードディスクドライブHを収容可能な密閉された容器2と、容器2内に収容されたハードディスクドライブHと接続可能な接続端子9a(図3参照)を容器2内に有し、ハードディスクドライブHを操作可能な容器2の外部に配置される操作装置3と、を備えている。
【0021】
ハードディスクドライブHは、図2に示されるように、筐体本体4Aと蓋体4Bとからなる筐体4内にプラッタ5と、プラッタ5を駆動するモータ(図示せず)と、プラッタ5に対して読み書きを行う読取/書込装置6(読取と書込との少なくとも一方を行うことができる装置)とを備えている。尚、このハードディスクドライブHは、筐体4内に空気よりも比重の軽い気体(ここではヘリウムとする)が満たされており、何らかの故障によりプラッタ5に記憶されたデータを正常に読み取りできない状態となっているものである。読取/書込装置6は、プラッタ5上と、プラッタ5上から退避させた位置とを移動可能なアーム状の読取/書込ヘッド6Aと、該読取/書込ヘッド6Aを回動させる図示しないマグネットを用いた駆動部6Bと、読取/書込ヘッド6Aで読み取ったデータを増幅するプリアンプと12とを備えている。
【0022】
元々ハードディスクドライブHには、筐体4内にヘリウムが所定の気圧で充填されており、所定の空気抵抗をプラッタ5が受けることで、プラッタ5の回転数及び、プラッタ5の回転により生じる気流が読取/書込ヘッド6Aに対して所定の揚力を発生させる。そして、読取/書込ヘッド6Aの上面側の気流と下面側の気流とにより読取/書込ヘッド6Aが所定の高さに維持されることで、プラッタ5に記憶されたデータを正常に読取りが可能となっている。
【0023】
図3に示されるように、容器2は、金属製の円筒形状で上側に開口部2aを有する容器本体2Aと、容器本体2Aの開口部2aを閉塞する蓋体2Bと、から構成されている。蓋体2Bの容器本体2Aの開口部2aとの対向面には図示しないシール材が固着されており、開口部2aとの閉時には容器2が完全に密閉されるようになっている。容器本体2Aの側面には密閉状に取り付けられた覗き窓2bが設けられている。
【0024】
蓋体2Bには、容器2内の気圧を計測する気圧計11と、蓋体2Bを貫通する接続プラグ7A,7Bを有している。接続プラグ7A,7Bにはそれぞれ接続プラグ7A,7Bを開閉する弁装置8A,8Bが設けられている。
【0025】
また、蓋体2Bには、後述する容器2内に収容されるハードディスクドライブHの端子と接続される接続端子9aを一方端部に有する接続線9が挿通されている。尚、この接続線9は蓋体2Bに形成された孔(図示せず)を挿通され、その長手方向の一部が孔に対して密閉状に固着されている。
【0026】
接続線9における容器2の外部に露出した他方端部は操作装置3と接続されている(図4参照)。操作装置3は、所謂パソコンであり、パソコン本体3aと、パソコン本体3aと接続されたディスプレイ3bと、キーボード、マウス等を有しており、接続線9で互いに接続されたハードディスクドライブHの動作や停止の操作を行うことができるとともに、ハードディスクドライブH(図2参照)内のプラッタ5から読取/書込装置6が読み取ったデータをパソコン本体3aに接続された記憶媒体に記憶する等の機能を有する。
【0027】
この読取装置1を利用して、ハードディスクドライブH内のプラッタ5に記憶されたデータを読み取る手順としては、まず、ハードディスクドライブHの蓋体4Bを外し、故障箇所を点検し、必要に応じて読取/書込装置6等の故障部品の交換等の修理を行う。このとき、筐体4が開けられた時点で筐体4内に充填されていたヘリウムが流出した状態となる。この修理工程ではプラッタ5と読取/書込ヘッド6Aとの周辺環境が、設計時の気圧のヘリウムでないという要因を除き、ハードディスクドライブHが正常に機能する状態とする。尚、故障部品の交換等では問題が解決しないと判断される場合は、プラッタ5を取り外し、正常に動作する別のハードディスクドライブに、取り外したプラッタ5を移載する等の対応が行われる。
【0028】
続いて、図5に示されるように、故障の問題が解決したハードディスクドライブHは、再度蓋体4Bが取付けられた状態で容器本体2A内に収容し、接続線9の接続端子9aをハードディスクドライブHに接続する。その後、蓋体2Bにより開口部2aを閉じ、容器2を完全に密閉する(収容工程)。このとき、ハードディスクドライブHは、ハードディスクドライブHの外部の気体がハードディスクドライブH内に侵入できるように、筐体本体4Aと蓋体4Bとを完全に密閉されていない状態となっている。
【0029】
次に、図6に示されるように、接続プラグ7Bに脱気装置10の脱気管16を接続し、接続プラグ7Bの弁装置8Bを開操作するとともに脱気装置10を駆動させ、気圧計11を確認しながら容器2内を真空引きした後、弁装置8Bを閉操作する。脱気装置10は、図示しない真空ポンプと外真空ポンプに流体的に並列接続された流量調整弁により構成され、容器2内の気圧を調整するものである。また、真空ポンプ及び流量調整弁の容器2側には、それぞれ電磁弁が設けられている。
【0030】
次いで、図7に示されるように、接続プラグ7Aにヘリウムを供給する供給管15を繋ぎ、弁装置8Aを開操作する。使用者は、気圧計11を確認しながら、容器2内が所定の気圧になるまでヘリウムの充填を行い、所定の気圧になったことを確認して弁装置8Aを閉操作する。このとき、ハードディスクドライブHに接続された操作装置3は、ハードディスクドライブHが読取動作を開始しない状態としておく。詳しくは、容器2内が所定の気圧になるまで駆動部6Bにより回動させて読取/書込ヘッド6Aをプラッタ5上から退避させた位置に位置させる(図5参照)待機状態としておく。
【0031】
容器2内が所定の気圧となったことが確認された場合、操作装置3はハードディスクドライブHの読取動作処理を行う。この読取動作処理の開始により、駆動部6Bにより回動させて読取/書込ヘッド6Aがプラッタ5上に移動され(図8参照)、プラッタ5に記憶されたデータの読取りが連続的に試みられる。この読取動作処理に並行して、図9に示されるように、脱気管16が接続された、接続プラグ7Bの弁装置8Bを開操作するとともに、脱気装置10(気圧調整装置)を駆動させ、容器2内の気圧を徐々に下げる(気圧調整工程)。
【0032】
図10は、読取動作処理中の操作装置3のディスプレイ3bの表示を示した図である。容器2内の気圧は、脱気装置10の駆動により徐々に下がり、これに伴いプラッタ5と読取/書込ヘッド6Aとの距離が徐々に近づき、容器2内におけるプラッタ5及び読取/書込ヘッド6Aの周辺環境が、蓋体4Bが開けられて筐体4の密閉状態が解除される以前の元のハードディスクドライブHの筐体4内と略同環境となったときに、読み取りに成功する。尚、ここでいう元のハードディスクドライブHの筐体4内と略同環境という表現は、厳密には密閉状態が解除される以前のプラッタ5の回転により生じる気流が同じとはいえないが、プラッタ5と読取/書込ヘッド6A周辺の雰囲気が、元のハードディスクドライブHの筐体4内におけるプラッタ5と読取/書込ヘッド6A周辺の雰囲気と略同環境となるという意味で用いている。
【0033】
また、筐体4内に密封された気体と同じ気体(ここではヘリウム)を用いると、気流以外に筐体4内のプラッタ5の軸受等に与える影響が少なく好ましい。
【0034】
操作装置3は、読取/書込装置6によりプラッタ5の磁気データを読み取り、読み取られた複数の磁気データを解析することで、磁気データの集合で構成されたデータの復元が可能であることが判断できたことを基準に、正確な読み取りが開始されたことを検知するようになっている(検知工程)。
【0035】
詳しくは、気圧調整によりプラッタ5と読取/書込ヘッド6Aとの周辺環境が筐体4の密閉状態が解除される以前の元のハードディスクドライブHの筐体4内と略同環境となったことで、読取/書込ヘッド6Aが設計時の浮上量で浮き上がった状態、即ち読取/書込ヘッド6Aとプラッタ5表面との距離が設計時の所定距離となるため、操作装置3によりプラッタ5に記憶されたデータが正確に読取られることになる。
【0036】
ここでは図示しないが、脱気装置10は接続線19により操作装置3と接続され、操作装置3からの操作で脱気装置10の駆動運転の調整が可能となっており、上記した読取りが成功した場合、パソコン本体3aは、容器2内の気圧が読取りに成功した状態で維持される駆動運転となるように脱気装置10を制御する(維持工程)。この制御方法は種々考えられるが、例えば、脱気装置10に内蔵された電磁弁を閉操作する態様であってもよいし、脱気装置10内のモータの回転数を下げて、ポンプの吸気能力を容器2内と均衡させる態様であってもよい。
【0037】
更に、パソコン本体3aは読取りが成功すると、図11に示されるように、ディスプレイ3bに読取りが成功したことを示す画面が表示される。この画面にはディスプレイ3bにデータコピーボタン20と、気圧を記録ボタン21とが合わせて表示される。尚、ディスプレイ3bに表示される読取りが成功したことを示す画面は、使用者に読取りが成功したことを報知することが目的であり、この報知手段としては、例えばディスプレイ3bへの表示に代えて音や光による報知であってもよい。
【0038】
使用者によりデータコピーボタン20が操作されると、パソコン本体3aは、ハードディスクドライブH内のプラッタ5に記憶されたデータを読取り、読み取ったデータをパソコン本体3aに接続された記憶媒体に移し替える処理を行う。
【0039】
使用者により気圧を記録ボタン21が操作されると、パソコン本体3aは、読取りに成功した状態での容器2内の気圧等の情報を自身の持つ記憶媒体内の記録テーブルに記録するとともに、記憶が完了した画面(図示せず)を表示する処理を行う。この気圧等の情報の記録時には、使用者が気圧計11を直接確認して記録テーブルに記入する態様に限らない。例えば、気圧計11と操作装置3とを接続し、操作装置3が正確な読み取りが開始されたことを検知したことに基づいて、気圧計11からその時点での気圧情報を受け取り、当該気圧情報を記録テーブルに自動的に記録する処理を行うようにしておけば、使用者による記録ボタン21の操作によらずに、読取りに成功した状態の気圧を正確に記録することができる。尚、記録テーブルには、気圧の数値情報の他に、読取対象のハードディスクドライブHの型番や、メーカーの情報等が対応付けられて記録される。
【0040】
また、操作装置3は、記録テーブル内のデータを用いて脱気装置10の駆動運転を制御することができるようになっており、ハードディスクドライブの読取時に、当該ハードディスクドライブと同機種の読取成功時のデータが記録テーブルに記録されている場合、第2の気圧調整工程時に、記録された気圧等のデータを用いて自動的に気圧を調整でき、読取りの作業効率を高めることができる。
【実施例2】
【0041】
次に、実施例2に係る読取方法につき、図12を参照して説明する。尚、前記実施例と同一構成で重複する構成の説明を省略する。
【0042】
まず、ハードディスクドライブHの蓋体4Bを外し、故障箇所を点検し、必要に応じて読取/書込装置6等の故障部品の交換等の修理を行う。このとき、蓋体4Bに孔30を穿設しておく(図12(a)参照)とともに、孔30を塞ぐように弾性体である皮膜部材31を固定する。続いて、故障の問題が解決したハードディスクドライブHは、再度蓋体4Bを取付けた状態で、筐体本体4Aと蓋体4Bとの接合部分がシール材(図示せず)にて密閉される(図12(b)参照)。
【0043】
そして、図12(c)に示されるように、供給管15の先端に設けられた針状の注入部40を孔30が位置する部分の皮膜部材31に突き刺し、供給管15から筐体4内にヘリウムを流入させる。
【0044】
前述した正確な読み取りが開始されたことの検知情報に基づき、ヘリウムの流入を止め、注入部40を引き抜くとともに、図12(d)に示されるように、皮膜部材31に穿設された孔31aをシール材32にて密閉する。これによれば、容器を用意せずともハードディスクドライブHのプラッタ及び読取/書込ヘッド周辺の雰囲気を、密閉状態が解かれる前の元のヘリウムが満たされた状態に近づけることができる。
【0045】
また、針状の注入部40を皮膜部材31に突き刺してヘリウムを注入することから、孔31aを小さくできるとともに、皮膜部材31の弾性復元力にて孔31aが閉じられるため、注入部40を引き抜いてから、シール材32にて密閉するまでの間にヘリウムが外部に流出することが抑制される。尚、筐体本体4Aと蓋体4Bとの接合部分を密閉するシール材と孔を密閉するシール材は、それぞれ、データの読み取りを行う短期間だけ密閉状態を維持できればよいため、高い密閉性を必要としない。
【実施例3】
【0046】
次に、実施例3に係る読取装置につき、図13を参照して説明する。尚、前記実施例と同一構成で重複する構成の説明を省略する。
【0047】
図13に示されるように、容器25は下端部に開口25aを有する側断面視下向き略コ字状の箱体である。容器25はガラス等の透光性を有する素材で形成されており、容器25の側面25dにおける開口25aより天面25b側には係止片25c,25cが形成されている。係止片25c,25cの上には、上下に貫通する孔26aを複数有する載置台26が取り外し自在に支持されている。容器25の側面25dに設けられた孔25eには、ヘリウムを供給する供給管15が接続されている。
【0048】
読み取り方法としては、ハードディスクドライブHを載置台26に載置し、載置台26が略水平である状態で容器25内にヘリウムを流入させる。容器25内に流入されたヘリウムは、比重が小さいことから載置台26の孔26aを通って容器25内の天面25b側に滞留することになる。
【0049】
これによれば、密閉状態を解く前の元のヘリウムが略大気圧に近い場合には、ヘリウムが滞留した天面25b側に載置されたハードディスクドライブHのプラッタ及び読取/書込ヘッド周辺の雰囲気が、密閉状態を解く前の元のヘリウムが満たされた状態に近づくことになり、プラッタに記録されたデータを正確に読み取ることができる。また、このような構造とすることで、容器25に密閉性の高い構造を必要とせず、簡素な構成とすることができる。
【0050】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0051】
前記実施例においては、容器2内にヘリウムを所定の気圧となるまで供給した後、ヘリウムを脱気し、密閉状態を解く前の元のハードディスクドライブHの筐体4内と同じ気圧とすることで、プラッタ5に記憶されたデータを読取り可能としているが、この態様に限られない。
【0052】
例えば、容器2内には空気を満たしておき、ハードディスクドライブHの収容後に、脱気装置10により容器2内の気圧を所定値以下に下げた後、容器2に接続された加圧ポンプ(気圧調整装置)により読取動作処理に並行して、容器2に接続された加圧ポンプ(気圧調整装置)により容器2内に徐々に空気を供給していく態様であってもよい。
【0053】
これによれば、容器2内のプラッタ5と読取/書込ヘッド6A周辺の空気の量が調整され、密閉状態を解く前の元のヘリウムが満たされた状態のハードディスクドライブHの筐体4内と同じ抵抗をプラッタ5が受けるようになることで、読取/書込ヘッド6Aが設計時の浮上量で浮き上がり、読取りが可能となる。
【0054】
また、前記実施例では、脱気装置10を利用して容器2内の気圧を減圧しているが、これに限らず、例えば容器を蛇腹形状等の容量を拡大変形及び縮小変形可能な構造とすることで、拡大または縮小時に容器内が減圧されるようにしてもよい。この場合、容器自体が気圧調整装置として機能することとなる。
【0055】
また、上述した脱気装置10を駆動させて容器2内の気圧を徐々に下げる気圧調整工程は、読取動作処理の開始後に、脱気装置10の流量調整弁と電磁弁とは操作装置3から操作可能に接続されたアクチュエータ(図示せず)により自動的に制御されて行われるが、これに限らず、使用者が手動で脱気装置10の駆動制御を行ってもよいし、脱気装置10を利用する代わりに、弁装置8Aまたは8Bの開閉調整及び開度調整を行うことで容器2内の減圧を行ってもよい。この場合、弁装置8Aまたは8Bが気圧調整装置として機能することとなる。
【符号の説明】
【0056】
1 読取装置
2 容器
2A 容器本体
2B 蓋体
2a 開口部
2b 窓
3 操作装置
3a パソコン本体
3b ディスプレイ
4 筐体
5 プラッタ
6 読取/書込ヘッド
7A,7B 接続プラグ
8A,8B 弁装置
9 接続線
9a 接続端子
10 脱気装置
11 気圧計
15 供給管
16 脱気管
19 接続線
20 データコピーボタン
21 記録ボタン
H ハードディスクドライブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12
図13