(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6450771
(24)【登録日】2018年12月14日
(45)【発行日】2019年1月9日
(54)【発明の名称】肩補綴組立体
(51)【国際特許分類】
A61F 2/40 20060101AFI20181220BHJP
【FI】
A61F2/40
【請求項の数】13
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2016-547206(P2016-547206)
(86)(22)【出願日】2014年10月13日
(65)【公表番号】特表2016-532534(P2016-532534A)
(43)【公表日】2016年10月20日
(86)【国際出願番号】CH2014000149
(87)【国際公開番号】WO2015051476
(87)【国際公開日】20150416
【審査請求日】2017年9月28日
(31)【優先権主張番号】1746/13
(32)【優先日】2013年10月13日
(33)【優先権主張国】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】517027457
【氏名又は名称】41ヘミヴァース アーゲー
【氏名又は名称原語表記】41Hemiverse AG
(74)【代理人】
【識別番号】100134430
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 卓士
(74)【代理人】
【識別番号】100198960
【弁理士】
【氏名又は名称】奥住 忍
(72)【発明者】
【氏名】オヴェール・トム
(72)【発明者】
【氏名】フリッグ・ロベール
【審査官】
石田 智樹
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2004/0193282(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0004733(US,A1)
【文献】
特表2003−517337(JP,A)
【文献】
特開2000−185062(JP,A)
【文献】
特開平08−206142(JP,A)
【文献】
特開2007−125372(JP,A)
【文献】
特表昭60−500657(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上腕骨ステムと、第1関節型結合手段と、第2関節型結合手段を含む実質的にディスク形状のベース部と、を有する肩補綴組立体において、
前記第1関節型結合手段と前記第2関節型結合手段とは、前記上腕骨ステムを前記ベース部に連結し、
前記ベース部は、少なくとも3個の結合自由度によって前記上腕骨ステムに移動可能に結合され、
ディスク形状の内部インレーは、前記ベース部のディスク形状の外側ベース内に設けられ、
前記ベース部は、1つの回転自由度が遮断されているボール−アンド−ソケット連結部を含む前記内部インレーによって前記上腕骨ステムに移動可能に結合され、
前記内部インレーは、回転軸を含み、前記ベース部の前記外側ベースに回転可能に結合され、
前記ボール−アンド−ソケット連結部の前記ボールヘッドは、球形セグメントの形態であり、前記ボール−アンド−ソケット連結部のソケットは、前記ボールヘッドの形状および大きさに対して、少なくとも部分的に相補的な形状および大きさを有することにより、前記ボール−アンド−ソケット連結部のボールヘッドは、フォームフィット方式によって前記ボール−アンド−ソケット連結部のソケットに固定され、
前記ボール−アンド−ソケット連結部のソケットは、前記ボールヘッドの最大直径よりも小さい直径および前記ソケットの最大直径よりも小さい直径を有し、前記ボールヘッドを前記ソケットに挿入して、前記ボールヘッドを前記ソケット内で回転させることにより、前記ボールヘッドがロックされる大きさを有する開口をさらに有し、
前記内部インレーの回転軸からオフセットされて位置する肩補綴組立体。
【請求項2】
前記ベース部の外縁は、多角形形状か、または不規則形状である請求項1に記載の肩補綴組立体。
【請求項3】
前記ベース部の結合は、3個の回転自由度を有する請求項1に記載の肩補綴組立体。
【請求項4】
前記ベース部は、前記ボール−アンド−ソケット連結部によって前記上腕骨ステムに移動可能に結合される請求項3に記載の肩補綴組立体。
【請求項5】
前記ディスク形状のベース部の円周対前記ディスク形状のベース部の周辺厚さの比が、少なくとも18:1である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の肩補綴組立体。
【請求項6】
前記ボール−アンド−ソケット連結部の前記第2関節型結合手段は、球形関節キャビティまたはソケットを備え、前記球形関節キャビティは、溝を有し、前記ソケットは、チャネルを有し、
前記溝または前記チャネルは、前記内部インレーの回転軸と前記ボール−アンド−ソケット連結部の回転中心とを連結する仮想線に平行にまたは垂直に配向される請求項1に記載の肩補綴組立体。
【請求項7】
前記ボールヘッドは、球形キャップの形態であり、前記上腕骨ステムを前記ボールヘッドと連結する連結インターフェースは、前記ボールヘッドのベース上に配置され、前記連結インターフェースは、前記ボールヘッドのベースの中心からオフセットされて位置する請求項1に記載の肩補綴組立体。
【請求項8】
前記開口の前記直径は、前記ボールヘッドの面の間の距離より大きい請求項7に記載の肩補綴組立体。
【請求項9】
前記ベース部は、前記少なくとも3個の結合自由度の回転中心と前記ベース部のベース領域との間の距離が15mm未満になるような寸法を有する請求項1乃至8のいずれか1項に記載の肩補綴組立体。
【請求項10】
前記ボールヘッドと前記上腕骨ステムとの間に配置される実質的にZ形状のアダプターを含む請求項3に記載の肩補綴組立体。
【請求項11】
前記アダプターは、2個のテーパ端部を含み、前記テーパ端部の中心軸は、一方向にオフセットされ、互いに平行に配向されるか、または一方向にオフセットされて互いに鋭角で配向される請求項9に記載の肩補綴組立体。
【請求項12】
前記ベース部の縁部の少なくとも一部分は、増加された厚さを含む請求項1乃至11のいずれか1項に記載の肩補綴組立体。
【請求項13】
近位面付きのベース部および円周付きの外縁を含み、前記近位面は、高さまたは深さがある凹面、凸面または円錐面を有し、前記円周対高さの比または円周対深さの比は、少なくとも15:1である請求項1乃至12のいずれか1項に記載の肩補綴組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肩関節成形術を行うための手術装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の肩は、鎖骨、肩甲骨および上腕骨の3個の骨よりなり、回旋腱板を形成する多数の筋肉、靭帯および腱をさらに含む。肩の骨間の関節は、肩関節を成す。「肩関節」は、通常、上腕骨頭が関節窩で関節接合される関節である関節窩上腕関節を示す。
【0003】
関節領域は、骨の端部上に白色軟骨、いわゆる関節軟骨を有し、これは、骨間の低摩擦動きまたは関節を容易にする。肩は、腕と手の広い範囲の運動に十分な程度に動きやすいことが求められ、また、持ち上げ、押し、引き等の運動が可能な程度に充分に安定的ではなければならない。このような安定性と移動性の結合によって、関節表面に大きい筋肉反応力が発生する。
【0004】
長期間の過度な負荷、関節炎または外傷に起因して、苦痛と硬直を引き起こす軟骨摩耗が起こり得る。回旋腱板欠陥に起因して、関節は、その安定性ひいては機能性を失い得る。
【0005】
肩置換手術は、不安定的、非機能的および痛みを伴う肩関節を治療するための選択肢の1つである。関節置換手術は、関節炎の痛みを軽減し、日常生活のために肩関節の機能を回復しようとするものである。肩置換外科手術において、関節窩上腕関節は、補綴インプラントによって部分的にまたは全体的に置換される。
【0006】
肩置換の4つの一般的な方法、すなわち全体肩置換、リバース型肩置換、半補綴物を利用した置換および双極性補綴物を利用した置換が本技術分野で知られている。
【0007】
全体肩置換は、ボール−アンド−ソケット関節(ball and socket joint:球関節)の置換を伴う。人工ヘッドは、上腕骨頭を置換し、PE関節窩ソケット型部品は、関節窩上の軟骨を置換する。全体肩置換により、回旋腱板を含む肩筋肉、靭帯および腱が良好な機能を示す場合に存分に機能する。
【0008】
回旋腱板の機能が低い場合には、リバース型補綴物を使用する。リバース型補綴物は、関節窩を置換する金属ヘッドまたはボールセクションを備える。関節ソケットは、上腕骨に移植される。ソケットとヘッドを逆にする方法は、上腕骨を遠くに置き、回転中心を内側に置く。これにより、三角筋が回旋腱板欠陥を補うことができる。この方法によって、良好な機能が達成される。
【0009】
半補綴物は、関節の半分のみを人工面に置換する。上腕骨頭を切除し、金属部品に置換する。この金属部品は、自然の関節窩に対して関節として機能する。
【0010】
さらに最近では、双極性補綴物が肩関節成形術に導入されて使用されている。双極性補綴物は、関節窩と直接結合する半球形上腕骨頭および上腕骨頭と上腕骨シャフトとの間の第2ボール−イン−ソケット(ball-in-socket)連結部を含む。
【0011】
双極性補綴物および半補綴物の両方は、機能的要求が低い患者の肩の回旋腱板の関節症を治療するのに使用される。
【0012】
肩置換の別の補綴物は、本技術分野において知られている。例えば、特許文献1(Hansen Regan)は、関節窩部品と上腕骨部品とを含む、回旋腱板関節成形術治療の肩置換装置を開示する。関節窩部品は、略凹形状またはカップ形状であり、その部品を肩甲骨の最も側方にある突出部のうち少なくとも2個、好ましくは3個、すなわち肩峰突起、烏口突起および関節窩に取り付けるための構造を含む。関節窩部品は、骨に穿孔される2つの部材を含む。第3位置で、関節窩部品は、骨セメントによって骨に固定される。上腕骨部品は、ステムシステム(stem system)によって上腕骨内に固定される略球形または半球形の部材を含む。
【0013】
特許文献2(Swanson Todd)は、全体肩関節成形方法および装置を開示する。関節窩部品は、肩甲骨に固定され、鎖骨と肩峰突起とに隣接して位置するように構成された外面を有する本体を含む。外面は、特に肩甲骨に接触する領域に位置し、組織の内方成長物質の少なくとも1つの部分を含む。第1段階で、関節窩部品は、組織と骨との内方成長によって達成される永久的な固定の前に、ねじ、釘(杭)、ボルト、ワイヤ等によって肩甲骨に一時的に固定される。
【0014】
特許文献3(Sulzer Orthopedics Ltd.)は、カップ形状ベアリング付きの関節窩部材を有する肩補綴物を開示する。関節窩部材は、骨セメントによって骨に固定された釘によって肩の骨に固定される。
【0015】
特許文献4(Biomet Manufacturing Corp.)は、平面ベース(planar base)と上腕骨ステム(humeral stem)とを含む肩関節に対するインプラント組立体を開示する。インプラント組立体は、平面ベースと上腕骨ステムとの間に配置されるアダプターをさらに含む。アダプターは、例えば、2つの異なる長さの軸を含み、相互に関連する平面ベースと上腕骨ステムとの変位を可能とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0079963号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2009/002923号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第1314407号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2009/019262号明細書
【発明の概要】
【0017】
本発明の目的は、安定性と機能性とが増加された、初めに言及した技術分野に属する肩補綴物を提供することにある。
【0018】
本発明の解決策は、請求項1の特徴部によって特定される。本発明によれば、肩補綴組立体は、第1関節型結合手段を含む上腕骨ステムを含む。また、肩補綴組立体は、第2関節型結合手段を含む実質的にディスク形状のベース部を含む。第1および第2関節型結合手段は、ステム部をベース部に連結する。ディスク形状のベース部の円周とディスク形状のベース部の周辺厚さとの比は、少なくとも18:1である。
【0019】
円周と周辺厚さとの少なくとも18:1の比によって、ベース部は、フットプリント(footprint)に比べて相対的に薄い。このようなベース部を設けることによって、協働する関節型結合手段の回転中心が肩の自然な回転中心に比べて遠位内側にシフトされる。その結果、三角筋は、例えば、このような回転中心のシフトによって惹起される棘下筋の欠陥を補償するように、腕の全可動域にわたって活性的でなければならない。これにより、肩補綴物の安定性および機能性が増加する。
【0020】
好ましくは、ベース部の近位端部は、関節窩腔の表面と結合するように構成され、ベース部の外縁は、烏口突起および肩峰突起と結合するように構成される。
【0021】
本出願の全体にわたって使用されるように、「近位」および「遠位」という用語は、本体に関連した特徴部の位置を説明するために使用される。手足と関連して、特に、腕と関連して、これらの用語は、本体に対する手足の付着点に関する特徴部の位置を定義する。
【0022】
また、「内側」および「側方」という用語は、身体の内外軸に関連して特徴部の位置を定義するために使用される。すなわち、「内側」である特徴部は、本体の中心に向けて配向され、「側方」である特徴部は、本体から離れるように配向される。
【0023】
第1および第2関節型結合手段の両方の協働によって、上腕骨ステム部が前記ベース部に対して少なくとも一方向に移動し得る。
【0024】
「周辺厚さ」という用語は、ベース部の円周領域における厚さに関するものであると理解される。好ましくは、ベース部の厚さは、ベース部の全体表面積にわたって不変である。しかし、ベース部の一部領域は、厚さを増加または減少することができる。
【0025】
「ディスク形状」という用語は、ベース部の形状よりは円周に関連して比較的厚みが薄いベース部の全体外観に関するものである。しかし、好ましくは、ベース部は、丸い形状である。最も好ましくは、ベース部は、円形状または楕円形状である。
【0026】
代案として、ベース部の外縁は、多角形の形状であるか、または不規則な形状である。これは、烏口突起または肩峰突起等の解剖学的特徴部とさらに良好に接触するように構成された形状を有するベース部を設けることができるようにする。さらに、多角形の形状または不規則な形状は、関節窩腔の任意の回転に対してより効果的な働きを保障する。
【0027】
好ましくは、ベース部は、少なくとも3個の結合自由度によってステム部に移動可能に結合され、3個の回転自由度を有する。すなわち、第1関節型結合手段と第2関節型結合手段とは、例えば少なくとも3個の自由度を有する結合部を形成するように構成される。
【0028】
「自由度」という用語は、後述する応用分野において結合が許容する独立した相対運動の個数を示すものであると理解される。例えば、軸に沿う線形運動または回転軸を中心とする回転は、いずれも、別個の自由度を構成する。したがって、2つの別個の回転軸を中心とする回転を可能にする結合は、2個の自由度を含む。
【0029】
結合は、好ましくは、3個の回転自由度を有し、すなわち、結合は、3個の別個の回転軸を中心とするベース部に対するステム部の回転を可能にする。さらに好ましくは、これら3個の回転軸は、いずれも、互いに直交するように配置される。
【0030】
好ましくは、ベース部は、ボール−アンド−ソケット連結部によってステム部に移動可能に結合される。ボール−アンド−ソケット連結部は、少ない個数の部品を含み、よって、製造に際して安価で容易であり、かつ高い水準の信頼性を提供する。また、ボール−アンド−ソケット連結部は、動きの最大自由度を許容する。
【0031】
代案として、好ましくは、ベース部は、ジンバル−マウント(gimbal-mount)結合部によってステム部に移動可能に結合される。ジンバル−マウント結合部は、ボール−アンド−ソケット連結部の場合のように、強制除去が不可能な長所を有する。
【0032】
好ましくは、ベース部は、1つの回転自由度が遮断されたボール−アンド−ソケット結合部を含むインレー(an inlay)によってステム部に移動可能に結合され、インレーは、回転軸を含み、ベース部に回転可能に結合される。
【0033】
したがって、ボール−アンド−ソケット結合部は、インレーを通じてベース部上に回転可能に配置される。インレーは、好ましくは、ベース部上に回転可能に配置された円形板の形態で提供される。
【0034】
ボール−アンド−ソケット結合部の1つの回転自由度が遮断されているので、結合部は、2つの回転自由度のみを含む。しかし、インレーがベース部に対して1つの回転自由度を有しているので、ステム部は、ベース部に対して3個の回転自由度を維持する。
【0035】
好ましくは、ボール−アンド−ソケット結合部は、ベース部に対するインレーの回転軸に対して偏心配置される。これにより、2つの並進自由度においてベース部に対するステム部の制限された運動が可能となる。
【0036】
ボール−アンド−ソケット連結部の第2関節型結合手段は、好ましくは、球形関節キャビティまたはソケットを含む。これにより、球形関節キャビティは、溝を含み、ソケットは、チャネルを含み、溝またはチャネルは、インレーの回転軸とボール−アンド−ソケット結合部の回転中心を連結する仮想線に平行、または垂直に配向される。
【0037】
このように配向された溝またはチャネルを設けることによって、上腕骨ステムが力を受ける場合、インレーにおけるねじれモーメントの発生を低減する。
【0038】
好ましくは、ボール−アンド−ソケット連結部は、球形キャップの形態よりなるボールヘッドを含み、上腕骨ステムを実質的に球形のボールヘッドと連結するための連結インターフェースが球形キャップのベース上に配置され、連結インターフェースは、球形キャップのベースの中心からオフセットされて位置する。
【0039】
本出願で、「球形キャップ」は、平面によって切断された球の一部を構成するものと理解される。その断面を球形キャップの「ベース」と言う。
【0040】
ベースの中心に対して偏心された位置に結合インターフェースを設けることによって、ベース部に対する2つの線形運動度において、結合インターフェースの一部制限された線形運動を付与することができ、よって、これに結合された上腕骨ステム部の一部制限された線形運動を付与することができる。
【0041】
好ましくは、連結インターフェースは、対応する上腕骨ステムのメールテーパ(male taper)が挿入され得るフィメールテーパ(female taper)の形態よりなるものである。
【0042】
好ましくは、ボールヘッドは、球形セグメントの形態で設けられ、ボール−アンド−ソケット結合部のソケットは、球形セグメントの最大直径より小さいが、球形セグメントのベース間の距離より大きい直径の開口を有する。
【0043】
本出願で使用されるように、「球形セグメント」は、実質的に平行な2つの平面によって切断された球である。このような球形セグメントは、ベースと称する2つの断面を含む。さらに好ましくは、切断面は、いずれも、同一の距離をもってボールヘッドの中心から離隔され、すなわち、球形セグメントのベースは、ボールヘッドの中心に対して対称的に配列される。
【0044】
ボールヘッドを球形セグメントとして設けることによって、ボールヘッドをソケット内に固定することができる一方で、ボールヘッドをソケット内に挿入するか、ソケットから除去する可能性を維持することができる。特に、ボールヘッドは、ベースが開口に対して直角となる第1配向でソケット内に挿入される。ベースのうち1つが開口に平行に配向されるように、ボールヘッドを90度回すことによって、ボールヘッドがソケット内に固堅に固定される。
【0045】
好ましくは、ベース部は、結合部の回転中心とベース部のベース領域との間の距離が15mm未満になるような寸法を有する。
【0046】
本出願で、「ベース領域」という用語は、関節窩腔の表面と結合し、烏口突起および肩峰突起をベース領域の縁部と接触させるためのベース部の表面を命名するのに使用される。したがって、ベース領域は、第2結合手段から離れるように位置する。
【0047】
このような「フラットな」ベース部を設けることによって、本技術分野において知られているような補綴物と比べて、本発明の肩補綴物の回転中心をさらに遠位内側に置くことができる。これは、棘下筋の欠陥を補償する全可動域にわたって三角筋を活性化するのにさらに役立つ。
【0048】
好ましくは、肩補綴物は、ボールヘッドと上腕骨ステム部との間に配置される実質的にZ形状のアダプターをさらに含む。
【0049】
アダプターによって、上腕骨が、結合部の回転中心に対してさらに遠位側方に配置される。また、外科医は、適切なアダプターを選択することによって、肩補綴物を患者に対して個別的に適応させることができる。
【0050】
好ましくは、アダプターは、2個のテーパ連結部を含み、テーパ連結部の中心軸は、一方向にオフセットされて、互いに平行に配向されるか、または一方向にオフセットされて、互いに鋭角で配向される。
【0051】
これにより、異なる類型のアダプターを提供することができ、例えば、任意のある患者に対して、患者の解剖学的構造に最適な形状を有する1つのアダプターを選択することができる。したがって、本発明による肩補綴組立体は、患者の特徴に適合させることができる。
【0052】
好ましくは、ベース部の縁部の少なくとも一部分は、厚みが増している。厚みが増している領域を設けることによって、一旦肩補綴組立体が移植されれば、肩峰突起および烏口突起等の所定の骨に対する接触面が増加するので、骨上の応力分布がさらに良好になる。
【0053】
好ましくは、肩補綴物は、近位面付きのベース部および円周付きの外縁を含み、近位面は、高さまたは深さがある凹面、凸面、または円錐面を有し、円周対高さの比または円周対深さの比は、少なくとも15:1、好ましくは20:1より大きい。
【0054】
特徴部の他の有利な実施例と組み合わせは、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図面は、実施例を説明するのに使用されるものである。
【
図1a】本発明による肩補綴組立体の第1実施例を示す図である。
【
図1b】本発明による肩補綴組立体の第1実施例を示す図である。
【
図1c】本発明による肩補綴組立体の第1実施例を示す図である。
【
図2a】
図1a〜
図1cによる肩補綴組立体の位置設定のための相対的骨解剖構造を示す図である。
【
図2b】
図1a〜
図1cによる肩補綴組立体の位置設定のための相対的骨解剖構造を示す図である。
【
図5】
図1a〜
図1cによる本発明の肩補綴組立体のためのZ形状のアダプターを示す図である。
【
図6a】
図1a〜
図1cによる本発明の肩補綴組立体のための上腕骨ステムを示す図である。
【
図6b】
図1a〜
図1cによる本発明の肩補綴組立体のための上腕骨ステムを示す図である。
【
図7a】
図1a〜
図1cによる本発明の肩補綴組立体のためのボールヘッドを示す図である。
【
図7b】
図1a〜
図1cによる本発明の肩補綴組立体のためのボールヘッドを示す図である。
【
図7c】
図1a〜
図1cによる本発明の肩補綴組立体のためのボールヘッドを示す図である。
【
図8a】
図1a〜
図1cによる本発明の肩補綴組立体のための組み立て段階を示す図である。
【
図8b】
図1a〜
図1cによる本発明の肩補綴組立体のための組み立て段階を示す図である。
【
図8c】
図1a〜
図1cによる本発明の肩補綴組立体のための組み立て段階を示す図である。
【
図8d】
図1a〜
図1cによる本発明の肩補綴組立体のための組み立て段階を示す図である。
【
図8e】
図1a〜
図1cによる本発明の肩補綴組立体のための組み立て段階を示す図である。
【
図8f】
図1a〜
図1cによる本発明の肩補綴組立体のための組み立て段階を示す図である。
【
図8g】
図1a〜
図1cによる本発明の肩補綴組立体のための組み立て段階を示す図である。
【
図9】ベース部とボールヘッドの間の組立体の断面図である。
【
図10】異なるZ形状のアダプターを示す図である。
【
図11】ジンバル−マウント結合部の形態よりなる置換結合器具を利用する肩補綴組立体の変形を示す図である。
【
図12】骨の内方成長領域を有するベース部の変形を示す図である。
【
図13】不規則な形状のベース部の追加実施例を示す図である。
【
図14】厚さ増加領域を有するベース部の一実施例を示す図である。
【
図15a】本発明による肩補綴組立体の他の一実施例の構成要素を示す図である。
【
図15b】本発明による肩補綴組立体の他の一実施例の構成要素を示す図である。
【
図15c】本発明による肩補綴組立体の他の一実施例の構成要素を示す図である。
【
図18a】ボール−アンド−ソケット結合部の置換実施例を示す図である。
【
図18b】ボール−アンド−ソケット結合部の置換実施例を示す図である。
【
図19a】
図18aおよび
図18bによる置換ボール−アンド−ソケット結合部の素子の間の相互作用を示す図である。
【
図19b】
図18aおよび
図18bによる置換ボール−アンド−ソケット結合部の素子の間の相互作用を示す図である。
【
図19c】
図18aおよび
図18bによる置換ボール−アンド−ソケット結合部の素子の間の相互作用を示す図である。
【
図19d】
図18aおよび
図18bによる置換ボール−アンド−ソケット結合部の素子の間の相互作用を示す図である。
【
図19e】
図18aおよび
図18bによる置換ボール−アンド−ソケット結合部の素子の間の相互作用を示す図である。
【
図19f】
図18aおよび
図18bによる置換ボール−アンド−ソケット結合部の素子の間の相互作用を示す図である。
【
図20】本発明による肩補綴組立体の追加実施例を示す図である。
【
図21a】
図20による肩補綴組立体のベース部とボールヘッドの詳細図である。
【
図21b】
図20による肩補綴組立体のベース部とボールヘッドの詳細図である。
【
図22】
図20および
図21に示されたような実施例によるインレーに対するチャネルの配向を示す図である。 図面で、同一の構成要素には、同一の参照符号が与えられている。
【発明を実施するための形態】
【0056】
図1a〜
図1cを参照すれば、本発明の肩補綴組立体100が示されている。
図1aは、上腕骨ステム10、ボールヘッド14、アダプター15およびいわゆる関節窩ディスクであるディスク形状のベース部13を含む肩補綴組立体100の分解図を示す。ベース部13は、集積された関節インレー12を有する外側金属ベース11を含む。関節インレー12は、外側金属ベース11に対して回転可能である。
【0057】
図1bおよび
図1cは、組み立てられた肩補綴組立体100の異なる2つの斜視図である。実質的に球形のボールヘッド14は、ベース部13の球形キャビティまたはソケット17内に挿入されて、関節として機能する。これにより、ソケット17は、関節インレー12内に位置する。ボールヘッド14とソケット17とは、ベース部13に対する3個の回転自由度を中心とする上腕骨ステム10の動きを可能にするボール−アンド−ソケット連結部を形成する。
【0058】
図示した実施例で、ベース部13は、回転中心軸Aを有し実質的に円形である。回転中心軸Aは、ソケット17の中心と一致する。外側金属ベース11は、研磨されたまたは処理されたベース領域16を含み、骨の内方成長を防止する。ベース領域16は、関節窩腔に対して配置される。
【0059】
本発明の変形例によれば、補綴組立体100は、2つのモノブロック部品で構成される。すなわち、補綴組立体100は、球形ボールヘッド14を含む上腕骨ステム10およびソケット17を含むベース部13で構成される。例えば、患者の特定の解剖学的構造に対する補綴組立体100の個別的な要素の空間的関係の適応が容易になるように、または、例えば、標準一次またはリバース型補綴物を前述した本発明の補綴組立体100に変換するように、
図1aに示したように、補綴組立体100が、要素である上腕骨ステム10、アダプター15、ボールヘッド14、関節インレー12および外側金属ベース11によるモジュール型構造なので、多数の部品を提供することができる。
【0060】
図2aおよび
図2bを参照すると、上腕肩甲関節内に肩補綴組立体100の位置決めをするための関連する骨の解剖学的構造が示されている。
図2aは、上腕骨頭55が切除された肩甲骨51と上腕骨50とを示す。
図2bに示したように、肩甲骨51の骨の一部、すなわち烏口突起52、肩峰突起54および関節窩53は、外側金属ベース11によってベース部13と結合し、ここで、上腕骨ステム部10は、上腕骨50に固定される。ベース部13は、烏口突起52、肩峰突起54および関節窩53によって拘束されるが、堅固に固定されずに、関節包(joint capsule)内で程度の差こそあれ浮いている。回旋腱板、三角筋および肩被膜の頭蓋側と内側とに向かう力は、骨構造に対して肩補綴組立体100を引っ張っり、適当な位置に維持する。
【0061】
図1a〜
図1cならびに
図2aおよび
図2bに関する説明を参照すれば、ベース部13の形状は円形である。日常生活のための腕の動きの最中に、回転モーメントおよび力によって非固定形ベース部が関節窩53上で回転する。しかし、ベース部13の外径とソケット17の回転中心との距離が一定なので、ボール−アンド−ソケット連結部の回転中心の位置は一定である。
【0062】
図3は、肩補綴組立体100の側面図を示す。同図には、ボールヘッド14とソケット17との間のボール−アンド−ソケット連結部の回転中心19が示されている。ベース部13の円周の直径Dとベース領域16に対する回転中心19の距離cとの比率によって、回転中心19が自然な肩に比べてさらに遠位化および内側化される。その結果、三角筋は、運動の全体範囲にわたって活性化され、棘下筋の欠陥を補償する。
【0063】
図4aおよび
図4bは、ベース部13の斜視図および側面図を示す。ベース部13は、外側金属ベース11および関節インレー12を含む。ソケット17を形成する球形キャビティは、関節インレー12の中心に配置される。
図4bに示された実施例において、ボール−アンド−ソケット関節の回転中心19は、ベース部13の近位端部からソケット17の直径の略半分の距離に配置される。また、ソケット17は、ポケット18と交差する。ポケット18は、ベース部13に対して実質的に垂直であり、少なくともソケット17の最大円周に到逹する深さを有する。また、ポケット18の幅は、ソケット17の境界円周20より非常に小さい。
【0064】
図5は、実質的に平行な軸を有する第1テーパ端部21および第2テーパ端部22を含むZ形状のアダプター15を示す。両テーパ端部21、22は、テーパの端部で凹部23、24を有する。凹部23、24は、
図7でさらに詳しく記述されているように、反回転面(anti−rotation face)として機能する。
【0065】
図6aおよび
図6bは、上腕骨ステム10を示す。上腕骨ステム10は、シャフト部25、近位端部26およびフィメールテーパ連結部27の底面に結合された反回転突出部28を有するフィメールテーパ連結部27を含む。
【0066】
図7a〜
図7cは、少なくとも第1切断部29を有する全体球に基づく外側形状を含むボールヘッド14を示し、第1切断部29は、半球より非常に小さく、これによって、面33を有する球または球形キャップであるボールヘッドの全体形状になる。ボールヘッドは、第1切断部29と実質的に平行な第2切断部30を含む。第1切断部29は、半球より非常に小さい。その結果として形成されるボールヘッド14の形状は、球形外側形状または球形セグメントを有するディスクである。第1切断部29は、アダプター15にまたは上腕骨ステム10に取り付けられる取付手段31を含む。図示した実施例において、取付手段31は、テーパ連結部の底面に結合された反回転突出部32を有するフィメールテーパ連結部の形態となっている。また、取付手段31は、面33の中心から距離Wで面33上に偏心位置し、他の方向に比べて、定義された方向にボール−アンド−ソケット関節のためのさらに広い運動範囲を提供する。
【0067】
図8a〜
図8gは、異なる部品を補綴組立体100に組み立てる段階を示す。第1段階で、関節インレー12を外側金属ベース11にはめ込んで、ベース部13を形成する。
図8aに示した第2段階で、ボールヘッド14を関節インレー12のソケット17内に挿入する。ボールヘッド14の両側面をポケット18の側壁に対して垂直に配向させることによって、ボールヘッド14を挿入する。
図8bに示したように、第1端部位置に到逹すれば、ボールヘッド14とソケット17とは、同心整列される。次いで、
図8cに示したように、ボールヘッド14を、取付手段31がポケット18を通じて接近可能な第2端部位置に90度回す。
【0068】
図8dに示した後続段階で、アダプター15を第1テーパ端部21を有するボールヘッド14の取付手段31内に配置する。これにより、第1テーパ端部21の凹部23が、取付手段31の反回転突出部32と噛み合う。
図8eに示したように、一旦アダプター15が取付手段31内に完全に挿入されれば、
図6aおよび
図6bに示したように、ボールヘッド14が組み立て配向に充分に到逹する程度に回転することが防止される。したがって、ボールヘッド14がフォームフィット連結部によってソケット17内に固定される。
【0069】
肩補綴組立体100の運動範囲を超過する腕の過度な動きによって、上腕骨ステム10がベース部13と衝突する。これは、最新式設計で両側インプラント部品の脱臼を引き起こす可能性のあるモメンタム(momentum)をもたらす。ボールヘッド14とソケット17との間の能動的嵌合は、本発明に係る肩補綴組立体100におけるこのような脱臼発生を防止する。
【0070】
図8fに示した後続段階で、上腕骨ステム10をアダプター15の第2テーパ端部22と組み立てる。これにより、第2テーパ端部22の第2凹部24が反回転突出部28にはめ込まれる。
【0071】
反回転面において、テーパ連結部は、回転力を伝達するように設計される。整合される面のフォームフィットは、各テーパ連結部の軸を中心とする任意の回転モーメントに抵抗する。
【0072】
肩補綴組立体100の最終構成は、
図8gに示されている。
【0073】
図9は、ベース部13とボールヘッド14との間の組立体を断面図として示す。同図に示したように、ボールヘッド14は、ソケット17の縁部の下方に位置する領域60でフォームフィット方式でソケット17内に固定される。
【0074】
図10に示したように、異なるアダプター15a〜15dは、肩補綴組立体100の個別的な要素の空間的関係を特定患者の解剖学的構造に適応させることができる。Xは、第1テーパ端部21の中心軸と第2テーパ端部22の中心軸との間の距離であり、Lは、アダプター15の長さであり、αは、第1テーパ端部21の中心軸と第2テーパ端部22の中心軸との間の角度であり、可変である。このような変形例によれば、ボールヘッド14の回転中心19に関して上腕骨および上腕骨ステム10を個別的に遠位化および片側化することができる。
【0075】
図11は、代替結合機構、すなわち、ジンバル−マウント結合部40付きの本発明の変形例を示す。ベース部13は、外側金属ベース42に回転可能に結合された円形内側インレー41を含む。また、第1回転軸44を有する内側リング43は、円形内側インレー41に回転可能に結合される。中心部46は、第2回転軸45を通じて内側リング43に回転可能に結合される。中心部46は、上腕骨ステム10またはアダプター15に連結する連結手段47をさらに含む。内側インレー41の回転軸は、外側金属ベース42に対して実質的に垂直に配向され、第1回転軸44または第2回転軸45と交差しない。偏心位置は、関節窩ディスクの直径を増加させることなく、回転中心をさらに遠位化することを容易にする。
【0076】
図12は、3個の骨の内方成長領域61.1、61.2、61.3を含むベース部13の変形例を示す。骨の内方成長領域61.1、61.2、61.3は、例えば、関節窩53、烏口突起52および肩峰突起54と結合するようにベース部13上に位置する。
【0077】
図13は、ベース部13の追加実施例を示す。本実施例で、ベース部13は、不規則な形状であり、烏口突起52と肩峰突起54との間に位置する突出部63を含む。突出部63は、ベース部13の回転を防止する。
【0078】
ベース部13の他の変形例が
図13に示されている。ベース部13は、厚さが増加した2つの領域、すなわち、烏口突起52と結合する第1結合面64および肩峰突起54と結合する第2結合面65を含む。2つの結合面64、65は、骨上のさらに良好な応力分布を可能にする。
【0079】
図15a〜
図15cは、本発明による肩補綴組立体110の他の一実施例の部品を示す。本の実施例で、ボールヘッド81は、
図15aに示されたように、中心テーパ連結部82および2つのカットオフ面83、84を含む。ベース部89は、
図15bに示したように、実質的に円形形状であり、薄いベース部90および実質的に中心に位置するメールテーパ91を有する。
図15cは、キャビティ86およびテーパ端部88付きのステム87を含むステム延長部85を示す。
【0080】
図16aおよび
図16bは、
図15a〜
図15cに関連して説明したような部品を使用する肩補綴組立体110を示す。第1組み立て段階で、ボールヘッド81は、ステム延長部85のキャビティ86内に挿入される。次の段階で、ベース部89がボールヘッド81に連結される。最後に、上腕骨ステム10がステム延長部85に連結される。
【0081】
図16aおよび
図16bに示した肩補綴組立体110が移植された状態が
図17に示されている。上腕骨ステム10は、上腕骨50に挿入される。ベース部89は、関節窩53、肩峰突起54および烏口突起52と結合する。
【0082】
図18aおよび
図18bは、ボール−イン−ソケット関節結合部に対する代替実施例を示す。
図18aは、実質的に円形のベース部120を示す。ベース部120は、内側インレー121と外側金属ベース122とを含む。内側インレー121は、例えば、外側金属ベース122に対して実質的に垂直な第4回転軸126を中心として回転できるように、外側金属ベース122に回転可能に結合される。内側インレー121は、交差ポケット124付きの球形形状のキャビティ127を含む。球形関節キャビティ127は、ベース部120の中心からオフセットされて位置する。内側インレー121は、ノーズ123をさらに含む。ノーズ123は、好ましくは、直径125が2mm超過かつ15mm未満の円形または半球形である。ノーズ123は、球形キャビティ127の中心を向き、ノーズ123の中心軸は、球形キャビティ127の中心と交差する。
【0083】
図18bは、ボールヘッド130を示す。ボールヘッド130は、好ましくは、フィメールテーパの形態よりなる連結インターフェース131を含む。また、ボールヘッド130は、円形の最大円周に沿った溝132を含む。溝132は、側壁133を有し、側壁133の間の距離は、直径125以上である。溝132の深さ134は、ノーズ123の長さ以上である。
【0084】
図19a〜
図19cは、
図18a〜18bにより説明した要素間の相互作用を示す。ボールヘッド130は、ボールヘッド130の面がポケット124の側壁と整列されるように、当該面を配向させることによって、内側インレー121の球形関節キャビティ127に組み立てられる。このような方法で、
図19aに示したように、ノーズ123が溝132内に挿入される。
図19bに示した第1端部位置に到逹すると、ボールヘッド130は、約90度だけ回されて、
図19cに示したような第2端部位置になる。この第2端部位置で、連結インターフェース131は、ポケット124を通じて接近可能である。これにより、
図19dに示したように、アダプター15が連結インターフェース131内に導入される。最後に、
図19eに示したように、上腕骨ステム10がアダプター15と連結される。
【0085】
ノーズ123は、ボール−アンド−ソケット連結部の1つの回転自由度を除去する。ボールヘッド130は、ノーズ123の中心軸を中心として、そして溝132に沿ってだけ回転できる。ベース部120に実質的に垂直な回転自由度は、ノーズ123と溝132の側壁133との間の相互作用によって遮断される。この遮断された回転自由度は、外側金属ベース122と内側インレー121との間の回転可能な結合によって補償される。第4回転軸126がボールヘッド130の残りの2個の回転軸と交差しないので、前記軸を中心とするボールヘッドの回転は、
図1〜
図3に示されたような肩補綴組立体100の実施例に比べて遠くに位置する。このような回転軸の遠位シフティングが
図19fに示されている。
【0086】
図20は、本発明に係る肩補綴組立体140の追加実施例を示す。ベース部150は、外側金属ベース152に回転可能に結合された内側インレー151を含む。また、ボールヘッド160は、内側インレー151のソケット153内に移動可能に配置される。ボールヘッド160とソケット153とは、ボール−アンド−ソケット連結部を形成する。アダプター15は、ボールヘッド160に連結され、さらに上腕骨ステム10に取付けられる。
【0087】
ソケット153は、ボールヘッド160上に設けられた2個の突起161、162が結合されるチャネル154を含む。チャネル154および突起161、162は、マッチングされる半球形状を有する。チャネル154および突起161、162を設けない場合、ボールヘッド160がソケット内で3個の回転軸を中心として自由に回転できる。しかし、2個の突起161、162がチャネル154内でフォームフィット結合されるので、2個の突起161、162をチャネル154内に結合することで、1つの軸を中心とするボールヘッド160の回転運動が制限される。これによって、ボール−アンド−ソケット連結部の動きが1つの自由度に制限される。図示した実施例において、チャネル154は、2個の突起161、162と同一の形状および幅を有し、よって、遮断された回転軸を中心とする任意の動きが防止される。代案として、チャネル154は、2個の突起161、162の幅より少し大きい幅を有する。このような代替実施例において、ボールヘッド160は、遮断された軸を中心として小さい動きを実行することができ、これによって、ソケット153内でのボールヘッド160の制限された「揺動」が可能になる。
【0088】
2つの他の回転軸を中心とするボールヘッド160の回転運動は、チャネル154内における2個の突起161、162のスライド運動およびチャネル154内における2個の突起161、162の回転運動によって可能になる。
【0089】
図21aは、
図20に示した肩補綴組立体140のベース部150の詳細図である。ボールヘッド160と2個の突起161、162との形状を同図から明確に認識することができる。図示したように、ボールヘッド160は、ドーム形状、すなわち、平面によって切断された球の形状となっている一方で、2個の突起161、162は、半球の形状となっている。
【0090】
図21bは、
図20に示した肩補綴組立体140のボールヘッド160の詳細図である。図示したように、チャネル154は、半球形状を有し、大円に沿ってソケット153上に配置される。これにより、チャネル154は、エッジからエッジまでソケット153に伸びる。
【0091】
図22は、内側インレー151に対する、チャネル軸158によって表現されるチャネル154の配向を示す。図示した実施例において、チャネル154は、内側インレー151の回転軸156とボール−アンド−ソケット連結部の回転中心156とを連結する仮想線157に垂直に配向される。言い換えれば、仮想線157とチャネル軸158との間の角度が90度である。
【0092】
(図示しない)追加実施例において、チャネル軸158は、仮想線157に平行である。言い換えれば、仮想線157とチャネル軸158との間の角度が0度である。
【0093】
当業者が認識するように、
図18と
図19に示した実施例による溝132の配向は、同様に、仮想線157に平行にまたはその仮想線に垂直に配向される。