(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本開示の実施形態について説明する。添付の図面では、機能的に同じ要素は、同じ番号で表示される場合がある。以下の説明において、「軸方向」は内視鏡の挿入部の軸方向、「前側」は被検体側、「後側」は内視鏡の操作部側をそれぞれ示す。
【0019】
<内視鏡システムの構成>
図1は、本実施形態に係る内視鏡システム1を示す概略構成図である。
図1では、図面を簡潔に示す便宜上、装置同士の接続を矢印で示している。
【0020】
本実施形態の内視鏡システム1は、たとえば、モニタ2と、プロセッサ3と、内視鏡100と、を備えている。
【0021】
内視鏡100は、被検体に挿入される挿入部110と、この挿入部110の一部を湾曲させる操作部130とを備えている。詳細については後述するが、本実施形態の内視鏡100は、挿入部110の少なくとも一部が、樹脂製のチューブ110aによって構成されている。また、チューブ110aは、このチューブ110aを構成する樹脂によって形成された複数の管路110bを有している。
【0022】
より具体的には、挿入部110は、たとえば、撮像部120を含む先端部111と、操作部130によって湾曲される湾曲部112と、この湾曲部112と操作部130との間の可撓部113とを有している。そして、湾曲部112と可撓部113の少なくとも一部が、チューブ110aによって構成され、チューブ110aを構成する樹脂の管路110bを除く空孔率は、たとえば0%以上80%以下である。
【0023】
内視鏡100の挿入部110を構成するチューブ110aの複数の管路110bは、たとえば、撮像用の信号ケーブルを挿通させるケーブル管路を含んでいる。また、チューブ110aの複数の管路110bは、たとえば、鉗子などの処置具を挿通させるための処置具管路、送気を行うための送気管路、送水を行うための送水管路および副送水管路を含んでいる。また、チューブ110aの複数の管路110bは、たとえば、照明用のライトガイドファイババンドルを挿通させる照明管路を含むこともできる。
【0024】
また、図示を省略するが、内視鏡100は、たとえば、挿入部110を構成するチューブ110aの管路110bに挿通された剛性材と、剛性材に挿通されて湾曲部112の湾曲機構に接続されたアングルワイヤとを備えている。剛性材としては、たとえば、ガイドチューブや、金属製の密巻コイルを用いることができる。操作部130は、アングルワイヤを操作可能に設けられている。なお、湾曲機構としては、たとえば、公知の内視鏡の挿入部を湾曲させる公知の湾曲機構を適用することができる。
【0025】
また、内視鏡100は、操作部130から延出するコネクタケーブル140と、このコネクタケーブル140の端部に設けられたコネクタ部150とを備えている。コネクタ部150は、プロセッサ3に接続される。プロセッサ3は、内視鏡100から入力された画像データを処理し、映像信号を生成するための装置である。モニタ2は、プロセッサ3に接続されている。モニタ2は、内視鏡100によって撮像され、プロセッサ3によって生成された被検体の内部画像を表示する。
【0026】
<内視鏡>
図2は、
図1に示す内視鏡100の全体構成を示す模式的な斜視図である。以下、前述の内視鏡100の構成について、
図2を参照してより詳細に説明する。なお、内視鏡100における操作部130の位置や形状は、図示の都合上、実際の位置や形状と異なる場合がある。
【0027】
内視鏡100は、前述のように、挿入部110と、この挿入部110の一部を湾曲させる操作部130と、備えている。挿入部110は、たとえば、撮像部120を含む先端部111と、操作部130によって湾曲される湾曲部112と、この湾曲部112と操作部130の間の可撓部113とを備えている。
【0028】
本実施形態の内視鏡100は、前述のように、挿入部110の少なくとも一部が、複数の管路110bを有する樹脂製のチューブ110a、たとえば、柔軟性および可撓性を有するマルチルーメンチューブによって構成されていることを特徴としている。より具体的には、湾曲部112と可撓部113の少なくとも一部は、複数の管路110bを有する樹脂製のチューブ110aによって構成され、チューブ110aを構成する樹脂の空孔率は、たとえば0%以上80%以下である。
【0029】
なお、湾曲部112の樹脂の平均空孔率は、たとえば、可撓部113の樹脂の平均空孔率よりも大きくてもよい。ここで、ある部分の樹脂の平均空孔率とは、その部分を構成する樹脂全体の空孔率の平均値を意味する。
【0030】
図1および
図2に示す例において、挿入部110の先端部111は、撮像部120よって構成されている。しかし、挿入部110の先端部111をチューブ110aによって構成し、先端部111のチューブ110a内に撮像部120を配置するようにしてもよい。
【0031】
また、本実施形態の内視鏡100は、たとえば、シングルユース部Sと、リユース部Rとを備えるシングルユース型の内視鏡である。シングルユース部Sは、たとえば挿入部110の少なくとも一部を構成するチューブ110aを含み、内視鏡100の一回の使用毎に交換される。リユース部Rは、たとえば、撮像部120を含み、内視鏡100の一回の使用毎に回収され、洗浄および滅菌消毒されて再使用される。
【0032】
シングルユース部Sは、挿入部110を構成するチューブ110aのみであってもよいが、チューブ110aを含む挿入部110全体であってもよく、チューブ110aを含む挿入部110の一部であってもよい。また、シングルユース部Sは、操作部130、コネクタケーブル140、及びコネクタ部150を含んでもよい。また、湾曲部112は、可撓部113と一体に一本のチューブ110aによって構成されていてもよいが、可撓部113を構成するチューブ110aと別のチューブ110aによって構成されていてもよい。シングルユース部Sの各部は、コストを低減する観点から、可能な限り樹脂製であることが好ましい。
【0033】
リユース部Rは、撮像部120のみであってもよいが、チューブ110aを除く挿入部110の一部を含んでもよい。たとえば、リユース部Rは、湾曲部112を含んでもよい。また、リユース部Rは、操作部130、コネクタケーブル140、およびコネクタ部150の一部または全部を含んでもよい。
【0034】
チューブ110aを構成する樹脂は、全体が非多孔質樹脂、すなわち多孔質樹脂ではないソリッド樹脂であってもよいが、少なくとも一部が多孔質樹脂であってもよい。チューブ110aは、たとえば、樹脂材料の押出成形によって製作することができる。
【0035】
チューブ110aを構成する多孔質樹脂としては、たとえば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン:Polytetrafluoroethylene)、ePTFE(expanded PTFE)、PE(ポリエチレン:Polyethylene)、HDPE(高密度ポリエチレン:High Density Polyethylene)、PP(ポリプロピレン:Polypropylene)などを用いることができる。チューブ110aを構成する非多孔質樹脂としては、たとえば、PU(ポリウレタン:Polyurethane)、PP(ポリプロピレン:Polypropylene)、PE(ポリエチレン:Polyethylene)、ポリアミド(Polyamide)などを用いることができる。
【0036】
チューブ110aを構成する多孔質樹脂の管路110bを除く空孔率は、たとえば、0%から80%の範囲にすることができる。多孔質樹脂の空孔率のばらつきは、たとえば、±5%程度である。チューブ110aの製造を容易にする観点から、多孔質樹脂の空孔率は、15%以上であることが好ましい。湾曲部112に多孔質樹脂のチューブ110aを用いる場合、多孔質樹脂の空孔率は、たとえば、20%以上80%以下に設定することができる。
【0037】
より具体的には、湾曲部112における多孔質樹脂の空孔率は、多孔質樹脂の材質と外径に応じて、たとえば、次のように設定することができる。ここで、多孔質樹脂の材質は、PTFEであるとする。この場合、湾曲部112を構成するチューブ110aの外径と、多孔質樹脂の空孔率は、以下の表1のように設定することができる。これにより、湾曲部112の柔軟性および可撓性を向上させ、湾曲部112を湾曲操作に適した曲げ剛性にすることができる。
【0039】
挿入部110を構成するチューブ110aは、たとえば、撮像部120と操作部130との間で、常時、軸方向に圧縮された状態であってもよい。これにより、チューブ110aの密度を向上させ、挿入部110の曲げ剛性を向上させることができる。
【0040】
また、挿入部110を構成するチューブ110aは、チューブ110aの軸方向または径方向において、多孔質樹脂の空孔率が変化していてもよい。たとえば、挿入部110を構成するチューブ110aは、チューブ110aの径方向において、多孔質樹脂の空孔率が変化していてもよい。より具体的には、チューブ110aの径方向において、チューブ110aの外表面の空孔率は、チューブ110aの中心の空孔率より小さくてもよい。
【0041】
また、チューブ110aの径方向において、中心から外表面へ向けて空孔率を連続的または段階的に低下させてもよい。なお、チューブ110aの径方向において、外表面から中心へ向けて空孔率を連続的または段階的に低下させてもよい。なお、段階的な空孔率の変化は、空孔率の非連続的な変化を含む。ここで、空孔率の非連続的な変化は、空孔率が変化している部分の間に空孔率が変化していない部分を有することや、空孔率がステップ状に変化することを含む。
【0042】
また、チューブ110aは、径方向外側の外表面およびその近傍の部分に、空孔率が0%の非多孔質樹脂層を有してもよい。これにより、挿入部110の外表面から液体が浸透するのを防止することができる。また、チューブ110aは、管路110bの内壁面およびその近傍の部分に、空孔率が0%の非多孔質樹脂層を有してもよい。これにより、挿入部110の管路110bの内壁面から液体が浸透するのを防止することができる。
【0043】
また、挿入部110の基端部である操作部130側の端部から挿入部110の先端部111へ向けたチューブ110aの軸方向において、チューブ110aを構成する多孔質樹脂の空孔率を、連続的または段階的に変化させてもよい。たとえば、前述のように、チューブ110aの軸方向において、湾曲部112の樹脂の平均空孔率を、たとえば、可撓部113の樹脂の平均空孔率よりも大きくしてもよい。
【0044】
なお、軸方向における段階的な空孔率の変化は、径方向における場合と同様に、空孔率の非連続的な変化を含む。ここで、空孔率の非連続的な変化は、空孔率が変化している部分の間に空孔率が変化していない部分を有することや、空孔率がステップ状に変化することを含む。また、挿入部110の操作部130に接続される部分のチューブ110aの材質は、たとえば、空孔率が0%の非多孔質樹脂にしてもよい。
【0045】
図3Aから
図3Fは、挿入部110を構成するチューブ110aの曲げ剛性の例を示すグラフである。
図3Aから
図3Fに示すグラフにおいて、縦軸は、チューブ110aの曲げ剛性であり、横軸は、挿入部110の先端からの距離である。
【0046】
図3Aに示す例では、チューブ110aの多孔質樹脂の空孔率を、湾曲部112が設けられた先端から操作部130に接続された基端まで、ほぼ一定の割合で連続的に減少させている。これにより、挿入部110を構成するチューブ110a単体の曲げ剛性が、先端から基端まで、ほぼ一定の割合で増加している。
【0047】
また、前述のように、挿入部110を構成するチューブ110aの管路110bにアングルワイヤを挿通させるガイドチューブが挿入されている場合、ガイドチューブは、チューブ110aよりも高い曲げ剛性を有してもよい。この場合、ガイドチューブは、挿入部110の湾曲部112よりも基端側、すなわち湾曲部112よりも操作部130側で、チューブ110aの管路110bに挿入されていてもよい。
【0048】
図3Bに示す例では、チューブ110aは、
図3Aに示す例と同様に、多孔質樹脂の空孔率が先端から基端までほぼ一定の割合で連続的に減少しているが、挿入部110の湾曲部112よりも基端側の可撓部113で、管路110bに4本のガイドチューブが挿入されている。ガイドチューブの曲げ剛性は、チューブ110aの曲げ剛性よりも高い。そのため、
図3Bに示す例では、挿入部110の湾曲部112よりも基端側の部分において、
図3Aに示す例よりもチューブ110aの曲げ剛性が高くなっている。なお、チューブ110aの曲げ剛性を向上させることを目的として、ガイドチューブ以外に、チューブ110aよりも曲げ剛性が高い剛性材を、チューブ110aの管路110bに挿入してもよい。
【0049】
図3Cに示す例では、チューブ110aは、多孔質樹脂の空孔率を、湾曲部112が設けられる先端部111側において相対的に高い一定の値とし、湾曲部112よりも基端側の可撓部113で、先端側から基端側まで連続的に減少させている。これにより、チューブ110a単体の曲げ剛性が、湾曲部112において相対的に低い一定の値となり、湾曲部112よりも基端側の可撓部113で先端側から基端側まで、連続的に増加している。
【0050】
図3Dに示す例では、チューブ110aは、多孔質樹脂の空孔率が先端から基端まで、二段階にわたって段階的に減少している。これにより、挿入部110を構成するチューブ110a単体の曲げ剛性が、先端から基端まで、二段階にわたって段階的に増加している。
【0051】
図3Eに示す例では、チューブ110aは、先端から基端まで非多孔質樹脂、すなわちソリッド樹脂によって構成され、空孔率は0%である。そのため、挿入部110を構成するチューブ110a単体の曲げ剛性は、先端から基端まで一定で、チューブ110aの材質が多孔質樹脂である場合よりも高くなっている。
【0052】
図3Fに示す例では、チューブ110aは、
図3Eに示す例と同様に、先端から基端まで非多孔質樹脂によって構成され、
図3Bに示す例と同様に、管路110bにアングルワイヤのガイドチューブが挿入されている。また、
図3Fに示す例では、ガイドチューブ以外にも、挿入部110を構成するその他の部材が管路110bに挿通および配置され、挿入部110が構成されている。そのため、
図3Fに示す例では、挿入部110の湾曲部112よりも基端側の部分において、
図3Eに示す例よりも、チューブ110aの曲げ剛性が高くなっている。
【0053】
図4は、曲げ剛性の測定方法の一例を示す図である。挿入部110を構成するチューブ110a単体、チューブ110aおよびその管路110bに挿入された剛性材、またはチューブ110aおよびその他の部材によって構成された挿入部110の曲げ剛性は、たとえば、以下の手順で測定することができる。まず、チューブ110aを、真っ直ぐに伸ばした状態で2対のローラW1、W2の間に配置する。これにより、チューブ110aは、軸方向に離隔する2対のローラW1、W2によって、径方向両側から支持された状態になる。
【0054】
次に、チューブ110aの軸方向における2対のローラW1、W2の中間で、チューブ110aの径方向片側に配置されたローラW3を、測定器Mの測定ロッドLによって、チューブ110aの径方向に所定の押し込み量D1で押し込み、2対のローラW1、W2の間に支持されたチューブ110aを曲げる。この状態で、測定器Mによって測定ロッドLに作用する反力を測定し、この反力をチューブ110a単体または挿入部110の曲げ剛性とする。たとえば、チューブ110aの外径がφ8mmである場合、チューブ110aの軸方向に離隔するローラW1の間隔D2を200mm、押し込み量D1を20mmにすることができる。
【0055】
図2に示すように、内視鏡100の操作部130は、把持部を構成する操作部本体131と、操作部本体131の挿入部110側に設けられた処置具挿通口132と、を有する。処置具挿通口132は、操作部130に設けられた前述の処置具管路の開口である。また、操作部本体131には、湾曲部112の湾曲を操作するための湾曲操作ノブ133、および内視鏡100の各操作に関するスイッチ類134などが設けられている。挿入部110を構成するチューブ110aの基端部は、たとえば、操作部本体131に接続されている。
【0056】
図5は、
図1および
図2に示す内視鏡100の撮像部120の一例を示す拡大図である。
図5に示す例において、挿入部110は、チューブ110aによって構成された湾曲部112の先端に、処置具管路の開口112a、送気管路の開口112b、送水管路の開口112c、および副送水管路の開口112dを有している。
【0057】
また、挿入部110は、チューブ110aの先端に、有接点方式の電源コネクタ110cと信号コネクタ110dを有している。電源コネクタ110cは、たとえば、チューブ110aのケーブル管路に通された電源ケーブルを介してコネクタ部150の電源端子に接続されている。信号コネクタ110dは、たとえば、挿入部110を構成するチューブ110aのケーブル管路に通された信号ケーブルを介してコネクタ部150の信号端子に接続されている。
【0058】
撮像部120は、たとえば、円筒形の本体部121と、本体部121に設けられた鉗子口121a、送気口121b、送水口121c、副送水口121dを備えている。鉗子口121a、送気口121b、送水口121c、副送水口121dは、それぞれ、本体部121に設けられた処置具管路、送気管路、送水管路、および副送水管路の開口であり、チューブ110aの開口112a、112b、112c、112dを介してチューブ110aに設けられた処置具管路、送気管路、送水管路、および副送水管路に連通している。また、撮像部120は、チューブ110aの先端に接続される本体部121の後端部に、電源ピン122と信号ピン123を有している。
【0059】
撮像部120と挿入部110との接合部は、チューブ状の破断部114によって覆われている。破断部114の素材としては、たとえば、挿入部110を構成するチューブ110aと同様に、柔軟性および可撓性を有する樹脂を用いることができる。破断部114は、撮像部120と挿入部110との接合部だけでなく、たとえば、接合部に隣接する撮像部120の後端部と湾曲部112の先端部を覆っている。破断部114は、たとえば、撮像部120の後端部と湾曲部112の先端部に接着または接合され、挿入部110の先端部111を構成する撮像部120を挿入部110から取り外すときに破断される。
【0060】
図6は、
図5に示す撮像部120の構成の一例を示す模式的な断面図である。撮像部120は、少なくともCMOSやCCDなどの撮像素子124を含んでいる。本実施形態において、撮像部120は、たとえば、撮像素子124と、対物レンズ125と、レンズ126を含む小型LED照明127とを備えている。本体部121は、たとえば、撮像素子124を含む撮像部120の各部を密閉および封止している。撮像部120は、本体部121の後端部に、電源ピン122と信号ピン123とを備えている。なお、撮像部120は、
図6に示す各構成をすべて含む必要はなく、たとえば撮像素子124の再利用を可能にする最小限の構成要素を含むものでもよい。
【0061】
電源ピン122は、たとえば、撮像素子124および小型LED照明127に接続されている。電源ピン122をチューブ110aの先端部の電源コネクタ110cに挿入して接続することで、撮像素子124および小型LED照明127に対して電力の供給が可能になる。また、信号ピン123は、たとえば、撮像素子124および小型LED照明127に接続されている。信号ピン123をチューブ110aの先端部の信号コネクタ110dに挿入して接続することで、撮像素子124の画像信号をコネクタ部150の信号端子へ信号ケーブルを介して出力することが可能になる。なお、撮像素子124の画像信号を出力するための接続は、ピンとコネクタによる有接点方式に限定されず、たとえば、Bluetooth(登録商標)などの無線方式の接続に変更することも可能である。
【0062】
本体部121は、例えば、チューブ110aを構成する柔軟性を有する樹脂とは異なる硬質の樹脂によって構成されている。本体部121は、たとえば、一部または全部が透明であってもよい。この場合、対物レンズ125および照明用のレンズ126などのレンズを本体部121と一体に成形してもよい。なお、撮像部120を撮像素子124単体で構成する場合には、撮像部120は、本体部121を有しなくてもよい。この場合、撮像部120は、樹脂等によって封止された撮像素子124によって構成され、挿入部110の先端部111を構成するチューブ110aの先端部に埋め込むように配置することができる。
【0063】
以下、本実施形態の内視鏡100の作用について説明する。
【0064】
本実施形態の内視鏡100は、前述のように、撮像部120を含む挿入部110と、この挿入部110の一部を湾曲させる操作部130とを備えている。そして、挿入部110の少なくとも一部は、樹脂製のチューブ110aによって構成されている。また、チューブ110aは、このチューブ110aを構成する樹脂によって形成された複数の管路110bを有している。
【0065】
このように、内視鏡100の挿入部110の少なくとも一部を樹脂製のチューブ110aによって構成することにより、チューブ110aの可撓性、柔軟性、外表面の平滑性などの特性によって、挿入部110を患者の体内に挿入するときの操作性や挿入性の低下を防止できる。また、チューブ110aが、チューブ110a自身を構成する樹脂によって形成された複数の管路110bを有すること、すなわち、複数の管路110bを有する樹脂製のチューブ110aであること、たとえば、マルチルーメンチューブであることによって、挿入部110を比較的に安価な材料で容易に製造することが可能になり、内視鏡100のコストを低減することができる。
【0066】
また、本実施形態の内視鏡100は、前述のように、挿入部110と、この挿入部110の一部を湾曲させる操作部130と、備える。そして、挿入部110は、撮像部120を含む先端部111と、操作部130によって湾曲される湾曲部112と、この湾曲部112と操作部130との間の可撓部113とを有している。さらに、湾曲部112および可撓部113の少なくとも一部は、複数の管路を有する樹脂製のチューブ110aによって構成されている。また、チューブ110aを構成する樹脂の管路110bを除く空孔率は、0%以上80%以下である。
【0067】
このように、湾曲部112および可撓部113の少なくとも一部を樹脂製のチューブ110aによって構成することにより、チューブ110aの可撓性、柔軟性、外表面の平滑性などの特性によって、湾曲部112および可撓部113を患者の体内に挿入するときの操作性や挿入性の低下を防止できる。また、チューブ110aを構成する樹脂の管路110bを除く空孔率が0%以上80%以下であることで、チューブ110aの空孔率に応じた曲げ剛性を、湾曲部112および可撓部113に付与することができる。
【0068】
たとえば、湾曲部112の樹脂の平均空孔率が、可撓部113の樹脂の平均空孔率よりも大きい場合には、湾曲部112におけるチューブ110aの曲げ剛性を可撓部113におけるチューブ110aの曲げ剛性よりも低下させることができる。これにより、湾曲部112を湾曲させる操作が容易になり、内視鏡100の操作性をより向上させることができる。
【0069】
また、本実施形態の内視鏡100は、使用毎に交換されるチューブ110aを含むシングルユース部Sと、使用毎に回収されて再使用される撮像部120を含むリユース部Rと、を備えている。これにより、比較的に安価なチューブ110aを含むシングルユース部Sを使い捨てにして、常に高いレベルの清浄度を維持した内視鏡検査を行うことができる。
【0070】
また、チューブ110aを含むシングルユース部Sを、使用毎に新品に交換して使い捨てにすることで、挿入部110の洗浄、滅菌、消毒などの手間を省くことができ、挿入部110の経時的な損傷や故障のリスクを低下させることができる。また、比較的に高価な撮像部120を含むリユース部Rを、使用毎に回収して、洗浄、滅菌、消毒を行って再使用することで、リユース部R以外を使い捨てにするシングルユース型の内視鏡100の維持管理コストを低減することができる。
【0071】
また、本実施形態の内視鏡100において、挿入部110は、撮像部120を取り外すときに破断される破断部114を有している。これにより、たとえば、内視鏡100の使用後に、シングルユース部Sの交換を行う権限を有しない第三者が撮像部120を取り外すと、破断部114が破断して内視鏡100の再構成が不可能になる。そのため、チューブ110aを含むシングルユース部Sの再使用や、撮像部120の不正な取り外しを防止することができる。したがって、内視鏡100のトレーサビリティーを向上させ、より安全性および信頼性を向上させることができる。
【0072】
なお、前述のように、撮像部120が挿入部110の先端部111を構成するチューブ110aの先端部に埋設されている場合には、チューブ110aが破断部114としての役割を果たす。すなわち、撮像部120を含むリユース部Rを回収するには、チューブ110aを破断して、チューブ110a内の撮像部120を取り出す必要がある。
【0073】
これにより、内視鏡100の使用後に、シングルユース部Sの交換を行う権限を有しない第三者が撮像部120を取り外すと、チューブ110aが破断して内視鏡100の再構成が不可能になる。そのため、チューブ110aを含むシングルユース部Sの再使用や、撮像部120の不正な取り外しを防止することができる。したがって、内視鏡100のトレーサビリティーを向上させ、より安全性および信頼性を向上させることができる。
【0074】
したがって、本実施形態の内視鏡100によれば、権限を有しない第三者による撮像部120の取り外しを、破断部114またはチューブ110aによって防止することができる。仮に、撮像部120が取り外された場合にも、破断部114またはチューブ110aが破断することで、撮像部120が取り外されたことを容易に判別することができる。
【0075】
一方、内視鏡100を管理する正当な管理者が、撮像部120を含むリユース部Rを回収するときには、破断部114またはチューブ110aを破断させ、撮像部120や小型LED照明127を容易に取り出すことができる。そして、取り出した撮像部120を含むリユース部Rを洗浄・滅菌し、これらを再度の利用に供することができる。
【0076】
なお、撮像部120の撮像素子124や小型LED照明127は、通常のリユース式の内視鏡の撮像部に用いられる撮像素子や小型LED照明と同等の性能を有している。このような高性能の撮像素子124や小型LED照明127を含む撮像部120は高価であるため、ユーザから使用済みの内視鏡100を回収した後、内視鏡100の管理者によって取り外され、洗浄され、滅菌消毒されて、再利用に供される。
【0077】
また、チューブ110aを含む安価なシングルユース部Sは、たとえば、廃棄されて焼却される。なお、シングルユース部Sを構成する樹脂は、たとえば、溶解させるなどして原料として再利用してもよい。つまり、洗浄され、滅菌消毒された撮像部120を含むリユース部Rと、全く新規のチューブ110aを含むシングルユース部Sとによって、新たな内視鏡100が製造され、再度、ユーザに提供される。
【0078】
また、チューブ110aの少なくとも一部が、多孔質樹脂によって構成されている場合、多孔質樹脂部の可撓性および柔軟性を、多孔質樹脂によって構成されていない非多孔質部の可撓性および柔軟性よりも向上させることができる。したがって、挿入部110の操作性や挿入性を向上させることができる。
【0079】
また、前述のように、チューブ110aの軸方向または径方向において、多孔質樹脂の空孔率が変化していてもよい。多孔質樹脂は、空孔率が上昇すると、可撓性および柔軟性が向上するが、液体の浸透性が上昇する。一方、多孔質樹脂は、空孔率が低下すると、可撓性および柔軟性は低下するが、液体の遮断性が向上する。
【0080】
そのため、たとえば、挿入部110の軸方向すなわち長手方向において、チューブ110aを構成する多孔質樹脂の空孔率を変化させることで、可撓性および柔軟性を変化させることができる。また、挿入部110の径方向において、チューブ110aを構成する多孔質樹脂の空孔率を変化させることで、液体の浸透を防止しつつ、挿入部110の可撓性および柔軟性を向上させることが可能になる。
【0081】
具体的には、たとえば、挿入部110の径方向内側から外側へ向けて、チューブ110aを構成する多孔質樹脂の空孔率を低下させたり、挿入部110の径方向外側から内側へ向けて、チューブ110aを構成する多孔質樹脂の空孔率を低下させたりすることができる。
【0082】
また、本実施形態の内視鏡100は、前述のように、チューブ110aの管路110bに挿通された剛性材と、この剛性材に挿通されて湾曲部112の湾曲機構に接続されたアングルワイヤとを備えている。そして、操作部130は、アングルワイヤを操作可能に設けられている。これにより、操作部130によってアングルワイヤを操作して、アングルワイヤによって湾曲機構を湾曲させることができる。したがって、操作部130の操作によって湾曲部112を自在に湾曲させることができる。
【0083】
また、チューブ110aの管路110bに挿通された剛性材は、前述のように、たとえば、チューブ110aよりも高い曲げ剛性を有し、湾曲部112よりも基端側の可撓部113において管路110bに挿通されている。この剛性材により、湾曲部112よりも基端側の可撓部113で管路110bを保護し、ガイドワイヤによる管路110bの損傷を防止することができる。また、可撓部113の曲げ剛性を、チューブ110aの管路110bに挿入された剛性材によって向上させ、挿入部110を患者の体内に挿入するときの操作性や挿入性を向上させることができる。
【0084】
以上説明したように、本実施形態によれば、操作性や挿入性を低下させることなく、コストを抑制することができる内視鏡100および内視鏡システム1を提供することができる。
【0085】
<内視鏡の変形例1>
図7Aは、内視鏡100の変形例1を示す拡大断面図である。
図7Bは、内視鏡100の変形例1を示す拡大斜視図である。変形例1の内視鏡100は、撮像部120に電力を電界結合方式で伝送する場合の一例である。
【0086】
<内視鏡の変形例2>
図8Aは、内視鏡100の変形例2を示す拡大断面図である。
図8Bは、内視鏡100の変形例2を示す拡大斜視図である。変形例2の内視鏡100は、撮像部120に電力を二次元通信方式(エバネッセント波方式)で伝送する場合の一例である。
【0087】
<内視鏡の変形例3>
図9Aから
図9Dは、内視鏡100の変形例3を示す断面図である。変形例3の内視鏡100は、撮像部120に電力を電磁誘導方式で伝送する場合の例である。本変形例の内視鏡100によれば、湾曲部112の送電コイルから撮像部120の受電コイルへ電力を電磁誘導方式で伝送することができる。
【0088】
<内視鏡の変形例4>
図10Aおよび
図10Bは、内視鏡100の変形例4を示す断面図である。変形例4の内視鏡100は、光伝送方式で電力または信号を伝送する場合の例である。
【0089】
<内視鏡の変形例5>
図11は、内視鏡100の変形例5を示す断面図である。変形例5の内視鏡100は、無線伝送方式で電力または信号を伝送してもよい。
【0090】
以上、本開示の好ましい実施形態を説明したが、本開示は上記の実施形態に限定されることはない。本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。本開示は前述した説明によって限定されることはなく、添付のクレームの範囲によってのみ限定される。
撮像部120を含む挿入部110と、この挿入部110の一部を湾曲させる操作部130と、を備える内視鏡100。挿入部110の少なくとも一部は、樹脂製のチューブ110aによって構成されている。チューブ110aは、そのチューブ110aを構成する樹脂によって形成された複数の管路110bを有する。