特許第6450963号(P6450963)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6450963
(24)【登録日】2018年12月21日
(45)【発行日】2019年1月16日
(54)【発明の名称】回転機および回転機の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/50 20060101AFI20190107BHJP
【FI】
   H02K3/50 A
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-152674(P2014-152674)
(22)【出願日】2014年7月28日
(65)【公開番号】特開2016-32315(P2016-32315A)
(43)【公開日】2016年3月7日
【審査請求日】2017年5月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100078499
【弁理士】
【氏名又は名称】光石 俊郎
(74)【代理人】
【識別番号】230112449
【弁護士】
【氏名又は名称】光石 春平
(74)【代理人】
【識別番号】100102945
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 康幸
(74)【代理人】
【識別番号】100120673
【弁理士】
【氏名又は名称】松元 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100182224
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲三
(72)【発明者】
【氏名】酒井 有
(72)【発明者】
【氏名】内藤 好晴
(72)【発明者】
【氏名】諏訪園 健
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 輝一
【審査官】 三島木 英宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−219933(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータコアの軸方向一端側に配置されて前記ステータコアに巻装される巻線が接続されるバスバーと、前記バスバーを保持する保持部材とを備えた回転機において、
前記保持部材が、前記バスバーを保持する保持部と前記ステータコアの軸方向一端側に当接する当接部とを有すると共に、前記当接部において前記ステータコアと共に機械的締結手段によって構造部材に固定され
前記機械的締結手段が、ボルトを用いたものであり、
前記ステータコアが、前記ボルトを挿通可能な第一の挿通穴を有し、
前記保持部材が、前記当接部に前記ボルトを挿通可能な第二の挿通穴を有し、当該第二の挿通穴が前記第一の挿通穴と略同軸となるように前記ステータコアの軸方向一端側に配置される
ことを特徴とする回転機。
【請求項2】
ステータコアの軸方向一端側にバスバーを配置し、前記ステータコアに巻装される巻線を前記バスバーに接続し、保持部材によって前記バスバーを保持して構造部材に固定する回転機の製造方法において、
前記ステータコアに形成した第一の挿通穴と前記保持部材に形成した第二の挿通穴とが略同軸となるように、前記ステータコアおよび前記保持部材を配置し、
前記第一の挿通および前記第二の挿通にボルトを挿通して、前記ステータコアと前記保持部材とを共に構造部材に締結する
ことを特徴とする回転機の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多相交流を用いた回転機および回転機の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多相交流回転機は、ステータ(固定子)に巻装されたコイル(巻線)に位相をずらした所定周波数の電流(多相交流)が供給されることによって回転磁界を生じ、ステータに回転自在に保持されたロータ(回転子)が当該回転磁界によって回転駆動されるものである。多相交流回転機においては、ステータに巻線を巻装するための多数のスロットが設けられ、各スロットに巻回される巻線の巻き始めと巻き終わりとが相毎に電気的に接続されている。
【0003】
一般に、各相の巻線は、略半円状のバスバー(バスリング)を介して接続される。そして、巻線とバスバーとの接続は、溶接、ロウ付け、かしめ等の方法によってなされる。このように、巻線とバスバーとが所定の接続方法によって接続されているだけの状態では、バスバーを保持するための十分な強度が確保されておらず、回転機として使用することができない。
【0004】
よって、バスバーを保持するための十分な強度を確保することができるように、別途部品(バスバー保持部品)を用いてバスバーを保持すると共に、当該バスバー保持部品を固定する必要がある。しかし、回転機の構成上、バスバー保持部品を固定するためのボルトタップ穴等の締結箇所を、ステータコアやロータコアの軸方向面上に設置することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−102596号公報
【特許文献2】特開2011−254629号公報
【特許文献3】特開2010−233327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、バスバーを保持するための十分な強度を確保する方法として、例えば、ステータコアの外周部材(ケース、フレーム、ブラケット等)に締結箇所を設ける方法(特許文献1参照)、樹脂モールド成形する方法(特許文献2および特許文献3参照)などが考えられている。
【0007】
しかし、これらの方法には、バスバーを固定するための部品形状が大きくなる、質量が増加する、成形が複雑化する等の問題がある。なお、これらの問題は、昨今要求が厳しい回転機の小型化や軽量化という課題の解決に大きく影響を及ぼすものである。
【0008】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、多相交流回転機において、部品形状の増大や質量の増加を伴わずにバスバーを保持することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する第一の発明に係る回転機は、ステータコアの軸方向一端側に配置されて前記ステータコアに巻装される巻線が接続されるバスバーと、前記バスバーを保持する保持部材とを備えた回転機において、前記保持部材が、前記バスバーを保持する保持部と前記ステータコアの軸方向一端側に当接する当接部とを有すると共に、前記当接部において前記ステータコアと共に機械的締結手段によって構造部材に固定され、前記機械的締結手段が、ボルトを用いたものであり、前記ステータコアが、前記ボルトを挿通可能な第一の挿通穴を有し、前記保持部材が、前記当接部に前記ボルトを挿通可能な第二の挿通穴を有し、当該第二の挿通穴が前記第一の挿通穴と略同軸となるように前記ステータコアの軸方向一端側に配置されることを特徴とする。
【0011】
上記課題を解決する第二の発明に係る回転機の製造方法は、ステータコアの軸方向一端側にバスバーを配置し、前記ステータコアに巻装される巻線を前記バスバーに接続し、保持部材によって前記バスバーを保持して構造部材に固定する回転機の製造方法において、前記ステータコアに形成した第一の挿通穴と前記保持部材に形成した第二の挿通穴とが略同軸となるように、前記ステータコアおよび前記保持部材を配置し、前記第一の挿通および前記第二の挿通にボルトを挿通して、前記ステータコアと前記保持部材とを共に構造部材に締結することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
第一の発明に係る回転機によれば、保持部材がバスバーを保持すると共にステータコアとの共締めによって構造部材に固定されるので、バスバーを固定するための部品形状が大きくなる、質量が増加する、成形が複雑化する等の問題が生じることはない。よって、回転機の小型化や軽量化を図ることができる。
【0013】
また、第一の発明に係る回転機によれば、保持部材とステータコアとの共締めを簡易な構造とすることができ、部品点数や製造コストの増加を抑えることができる。
【0014】
第二の発明に係る回転機の製造方法によれば、保持部材がバスバーを保持すると共にステータコアとの共締めによって構造部材に固定されるので、バスバーを固定するための部品形状が大きくなる、質量が増加する、成形が複雑化する等の問題が生じることはない。よって、回転機の小型化や軽量化を図ることができる。また、保持部材とステータコアとの共締めを簡易な構造とすることができ、部品点数や製造コストの増加を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例1に係る回転機に備えられるステータを示す概略斜視図である。
図2】実施例1に係る回転機に備えられるステータを示す概略平面図(図1におけるII矢視図)である。
図3】実施例1に係る回転機に備えられるステータにおけるバスバーの保持を示す説明図(図1におけるIII−III矢視断面図)である。
図4】実施例1に係る回転機に備えられるステータにおける絶縁リングを示す斜視図である。
図5】実施例1に係る回転機に備えられるステータにおける絶縁リングを示す部分縦断面図(図4におけるV−V矢視断面図)である。
図6】実施例1に係る回転機に備えられるステータにおける絶縁リングホルダを示す斜視図である。
図7】実施例1に係る回転機に備えられるステータにおける絶縁リングホルダを示す平面図(図6におけるVII矢視図)である。
図8】実施例1に係る回転機に備えられるステータにおけるバスバーと異なる形状のバスバーを備えたステータ(変形例)を示す平面図である。
図9】実施例1に係る回転機に備えられるステータにおけるバスバーと異なる形状のバスバーを備えたステータ(変形例)を示す部分縦断面図(図8におけるIX−IX矢視断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係る回転機の実施例について、添付図面を参照して詳細に説明する。もちろん、本発明は以下の実施例に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各種変更が可能であることは言うまでもない。
【実施例1】
【0017】
本発明の実施例1に係る回転機は、略円筒形状から成るステータ1(図1参照)と、ステータ1の内周側に回転自在に保持される図示しないロータとから成る三相交流回転機である。ステータ1においては、図示しない給電部から位相をずらした所定周波数の電流(三相交流)を供給されることによって回転磁界が作られ、当該回転磁界によって図示しないロータが回転駆動される。
【0018】
本実施例に係る回転機に備えられるステータ(固定子)1の構造について、図1から図9を参照して説明する。
【0019】
図1に示すように、ステータ1は、多数枚の積層鋼板から成る略円筒形状のステータコア10と、当該ステータコア10の内周側において図示しないティース部に巻回されるコイル(巻線)20とから概略構成されている。なお、図1においては、図を見やすくするために、コイル20などを簡略化して示している。
【0020】
また、ステータ1には、コイル20と図示しない給電部とを電気的に接続するためのバスリング(バスバー)30と、当該バスリング30をステータコア10の軸方向一端側(図1における上方側)に保持するためのリング保持部材40とが設けられている。つまり、図示しない給電部からバスリング30を介して、コイル20に電流が供給されるようになっている。
【0021】
ステータ1は、三相交流回転機に用いられるものであり、図示しない給電部からコイル20に三相交流を給電するために、三つのバスリング30を備えている。三つのバスリング30は、リング保持部材40によって保持され、ステータコア10の軸方向一端側において段積みされるように軸方向に並んで配設されている。なお、三つのバスリング30は、三相交流の位相をずらした所定周波数の電流にそれぞれ対応しており、ステータコア10側から順にU相のバスリング30U、V相のバスリング30V、W相のバスリング30Wである。
【0022】
また、図1および図2に示すように、ステータコア10には、図示しないフレーム等に固定するため、図示しないボルトを挿通可能なボルト穴(第一の挿通穴)11が三つ形成されている。よって、ステータコア10は、ボルト穴11に図示しないボルトを挿通させることにより、ステータコア10の外周部材である図示しないフレーム、ブラケット、ケーシングなどの構造部材に固定(締結)することができるようになっている。
【0023】
図2に示すように、バスリング30は、図示しないロータを挿通させることができる程度の内径を有する有端の略円環形状すなわち略半円形状のリング部31と、リング部31の一端部から径方向外周側へ延出する接続部32とから構成されている。リング部31は、略円筒形状から成るコイル20との接続を容易にするために略円環形状となっており、接続部32は、図示しない給電部との接続を容易にするために径方向外周側へ突出する形状となっている。
【0024】
また、リング部31の他端部には、後述するリング保持部材40の絶縁リング50との位置決め手段として使用される位置決め穴33が設けられている。このように、バスリング30の他端部近傍に位置決め穴33を形成することにより、電流が流れる範囲のバスリング30の断面積を一定にすることができる。つまり、位置決め用穴33を形成することによって断面積が減少して抵抗値が増加してしまうのを回避することができる。
【0025】
もちろん、バスリング30の位置決め穴33を形成する位置は、本実施例のようにバスリング30の他端部近傍に限定されない。例えば、バスリング30の他端部近傍以外の場所に位置決め穴33を形成した場合には、他端部近傍に位置決め穴33を形成するための余裕分が必要なくなるので、リング部31の長さを短くすることができる。つまり、バスリング30の材料費を削減することができる。
【0026】
本実施例においては、U相のバスリング30U、V相のバスリング30V、W相のバスリング30Wに同一形状のものを使用している。このようにステータ1における複数のバスリング30を同一形状のものとすることにより、製造コストの削減を図ることができる。
【0027】
もちろん、本発明におけるバスリングは、本実施例のように同一形状のバスリング30に限定されない。例えば、図8および図9に示すように、多相交流回転機のステータ101において、接続部132に屈曲部134を形成するなどして接続部132における端部の軸方向位置(図9における上下方向位置)を異にする複数種類のバスリング130U,130V,130Wを使用するようにしても良い。このように接続部132における端部の軸方向位置を異にする複数種類(図8および図9に示す例においては三種類)のバスリング130を使用することによって、接続部132の端部を近接させて設けることができるので、図示しない給電部との接続を容易にすることができる。
【0028】
図1および図2に示すように、リング保持部材40は、バスリング30と係合する略円環形状の絶縁リング50と、バスリング30および当該バスリング30と係合した絶縁リング50を保持するための絶縁リングホルダ60とから構成されている。リング保持部材40は、三つのバスリング30U,30V,30Wをステータコア10の軸方向一端側において段積みされるように軸方向に並んで保持する一方で、ステータコア10と共に図示しないフレーム等に固定(共締め)されるようになっている。つまり、三つのバスリング30U,30V,30Wは、リング保持部材40によって保持され、三つのバスリング30U,30V,30Wを保持したリング保持部材40は、ステータコア10と共に図示しないフレーム等に固定(共締め)される。
【0029】
ステータコア10およびリング保持部材40を共締めする対象部材としては、ステータコア10の外周部材である図示しないフレームだけではなく、ブラケットやケーシングなどが挙げられ、ステータ1を固定することができる構造部材であれば良い。
【0030】
図4および図5に示すように、絶縁リング50は、バスリング30におけるリング部31の内周側に係合する略円筒形状の円筒部51と、当該円筒部51の一端側(図5における下方側)から径方向外周側(図5における右方側)へ延びる略円盤形状の円盤部52とから構成され、円筒部51と円盤部52とで略L字の縦断面形状を成している。バスリング30におけるリング部31の内周側に絶縁リング50における円筒部51を係合させると共に、バスリング30の一端面(図5における下方側の端面)30aに絶縁リング50における円盤部52を当接させることにより、バスリング30は安定して絶縁リング50に保持されるようになっている。
【0031】
このように、一つの絶縁リング50は、一つのバスリング30を係合保持するようになっている。よって、本実施例におけるステータ1は、三相交流にそれぞれ対応する三つのバスリング30を備えているので、三つのバスリング30U,30V,30Wをそれぞれ係合保持する三つの絶縁リング50U,50V,50Wを備えている(図1および図3参照)。
【0032】
図4および図5に示すように、絶縁リング50には、周方向に所定距離の間隔を空けて開口部53が設けられている。当該開口部53は、円筒部51の一部を径方向(図5における左右方向)に貫通すると共に、絶縁リング50の下面(円盤部52の下面)52aに臨むように形成されている。また、絶縁リング50の円筒部51における上端部51aには、軸方向上方側(図5における上方側)に突出する突出部54が周方向に複数箇所(本実施例においては三箇所)設けられている。
【0033】
図3に示すように、絶縁リング50の上端部51aに設けられた突出部54は、複数の絶縁リング50U,50V,50Wを軸方向に段積みした際に隣接する絶縁リング50の下面(円盤部52の下面)52aに臨んで形成された開口部53と係合するように形成されている。つまり、複数の絶縁リング50U,50V,50Wは、隣接する絶縁リング50同士の開口部53と突出部54との係合によって、軸方向(図3における上下方向)に段積みされている。
【0034】
また、絶縁リング50の円筒部51は、複数の絶縁リング50を軸方向に段積みした際に、円筒部51に係合したバスリング30が隣接する絶縁リング50の下面(円盤部52の下面)52aに接触しない程度の高さ(軸方向長さ)Hを有している。つまり、複数の絶縁リング50を軸方向に段積みした際には、絶縁リング50の円筒部51に係合したバスリング30の上端面(図3における上方側の端面)30bと隣接する絶縁リング50の下面(円盤部52の下面)52aとの間に隙間Dが作られるようになっている。
【0035】
このように、複数の絶縁リング50を軸方向に段積みした際に、隙間Dによってバスリング30の上端面30bが空気に晒されることにより、バスリング30の冷却性能を向上させることができる。
【0036】
また、絶縁リング50の円筒部51に設けた開口部53は、複数の絶縁リング50を軸方向に段積みした際に作られる隙間Dにも臨むように、広範囲に形成されている。このように、開口部53を隙間Dに臨んで形成することにより、バスリング30近傍における空気を流れ易くすることができるので、バスリング30の冷却性能を更に向上させることができる。
【0037】
もちろん、バスリング30の冷却性能を向上させる開口部(冷却孔)は、本実施例のように絶縁リング50の円筒部51に形成される開口部53だけでなく、絶縁リング50の円盤部52に形成しても良い。このように多く(または広範囲)の開口部を設けることにより、バスリング30の冷却性能を向上させると共に、絶縁リング50の材料費を削減し、当該絶縁リング50を備えたステータ1および回転機の軽量化を図ることもできる。
【0038】
図1および図6に示すように、絶縁リングホルダ60は、径方向に延設されて絶縁リング50を保持する保持アーム部61と、当該保持アーム部61の径方向外周側の端部から軸方向に延びて保持アーム部61を支持するアーム支持部62と、アーム支持部62の一端側に設けられステータコア10の軸方向一端面(図1における上方側端面)に当接するホルダ当接部63とから構成されている。
【0039】
当接部63には、図示しないボルトを挿通可能なボルト穴(第二の挿通穴)63aが形成されている。リング保持部材40は、絶縁リングホルダ60における当接部63のボルト穴63aがステータコア10におけるボルト穴11と略同軸となるように配置され、図示しないボルト(機械的締結手段)によってステータコア10と共に図示しないフレーム等に固定(共締め)されるようになっている。本実施例においては、ステータコア10に形成されたボルト穴11の数量および設置位置に応じて、三つの絶縁リングホルダ60が設置されている。
【0040】
図6および図7に示すように、絶縁リングホルダ60の保持アーム部61は、軸方向(図6における上下方向)に所定間隔離間して四段の保持アーム部61a,61b,61c,61dが設けられ、当該四段の保持アーム部61a,61b,61c,61dが周方向(図7における左右方向)に所定間隔離間して設けられて成る。
【0041】
図3に示すように、保持アーム部61における四段の保持アーム部61a〜61dのうち下三段の保持アーム部61b,61c,61dは、絶縁リング50における円盤部52と当接し、絶縁リング50を下方側(図3における下方側)から支えるようになっている。
【0042】
また、保持アーム部61における四段の保持アーム部61a〜61dのうち上三段の保持アーム部61a,61b,61cの先端部は、絶縁リング50の円筒部51に当接すると共に絶縁リング50の開口部53に合わせた形状で形成され、絶縁リング50の開口部53に一部を挿入できるようになっている。このように、保持アーム部61における上三段の保持アーム部61a,61b,61cの先端部を絶縁リング50の開口部53に挿入することにより、絶縁リングホルダ60は絶縁リング50に装着される。
【0043】
そして、絶縁リング50に対して径方向外周側の三方向から絶縁リングホルダ60を装着することにより、三つの絶縁リングホルダ60で絶縁リング50を保持するようになっている(図1および図2参照)。
【0044】
もちろん、本発明における保持部材は、本実施例のようにバスリング30と係合する絶縁リング50を径方向外周側の三方向から絶縁リングホルダ60によって保持するものに限定されず、絶縁リング50に複数の方向から絶縁リングホルダ60を装着することにより、絶縁リング50を確実に保持することができるものであれば良い。例えば、ステータコア10におけるフレームに固定するためのボルト穴の数量および設置位置に応じて、絶縁リング50に対して径方向外周側の二または四以上の方向から絶縁リングホルダ60を装着するようにしても良く、絶縁リング50に対して径方向内周側の複数の方向から絶縁リングホルダ60を装着するようにしても良い。
【0045】
また、本発明における保持部材は、本実施例のように絶縁リング50と絶縁リングホルダ60との別体構造のものに限定されず、バスリング30を保持する保持部とステータコア10に当接する当接部を有する一体構造のものであっても良い。このような一体構造の保持部材の場合においても、当接部にボルトを挿通可能なボルト穴(第二の挿通孔)を設け、当該ボルト穴およびステータコア10のボルト穴11にボルトを挿通させ、ステータコア10と当該保持部材とを共にフレーム等の構造部材に締結することにより、部品形状の増大や質量の増加を伴わずにバスリング30を保持することができる。
【0046】
以上の構成により、本実施例におけるステータ1を備えた回転機においては、図示しない給電部からステータ1に巻装されたコイル20に、位相をずらした所定周波数の電流(三相交流)を供給することによって回転磁界が作られ、ステータ1の内周側において回転自在に保持された図示しないロータが当該回転磁界によって回転駆動される。
【0047】
なお、本実施例においては、コイル20を、スター結線方式にて結線し、U相の巻線,V相の巻線,W相の巻線のそれぞれの巻き始めの一端部および巻き終わりの他端部を、それぞれ対応するU相のバスリング30U,V相のバスリング30V,W相のバスリング30Wに接続している。もちろん、本発明における結線方式は、本実施例のようにスター結線に限定されず、デルタ結線など種々の結線方式にてコイル20を結線するようにしても良い。
【0048】
また、本実施例においては、ステータ1におけるコイル20の中性点を、絶縁紙等によって絶縁性を保持させた状態で、コイルエンド21とU相のバスリング30Uとの間で接続するようにしている。もちろん、本発明は、これに限定されず、例えば、ステータ1に中性点用のバスリング30を更に備える、すなわち、中性点用のバスリング30を三つのバスリング30U,30V,30Wと共にステータコア10の軸方向一端側において段積みされるように軸方向に並んで配設し、当該バスリング30を介して巻線20における中性点を接続するようにしても良い。
【0049】
本発明の実施例1に係る回転機の製造方法について、図1から図3を参照して説明する。
【0050】
まず、ステータコア10の軸方向一端側すなわちバスリング30を設置する側において、絶縁紙などを用いて、ステータコア10の図示しないティース部に巻装されたコイル(巻線)20の中性点を、絶縁紙等によって絶縁性を保持させた状態で接続する。
【0051】
次に、バスリング30(30U)を絶縁リング50(50U)で係合保持し、ステータコア10の軸方向一端側に絶縁リング50(50U)および絶縁リング50(50U)に係合保持されたバスリング30(30U)を配置し、ステータコア10の図示しないティース部に巻装されたコイル20における巻き始めの一端部および巻き終わりの他端部(本実施例においてはU相に対応する巻線の端部)を溶接等によって接続する。
【0052】
このとき、絶縁リング50(50U)および当該絶縁リング50(50U)と係合保持したバスリング30(30U)は、コイル20との接続によって仮固定される。コイル20の剛性が低く、絶縁リング50(50U)および当該絶縁リング50(50U)と係合保持したバスリング30(30U)の仮固定を行うことができない場合には、別途治具等を設けることにより絶縁リング50(50U)および当該絶縁リング50(50U)と係合保持したバスリング30(30U)の仮固定を行っても良い。
【0053】
なお、本実施例のように絶縁リング50(50U)を絶縁体で形成していない場合には、絶縁リング50(50U)および絶縁リング50(50U)に係合保持されたバスリング30(30U)を配置する際に中性点と接触しないようにする。
【0054】
次に、バスリング30(30V)を絶縁リング50(50V)で係合保持し、ステータコア10の軸方向一端側に設置された絶縁リング50(50U)に更なる絶縁リング50(50V)を段積みする。つまり、ステータコア10の軸方向一端側に設置された絶縁リング50(50U)の突出部54に、新たな絶縁リング50(50V)の開口部53を係合保持させて、絶縁リング50(50U,50V)を二段積みする。そして、ステータコア10の図示しないティース部に巻装されたコイル20における巻き始めの一端部および巻き終わりの他端部(本実施例においてはV相に対応する巻線の端部)を溶接等によって接続する。
【0055】
このとき、絶縁リング50(50V)および当該絶縁リング50(50V)と係合保持したバスリング30(30V)は、コイル20との接続によって仮固定される。コイル20の剛性が低く、絶縁リング50(50V)および当該絶縁リング50(50V)と係合保持したバスリング30(30V)の仮固定を行うことができない場合には、別途治具等を設けることにより絶縁リング50(50V)および当該絶縁リング50(50V)と係合保持したバスリング30(30V)の仮固定を行っても良い。
【0056】
なお、前述と同様に、本実施例のように絶縁リング50(50V)を絶縁体で形成していない場合には、絶縁リング50(50V)および絶縁リング50(50V)に係合保持されたバスリング30(30V)を配置する際に中性点と接触しないようにする。
【0057】
続いて、バスリング30(30W)を絶縁リング50(50W)で係合保持し、ステータコア10の軸方向一端側に設置された絶縁リング50(50U,50V)に更なる絶縁リング50(50W)を段積みする。つまり、ステータコア10の軸方向一端側に設置された絶縁リング50(50V)の突出部54に、新たな絶縁リング50(50W)の開口部53を係合保持させて、絶縁リング50(50U,50V,50W)を三段積みする。そして、ステータコア10の図示しないティース部に巻装されたコイル20における巻き始めの一端部および巻き終わりの他端部(本実施例においてはW相に対応する巻線の端部)を溶接等によって接続する。
【0058】
このとき、絶縁リング50(50U)および当該絶縁リング50(50U)と係合保持したバスリング30(30U)は、コイル20との接続によって仮固定される。コイル20の剛性が低く、絶縁リング50(50U)および当該絶縁リング50(50U)と係合保持したバスリング30(30U)の仮固定を行うことができない場合には、別途治具等を設けることにより絶縁リング50(50U)および当該絶縁リング50(50U)と係合保持したバスリング30(30U)の仮固定を行っても良い。
【0059】
なお、本実施例のように絶縁リング50を絶縁体で形成していない場合には、絶縁リング50および絶縁リング50に係合保持されたバスリング30を配置する際に中性点と接触しないようにする。
【0060】
次に、三つの絶縁リング50U,50V,50Wに対して径方向外周側の三方向から絶縁リングホルダ60を装着することにより、三つの絶縁リングホルダ60でステータコア10の軸方向一端側において段積みされるように軸方向に並んで配設された絶縁リング50U,50V,50Wを保持する。
【0061】
最後に、三つの絶縁リングホルダ60を、絶縁リングホルダ60における当接部63のボルト穴63aがステータコア10におけるボルト穴11と略同軸となるように配置し、図示しないボルトによってステータコア10およびリング保持部材40を図示しないフレーム等の構造部材に共締めして固定する。
【0062】
以上により、ステータ1において、部品形状の増大や質量の増加を伴わずにバスリング30を保持することができ、当該ステータ1を備えた三相交流回転機を製造することができる。
【0063】
本実施例においては、三相交流回転機に備えられ、バスリング30がステータコア10の軸方向一端側において段積みされるように軸方向に並んで配設されたステータ1の構造および製造について説明したが、本発明はこれに限定されない。
【0064】
本発明は、例えば、三相以外の多相交流回転機に適用することもでき、バスバーがステータコアの軸方向一端側において径方向に並んで配設されるステータを備えた回転機に適用することもできる。
【符号の説明】
【0065】
1 ステータ
10 ステータコア
11 ステータコアのボルト穴(第一の挿通穴)
20 コイル(巻線)
21 コイルエンド
30 バスリング(バスバー)
31 バスリングのリング部
32 バスリングの接続部
33 バスリングの位置決め穴
40 リング保持部材(保持部材)
50 絶縁リング(保持部)
51 絶縁リングの円筒部
52 絶縁リングの円盤部
53 絶縁リングの開口部
54 絶縁リングの突出部
55 絶縁リングの位置決め突起部
60 絶縁リングホルダ
61 絶縁リングホルダの保持アーム部(保持部)
62 絶縁リングホルダのアーム支持部
63 絶縁リングホルダの当接部(当接部)
63a 絶縁リングホルダのボルト穴(第二の挿通穴)
図1
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