【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記課題を解決するために、電源制御装置においては、車内通信ネットワークを介して車両側コンピュータと通信する通信手段と、電源電圧からノイズを検出するノイズ検出手段と、電源から所定の電子回路へ供給する電源電圧をON/OFFするスイッチと、通信手段で受信した車両側コンピュータからの信号と、ノイズ検出手段で検出したノイズを用いて、スイッチのON/OFFを制御する制御手段とを備える。
【0010】
電源制御装置では、所定の電子回路へ供給する電源電圧のON/OFF制御に、車両側コンピュータから車内通信ネットワークに出力される信号を用いるので、ノイズのみによる場合に比べて誤判定を抑制でき、ノイズが検出できない時に、車両側コンピュータから受信した信号を用いて所定の電子回路に電源電力を供給できる。
所定の電子回路としては、例えば、カーアクセサリ等の内部に設けた電子回路とするとよい。また、本電源制御装置は、例えば、電源のコネクタ内に内蔵すると特によい。
あるいはまた、所定の電子回路と本電源制御装置とをカーアクセサリ等の中に組み込んでもよい。
【0011】
(2)好ましくは、電源制御装置のノイズ検出手段は、車両始動時に発生するノイズを検出するようにするとよい。
【0012】
車両始動時に発生するノイズとしては、例えば、エンジンを備える自動車であれば、従来のような発電装置のオルターネータノイズではなく、エンジンスターターによる電圧降下に起因する車両始動時に発生するノイズを用いるとよい。オルターネータノイズは交流発電装置の動作に起因して整流後も残るノイズであるので、比較的高周波でノイズレベルが比較的小さいのに対して、車両始動時に発生するノイズは、他の電装品を全て停止させても電圧降下するような大きな電力を使用するスターターによる、比較的長い時間で比較的大きなレベルのノイズであるので、ノイズの検出エラーが減少する。また、車両始動時に発生するノイズとしては、例えば、電気自動車やハイブリッド車などの自動車であれば、車両の各部への電源供給が開始されることによって発生するノイズなどが挙げられる。例えば、運転者が所有する発信機との通信が確立したときに電源供給が開始される電気自動車やハイブリッド車などの自動車であれば、このときに発生するノイズと同一パターンのノイズが発生したかを判定するとよい。このノイズとしては電圧降下によるノイズを検出するとよい。このような検出エラーが少ない車両始動時に発生するノイズと車両側コンピュータから受信する信号を用いることで、車両始動後の所定の電子回路に確実に電源電力を供給できる。
【0013】
(3)好ましくは、電源制御装置の制御手段は、ノイズ検出手段によって車両始動時に発生するノイズが検出されない場合であっても、車両側コンピュータからの信号を受信できるときには、スイッチをOFFとしないようにするとよい。
【0014】
このようにすることで電源制御装置では、バッテリー走行中や、アイドリングストップ中も所定の電子回路に電源電力を供給できる。ハイブリッドカー(HV)やアイドリングストップ機能を有する自動車は、バッテリー走行中やアイドリングストップ中であっても、車両側コンピュータはウェイクアップしており速度情報や走行関連情報等を出力しているからである。
【0015】
(4)好ましくは、電源制御装置では、車両始動時に発生するノイズは、エンジンを有する車両のエンジン始動時に発生する電圧降下を含むノイズであるようにするとよい。
このようにすることでノイズ検出手段は、エンジンを有する車両の始動を的確に検出できる。
【0016】
(5)好ましくは、電源制御装置のノイズ検出手段では、車両始動時に発生するノイズは、電気自動車の車両への電源供給をオンにした際に発生する電圧降下を含むノイズであるようにするとよい。
このようにすることでノイズ検出手段は、電気自動車の車両の始動を的確に検出できる。
【0017】
(6)好ましくは、電源制御装置の制御手段は、通信手段によって車両側コンピュータからの信号を受信できた後に、ノイズ検出手段によって車両始動時に発生するノイズが検出された場合に、スイッチをONにするようにするとよい。
【0018】
このようにすることで電源制御装置では、通信手段が車両側コンピュータからの信号を受信してからノイズが検出された場合にスイッチをONすることで、確実に誤判定を防止することができる。例えば、イモビライザー等のセキュリティ機能を有する車両の車両側コンピュータは、車両ノイズが発生する車両始動よりも前にセキュリティ機能を解除する信号を送信するので、この信号を受信してから、ノイズが検出された場合にスイッチをONとすることで、セキュリティ機能を有する車両について確実に誤判定を防止することができる。車両側コンピュータからの信号を受信できた後としては、車両側コンピュータからの信号が受信できない状態から、車両側コンピュータからの信号を受信できる状態になった後とするとよい。車両側コンピュータから受信する信号としては、車両が走行開始不可能状態にあるときには出力されない信号とすると特によい。
【0019】
(7)好ましくは、電源制御装置の通信手段は、車両側コンピュータから自発出力信号を出力する車内通信ネットワークと、車両側コンピュータから応答出力信号を出力する車内通信ネットワークとの双方を用いるようにするとよい。
【0020】
このようにすることで電源制御装置では、利用されているネットワークが、自発出力信号を用いる車内通信ネットワークの車種に対しても、応答出力信号を用いる車内通信ネットワークの車種に対しても、1つの電源制御装置のみで所定の電子回路に電源電力の供給を的確に制御できる。なお、自発出力信号とは、車両側コンピュータから能動的に出力される信号であり、応答出力信号とは、応答要求を受信した場合のみに車両側コンピュータから受動的に出力される信号である。
【0021】
(8)好ましくは、電源制御装置の通信手段は、異なる複数の車内通信ネットワークと接続して通信可能な構成であり、制御手段は、前記通信手段に接続された異なる複数の車内通信ネットワークを監視し、異なる複数の車内通信ネットワークの前記通信手段が通信可能な車内通信ネットワークからの情報を用いてスイッチのON/OFFの判定を行うようにするとよい。
【0022】
このようにすることで電源制御装置では、異なる複数の車内通信ネットワークのうち通信可能な車内通信ネットワークを用いるので、多種多様な車内通信ネットワークを有する車種に対して、1つの電源制御装置のみで所定の電子回路に電源電力を供給できる。
【0023】
(9)好ましくは、電源制御装置の制御手段は、車両側コンピュータからの信号を受信した時にスイッチをONし、車両側コンピュータからの信号が受信できなくなった時にスイッチをOFFするようにするとよい。
【0024】
このようにすることで電源制御装置の制御手段は、電源電圧からノイズを検出した時ではなく、車両側コンピュータからの信号を受信した時に所定の電子回路へ供給する電源電圧をONし、車両側コンピュータからの信号を受信できなくなった時に所定の電子回路へ供給する電源電圧をOFFに制御する。つまり車両側コンピュータがウェイクアップしている時には所定の電子回路へ供給する電源電圧をONすることで、ハイブリッドカー(HV)やアイドリングストップ機能を有する自動車でも、走行中に所定の電子回路を使用することができる。
【0025】
(10)好ましくは、電源制御装置においては、車内通信ネットワーク用の接続端子と電源用の供給端子を含む自己故障診断用の車内コネクタと接続する接続手段を備えるようにするとよい。
【0026】
例えば、車内に露出するOBD等の車内コネクタと接続できる接続手段(例えば、OBD等の車内コネクタに対応するコネクタ)を備えるとよい。OBDの車内コネクタには、車内通信ネットワークとの接続端子の他に電源供給用の端子が設けられているので、使用者に自動車の車内配線の知識が無くても、使用者自身で電源の接続と取り外しを行うことができ、整備工場等に行く必要が無く取り付けができる。
【0027】
車両側コンピュータから車内通信ネットワークに出力される信号には、自動車が採用している車内通信ネットワークの種類により、車両側コンピュータの起動後、他からの応答要求信号を受信しなくても出力される自発的な出力信号(自発出力信号:例えばCAN(Controller Area Network)用信号)と、他からの応答要求信号を受信した場合のみに出力される応答的な出力信号(応答出力信号:例えばK−Line用信号)がある。
【0028】
車両側コンピュータには、排ガス規制等により必須である自己故障診断((オンボードダイアグノーシス:OBD)I又はII)のシステム(ソフトウェア)が導入されているものがある。例えば、自動車のエンジンを診断する場合には、車室内に露出しているOBDの車内コネクタに、データ読み取り用のスキャンツールを接続し、スキャンツールで車両側コンピュータから車内通信ネットワークに出力される信号を読み取り故障を診断する。その際に、車両側コンピュータに接続する車内通信ネットワークが上記したCANであるなら、信号が自発出力されてくるので、信号を待ち受けて信号が車両側コンピュータから出力されたものであることを解析するだけでよい。しかし、車内通信ネットワークが上記したK−Lineであるなら、待ち受けるだけでは信号を受信できないので、先に応答要求信号を送出し、車両側コンピュータから応答出力されてくる信号を待ち受けることになる。
【0029】
汎用のカーアクセサリは、多種多様な自動車の何れにも取り付けられる可能性がある。現在の国内の自動車は、上記CAN、上記K−Lineの他に、自社独自の車内通信ネットワーク、車載マルチメディア用ネットワーク、ドアやシート用ネットワーク、セキュリティ用ネットワーク等の多種多様なネットワークから選択された任意のネットワークを使用している。しかし、自己故障診断のシステムには、車両用コンピュータから出力される上記CAN又は上記K−Lineの何れかの信号が使用され、コネクタにはOBDの車内コネクタ(後述する
図3のコネクタ)が使用されている。従って、OBDの車内コネクタからCANの信号を受信して車両側コンピュータからの信号であることを判読するか、又は、OBDの車内コネクタにK−Lineの応答要求信号を送出して応答出力信号を受信することで、車両側コンピュータがウェイクアップしていることを知ることができる。このように電源制御装置の接続手段で自己故障診断用の車内コネクタと接続することで、アクセサリソケット以外から電源供給が可能になり、しかも、多様な車種に対して取り付け可能な電源制御装置を提供できる。
【0030】
(11)好ましくは、電源制御装置の接続手段を有する筐体内には、通信手段と、ノイズ検出手段と、制御手段とを備えるようにするとよい。
このようにすることで電源制御装置では、接続手段を有する筐体内に通信手段とノイズ検出手段と制御手段とを備えるので、本電源制御装置から電源の供給を受ける所定の電子回路にノイズ検出手段と制御手段を設ける必要がなくなり、例えばカーアクセサリ等を小型化できる。また、カーアクセサリ等にノイズ検出手段を設ける場合に発生する可能性のあるカーアクセサリ等との間の電源供給線に外来ノイズが混入すること等による誤動作をなくすことができる。
【0031】
(12)好ましくは、電源制御装置の制御手段は、通信手段により車両側コンピュータからの自発出力信号を車内通信ネットワークを介して検出し、ノイズ検出手段により電源供給端子の電圧から車両始動時に発生するノイズを検出し、通信手段により車両側コンピュータに対して応答要求信号を車内通信ネットワークに送出し、通信手段により車両側コンピュータからの応答要求信号に対する応答出力信号を車内通信ネットワークを介して検出し、車内通信ネットワークから自発出力信号又は応答出力信号が検出された時に、所定の電子回路へ電源電圧の供給を開始するようにするとよい。
【0032】
例えば、電源制御装置の制御手段は、まず、通信手段により車両側コンピュータからの自己故障診断の信号がCANの信号である場合の自発出力信号を受信する動作を行い、自発出力信号が受信できない場合に、ノイズ検出手段により車両始動時に発生するノイズを検出して、車両始動時に発生するノイズが検出されたら通信手段により車両側コンピュータに対してK−Lineの応答要求信号を送出し、K−Lineの応答出力信号を検出する。このようにして車両側コンピュータのウェイクアップを検出することで、車両側コンピュータが非動作中にK−Lineの応答要求信号を送出して無駄な電力を消費しないようにできる。
【0033】
(13)好ましくは、電源制御装置の制御手段は、通信手段が車内通信ネットワークから自発出力信号又は応答出力信号が検出できなくなった時に、所定の電子回路へ電源電圧の供給を終了するようにするとよい。
【0034】
電源制御装置の制御手段は、自発出力信号又は応答出力信号が検出できなくなった時に所定の電子回路への電源電圧の供給を停止させ、車両側コンピュータが動作しなくなった場合に、無駄な電力を消費しないようにできる。
【0035】
(14)好ましくは、電源制御装置の制御手段は、通信手段が自発出力信号を検出した場合と、ノイズ検出手段がノイズを検出した後に、通信手段が応答要求信号を送出し、その応答要求信号に対する応答出力信号を検出した場合に、スイッチをONするようにするとよい。
このようにすることで電源制御装置では、車両側の車内通信ネットワークが車両側コンピュータから自発出力信号を出力するタイプでも、応答出力信号を出力するタイプでも、1つの電源制御装置のみで所定の電子回路に電源電力を供給できる。
【0036】
(15)好ましくは、電源制御装置の制御手段は、ノイズ検出手段が車両始動時に発生するノイズを検出したことをトリガーとして、通信手段から応答要求信号を送出するようにするとよい。
このようにすることで電源制御装置では、車両始動時に発生するノイズをトリガーとして応答要求信号を送出するので、車両側の車内通信ネットワークが応答出力信号を出力するタイプの場合に、確実に前記通信手段から応答要求信号を送出することができる。
【0037】
(16)好ましくは、電源制御装置の制御手段は、所定時間を計測するタイマー手段を備え、通信手段から応答要求信号を送出してから所定時間以内に、通信手段から応答要求信号に対する応答出力信号を検出した場合にスイッチをONするようにするとよい。
このようにすることで電源制御装置では、通信手段から応答要求信号に対する応答出力信号を所定時間以内のタイミングで検出できた場合にスイッチをONするので、ノイズ検出手段によりノイズが検出できない時でも所定の電子回路へ電源を供給できる。
【0038】
(17)好ましくは、電源制御装置の制御手段は、所定時間を計測するタイマー手段を備え、通信手段が前の自発出力信号を検出してから所定時間以内に次の自発出力信号を検出できる場合には、スイッチをOFFにしないようにするとよい。
このようにすることで電源制御装置では、通信手段から自発出力信号が所定時間以内に継続的に検出できる場合にはスイッチをOFFにしないので、バッテリー走行中やアイドリングストップ中も所定の電子回路への電源供給を継続することができる。
【0039】
(18)好ましくは、電源制御装置の制御手段は、所定時間を計測するタイマー手段を備え、ノイズ検出手段が前のノイズを検出してから所定時間以内に次のノイズを検出できる場合には、スイッチをOFFにしないようにするとよい。
このようにすることで電源制御装置では、ノイズ検出手段がオルターネータノイズ等の継続的なノイズを検出できる場合にはスイッチをOFFにしないので、エンジンを備える自動車のエンジンが起動している間は所定の電子回路への電源供給を継続することができる。