特許第6451004号(P6451004)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6451004
(24)【登録日】2018年12月21日
(45)【発行日】2019年1月16日
(54)【発明の名称】基板の対称面取り方法および装置
(51)【国際特許分類】
   C03C 19/00 20060101AFI20190107BHJP
   C03B 33/02 20060101ALI20190107BHJP
   G01B 11/02 20060101ALI20190107BHJP
【FI】
   C03C19/00 Z
   C03B33/02
   G01B11/02 H
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-109285(P2014-109285)
(22)【出願日】2014年5月27日
(65)【公開番号】特開2014-231471(P2014-231471A)
(43)【公開日】2014年12月11日
【審査請求日】2016年5月20日
【審判番号】不服2018-125(P2018-125/J1)
【審判請求日】2018年1月5日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0060306
(32)【優先日】2013年5月28日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】502411241
【氏名又は名称】コーニング精密素材株式会社
【氏名又は名称原語表記】Corning Precision Materials Co., Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100070024
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 宣行
(74)【代理人】
【識別番号】100159042
【弁理士】
【氏名又は名称】辻 徹二
(72)【発明者】
【氏名】韓 明 寶
【合議体】
【審判長】 大橋 賢一
【審判官】 金 公彦
【審判官】 小川 進
(56)【参考文献】
【文献】 特開平8−243891(JP,A)
【文献】 特開2009−125876(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 19/00
B24B 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
面取りホイールを使用して基板の端縁を面取りするステップと、
面取りされた前記基板の端縁の非対称面取偏移(x)を測定するステップと、
f(x)(ここで、f(x)は、xを変数とする関数)の大きさ分だけ前記基板に対する前記面取りホイールの相対位置を制御するステップと、
を含むサイクルを少なくとも複数回繰り返し、
各回次に異なる基板が面取りされ、
各回次に、以前に設定された前記面取りホイールの相対位置が、前記各回次に生成される前記関数f(x)の値を累積することによって修正され
各回次に、前記基板の端縁の複数の点ごとに、前記非対称面取偏移を各々測定し、前記基板の端縁の複数の点を面取りしたときの前記面取りホイールの相対位置を各々制御することを特徴とする基板の対称面取り方法。
【請求項2】
前記非対称面取偏移は、前記基板の上面の面取り幅と前記基板の下面の面取り幅の差であることを特徴とする、請求項1に記載の基板の対称面取り方法。
【請求項3】
前記基板の上面の面取り幅が前記基板の下面の面取り幅よりも大きい場合、前記基板に対する前記面取りホイールの相対位置を上方へ制御し、
前記基板の上面の面取り幅が前記基板の下面の面取り幅よりも小さい場合、前記基板に対する前記面取りホイールの相対位置を下方へ制御することを特徴とする、請求項2に記載の基板の対称面取り方法。
【請求項4】
前記面取りホイールの相対位置は、前記基板に対する前記面取りホイールの相対高さであることを特徴とする、請求項1に記載の基板の対称面取り方法。
【請求項5】
前記f(x)は、前記非対称面取偏移(x)に制御定数を乗じた大きさを有することを特徴とする、請求項1に記載の基板の対称面取り方法。
【請求項6】
前記基板は、ディスプレイ装置用ガラス基板であることを特徴とする、請求項1に記載の基板の対称面取り方法。
【請求項7】
前記面取りホイールの外周面には、周方向に沿って凹形グルーブが形成されることを特徴とする、請求項1に記載の基板の対称面取り方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の対称面取り方法および装置に関し、より詳細には、基板の端縁の非対称面取偏移(x)を測定し、これを基礎として面取りホイールの位置を制御することにより、基板を対称面取りする方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多様な分野において、基板の端縁の面取りが要求されている。一例として、LCD、PDP、EL等といった平板ディスプレイに使用されるガラス基板は、融解、成形、切断および面取り工程を経て製造される。すなわち、ガラスを融解させ、融解したガラスを板状に固化させて成形し、成形されたガラスを所定の規格に切断した後、切断されたガラスの端縁を面取りすることができる。
【0003】
図1は、基板10の端縁の面取り工程を概略的に示す図であり、図2は、非対称面取りされた基板の端縁を示す側断面図である。
【0004】
基板は面取り作業台30上に位置された状態で面取りされる。このとき、基板の端縁は、上‐下対称面取りが施されることが好ましい。しかし、たとえば、平板ディスプレイに使用されるガラス基板は薄いため(約1mm以下)、面取り作業台が平坦でない、または作業台の搬送時の上下方向の流動によって、基板の端縁の断面の中心点と面取りホイール20の中心点の局部的な不一致が引き起こされる。この場合、端縁の断面は、局部的にいずれか一方により深く研磨されて上下の面取り幅が異なるようになり、基板の端縁が局部的に非対称面取りが施される非対称面取り点が発生する。
【0005】
従来は、基板の非対称面取りが発生した場合、面取り作業台の平坦度を補正するために、該当部位の基板固定器具の部品を交換したり、部分的に薄い鉄片をかませて面取り作業台の局部的な高さを微調整したりする作業を行ってきていた。しかし、こうした作業は、基板の面取り作業を停止し、作業台を分解し、再組み立ておよび微補正を行う過程を要するため、生産性に莫大な支障をもたらす。また、部品の交換等により、部品費の上昇を招くという問題点を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述した問題点を解決するために案出されたものであって、本発明の目的は、従来のようなハードウェア的な作業がなくても、面取り環境の変動に能動的に対応して、基板の端縁を常に対称的な状態で面取りすることができる基板の対称面取り方法および装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するために、本発明は、面取りホイールを使用して基板の端縁を面取りするステップと、面取りされた前記基板の端縁の非対称面取偏移(x)を測定するステップと、f(x)(ここで、f(x)は、xを変数とする関数)の大きさ分だけ前記基板に対する前記面取りホイールの相対位置を制御するステップと、を少なくとも複数回繰り返すことを特徴とする基板の対称面取り方法を提供する。
【0008】
また、本発明は、基板の端縁を少なくとも複数回面取りする面取りホイールと、面取りされた前記基板の端縁の非対称面取偏移(x)を測定する測定部と、前記基板に対する前記面取りホイールの相対位置をf(x)(ここで、f(x)は、xを変数とする関数)の大きさ分だけ制御する制御部と、を含むことを特徴とする基板の対称面取り装置を提供する。
【発明の効果】
【0009】
上述した構成によれば、本発明は、面取り作業が行われる面取り作業台の補正を通じて、基板の端縁の断面の中心点と面取りホイールの中心点を合わせる従来の方法に代わって、面取りホイールの高さを基板の端縁の断面の中心点と常に自動的に一致させて対称的な面取り断面を得ることができる。すなわち、本発明は、ハードウェア的な作業がなくても、面取り環境の変動に能動的に対応して、基板の端縁を常に対称的な状態で面取りすることができる効果がある。特に、本発明は、面取り作業台が繰り返される面取り作業によって持続的に劣化するため、その劣化の程度を直ちに把握してすぐさま措置を取ることができるようになる。
【0010】
また、本発明は、面取り作業の停止を要求しないため、生産性を犠牲にせず、かつ簡易に基板の端縁の対称面取りを得ることができる効果がある。
【0011】
また、本発明は、従来の面取り作業台の補正に伴う作業者の労力と時間の損失を取り除き、終局的に面取り工程の効率を向上することができる効果がある。すなわち、現業の作業ロードをゼロ化しつつ、最大限の効果を得ることができ、面取り幅散布水準を劇的に向上させることができる。完全自動化により、現業勤務者による作業遂行がなくても、単純なプログラムの稼働を通じて基板の上面と下面の面取り幅の差を最大30μm以下の水準(平均20μm前後)に維持しつつ、面取り基板を量産することができる。従来の補正方式は50μm以下の面取り幅差の対称性を得ることが不可能であったことと比較すると、面取り対称性を大きく向上させることができる。
【0012】
従来の面取り作業台の平坦度測定および補正は、生産ラインを停止させ、設備の中で行わなければならない危険な作業であるのに反して、本発明は、作業者を危険な環境から保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】基板の端縁の面取り工程を概略的に示す図である。
図2】非対称面取りされた基板の端縁を示す側断面図である。
図3】本発明の一実施例に係る基板の対称面取り方法を説明するための図である。
図4】基板の端縁における複数の測定点を示す図である。
図5】基板の端縁の非対称面取り偏移を示す側断面図である。
図6】本発明の一実施例に係る基板の対称面取り方法による場合における、各回次の上面の面取り幅と下面の面取り幅を示す図である。
図7】本発明の一実施例に係る基板の対称面取り方法による場合における、基板の対称面取り前と後の、上面の面取り幅と下面の面取り幅、ならびに非対称面取偏移を示す図である。
図8】本発明の一実施例に係る基板の対称面取り方法の採択前と後における非対称面取偏移の低減を示す図である。
図9】本発明の一実施例に係る基板の対称面取り装置を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の実施例を詳細に説明する。
【0015】
図3は、本発明の一実施例に係る基板の対称面取り方法を説明するための図であり、図4は、基板の端縁における、非対称面取り偏移の測定が遂行される複数の測定点を示す図であり、図5は、基板の端縁の非対称面取偏移を示す側断面図である。
【0016】
本発明の基板の対称面取り方法は、面取りステップと、測定ステップと制御ステップを、少なくとも複数回繰り返す。
【0017】
面取りステップにおいては、面取りホイールを使用して、基板の端縁を面取りする。
【0018】
基板10は、面取り作業台30上に位置される。本明細書において、上下左右は、相対的な位置関係を説明するためのものであるだけであって、地表面を基準とする絶対的な位置関係を示すものではない。したがって、基板10が面取り作業台30上に位置されるということは、面取り作業台30から上側と指定された方向に基板10が位置することを意味するだけであって、その上側と指定された方向が必ずしも地表面からより遠い側を意味するものではない。基板10は、ディスプレイ装置用ガラス基板であってもよいが、本発明は、必ずしもこれに限定されるものではない。本発明の基板10は、面取り対象となるいかなる材質の基板であってもよい。
【0019】
面取りホイール20は、基板10よりも強い材質からなる。面取り対象がガラス基板10である場合、面取りホイール20は、通常、ダイヤモンド研磨チップを含む。面取りホイール20は、一般的に、ディスクタイプで提供される。面取りホイール20の外周面には、その周方向に沿って凹形グルーブ(groove)が形成される。このグルーブの内面が基板10の端縁と接触して、基板10の端縁を均等に研磨することになる。面取りホイール20は、専用の研磨機械に設置されて高速回転することになる。
【0020】
基板10が移動し、面取りホイール20はその場で回転するのが一般的であるが、必ずしもこれに限定されるものではない。たとえば、基板10は固定され、面取りホイール20が移動することも可能であり、基板10と面取りホイール20がともに移動することも可能である。基板10と面取りホイール20の相対移動により、面取りホイール20が基板10の端縁に沿って相対移動しながら面取りすることになる。
【0021】
測定ステップにおいては、面取りされた基板の端縁の非対称面取偏移(x)を測定する。
【0022】
好ましい実施例によると、基板10の上面の面取り幅と基板10の場合の面取り幅の差を非対称面取り偏移として測定する。しかし、本発明は、必ずしもこれに限定されるものではない。たとえば、側方から基板10の端縁の断面を直接判読して、非対称面取り偏移を測定することも可能である。非対称面取り偏移を測定するために、ビジョンカメラ、距離センサー等、多様な装置な装置が使用されてよい。
【0023】
好ましくは、基板の端縁の複数の点ごとに、非対称面取り偏移を各々測定する。図4においては、かかる測定作業を4つの端縁すべてに遂行したものを示しているが、必ずしもこれに限定されるものではない。必要によっては、要求される端縁のみを測定してもよいであろう。基板の4つの端縁の測定のために、たとえば4台のビジョンカメラが使用されてよい。
【0024】
制御ステップにおいては、f(x)(ここで、f(x)は、xを変数とする関数)の大きさ分だけ、前記基板に対する前記面取りホイールの相対位置を制御する。
【0025】
典型的には、制御対象となる面取りホイールの位置は、基板に対する面取りホイールの相対高さである。上述したところのように、高さとは、相対的な位置関係を説明するためのものであるだけであって、絶対的な位置関係を示すためのものでないことに留意する必要がある。また、相対高さの変更は、面取りホイールを上下方向に移動させるのが一般的であるが、必ずしもこれに限定されるものではない。たとえば、面取りホイールを固定し、基板を上下に移動させることも可能であり、面取りホイールと基板をともに上下に移動させることも可能である。
【0026】
たとえば、板ガラスは薄いため(約1mm以下)、面取り作業台の平坦度によって、板ガラスの自重等の影響により平坦度の形状と同様に屈曲されて作業台に密着されるようになる。したがって、面取り作業台30が平坦でないならば、基板10の端縁の断面の中心点と面取りホイール20の中心点の局部的な不一致が発生する。図5に示されたところのように、面取り作業台30の局部的な高さが基準高さよりも低ければ、基板10の端縁の断面の局部的な中心点は、面取りホイール20の中心点よりも低い高さに位置される。この場合、下面が上面よりも多く面取りされて、下面の面取り幅が上面の面取り幅よりも大きくなる。したがって、基板に対する面取りホイールの相対高さを下方へ制御する。
【0027】
これとは逆に、面取り作業台30の局部的な高さが基準高さよりも高ければ、基板10の端縁の断面の局部的な中心点は、面取りホイール20の中心点よりも高い高さに位置される。この場合、上面が下面よりも多く面取りされて、上面の面取り幅が下面の面取り幅よりも大きくなる。したがって、基板に対する面取りホイールの相対高さを上方へ制御する。
【0028】
測定ステップと同様に、制御ステップにおいても、好ましくは、基板の端縁の複数の点を面取りする際における面取りホイールの位置を各々制御する。図6および図7は、かかる制御作業を4つの端縁すべてに遂行したものを示しているが、必ずしもこれに限定されるものではない。必要によっては、要求される端縁にのみ制御処理を遂行してもよいであろう。基板の4つの端縁の面取りのために4つの面取りホイールが使用されてよい。
【0029】
基板10に対する面取りホイール20の相対高さを変更した後、上述した面取りステップ、測定ステップおよび制御ステップを繰り返す。同一の基板10の端縁を再び面取りおよび測定することも可能であるが、他の基板10を使用することが好ましい。すなわち、各々の基板10に対する面取りホイール20の相対高さを制御しつつ、複数の基板10の端縁を面取りおよび測定し、単一面取りホイールの相対高さを制御してよい。
【0030】
反復回数は、その値をあらかじめ指定してプログラムに入力してもよく、非対称面取偏移(x)が指定された範囲内の値を有するまで繰り返し続けるようにしてもよい。ひいては、面取り作業中は、常時測定および制御が遂行されるように、すなわち無限に繰り返されるようにしてもよいであろう。
【0031】
面取り後、基板の端縁の断面の非対称度を測定し、非対称面取り偏移をフィードバックして、変移(x)に一定の定数(a)を乗じて制御量(f(x)、たとえば、f(x)=x*a)を生成し、その制御量分だけ面取りホイールの高さを微調整する。かかる1サイクルの後、再び同一の点の断面の非対称度を測定して、同様の方法で制御量を生成し、以前に生成された面取りホイールの位置に制御量分を累積して修正する。かかる一連の過程を無限反復する場合、面取り作業の劣化によって生じる搬送精度と、平坦度によって持続的に変化する面取り幅の変動を最小限に制御することができるようになる。
【0032】
図6は、本発明の一実施例に係る基板の対称面取り方法による場合における、各回次の上面の面取り幅と下面の面取り幅を示す図であり、図7は、本発明の一実施例に係る基板の対称面取り方法による場合における、基板の対称面取り前と後の、上面の面取り幅と下面の面取り幅、ならびに非対称面取偏移を示す図であり、図8は、本発明の一実施例に係る基板の対称面取り方法の採択前と後における非対称面取偏移の低減を示す図である。
【0033】
図示したところのように、本発明の基板の対称面取り方法による場合、面取り、測定および制御ステップの数回の繰り返しのみで、基板の端縁の対称面取りを得ることができることを示している。作業遂行の結果、5回以内の動作で目標水準である50μm以内(平均水準20μm内外)に到達することができた。
【0034】
図9は、本発明の一実施例に係る基板の対称面取り装置を概略的に示す図である。
【0035】
図示したところのように、本発明の一実施例に係る基板の対称面取り装置は、面取りホイール、測定部および制御部を含む。
【0036】
測定部は、面取りされた前記基板の端縁の非対称面取偏移(x)を測定する。制御部は、面取りホイールの位置をf(x)(ここで、f(x)は、xを変数とする関数)の大きさ分だけ制御する。
【符号の説明】
【0037】
10:基板
20:面取りホイール
30:面取り作業台
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9