(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記振動発電素子の、前記重錘体素子が接合されている面とは反対側の面を覆う第1保護体であって、前記振動体を覆う第1保護体本体と、前記第1保護体本体の外周を取り囲み、前記支持体に接合される第1接合部と、を有する第1保護体を準備する工程と、
前記第1保護体本体が前記振動体を覆い、前記第1接合部が前記支持体に接合される、というように、前記第1保護体を前記振動発電素子に接合する、第1保護体接合工程と、
を更に備えた
ことを特徴とする請求項9または10に記載の製造方法。
前記第1保護体のうち前記振動発電素子に面する領域、及び、前記振動発電素子の前記振動体のうち前記第1保護体に面する領域、の少なくとも一方に突起が形成されている
ことを特徴とする請求項11乃至14のいずれか一項に記載の製造方法。
前記重錘体素子の前記第2面を覆う第2保護体であって、前記振動体接合部を覆う第2保護体本体と、前記第2保護体本体の外周を取り囲み、前記支持体接合部に接合される第2接合部と、を有する第2保護体を準備する工程と、
前記第2保護体本体が前振動体接合部を覆い、前記第2接合部が前記支持体接合部に接合されるように、前記第2保護体を前記重錘体素子に接合する、第2保護体接合工程と、
を更に備えた
ことを特徴とする請求項9乃至15のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上のような事情に鑑みて創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、生産性に優れた重錘体の接合方法を実現可能な重錘体素子を、提供することである。
【0008】
あるいは、本発明の目的は、当該重錘体素子を用いることにより、生産性に優れた重錘体付き発電素子の製造方法を、提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、振動体と、弾性体を介して前記振動体を支持する支持体と、を有する振動発電素子に接合され、前記振動体に重錘体を提供する、重錘体素子であって、
前記振動発電素子に接合される第1面と、
前記第1面とは反対側の面である第2面と、
前記振動体に接合される振動体接合部と、
前記振動体接合部から離間して位置し、前記支持体に接合される支持体接合部と、
前記振動体接合部と前記支持体接合部との間に位置し、前記振動体接合部と前記支持体接合部とを連結する連結部と、を備え、
前記連結部は、前記第1面側に、当該第1面よりも前記第2面側に位置する第3面を有し、
前記連結部の前記第3面には、前記振動体接合部の外周を取り囲む所定幅の溝が設けられている
ことを特徴とする重錘体素子である。
【0010】
本発明によれば、振動発電素子に接合された重錘体素子に、溝に沿って所定の切断工具によって切り込みを形成することにより、振動体接合部と支持体接合部とを容易に分断することができる。したがって、以上のような構成により、生産性に優れた重錘体の接合方法を実現可能な重錘体素子が提供され得る。
【0011】
前記溝は、前記振動体接合部の外周を1周のみ取り囲んでいて良い。
【0012】
あるいは、前記溝は、前記振動体接合部の外周を取り囲む第1溝と、この第1溝の外周を取り囲む第2溝と、を含んでいても良い。この場合、第1溝及び第2溝に沿って切り込みを形成することにより、重錘体基板から連結部を除去することができる。
【0013】
前記第1溝は、前記第3面の前記振動体接合部の側の縁部に沿って、形成されていて良い。この場合、第1溝を介して、振動体接合部と連結部の全部とを、分断することができる。
【0014】
前記第2溝は、前記第3面の前記支持体接合部の側の縁部に沿って、形成されていて良い。この場合、第1溝と第2溝とに切り込みを入れる工程によって、溝部の全部を重錘体素子から除去することができる。
【0015】
あるいは、前記溝は、前記第3面の前記支持体接合部の側の縁部に沿って、形成されていて良い。この場合、振動発電素子に提供される重錘体の質量を最大化することができる。
【0016】
前記振動発電素子及び前記重錘体素子は、接合される面の輪郭線が互いに同じ寸法の矩形の形状を有していて良い。この場合、重錘体素子を振動発電素子に接合する際の位置決めが容易である。
【0017】
前記振動体接合部は、前記第1面の輪郭線が矩形の形状を有していて良い。この場合、第1溝が直線状に形成されるため、当該第1溝に沿って切り込みを入れる工程が容易である。
【0018】
前記支持体接合部は、前記振動体接合部の外周を取り囲んでいて良い。この場合、支持体接合部を振動発電素子の支持体の全周にわたって接合することができるため、より強固な接合を実現することができる。
【0019】
あるいは、本発明は、重錘体付き振動発電素子の製造方法であって、
前述の重錘体素子を、前記振動体接合部が前記振動発電素子の前記振動体に接合され、前記支持体接合部が前記振動発電素子の前記支持体に接合されるように、当該振動発電素子に接合する接合工程と、
前記接合工程の後、前記重錘体素子に、前記第2面から前記溝まで連通する切り込みを形成し、前記連結部のうち前記溝よりも前記支持体接合部側の部分と前記振動体接合部とを前記所定幅の間隔を空けて分断する、分断工程と、を備えている。
【0020】
本発明によれば、前述した重錘体素子を振動発電素子に接合し、当該重錘体素子の溝に切り込みを入れることによって、重錘体として機能する振動体接合部を、振動体に接合させた状態で容易に切り出すことができる。すなわち、本発明によれば、前述した重錘体素子を用いることにより、生産性に優れた重錘体付き発電素子の製造方法を提供することができる。
【0021】
あるいは、本発明は、重錘体付き振動発電素子の製造方法であって、
第1溝及び第2溝を有する重錘体素子を、前記振動体接合部が前記振動発電素子の前記振動体に接合され、前記支持体接合部が前記振動発電素子の前記支持体に接合されるように、当該振動発電素子に接合する接合工程と、
前記接合工程の後、前記重錘体素子に、前記第2面から前記第1溝まで連通する第1切り込みを形成し、前記連結部のうち前記第1溝よりも前記支持体接合部側の部分と前記振動体接合部とを分断する、第1分断工程と、
前記接合工程の後、前記重錘体素子に、前記第2面から前記第2溝まで連通する第2切り込みを形成し、前記連結部のうち前記第2溝よりも前記振動体接合部側の部分と前記支持体接合部とを分断する、第2分断工程と、
前記連結部のうち前記第1切り込みと前記第2切り込みとの間に位置する部分を除去する除去工程と、を備えている。
【0022】
本発明によれば、前述した重錘体素子を振動発電素子に接合し、当該重錘体素子の第1溝及び第2溝に切り込みを入れることによって、重錘体として機能する振動体接合部を、振動体に接合させた状態で容易に切り出すことができる。すなわち、本発明によっても、前述した重錘体素子を用いることにより、生産性に優れた重錘体付き発電素子の製造方法を提供することができる。
【0023】
前記接合工程の後、前記重錘体素子に、前記第2面から前記第1溝まで連通する第1切り込みを形成し、前記連結部のうち前記第1溝よりも前記支持体接合部側の部分と前記振動体接合部とを分断する、第1分断工程と、
前記接合工程の後、前記重錘体素子に、前記第2面から前記第2溝まで連通する第2切り込みを形成し、前記連結部のうち前記第2溝よりも前記振動体接合部側の部分と前記支持体接合部とを分断する、第2分断工程と、
前記連結部のうち前記第1切り込みと前記第2切り込みとの間に位置する部分を除去する除去工程と、を備えている。
【0024】
本発明によれば、前述した重錘体素子を振動発電素子に接合し、当該重錘体素子の第1溝及び第2溝に切り込みを入れることによって、重錘体として機能する振動体接合部を、振動体に接合させた状態で容易に切り出すことができる。すなわち、本発明によれば、前述した重錘体素子を用いることにより、生産性に優れた重錘体付き発電素子の製造方法を提供することができる。
【0025】
以上の製造方法は、前記振動発電素子の、前記重錘体素子が接合されている面とは反対側の面を覆う第1保護体であって、前記振動体を覆う第1保護体本体と、前記第1保護体本体の外周を取り囲み、前記支持体に接合される第1接合部と、を有する第1保護体を準備する工程と、
前記第1保護体本体が前記振動体を覆い、前記第1接合部が前記支持体に接合される、というように、前記第1保護体を前記振動発電素子に接合する、第1保護体接合工程と、
を更に備えていて良い。
【0026】
この場合、振動体及び重錘体の振動が許容されつつ、重錘体素子の第2面側において、振動体及び重錘体に対する外部からの干渉が禁止されるため、安定した発電を行うことができる。
【0027】
前記第1保護体の前記第1保護体本体は、前記振動体との干渉を回避するための窪みを有していて良い。この場合、振動体は、第1保護体に接触することが無いため、支持体に対して安定的に振動することができる。
【0028】
前記第1保護体は、前記振動体側の面に、前記第1保護体本体とは異なる位置に溝部を有し、
前記溝部には、浅溝と、この浅溝の縁部に沿って形成され、深さが当該浅溝よりも深い深溝と、が設けられ、
前記製造方法は、前記第1保護体接合工程の後、前記第1保護体に、前記振動発電素子側の面とは反対側の面から前記深溝まで連通する切り込みを形成することにより、前記溝部を他の部分から分断する工程を、更に備えていて良い。
【0029】
この場合、振動発電素子の第1保護基板側の面のうち、溝部に対応する領域を外部に露出させることが容易である。すなわち、振動発電素子に設けられた電荷を取り出すための端子等に対応する位置に溝部を設ければ、当該端子を簡易な工程によって外部に露出させることができる。
【0030】
一例として、前記第1保護体は、前記振動発電素子に接合される面の輪郭線が矩形の形状を有し、
前記溝部は、前記矩形の対向する2つの縁部を含む領域に設けられていて良い。
【0031】
この場合、第2凹部が設けられた対向する2辺の近傍の領域が、分断及び除去されることになる。
【0032】
前記第1保護体のうち前記振動発電素子に面する領域、及び、前記振動発電素子の前記振動体のうち前記第1保護体に面する領域、の少なくとも一方に突起が形成されていて良い。この場合、振動発電素子の振動体が振動したときに、第1保護体を当該振動体のストッパとして有効に機能させることができる。
【0033】
前記製造方法は、前記重錘体素子の前記第2面を覆う第2保護体であって、前記振動体接合部を覆う第2保護体本体と、前記第2保護体本体の外周を取り囲み、前記支持体接合部に接合される第2接合部と、を有する第2保護体を準備する工程と、
前記第2保護体本体が前振動体接合部を覆い、前記第2接合部が前記支持体接合部に接合されるように、前記第2保護体を前記重錘体素子に接合する、第2保護体接合工程と、
を更に備えていて良い。
【0034】
この場合、振動体及び重錘体の振動が許容されつつ、発電素子の、重錘体素子が接合されている面の側において、振動体及び重錘体に対する外部からの干渉が禁止されるため、安定した発電を行うことができる。
【0035】
前記第2保護体の前記第2保護体本体は、前記振動体接合部との干渉を回避するための窪みを有していて良い。この場合、重錘体は、第2保護体に接触することが無いため、支持体に対して安定的に振動することができる。
【0036】
前記第2保護体のうち前記振動体接合部に面する領域、及び、前記振動体接合部のうち前記第2保護体に面する領域、の少なくとも一方に突起が形成されていて良い。この場合板状構造体が振動したときに、第2保護体を当該板状構造体のストッパとして有効に機能させることができる。
【0037】
以上の発明において、振動発電素子の一例としては、エレクトレット発電素子が挙げられる。
【0038】
また、以上の製造方法は、複数の前記振動発電素子が形成された振動発電素子基板を準備する工程と、
複数の前記重錘体素子が形成された重錘体素子基板を準備する工程と、
前記振動発電素子基板及び前記重錘体素子基板を接合する工程と、を更に備え、
各重錘体素子及び各振動発電素子は、各基板を接合した際に互いに1対1に対応するように形成されていて良い。
【0039】
この場合、重錘体付きエレクトレット発電素子を効率的に製造することができる。
【0040】
更には、以上の製造方法は、前記振動発電素子の、前記重錘体素子が接合されている面とは反対側の面を覆う第1保護体が複数形成された第1保護基板を準備する工程と、
前記重錘体素子の前記第2面を覆う第2保護体が複数形成された第2保護基板を準備する工程と、
前記第1保護基板を前記振動発電素子基板に接合し、前記第2保護基板を前記重錘体素子基板に接合する工程と、を更に備え、
各第1保護体は、前記第1保護基板を前記振動発電素子基板に接合した際に、各振動発電素子と1対1に対応するように形成されており、
各第2保護体は、前記第2保護基板を前記重錘体素子基板に接合した際に、各重錘体素子と1対1に対応するように形成されていて良い。
【0041】
この場合、第1保護体及び第2保護体が接合された重錘体付きエレクトレット発電素子を、効率的に製造することができる。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、振動発電素子に重錘体素子を接合し、この重錘体素子に対して第1溝及び第2溝に沿って所定の切断工具によって切り込みを形成することにより、振動体接合部と支持体接合部とを容易に分断することができる。すなわち、本発明によれば、生産性に優れた重錘体の接合方法を実現可能な重錘体素子が提供され得る。
【0043】
あるいは、本発明によれば、前述した重錘体素子を振動発電素子に接合し、当該重錘体素子の溝に切り込みを入れることによって、重錘体として機能する振動体接合部を、振動体に接合させた状態で容易に切り出すことができる。すなわち、本発明によれば、前述した重錘体素子を用いることにより、生産性に優れた重錘体付き発電素子の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下に、添付の図面を参照して、本発明の一実施の形態を詳細に説明する。
【0046】
<<< §1 振動発電素子 >>>
図1は、本発明の一実施の形態による重錘体素子100(
図2A参照)が接合される、振動発電素子の一例を示す概略図である。
図1(a)は、振動発電素子の概略平面図であり、
図1(b)は、
図1(a)のX軸に沿った概略断面図である。
【0047】
図1に示す振動発電素子は、特願2017−22388に例示されているエレクトレット発電素子1である。
図1に示すように、エレクトレット発電素子1は、XYZ三次元直交座標系に対して固定され、XY平面上に配置された枠状構造体80と、枠状構造体80に対して変位可能であり、XY平面上に配置された板状構造体70と、板状構造体70及び枠状構造体80を接続する4つの弾性変形体91〜94と、を備えている。本明細書では、説明の便宜上、Z軸方向を高さ方向として、Z軸正側を上側と呼び、Z軸負側を下側と呼ぶことにする。
【0048】
板状構造体70は、Z軸方向から見て、矩形の形状であり、当該矩形を構成する4辺のうち、Y軸と平行に延在する2辺に対応する各側面に、変位凸部71、72が設けられている。
図1に示す例では、Y軸と平行に延在する2辺に対応する側面のうち正のX軸と交わる側面を第1変位外面70aとすると、当該第1変位外面70aには、X軸正方向に突出した3つの第1変位凸部71が設けられている。また、Y軸と平行に延在する2辺に対応する側面のうち負のX軸と交わる側面を第2変位外面70bとすると、当該第2変位外面70bには、X軸負方向に突出した3つの第2変位凸部72が設けられている。もちろん、他の実施の形態では、1つ、2つまたは4つ以上の、任意の数の変位凸部が設けられていて良い。更に、板状構造体70は、XY平面に平行な上面70eおよび下面70fを有している。
【0049】
枠状構造体80は、Z軸方向から見て矩形の枠状の部材であり、板状構造体70の第1及び第2変位外面70a、70bに対向する内面には、少なくとも1つの固定凸部81、82が設けられている。
図1に示す例では、枠状構造体80の内面のうち、正のX軸と交わる(板状構造体70の第1変位外面70aに対向する)内面を第1固定内面80aとすると、当該第1固定内面80aには、X軸負方向に突出した3つの第1固定凸部81が設けられている。また、枠状構造体80の内面のうち、負のX軸と交わる(板状構造体70の第2変位外面70bに対向する)内面を第2固定内面80bとすると、当該第2固定内面80bには、X軸正方向に突出した3つの第2固定凸部82が設けられている。但し、第1及び第2固定凸部81、82の数は、3つに限定されるものではなく、対応する変位凸部71、72の数と同じ数だけ設けられていれば良い。
【0050】
本実施の形態では、第1変位凸部71の頂面(X軸正側の面)及び第1固定凸部81の頂面(X軸負側の面)は、共にYZ平面と平行である。これらの頂面のうち、一方の頂面には、エレクトレット電極層(不図示)を介して第1エレクトレット材料層75が形成されており、他方の頂面には、第1対向電極層85が形成されている。本実施形態では、
図1に示すように、第1変位凸部71の頂面に第1エレクトレット材料層75が形成され、第1固定凸部81の頂面を含む第1固定内面80aの表面に第1対向電極層85が形成されている。第1対向電極層85は、枠状構造体80上に形成された配線を介して、電極端子である第1パッドP1に電気的に接続されている。
【0051】
同様に、第2変位凸部72の頂面(X軸負側の面)及び第2固定凸部82の頂面(X軸正側の面)は、共にYZ平面と平行である。これらの頂面のうち、一方の頂面には、エレクトレット電極層(不図示)を介して第2エレクトレット材料層76が形成されており、他方の頂面には、第2対向電極層86が形成されている。本実施形態では、
図1に示すように、第2変位凸部72の頂面に第2エレクトレット材料層76が形成され、第2固定凸部82の頂面を含む第2固定内面80bの表面に第2対向電極層86が形成されている。第2対向電極層86は、枠状構造体80上に形成された配線を介して、電極端子である第2パッドP2に電気的に接続されている。もちろん、エレクトレット材料層75は、第1及び第2変位外面70a、70bの全面にわたって形成されてもよい。
【0052】
図1に示す例では、第1エレクトレット材料層75をYZ平面に投影した正射影投影像と、第1対向電極層85のうち第1固定凸部81の頂面に形成された部分をYZ平面に投影した正射影投影像とは、ぴったりと一致している。更に、第2エレクトレット材料層76をYZ平面に投影した正射影投影像と、第2対向電極層86のうち第2固定凸部82の頂面に形成された部分をYZ平面に投影した正射影投影像とは、ぴったりと一致している。
【0053】
第1及び第2エレクトレット材料層75、76と第1及び第2変位外面70a、70bとの間に配置されたエレクトレット電極層(不図示)は、後述される弾性変形体91〜94上に形成された配線を介して、適宜の発電回路に接続されるようになっている。
【0054】
図1に示すエレクトレット発電素子1では、板状構造体70がX軸、Y軸およびZ軸の全ての方向に変位可能となるように、板状構造体70と枠状構造体80とが4本の弾性変形体91〜94によって次のように接続されている。すなわち、弾性変形体91〜94は、それぞれの一端が枠状構造体80の内側角部に規定された固定支持点b1,b2,b3,b4に固定され、それぞれの他端が板状構造体70の角部に規定された変位支持点a1,a2,a3,a4に固定されている。換言すれば、板状構造体70の4つの角部に各1つずつ設けられた合計4つの変位支持点a1,a2,a3,a4と枠状構造体80の4つの内側角部に各1つずつ設けられた合計4つの固定支持点b1,b2,b3,b4とは、1対1に対応しており、対応する変位支持点と固定支持点とがそれぞれ個別の弾性変形体91,92,93,94によって接続されている。各弾性変形体91〜94は、
図1(b)に示すように、板状構造体70の厚みおよび枠状構造体80の厚みよりも小さな厚みを有する細長い線状の構造体によって構成されている。
【0055】
図1に示すエレクトレット発電素子1は、単一の質量としての板状構造体70が弾性変形体91〜94を介して枠状構造体80に支持された構成であることから、板状構造体70の振動は、単一の共振周波数frを有している。この共振周波数frは、板状構造体70の質量と、弾性変形体91〜94のバネ定数とによって決定される。もちろん、板状構造体70は、X,Y,Zの各軸方向へ移動することから、バネ定数は、着目する振動方向に応じて、弾性変形体91〜94の合成バネ定数として定義されることになる。
【0056】
本実施の形態では、弾性変形体91〜94を丈夫に(バネ定数を大きく)構成しつつ、エレクトレット発電素子1の共振周波数と、当該エレクトレット発電素子1が使用される環境において頻繁に発生する周波数とが乖離することを回避するべく、次に示すような重錘体素子100を用いて、エレクトレット発電素子1の板状構造体70に、質量が付加されることになる。
【0057】
<<< §2 本発明の第1の実施の形態による重錘体素子 >>>
図2Aは、本発明の第1の実施の形態による重錘体素子100を示す概略平面図である。また、
図3は、
図2Aの[3]−[3]線断面図であり、
図4は、
図2Aの[4]−[4]線断面図である。
【0058】
図2A乃至
図4に示すように、本実施の形態による重錘体素子100は、§1で説明したエレクトレット発電素子1に接合され、板状構造体70に重錘体を提供するものである。この重錘体素子100は、エレクトレット発電素子1に接合される一方の面101(
図2Aにおける手前側の面、
図3及び
図4における上方の面)と、一方の面101とは反対側の面である他方の面102と、振動体としての板状構造体70に接合される振動体接合部10と、振動体接合部10から離間して位置し、板状構造体70を支持する枠状構造体80に接合される支持体接合部20と、振動体接合部10と支持体接合部20との間に位置し、振動体接合部10と支持体接合部20とを連結する連結部30と、を備えている。換言すれば、重錘体素子100は、連結部30によって、振動体接合部10と、その外周を取り囲む支持体接合部20と、に区画されている。
【0059】
ここでは、説明の便宜上、
図2A乃至
図4に示すように、重錘体素子100の中心を原点OとするXYZ三次元座標系を定義する。この座標系は、
図1における座標系とは別個のものであるが、重錘体素子100がエレクトレット発電素子1に接合された際に、
図1に示す座標系のX、Y、Zの各軸方向と
図2A乃至
図4におけるX、Y、Zの各軸方向とが、それぞれ平行となるように、特には、Z軸が一致するように、規定してある。
【0060】
図2Aに示すように、振動体接合部10は、Z軸方向から見て、矩形の形状を有している。図示されていないが、振動体接合部10は、XY平面に投影した正射影投影像が、エレクトレット発電素子1の板状構造体70をXY平面に投影した正射影投影像の輪郭線と略一致するように構成されている。
【0061】
また、
図2Aに示すように、支持体接合部20は、Z軸方向から見て、内縁部及び外縁部が共に矩形の輪郭線を有する枠状の形状となっており、振動体接合部10の外周を取り囲んでいる。本実施の形態の支持体接合部20は、XY平面に投影した正射影投影像が、エレクトレット発電素子1の枠状構造体80をXY平面に投影した正射影投影像と略一致するように構成されている。但し、支持体接合部20をXY平面に投影した正射影投影像の外縁部の輪郭線と、エレクトレット発電素子1をXY平面に投影した正射影投影像の外縁部の輪郭線とは、ぴったりと一致するように構成されている。
【0062】
連結部30は、振動体接合部10と支持体接合部20との間隙の全部に設けられ、振動体接合部10を取り囲む、矩形の枠状の領域となっている。連結部30は、XY平面に投影した正射影投影像が、エレクトレット発電素子1の板状構造体70と枠状構造体80との間隙部分をXY平面に投影した正射影投影像に略一致するように構成されている。
【0063】
図2A乃至
図4に示すように、連結部30は、上側に、一方の面101よりも下側に位置する、所定の幅の平坦面31を有している。平坦面31には、振動体接合部10の側の縁部に沿って形成された第1溝32と、支持体接合部20の側の縁部に沿って形成された第2溝33と、が形成されている。換言すれば、本実施の形態の連結部30には、その内周縁及び外周縁にそれぞれ形成された第1溝32及び第2溝33と、これら第1溝32及び第2溝33によって挟まれた領域に形成された平坦面31と、が設けられている。
【0064】
本実施の形態の平坦面31は、一定の深さで形成されている。更に、第1溝32及び第2溝33も、一定の深さで形成されている。但し、このような形態には限られず、他の実施の形態では、溝の延在方向に沿って当該溝の深さが変化していても良い。
【0065】
なお、
図2Aに示す重錘体素子100に代えて、
図2Bに示す重錘体素子100aを採用することも可能である。
図2Bは、
図2Aの重錘体素子100の変形例を示す概略平面図である。本変形例による重錘体素子100aは、第1溝32及び第2溝33が
図2Aに示す重錘体素子100とは異なり、矩形の重錘体素子100aの縦方向及び横方向に横断する各4本、合計8本の溝32a、32b、33a、33bから、構成されている。重錘体素子100aにおいては、縦方向に延びる4本の溝32b、33bのうち内側に位置する2本の溝32bと、横方向に延びる4本の溝32a、33aのうち内側に位置する2本の溝32aと、の合計4本の溝によって取り囲まれる矩形の領域が、振動体接合部10である。また、重錘体素子100aのうち、残りの4本の溝33a、33bによって取り囲まれる矩形の領域の外側の領域が、支持体接合部20である。このような、重錘体素子100aを横断する溝32a、32b、33a、33bは、
図2Aに示す矩形の溝32、33を形成するよりも、形成プロセスが容易である。
【0066】
また、前述したように、第1溝32及び第2溝33と平坦面31とは、Z軸方向において異なる深さを有している。このような深さの異なる溝32、33及び平坦面を化学的にエッチングによって形成することは、困難である。そこで、第1溝32及び第2溝33をダイシングソーで形成し、平坦面31を化学的にエッチングすることによって形成すればよい。このことは、
図2Bに示す変形例においても同様である。
【0067】
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< 3−1. 重錘体素子と振動発電素子との接合 >
次に、
図5乃至
図8を参照して、重錘体付き振動発電素子の製造方法について説明する。
【0068】
図5は、
図1のエレクトレット発電素子1に
図2Aの重錘体素子100を接合する工程を説明するための概略断面図であり、
図6は、
図5において、重錘体素子100に切り込みを形成する工程を説明するための概略断面図であり、
図7は、
図6の工程が完了した状態を示す概略断面図であり、
図8は、
図6の工程の後で、連結部30が除去された状態を示す概略断面図である。ここで説明する重錘体付き振動発電素子とは、前述のエレクトレット発電素子1の板状構造体70に、重錘体素子100により重錘体が接合された発電素子である。
【0069】
また、説明の便宜上、
図5乃至
図8に示すように、エレクトレット発電素子1と重錘体素子100との接合領域の中心を原点とするXYZ三次元座標系を定義する。この座標系は、
図1乃至
図4における座標系とは別個のものであるが、それらの座標系のX、Y、Zの各軸方向と
図5乃至
図8におけるX、Y、Zの各軸方向とが、それぞれ平行となるように、特には、Z軸が一致するように、規定してある。
【0070】
まず、
図5に示すように、エレクトレット発電素子1の下面(
図1におけるZ軸負側の面)に、重錘体素子100が接合される。ここでは、エレクトレット発電素子1の下面とは、エレクトレット発電素子1のうち、弾性変形体91〜94が形成されている側とは反対側の面を意味する。
図5に示すように、この接合工程において、重錘体素子100は、溝32、33が形成された一方の面101がエレクトレット発電素子1に面するような向きで、振動体接合部10が板状構造体70に接合され、且つ、支持体接合部20が枠状構造体80に接合されるように、当該エレクトレット発電素子1に接合される。換言すれば、重錘体素子100は、連結部30がエレクトレット発電素子1の板状構造体70と枠状構造体80との間隙(弾性変形体91〜94が形成された領域)に対応するように、エレクトレット発電素子1に接合される。
【0071】
重錘体素子100は、適宜の接着剤によってエレクトレット発電素子1に接合されるが、
図5においては、接着剤の層は図示を省略してある。また、重錘体素子100をエレクトレット発電素子1に対してしっかりと接合することができるならば、接着によらず、その他の接合方法(例えば、重錘体素子100がガラス基板ならば陽極接合、シリコン基板ならば直接接合)を採用することも可能である。接着剤を使用する場合は、有機系の接着剤や共晶合金による接着が考えられる。
【0072】
次に、
図6に示すように、重錘体素子100の他方の面102(
図6における下面)から第1溝32まで連通する切り込みが、所定の工具T(例えば、ダイシングソー)によって形成される。同様に、重錘体素子100の他方の面102から第2溝33まで連通する切り込みが、所定の工具Tによって形成される。
図6には、第2溝33に連通する切り込みが形成されている様子が示されている。本実施の形態の各切り込みは、第1溝32及び第2溝33の全周にわたって形成される。なお、
図6に示す例では、切り込みがZ軸と平行に形成されているが、他の実施の形態では、Z軸に対して角度をもって形成されても良い。
【0073】
このような切り込みが第1溝32の全部にわたって形成されると、振動体接合部10と連結部30とが分断される。更に、切り込みが第2溝33の全部にわたって形成されると、連結部30と支持体接合部20とが分断される。
【0074】
ところで、連結部30は、平坦面31の存在によってエレクトレット発電素子1には全く接合されていない。このため、
図7に示すように、2つの切り込みが形成されることによって、連結部30は、重錘体素子100及びエレクトレット発電素子1から完全に切り離されることになる。
【0075】
したがって、
図8に示すように、この連結部30を除去することによって、重錘体素子100から振動体接合部10及び支持体接合部20が切り出されるのである。そして、振動体接合部10は、エレクトレット発電素子1の板状構造体70に付加される質量として機能する。一方、支持体接合部20は、後述される下部保護体50を取り付けるための台座として機能することになる。
【0076】
すなわち、
図8に示す状態の重錘体付きエレクトレット発電素子1は、それ自体で適宜に発電を行うことが可能ではあるが、板状構造体70及び振動体接合部10が外部に露出した状態となっている。このため、より安定的に発電を行うためには、板状構造体70及び振動体接合部10を外部からの不所望な接触や衝撃などによる過負荷から保護することが好ましい。このようなことから、以下に説明するように、
図8に示す重錘体付きエレクトレット発電素子1に対して、その上部を保護する上部保護体40、及び、その下部を保護する下部保護体50が、追加的に取り付けられる。なお、以下の説明では、「重錘体付きエレクトレット発電素子1」という語により、重錘体のみが接合されたエレクトレット発電素子1を意味する場合と、追加的に上部保護体40及び/または下部保護体50が接合されたエレクトレット発電素子1を意味する場合と、を適宜に使い分けるものとする。
【0077】
< 3−2. 上部保護体 >
まず、
図9乃至
図11を参照して、上述した重錘体付きのエレクトレット発電素子1の上部(
図8における上部)を保護するための上部保護体40について説明する。
【0078】
図9は、上部保護体40の概略底面図である。また、
図10は、
図9の[10]−[10]線断面図であり、
図11は、
図9の[11]−[11]線断面図である。
【0079】
ここでは、説明の便宜上、
図9乃至
図11に示すように、上部保護体40の中心を原点OとするXYZ三次元座標系を定義する。この座標系は、
図1乃至
図8における座標系とは別個のものであるが、上部保護体40が重錘体付きエレクトレット発電素子1に接合された際に、
図1乃至
図8に示す座標系のX、Y、Zの各軸方向と
図9乃至
図11におけるX、Y、Zの各軸方向とが、それぞれ平行となるように、特には、Z軸が一致するように、規定してある。但し、
図9は、上部保護体40の底面図であるため、
図9において、Z軸は紙面の手前側から奥側に向かって延びている。
【0080】
図9乃至
図11に示すように、上部保護体40は、全体として平板状の形状を有し、重錘体付きエレクトレット発電素子1に接合された際に板状構造体70をZ軸正側から覆う上部保護体本体41と、上部保護体本体41の外周を取り囲み、エレクトレット発電素子1の枠状構造体80に接合される接合部42と、を有している。上部保護体本体41には、底面側(Z軸負側)に矩形の凹部が形成されている。この矩形の凹部は、XY平面に投影した正射影投影像が、重錘体付きエレクトレット発電素子1の枠状構造体80によって取り囲まれた領域をXY平面に投影した正射影投影像を包含する大きさを有している。換言すれば、上部保護体40の矩形の凹部をXY平面に投影した正射影投影像は、第1変位凸部71及び第2変位凸部72(
図1及び
図2A参照)を含む板状構造体70をXY平面に投影した正射影投影像を包含する大きさを有している。上部保護体40をエレクトレット発電素子1に接合することによって、板状構造体70に過負荷が作用しても、板状構造体70の変位が制限されるため、エレクトレット発電素子1が破損することがない。
【0081】
また、
図9乃至
図11に示すように、矩形の凹部には、突起41aが形成されている。この突起41aは、エレクトレット材料層75、76が上部保護体40に接触しないようにするためのものである。エレクトレット材料層75、76が上部保護体40に接触すると、電荷がリークしてしまう。突起41aは、これを回避するために設けられている。もちろん、突起41aに代えて、エレクトレット材料層75、76の電荷のリークを防止するための保護膜が設けられても良い。
【0082】
また、矩形の凹部の深さが浅いと、エアーダンピングの影響により、板状構造体70に生じる振幅が不十分なものとなり、エレクトレット発電素子1の発電効率が低下してしまう。逆に、矩形の凹部の深さを深くすると、上部保護体40は、板状構造体70のストッパの機能を果たすことができない。これに対し、上部保護体40に突起41aが存在することにより、矩形の凹部の深さを深くしても、上部保護体40をストッパとして有効に機能させることができる。
【0083】
一方、接合部42は、XY平面に投影した正射影投影像が、重錘体付きエレクトレット発電素子1の枠状構造体80をXY平面に投影した正射影投影像に略一致するように構成されている。
図9乃至
図11に示すように、接合部42には、Z軸負側から見て、Y軸と平行に延び、互いに対向する2つの縁部領域42a、42bに、それぞれ2種類の溝が設けられている。ここで、縁部領域42a、42bとは、Y軸に平行に延在する2つの縁部40a、40bを含み、X軸方向に一定の幅をもった領域を意味している。但し、
図9乃至
図11に示すように、各縁部領域42a、42bは、上部保護体本体41とは明確に区画されている。
【0084】
図9乃至
図11に示すように、各縁部領域42a、42bに設けられている溝には、各縁部40a、40bを含み所定の幅を有する浅溝43、45と、当該浅溝43、45の幅方向(X軸方向)における原点側の縁部に形成された深溝44、46と、が含まれている。
図10及び
図11に示すように、深溝44、46は、Z軸方向の深さが浅溝43、45よりも深い溝である。浅溝43、45及び深溝44、46は、いずれも、縁部領域42a、42bのY軸方向における両端部まで、延在している。
【0085】
浅溝43、45及び深溝44、46が設けられた縁部領域42a、42bは、後述されるように、重錘体付きエレクトレット発電素子1に設けられたパッドP(電荷を取り出すための電極端子)を露出させるために、上部保護体40から分断及び除去されることになる。
【0086】
なお、本実施の形態では、浅溝43、45及び深溝44、46が接合部42の縁部領域42a、42bに設けられているが、これは、上部保護体40が接合される重錘体付きエレクトレット発電素子1のパッドPが当該発電素子1の縁部領域に設けられているためである。したがって、重錘体付きエレクトレット発電素子1のパッドPが他の領域に設けられている場合には、浅溝43、45及び深溝44、46も当該他の領域に対応する領域に設けられることになる。この場合、深溝は、浅溝の縁部全体(外周全体)に沿って連続的に形成されていればよい。
【0087】
< 3−3. 下部保護体 >
次に、
図12及び
図13を参照して、重錘体付きのエレクトレット発電素子1の下部(
図8における下部)を保護するための下部保護体50について、説明する。
【0088】
図12は、下部保護体50の概略平面図であり、
図13は、
図12の[13]−[13]線断面図である。
【0089】
ここでは、説明の便宜上、
図12乃至
図13に示すように、下部保護体50の中心を原点OとするXYZ三次元座標系を定義する。この座標系は、
図1乃至
図11における座標系とは別個のものであるが、下部保護体50が重錘体付きエレクトレット発電素子1に接合された際に、
図1乃至
図11に示す座標系のX、Y、Zの各軸方向と
図12乃至
図13におけるX、Y、Zの各軸方向とが、それぞれ平行となるように、特には、Z軸が一致するように、規定してある。但し、
図12は、下部保護体50の底面図であるため、
図12において、Z軸は紙面の奥側から手前側に向かって延びている。
【0090】
図12及び
図13に示すように、本実施の形態の下部保護体50は、全体として平板状の形状を有しており、重錘体付きエレクトレット発電素子1に接合された際に、振動体接合部10(重錘体)を他方の面102の側(下側)から覆う下部保護体本体51と、下部保護体本体51の外周を取り囲み、支持体接合部20を介して枠状構造体80に接合される第2接合部52と、を有している。下部保護体本体51には、上面側に矩形の凹部が形成されている。この矩形の凹部は、XY平面に投影した正射影投影像が、上部保護体40に形成された凹部をXY平面に投影した正射影投影像に略一致するように構成されている。すなわち、下部保護体本体51の矩形の凹部をXY平面に投影した正射影投影像は、第1変位凸部71及び第2変位凸部72(
図1及び
図2A参照)を含む板状構造体70をXY平面に投影した正射影投影像を包含する大きさを有している。下部保護体50を支持体接合部20に接合することによって、板状構造体70に過負荷が作用しても板状構造体70の変位が制限されるため、エレクトレット発電素子1が破損することがない。
【0091】
ところで、前述した上部保護体40と同様に、矩形の凹部の深さが浅いと、エアーダンピングの影響により、板状構造体70に生じる振幅が不十分なものとなり、エレクトレット発電素子1の発電効率が低下してしまう。逆に、矩形の凹部の深さを深くすると、下部保護体50は、板状構造体70のストッパの機能を果たすことができない。このような事情に基づいて、
図12及び
図13に示すように、矩形の凹部には、突起51aが形成されている。この突起51aの存在によって、矩形の凹部の深さを深くしても、下部保護体50をストッパとして有効に機能させることができる。
【0092】
一方、第2接合部52は、XY平面に投影した正射影投影像が、上部保護体40の接合部42をXY平面に投影した正射影投影像に略一致するように構成されている。すなわち、第2接合部52は、重錘体付きエレクトレット発電素子1の枠状構造体80をXY平面に投影した正射影投影像に略一致するように構成されている。
【0093】
< 3−4. 重錘体付きエレクトレット発電素子への上部保護体及び下部保護体の取り付け >
次に、重錘体付きエレクトレット発電素子1に対する、上部保護体40及び下部保護体50の取り付け方法について、
図14乃至
図19を参照して説明する。
【0094】
図14は、
図8の重錘体付きエレクトレット発電素子1に下部保護体50を接合する工程を説明するための概略断面図であり、
図15は、
図14の重錘体付きエレクトレット発電素子1に上部保護体40を接合する工程を説明するための概略断面図である。また、
図16は、
図15の重錘体付きエレクトレット発電素子1の概略平面図であり、
図17は、上部保護体40の深溝44、46に向かって切り込みを形成する工程を説明するための概略断面図であり、
図18は、上部保護体40の縁部領域42a、42bを除去する工程を説明するための概略断面図であり、
図19は、
図18の重錘体付きエレクトレット発電素子1の概略上面図である。説明の便宜上、
図14乃至
図19には、XYZ三次元座標系が規定されているが、この座標系は、
図5乃至
図8において規定された座標系と同じである。
【0095】
まず、
図14に示すように、重錘体付きエレクトレット発電素子1の下面に、下部保護体50が接合される。下部保護体50は、第2接合部52が重錘体素子100の支持体接合部20の他方の面(下面)に、例えば接着剤によって接合される。もちろん、下部保護体50を支持体接合部20に対してしっかりと接合することができるならば、接着によらず、その他の接合方法(例えば、重錘体素子100がガラス基板ならば陽極接合、シリコン基板ならば直接接合)を採用しても良い。接着剤を使用する場合は、有機系の接着剤や共晶合金による接着が考えられる。
【0096】
下部保護体50は、前述したように振動体接合部10に面する下部保護体本体51の上面に凹部を有しているため、重錘体付きエレクトレット発電素子1に接合された状態で、振動体接合部10との間に所定の間隙S1が形成される。この間隙S1は、エレクトレット発電素子1の発電時に、板状構造体70及び振動体接合部10が最大の振幅で振動しても、当該振動体接合部10と下部保護体50とが干渉しないために十分な寸法を有する。この下部保護体50の存在によって、過負荷に対する振動体接合部10の過剰な変位が、禁止される。
【0097】
次に、
図15に示すように、重錘体付きエレクトレット発電素子1の上面に、上部保護体40が接合される。上部保護体40は、接合部42がエレクトレット発電素子1の枠状構造体80の上面(
図15におけるZ軸正側の面)に、例えば接着剤によって接合される。上部保護体40は、前述したように板状構造体70に面する上部保護体本体41の下面に凹部を有しているため、重錘体付きエレクトレット発電素子1に接合された状態で、板状構造体70との間に所定の間隙S2が形成される。この間隙S2は、エレクトレット発電素子1の発電時に、板状構造体70及び振動体接合部10が最大の振幅で振動しても、当該板状構造体70と上部保護体40とが干渉しないために十分な寸法を有する。この上部保護体40の存在によって、過負荷に対する板状構造体70の過剰な変位が、禁止される。
【0098】
ところで、前述したように、エレクトレット発電素子1には、発電によって生じた電荷を取り出すためのパッドPが設けられている。このパッドPは、枠状構造体80の上面に設けられているため、
図16に示すように、上部保護体40を当該枠状構造体80に接合した状態では、外部からパッドPにアクセスすることができない(
図16において、パッドPは、隠れ線で示されている)。このため、次なる工程として、上部保護体40のうち、パッドPの上方に位置する、対向する一対の縁部領域42a、42bが除去される。
【0099】
具体的な除去の方法は、3−1.にて説明した、重錘体素子100における連結部30を除去するための方法と実質的に同様である。すなわち、
図17に示すように、上部保護体40の上面から、深溝44、46まで連通する切り込みが、所定の工具Tによって形成される。これらの切り込みは、深溝46の長さ全部にわたって形成される。
図17に示すように、切り込みは、Z軸と平行な方向に向かって形成されて良い。
【0100】
以上の切り込みによって、上部保護体40の対向する縁部領域42a、42bが、当該上部保護体40から分断される。その後、
図18に示すように、各縁部領域42a、42bは、除去される。
【0101】
以上のような本実施の形態によれば、エレクトレット発電素子1に重錘体素子100を接合した後で、当該重錘体素子100に対して第1溝32及び第2溝33に沿って所定の切断工具Tによって切り込みを形成することにより、振動体接合部10と支持体接合部20とを容易に分断することができる。したがって、以上のような構成により、生産性に優れた重錘体の接合方法を実現可能な重錘体素子100が提供され得る。
【0102】
また、エレクトレット発電素子1及び重錘体素子100は、接合される面の輪郭線が互いに同じ寸法の矩形の形状を有している。このため、重錘体素子100をエレクトレット発電素子1に接合する際の位置決めが、容易である。
【0103】
また、振動体接合部10は、一方の面101の輪郭線が矩形の形状を有していることにより、第1溝32が直線状に形成されている。このため、当該第1溝32に沿って切り込みを入れる工程が容易である。
【0104】
また、重錘体素子100の支持体接合部20は、振動体接合部10の外周を取り囲んでいる。このため、支持体接合部20をエレクトレット発電素子1の枠状構造体80の全周にわたって接合することができるため、より強固な接合が実現される。
【0105】
本実施の形態の第1溝32は、平坦面31の振動体接合部10の側の縁部に沿って、形成されている。このため、第1溝32を介して、振動体接合部10と連結部30の全部とを、分断することができる。
【0106】
更に、本実施の形態の第2溝33は、平坦面31の支持体接合部20の縁部に沿って形成されている。このため、第1溝32と第2溝33とに切り込みを入れる工程によって、連結部30の全部を重錘体素子100から除去することができる。
【0107】
また、3−1.にて説明した、重錘体素子100をエレクトレット発電素子1に接合し、重錘体素子100の第1溝32及び第2溝33に切り込みを入れる、という製造方法によれば、重錘体として機能する振動体接合部10を、重錘体素子100から容易に切り出すことができる。すなわち、本発明によれば、前述した重錘体素子100を用いることにより、生産性に優れた重錘体付きエレクトレット発電素子1の製造方法を提供することができる。
【0108】
以上の製造方法は、平板状の基板の下面に凹部を有し、重錘体付きエレクトレット発電素子1の上面を覆う、上部保護体40を準備する工程と、上部保護体40を重錘体付きエレクトレット発電素子1の枠状構造体80に接合する上部保護体接合工程と、を更に備えている。このことにより、板状構造体70及び振動体接合部10の振動が許容されつつ、板状構造体70の上面側において、当該板状構造体70に対する過負荷が制限されるため、破損しにくく、安定した発電を行うことができる。
【0109】
この上部保護体40は、Y軸と平行に延在する2つの縁部領域42a、42bに連続的に形成された浅溝43、45及び深溝44、46を有している。そして、前述した製造方法は、上部保護体接合工程の後、上部保護体40に、上面から深溝44、46まで連通する切り込みを当該深溝44、46の全部にわたって形成することにより、縁部領域42a、42bを他の部分から分断する工程を、更に備えている。このことにより、エレクトレット発電素子1の上面のうち、縁部領域42a、42bに対応する領域を外部に露出させることができる。すなわち、エレクトレット発電素子1に設けられたパッドPを簡易な工程によって外部に露出させることができる。
【0110】
更に、以上の製造方法は、平板状の基板の上面に凹部を有し、重錘体素子100の下面を覆う、下部保護体50を準備する工程と、下部保護体50を支持体接合部20の下面に接合する下部保護体接合工程と、を備えている。このことにより、板状構造体70に対する過負荷が制限されるため、破損しにくく、一層安定した発電が行われる。
【0111】
なお、本実施の形態では、突起41aが上部保護体40に設けられ、突起51aが下部保護体50に設けられていたが、このような配置には限定されない。
図30は、
図18に示す重錘体付きエレクトレット発電素子1の概略断面図である。
図30に示すように、突起41a、51aに代えて、板状構造体70の上面に突起77を設け、支持体接合部10の下面に突起11を設けても良い。この場合も、上部保護体40及び下部保護体50にそれぞれ設けられた矩形の凹部の深さを深くしても、当該上部保護体40及び下部保護体50をストッパとしてそれぞれ有効に機能させることができる。なお、図示されていないが、突起77、11は、Z軸方向から見て、X軸及びY軸に関してそれぞれ対象であるように、4つずつ配置されていて良い。
【0112】
< 3−5. 実際的な各基板の接合方法 >
次に、
図20及び
図21は、本実施の形態による重錘体付きエレクトレット発電素子1の実際的な製造方法を説明するための図である。
【0113】
以上の3−1.〜3−4.で説明した、エレクトレット発電素子1に対する各基板の取り付け(接合)は、実際の製造においては、
図20に示すように、複数のエレクトレット発電素子1が配置されたエレクトレット発電素子基板1w及び複数の重錘体素子100が配置された重錘体素子基板100wを用いて行われる。
図20において、エレクトレット発電素子基板1w内に示されている矩形領域の1つ1つが、エレクトレット発電素子1を示しており、重錘体素子基板100w内に示されている矩形領域の1つ1つが、重錘体素子100を示している。重錘体素子基板100wには、両基板1w、100wを接合させた際に、エレクトレット発電素子基板1wの各エレクトレット発電素子1と1対1に対応するように、複数の重錘体素子100が形成されている。
【0114】
したがって、エレクトレット発電素子基板1wと重錘体素子基板100wとが、前述したように接着剤等によって接合されると、対応するエレクトレット発電素子1と重重錘体素子100とが、
図5に示すように接合される。その後、
図6乃至
図8を参照して説明したように、連結部30が除去される。
【0115】
次に、
図21に示すように、複数の上部保護体40が配置された上部保護基板40wと、複数の下部保護体50が配置された下部保護基板50wと、が準備される。
図21において、上部保護基板40w内に示されている矩形領域の1つ1つが、上部保護体40を示しており、下部保護基板50w内に示されている矩形領域の1つ1つが、下部保護体50を示している。
【0116】
上部保護基板40wには、エレクトレット発電素子基板1wの各エレクトレット発電素子1と1対1に対応するように、複数の上部保護体40が形成されている。同様に、下部保護基板50wには、重錘体素子基板100wの各重錘体素子100と1対1に対応するように、複数の下部保護体50が形成されている。
【0117】
したがって、下部保護基板50wと重錘体素子基板100wとが接合されると、対応する下部保護体50と重錘体素子100とが、
図14に示すように接合される。更に、上部保護基板40wとエレクトレット発電素子基板1wとが前述したように接着剤等によって接合されると、対応する上部保護体40とエレクトレット発電素子1とが、
図15に示すように接合される。その後、
図17及び
図18を参照して説明したように、縁部領域42a、42bが除去される。
【0118】
その後、接合された4枚の基板1w、100w、40w、50wが、各基板の矩形領域ごとに切り出されて、重錘体付きエレクトレット発電素子1が個片化される。このことによって、重錘体付きエレクトレット発電素子1が効率的に製造され得る。
【0119】
<<< §4 重錘体付き振動発電素子の変形例 >>>
次に、本発明による重錘体素子の変形例について説明する。
【0120】
図22は、本発明の第2の実施の形態による重錘体素子200を示す概略平面図である。また、
図23は、
図22の[23]−[23]線断面図であり、
図24は、
図22の[24]−[24]線断面図であり、
図25は、
図22の概略底面図である。
【0121】
図22乃至
図24に示すように、本実施の形態による重錘体素子200は、連結部230の第3面231に、振動体接合部210の外周を取り囲む所定幅の溝233が1本のみ設けられている点で、第1の実施の形態による重錘体素子100とは異なっている。この所定幅の溝233は、当該重錘体素子100の連結部30に設けられた第2溝33と同じ位置に設けられている。
【0122】
更に、
図23乃至
図25に示すように、本実施の形態による重錘体素子200は、他方の面202に凹部234を有している。本実施の形態の凹部234は、その輪郭線がZ軸方向から見て連結部230の外周の輪郭線と略一致するように形成されている。このような構成によって、他方の面202は、Z軸方向において異なる位置に配置された、凹部234の底面234bと、支持体接合部220の底面220bと、を有している。
【0123】
その他の点は、第1の実施の形態による重錘体素子100と同様の構成を有している。このため、
図22乃至
図25において、重錘体素子100に対応する構成要素には同様の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0124】
次に、
図26乃至
図28を参照して、本実施の形態による重錘体素子200を用いた重錘体付き振動発電素子の製造方法について説明する。
【0125】
図26は、
図1のエレクトレット発電素子1に
図22の重錘体素子200を接合する工程を説明するための概略断面図であり、
図27は、
図26において、重錘体素子200に切り込みを形成する工程を説明するための概略断面図であり、
図28は、
図27の工程が完了した状態を示す概略断面図である。
【0126】
説明の便宜上、
図26乃至
図28に示すように、エレクトレット発電素子1と重錘体素子100との接合領域の中心を原点とするXYZ三次元座標系を定義する。この座標系は、
図5乃至
図8と同様の座標系である。
【0127】
まず、
図26に示すように、エレクトレット発電素子1の下面(
図1におけるZ軸負側の面)に、重錘体素子200が接合される。エレクトレット発電素子1の下面とは、エレクトレット発電素子1のうち、弾性変形体91〜94が形成されている側とは反対側の面を意味する。
図26に示すように、この接合工程において、重錘体素子200は、溝233が形成された一方の面201がエレクトレット発電素子1に面するような向きで、振動体接合部210が板状構造体70に接合され、且つ、支持体接合部220が枠状構造体80に接合されるように、当該エレクトレット発電素子1に接合される。換言すれば、重錘体素子200は、連結部230がエレクトレット発電素子1の板状構造体70と枠状構造体80との間隙(弾性変形体91〜94が形成された領域)に対応するように、エレクトレット発電素子1に接合される。
【0128】
重錘体素子200は、適宜の接着剤によってエレクトレット発電素子1に接合されるが、
図26乃至
図28においては、接着剤の層は図示を省略してある。また、重錘体素子200をエレクトレット発電素子1に対してしっかりと接合することができるならば、接着によらず、その他の接合方法(例えば、重錘体素子200がガラス基板ならば陽極接合、シリコン基板ならば直接接合)を採用することも可能である。接着剤を使用する場合は、有機系の接着剤や共晶合金による接着が考えられる。
【0129】
次に、
図27に示すように、重錘体素子200の他方の面202(
図27における下面)から溝233まで連通する切り込みが、所定の工具T(例えば、ダイシングソー)によって形成される。ここでは、工具Tとして、溝233と略同じ幅を有するものが採用される。このため、工具Tによって形成される切り込みは、溝233と略同じ幅を有する。本実施の形態の切り込みは、溝233の全周にわたって形成される。なお、
図27に示す例では、切り込みがZ軸と平行に形成されているが、他の実施の形態では、Z軸に対して角度をもって形成されても良い。
【0130】
このような切り込みが溝233の全部にわたって形成されると、連結部230と支持体接合部220とが、工具Tの幅に相当する間隔を空けて、分断される。したがって、
図28に示すように、溝233に切り込みを形成することによって、重錘体素子200から、連結部230及び振動体接合部210と、支持体接合部220と、が切り離されるのである。そして、連結部230及び振動体接合部210は、エレクトレット発電素子1の板状構造体70に付加される質量として機能する。なお、工具Tによって分断された支持体接合部220と連結部230との離間距離(ここでは工具Tの幅)は、板状構造体70が振動した際に、連結部230と支持体接合部220とが接触しない程度の大きさを有している。
【0131】
図8と
図28とを比較すれば、本実施の形態によって切り出される重錘体(連結部230及び振動体接合部210)の質量は、第1の実施の形態によって切り出される重錘体(振動体接合部210)の質量よりも、大きい。すなわち、本実施の形態による重錘体素子200を用いることにより、重錘体付きエレクトレット発電素子1の固有振動数を、第1の実施の形態よりも一層小さくすることができる。
【0132】
なお、溝233を形成する位置を変更することによって、エレクトレット発電素子1の板状構造体70に提供される重錘体の質量を、所望に調節することができる。すなわち、溝233を振動体接合部210の近位に形成すれば、連結部230のうち重錘体として機能する部分(溝233の内側の部分)が減少するため、切り出される重錘体の質量が減少し、その一方、溝233を支持体接合部220の近位に形成すれば、連結部230のうち重錘体として機能する部分が増大するため、切り出される重錘体の質量が増大する。
【0133】
本実施の形態による重錘体素子200を使用して製造された重錘体付きエレクトレット発電素子1には、第1の実施の形態と同様に、上部保護体40(
図9乃至
図11参照)及び下部保護体50(
図12及び
図13参照)を接合することが可能である。各保護基板40、50の接合方法は、前記3−2.及び3−3.に記載した通りであるため、ここではその詳細な説明は省略する。
【0134】
更に、本実施の形態においても、3−5.に記載したように、エレクトレット発電素子基板1w、複数の重錘体素子200が形成された重錘体素子基板、上部保護基板40w及び下部保護基板50wを接合することによって、重錘体付きエレクトレット発電素子1が効率的に製造され得る。
【0135】
本実施の形態による重錘体素子200は、前述したように、他方の面202に凹部234bを有している。この凹部の存在によって、振動体接合部210及びこれに一体的に接続されている連結部230の底面234bは、Z軸方向において、支持体接合部220の底面よりも上方に位置している。このため、支持体接合部220の底面220bに下部保護体50が接合された際に、当該下部保護体50と底面234bとの間には、所定の隙間が形成されるようになっている。このことによって、板状構造体70が振動した際に、振動体接合部210及びこれに一体的に接続されている連結部230と、下部保護体50と、の接触が回避される。
【0136】
あるいは、重錘体付きエレクトレット発電素子1に上部保護体40及び下部保護体50を接合することに代えて、当該重錘体付きエレクトレット発電素子1をパッケージPa内に格納することも可能である。
【0137】
図29は、パッケージPa内に格納された重錘体付きエレクトレット発電素子1を示す概略断面図である。
【0138】
パッケージPaは、一例として、
図29に示すように、角柱状の内部空間を画定し、上部が開放した箱形のパッケージ本体5と、パッケージ本体5の上部を覆い、前記内部空間を閉鎖する蓋体6と、を有している。
図29に示すように、パッケージ本体5は、底壁5bと底壁5bから上方に立ち上がる側壁5sとを有している。重錘体付きエレクトレット発電素子1は、支持体接合部220の下面220bがパッケージ本体5の底壁5bに接合されている。側壁5sは、重錘体付きエレクトレット発電素子1の高さ(厚さ)よりも大きな高さを有している。側壁5sの上端部には、蓋体6が接合されており、エレクトレット発電素子1に対する外部からの不所望な干渉が禁止されている。
【0139】
図29に示すパッケージ化された重錘体付きエレクトレット発電素子1は、X、Y、Zの全ての軸方向の過負荷に対して、重錘体(振動体接合部210)の移動が制限されていることを特徴としている。具体的には、
図29に示すように、X軸方向においては、振動体接合部210は、支持体接合部220の存在によって、当該支持体接合部220との間に形成された領域Aの範囲内のみに移動が制限されている。図示されていないが、Y軸方向においても、同様である。Z軸正方向については、振動体接合部210は、枠状構造体80の存在によって、当該枠状構造体との間に形成された領域Bの範囲内のみに移動が制限されている。更に、Z軸負方向においては、振動体接合部210は、パッケージ本体5の底壁5bの存在によって、当該底壁5bとの間に形成された領域Cの範囲内にのみに移動が制限されている。
【0140】
なお、ここでは、第2の実施の形態による重錘体素子200を用いた重錘体付きエレクトレット発電素子1をパッケージ化する事項について説明したが、同様にして、第1の実施の形態による重錘体素子100を用いた重錘体付きエレクトレット発電素子1をパッケージ化することも可能である。
【解決手段】本発明は、振動体70と支持体80とを有する振動発電素子1に接合され、振動体70に重錘体を提供する、重錘体素子100であって、振動発電素子1に接合される第1面101と、第1面101とは反対側の第2面102と、振動体70に接合される振動体接合部10と、振動体接合部10から離間して位置し、支持体80に接合される支持体接合部20と、振動体接合部10と支持体接合部20との間に位置し、振動体接合部10と支持体接合部20とを連結する連結部30と、を備え、連結部30は、第1面101側に、当該第1面101よりも第2面102側に位置する第3面31を有し、連結部30の第3面31には、振動体接合部10の外周を取り囲む32、33が設けられていることを特徴とする重錘体素子100である。