(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔タイヤ用ゴム組成物〕
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ジエン系ゴム(A)と、カーボンブラックおよび/または白色充填剤(B)と、上記ジエン系ゴム(A)と相溶しない架橋性オリゴマーまたはポリマー(C)と、化学発泡剤(d1)および発泡助剤(d2)を質量比(d1/d2)0.3〜2.0で混合した発泡成分(D)と、を含有する。
また、上記カーボンブラックおよび/または白色充填剤(B)の含有量は、上記ジエン系ゴム(A)100質量部に対して30〜100質量部である。
更に、上記架橋性オリゴマーまたはポリマー(C)および上記発泡成分(D)の合計の含有量が、上記ジエン系ゴム(A)100質量部に対して0.1〜30質量部であり、上記架橋性オリゴマーまたはポリマー(C)と上記発泡成分(D)との質量比(C/D)が、0.80〜3.0である。
【0012】
本発明においては、上述した通り、架橋性オリゴマーまたはポリマー(C)と、化学発泡剤(d1)および発泡助剤(d2)を質量比(d1/d2)0.3〜2.0で混合した発泡成分(D)とを、特定の質量比で配合することにより、本発明のタイヤ用ゴム組成物をタイヤトレッドに用いたスタッドレスタイヤの氷上性能および長期安定性がいずれも良好となる。
これは、詳細には明らかではないが、およそ以下のとおりと推測される。
すなわち、架橋性オリゴマーまたはポリマー(C)と発泡成分(D)とを特定の質量比で配合することにより、加硫時に、架橋性オリゴマーまたはポリマー(C)の一部が発泡し、これが、加硫後のジエン系ゴム(A)と非相溶の柔らかいドメインを形成することになる。そして、このドメインが発泡していることにより、氷上路面上の水膜を排水することが可能となり、ドメイン部分の路面への密着力が向上し、氷上摩擦力が向上すると考えられる。また、このドメインは、低温かつ使用開始から時間が経過してからも柔らかさを維持することが可能であるため、長期的な氷上性能の維持が可能になったと考えられる。
以下に、本発明のタイヤ用ゴム組成物が含有する各成分について詳細に説明する。
【0013】
<ジエン系ゴム(A)>
本発明のタイヤ用ゴム組成物に含有するジエン系ゴム(A)は、主鎖に二重結合を有するものであれば特に限定されず、その具体例としては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、スチレン−イソプレンゴム(SIR)、スチレン−イソプレン−ブタジエンゴム(SIBR)等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、上記ジエン系ゴム(A)は、上述した各ゴムの末端や側鎖がアミノ基、アミド基、シリル基、アルコキシ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、エポキシ基等で変成(変性)された誘導体であってもよい。
これらのうち、スタッドレスタイヤの氷上性能がより良好となる理由から、NR、BR、SBRを用いるのが好ましく、NRおよびBRを併用するのがより好ましい。
【0014】
本発明においては、上記ジエン系ゴム(A)の平均ガラス転移温度は、低温時においてもスタッドレスタイヤの硬度を低く保つことができ、氷上性能がより良好となる理由から、−50℃以下であるのが好ましい。
ここで、ガラス転移温度は、デュポン社製の示差熱分析計(DSC)を用い、ASTM D3418−82に従い、昇温速度10℃/minで測定した値である。
また、平均ガラス転移温度は、ガラス転移温度の平均値であり、ジエン系ゴムを1種のみ用いる場合は、そのジエン系ゴムのガラス転移温度をいうが、ジエン系ゴムを2種以上併用する場合は、ジエン系ゴム全体(各ジエン系ゴムの混合物)のガラス転移温度をいい、各ジエン系ゴムのガラス転移温度と各ジエン系ゴムの配合割合から平均値として算出することができる。
【0015】
また、本発明においては、スタッドレスタイヤの強度が良好となる理由から、上記ジエン系ゴム(A)の20質量%以上がNRであるのが好ましく、40質量%以上がNRであるのがより好ましい。
【0016】
<カーボンブラックおよび/または白色充填剤(B)>
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、カーボンブラックおよび/または白色充填剤(B)を含有する。
【0017】
(カーボンブラック)
上記カーボンブラックとしては、具体的には、例えば、SAF、ISAF、HAF、FEF、GPE、SRF等のファーネスカーボンブラックが挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、上記カーボンブラックは、ゴム組成物の混合時の加工性やスタッドレスタイヤの補強性等の観点から、窒素吸着比表面積(N
2SA)が10〜300m
2/gであるのが好ましく、20〜200m
2/gであるのがより好ましく、スタッドレスタイヤのウェット性能が向上し、氷上性能がより良好となる理由から、50〜150m
2/gであるのが好ましく、70〜130m
2/gであるのがより好ましい。
ここで、N
2SAは、カーボンブラック表面への窒素吸着量をJIS K 6217−2:2001「第2部:比表面積の求め方−窒素吸着法−単点法」にしたがって測定した値である。
【0018】
(白色充填剤)
上記白色充填剤としては、具体的には、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、クレー、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化チタン、硫酸カルシウム等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、スタッドレスタイヤの氷上性能がより良好となる理由から、シリカが好ましい。
【0019】
シリカとしては、具体的には、例えば、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、スタッドレスタイヤの氷上性能が更に良好となり、耐摩耗性もより向上する理由から、湿式シリカが好ましい。
【0020】
上記シリカは、スタッドレスタイヤのウェット性能および転がり抵抗が良好となる理由から、CTAB吸着比表面積が50〜300m
2/gであるのが好ましく、70〜250m
2/gであるのがより好ましく、90〜200m
2/gであるのがより好ましい。
ここで、CTAB吸着比表面積は、シリカ表面への臭化n−ヘキサデシルトリメチルアンモニウムの吸着量をJIS K6217−3:2001「第3部:比表面積の求め方−CTAB吸着法」にしたがって測定した値である。
【0021】
本発明においては、上記カーボンブラックおよび/または白色充填剤(B)の含有量は、上記ジエン系ゴム(A)100質量部に対して30〜100質量部であり、40〜90質量部であるのが好ましく、45〜80質量部であるのがより好ましい。
ここで、カーボンブラックおよび/または白色充填剤(B)の含有量とは、カーボンブラックおよび白色充填剤のいずれか一方のみを含有する場合は、含有する一方の含有量をいい、カーボンブラックおよび白色充填剤をいずれも含有する場合は、カーボンブラックおよび白色充填剤の合計の含有量をいう。
また、上記カーボンブラックおよび上記白色充填剤を併用する場合、上記白色充填剤の含有量は、上記ジエン系ゴム(A)100質量部に対して、5〜85質量部であるのが好ましく、15〜75質量部であるのがより好ましい。
【0022】
<架橋性オリゴマーまたはポリマー(C)>
本発明のタイヤ用ゴム組成物に含有する架橋性オリゴマーまたはポリマー(C)は、上記ジエン系ゴム(A)に相溶せず、架橋性を有するオリゴマーまたはポリマーであれば特に限定されない。
ここで、「(上記ジエン系ゴム(A)に)相溶しない」とは、上記ジエン系ゴム(A)に包含される全てのゴム成分に対して相溶しないという意味ではなく、上記ジエン系ゴム(A)および上記架橋性オリゴマーまたはポリマー(C)に用いる各々の具体的な成分が互いに非相溶であることをいう。
【0023】
上記架橋性オリゴマーまたはポリマー(C)としては、例えば、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリオレフィン系、ポリカーボネート系、脂肪族系、飽和炭化水素系、アクリル系、ウレタン系、植物由来系もしくはシロキサン系の重合体または共重合体等が挙げられる。
【0024】
これらのうち、スタッドレスタイヤの氷上性能がより良好となる理由から、上記架橋性オリゴマーまたはポリマー(C)としては、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリオレフィン系、ポリカーボネート系、アクリル系、ウレタン系もしくは植物由来系の重合体または共重合体であるのが好まく、ポリエーテル系の重合体または共重合体であるのがより好ましい。
【0025】
ここで、上記ポリエーテル系の重合体または共重合体としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリプロピレントリオール、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド共重合体、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)、ソルビトール系ポリオール等が挙げられる。
また、上記ポリエステル系の重合体または共重合体としては、例えば、低分子多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等)と多塩基性カルボン酸(例えば、アジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等)との縮合物(縮合系ポリエステルポリオール);ラクトン系ポリオール;等が挙げられる。
また、上記ポリオレフィン系の重合体または共重合体としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンプロピレン共重合体(EPR、EPDM)、ポリブチレン、ポリイソブチレン、水添ポリブタジエン等が挙げられる。
また、上記ポリカーボネート系の重合体または共重合体としては、例えば、ポリオール化合物(例えば、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール等)とジアルキルカーボネートとのエステル交換反応により得られるもの等が挙げられる。
また、上記アクリル系の重合体または共重合体としては、例えば、アクリルポリオール;アクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートなどのアクリレートの単独ポリマー;これらアクリレートを2種以上組み合わせたアクリレート共重合体;等が挙げられる。
また、上記ウレタン系の重合体または共重合体としては、ポリオール化合物(例えば、ポリカーボネート系ポリオールなど)の水酸基と、後述するポリイソシアネート化合物のイソシアネート基とを反応させた重合体等が挙げられる。
また、上記植物由来系の重合体または共重合体としては、例えば、ヒマシ油、大豆油などの植物油脂;ポリ乳酸などを改質したポリエステルポリオールなどから誘導される各種エラストマー;等が挙げられる。
【0026】
本発明においては、上記架橋性オリゴマーまたはポリマー(C)は、分子間で架橋することにより、タイヤの氷上性能がより良好となる理由から、水酸基、シラン官能基、イソシアネート基、(メタ)アクリロイル基、アリル基、カルボキシ基、酸無水物基およびエポキシ基からなる群から選択される少なくとも1つ以上の反応性官能基を有しているのが好ましい。
ここで、上記「シラン官能基」とは、いわゆる架橋性シリル基とも呼ばれ、その具体例としては、加水分解性シリル基;シラノール基;シラノール基をアセトキシ基誘導体、エノキシ基誘導体、オキシム基誘導体、アミン誘導体などで置換した官能基;等が挙げられる。
また、上記「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基またはメタクリロイル基を表す包括的な表現である。
【0027】
これらの官能基のうち、ゴムの加工時に上記架橋性オリゴマーまたはポリマー(C)が適度に架橋され、タイヤの氷上性能が更に良好となり、長期安定性もより良好となる理由から、シラン官能基、イソシアネート基、酸無水物基またはエポキシ基を有しているのが好ましく、中でも加水分解性シリル基またはイソシアネート基を有しているのがより好ましい。
【0028】
ここで、上記加水分解性シリル基としては、具体的には、例えば、アルコキシシリル基、アルケニルオキシシリル基、アシロキシシリル基、アミノシリル基、アミノオキシシリル基、オキシムシリル基、アミドシリル基等が挙げられる。
これらのうち、加水分解性と貯蔵安定性のバランスが良好となる理由から、アルコキシシリル基であるのが好ましく、具体的には、下記式(1)で表されるアルコキシシリル基であるのがより好ましく、メトキシシリル基、エトキシシリル基であるのが更に好ましい。
【0029】
【化1】
(式中、R
1は炭素数1〜4のアルキル基を表し、R
2は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表し、aは1〜3の整数を表す。aが2または3の場合、複数のR
1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、aが1の場合、複数のR
1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
【0030】
また、上記イソシアネート基は、ポリオール化合物(例えば、ポリカーボネート系ポリオールなど)の水酸基とポリイソシアネート化合物のイソシアネート基とを反応させた際に残存するイソシアネート基のことである。
なお、上記ポリイソシアネート化合物は、分子内にイソシアネート基を2個以上有するものであれば特に限定されず、その具体例としては、TDI(例えば、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI))、MDI(例えば、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4′−MDI)、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4′−MDI))、1,4−フェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリフェニルメタントリイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)などの脂肪族ポリイソシアネート;トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(H
6XDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H
12MDI)などの脂環式ポリイソシアネート;これらのカルボジイミド変性ポリイソシアネート;これらのイソシアヌレート変性ポリイソシアネート;等が挙げられる。
【0031】
本発明においては、上記反応性官能基は、上記架橋性オリゴマーまたはポリマー(C)の少なくとも主鎖の末端に有しているのが好ましく、主鎖が直鎖状である場合は1.5個以上有しているのが好ましく、2個以上有しているのがより好ましい。一方、主鎖が分岐している場合は3個以上有しているのが好ましい。
【0032】
また、本発明においては、上記架橋性オリゴマーまたはポリマー(C)の重量平均分子量または数平均分子量は、上記ジエン系ゴム(A)への分散性やゴム組成物の混練加工性が良好となり、更に後述する微粒子(D)を上記架橋性オリゴマーまたはポリマー(C)中で調製する際の粒径や形状の調整が容易となる理由から、300〜30000であるのが好ましく、500〜25000であるのがより好ましく、2000〜20000であるのが更に好ましい。
ここで、重量平均分子量および数平均分子量は、いずれもゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により標準ポリスチレン換算により測定するものとする。
【0033】
更に、本発明においては、上記架橋性オリゴマーまたはポリマー(C)の含有量は、後述する発泡成分(D)との合計の含有量が、上記ジエン系ゴム(A)100質量部に対して0.1〜30質量部であり、かつ、後述する発泡成分(D)との質量比(C/D)が、0.80〜3.0であれば特に限定されないが、上記ジエン系ゴム(A)100質量部に対して0.3〜28質量部であるのが好ましく、0.5〜25質量部であるのがより好ましい。
【0034】
<発泡成分(D)>
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、化学発泡剤(d1)および発泡助剤(d2)を質量比(d1/d2)0.3〜2.0で混合した発泡成分(D)を含有する。
【0035】
(化学発泡剤(d1))
上記化学発泡剤(d1)とは、化学反応型の有機系発泡剤であり、その具体例としては、アゾジカルボンアミド(ADCA)、ジニトロソペンタメチレンテトラアミン(DPT)、ジニトロソペンタスチレンテトラミン、オキシビスベンゼンスルフォニルヒドラジド(OBSH)、ベンゼンスルフォニルヒドラジド誘導体、二酸化炭素を発生する重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム、窒素を発生するトルエンスルホニルヒドラジド、P−トルエンスルホニルセミカルバジド、ニトロソスルホニルアゾ化合物、N,N′−ジメチル−N,N′−ジニトロソフタルアミド、P,P′−オキシービス(ベンゼンスルホニルセミカルバジド)等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
これらのうち、製造時の加工性に優れるという理由から、アゾジカルボンアミド(ADCA)、ジニトロソペンタメチレンテトラアミン(DPT)であるのが好ましく、アゾジカルボンアミド(ADCA)であるのがより好ましい。
【0037】
(発泡助剤(d2))
上記発泡助剤(d2)としては、具体的には、例えば、尿素系発泡助剤(例えば、尿素);金属酸化物系発泡助剤(例えば、ステアリン酸亜鉛、ベンゼンスルフィン酸亜鉛、酸化亜鉛等);などが挙げられる。
【0038】
(質量比)
上記発泡成分(D)における上述した化学発泡剤(d1)および発泡助剤(d2)の質量比(d1/d2)は、0.3〜2.0であり、0.6〜1.9であるのが好ましく、1.0〜1.7であるのがより好ましい。
【0039】
(調製方法)
上記発泡成分(D)の調製方法は特に限定されず、例えば、上述した化学発泡剤(d1)および発泡助剤(d2)を上述した質量比で、公知の方法・装置(例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等)を用いて、混練する方法等が挙げられる。
【0040】
本発明においては、上記発泡成分(D)の含有量は、上述した架橋性オリゴマーまたはポリマー(C)との合計の含有量が、上記ジエン系ゴム(A)100質量部に対して0.1〜30質量部であり、かつ、上述した架橋性オリゴマーまたはポリマー(C)との質量比(C/D)が、0.80〜3.0であれば特に限定されないが、上記ジエン系ゴム(A)100質量部に対して2〜20質量部であるのが好ましく、3〜15質量部質量部であるのがより好ましい。
【0041】
また、本発明においては、上述した架橋性オリゴマーまたはポリマー(C)および発泡成分(D)の合計の含有量は、上記ジエン系ゴム(A)100質量部に対して0.1〜30質量部であり、5〜25質量部であるのが好ましく、10〜20質量部であるのがより好ましい。
また、上述した架橋性オリゴマーまたはポリマー(C)と発泡成分(D)との質量比(C/D)は、0.80〜3.0であり、1.0〜2.0であるのが好ましく、1.0〜1.8であるのがより好ましい。
【0042】
<混合物>
本発明においては、上記架橋性オリゴマーまたはポリマー(C)および上記発泡成分(D)は、耐摩耗性が良好となる理由から、上述した架橋性オリゴマーまたはポリマー(C)と発泡成分(D)を上述した質量比で予め混合させた混合物として含有させるのが好ましい。
なお、上記混合物の調製方法は特に限定されず、例えば、上述した架橋性オリゴマーまたはポリマー(C)と発泡成分(D)を上述した質量比で、公知の方法・装置(例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等)を用いて、混練する方法等が挙げられる。
【0043】
<硬化物>
また、本発明においては、上記架橋性オリゴマーまたはポリマー(C)および上記発泡成分(D)は、架橋性オリゴマーまたはポリマー(C)中で発泡する確率を高めることができるという理由から、上記混合物を、酸触媒、アルカリ触媒、金属触媒およびアミン触媒からなる群から選択される少なくとも1種の触媒を用いて硬化させた硬化物として含有させるのが好ましい。
これらのうち、硬化効率が高い理由から、酸触媒または金属触媒を用いて硬化させる方法が好ましい。
【0044】
(酸触媒)
上記酸触媒としては、具体的には、例えば、例えば、乳酸、フタル酸、ラウリル酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ナフテン酸、オクテン酸、オクチル酸(2−エチルヘキサン酸)、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、安息香酸、シュウ酸、リンゴ酸、クエン酸等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明においては、上記酸触媒として、酸性度や分散性の観点から、常温で液体の酸を用いるのが好ましく、具体的には、乳酸、ギ酸を用いるのがより好ましい。
【0045】
(金属触媒)
上記金属触媒としては、例えば、オクチル酸スズ等の有機金属化合物、アルカリ金属アルコラート等が挙げられる。
具体的には、ジメチルスズジラウレート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズマレエート、ジブチルスズジアセテート、オクチル酸スズ、ナフテン酸スズ等のスズカルボン酸塩類;テトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネート等のチタン酸エステル類;アルミニウムトリスアセチルアセトナート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート等の有機アルミニウム化合物類;ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、チタンテトラアセチルアセトナート等のキレート化合物類;オクタン酸鉛、オクタン酸ビスマス等のオクタン酸金属塩;等が挙げられる。
本発明においては、上記金属触媒として、酸性度の観点から、スズカルボン酸塩類を用いるのがより好ましい。
【0046】
<熱膨張性マイクロカプセル>
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、タイヤの氷上性能がより良好となる理由から、熱によって気化または膨張して気体を発生させる物質を内包した熱可塑性樹脂粒子からなる熱膨張性マイクロカプセルを含有するのが好ましい。
ここで、上記熱膨張性マイクロカプセルは、上記物質の気化または膨張開始温度以上の温度(例えば、140〜190℃、好ましくは150〜180℃)で加熱することにより、上記熱可塑性樹脂からなる外殻中に気体が封入されたマイクロカプセルとなる。
また、上記熱膨張性マイクロカプセルの粒子径は特に限定されないが、膨張前において、5〜300μmであるのが好ましく、10〜200μmであるのがより好ましい。
このような熱膨張性マイクロカプセルは、例えば、スウェーデンのEXPANCEL社製の商品名「エクスパンセル091DU−80」や「エクスパンセル092DU−120」、松本油脂製薬社製の商品名「マツモトマイクロスフェアーF−85」や「マツモトマイクロスフェアーF−100」等として入手可能である。
【0047】
本発明においては、上記熱膨張性マイクロカプセルの殻材は、主成分となる単量体がニトリル系単量体(I)であり、分子中に不飽和二重結合とカルボキシル基を有する単量体(II)、2以上の重合性二重結合を有する単量体(III)、および、必要に応じて膨張特性を調整するために上記単量体と共重合可能な単量体(IV)から重合した熱可塑性樹脂から構成される。
【0048】
ニトリル系単量体(I)としては、具体的には、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリル、α−エトキシアクリロニトリル、フマロニトリル、および、これらの混合物等が挙げられる。
これらのうち、アクリロニトリルおよび/またはメタクリロニトリルであるのが好ましい。
また、ニトリル系単量体(I)の共重合比は、35〜95質量%であるのが好ましく、45〜90重量%であるのがより好ましい。
【0049】
分子中に不飽和二重結合とカルボキシル基を有する単量体(II)としては、具体的には、例えば、アクリル酸(AA)、メタクリル酸(MAA)、イタコン酸、スチレンスルホン酸又はナトリウム塩、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、および、これらの混合物等が挙げられる。
単量体(II)の共重合比は、4〜60質量%であるのが好ましく、10〜50重質量%であるのがより好ましい。単量体(II)の共重合比が4重量%以上であると、高温領域においても膨張性を十分に維持することができる。
【0050】
2以上の重合性二重結合を有するモノマー(III)としては、具体的には、例えば、芳香族ジビニル化合物(例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等)、メタクリル酸アリル、トリアクリルホルマール、トリアリルイソシアネート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、重量平均分子量が200のポリエチレングリコール(PEG#200)ジ(メタ)アクリレート、重量平均分子量が400のポリエチレングリコール(PEG#400)ジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、および、これらの混合物等が挙げられる。
単量体(III)の共重合比は、0.05〜5質量%であるのが好ましく、0.2〜3質量%であるのがより好ましい。単量体(III)の共重合比がこの範囲であると、高温領域においても膨張性を十分に維持することができる。
【0051】
必要に応じて使用することができる共重合可能な単量体(IV)としては、具体的には、例えば、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、スチレンスルホン酸またはそのナトリウム塩、α−メチルスチレン、クロロスチレンなどスチレン系モノマー、アクリルアミド、置換アクリルアミド、メタクリルアミド、置換メタクリルアミドなどを例示することができる。
単量体(IV)は任意成分であり、これを添加するときは、共重合比は、0.05〜20質量%であるのが好ましく、1〜15重量%であるのがより好ましい。
【0052】
上記熱膨張性マイクロカプセル中に含まれる熱により気化して気体を発生する物質としては、具体的には、例えば、n−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、ブタン、イソブタン、ヘキサン、石油エーテルなどの炭化水素類;塩化メチル、塩化メチレン、ジクロロエチレン、トリクロロエタン、トリクロルエチレンなどの塩素化炭化水素;等のような液体、または、アゾジカーボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、アゾビスイソブチロニトリル、トルエンスルホニルヒドラジド誘導体、芳香族スクシニルヒドラジド誘導体等のような固体が挙げられる。
【0053】
本発明においては、上記熱膨張性マイクロカプセルの含有量は、上記ジエン系ゴム(A)100質量部に対して1〜30質量部であるのが好ましく、1〜20質量部であるのがより好ましい。
【0054】
<シランカップリング剤>
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、上述した白色充填剤(特に、シリカ)を含有する場合、タイヤの補強性能を向上させる理由から、シランカップリング剤を含有するのが好ましい。
上記シランカップリング剤を配合する場合の含有量は、上記白色充填剤100質量部に対して、0.1〜20質量部であるのが好ましく、4〜12質量部であるのがより好ましい。
【0055】
上記シランカップリング剤としては、具体的には、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシラン、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリエトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、ビス(3−ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0056】
これらのうち、補強性改善効果の観点から、ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドおよび/またはビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドを使用することが好ましく、具体的には、例えば、Si69[ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド;エボニック・デグッサ社製]、Si75[ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド;エボニック・デグッサ社製]等が挙げられる。
【0057】
<その他の成分>
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、上述した成分以外に、炭酸カルシウムなどのフィラー;硫黄等の加硫剤;スルフェンアミド系、グアニジン系、チアゾール系、チオウレア系、チウラム系などの加硫促進剤;酸化亜鉛、ステアリン酸などの加硫促進助剤;ワックス;アロマオイル;老化防止剤;可塑剤;等のタイヤ用ゴム組成物に一般的に用いられている各種のその他添加剤を配合することができる。
これらの添加剤の配合量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。例えば、ジエン系ゴム(A)100質量部に対して、硫黄は0.5〜5質量部、加硫促進剤は0.1〜5質量部、加硫促進助剤は0.1〜10質量部、老化防止剤は0.5〜5質量部、ワックスは1〜10質量部、アロマオイルは5〜50質量部、それぞれ配合してもよい。
【0058】
<タイヤ用ゴム組成物の製造方法>
本発明のタイヤ用ゴム組成物の製造方法は、特に限定されず、例えば、上述した各成分を、公知の方法、装置(例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等)を用いて、混練する方法等が挙げられる。
また、本発明のタイヤ用ゴム組成物は、従来公知の加硫または架橋条件で加硫または架橋することができる。
【0059】
〔スタッドレスタイヤ〕
本発明のスタッドレスタイヤ(以下、単に「本発明のタイヤ」ともいう。)は、上述した本発明のタイヤ用ゴム組成物を、タイヤトレッドに用いたスタッドレスタイヤである。
図1に、本発明のスタッドレスタイヤの実施態様の一例を表すタイヤの模式的な部分断面図を示すが、本発明のタイヤは
図1に示す態様に限定されるものではない。
【0060】
図1において、符号1はビード部を表し、符号2はサイドウォール部を表し、符号3は本発明のタイヤ用ゴム組成物から構成されるトレッド部を表す。
また、左右一対のビード部1間においては、繊維コードが埋設されたカーカス層4が装架されており、このカーカス層4の端部はビードコア5およびビードフィラー6の廻りにタイヤ内側から外側に折り返されて巻き上げられている。
また、タイヤトレッド3においては、カーカス層4の外側に、ベルト層7がタイヤ1周に亘って配置されている。
また、ビード部1においては、リムに接する部分にリムクッション8が配置されている。
【0061】
本発明のタイヤは、例えば、本発明のタイヤ用ゴム組成物に用いられたジエン系ゴム、加硫または架橋剤、加硫または架橋促進剤の種類およびその配合割合に応じた温度で加硫または架橋し、タイヤトレッド部を形成することにより製造することができる。
【実施例】
【0062】
以下実施例において、実施例1、2、9を参考例1、2、9と読み替えるものとする。
〔硬化物1〕
<架橋性ポリマーC−1>
架橋性ポリマーC−1として、加水分解性シリル基末端ポリオキシプロピレングリコール(MSポリマーS810、カネカ社製)を用いた。
【0063】
<発泡成分D−1>
化学発泡剤d1−1として、アゾジカルボンアミド(ビニホールAC#3、永和化成工業社製)を用いた。
発泡助剤d2−1として、尿素(セルペーストM3、永和化成工業社製)を用いた。
化学発泡剤d1−1と発泡助剤d2−1とを、質量比(d1−1/d2−1)が1.0となるよう混合した発泡成分D−1を調製した。
【0064】
<硬化物1の調製>
上述した架橋性ポリマーC−1と発泡成分D−1とを、質量比(C−1/D−1)が1.67となるように混合し、混合物を調製した。
調製した混合物16質量部と、乳酸(酸触媒)1質量部とを混合し、十分に撹拌した後、常温にて2日間で硬化させることにより、硬化物1を調製した。
【0065】
〔硬化物2〕
発泡成分D−1に代えて、以下に示す発泡成分D−2を用い、以下に示す方法で硬化物を調製した以外は、硬化物1と同様に硬化物2を調製した。
【0066】
<発泡成分D−2>
上述した化学発泡剤d1−1と発泡助剤d2−1とを、質量比(d1−1/d2−1)が1.67となるよう混合した発泡成分D−2を調製した。
【0067】
<硬化物2の調製>
上述した架橋性ポリマーC−1と調製した発泡成分D−2とを、質量比(C−1/D−2)が1.25となるように混合し、混合物を調製した。
調製した混合物18質量部と、乳酸(酸触媒)1質量部とを混合し、十分に撹拌した後、常温にて2日間で硬化させることにより、硬化物2を調製した。
【0068】
〔硬化物3〕
以下に示す方法で硬化物を調製した以外は、硬化物1と同様に硬化物3を調製した。
【0069】
<硬化物3の調製>
上述した架橋性ポリマーC−1と調製した発泡成分D−1とを、質量比(C−1/D−1)が0.83となるように混合し、混合物を調製した。
調製した混合物22質量部と、乳酸(酸触媒)1質量部とを混合し、十分に撹拌した後、常温にて2日間で硬化させることにより、硬化物3を調製した。
【0070】
〔硬化物4〕
酸触媒に代えて金属触媒およびアミン触媒を用い、以下に示す方法で硬化物を調製した以外は、硬化物1と同様に硬化物4を調製した。
【0071】
<硬化物4の調製>
調製した混合物16質量部と、オクチル酸スズ(金属触媒)0.3質量部とラウリルアミン(アミン触媒)0.1質量部とを混合し、十分に撹拌した後、常温にて2日間で硬化させることにより、硬化物4を調製した。
【0072】
〔硬化物5〕
酸触媒に代えて金属触媒およびアミン触媒を用い、以下に示す方法で硬化物を調製した以外は、硬化物2と同様に硬化物5を調製した。
【0073】
<硬化物5の調製>
調製した混合物18質量部と、オクチル酸スズ(金属触媒)0.3質量部とラウリルアミン(アミン触媒)0.1質量部とを混合し、十分に撹拌した後、常温にて2日間で硬化させることにより、硬化物5を調製した。
【0074】
〔硬化物6〕
以下に示す方法で硬化物を調製した以外は、硬化物1と同様に硬化物6を調製した。
<硬化物6の調製>
上述した架橋性ポリマーC−1と調製した発泡成分D−1とを、質量比(C−1/D−2)が2.50となるように混合し、混合物を調製した。
調製した混合物14質量部と、乳酸(酸触媒)1質量部とを混合し、十分に撹拌した後、常温にて2日間で硬化させることにより、硬化物6を調製した。
【0075】
〔硬化物7〕
発泡成分D−1に代えて、以下に示す発泡成分D−3を用い、以下に示す方法で硬化物を調製した以外は、硬化物1と同様に硬化物7を調製した。
<発泡成分D−3>
上述した化学発泡剤d1−1と発泡助剤d2−1とを、質量比(d1−1/d2−1)が2.00となるよう混合した発泡成分D−3を調製した。
<硬化物7の調製>
上述した架橋性ポリマーC−1と調製した発泡成分D−3とを、質量比(C−1/D−3)が3.33となるように混合し、混合物を調製した。
調製した混合物13質量部と、乳酸(酸触媒)1質量部とを混合し、十分に撹拌した後、常温にて2日間で硬化させることにより、硬化物7を調製した。
【0076】
<実施例1〜10および比較例1〜6>
下記第1表に示す成分を、下記第1表に示す割合(質量部)で配合した。
具体的には、まず、下記第1表に示す成分のうち、硬化物1〜7ならびに硫黄および加硫促進剤を除く成分を、1.7リットルの密閉型ミキサーで5分間混練し、150℃に達したときに放出してマスターバッチを得た。なお、硬化物を配合せずに調製した比較例2〜5および実施例1〜2においては、化学発泡剤d1−1と発泡助剤d2−1とを下記第1表に示す質量比で予め混合した発泡成分を配合した。
次に、得られたマスターバッチに、硬化物1〜7ならびに硫黄および加硫促進剤をオープンロールで混練し、ゴム組成物を得た。
次に、得られたゴム組成物を所定の金型中で、170℃で10分間加硫して加硫ゴム組成物を作製した。
【0077】
<氷上性能>
作製した各加硫ゴム組成物を偏平円柱状の台ゴムに貼り付け、インサイドドラム型氷上摩擦試験機にて氷上摩擦係数を測定した。測定温度は−1.5℃とし、荷重5.5g/cm
3、ドラム回転速度25km/hとした。
試験結果は、以下の式により、比較例1の測定値を100として、指数(インデックス)で表し、第1表の「氷上性能」の欄に記載した。指数が大きいものほど氷上摩擦力が大きく、氷上性能が良好である。
指数=(測定値/比較例1の試験片の氷上摩擦係数)×100
【0078】
<硬度変化率(長期安定性の指標)>
作製した各加硫ゴム組成物をJIS硬度計にて20℃で硬度(A)を測定した。
次いで、硬度(A)を測定した加硫ゴム組成物を70℃で168時間放置した後、同様のJIS硬度計を用いて20℃で硬度(B)を測定した。
その後、測定した硬度(A)および硬度(B)の比率(A/B)、すなわち、硬度変化率を算出した。
試験結果は、以下の式により、比較例1の測定値を100として、指数(インデックス)で表し、第1表の「硬度変化率」の欄に記載した。指数が小さいものほど長期安定性が良好である。
指数=(算出値/比較例1の試験片の算出値)×100
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【0081】
【表3】
【0082】
上記第1表中の各成分は、以下のものを使用した。
・NR:天然ゴム(STR20)
・BR:ポリブタジエンゴム(Nipol BR1220、ガラス転移温度:−110℃、日本ゼオン社製)
・シリカ:7000GR(CTAB吸着比表面積:160m
2/g、エボニック・デグッサ社製)
・カーボンブラック:ショウブラックN339(窒素吸着比表面積:88m
2/g、キャボットジャパン社製)
・シランカップリング剤:シランカップリング剤(Si69、エボニック・デグッサ社製)
・架橋性ポリマーC−1:加水分解性シリル基末端ポリオキシプロピレングリコール(MSポリマーS810、カネカ社製)
・硬化物1〜7:上記のとおり製造したもの
・化学発泡剤d1−1:アゾジカルボンアミド(ビニホールAC#3、永和化成工業社製)
・発泡助剤d2−1:尿素(セルペーストM3、永和化成工業社製)
【0083】
・熱膨張マイクロカプセル:マイクロスフェアーF100(松本油脂製薬社製)
・酸化亜鉛:酸化亜鉛3種(正同化学工業社製)
・ステアリン酸:ビーズステアリン酸YR(日本油脂社製)
・老化防止剤:N−フェニル−N′−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン(サントフレックス6PPD、フレキシス社製)
・ワックス:パラフィンワックス(大内新興化学工業社製)
・オイル:エクストラクト4号S(昭和シェル社製)
・硫黄:油処理イオウ(細化学製)
・加硫促進剤1:N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(サンセラーCM−G、三新化学社製)
・加硫促進剤2:ジフェニルグアニジン(PERKACIT DPG GRS、FLEXSYS社製)
【0084】
第1表に示す結果から、架橋性オリゴマーまたはポリマー(C)を配合せずに調製した比較例2のゴム組成物は、氷上性能および長期安定性が比較例1と同等程度であることが分かった。
また、架橋性オリゴマーまたはポリマー(C)および発泡成分(D)の合計の含有量が、ジエン系ゴム(A)100質量部に対して30質量部より多い比較例3のゴム組成物は、長期安定性は良好となるが、氷上性能が殆ど改善されないことが分かった。
また、化学発泡剤(d1)および発泡助剤(d2)の質量比(d1/d2)が0.3〜2.0の範囲外である比較例4および5のゴム組成物は、いずれも、氷上性能および長期安定性が比較例1と同等程度であることが分かった。
また、架橋性オリゴマーまたはポリマー(C)と発泡成分(D)との質量比(C/D)が3.0より多い比較例6のゴム組成物は、氷上性能および長期安定性が比較例1と同等程度であることが分かった。
【0085】
これに対し、架橋性オリゴマーまたはポリマー(C)と、化学発泡剤(d1)および発泡助剤(d2)の質量比(d1/d2)が0.3〜2.0の範囲内である発泡成分(D)とを、所定の質量比で配合した実施例1〜10のゴム組成物は、いずれも氷上性能および長期安定性が比較例1よりも良好となることが分かった。
また、実施例1〜7の対比から、架橋性オリゴマーまたはポリマー(C)および発泡成分(D)を予め混合し、硬化させた硬化物を配合することにより、氷上性能および長期安定性がより良好となる傾向があることが分かった。
また、実施例1と実施例9との対比、実施例3と実施例10との対比から、熱膨張マイクロカプセルを配合することにより、氷上性能がより良好となることが分かった。