(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記距離保持手段が、前記第1アンテナコイルが巻回される第1アンテナ溝と、前記第1アンテナ溝から軸方向に一定距離で形成されて前記第2アンテナコイルが巻回される第2アンテナ溝とで構成してある請求項4に記載の無線識別タグ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、共振点周波数を制御することが容易であり、また通信距離が長く、しかも組立が容易な無線識別タグを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る無線識別タグは、
磁性体コアと、
前記磁性体コアの径方向外側に配置される第1アンテナコイルと、
前記磁性体コアの径方向外側に配置され、前記第1アンテナコイルに対して軸方向に所定距離で配置される第2アンテナコイルと、を有し、
前記第1アンテナコイルと前記第2アンテナコイルとが、連続する単一のワイヤで構成してあることを特徴とする。
【0008】
本発明では、第1アンテナコイル以外に、増幅用コイルとして用いられる第2アンテナコイルを配置することで、無線通信距離をさらに伸ばすことが可能になる。無線通信距離を伸ばせれば、硬化したコンクリートの内部深くに無線識別タグが埋め込まれていたとしても、無線通信装置により、そのタグとのデータの送受信を行うことができる。また、本発明では、第1アンテナコイルと第2アンテナコイルとの軸方向距離を一定に保つことで、共振点周波数の調整が可能になる。さらに、本発明では、第1アンテナコイルと第2アンテナコイルとを、単一の連続したワイヤにより形成するため、その巻回作業が容易になり、無線識別タグの組立が容易になる。
【0009】
好ましくは、前記ワイヤの第1端を固定するための第1端固定部と、前記ワイヤの第2端を固定するための第2端固定部とが、前記第1アンテナコイルと前記第2アンテナコイルとの間に配置される。第1端固定部および第2端固定部は、ワイヤを巻回する際の巻始め絡げ部または巻き終わり絡げ部として用いることができ、ワイヤの巻回作業が容易になる。
【0010】
好ましくは、前記ワイヤの第2端と、前記第2アンテナコイルの端部とが前記ワイヤの第2端リード部により連続してあり、
前記第2アンテナコイルの端部と、前記第1アンテナコイルの端部とが前記ワイヤの中間リード部により連続してあり、
前記第1アンテナコイルの端部と前記ワイヤの第1端とが前記ワイヤの第1端リード部により連続してある。
【0011】
このように構成することで、第1アンテナコイルと第2アンテナコイルとを、連続する単一のワイヤにより形成することが容易になる。
【0012】
好ましくは、前記第1アンテナコイルと共に共振回路の一部を構成する電子部品が内蔵してある回路基板が、前記第1アンテナコイルと前記第2アンテナコイルとの間に配置してある。このように構成することで、第1アンテナコイルと第2アンテナコイルとを、連続する単一のワイヤにより形成することが容易になる。
【0013】
好ましくは、前記第1アンテナコイルと共に共振回路の一部を構成する電子部品が内蔵してある回路基板が、前記第1アンテナコイルと前記第2アンテナコイルとの間に配置してあり、
前記回路基板の表面には、当該回路基板内の電子部品に接続される複数の端子が形成してあり、
前記端子は、それぞれ前記第1端リード部、第2端リード部および中間リード部に電気的に接続してある。
【0014】
このように構成することで、第1アンテナコイルと第2アンテナコイルとを、連続する単一のワイヤにより形成することが容易になる。
【0015】
好ましくは、前記第1端リード部と前記中間リード部との間に、共振用コンデンサが接続される。このように構成することで、第1アンテナコイルと第2アンテナコイルとを、連続する単一のワイヤにより形成することが容易になる。
【0016】
好ましくは、前記第1アンテナコイルおよび前記第2アンテナコイルを構成する前記ワイヤの巻始め部分または巻き終わり部分を、それぞれの前記端子に案内する複数の案内部が、前記磁性体コアの外周面に形成してある。このような構成とすることで、第1アンテナコイルと第2アンテナコイルとを結ぶワイヤの一部を、回路基板の端子と接続しやすくなる。また、第1アンテナコイルと第2アンテナコイルとを一本のワイヤを用いて連続して形成することが容易になる。
【0017】
好ましくは、前記第1アンテナコイルと前記第2アンテナコイルとを軸方向に沿って相互に一定距離となるように固定するための距離保持手段が具備してある。第1アンテナコイルと第2アンテナコイルとの軸方向距離を一定に保つことで、共振点周波数を制御することができる。
【0018】
好ましくは、前記距離保持手段が、前記第1アンテナコイルが巻回される第1アンテナ溝と、前記第1アンテナ溝から軸方向に一定距離で形成されて前記第2アンテナコイルが巻回される第2アンテナ溝とで構成してある。それぞれの溝にワイヤを巻き付けるのみで、第1アンテナコイルと第2アンテナコイルとの軸方向距離を一定に調整することができる。
【0019】
好ましくは、前記磁性体コアの少なくとも一部は、外装樹脂で覆われている。外装樹脂を設けることで、磁性体コアを有効に保護することができると共に、比重の調整が可能となる。外装樹脂の比重などを適切に選択することで、無線識別タグのトータル比重を調節することが容易になる。磁性体コアは、外装樹脂に比較して比重が高く、その磁性体コアを有する無線識別タグは、たとえば流動状態にあるコンクリートの内部で沈みやすい。そのため、コンクリートの内部で複数の無線識別タグを分散させることが重要であり、タグの比重をコンクリートの比重に近づけることが重要である。外装樹脂の体積を相対的に増やすことで、タグの比重をコンクリートの比重に近づけ易くなる。
【0020】
好ましくは、前記磁性体コアは、中空筒状に形成してある。このような構成とすることで、磁性体コアの内部を、外装樹脂で埋めることができる。その結果、外装樹脂の比重などを適切に選択することで、無線識別タグのトータル比重を調節することがさらに容易になる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
第1実施形態
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
図1に示す本発明の一実施形態に係る無線識別タグ2は、磁性体コア10を有する。磁性体コア10は、
図3および
図5に示すように、軸孔12を有する中空筒形状を有している。本実施形態では、磁性体コア10は、円筒形状であるが、円筒に限らず、多角筒、楕円筒などのその他の形状でも良い。また、用途によっては、磁性体コア10は、軸孔12を有さない柱形状であっても良い。
【0023】
磁性体コア10の材質は、磁性体であれば特に限定されず、たとえばフェライト、金属磁性体、鉄系磁性体、ケイ素鋼磁性体、パーマロイなどのFe−Ni合金系磁性体、センダストなどのFe−Si−Al合金系磁性体、パーメンジュールなどのFe−Co合金系磁性体、アモルファス磁性体、ナノ結晶磁性体などが例示される。
【0024】
磁性体コア10の径方向外側には、ボビン20が配置される。
図4に示すように、ボビン本体20は、磁性体コア10の外形形状に合わせた内周面21を有する。ボビン20の内周面21には、磁性体コア10が軸方向(Z軸方向)に沿って位置決めして固定されるように、内方凸部22が周方向に沿って断続的に形成してある。内方凸部21は、
図3および
図5に示すように、軸方向に沿って連続的に形成してあっても良いが、断続的に形成しても良い。
【0025】
ボビン20は、非磁性材料で、しかも磁性体コア10に比較して比重が軽い材料で構成されることが好ましい。ボビン20を構成する具体的な材料としては、特に限定されないが、たとえばポリプロピレン(PP)、フェノール樹脂(PF)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、液晶ポリマー(LCP樹脂)などの合成樹脂が例示される。ボビン20は、たとえば射出成形などにより成形することができる。
【0026】
ボビン20の外周面には、
図3および
図5に示すように、軸方向であるX軸方向に沿って所定間隔L1で、第1アンテナ溝32と第2アンテナ溝34とが形成してある。これらの溝32および34は、周方向に連続して形成してあり、それぞれの溝32および34にワイヤ80が巻回されて、それぞれ第1アンテナコイル80Aおよび第2アンテナコイル80Bが形成してある。第1アンテナコイル80Aは、主としてデータの送受信を行う機能がメインとなり、第2アンテナコイル80Bは、第1アンテナコイル80Aの機能を増幅させる機能を有する。
【0027】
図3に示すように、X軸方向に沿って第1アンテナ溝32と第2アンテナ溝34との間で、Z軸方向の上部に位置するボビン20の外周面には、基板取付溝36が形成してある。基板取付溝36には、回路基板60が固定可能になっている。回路基板60の固定は、たとえば接着剤により行う。
【0028】
回路基板60には、
図6に示すように、コンデンサ65,66およびICチップ67や、図示省略してあるメモリおよびその他の電子回路が組み込まれている。回路基板60の外表面には、
図1および図に示すように、4つの端子61〜64が形成してあるが、それ以上に端子が形成してあっても良いし、3つ以下の端子が形成してあっても良い。本実施形態では、端子61〜64は、X軸およびY軸を含む平面において、マトリックス状に形成してある。
【0029】
なお、図面において、X軸、Y軸およびZ軸は、相互に垂直であり、X軸が、磁性体コア10の軸方向に一致し、Z軸が、回路基板60の平面に対して略垂直となる。
【0030】
本実施形態では、
図3に示すように、基板取付溝36の内部に回路基板60が収容され、端子61〜64の上に形成してあるスポット半田あるいはレーザ溶接部により、端子61〜64とワイヤ80が
図2に示す位置で電気的に接続してある。本実施形態では、端子61〜64の上に位置するリード線として用いられるワイヤ80は、第1アンテナコイル80Aおよび第2アンテナコイル80Bを構成するワイヤ80を兼ねており、全てを連続した一本のワイヤ80で構成してある。ワイヤ80としては、特に限定されず、たとえば絶縁被覆の導電ワイヤなどで構成してある。
【0031】
このように全てを連続した一本のワイヤ80で構成するために、
図2に示すように、X軸方向に沿って第1アンテナ溝32と第2アンテナ溝34との間であって、Y軸方向の両側に位置するボビン20の外周面には、それぞれ第1端固定凸部40aと第2端固定凸部40bとが形成してある。第1端固定凸部40aには、ワイヤ80の第1端が絡げて固定してあり、第2端固定凸部40bには、ワイヤ80の第2端が絡げて固定してある。
【0032】
第2端固定凸部40bと基板取付溝36との間に位置するボビン20の外周面には、案内凸部42が形成してある。案内凸部42は、ワイヤ80の巻始め端が絡げてある第2端固定凸部40bから回路基板60の端子64へ向かうワイヤ部分(第2端リード部80b1)を案内するための凸部である。
【0033】
端子64と第2アンテナ溝34との間に位置するボビン20の外周には、端子64から第2アンテナ溝34へと向かうワイヤ部分を案内する案内凸部44が形成してある。案内凸部44が形成してあることで、その部分が第2アンテナコイル80Bの巻始め位置を規定し、第2アンテナ溝34にワイヤ80を自動で巻回する作業が容易になる。第2アンテナ溝34にワイヤ80を巻回して第2アンテナコイル80Bを形成した後のワイヤ80は、案内凸部46に一回り巻き付けられて、方向転換させられて回路基板60の方向に戻される。
【0034】
案内凸部46は、第2アンテナ溝34よりもボビン20の軸方向第2端20bに近いボビン20の外周面に形成してあり、第2アンテナコイル80Bの巻き終わり位置を規定する。案内凸部46から戻されたワイヤ80の一部(中間リード部80c)は、案内凸部44に当接することで、回路基板60の端子63の上に案内され、そこで端子63と接続される。
【0035】
端子63の上に位置するワイヤ80の一部(中間リード部)は、端子61の上を通り、案内凸部48により案内されて、第1アンテナ溝32に巻き付けられて第1アンテナコイル80Aが形成される。なお、案内凸部48は、基板取付溝36と第1アンテナ溝32との間に位置するボビンの外周面に形成してあり、第1アンテナコイル80Aの巻始め位置を規定する。
【0036】
案内凸部48が形成してあることで、第1アンテナ溝32にワイヤ80を自動で巻回する作業が容易になる。第1アンテナ溝32にワイヤ80を巻回して第1アンテナコイル80Aを形成した後のワイヤ80は、案内凸部50に一回り巻き付けられて、方向転換させられて回路基板60の方向に戻される。
【0037】
案内凸部50は、第1アンテナ溝32よりもボビン20の軸方向第1端20aに近いボビン20の外周面に形成してあり、第1アンテナコイル80aの巻き終わり位置を規定する。案内凸部50から戻されたワイヤ80の一部(第1端リード部)は、案内凸部52により、回路基板60の端子62の上に案内され、そこで端子62と接続される。
【0038】
端子62の上に位置するワイヤ80の第1端リード部は、案内凸部54により案内されて第1端固定凸部40aに向けられ、ワイヤ80の第1端80aは、第1端固定凸部40aに絡げられて固定される。案内凸部54は、基板取付溝36と第1端固定凸部40aとの間に位置するボビン20の外周面に形成してある。
【0039】
本実施形態では、一対の案内凸部46および50が、それぞれ溝32および34よりもボビン20の軸端に近いボビンの外周面に形成してあり、ワイヤ80の方向転換を図る機能を有する。また、第1アンテナ溝32と第2アンテナ溝34との間で、板取付溝36の周囲に位置するボビン20の外周面に形成してある案内凸部44,48,52は、第1アンテナコイル80Aおよび第2アンテナコイル80Bからのワイヤ80を、回路基板60の端子61〜64に案内する機能を有する。
【0040】
なお、本実施形態では、ワイヤ80の第2端80bが巻始め端部となり、第1端80aが巻き終わり端となるが、その逆でも良い。逆の場合には、ワイヤ80は、第1端固定凸部40aから案内凸部54、端子62、案内凸部52を通り、凸部52を巻始め位置として第1アンテナ溝32に巻回され、その後に、案内凸部50を巻き終わり位置として、そこから案内凸部48に戻され、端子61および63へと案内される。その後に、ワイヤ80は、案内凸部44を巻始め位置として第2アンテナ溝34に巻回され、案内凸部46を巻き終わり位置として、案内凸部46から案内凸部44へと案内され、そこから端子64を通り、案内凸部42により、第2端固定部40bへと戻される。
【0041】
図3および
図5に示すように、本実施形態では、磁性体コア10は、ボビン10の軸孔12に挿入されてボビン10に対してX軸方向に沿って位置決めして固定される。ボビン20に対する磁性体コア10のX軸方向位置を調節することのみで、本実施形態では、共振周波数を、たとえば13.65MHz±0.1MHzに制御することが可能になる。また、通信距離も18cm以上、好ましくは20cm以上、さらに好ましくは23cm以上と、大幅に通信距離を伸ばすことが可能になる。
【0042】
また本実施形態では、磁性体コア10の軸方向第1端10aが、ボビン20の軸方向第1端20aよりも飛び出している。このような構成であると、治具などを用いてボビン20に対しての磁性体コア10のX軸方向移動動作を行い易くなり、位置決め作業が容易になる。なお、磁性体コア10の軸方向第1端10aが、ボビン20の軸方向第1端20aよりも飛び出し過ぎると、共振周波数が低めにずれる傾向にある。
【0043】
本実施形態では、ボビン20の軸方向第2端20bには、一対の突出片24がX軸方向に突出して形成してある。突出片24は、周方向に沿って断続的に形成してあり、磁性体コア10の外径よりも大きな内径を有する。磁性体コア10の軸方向第2端10bは、ボビン20の軸方向第2端20bよりも突出しており、突出片24で外周部の一部が覆われるようになっている。なお、磁性体コア10の軸方向第2端10bが、ボビン20の軸方向第2端20bよりも飛び出し過ぎると、共振周波数が高めにずれる傾向にある。
【0044】
本実施形態では、突出片24があることと、内方凸部22があることにより、治具などを用いて、ボビン20に対する磁性体コア10のX軸方向位置を調節する自動作業が可能になる。
【0045】
ボビン20に対する磁性体コア10のX軸方向位置を調節した後では、
図2に示すボビン20の外周面に形成してある固定用孔30から接着剤などを流し込めば、接着剤が、ボビン20の内周面21と磁性体コア10の外周面との間に入り込み、磁性体コア10をボビンに対して容易に固定することができる。固定用孔30は、
図2に示すように、第1アンテナ溝32と第2アンテナ溝34との間に位置するボビン20の外周面に複数箇所で設けてあり、ボビン20の内外を貫通している。
【0046】
図2では、ボビン20の外周面で、回路基板60および案内凸部42,44,48,52を避けた位置で、2箇所で形成してあるが、そのZ軸方向の反対位置に位置するボビン20の外周面にも設けても良い。
【0047】
図2および
図3に示すように、本実施形態では、磁性体コア10がX軸方向に位置決めされてコイル80Aおよび80Bが巻回してあるボビンの周囲を囲むように、外装樹脂90で被覆してある。外装樹脂90は、たとえば金型内に磁性体コア10付きボビン20を入れて樹脂を射出成形することにより形成される。
【0048】
外装樹脂90を構成する樹脂としては、タグ2を保護すべく、強度に優れ、化学的安定性を有する合成樹脂が選択される。特にタグ2が投入される混練物質が強アルカリ性のセメントである場合には、耐アルカリ性で強度にもポリプロピレン樹脂、または、ポリアミド樹脂が用いられる。また、これらの樹脂をガラスファイバーや無機質フィラーなどの強化材で強化することもある。
【0049】
さらに、タグ2を混練物質中で分散させるべく好適な比重に調節するべく、比重調整用のガラス質材が外装樹脂90を構成する樹脂に添加、混練されることもある。たとえば、セメント製品(コンクリートなど)に混練されるタグ2に好適な比重は1.3〜2.3程度である。
図1および
図2に示すように、外装樹脂90のX軸方向両端の外周面には、セメント製品との接合強度が向上するように、溝部を形成しても良い。
【0050】
金型内でのボビン20の位置決めのために、突出片24のX軸方向端部には、磁性体コア10の軸方向第2端10bよりも軸方向に飛び出ている軸方向位置決め凸部26が形成してある。これらの凸部26は、周方向に沿って断続的に形成してある。また、ボビン10および突出片24の外周面には、径方向位置決め凸部28が形成してある。図自称略してある金型の内部にボビン20を入れて、外装樹脂90を金型内で一体形成する際に、軸方向位置決め凸部26および径方向位置決め凸部28が形成してあることで、金型内でのボビン20の位置決めが容易になる。なお、金型には、ボビン20の軸方向第1端20aの側から外装樹脂90を構成する樹脂が射出される。
【0051】
本実施形態では、磁性体コア10は、軸孔12を持つ中空筒状に形成してあることから、磁性体コア10の軸孔12の内部をも、外装樹脂90で埋めることができる。その結果、外装樹脂90の比重などを適切に選択することで、無線識別タグ2のトータル比重を調節することが容易になる。磁性体コア10は、外装樹脂90に比較して比重が高く、その磁性体コア10を有する無線識別タグ2は、たとえば流動状態にあるコンクリートの内部で沈みやすい。そのため、コンクリートの内部で複数の無線識別タグ2を分散させることが重要であり、タグ2の比重をコンクリートの比重に近づけることで、流動状態にあるコンクリートの内部でタグ2を均一に分散させることが容易になる。
【0052】
図6に示すように、第1アンテナコイル80Aは、端子61および62を通して、回路基板60内に内蔵してあるコンデンサ65と接続されて共振回路を形成している。また、第2アンテナコイル80Bは、回路基板60内に内蔵してあるコンデンサ66と接続されて共振回路を形成している。コンデンサ65は、ICチップ67に並列に接続してある。端子61と端子63は、
図2に示すように、単一のワイヤ80の一部により接続される。
【0053】
図1〜
図6に示す本発明の一実施形態に係る無線識別タグ2は、たとえば生コンクリートや熱可塑性樹脂などのように、製造工程で液体状、粘性体状あるいは半固体状の性状をもつ硬化後の製品について、製品毎の品質管理を行うために用いられる。この無線識別タグ2には、たとえば生コンクリートに関するデータが記憶されて生コンクリートの内部に分散される。生コンクリートに関するデータとしては、たとえば材料、配合比、出荷および納品データなどが例示される。無線識別タグ2に記憶されたデータは、たとえばデータセンタに記憶される。
【0054】
コンクリートが所定形状に硬化された後には、硬化されたコンクリートの表面から、
図6に示すリーダライタ100を用いて、コンクリート中に埋め込まれた無線識別タグ2と非接触式の無線通信を行い、タグ2に記憶してあるデータを読み取り、データセンタ内に記憶してあるデータとの照合を行う。このようにして製品毎の品質管理(トレーサビリティ含む)を行うことができる。
【0055】
本実施形態では、磁性体コア10の外周面に直接に第1アンテナコイル80Aおよび80Bを形成するのではなく、ボビン20の外周面に第1アンテナコイル80aおよび第2アンテナコイル80Bが形成され、ボビン20に対して磁性体コア10を軸方向に沿って位置決めして固定してある。
【0056】
そのため、本実施形態では、ボビン20の外周面に第1アンテナコイル80Aおよび第2アンテナコイル80Bを軸方向に位置決めして固定することが容易であり、さらに、ボビン20に対して磁性体コア10を軸方向に移動させることで、共振点周波数を容易に制御することができる。
【0057】
本実施形態では、共振点周波数を正確に制御することができることと、磁性体コア10を用いることとにより、従来よりも大幅に無線通信距離を伸ばすことができる。具体的には、本実施形態では、共振周波数を、たとえば13.65MHz±0.1MHzに制御することが可能になる。また、通信距離も18cm以上、好ましくは20cm以上、さらに好ましくは23cm以上と、大幅に通信距離を伸ばすことが可能になる。
【0058】
さらに本実施形態では、
図3および
図4に示すように、ボビン20の内周面21には、磁性体コア10を位置決めして固定する前の段階で、磁性体コア10を軸方向に移動自在に仮固定するための内方凸部22が形成してある。このような内方凸部22をボビン20の内周面21に形成することで、ボビン20に対して磁性体コア10の軸方向位置を調整した後で、磁性体コア10を位置決めして固定する前に、磁性体コア10が位置ズレすることを有効に防止することができる。その結果、共振点周波数がずれることを抑制することができる。
【0059】
また、治具などを用いて、ボビン20に対して磁性体コア10を軸方向に移動させて共振周波数を調整する際に、内方凸部22があるために、ボビン20と磁性体コア10との摩擦力を低減することができる。さらに、内方凸部22があるために、ボビン20と磁性体コア10との間に隙間が形成され、その間に空気層を形成することが可能であり、無線識別タグ2のトータル比重を軽くすることも可能である。
【0060】
また、内方凸部22は、ボビン20の内周面21で周方向に沿って断続的に形成してあり、軸方向に沿って連続的または断続的に直線状に形成してあるため、ボビン20と磁性体コア10との摩擦力をさらに低減することができる。
【0061】
さらに本実施形態では、第1アンテナコイル80Aを構成するワイヤ80の第1端80aを固定するための第1端固定凸部40aが、ボビン20の外周面に形成してある。第1端固定凸部40aは、ワイヤ80をボビン20の外周面に巻回する際の巻始め絡げ部または巻き終わり絡げ部として用いることができ、ワイヤの巻回作業が容易になる。
【0062】
本実施形態では、ボビンの外周面には、第1アンテナコイル80Aのみでなく、第2アンテナコイル80Bが巻回してある。増幅用コイルとして用いられる第2アンテナコイルを形成することで、無線通信距離をさらに伸ばすことが可能になる。無線通信距離を伸ばせれば、硬化したコンクリートの内部深くに無線識別タグ2が埋め込まれていたとしても、リーダライタ100などの無線通信装置により、そのタグ2とのデータの送受信を行うことができる。
【0063】
本実施形態では、第2アンテナコイル80Bを構成するワイヤ80の第2端80bを固定するための第2端固定凸部40bが、ボビン20の外周面に形成してある。第2端固定凸部40bは、ワイヤ80をボビン20の外周面に巻回する際の巻始め絡げ部または巻き終わり絡げ部として用いることができ、ワイヤ80の巻回作業が容易になる。
【0064】
本実施形態では、第1アンテナコイル80Aと第2アンテナコイル80Bとをボビン20の外周面にX軸方向に沿って相互に一定距離となるように固定するための距離保持手段として、第1アンテナ溝32と第2アンテナ溝34とが形成してある。第1アンテナコイル80Aと第2アンテナコイル80BとのX軸方向距離を一定に保った状態で、ボビンに対して磁性体コアを軸方向に移動することで、共振点周波数の調整が可能になる。また、第1アンテナ溝32と、第2アンテナ溝34とのそれぞれの溝にワイヤ80を巻き付けるのみで、第1アンテナコイル80Aと第2アンテナコイル80Bとの軸方向距離を一定に調整することができる。
【0065】
本実施形態では、ボビン20に対して磁性体コア10を軸方向に沿って位置決めして固定するための固定用孔30は、第1アンテナコイル80Aと第2アンテナコイル80Bとの間に位置するボビン20の外周面に形成してあることから、ボビン20に対して磁性体コア10の固定が容易になる。
【0066】
さらに本実施形態では、第1アンテナコイル80Aと共に共振回路の一部を構成する電子部品が内蔵してある回路基板60を取り付けるための基板取付溝36が、第1アンテナコイル80Aと第2アンテナコイル80Bとの間に位置するボビン20の外周面に形成してある。このような構成とすることで、第1アンテナコイル80Aと第2アンテナコイル80Bとを結ぶワイヤ80の一部を、回路基板60の端子61〜64と接続しやすくなる。また、第1アンテナコイル80Aと第2アンテナコイル80Bとを一本のワイヤ80を用いて連続して形成することが容易になる。そのため、無線識別タグ2の組立が著しく容易になる。
【0067】
本実施形態では、回路基板60の表面には、当該回路基板60内の電子部品に接続される複数の端子61〜64が形成してあり、第1アンテナコイル80Aおよび第2アンテナコイル80Bを構成するワイヤ80の巻始め部分または巻き終わり部分を、それぞれの端子61〜64に案内する複数の案内凸部42〜52が、ボビン20の外周面に形成してある。このような構成とすることで、第1アンテナコイル80Aと第2アンテナコイル80Bとを結ぶワイヤ80の一部を、回路基板60の端子61〜64と接続しやすくなる。また、第1アンテナコイル80Aと第2アンテナコイル80Bとを一本のワイヤ80を用いて連続して形成することが容易になる。
【0068】
第2実施形態
たとえば上述した実施形態では、磁性体コア10が軸方向に沿って位置決めして固定されるボビン20の外周面に、第1アンテナコイル80Aと第2アンテナコイル80Bとを連続する単一のワイヤ80で形成してある。しかしながら、本発明では、ボビンを用いることなく、磁性体コア10の外周面に直接に、第1アンテナコイル80Aと第2アンテナコイル80Bとを連続する単一のワイヤ80で形成してもよい。
【0069】
たとえば第1アンテナコイル溝32と第2アンテナコイル溝34とは、ボビンに形成することなく、磁性体コア10の外周面に直接に形成しても良い。また、ワイヤ80の第1端リード部80a1、第2端リード部80b1および中間リード部80cを、それぞれの端子61〜64に案内する複数の案内部凸部42〜54は、ボビン20の外周面に形成することなく、磁性体コア10の外周面に直接に形成しても良い。
【0070】
さらに、 第1端固定凸部40aおよび第2端固定凸部40bも同様に、磁性体コア10の外周面に直接に形成しても良い。さらに、基板取付溝36も、ボビン20に形成することなく、磁性体コア10の外周面に直接に形成しても良い。さらにまた、ボビン20に形成してあるその他の部材も、全て、磁性体コア10に形成しても良い。
【0071】
ボビン20を用いない第2実施形態の場合には、ボビン20を用いることによる独自の作用効果を奏さない以外は、以下にも示すように、前述した第1実施形態と共通する作用効果を有する。すなわち、この実施形態では、第1アンテナコイル80A以外に、増幅用コイルとして用いられる第2アンテナコイル80Bを配置することで、無線通信距離を伸ばすことが可能になる。無線通信距離を伸ばせれば、硬化したコンクリートの内部深くに無線識別タグが埋め込まれていたとしても、無線通信装置により、そのタグ2とのデータの送受信を行うことができる。
【0072】
また、本実施形態では、第1アンテナコイル80Aと第2アンテナコイル80Bとの軸方向距離を一定に保つことで、共振点周波数の調整が可能になる。さらに、本実施形態では、第1アンテナコイル80Aと第2アンテナコイル80Bとを、単一の連続したワイヤ80により形成するため、その巻回作業が容易になり、無線識別タグの組立が容易になる。
【0073】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【0074】
たとえば、上述した実施形態では、第1アンテナコイル溝32と共に、第2アンテナコイル溝34を形成してあるが、これらの溝32,34の代わりに凸部を形成しても良い。すなわち、第1アンテナコイル80Aと第2アンテナコイル80Bとをボビン20の外周面に軸方向に沿って相互に一定距離となるように固定するための距離保持手段を、一対の凸部、または凸部と溝との組み合わせで構成しても良い。
【0075】
さらに上述した実施形態では、回路基板60を取り付けるための基板取付溝36が形成してあるが、基板取付部としては、溝36に限らず、周方向に断続的な凸部間で囲まれた平面であっても良い。
【0076】
また、上述した実施形態において、案内凸部42〜54の代わりに、案内部として、案内溝を形成しても良い。