(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1にも記載されているように、上記の手順通りに操作がなされなかった場合、移動式クレーンの構成部品が破損する可能性がある。例えば、
図11及び
図12に示されるように、第1マスト39及び第2マスト40の立ち上げが不十分な状態でブーム22が起仰されると、第2マスト40とロープ44とが略平行になって、第2マスト40がジブサポート38に対して回動可能になる。
【0006】
そして、
図12に示される状態からブーム22がさらに起仰されると、第1マスト39及び第2マスト40がラフィングジブ30側に倒伏する可能性がある。このとき、ラフィングジブ30のチルト角度(ブーム22とラフィングジブ30とのなす角)が大きいと、倒伏した第2マスト40によってラフィングジブ30(より詳細には、ベースジブ31)が損傷する可能性がある。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ブーム或いはラフィングジブの起伏動作時におけるラフィングジブの破損を抑制した移動式クレーンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 本発明の一形態に係る移動式クレーンは、ベース車両と、前記ベース車両に旋回自在に支持された旋回台と、前記旋回台に起伏自在に支持されたブームと、前記ブームを起伏させる起伏シリンダと、前記ブームの先端に着脱自在に装着されたジブサポートと、前記ジブサポートに起伏自在に支持されたラフィングジブと、前記ジブサポート或いは前記ラフィングジブに回動自在に支持された第1マストと、前記ジブサポートに回動自在に支持された第2マストと、前記ラフィングジブ及び前記第1マストを連結する第1テンションリンクと、前記第1マスト及び前記第2マストを連結する第2テンションリンクと、前記第2マストに連結されたロープを繰り出して前記第2マストを前記ラフィングジブ側に回動させ、前記ロープを巻き取って前記第2マストを前記ラフィングジブと反対側に回動させるウインチと、前記ブームを起伏させるユーザ操作に応じた信号を出力する操作部と、前記起伏シリンダ及び前記ウインチの動作を制御する制御部とを備える。そして、前記制御部は、前記操作部から出力される信号に応じて、前記起伏シリンダに前記ブームを起仰させ、前記ブームの起伏角度が前記ロープの繰り出し長さに対応する最大角度に達したことに応じて、前記起伏シリンダを停止させる。
【0009】
上記構成によれば、ロープの繰り出し長さに対応する最大角度を超えてブームが起仰されることが防止される。その結果、ラフィングジブ側に倒伏した第2マストによってラフィングジブが損傷することを抑制できる。
【0010】
(2) 好ましくは、前記制御部は、前記ブームの起伏角度が前記最大角度に達したことに応じて、前記ロープを巻き取る必要があることを報知する。
【0011】
上記構成によれば、ラフィングジブの損傷を回避するための操作を作業者に促すことができる。その結果、ラフィングジブの損傷をさらに有効に抑制できる。
【0012】
(3) 例えば、該移動式クレーンは、前記ロープの繰り出し長さ毎に設定された前記最大角度を記憶する記憶部をさらに備える。
【0013】
但し、移動式クレーンが最大角度を保持する方法はこれに限定されない。例えば、制御部は、ロープの繰り出し長さを入力することによって最大角度が出力される関数を用いてもよい。
【0014】
(4) 好ましくは、前記ブームは、伸縮が可能である。そして、前記制御部は、前記ブームの起伏角度が前記ロープの繰り出し長さ及び前記ブームの長さの組み合わせに対応する前記最大角度に達したことに応じて、前記起伏シリンダを停止させる。
【0015】
上記構成によれば、ラフィングジブ側に倒伏した第2マストによってラフィングジブが損傷することをさらに有効に抑制できる。
【0016】
(5) 本発明の他の形態に係る移動式クレーンは、ベース車両と、前記ベース車両に旋回自在に支持された旋回台と、前記旋回台に起伏自在に支持されたブームと、前記ブームを起伏させる起伏シリンダと、前記ブームの先端に着脱自在に装着されたジブサポートと、前記ジブサポートに起伏自在に支持されたラフィングジブと、前記ジブサポート或いは前記ラフィングジブに回動自在に支持された第1マストと、前記ジブサポートに回動自在に支持された第2マストと、前記ラフィングジブ及び前記第1マストを連結する第1テンションリンクと、前記第1マスト及び前記第2マストを連結する第2テンションリンクと、前記第2マストに連結されたロープを繰り出して前記第2マストを前記ラフィングジブ側に回動させ、前記ロープを巻き取って前記第2マストを前記ラフィングジブと反対側に回動させるウインチと、前記ロープを繰り出させるユーザ操作に応じた信号を出力する操作部と、前記起伏シリンダ及び前記ウインチの動作を制御する制御部とを備える。そして、前記制御部は、前記操作部から出力される信号に応じて、前記ウインチに前記ロープを繰り出させ、前記ロープの繰り出し長さが前記ブームの起伏角度に対応する最大長さに達したことに応じて、前記ウインチを停止させる。
【0017】
上記構成によれば、ブームの起伏角度に対応する最大長さを超えてウインチがロープを繰り出すことが防止される。その結果、ラフィングジブ側に倒伏した第2マストによってラフィングジブが損傷することを抑制できる。
【0018】
(6) 好ましくは、前記制御部は、前記ロープの繰り出し長さが前記最大長さに達したことに応じて、前記ブームを倒伏させる必要があることを報知する。
【0019】
上記構成によれば、ラフィングジブの損傷を回避するための操作を作業者に促すことができる。その結果、ラフィングジブの損傷をさらに有効に抑制できる。
【0020】
(7) 例えば、該移動式クレーンは、前記ブームの起伏角度毎に設定された前記最大長さを記憶する記憶部をさらに備える。
【0021】
但し、移動式クレーンが最大長さを保持する方法はこれに限定されない。例えば、制御部は、ブームの起伏角度を入力することによって最大長さが出力される関数を用いてもよい。
【0022】
(8) 好ましくは、前記ブームは、伸縮が可能である。そして、前記制御部は、前記ロープの繰り出し長さが前記ブームの起伏角度及び前記ブームの長さの組み合わせに対応する前記最大長さに達したことに応じて、前記ウインチをを停止させる。
【0023】
上記構成によれば、ラフィングジブ側に倒伏した第2マストによってラフィングジブが損傷することをさらに有効に抑制できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、最大角度を超えてブームが起仰されること或いは最大長さを超えてウインチがロープを繰り出すことが防止されるので、倒伏した第2マストによってラフィングジブが損傷することを抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の好ましい実施形態が、適宜図面が参照されつつ説明される。なお、本実施形態は、本発明の一態様にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施態様が変更されてもよいことは言うまでもない。
【0027】
[移動式クレーン100の概要]
図1を参照して、本実施形態に係る移動式クレーン100を説明する。本実施形態に係る移動式クレーン100は、
図1に示されるように、自走可能なベース車両10と、ベース車両10に搭載されたクレーン装置20と、クレーン装置20に着脱自在なラフィングジブ30とを備える。
図1に示される移動式クレーン100は所謂オールテレーンクレーンであるが、本発明はラフテレーンクレーン等にも適用することができる。
【0028】
[ベース車両10]
ベース車両10は、
図1に示されるように、複数のタイヤ11と、走行キャビン12と、アウトリガ13とを主に備える。ベース車両10は、エンジン(図示省略)の動力によってタイヤ11が回転されることによって、走行する。但し、ベース車両10は、タイヤ11に代えてキャタピラによって走行するものであってもよい。
【0029】
走行キャビン12は、ベース車両10の走行を制御するための各種操作部(例えば、ステアリング、シフトレバー、アクセルペダル、及びブレーキペダル等)を有する。走行キャビン12に搭乗した作業者(すなわち、運転者)は、各種操作部を操作することによって、ベース車両10を走行させる。なお、本実施形態に係る走行キャビン12は、
図1に示されるような周囲が囲まれた箱形に限定されず、開放型であってもよい。
【0030】
アウトリガ13は、クレーン装置20が動作する際に移動式クレーン100の姿勢を安定させるものである。本実施形態に係るアウトリガ13は、ベース車両10の中央及び後部の2カ所において、左右両側に設けられている(
図1では、一方側のみを図示)。アウトリガ13は、ベース車両10から左右方向に張り出した位置において地面に接地する張出状態と、地面から離間した状態でベース車両10に格納される格納状態とに状態変化が可能である。
【0031】
[クレーン装置20]
クレーン装置20は、
図1に示されるように、旋回台21と、ブーム22と、クレーンキャビン23とを主に備える。クレーン装置20は、ベース車両10に搭載されたエンジンの動力が油圧システム(図示省略)を通じて伝達されることによって動作する。
【0032】
旋回台21は、ベース車両10上に旋回自在に支持されている。より詳細には、旋回台21は、ベース車両10上の旋回平面(典型的には、水平面)に沿って旋回可能に構成されている。ブーム22は、起伏及び伸縮自在に旋回台21に支持されている。より詳細には、ブーム22は、旋回平面に直交する起伏平面(典型的には、鉛直面)に沿って起伏可能で、且つ当該ブーム22の長手方向に沿って伸縮可能に構成されている。
【0033】
クレーンキャビン23は、クレーン装置20の動作を制御するための各種操作部(例えば、旋回レバー、起伏レバー、伸縮レバー、ウインチレバー等)を有する。クレーンキャビン23に搭乗した作業者は、各種操作部を操作することによって、クレーン装置20を動作させる。なお、本実施形態に係るクレーンキャビン23は、
図1に示されるような周囲が囲まれた箱形に限定されず、開放型であってもよい。
【0034】
[ラフィングジブ30]
ラフィングジブ30は、ベースジブ31と、複数の中間ジブ32、33、34、35と、トップジブ36(以下、これらを総称して、「分割ジブ31〜36」と表記することがある。)とを備える。ラフィングジブ30は、分割ジブ31〜36の長手方向の端部同士を連結することによって構成される。また、ラフィングジブ30の長さは、中間ジブ32〜35の数を変更することによって可変となる。また、ラフィングジブ30の先端には、吊荷を係止するフック37が取り付け可能である。
【0035】
ラフィングジブ30は、ブーム22の先端に装着されたジブサポート38に起伏自在に支持される。また、ラフィングジブ30は、ジブサポート38に連結される側の端部において、第1マスト39を回動自在に支持する。さらに、ジブサポート38は、第2マスト40を回動自在に支持する。但し、第1マストを支持するのはラフィングジブ30に限定されず、ジブサポート38であってもよい。ラフィングジブ30は、ブーム22と同一の起伏平面に沿って起伏可能に構成されている。また、第1マスト39及び第2マスト40は、ブーム22及びラフィングジブ30と同一の起伏平面に沿って回動可能に構成されている。
【0036】
ラフィングジブ30と第1マスト39とは、第1テンションリンク41によって連結されている。第1テンションリンク41は、一端がラフィングジブ30の中間部(
図1の例では、中間ジブ33、34の連結部分)に連結され、他端が第1マスト39の先端に連結されている。なお、第1テンションリンク41の一端は、ラフィングジブ30の先端部(トップジブ36)に連結されていてもよい。また、第1マスト39と第2マスト40とは、第2テンションリンク42によって連結されている。第2テンションリンク42は、一端が第1マスト39の先端に連結され、他端が第2マスト40の先端に連結されている。第1テンションリンク41及び第2テンションリンク42は、例えば、屈曲可能に構成されている。
【0037】
さらに、クレーン装置20は、
図2に示されるように、制御部50と、起伏シリンダ51と、伸縮シリンダ52と、主巻ウインチ53と、補巻ウインチ54と、起伏レバー55と、伸縮レバー56と、主巻ウインチレバー57と、補巻ウインチレバー58と、ブーム角度検出器59と、ブーム長さ検出器60と、繰出長さ検出器61と、記憶部62とを備える。起伏レバー55、伸縮レバー56、主巻ウインチレバー57、及び補巻ウインチレバー58は、操作部の一例である。
【0038】
制御部50は、クレーン装置20の動作を制御する。制御部50は、記憶部62に記憶されたプログラムを実行するCPUによって実現されてもよいし、リレー回路或いは集積回路等によって実現されてもよい。
【0039】
起伏シリンダ51は、油圧によってブーム22を起伏させる。より詳細には、起伏シリンダ51が伸長することによって、ブーム22が起仰する。また、起伏シリンダ51が収縮することによって、ブーム22が倒伏する。以下、水平面に対するブーム22の角度を「起伏角度γ」と定義する。伸縮シリンダ52は、油圧によってブーム22を伸縮させる。より詳細には、伸縮シリンダ52が伸長することによって、ブーム22が伸長する。また、伸縮シリンダ52が収縮することによって、ブーム22が収縮する。以下、ブーム22の長手方向の寸法を「ブーム長さα」と定義する。
【0040】
主巻ウインチ53は、先端がフック37に連結されたロープ43を繰り出し或いは巻き取る。主巻ウインチ53によってロープ43が繰り出されることによって、フック37が降下する。また、主巻ウインチ53によってロープ43が巻き取られることによって、フック37が上昇する。
図1の例では、フック37と主巻ウインチ53とを連結するロープ43は、トップジブ36、第1マスト39、及び第2マスト40によって案内される。
【0041】
補巻ウインチ54は、先端が第2マスト40に連結されたロープ44を繰り出し或いは巻き取る。補巻ウインチ54によってロープ44が繰り出されることによって、第1マスト39及び第2マスト40がラフィングジブ30側に回動すると共に、ラフィングジブ30が倒伏する。また、補巻ウインチ54によってロープ44が巻き取られることによって、第1マスト39及び第2マスト40がラフィングジブ30と反対側に回動すると共に、ラフィングジブ30が起仰する。
【0042】
図1の例では、第2マスト40とロープ44との間に連結ロッド45及び空中シーブ46が設けられている。ロープ44は、負荷を分散させるために、補巻ウインチ54と空中シーブ46とに複数回にわたって巻回されている。換言すれば、ロープ44は、補巻ウインチ54と空中シーブ46との間をn(nは自然数であって、例えばn=4)往復している。以下、補巻ウインチ54から繰り出されたロープ44の長さを「繰り出し長さβ」と定義する。また、ブーム22とラフィングジブ30とのなす鋭角を「チルト角度」と定義する。
【0043】
起伏レバー55は、ブーム22を起伏させるユーザ操作に応じた信号を制御部50に出力する。より詳細には、起伏レバー55は、ブーム22を起仰させるユーザ操作を受け付けたことに応じて、起仰信号を制御部50に出力する。また、起伏レバー55は、ブーム22を倒伏させるユーザ操作を受け付けたことに応じて、倒伏信号を制御部50に出力する。制御部50は、起伏レバー55から起仰信号が出力されている間、起伏シリンダ51を伸長させる。また、制御部50は、起伏レバー55から倒伏信号が出力されている間、起伏シリンダ51を収縮させる。
【0044】
伸縮レバー56は、ブーム22を伸縮させるユーザ操作に応じた信号を制御部50に出力する。より詳細には、伸縮レバー56は、ブーム22を伸長させるユーザ操作を受け付けたことに応じて、伸長信号を制御部50に出力する。また、伸縮レバー56は、ブーム22を収縮させるユーザ操作を受け付けたことに応じて、収縮信号を制御部50に出力する。制御部50は、伸縮レバー56から伸長信号が出力されている間、伸縮シリンダ52を伸長させる。また、制御部50は、伸縮レバー56から収縮信号が出力されている間、伸縮シリンダ52を収縮させる。
【0045】
主巻ウインチレバー57は、フック37を昇降させるユーザ操作に応じた信号を制御部50に出力する。より詳細には、主巻ウインチレバー57は、フック37を降下させるユーザ操作を受け付けたことに応じて、降下信号を制御部50に出力する。また、主巻ウインチレバー57は、フック37を上昇させるユーザ操作を受け付けたことに応じて、上昇信号を制御部50に出力する。制御部50は、主巻ウインチレバー57から降下信号が出力されている間、主巻ウインチ53にロープ43を繰り出させる。また、制御部50は、主巻ウインチレバー57から上昇信号が出力されている間、主巻ウインチ53にロープ43を巻き取らせる。
【0046】
補巻ウインチレバー58は、ラフィングジブ30を起伏させるユーザ操作に応じた信号を制御部50に出力する。より詳細には、補巻ウインチレバー58は、ラフィングジブ30を倒伏させるユーザ操作を受け付けたことに応じて、倒伏信号を制御部50に出力する。また、補巻ウインチレバー58は、ラフィングジブ30を起仰させるユーザ操作を受け付けたことに応じて、起仰信号を制御部50に出力する。制御部50は、補巻ウインチレバー58から倒伏信号が出力されている間、補巻ウインチ54にロープ44を繰り出させる。また、制御部50は、補巻ウインチレバー58から起仰信号が出力されている間、補巻ウインチ54にロープ44を巻き取らせる。
【0047】
ブーム角度検出器59は、ブーム22の起伏角度を検出して制御部50に出力する。ブーム長さ検出器60は、ブーム22の長さを検出して制御部50に出力する。繰出長さ検出器61は、ロープ44の繰り出し長さを検出して制御部50に出力する。すなわち、制御部50は、ブーム22の起伏角度の現在値をブーム角度検出器59から取得し、ブーム22の長さの現在値をブーム長さ検出器60から取得し、ロープ44の繰り出し長さの現在値を繰出長さ検出器61から取得する。
【0048】
記憶部62は、制御部50によるクレーン装置20の制御に必要な各種情報や各種プログラム等を記憶する。本実施形態に係る記憶部62は、例えば、
図3に示される最大角度テーブルと、
図4に示される最大長さテーブルとを記憶している。
【0049】
図3に示される最大角度テーブルは、ブーム長さα及び繰り出し長さβの組み合わせに対応する起伏角度γの最大値(以下、「最大角度γ」と表記する。)を示すテーブルである。最大角度γは、対応するブーム長さα及び繰り出し長さβにおいて、第2マスト40がラフィングジブ30側に倒伏しない値に設定される。最大角度γは、例えば、シミュレーション或いは実験によって事前に決定された値である。
【0050】
図3の例において、繰り出し長さβは、ブーム長さαが長くなるのに比例して長くなる。すなわち、α1<α2<α3であれば、β11<β21<β31、β12<β22<β32、β13<β23<β33が成立する。また、最大角度γは、繰り出し長さβが長くなるほど小さくなる。すなわち、β11<β12<β13であればγ11>γ12>γ13が成立し、β21<β22<β23であればγ21>γ22>γ23が成立し、β31<β32<β33であればγ31>γ32>γ33が成立する。
【0051】
図4に示される最大長さテーブルは、ブーム長さα及び起伏角度γの組み合わせに対応する繰り出し長さβの最大値(以下、「最大長さβ」と表記する。)を示すテーブルである。最大長さβは、対応するブーム長さα及び起伏角度γにおいて、第2マスト40がラフィングジブ30側に倒伏しない値に設定される。最大長さβは、例えば、シミュレーション或いは実験によって事前に決定された値である。
【0052】
図4の例において、最大長さβは、ブーム長さαが長くなるのに比例して長くなる。すなわち、α4<α5<α6であれば、β41<β51<β61、β42<β52<β62、β43<β53<β63が成立する。また、最大長さβは、起伏角度γが大きくなるほど短くなる。すなわち、γ41<γ42<γ43であればβ41>β42>β43が成立し、γ51<γ52<γ53であればβ51>β52>β53が成立し、γ51<γ52<γ53であればβ51>β52>β53が成立する。
【0053】
図3及び
図4において、例えば、ブーム長さαには10m〜30mの間の値が設定され、操出長さβには150m〜450mの間の値が設定され、起伏角度γには、0°〜90°の値が設定される。また、前述の大小関係の一部は、“<”を“≦”に、“>”を“≧”に置換することができる。
【0054】
[ラフィングジブ30の組立方法]
図5〜
図9を参照して、移動式クレーン100にラフィングジブ30を装着するラフィングジブ30の組立方法を説明する。
図5は、ラフィングジブ30の組立方法の手順を示すフローチャートである。
図6は、ステップS14における制御部50の制御内容を示すフローチャートである。
図7〜
図9は、ラフィングジブ30の組み立て過程における移動式レーン100の状態を示す図である。
【0055】
まず、作業者は、
図7に示されるように、分割ジブ32〜36の長手方向の端部同士を連結することによって、ラフィングジブ30を組み立てる(S11)。組み立てられたラフィングジブ30は、倒伏された状態で地面に載置される。また、トップジブ36の先端には、台車47が装着される。一方、ベースジブ31は、ブーム22の先端に装着されたジブサポート38と一体に構成されているので、ステップS11では中間ジブ32から分離された状態である。
【0056】
次に、作業者は、中間ジブ32の上端をベースジブ31に連結する(S12)。また、第1マスト39と第2マストとに第2テンションリンク42が連結され、補巻ウインチ54から延出されたロープ44が連結ロッド45及び空中シーブ46を介して第2マスト40に連結される。なお、
図7に示される第2マスト40は、ラフィングジブ30側に倒伏されている。しかしながら、
図7に示されるように、チルト角度が小さいラフィングジブ30は、倒伏した第2マスト40によって損傷されない。
【0057】
次に、作業者は、
図8に示されるように、第2マスト40を立ち上げる(S13)。第2マスト40の立ち上げは、補巻ウインチレバー58を操作することによって行われる。具体的には、制御部50は、作業者によって操作された補巻ウインチレバー58から起仰信号が出力されたことに応じて、補巻ウインチ54にロープ44を巻き取らせる。また、第2マスト40が立ち上げられる過程において、中間ジブ32の下端がベースジブ31に連結され、ラフィングジブ30と第1マスト39とに第1テンションリンク41が連結される。
【0058】
第2マスト40は、第2テンションリンク42及びロープ44に十分なテンションが加えられる程度まで立ち上げられる。本実施形態に係る第2マスト40は、水平面に対して90°の角度をなすように立ち上げられる。すなわち、作業者は、水平面に対する第2マスト40の角度が90°に達したことに応じて、第2マスト40を立ち上げるユーザ操作を終了する。
【0059】
次に、作業者は、ブーム22を起仰させる(S14)。ブーム22の起仰は、起伏レバー55を操作することによって行われる。なお、ステップS13で第2マスト40が充分に立ち上げられていれば、
図9に示されるように、第2マスト40とロープ44とのなす角が安全な角度を保った状態でブーム22が起仰される。一方、ステップS13で第2マスト40の立ち上げが不十分な状態でブーム22が起仰されると、
図11に示されるように、第2マスト40とロープ44とのなす角が0°に近づく。
【0060】
ここで、ステップS14の開始時点において第2マスト40が充分に立ち上げられているか否かは、制御部50によって監視されておらず、作業者が確認する必要がある。すなわち、例えば作業者の不注意等によって、第2マスト40が充分に立ち上げられる前に補巻ウインチ54によるロープ44の巻き取りが終了されて、ステップS14が実行される可能性がある。そこで、制御部50は、作業者によって操作された起伏レバー55から起仰信号が出力されたことに応じて、
図6に示される処理を実行する。
【0061】
まず、制御部50は、記憶部62から最大角度γを取得する(S21)。具体的には、制御部50は、現在のブーム長さαをブーム長さ検出器60から取得し、現在の繰り出し長さβを操出長さ検出器61から取得する。そして、制御部50は、取得したブーム長さα及び取得した繰り出し長さβに対応する最大角度γを、
図3に示される最大角度テーブルから読み出す。
【0062】
次に、制御部50は、起伏レバー55から起仰信号が出力されたことに応じて(S22:Yes)、起伏シリンダ51を伸長させる(S23)。また、制御部50は、ステップS23において、現在のブーム22の起伏角度をブーム角度検出器59から取得する。そして、制御部50は、取得したブーム22の起伏角度が最大角度γに達するまで(S24:No)、ステップS22、S23の処理を繰り返し実行する。すなわち、制御部50は、起伏シリンダ51から起仰信号が出力されており且つブーム22の起伏角度が最大角度γに達するまでの間、継続して起伏シリンダ51を伸長させる。
【0063】
そして、制御部50は、取得したブーム22の起伏角度が最大角度γに達したことに応じて(S24:Yes)、起伏レバー55から起仰信号が出力されているか否かにかかわらず、起伏シリンダ51を停止させる(S25)。また、制御部50は、ロープ44を巻き取らせて第2マスト40を立ち上げる必要があることを報知する(S26)。報知の具体的な方法は特に限定されないが、クレーンキャビン23に設置された表示装置(図示省略)にメッセージを表示させてもよいし、スピーカー(図示省略)を通じて警告音を出力してもよい。例えば、
図11に示されるように、第2マスト40の立ち上げが不十分な状態でステップS14が実行されると、ステップS25、S26が実行される可能性がある。
【0064】
一方、制御部50は、ブーム22の起伏角度が最大角度γに達する前に起伏レバー55からの起仰信号の出力が停止されたことに応じて(S22:No)、起伏シリンダ51を停止させる(S27)。作業者は、例えば、ブーム22の起伏角度が80°に達したことに応じて、ブーム22を起仰させるユーザ操作を終了する。また、ブーム22が起仰される過程において、トップジブ36から台車47が取り外され、トップジブ36の先端まで延出されたロープ43にフック37が取り付けられる。例えば、
図9に示されるように、第2マスト40が充分に立ち上げられた状態でステップS14が実行されると、起伏角度が80°に達するまでブーム22を起仰させることができる。
【0065】
次に、作業者は、
図1に示されるように、ラフィングジブ30を起仰させる(S15)。ラフィングジブ30の起仰は、補巻ウインチレバー58を操作することによって行われる。具体的には、制御部50は、作業者によって操作された補巻ウインチレバー58から起仰信号が出力されたことに応じて、補巻ウインチ54にロープ44を巻き取らせる。そして、作業者は、例えば、ラフィングジブ30のチルト角度が10°に達したことに応じて、ラフィングジブ30を起仰させるユーザ操作を終了する。
【0066】
[実施形態の作用効果]
上記の実施形態によれば、ブーム22の起伏角度が最大角度γに達したことに応じて、起伏レバー55が操作されているか否かにかかわらず、起伏シリンダ51が停止される。すなわち、ブーム長さα及び繰り出し長さβに対応する最大角度γを超えてブーム22が起仰されることが防止される。その結果、ラフィングジブ30側に倒伏した第2マスト40によってラフィングジブ30が損傷することを抑制できる。
【0067】
また、上記の実施形態によれば、起伏シリンダ51が停止されることに加えて、ロープ44の巻き取りが必要なことが作業者に報知される。すなわち、第2マスト40の倒伏を回避するための操作を作業者に促すことができるので、ラフィングジブ30の損傷をさらに有効に抑制できる。
【0068】
なお、上記の実施形態に係るラフィングジブ30の組立方法では、所謂「平組み」の例を説明したが、本発明は所謂「立組み」にも適用することができる。また、
図6の処理が実行されるのは、
図5のステップS14のタイミングに限定されない。例えば、
図6に示される処理は、フック37に吊荷を係止するため或いはフック37に係止された吊荷を所望の位置に移動させるために、ブーム22及びラフィングジブ30を起仰させる際に実行されてもよい。これにより、クレーン装置20の動作中に第2マスト40がラフィングジブ30側に倒伏することが抑制される。
【0069】
また、第2マスト40がラフィングジブ30側に倒伏するのを抑制するための制御部50の処理は
図6に限定されず、例えば
図10に示される処理であってもよい。制御部50は、補巻ウインチ54にロープ44を繰り出させるユーザ操作を補巻ウインチレバー58が受け付けた(すなわち、補巻ウインチレバー58から倒伏信号が出力された)ことに応じて、
図10に示される処理を実行する。
【0070】
まず、制御部50は、記憶部62から最大長さβを取得する(S31)。具体的には、制御部50は、現在のブーム長さαをブーム長さ検出器60から取得し、現在の起伏角度γをブーム角度検出器59から取得する。そして、制御部50は、取得したブーム長さα及び取得した起伏角度γに対応する最大長さβを、
図4に示される最大長さテーブルから読み出す。
【0071】
次に、制御部50は、補巻ウインチレバー58から倒伏信号が出力されたことに応じて(S32:Yes)、補巻ウインチ54にロープ44を繰り出させる(S33)。また、制御部50は、ステップS33において、現在のロープ44の繰り出し長さを操出長さ検出器61から取得する。そして、制御部50は、取得したロープ44の繰り出し長さが最大長さβに達するまで(S34:No)、ステップS32、S33の処理を繰り返し実行する。すなわち、制御部50は、補巻ウインチレバー58から倒伏信号が出力されており且つロープ44の繰り出し長さが最大長さβに達するまでの間、継続して補巻ウインチ54にロープ44を繰り出させる。
【0072】
そして、制御部50は、取得したロープ44の繰り出し長さが最大長さβに達したことに応じて(S34:Yes)、補巻ウインチレバー58から倒伏信号が出力されているか否かにかかわらず、補巻ウインチ54を停止させる(S35)。また、制御部50は、起伏シリンダ51を収縮させてブーム22を倒伏させる必要があることを報知する(S36)。報知の具体的な方法は、ステップS26と共通であってもよい。一方、制御部50は、ロープ44の繰り出し長さが最大長さβに達する前に補巻ウインチレバー58からの倒伏信号の出力が停止されたことに応じて(S32:No)、補巻ウインチ54を停止させる(S37)。
【0073】
上記の処理によれば、ブーム長さα及び起伏角度γに対応する最大長さβを超えて補巻ウインチ54からロープ44が繰り出されることが防止される。その結果、ラフィングジブ30側に倒伏した第2マスト40によってラフィングジブ30が損傷することを抑制できる。なお、
図10に示される処理は、例えば、移動式クレーン100からラフィングジブ30を取り外す際に実行されてもよいし、フック37に吊荷を係止するため或いはフック37に係止された吊荷を所望の位置に移動させるために、ブーム22及びラフィングジブ30を起仰させる際に実行されてもよい。