特許第6451323号(P6451323)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6451323-ロボットの配線方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6451323
(24)【登録日】2018年12月21日
(45)【発行日】2019年1月16日
(54)【発明の名称】ロボットの配線方法
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/06 20060101AFI20190107BHJP
   B25J 19/00 20060101ALI20190107BHJP
【FI】
   B25J19/06
   B25J19/00 J
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-924(P2015-924)
(22)【出願日】2015年1月6日
(65)【公開番号】特開2016-124077(P2016-124077A)
(43)【公開日】2016年7月11日
【審査請求日】2017年10月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】特許業務法人 サトー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 大介
【審査官】 貞光 大樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−108044(JP,A)
【文献】 特開2006−31148(JP,A)
【文献】 特開2010−247279(JP,A)
【文献】 特開昭63−6607(JP,A)
【文献】 特開平5−329794(JP,A)
【文献】 特開2010−250618(JP,A)
【文献】 特開2005−25260(JP,A)
【文献】 特開平10−320003(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 − 21/02
G05B 19/18 − 19/416
G05B 19/42 − 19/46
G05B 9/00 − 9/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの操作スイッチへの操作によって複数のロボットコントローラに対して非常停止動作を行わせるためのロボットの配線方法であって、
前記操作スイッチを経由した安全入力信号が入力されているか否かに基づいて非常停止動作を行う第1の安全監視部、および前記操作スイッチを経由した安全入力信号が入力されているか否かに基づいて非常停止動作を行うとともに許可信号を出力する第2の安全監視部を有する1つのマスターコントローラと、
前記第1の安全監視部および前記許可信号によって作動する非常停止手段を有する1つ以上のスレーブコントローラと、により構成されるロボットシステムに対し、
前記マスターコントローラにおいて、前記操作スイッチを経由した安全入力信号の入力経路および前記マスターコントローラの前記第2の安全監視部から出力される前記許可信号の出力経路を外部に出力可能に配線し、
前記操作スイッチと前記マスターコントローラとの間を第1の接続ケーブルで接続し、
前記マスターコントローラと前記スレーブコントローラとの間を第2の接続ケーブルで接続し、前記スレーブコントローラにおいて、前記第1の安全監視部を安全入力信号の入力経路に接続するとともに、前記非常停止手段を許可信号の出力経路に接続することを特徴とするロボットの配線方法。
【請求項2】
前記第2の安全監視部は、安全入力信号を生成および出力するとともに、出力した安全入力信号が前記操作スイッチを経由して入力されているか否か、および入力された安全入力信号が出力した安全入力信号に一致するか否かに基づいて非常停止動作を行うことを特徴とする請求項1記載のロボットの配線方法。
【請求項3】
前記非常停止手段は、動力経路を断続する動力用接点により構成したことを特徴とする請求項1または2記載のロボットの配線方法。
【請求項4】
前記スレーブコントローラにおいて、前記操作スイッチを経由した安全入力信号の入力経路、および前記マスターコントローラの前記第2の安全監視部から出力される許可信号の出力経路を外部に出力可能に配線し、
前記スレーブコントローラが複数である場合、各スレーブコントローラを互いに隣り合って配置し、各スレーブコントローラ間を前記第2の接続ケーブルで接続することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項記載のロボットの配線方法。
【請求項5】
前記マスターコントローラ内において、前記第1の安全監視部と前記第2の安全監視部との間を、前記第1の安全監視部の動作状態を前記第2の安全監視部で監視可能に、または互いの動作状態を監視可能に、第1の通信経路により接続することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項記載のロボットの配線方法。
【請求項6】
前記マスターコントローラと前記スレーブコントローラとの間において、前記第1の安全監視部間を、前記スレーブコントローラ内の前記第1の安全監視部の動作状態を前記マスターコントローラ内の前記第1の安全監視部で監視可能に、または互いの動作状態を監視可能に、第2の通信経路により接続することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項記載のロボットの配線方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットを非常停止させるための信号線の配線方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットコントローラ(以下、単にコントローラと称する)は、非常時にロボットを停止させる非常停止動作の信頼性を確保するために、非常停止信号やイネーブル信号のような安全入力信号を監視して非常停止動作を行う手段を複数系統備えることがある。例えば特許文献1には、コントローラ内に安全PLCを設けたものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−88241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
産業用のロボットの場合、複数のロボットを連携させて動作させることがあり、その場合には、個々のロボットのそれぞれがコントローラによって制御されることになる。その場合、各コントローラは、1つの安全入力信号によって非常停止動作を開始すること、つまり、1つの操作スイッチの操作により非常停止動作を開始することが望ましい。これは、複数のロボットを連携させて動作させている場合、1つのロボットが停止したときに他のロボットが動作していると、例えば2台のロボットで把持しているワークの姿勢が崩れたり、ロボットが停止したと思って近づいた作業者に接触したり、既に停止した他のロボットや周辺設備等に接触したりする可能性があるためである。
【0005】
また、複数のロボットを連携させて動作させる場合には、安全入力信号が全てのコントローラに入力されることが望ましい。これは、例えば1つのコントローラを主として安全入力信号を入力し、他のコントローラを従として主となるコントローラから制御する構成とすると、仮に主となるコントローラが動作不良となったり従となるコントローラとの間の接続に異常が発生したりすると非常停止動作を指示できなくなる可能性があるためである。
【0006】
ところで、コントローラによっては、安全入力信号の確かさを判定することで、安全流力信号が入力される経路の故障を検出する機能を備えたものがある。具体的には、コントローラ内で安全入力信号を生成して出力し、外部の操作スイッチを経由して入力された安全入力信号が、自身で出力した安全入力信号とその周期やパターンが一致するか否かに基づいて、地絡や配線間の短絡等の故障を検出するものがある。この場合、入力された安全入力信号の確かさが保証されるため、より信頼性を確保することができる。
【0007】
しかしながら、このようなコントローラが複数存在する場合、上記したように1つの操作スイッチに全てのコントローラを接続してしまうと、安全入力信号同士が衝突して正常な監視を行うことができなくなる。この場合、1つのコントローラから出力される安全入力信号を他のコントローラにも接続したとしても、入力される安全入力信号がそもそも自身で出力したものではないことから、パターンが一致せずに異常と判定されてしまう。かといって、安全入力信号の確かさを確認する機能を省いてしまうと信頼性が低下する。
【0008】
このように、安全入力信号を監視して非常停止動作を行う手段が複数系統設けられている場合には、それぞれのコントローラにおいて安全入力信号の確かさを保証した状態で非常停止動作を行わせるためには、コントローラ間を単に接続するといった単純な配線を採用することができなかった。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、安全入力信号を監視して非常停止動作を行う手段が複数系統設けられているロボットコントローラを複数備える構成において、簡単な配線で、且つ、安全入力信号の確かさを保証した状態で、1つの操作スイッチを操作することにより各コントローラに非常停止動作を行わせることができるロボットの配線方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の発明では、操作スイッチを経由した安全入力信号が入力されているか否かに基づいて非常停止動作を行う第1の安全監視部および操作スイッチを経由した安全入力信号が入力されているか否かに基づいて非常停止動作を行うとともに許可信号を出力する第2の安全監視部を有する1つのマスターコントローラと、第1の安全監視部および許可信号によって作動する非常停止手段を有する1つ以上のスレーブコントローラと、により構成されるロボットシステムに対し、マスターコントローラにおいて、操作スイッチを経由した安全入力信号の入力経路、およびマスターコントローラの第2の安全監視部から出力される許可信号の出力経路を外部に出力可能に配線し、操作スイッチとマスターコントローラとの間を第1の接続ケーブルで接続し、マスターコントローラとスレーブコントローラとの間を第2の接続ケーブルで接続し、スレーブコントローラにおいて、第1の安全監視部を安全入力信号の入力経路に接続するとともに、非常停止手段を許可信号の出力経路に接続する。
【0011】
これにより、必要とされる接続ケーブルは、操作スイッチとの間を接続する第1の接続ケーブルとコントローラ間を接続する第2の接続ケーブルとなり、簡単に配線することができる。また、安全入力信号が全てのコントローラに入力されることから、全てのコントローラにおいて、第1の安全監視部は、安全入力信号を監視して非常停止動作を行うことができる。
【0012】
また、全てのコントローラが共通の安全入力信号に基づいて非常停止動作を行うので、個別の安全入力信号に基づいて各コントローラが個別に非常停止であるかを判断する構成に比べると、非常停止時の信頼性を向上させることができる。また、操作スイッチの配線はマスターコントローラとの間にだけ行えばよいので、配線の複雑化を招くこともない。
【0013】
したがって、安全入力信号を監視して非常停止動作を行う手段が複数系統設けられているロボットコントローラを複数備える構成において、簡単な配線で、1つの操作スイッチを操作することにより各コントローラに非常停止動作を行わせることができる。
【0014】
また、マスターコントローラが有する第2安全監視部は、マスターコントローラの安全監視の二重化に貢献するだけでなく、スレーブコントローラ側の安全監視の二重化も担っているこれにより、スレーブコントローラ側でも二重化を実現しつつ安全確認信号の衝突を回避して正常な監視を行えるようになる。
【0015】
請求項2記載の発明では、第2の安全監視部は、安全入力信号を生成および出力するとともに、出力した安全入力信号が前記操作スイッチを経由して入力されているか否か、および入力された安全入力信号が出力した安全入力信号に一致するか否かに基づいて非常停止動作を行う。
【0016】
これにより、安全入力信号の確かさが保証される許可信号が全てのスレーブコントローラに入力されることから、全てのスレーブコントローラにおいて、非常停止手段は、安全入力信号の確かさが保証された状態で動作する。つまり、スレーブコントローラでは直接的に安全入力信号の確かさを確認することはないものの、第2の安全監視部によって安全入力信号の確かさが確認されたことを示す許可信号に基づいて非常停止手段が作動することにより、間接的に安全入力信号の確かさが保証された状態で、スレーブコントローラの非常停止手段を動作させることができる。
【0017】
したがって、安全入力信号を監視して非常停止動作を行う手段が複数系統設けられているロボットコントローラを複数備える構成において、簡単な配線で、且つ、安全入力信号の確かさを保証した状態で、1つの操作スイッチを操作することにより各コントローラに非常停止動作を行わせることができる。
【0018】
請求項3記載の発明では、非常停止手段を、動力経路を断続する動力用接点により構成している。これにより、非常停止時には動力経路を機械的に遮断することができ、確実な停止動作を行わせることができる。
【0019】
請求項4記載の発明では、スレーブコントローラにおいて、操作スイッチを経由した安全入力信号の入力経路、およびマスターコントローラの第2の安全監視部から出力される許可信号の出力経路を他のスレーブコントローラ側に出力可能に配線し、スレーブコントローラが複数である場合、各スレーブコントローラを互いに隣り合って配置し、各スレーブコントローラ間を第2の接続ケーブルで接続する。
【0020】
これにより、スレーブコントローラの数が増えても、配線は隣り合うスレーブコントローラ間だけでよいので、配線が複雑化することを防止できる。
請求項5記載の発明では、マスターコントローラ内において、第1の安全監視部と第2の安全監視部との間を、第1の安全監視部の動作状態を第2の安全監視部で監視可能に、または互いの動作状態を監視可能に接続する。
【0021】
これにより、第1の安全監視部が故障した場合には、第2の安全監視部によってその故障が検出されて非常停止動作が行われる。また、第2の安全監視部が故障した場合には、第1の安全監視部が監視可能であれば、第1の安全監視部によってその故障が検出されて、非常停止動作が行われる。
【0022】
このように動作状態を互いに監視することにより、信頼性をさらに向上させることができる。
請求項6記載の発明では、マスターコントローラとスレーブコントローラとの間において、第1の安全監視部間を、スレーブコントローラ内の第1の安全監視部の動作状態をマスターコントローラ内の第1の安全監視部で監視可能に、または互いの動作状態を監視可能に接続する。
【0023】
これにより、スレーブコントローラの第1の安全監視部が故障した場合には、マスターコントローラの第1の安全監視部によってその故障が検出され、第2の安全監視部に対して非常停止動作をさせることで許可信号の出力が停止されることから、スレーブコントローラの非常停止手段が非導通状態となり、非常停止動作が行われる。
【0024】
このように動作状態を互いに監視することにより、信頼性をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】一実施形態のロボットコントローラの配線を模式的に示す図
図2】比較例であって、安全監視機能が働かない配線の一例を示す図
図3】実施形態における他の配線例を模式的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態について、図1から図3を参照しながら説明する。
図1に示すように、本実施形態のロボットシステム1は、マスターコントローラ2およびスレーブコントローラ3の複数のロボットコントローラ(以下、単にコントローラと称する)と、各コントローラによって制御されるロボット4と、ロボットシステム1を非常停止するための1つの操作スイッチ5等を備えている。この操作スイッチ5は、いわゆる非常停止スイッチやイネーブルスイッチ等であり、通常動作時には導通状態となっており、非常停止時に操作されることで非導通状態となる。
【0027】
マスターコントローラ2は、安全監視装置10(第2の安全監視部)、制御部11(第1の安全監視部に相当する)、および安全監視装置10によって駆動される動力用接点12(非常停止手段に想到する。図1ではCR(Contactor Relay)と示す)等で構成されている。なお、図示は省略するが、各コントローラには、これら以外にもロボット4を制御するための電源等の一般的な回路が設けられている。
【0028】
安全監視装置10は、テストパルス生成部10aおよびテストパルス監視部10bを備えている。このテストパルス生成部10aは、テストパルス(安全入力信号に相当する)を生成して出力する。本実施形態の場合、テストパルスは、HレベルとLレベルとが所定周期で交互に繰り返されるパルス信号として生成および出力される。なお、図示は省略するが、安全監視装置10はマイクロコンピュータ等により構成されており、本実施形態では、テストパルス生成部10aおよびテストパルス監視部10bはソフトウェア的に実現されている。
【0029】
テストパルス監視部10bは、テストパルス生成部10aから出力され、接続ケーブル13(第1の接続ケーブルに相当する)で接続された操作スイッチ5を経由して自身に入力されるテストパルスを監視する機能を備えている。このとき、テストパルス監視部10bは、テストパルスが入力されているか否か、および、入力されたテストパルスが正しいか否かを監視する。
【0030】
例えば、テストパルス生成部10aから操作スイッチ5を経由してテストパルス監視部10bに入力されるまでの経路において地絡や配線間の短絡等の故障が発生すると、テストパルスが入力されなくなる、あるいは、テストパルスが歪んで信号レベルが変化する。このため、テストパルス監視部10bは、入力されたテストパルスの信号レベルやその周期等のパターンが、テストパルス生成部10aから出力されたテストパルスのパターンと一致しているか否かに基づいて、テストパルスの確かさを監視している。このため、テストパルス監視部10bは、テストパルスが流れる経路の故障を検出する故障検出手段としても機能する。
【0031】
そして、テストパルス監視部10bは、入力されたテストパルスが出力したテストパルスと一致する場合には、動力用接点12に対して許可信号を出力する。この許可信号により、動力用接点12が導通状態となる。一方、テストパルス監視部10bは、テストパルスが入力されない場合も含めてパターンが一致しないと判定すると、非常停止動作を行う。この場合、テストパルス監視部10bは、非常停止動作として、許可信号の出力を停止する。これにより、非常停止時には動力用接点12が非導通状態となり、動力経路が遮断される。
【0032】
このようなテストパルス生成部10aおよびテストパルス監視部10bを備えている安全監視装置10は、マスターコントローラ2において、テストパルスを監視するとともに入力されたテストパルスの確かさも確認しつつ非常停止動作を行う手段として機能する。
【0033】
また、マスターコントローラ2に設けられている制御部11は、CPU11aを備えており、マスターコントローラ2全体を制御する。この制御部11は、テストパルスが入力されているか否かに基づいて、非常停止であるいか否かを判定している。より具体的には、安全監視装置10から出力され、操作スイッチ5を経由したテストパルスは、リレー11bおよび抵抗11cによってCPU11aに入力可能なレベルに変換される。
【0034】
そして、制御部11は、テストパルスが入力されている場合には、つまり、レベル変換された入力信号がHレベル(通常動作状態として認識されるレベル)を所定周期で所定割合以上入力されている場合には、非常停止の操作が行われていないと判断して通常動作を行う。一方、制御部11は、テストパルスが入力されなくなった場合には、非常停止の操作が行われたと判断して、非常停止動作を行う。
【0035】
このように、制御部11は、テストパルスを監視して非常停止動作を行う手段として機能する。ただし、制御部11は、上記した安全監視装置10とは異なり、テストパルスの確かさを保証する機能は備えていない。つまり、例えば常時Hレベルが入力されていたとしても、通常動作を行う。
【0036】
これら安全監視装置10および制御部11は、互いの動作状態を監視するために、通信経路によって接続されている。本実施形態の場合、安全監視装置10および制御部11は、通信経路14を介して互いに所定周期ごとに動作確認用の通信しており、通信が所定周期で行われなかった場合や相手側からの返信が所定のフォーマットではない場合等に、相手側の動作状態に異常があると判定して非常停止動作を行う。なお、後述するように、制御部11は、スレーブコントローラ3の制御部11との間にも通信経路19が設けられている。
【0037】
このように、マスターコントローラ2は、制御部11および動力用接点12(安全監視装置10を含めてもよい)というテストパルス(安全入力信号)を監視して非常停止動作を行うための手段が複数系統設けられているとともに、安全監視装置10によってテストパルスの確かさを保証できる構成となっている。
【0038】
スレーブコントローラ3は、上記したマスターコントローラ2の制御部11と動力用接点12と実質的に共通する構成を備えている。そのため、スレーブコントローラ3においても、同一の符号を付して制御部11と動力用接点12として説明する。
【0039】
スレーブコントローラ3は、制御部11および動力用接点12という、テストパルスを監視して非常停止動作を行う手段を複数系統備えている。ただし、スレーブコントローラ3は、マスターコントローラ2が備える安全監視装置10を備えておらず、単体では、テストパルスの確かさを保証する機能を備えていない。
【0040】
このスレーブコントローラ3は、マスターコントローラ2との間が接続ケーブル18(第2の接続ケーブルに相当する)によって接続されている。この接続ケーブル18によって、スレーブコントローラ3とマスターコントローラ2との間には、操作スイッチ5を経由したテストパルスが流れる経路(安全入力信号の入力経路に相当する)と、上記した許可信号の流れる経路(許可信号の出力経路に相当する)とが形成される。
【0041】
スレーブコントローラ3は、図示は省略するが、制御盤等にマスターコントローラ2と隣り合って設置されるため、スレーブコントローラ3とマスターコントローラ2との間は、接続ケーブル18によっていわゆる渡り配線で接続されている。つまり、スレーブコントローラ3と操作スイッチ5との間には、直接的な配線は設けられていない。
【0042】
具体的には、マスターコントローラ2は、操作スイッチ5との間がコネクタ16を介して接続ケーブル13によって接続されている。このとき、テストパルス生成部10aから操作スイッチ5までの経路を第1経路13aとし、操作スイッチ5からテストパルス監視部10bまでの経路を第2経路13bとすると、第2経路13bが、操作スイッチ5を経由したテストパルスが流れる経路に相当する。この第2経路13bは、コネクタ17から接続ケーブル18を介してスレーブコントローラ3のコネクタ20に接続され、スレーブコントローラ3内で制御部11に接続されている。つまり、スレーブコントローラ3とマスターコントローラ2との間では、テストパルスが流れる経路が共通化されている。
【0043】
また、マスターコントローラ2において安全監視装置10から出力される許可信号が流れる経路を第3経路15とすると、第3経路15は、第2経路13bと同様にコネクタ17から接続ケーブル18を介してスレーブコントローラ3のコネクタ20に接続されており、スレーブコントローラ3内で動力用接点12に接続されている。つまり、スレーブコントローラ3とマスターコントローラ2との間では、許可信号の流れる経路が共通化されている。
【0044】
このように、マスターコントローラ2は、操作スイッチ5を経由した安全入力信号の入力経路、および安全監視装置10(第2の安全監視部)から出力される許可信号の出力経路が、外部(この場合、スレーブコントローラ3)に出力可能に配線されている。
【0045】
また、スレーブコントローラ3内では、テストパルスが流れる経路および許可信号の流れる経路が外部に出力可能に配線されており、後述する図3に示すように、スレーブコントローラ3が複数台の場合、各スレーブコントローラ3間は接続ケーブル18によって配線される。
【0046】
次に、上記した構成の作用について説明する。
さて、複数のロボット4を連携させて動作させる場合、各ロボット4はそれぞれコントローラによって制御される。このため、複数のロボット4で構成されたシステムでは、コントローラも複数設けられることになる。このとき、コントローラにテストパルスを監視して非常停止動作を行う手段を複数系統備え、且つ、テストパルスの確かさも保証する場合には、コントローラとして上記したマスターコントローラ2を採用することになる。
【0047】
そして、1つの操作スイッチ5でシステム全体を非常停止させる場合には、単純に考えれば、図2に示すような配線となる。すなわち、複数のマスターコントローラ2を、共通の接続ケーブル13を介して操作スイッチ5に接続する構成である。
【0048】
ただし、そのような配線を採用すると、1つのマスターコントローラ2(例えば、図示上方に示すマスターコントローラ2)から出力されるテストパルスが他のマスターコントローラ2(例えば、図示下方に示すマスターコントローラ2)から出力される安全入力信号と衝突して歪んでしまい、安全入力信号を正しく監視すること、すなわち、非常停止動作を正しく行うことができなくなる。
【0049】
しかし、テストパルスが衝突しないように仮に図3に破線にて示す接続ケーブル13の共通配線部位13cを省いたとすると、他のマスターコントローラ2は、入力されるテストパルスが自身で出力したものと一致しないことから異常(つまり、非常停止すべき状態)であると判定してしまう。かといって、他のマスターコントローラ2においてテストパルスの確かさを確認する機能を省いてしまうと、非常停止動作の信頼性が低下してしまう。
【0050】
そこで、本実施形態では、上記したように、マスターコントローラ2において安全監視装置10から出力される許可信号が流れる経路である第3経路15を、マスターコントローラ2とスレーブコントローラ3との間で共通化している。
【0051】
これにより、マスターコントローラ2においては、安全監視装置10によってテストパルスの確かさが保証された状態で動力用接点12が動作するとともに、スレーブコントローラ3においては、マスターコントローラ2の安全監視装置10によりテストパルスの確かさが保証された状態で動力用接点12が動作する。
【0052】
すなわち、マスターコントローラ2およびスレーブコントローラ3の双方において、テストパルスを監視して非常停止動作を行う手段を複数系統備えることができるとともに、テストパルスの確かさが保証された状態で動力用接点12を動作させること(つまり、非常停止動作を行うこと)ができるようになる。
【0053】
以上説明した実施形態によれば、次のような効果を奏する。
各ロボットコントローラ間を接続するのに必要とされるケーブルは、操作スイッチ5との間を接続する接続ケーブル13(第1の接続ケーブル)とコントローラ間を接続する接続ケーブル18(第2の接続ケーブル)となり、簡単に配線することができる。
【0054】
また、テストパルス(安全入力信号)が全てのコントローラに入力されることから、全てのコントローラにおいて、制御部11(第1の安全監視部)は、テストパルスを監視しつつ非常停止動作を行うことができる。
【0055】
そして、1つの操作スイッチ5により各コントローラに対して非常停止動作をさせることができるため、ロボットシステム1を構成する全てのロボット4を同時に停止させることができ、例えば2台のロボット4で把持しているワークの姿勢が崩れたり、ロボット4が停止したと思って近づいた作業者に接触したり、既に停止した他のロボット4や周辺設備等に接触したりすることを防止できる。
【0056】
このような配線方法を採用することにより、各コントローラにテストパルス(安全入力信号)を監視して非常停止動作を行う手段(制御部11、動力用接点12)が複数系統設けられている場合であっても、1つの操作スイッチ5を操作することで、且つ、簡単な配線で、各コントローラにおいて安全入力信号の確かさを保証した状態で非常停止動作を行わせることができる。
【0057】
また、本実施形態の場合、マスターコントローラ2内の安全監視装置10と制御部11間、および、マスターコントローラ2の制御部11とスレーブコントローラ3の制御部11間は、互いの動作状態を監視可能に接続されている。このため、いずれかが故障した場合であっても、他の安全監視装置10や制御部11により非常停止動作を行うことができる。
【0058】
具体的には、マスターコントローラ2の安全監視装置10が故障した場合には、マスターコントローラ2の制御部11によってその故障が検出されて非常停止動作が行われる。一方、マスターコントローラ2の制御部11が故障した場合には、マスターコントローラ2の安全監視装置10によってその故障が検出されて、非常停止動作が行われる。さらに、スレーブコントローラ3の制御部11が故障した場合には、マスターコントローラ2の制御部11によってその故障が検出され、安全制御装置に対して非常停止動作をさせることで許可信号の出力が停止され、それによりスレーブコントローラ3の動力用接点12が非導通状態となり、非常停止動作が行われる。
【0059】
この場合、複数のロボット4を備えるロボットシステム1場合には通信経路19自体は既に配線されていると想定されるため、新たなケーブルを付設することなく、マスターコントローラ2とスレーブコントローラ3との間で通信を行うことができる。
【0060】
また、本実施形態では、それぞれのコントローラは互いに隣り合って配置されており、テストパルスの流れる経路(入力経路)、および許可信号の流れる経路(出力経路)は、隣り合って配置されているコントローラ間を接続ケーブル18で渡り配線することにより接続されている。これにより、簡単な配線で、テストパルスの入力経路および許可信号の出力経路を共通化、すなわち、各コントローラで共通のテストパルスに基づいて非常停止動作を行わせることができる。したがって、個別のテストパルスを用いてそれぞれ非常停止動作をさせる場合に比べて、信頼性を向上させることができる。
【0061】
本発明は上記した実施形態で例示した構成に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で任意に変形、組み合わせ、拡張することができる。
安全監視装置10が高い信頼性を持つように設計されている場合には、制御部11から安全監視装置10への監視はなくてもよい。
【0062】
制御部11はテストパルス(安全入力信号)の状態を、リレー11bの出力ではなく、通信経路14を介して安全監視装置10から取得してもよい。
テストパルス以外の方法により安全入力信号の確かさが保証されている場合などでは、上記実施形態のようにテストパルスを用いなくてもよい。例えば通信経路が、安全入力信号の確かさが保証されるシリアル通信にて構成されていてもよい。この場合にも配線が簡単になる効果により、誤配線のリスク低減などが期待できる。
【0063】
非常停止の方法は、動力用接点12を非導通状態にする方法でなくてもよい。例えば制御部11での非常停止では、動力により減速トルクを発生させることで、非常停止時間を短縮することが期待できる。また、許可信号により直接的に動力用接点12を非導通状態にしなくても、何らかの制御部を経由して動力用接点12を非導通状態としてもよい。
【0064】
スレーブコントローラ3を複数設ける場合には、図3(A)に示すように、マスターコントローラ2とそれに隣り合うスレーブコントローラ3との間を接続し、以降、隣り合うスレーブコントローラ3間をいわゆるデイジーチェーン接続する簡単な接続により、テストパルスの入力経路および許可信号の出力経路を共通化することができる。このとき、各スレーブコントローラ3の制御部11間を通信経路19で接続することで、いずれかの機能部が故障した場合には、他のコントローラによってその故障を検出することができる。したがって、安全性と信頼性を確保することができる。
【0065】
この場合、図3(B)に示すように、マスターコントローラ2の制御部11と各スレーブコントローラ3の制御部11との間を通信経路21により通信可能に接続してもよい。これは、通信経路19では制御用のデータ通信が行われるため、動作状態を監視するためのデータ通信を通信経路19で行うと、その帯域を圧迫するおそれがあるためである。
【0066】
この場合、マスターコントローラ2の制御部11が各スレーブコントローラ3の動作状態を監視することになるが、各スレーブコントローラ3の制御部11が故障した場合にはマスターコントローラ2の制御部11によりその故障が検出され、マスターコントローラ2の制御部11自体が故障した場合にはマスターコントローラ2の安全監視装置10によりその故障が検出されるため、安全性および信頼性が低下することを防止できる。なお、通信経路19を省いて、通信経路21のみを設け、制御用のデータ通信と動作状態を監視するためのデータ通信とを通信経路21で行ってもよい。または、通信経路19で動作状態を監視するためのデータ通信を行い、通信経路21で制御用のデータ通信を行ってもよい。つまり通信経路21を第1の通信経路、および/または第2の通信経路として構成してもよい。
【0067】
実施形態では、マスターコントローラ2について、図1において便宜的に2つのコネクタ16、17を示しているが、コネクタを物理的に1つ設け、操作スイッチ5を経由した安全入力信号の入力経路を外部のスレーブコントローラ3側に出力可能に配線する場合、コネクタ16で渡り配線する構成、または安全監視装置10から出力する構成、または制御部11から出力する構成としてもよい。つまり、マスターコントローラ2において安全信号の入力経路を外部に接続可能とする配線は、マスターコントローラ2内の内部配線とする構成、およびコネクタ16を利用して外部配線とする構成、および安全監視装置10から出力する構成、および制御部11から出力する構成を含んでいる。また、安全監視装置10(第2の安全監視部)から出力される許可信号の出力経路をコネクタ16側に接続し、物理的に1つのコネクタとしてもよい。
【0068】
また、スレーブコントローラ3も同様であり、スレーブコントローラ3において操作スイッチ5を経由した安全入力信号の入力経路、およびマスターコントローラ2の安全監視装置10(第2の安全監視部)から出力される許可信号の出力経路を隣り合うスレーブコントローラ3側に出力可能に配線する構成は、実施形態のようにスレーブコントローラ3内で内部配線する構成、およびコネクタ20を利用して外部配線とする構成を含んでいる。
【0069】
操作スイッチ5を経由した安全入力信号と、安全監視装置10から出力される許可信号が別々の信号線である必要はなく、共通の信号線でのシリアル通信により構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0070】
図面中、1はロボットシステム、2はマスターコントローラ(ロボットコントローラ)、3はスレーブコントローラ(ロボットコントローラ)、4はロボット、5は操作スイッチ、10は安全監視装置(第2の安全監視部)、11は制御部(第1の安全監視部)、12は動力用接点(非常停止手段)、13は接続ケーブル(第1の接続ケーブル)、13aは第1経路(安全入力信号の入力経路)、14は通信経路(第1の通信経路)、15は第3経路(許可信号の出力経路)、18は接続ケーブル(第2の接続ケーブル)、19は通信経路(第2の通信経路)、21は通信経路(第1の通信経路、および/または第2の通信経路)を示す。
図1
図2
図3