特許第6451392号(P6451392)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6451392-口腔用組成物 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6451392
(24)【登録日】2018年12月21日
(45)【発行日】2019年1月16日
(54)【発明の名称】口腔用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/34 20060101AFI20190107BHJP
   A61K 8/35 20060101ALI20190107BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20190107BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20190107BHJP
   A61K 8/46 20060101ALI20190107BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20190107BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20190107BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20190107BHJP
【FI】
   A61K8/34
   A61K8/35
   A61K8/37
   A61K8/44
   A61K8/46
   A61K8/49
   A61Q11/00
   A61K8/02
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-30266(P2015-30266)
(22)【出願日】2015年2月19日
(65)【公開番号】特開2016-150927(P2016-150927A)
(43)【公開日】2016年8月22日
【審査請求日】2017年9月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079304
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100114513
【弁理士】
【氏名又は名称】重松 沙織
(74)【代理人】
【識別番号】100120721
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 克成
(74)【代理人】
【識別番号】100124590
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100157831
【弁理士】
【氏名又は名称】正木 克彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 純子
(72)【発明者】
【氏名】北川 千晴
(72)【発明者】
【氏名】萩森 夏芽
【審査官】 片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−098920(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/055709(WO,A1)
【文献】 特開2011−098916(JP,A)
【文献】 特開2005−082488(JP,A)
【文献】 特開2004−018431(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/115034(WO,A1)
【文献】 特開2008−094772(JP,A)
【文献】 特開2011−098915(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)イオン性界面活性剤を2.5〜5質量%配合した口腔用組成物に、
(b)ダマセノン、ローズオキサイド、インドール、メチルジヒドロジャスモネート及び2−イソプロピル−4−メチルチアゾーから選ばれる1種又は2種以上の香料成分を0.00000001〜0.0005質量%と、
(c)ヌートカトン、ナリンジン及びカッシンから選ばれる1種又は2種以上の香料成分を0.00001〜0.005質量%と、
(d)l−メントールを0.1〜1質量%
を配合したことを特徴とする口腔用組成物。
【請求項2】
(a)成分のイオン性界面活性剤が、アルキル硫酸塩,N−アシルアミノ酸塩,N−メチルタウリン塩,アルキルエーテル酢酸塩から選ばれる1種又は2種以上のアニオン性界面活性剤(a−1)及び/又はアルキルベタイン系,脂肪酸アミドプロピルベタイン系,アルキルイミダゾリニウムベタイン系から選ばれる1種又は2種以上の両性界面活性剤(a−2)である請求項記載の口腔用組成物。
【請求項3】
(a)成分のイオン性界面活性剤が、アニオン性界面活性剤(a−1)及び両性界面活性剤(a−2)である場合は、アニオン性界面活性剤(a−1)の配合量が2〜3.8質量%、両性界面活性剤(a−2)の配合量が0.5〜1.2質量%である請求項1又は2記載の口腔用組成物。
【請求項4】
1回当たりの取り出し量が0.1〜0.5gであるポンプ容器充填されている請求項1〜のいずれか1項記載の口腔用組成物。
【請求項5】
歯磨剤組成物である請求項1〜4のいずれか1項記載の口腔用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少量使用の口腔用製剤でイオン性界面活性剤特有の苦味を高温保存後においてもマスキングする持続的かつ優れた苦味マスキング効果を奏し、良好な使用感を与える口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
歯磨剤等の口腔用組成物には、薬効成分、イオン性界面活性剤等の苦味を有する成分が配合されており、通常、香料や甘味剤によって苦味がマスキングされている。特許文献1(特開2004−18431号公報)には、口腔用組成物の基材味のマスキングに有効なフレーバーが提案されている。
【0003】
しかしながら、ラウリル硫酸ナトリウム等のアニオン性界面活性剤、ベタイン系等の両性界面活性剤といったイオン性界面活性剤に独特な苦味は、従来から口腔用香料として公知の香料を使用することで製造直後はマスキングできるものの、高温保存によってそのマスキング効果が低下する傾向があった。
【0004】
一方、近年のオーラルケア意識の向上によって、歯磨剤を携帯して外出先で使用する人が増加している。携帯用歯磨剤は、持ち歩き易くするため嵩張らない小さな製品とすることが要望され、これを実現するためには、従来の歯磨きよりも一回使用量が少ない濃縮組成、すなわち界面活性剤量が多い組成で使用に適する製剤とする必要がある。特許文献2(特開2013−159604号公報)には、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤及び両性界面活性剤の合計配合量が4.5〜12質量%と多く、少量使用で泡性能が確保され、歯磨き実感が優れ、使用感も良い歯磨剤組成物が提案されている。
また、少量の歯磨剤を簡便に歯ブラシに載せるには、従来のチューブ型よりも小型ポンプ型が適しているが、ポンプ容器に通常使用されるポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)のような樹脂素材はガス透過性が高く、酸素などに対するバリア性は低いため、内容物の安定性に影響することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−18431号公報
【特許文献2】特開2013−159604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、少量での使用性に優れた歯磨剤組成物あるいは歯磨製品を得るためにイオン性界面活性剤濃度を高くしたり、ガス透過性が高くバリア性が低いポンプ容器に充填すると、イオン性界面活性剤特有の苦味が顕著となり、少量使用に適する口腔用製剤では、イオン性界面活性剤特有の苦味を高温保存後にマスキングすることはより一層難しく、このため、口腔用組成物においてイオン性界面活性剤特有の苦味のマスキング効果を向上する技術の開発が望まれた。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、少量使用の口腔用製剤でイオン性界面活性剤特有の苦味を高温保存後においてもマスキングする持続的かつ優れた苦味マスキング効果を奏し、良好な使用感を与える口腔用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、(a)イオン性界面活性剤を2.5〜5質量%配合した口腔用組成物に、(b)ダマセノン、ローズオキサイド、インドール、メチルジヒドロジャスモネート、2−イソプロピル−4−メチルチアゾール及びヨノンから選ばれる1種又は2種以上の香料成分と、(c)ヌートカトン、ナリンジン、シネンサール及びカッシンから選ばれる1種又は2種以上の香料成分と、(d)l−メントールとを組み合わせて配合すると、イオン性界面活性剤特有の苦味のマスキング効果が向上し、少量使用の口腔用製剤でイオン性界面活性剤特有の苦味を高温保存後においてもマスキングする持続的かつ優れた苦味マスキング効果を奏し、良好な使用感を与えることができること、よって、特に1回当たりの取り出し量が0.1〜0.5gであるポンプ容器充填用として少量使用に好適な口腔用組成物を得ることができることを知見し、本発明をなすに至った。
【0009】
本発明においては、(b)、(c)成分の香料成分と(d)成分のl−メントールとを組み合わせることによって、特にイオン性界面活性剤特有の苦味をマスキングする効果の持続性が向上し、少量使用の口腔用製剤に(a)イオン性界面活性剤を適切量で配合して調製後から高温下で保存した後もイオン性界面活性剤特有の苦味を十分に抑制する持続的かつ顕著な苦味マスキング効果を付与できる。この場合、口腔用組成物において、イオン性界面活性剤特有の苦味はその濃度が高くなるにつれて顕著になり、また、ガス透過性の高い容器に充填すると、香料が容器から抜けることによってマスキング効果の低下が顕著になるにもかかわらず、本発明では、(b)、(c)、(d)成分を組み合わせると、(a)イオン性界面活性剤を適切量配合した口腔用組成物を通常より少量の0.2g使用しても、また更に、この口腔用組成物を、ガス透過性の高い樹脂素材で形成したバリア性の低いポンプ容器に充填して使用しても、イオン性界面活性剤特有の苦味が製剤を調製直後から50℃の高温下で1ヶ月間保存した後も持続的にマスキングされ、味の良い良好な使用感が維持される。
このような(b)、(c)、(d)成分の組み合わせによる上記苦味マスキング効果は、従来から公知の口腔用香料の添加、あるいは単なるl−メントールの添加では達成されないものであり、また、(b)、(c)、(d)成分のいずれかを欠く場合には達成することができない、本発明の(b)、(c)、(d)成分の組み合わせに特異的なものである。
よって、本発明によれば、以下の課題を達成し、上記格別かつ顕著な作用効果を付与することができる。
(1)従来では必ずしも満足なレベルとはいえなかった、イオン性界面活性剤由来の独特な苦味に対する苦味マスキング効果、特に高温保存後の苦味マスキング効果の向上
(2)特にノニオン性界面活性剤由来の苦味が顕著となるガス透過性が高くバリア性の低い樹脂容器(ポンプ容器、低コストチューブ等)に充填した少量使用可能な口腔用組成物での前記の苦味マスキング効果の向上
【0010】
なお、特許文献2(特開2013−159604号公報)に提案された歯磨剤組成物は少量使用で泡性能が確保され歯磨き実感が優れ、使用後の苦味が抑えられているが、高温保存後の苦味について検討されておらず、添加された香料の組成も不明であり、イオン性界面活性剤特有の苦味マスキングに関する課題についての言及もない。特許文献2から、(b)、(c)、(d)成分の組み合わせによってイオン性界面活性剤特有の苦味マスキング効果が格段に向上し持続することは予測できない。
【0011】
従って、本発明は、下記の口腔用組成物を提供する。
〔1〕
(a)イオン性界面活性剤を2.5〜5質量%配合した口腔用組成物に、
(b)ダマセノン、ローズオキサイド、インドール、メチルジヒドロジャスモネート及び2−イソプロピル−4−メチルチアゾーから選ばれる1種又は2種以上の香料成分を0.00000001〜0.0005質量%と、
(c)ヌートカトン、ナリンジン及びカッシンから選ばれる1種又は2種以上の香料成分を0.00001〜0.005質量%と、
(d)l−メントールを0.1〜1質量%
を配合したことを特徴とする口腔用組成物。
〔2
(a)成分のイオン性界面活性剤が、アルキル硫酸塩,N−アシルアミノ酸塩,N−メチルタウリン塩,アルキルエーテル酢酸塩から選ばれる1種又は2種以上のアニオン性界面活性剤(a−1)及び/又はアルキルベタイン系,脂肪酸アミドプロピルベタイン系,アルキルイミダゾリニウムベタイン系から選ばれる1種又は2種以上の両性界面活性剤(a−2)である〔1〕記載の口腔用組成物。
〔3〕
(a)成分のイオン性界面活性剤が、アニオン性界面活性剤(a−1)及び両性界面活性剤(a−2)である場合は、アニオン性界面活性剤(a−1)の配合量が2〜3.8質量%、両性界面活性剤(a−2)の配合量が0.5〜1.2質量%である〔1〕又は〔2〕に記載の口腔用組成物。
〔4
1回当たりの取り出し量が0.1〜0.5gであるポンプ容器充填されている〔1〕〜〔〕のいずれかに記載の口腔用組成物。
〔5〕
歯磨剤組成物である〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の口腔用組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、少量使用の口腔用製剤でイオン性界面活性剤特有の苦味を高温保存後においてもマスキングする持続的かつ優れた苦味マスキング効果を奏し、良好な使用感を与える口腔用組成物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の口腔用組成物の充填に好適なポンプディスペンサーを有する容器の一実施例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について更に詳述する。本発明の口腔用組成物は、(a)イオン性界面活性剤を特定量含有し、かつ後述の(b)、(c)、(d)成分を含有する。
【0015】
(a)イオン性界面活性剤は、アニオン性界面活性剤(a−1)及び/又は両性界面活性剤(a−2)であり、この場合、アニオン性界面活性剤(a−1)又は両性界面活性剤(a−2)であってもよいが、アニオン性界面活性剤(a−1)及び両性界面活性剤(a−2)であることが好ましい。
【0016】
アニオン性界面活性剤としては、アルキル硫酸塩,N−アシルアミノ酸塩,N−メチルタウリン塩,アルキルエーテル酢酸塩などが挙げられ、両性界面活性剤としては、アルキルベタイン系、脂肪酸アミドプロピルベタイン系、アルキルイミダゾリニウムベタイン系などのベタイン系が挙げられる。これらは、1種単独でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0017】
アニオン性界面活性剤としては、例えばラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム等のアルキル基の炭素数が8〜18、特に10〜16のアルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、ラウロイルサルコシンナトリウム、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ナトリウム等のN−アシルアミノ酸塩、N−アシルメチルタウリン塩、アルキルエーテル酢酸塩等が挙げられ、これらの塩としては、ナトリウム塩等のアルカリ金属塩が挙げられる。中でも、アルキル硫酸塩、N−アシルアミノ酸塩、特にラウリル硫酸ナトリウム、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ナトリウム、ラウロイルサルコシンナトリウムが、苦味のマスキングにはより好適である。
具体的に、アルキル硫酸塩、N−アシルアミノ酸塩は、東邦化学工業(株)製、旭化成ケミカルズ(株)製、ラウロイルサルコシンナトリウムは川研ファインケミカル(株)製など、アニオン性界面活性剤はいずれも市販のものを使用できる。
【0018】
両性界面活性剤としては、ベタイン系のものが好ましく、例えばアルキルベタイン系、脂肪酸アミドプロピルベタイン系、アルキルイミダゾリニウムベタイン系の両性界面活性剤を使用できる。
例えば、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等のアルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて配合できる。中でも、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、とりわけヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインが、苦味のマスキングにはより好適である。
【0019】
両性界面活性剤として具体的には、商品名NIKKOL AM−301として日光ケミカルズ(株)より販売されているラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン水溶液、商品名エナジコールC−40Hとして一方社油脂工業(株)より、またレボン105として三洋化成工業(株)より販売されている2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、商品名NIKKOL AM−3130Nとして日光ケミカルズ(株)より販売されているヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン水溶液、商品名TEGO BetainCKやTEGO BetainF50、TEGO BetainZFとしてEVONIC社より、また、レボン2000として三洋化成工業(株)より販売されているヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン等を使用できる。
【0020】
(a)イオン性界面活性剤の配合量は、組成物全体の2.5〜5%(質量%、以下、同様。)であり、好ましくは2.8〜4%である。配合量が上記範囲内であると、十分な苦味マスキング効果を与えることができる。多く配合しないほうが十分な苦味マスキング効果を与えるには好ましく、配合量が5%を超えると、苦味マスキング効果が低下し、味が悪く使用感に劣る。
【0021】
なお、(a)イオン性界面活性剤としては、上記配合量の範囲内で、アニオン性界面活性剤(a−1)、両性界面活性剤(a−2)を配合し得る。この場合、アニオン性界面活性剤(a−1)及び両性界面活性剤(a−2)を配合する場合は、アニオン性界面活性剤(a−1)の配合量は組成物全体の2〜3.8%が好ましく、より好ましくは2.2〜3%であり、両性界面活性剤(a−2)の配合量は組成物全体の0.5〜1.2%が好ましく、より好ましくは0.6〜1%である。
【0022】
本発明では、下記の(b)、(c)、(d)成分を組み合わせて用いることによって、この組み合わせが苦味マスキング剤として作用し、(a)イオン性界面活性剤特有の苦味に対する苦味マスキング効果が向上し、高温保存時に発生する苦味を効果的にマスキングすることができる。(b)、(c)、(d)成分のいずれかを欠くと、特に高温保存後の苦味マスキング効果が劣り、本発明の目的は達成されない。
【0023】
(b)成分は、ダマセノン、ローズオキサイド、インドール、メチルジヒドロジャスモネート、2−イソプロピル−4−メチルチアゾール及びヨノンから選ばれる1種又は2種以上の香料成分である。(b)成分としては、特にダマセノン、ローズオキサイド、インドール、メチルジヒドロジャスモネート、2−イソプロピル−4−メチルチアゾールが好ましく、より好ましくはダマセノン、ローズオキサイドである。
これらの香料成分は、単体化合物(天然精油でない)であり、フレーバー、特にフルーツ系香料などに微量含まれることがあるが、本発明では、単独香料として好適に配合し得る。
なお、ダマセノンとしては、α−ダマセノン、β−ダマセノン、γ−ダマセノンのいずれかを用いても、これらを併用してもよい。ヨノンとしては、α−ヨノン、β−ヨノン、γ−ヨノンのいずれかを用いても、これらを併用してもよい。
【0024】
(b)成分として具体的には、下記に示す市販品を使用することもできる。
β−ダマセノン(曽田香料(株)製)
ローズオキサイド(ジボダン(株)製)
インドール(ジボダン(株)製)
メチルジヒドロジャスモネート(フィルメニッヒ(株)製)
2−イソプロピル−4−メチルチアゾール(Bedoukian社製)
α−ヨノン(シムライズ(株)製)
【0025】
(b)成分の配合量は、組成物全体の0.000000001〜0.001%が好ましく、より好ましくは0.00000001〜0.0005%である。配合量が多いほど、高温保存後に発生する苦味のマスキング効果が高まるが、多すぎないほうが、それ自体の苦味の発現を防止し、十分な苦味マスキング効果を与えるには好適である。
【0026】
(c)成分は、ヌートカトン、ナリンジン、シネンサール及びカッシンから選ばれる1種又は2種以上の香料成分であり、特にヌートカトンを用いると、保存前に苦味が強く出にくく、かつ高温保存後の苦味を抑える効果が優れることから、より好適である。
なお、上記香料成分はグレープフルーツ油、レモン油、オレンジ油等に含有される苦味成分であり、単独で多く配合すると強い苦味を与えるが、(b)、(d)成分と組み合わせることによって苦味マスキング剤として作用する。
(c)成分は、単独香料成分として配合することができるが、例えば、ヌートカトン、ナリンジン、シネンサールを含有するグレープフルーツ油、レモン油、オレンジ油等の精油や植物抽出物、カッシンを含むニガキ抽出物を用いることもでき、これらを併用してもよい。なお、これら精油、植物抽出物を用いる場合は、(b)成分の配合量が後述の範囲内で配合し得る。
【0027】
(c)成分として具体的には、下記に示す市販品を使用することもできる。
ヌートカトン(Bedoukian社製)
ナリンジン(東京化成工業(株)製)
β−シネンサール(アドバンスドテクノロジーアンドインダストリアル(株)製)
カッシン(宮坂香料(株)製)
【0028】
(c)成分の配合量は、組成物全体の0.000001〜0.005%が好ましく、より好ましくは0.00001〜0.001%である。配合量が多いほど、高温保存後に発生する苦味のマスキング効果が高まるが、多すぎないほうが、それ自体の苦味の発現を防止し、十分な苦味マスキング効果を与えるには好適である。
【0029】
(d)l−メントールとしては、l−メントールをそのまま使用しても良いが、l−メントールを含有するペパーミント油や薄荷油等の精油や植物抽出物を用いることもでき、これらを併用してもよい。
具体的には、l−メントール(高砂香料工業(株)製)、ペパーミント(キャリソン社製)等の市販品を使用し得る。
【0030】
(d)l−メントールの配合量は、組成物全体の0.05〜1.5%が好ましく、より好ましくは0.1〜1%である。配合量が多いほど、高温保存後に発生する苦味マスキング効果が高まるが、多すぎないほうが苦味が目立つことがなく、十分な苦味マスキング効果を与えるには好適である。
なお、l−メントールを含有するペパーミント油や薄荷油等の精油や植物抽出物は、l−メントールの配合量が上記範囲内で使用し得る。例えば、l−メントールを40%含有するペパーミント精油を配合する場合は、l−メントール量に換算し、上記l−メントールの配合量の範囲内で使用することができる。
【0031】
本発明の口腔用組成物は、特に歯磨剤組成物として好適であり、液体、液状、ペースト状、ジェル状などの形態に調製可能であり、常法を採用して調製できる。この場合、必要に応じて、上述した成分に加えて適宜な公知成分を配合できる。例えば、シリカ系研磨剤等の研磨剤、ノニオン性界面活性剤、粘稠剤、キサンタンガム等の粘結剤、香料、メチルパラベン等の防腐剤、サッカリンナトリウム等の甘味剤、着色料、フッ化物等の有効成分などを配合し、これら成分と水とを混合し製造できる。なお、これら任意成分は必要に応じ通常量で配合すればよい。
【0032】
ノニオン性界面活性剤としては、口腔用として公知のものを使用し得るが、中でも酸化エチレンが付加されたタイプ、特にエチレンオキサイドの平均付加モル数(以下、E.O.付加モル数と略記する。)が2〜20モルでアルキル基の炭素数が14〜18であるポリオキシエチレンアルキルエーテル及び/又はE.O.付加モル数が5〜60モルのポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が好ましい。
ノニオン性界面活性剤の配合量は、好ましくは組成物全体の0.6〜6%であり、また、(a)イオン性界面活性剤との合計量が組成物全体の3〜10%の範囲内でノニオン性界面活性剤を配合すると、苦味マスキング効果を付与しつつ口腔用製剤の泡性能等の特性をより良好に維持することができる。
【0033】
粘稠剤としては、ソルビット、キシリトール、エリスリトール等の糖アルコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン等の多価アルコールが挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用し得る。粘稠剤の配合量は、65%以下、特に40〜54%、とりわけ42〜50%が、少量使用での使用感と苦味マスキング効果の付与には好適である。
【0034】
香料としては、公知の口腔用香料を添加してもよい。例えば、アニス油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、クローブ油、タイム油、セージ油、カルダモン油、コリアンダー油、ラベンダー油、ローズマリー油、ローレル油、シソ油、カモミル油、スペアミント油、キャラウェイ油、マジョラム油、セロリ油、ベイ油、オリガナム油、パインニードル油、ネロリ油、ローズ油、ジャスミン油、パチュリ油、オリスコンクリート、ローズアブソリュート、オレンジフラワーアブソリュート、バニラアブソリュート、パチュリアブソリュート等の天然香料、及び、これら天然香料の加工処理(前溜部カット、後溜部カット、分留、液液抽出、エッセンス化、粉末香料化等)した香料、及び、リモネン、ピネン、ブタノール、イソアミルアルコール、ヘキセノール、リナロール、アネトール、チモール、オイゲノール、カルボン、メントン、プレゴン、フェンコン、シネオール、ヘキサナール、オクタナール、アニスアルデヒド、シンナミックアルデヒド、エチルアセテート、エチルブチレート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、リナリルアセテート、メンチルアセテート、カルビールアセテート、フェノキシエチルイソブチレート、メチルエピジャスモネート、サリチル酸メチル、サリチル酸エチル、メチルアンスラニレート、エチルメチルフェニルグリシデート、エチルラクテート、バニリン、マルトール、炭素数4〜12のガンマ及びデルタラクトン、アンブレットリド、ジメチルサルファイド、トリメチルピラジン、エチルチオアセテート等の単品香料等、口腔用組成物に用いられる公知の香料素材を組み合わせて使用することができる。
これらの香料素材は、本発明の効果を妨げない範囲で配合でき、その配合量は、通常、組成物全体の0.000001〜1%である。また、上記香料素材を使用した賦香用香料の配合量は、通常、組成物全体の0.05〜2%である。
なお、上記香料中に(b)、(c)、(d)成分の香料成分を含む場合、このような香料は、上記(b)、(c)、(d)成分の配合量の範囲内で使用することができる。
【0035】
本発明組成物は、特に少量使用に適する濃縮タイプの口腔用製品、特に歯磨製品として、少量使用の吐出に適した容器に充填、収容し、好適に調製できる。
この場合、本発明組成物は、1回の使用量として、好ましくは0.1〜0.5g、より好ましくは0.1〜0.4g、更に好ましくは0.1〜0.3gの口腔用組成物を取り出し可能な容器に充填し、一般的な歯磨剤等の口腔用組成物の使用量よりも少量使用の口腔用製剤に調製することができる。
また、容器としては、例えばポンプ容器、チューブ容器等を使用し得るが、特に少量の吐出に適しているポンプ容器が好適である。
ポンプ容器の材質には、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、EVOH(エチレン・ビニルアルコール共重合樹脂)などがあり、コストや内容物に対する安全性などの点からポリエチレンやポリプロピレンが適している。なお、ポリエチレンやポリプロピレンは酸素などに対するバリア性は低く、ガス透過性の高い素材である。
また、持ち運び易く置き場所にも困らないような少容量のポンプ容器、例えば、一般的な歯磨製剤の収容量(100〜150g程度)よりも少ない収容量、例えば50g以下、特に10〜30gの少容量用の容器に収容すると、携帯用として好適に使用できる。
【0036】
この場合、上記ポンプ容器は、容器本体とポンプディスペンサーとを備え、容器本体の上部開口部に装着されたポンプディスペンサーの押圧部を押圧することで、そのポンプ機構によって、容器本体内に収容された内容物がポンプディスペンサーの内容物排出口から排出されるものである。このような収容容器は、ポンプディスペンサーを備え、口腔用組成物を充填可能であれば特に制限はなく、使用目的に応じたものを採用できる。
【0037】
図1は、本発明に使用し得るポンプディスペンサー容器の一実施例を示す概略断面図であり、このような容器が、収容された口腔用組成物の定量吐出性の点から好適である。
容器本体1とその上部開口部に装着されたポンプディスペンサー2とを備え、容器本体1は、外観形状を形成する外層3の内部の内容物(組成物)充填部5に内容物が充填され、内容物充填部5はポンプディスペンサー2の底部に密着している。更に、容器本体1の底部には、摺動可能かつ気密に可動底面部4が設置され、この可動底面部4は容器本体1の内部の減圧に応じて容器本体1内を上昇する。この容器においては、ポンプディスペンサー2の押圧部7を下方に押圧することにより、ポンプディスペンサー2内のポンプ機構(図示していない)により、内容物充填部5に充填された口腔用組成物の一定量が、ポンプディスペンサー内部から内容物吐出口6に通じる内容物流入路(図示していない)を通じて、内容物吐出口6から排出されると共に、これに伴って容器本体1の内部が減圧し、可動底面部4が上昇するものである。なお、図中8はオーバーキャップである。
【0038】
容器本体、特に外層3の材質は、内容物を排出できる程度の硬度を有するもの、例えばポリプロピレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエステル等が使用できるが、特に高密度ポリエチレンが好ましい。
ポンプディスペンサー2の材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、高密度ポリエチレン等が使用できるが、特にポリプロピレンが好ましい。なお、ポンプディスペンサー2の形状、機構等に特に制限はなく、使用条件に応じたものを採用できる。
オーバーキャップ8の材質としては、スチレン系樹脂、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン等が使用できるが、特にスチレン系樹脂が好ましい。
【0039】
なお、内容物を流出させる機構は、上記のように可動底面部が内容物の排出に伴って上昇する機構に限られず、容器本体内に減容変形自在な内袋をポンプディスペンサーに装着し、内容物の排出に伴って該内袋が減容していく機構によってもよい。
【0040】
上記ポンプディスペンサー容器としては、1回当たりの取り出し量が上記した使用量の範囲内であるものを使用でき、その内容物排出口の口径は、1回で上記使用量範囲の口腔用組成物を取り出し可能であれば特に制限されないが、1〜5mmが好ましく、特に定量吐出の点から1〜3mm、とりわけ1〜2mmであるものが好ましい。
なお、本発明に使用し得る容器としては、例えば国際公開第2012/035660号、特公平6−27057号公報、特開2009−215176号公報、特許第3062631号公報、特開2005−41514号公報、特開2005−153901号公報、特開2006−232380号公報等に記載のものを使用し得るもので、容器としては、市販品を使用可能である。具体的には、(株)吉野工業所や(株)三谷バルブなどから発売されている市販ポンプ容器を用いることができる。
図1に示す容器の容器本体の高さ(D)、幅(L)は特に限定されないが、高さは50〜150mm、特に80〜120mm、幅は15〜50mm、特に20〜40mmが好ましい。
【実施例】
【0041】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において%は特に断らない限りいずれも質量%を示す。
【0042】
[実施例、比較例]
表1〜4に示す組成の口腔用組成物(歯磨剤組成物)を常法により調製し、小型ポンプ容器に充填したサンプルについて、下記方法を用いて評価した。なお、本試験では、上記ポンプ容器として、図1に示すポンプディスペンサーを有するポンプ容器(容量:10ml、(株)三谷バルブ製)を用いた。
結果を表1〜4に併記した。
【0043】
評価方法;
〈苦味のなさ〉
歯磨剤組成物を調製後、被験者10名を用い、歯磨剤組成物約0.2gを歯ブラシにとり、3分間歯磨きを行い、使用中に感じた苦味について以下の評点基準で判定した。10名の評点結果を平均し、下記基準で保存前の苦味のなさを評価した。
また、歯磨剤組成物を50℃にて1ヶ月保存後、被験者10名を用い、歯磨剤組成物約0.2gを歯ブラシにとり、3分間歯磨きを行い、使用中に感じた苦味について以下の評点基準で判定した。10名の評点結果を平均し、下記基準で高温保存後の苦味のなさを評価した。◎及び○の評価が確保されるものを、苦味のない口腔用組成物であるとして判断した。
苦味の評点基準
4点:苦味が全くない
3点:苦味がかすかにある
2点:苦味がややある
1点:苦味がある
苦味のなさの評価基準
◎:平均点が3.5点以上4.0点以下
○:平均点が3.0点以上3.5点未満
△:平均点が2.0点以上3.0点未満
×:平均点が2.0点未満
【0044】
使用原料の詳細を下記に示す。
界面活性剤;
(a)ラウリル硫酸ナトリウム(東邦化学工業(株)製)
(a)ラウロイルサルコシンナトリウム(ソイポンSLP、川研ファインケミカル(株)製)
(a)ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン(30%水溶液、レボン2000、三洋化成工業(株)製)
香料成分;
(b)β−ダマセノン(曽田香料(株)製)
(b)ローズオキサイド(ジボダン(株)製)
(b)インドール(ジボダン(株)製)
(b)メチルジヒドロジャスモネート(フィルメニッヒ(株)製)
(b)2−イソプロピル−4−メチルチアゾール(Bedoukian社製)
(b)α−ヨノン(シムライズ(株)製)
(c)ヌートカトン(Bedoukian社製)
(c)ナリンジン(東京化成工業(株)製)
(c)β−シネンサール(アドバンスドテクノロジーアンドインダストリアル(株)製)
(c)カッシン(宮坂香料(株)製)
(d)l−メントール(高砂香料工業(株)製)
(d)ペパーミント(キャリソン社製、メントール含有量40%)
エチルブチレート(比較品)(井上香料(株)製)
シス−3−ヘキセノール(比較品)(信越化学工業(株)製)
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
【表3】
【0048】
【表4】
【符号の説明】
【0049】
1.容器本体
2.ポンプディスペンサー
3.外層
4.可動底面部
5.内容物充填部
6.内容物吐出口
7.押圧部
8.オーバーキャップ
D:容器の高さ
L:容器の幅
図1