(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
攪拌ピンとショルダ部とを備える回転ツールを前記第一金属部材の表面とは反対の裏面側から挿入し、当該回転ツールの攪拌ピンを前記第一金属部材のみ、又は、前記第一金属部材及び前記第二金属部材の両方に接触させた状態で前記重合部に沿って当該回転ツールを相対移動させて前記重合部を摩擦攪拌接合する第二の本接合工程と、を含み、
前記第二の本接合工程では、当該回転ツールのショルダ部を前記第一金属部材の裏面に押し込みながら摩擦攪拌を行うとともに、前記第一の本接合工程の塑性化領域と前記第二の本接合工程の塑性化領域とを重複させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の接合方法。
攪拌ピンを備える回転ツールを前記第一金属部材の表面とは反対の裏面側から挿入し、当該回転ツールの攪拌ピンのみを前記第一金属部材のみ、又は、前記第一金属部材及び前記第二金属部材の両方に接触させた状態で前記重合部に沿って当該回転ツールを相対移動させて前記重合部を摩擦攪拌接合する第二の本接合工程と、を含み、
前記第二の本接合工程では、前記第一の本接合工程の塑性化領域と前記第二の本接合工程の塑性化領域とを重複させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の接合方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術であると、溶接部の強度が低いため、第一金属部材と第二金属部材が分離するおそれがある。
【0005】
このような観点から、本発明は、接合強度が高い接合方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決するために本発明は、板状の第一金属部材の表面と板状の第二金属部材の裏面とを重ね合わせて重合部を形成する重ね合せ工程と、前記第一金属部材の端面と前記第二金属部材の裏面とで形成される内隅及び前記第一金属部材の表面と前記第二金属部材の端面とで形成される内隅に内隅用接合ツールの攪拌ピンを挿入して摩擦攪拌接合を行う内隅接合工程と、攪拌ピンとショルダ部とを備える回転ツールを前記第二金属部材の裏面とは反対側の表面側から挿入し、当該回転ツールの前記攪拌ピンを前記第二金属部材のみ、又は、前記第一金属部材及び前記第二金属部材の両方に接触させた状態で前記重合部に沿って当該回転ツールを相対移動させて前記重合部を摩擦攪拌接合する第一の本接合工程と、を含み、前記第一の本接合工程では、前記回転ツールの前記ショルダ部を前記第二金属部材の表面に押し込みながら摩擦攪拌接合を行うことを特徴とする。
【0007】
かかる方法によれば、一対の内隅及び第二金属部材の表面から重合部に摩擦攪拌接合を行うことにより、重合部の接合強度を高めることができる。また、内隅接合工程を行うことにより、第一の本接合工程時における第一金属部材及び第二金属部材の位置ずれを防ぐことができる。また、第一の本接合工程では、回転ツールのショルダ部を第二金属部材に押し込むことにより、バリの発生を抑制することができる。
【0008】
また、本発明は、板状の第一金属部材の表面と板状の第二金属部材の裏面とを重ね合わせて重合部を形成する重ね合せ工程と、前記第一金属部材の端面と前記第二金属部材の裏面とで形成される内隅及び前記第一金属部材の表面と前記第二金属部材の端面とで形成される内隅に内隅用接合ツールの攪拌ピンを挿入して摩擦攪拌接合を行う内隅接合工程と、攪拌ピンを備える回転ツールを前記第二金属部材の裏面とは反対側の表面側から挿入し、当該回転ツールの前記攪拌ピンのみを前記第二金属部材のみ、又は、前記第一金属部材及び前記第二金属部材の両方に接触させた状態で前記重合部に沿って当該回転ツールを相対移動させて前記重合部を摩擦攪拌接合する第一の本接合工程と、を含むことを特徴とする。
【0009】
かかる方法によれば、一対の内隅及び第二金属部材の表面から重合部に摩擦攪拌接合を行うことにより、重合部の接合強度を高めることができる。また、内隅接合工程を行うことにより、第一の本接合工程時における第一金属部材及び第二金属部材の位置ずれを防ぐことができる。また、回転ツールの攪拌ピンのみを接触させて第一の本接合工程を行うことにより、摩擦攪拌装置に大きな負荷をかけずに、深い位置まで摩擦攪拌を行うことができる。
【0010】
また、攪拌ピンとショルダ部とを備える回転ツールを前記第一金属部材の表面とは反対の裏面側から挿入し、当該回転ツールの攪拌ピンを前記第一金属部材のみ、又は、前記第一金属部材及び前記第二金属部材の両方に接触させた状態で前記重合部に沿って当該回転ツールを相対移動させて前記重合部を摩擦攪拌接合する第二の本接合工程と、を含み、前記第二の本接合工程では、当該回転ツールのショルダ部を前記第一金属部材の裏面に押し込みながら摩擦攪拌を行うとともに、前記第一の本接合工程の塑性化領域と前記第二の本接合工程の塑性化領域とを重複させることが好ましい。
また、攪拌ピンを備える回転ツールを前記第一金属部材の表面とは反対の裏面側から挿入し、当該回転ツールの攪拌ピンのみを前記第一金属部材のみ、又は、前記第一金属部材及び前記第二金属部材の両方に接触させた状態で前記重合部に沿って当該回転ツールを相対移動させて前記重合部を摩擦攪拌接合する第二の本接合工程と、を含み、
前記第二の本接合工程では、前記第一の本接合工程の塑性化領域と前記第二の本接合工程の塑性化領域とを重複させることが好ましい。
【0011】
かかる方法によれば、第一金属部材の裏面側からも摩擦攪拌を施しているので接合強度をより高めることができるとともに、バランス良く接合することができる。
【0012】
また、本発明は、板状の第一金属部材の表面と板状の第二金属部材の裏面とを重ね合わせて重合部を形成する重ね合せ工程と、前記第一金属部材の端面と前記第二金属部材の裏面とで形成される内隅及び前記第一金属部材の表面と前記第二金属部材の端面とで形成される内隅に内隅用接合ツールの攪拌ピンを挿入して摩擦攪拌接合を行う内隅接合工程と、一対のショルダ部と前記ショルダ部間を連結する攪拌ピンとを備えるボビン回転ツールを前記重合部に沿って相対移動させて重合部を摩擦攪拌接合する本接合工程と、を含み、前記本接合工程では、一対の前記ショルダ部を前記第一金属部材及び前記第二金属部材のそれぞれ接触させた状態で摩擦攪拌を行うことを特徴とする。
【0013】
かかる方法によれば、一対の内隅と重合部とに摩擦攪拌接合を行うことにより、接合強度を高めることができる。また、内隅接合工程を行うことにより、本接合工程時における第一金属部材及び第二金属部材の位置ずれを防ぐことができる。また、ボビン回転ツールを用いて本接合工程を行うことにより、第一金属部材及び第二金属部材の板厚方向の全体を1パスで接合することができる。
【0014】
また、前記内隅接合工程では、前記内隅に対して、1パスで連続して摩擦攪拌を施すことが好ましい。また、前記内隅接合工程では、前記内隅に対して、断続的に間をあけて摩擦攪拌を施すことが好ましい。かかる方法によれば、内隅接合工程を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る接合方法によれば、接合強度を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第一実施形態]
本発明の第一実施形態に係る接合方法について図面を参照して詳細に説明する。まずは、本実施形態の接合方法で用いる回転ツールFについて説明する。
図1の(a)に示すように、回転ツールFは、連結部F1と、攪拌ピンF2とで構成されている。回転ツールFは、例えば工具鋼で形成されている。連結部F1は、摩擦攪拌装置の回転軸に連結される部位である。連結部F1は円柱状を呈し、ボルトが締結されるネジ孔(図示省略)が形成されている。
【0018】
攪拌ピンF2は、連結部F1から垂下しており、連結部F1と同軸になっている。攪拌ピンF2は連結部F1から離間するにつれて先細りになっている。攪拌ピンF2の長さは、後記する第二金属部材2の板厚よりも大きくなっている。攪拌ピンF2の外周面には螺旋溝F3が刻設されている。本実施形態では、回転ツールFを右回転させるため、螺旋溝F3は、基端から先端に向かうにつれて左回りに形成されている。言い換えると、螺旋溝F3は、螺旋溝F3を基端から先端に向けてなぞると上から見て左回りに形成されている。
【0019】
なお、回転ツールFを左回転させる場合は、螺旋溝F3を基端から先端に向かうにつれて右回りに形成することが好ましい。言い換えると、この場合の螺旋溝F3は、螺旋溝F3を基端から先端に向けてなぞると上から見て右回りに形成されている。螺旋溝F3をこのように設定することで、摩擦攪拌の際に塑性流動化した金属が螺旋溝F3によって攪拌ピンF2の先端側に導かれる。これにより、被接合金属部材(後記する第一金属部材1及び第二金属部材2)の外部に溢れ出る金属の量を少なくすることができる。
【0020】
図1の(b)に示すように、回転ツールFを用いて摩擦攪拌接合をする際には、被接合金属部材に回転した攪拌ピンF2のみを挿入し、被接合金属部材と連結部F1とは離間させつつ移動させる。言い換えると、攪拌ピンF2の基端部は露出させた状態で摩擦攪拌接合を行う。回転ツールFの移動軌跡には摩擦攪拌された金属が硬化することにより塑性化領域W(W1,W2)が形成される。
【0021】
図2の(a)に示すように、本実施形態に係る接合方法では、第一金属部材1と第二金属部材2とを重ね合せて摩擦攪拌により接合する。第一金属部材1及び第二金属部材2は、いずれも板状を呈する。第一金属部材1及び第二金属部材2の板厚は、異なるように形成してもよいが、本実施形態では同一である。第一金属部材1及び第二金属部材2は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、チタン、チタン合金、 マグネシウム、マグネシウム合金等の摩擦攪拌可能な金属から適宜選択される。
【0022】
本実施形態に係る接合方法では、重ね合せ工程と、内隅接合工程と、タブ材接合工程と、第一の本接合工程と、第二の本接合工程とを行う。重ね合せ工程は、
図2の(a)示すように、第一金属部材1の表面1aと第二金属部材2の裏面2bとを重ね合せて重合部J1を形成する工程である。第一金属部材1及び第二金属部材2は架台(図示省略)にクランプを介して移動不能に拘束する。第一金属部材1の表面1aと、第二金属部材2の端面2cとで内隅U1が形成される。第二金属部材2の裏面2bと、第一金属部材1の端面1cとで内隅U2が形成される。なお、「表面」とは、「裏面」とは反対側の面を意味する。
【0023】
内隅接合工程は、
図2の(b)に示すように、内隅U1,U2に対して回転ツール(内隅用接合ツール)Fを用いて摩擦攪拌接合を行う工程である。内隅接合工程では、回転させた回転ツールFの攪拌ピンF2のみを内隅U1に挿入しつつ、内隅U1に沿って回転ツールFを相対移動させる。つまり、回転ツールFの連結部F1は被接合金属部材に接触させずに攪拌ピンF2の基端側を露出させて摩擦攪拌接合を行う。本実施形態では、内隅U1の全長に対して1パスで連続的に摩擦攪拌接合を行う。回転ツールFの移動軌跡には、塑性化領域Wが形成される。また同様に、内隅U2に対しても摩擦攪拌接合を行う。
【0024】
なお、内隅接合工程は、例えば、先端にスピンドルユニット等の回転駆動手段を備えたロボットアームに回転ツールFを取り付けて摩擦攪拌を行うことができる。このような摩擦攪拌装置によれば、鉛直軸に対する回転ツールFの回転中心軸の角度を容易に変更することができる。
【0025】
タブ材接合工程は、
図3に示すように、重合部J1の両側にタブ材T1,T2を接合する工程である。タブ材T1,T2は、第一金属部材1及び第二金属部材2と同じ材料で形成されており直方体を呈する。タブ材T1,T2の高さは、第一金属部材1及び第二金属部材2の板厚方向の和と同等になっている。タブ材接合工程では、タブ材T1と第一金属部材1及び第二金属部材2とで形成される内隅を溶接により接合する。同様に、タブ材T2と第一金属部材1及び第二金属部材2とで形成される内隅を溶接により接合する。タブ材T1の表面T1aと第二金属部材2の表面2aとを面一にするとともに、裏面T1bと第一金属部材1の裏面1bとを面一にする。同様に、タブ材T2の表面T2aと第二金属部材2の表面2aとを面一にするとともに、裏面T2bと第一金属部材1の裏面1bを面一にする。
【0026】
第一の本接合工程は、
図4の(a)に示すように、第二金属部材2の表面2a側から重合部J1を摩擦攪拌接合する工程である。第一の本接合工程では、回転ツールGを用いて接合する。回転ツールGは、円柱状のショルダ部G1と、ショルダ部G1から垂下する攪拌ピンG2とで構成されている。攪拌ピンG2は先端に向けて先細りになっている。攪拌ピンG2の外周面には螺旋溝が形成されている。
【0027】
第一の本接合工程では、タブ材T1の表面T1aに開始位置Sp1を設定し、タブ材T2の表面T2aに終了位置Ep1を設定する。第一の本接合工程では、開始位置Sp1に回転する回転ツールGの攪拌ピンG2を挿入する。そして、重合部J1に沿うようにして、回転ツールGを終了位置Ep1に向けて相対移動させる。回転ツールGの移動軌跡には、塑性化領域W1が形成される。
【0028】
図4の(b)に示すように、第一の本接合工程では、回転ツールGのショルダ部G1の下端面を第二金属部材2に数ミリ程度押し込みながら摩擦攪拌を行う。攪拌ピンG2の挿入深さは適宜設定すればよいが、重合部J1に攪拌ピンG2が達するように設定することが好ましい。つまり、攪拌ピンG2を第一金属部材1及び第二金属部材2の両方に接触させた状態で摩擦攪拌接合を行う。
【0029】
攪拌ピンG2が重合部J1に達しない場合、つまり、攪拌ピンG2を第二金属部材2のみに接触させる場合は、回転ツールGと第二金属部材2との摩擦熱によって重合部J1が塑性流動化して接合される。回転ツールGが終了位置Ep1に達したら、回転ツールGをタブ材T2から離脱させる。第一の本接合工程が終了したら、第一金属部材1及び第二金属部材2をひっくり返し、架台に再度クランプする。
【0030】
第二の本接合工程は、
図5に示すように、第一金属部材1の裏面1b側から重合部J1を摩擦攪拌接合する工程である。第二の本接合工程では、回転ツールGを用いて接合する。第二の本接合工程では、タブ材T1及びタブ材T2の一方に開始位置を設定し、他方に終了位置を設定する。第二の本接合工程では、第一の本接合工程と同じ要領で摩擦攪拌接合を行う。つまり、回転ツールGのショルダ部G1の下端面を第一金属部材1の裏面1bに数ミリ程度押し込みつつ、重合部J1に沿って回転ツールGを相対移動させて摩擦攪拌を行う。回転ツールGの移動軌跡には、塑性化領域W2が形成される。
【0031】
第二の本接合工程における攪拌ピンG2の挿入深さは適宜設定すればよいが、本実施形態では、重合部J1に攪拌ピンG2が達するように設定することが好ましい。つまり、攪拌ピンG2を第一金属部材1及び第二金属部材2の両方に接触させた状態で摩擦攪拌接合を行う。攪拌ピンG2の先端が、塑性化領域W1に入り込むように挿入深さを設定することで、塑性化領域W1と塑性化領域W2とが重複する。
【0032】
攪拌ピンG2が重合部J1に達しない場合、つまり、攪拌ピンG2を第一金属部材1のみに接触させる場合は、回転ツールGと第一金属部材1との摩擦熱によって重合部J1が塑性流動化して接合される。回転ツールGが終了位置に達したら、回転ツールGをタブ材から離脱させる。以上により、第一金属部材1と第二金属部材2とが接合される。
【0033】
なお、必要に応じて、内隅接合工程、第一の本接合工程及び第二の本接合工程で発生したバリを切除するバリ切除工程を行ってもよい。これにより、内隅U1,U2、第一金属部材1の裏面1b及び第二金属部材2の表面2aをきれいに仕上げることができる。
【0034】
以上説明した第一実施形態に係る接合方法によれば、一対の内隅U1,U2に加えて、第二金属部材2の表面2aから重合部J1に摩擦攪拌接合を行うことにより、重合部J1の接合強度を高めることができる。また、内隅接合工程を行うことにより、第一の本接合工程時における第一金属部材1及び第二金属部材2の位置ずれを防ぐことができる。また、ショルダ部G1を第二金属部材2に押し込むことにより、バリの発生を抑制することができる。また、第二の本接合工程は省略してもよいが、本実施形態のように第一の本接合工程及び第二の本接合工程の両方を行うことで、接合強度をより高めることができるとともに、バランス良く接合することができる。
【0035】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態に係る接合方法について説明する。本実施形態では、内隅接合工程、第一の本接合工程及び第二の本接合工程を、回転ツールFを用いて摩擦攪拌接合する点で、第一実施形態と相違する。本実施形態に係る接合方法では、重ね合せ工程と、内隅接合工程と、タブ材接合工程と、第一の本接合工程と、第二の本接合工程とを行う。重ね合せ工程は、第一実施形態と同一であるため、説明を省略する。
【0036】
内隅接合工程では、
図6の(a)に示すように、内隅U1,U2に対して回転ツール(内隅用接合ツール)Fを用いて摩擦攪拌接合を行う工程である。内隅接合工程では、内隅U1,U2の全長に対して、断続的に摩擦攪拌を行う。内隅U1,U2には、間隔をあけて塑性化領域Wが形成される。タブ材接合工程は、第一実施形態と同一であるため、説明を省略する。
【0037】
第一の本接合工程は、
図6の(a)に示すように、第二金属部材2の表面2a側から重合部J1を摩擦攪拌接合する工程である。第一の本接合工程では、回転ツール(内隅用接合ツールと兼用のショルダレス回転ツール)Fを用いて接合する。
【0038】
第一の本接合工程では、タブ材T1の表面T1aに開始位置Sp1を設定し、タブ材T2の表面T2aに終了位置Ep1を設定する。第一の本接合工程では、開始位置Sp1に右回転させた回転ツールFの攪拌ピンF2を挿入する。そして、重合部J1に沿うようにして、回転ツールFを終了位置Ep1に向けて相対移動させる。回転ツールFの移動軌跡には、塑性化領域W1が形成される。
【0039】
図6の(b)に示すように、第一の本接合工程では、回転ツールFの連結部F1は第二金属部材2から離間させて、摩擦攪拌接合を行う。つまり、攪拌ピンF2の基端側は露出させた状態で摩擦攪拌接合を行う。攪拌ピンF2の挿入深さは適宜設定すればよいが、重合部J1に攪拌ピンF2が達するように設定することが好ましい。つまり、攪拌ピンF2を第一金属部材1及び第二金属部材2の両方に接触させた状態で摩擦攪拌接合を行う。
【0040】
攪拌ピンF2が重合部J1に達しない場合、つまり、攪拌ピンF2を第二金属部材2のみに接触させる場合は、回転ツールFと第二金属部材2との摩擦熱によって重合部J1が塑性流動化して接合される。回転ツールFが終了位置Ep1に達したら、回転ツールFをタブ材T2から離脱させる。第一の本接合工程が終了したら、第一金属部材1及び第二金属部材2をひっくり返し、架台に再度クランプする。
【0041】
第二の本接合工程は、
図7に示すように、第一金属部材1の裏面1b側から重合部J1を接合する工程である。第二の本接合工程では、回転ツールFを用いて摩擦攪拌によって接合する。第二の本接合工程では、タブ材T1及びタブ材T2の一方に開始位置を設定し、他方に終了位置を設定する。第二の本接合工程では、第一の本接合工程と同じ要領で摩擦攪拌接合を行う。つまり、回転ツールFの連結部F1は第一金属部材1から離間させて、摩擦攪拌接合を行う。回転ツールFの移動軌跡には、塑性化領域W2が形成される。
【0042】
第二の本接合工程における攪拌ピンF2の挿入深さは適宜設定すればよいが、本実施形態では、重合部J1に攪拌ピンF2が達するように設定することが好ましい。つまり、攪拌ピンF2を第一金属部材1及び第二金属部材2の両方に接触させた状態で摩擦攪拌接合を行う。攪拌ピンF2の先端が、塑性化領域W1に入り込むように挿入深さを設定することで、塑性化領域W1と塑性化領域W2の先端側が重複する。
【0043】
攪拌ピンF2が重合部J1に達しない場合、つまり、攪拌ピンF2を第一金属部材1のみに接触させる場合は、回転ツールFと第一金属部材1との摩擦熱によって重合部J1が塑性流動化して接合される。回転ツールFが終了位置に達したら、回転ツールFをタブ材から離脱させる。以上により、第一金属部材1と第二金属部材2とが接合される。
【0044】
なお、必要に応じて、内隅U1,U2、第一の本接合工程及び第二の本接合工程で発生したバリを切除するバリ切除工程を行ってもよい。これにより、第一金属部材1の裏面1b及び第二金属部材2の表面2aをきれいに仕上げることができる。また、第一金属部材1の裏面1b及び第二金属部材2の表面2aに形成される凹溝が大きい場合は、肉盛溶接を施して補修する補修工程を行ってもよい。
【0045】
第二実施形態に係る接合方法によれば、一対の内隅U1,U2に加えて、第二金属部材2の表面2aから重合部J1に摩擦攪拌接合を行うことにより、重合部J1の接合強度を高めることができる。また、内隅接合工程を行うことにより、第一の本接合工程時における第一金属部材1及び第二金属部材2の位置ずれを防ぐことができる。また、回転ツールFの攪拌ピンF2のみを接触させて第一の本接合工程を行うことにより、摩擦攪拌装置に大きな負荷をかけずに、深い位置まで摩擦攪拌を行うことができる。第一金属部材1及び第二金属部材2の板厚が大きい場合は、回転ツールFを用いて摩擦攪拌を行うと有効である。
【0046】
また、回転ツールFによれば、塑性化領域W1,W2の幅を小さくすることができるため、重合部J1の幅(第一金属部材1と第二金属部材2の重ね代)を小さくすることができる。また、第二の本接合工程は省略してもよいが、本実施形態のように第一の本接合工程及び第二の本接合工程の両方を行うことで、接合強度をより高めることができるとともに、バランス良く接合することができる。
【0047】
また、内隅用接合ツールは、第一の本接合工程及び第二の本接合工程で用いる回転ツールと別個でもよいが、本実施形態のようにこれらの工程を回転ツールFを用いて行うことで、回転ツールを付け替える手間を省くことができる。
【0048】
なお、第二実施形態では、回転ツールFを用いて内隅接合工程、第一の本接合工程及び第二の本接合工程を行ったが、回転ツールGを用いて各工程を行ってもよい。この場合は、回転ツールGの攪拌ピンG2の基端側を露出させた状態で摩擦攪拌接合を行えばよい。このようにすれば、回転ツールを交換する手間を省略することができる。
【0049】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態に係る係る接合方法について説明する。本実施形態に係る接合方法では、重ね合せ工程と、内隅接合工程と、本接合工程と、を行う。重ね合せ工程及び内隅接合工程は、第一実施形態と同一であるため、説明を省略する。
【0050】
本接合工程は、
図8に示すように、ボビン回転ツールHを用いて重合部J1に摩擦攪拌接合を行う工程である。ボビン回転ツールHは、第一ショルダ部H1と、第二ショルダ部H2と、攪拌ピンH3とで構成されている。第一ショルダ部H1は、略円柱状を呈する。第一ショルダ部H1の攪拌ピンH3側には、攪拌ピンH3に向けて縮径するテーパー部H1aが形成されている。テーパー部H1aの端部には、端面H1bが形成されている。
【0051】
第二ショルダ部H2は、略円柱状を呈する。第二ショルダ部H2の攪拌ピンH3側には、攪拌ピンH3に向けて縮径するテーパー部H2aが形成されている。テーパー部H2aの端部には、端面H2bが形成されている。攪拌ピンH3は、第一ショルダ部H1と第二ショルダ部H2とを連結する軸状部材である。
【0052】
本接合工程では、
図9の(a)に示すように、第一金属部材1及び第二金属部材2を移動不能に架台(図示省略)にクランプした後、第一金属部材1及び第二金属部材2の側方にボビン回転ツールHを位置させる。攪拌ピンH3の長手方向の中心が、重合部J1の延長上に位置するように高さ位置を調整する。そして、ボビン回転ツールHを回転させつつ、第一金属部材1及び第二金属部材2に突入させ、重合部J1に沿って相対移動させる。攪拌ピンH3の長さ(第一ショルダ部H1と第二ショルダ部H2間距離)は、第一金属部材1及び第二金属部材2の板厚の和よりも小さくなっているため、第二金属部材2の表面2aに第一ショルダ部H1(端面H1b)が押し込まれるとともに、第一金属部材1の裏面1bに第二ショルダ部H2(端面H2b)が押し込まれる。ボビン回転ツールHの移動軌跡には、塑性化領域W3が形成される。以上により、第一金属部材1と第二金属部材2とが接合される。
【0053】
なお、必要に応じて、内隅接合工程、本接合工程で発生したバリを切除するバリ切除工程を行ってもよい。これにより、内隅U1,U2、第一金属部材1の裏面1b及び第二金属部材2の表面2aをきれいに仕上げることができる。
【0054】
以上説明した第三実施形態に係る接合方法によれば、一対の内隅U1,U2に加えて、重合部J1に摩擦攪拌接合を行うことにより、接合強度を高めることができる。また、内隅接合工程を行うことにより、本接合工程時における第一金属部材1及び第二金属部材2の位置ずれを防ぐことができる。また、ボビン回転ツールHを用いて本接合工程を行うことにより、第一金属部材1及び第二金属部材2の板厚方向の全体を1パスで接合することができる。また、第二金属部材2の表面2aに第一ショルダ部H1を押し込むとともに、第一金属部材1の裏面1bに第二ショルダ部H2を押し込むことにより、バリの発生を抑制することができる。
【0055】
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明の趣旨に反しない範囲において、適宜設計変更が可能である。例えば、第一実施形態における第二の本接合工程を、回転ツールFを用いて行ってもよい。また、第二実施形態における第二の本接合工程を、回転ツールGを用いて行ってもよい。また、第一実施形態及び第二実施形態では、タブ材T1,T2を設けたが、省略してもよい。