(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
式(1)で表される構成単位及び式(2)で表される構成単位の合計に対する式(1)で表される構成単位の割合が、40モル%以上である請求項3に記載のポリイミド樹脂組成物。
前記架橋剤中の前記オキサゾリル基と、前記ポリイミド樹脂中のカルボキシル基とのモル比(オキサゾリル基:カルボキシル基)が1:4〜1:1である請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリイミド樹脂組成物。
基材上に、請求項1〜8のいずれか1項に記載のポリイミド樹脂組成物中の前記ポリイミドが前記架橋剤により架橋されてなる架橋ポリイミド層が形成されてなる積層体。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[ポリイミド樹脂組成物]
本発明のポリイミド樹脂組成物は、カルボキシル基を有するポリイミド樹脂と、少なくとも2つのオキサゾリル基を有する架橋剤とを含む。以下、上記(1)ポリイミド樹脂、(2)ポリイミド樹脂の製造方法、及び(3)架橋剤等について説明する。
【0014】
(1)ポリイミド樹脂:
本発明に係るポリイミド樹脂は、下記一般式(1)で表される構成単位を含む。
【0016】
(式(1)中のRxは脂環式炭化水素環構造を含む炭素数4〜22の4価の基であり、Xは単結合、置換若しくは無置換のアルキレン基、カルボニル基、エーテル基、下記式(a)で表される基、又は、下記式(b)で表される基であり、m1及びm2はそれぞれ独立して0〜4の整数、m3及びm4はそれぞれ独立して0〜5の整数で、m1+m2+m3+m4が1以上であり、pは0〜2の整数を表す。なお、pが2の場合、2つのX及び2つのm2〜m4のそれぞれは独立して選択される。)
【0018】
まず一般式(1)において、Rxは脂環式炭化水素構造を含む炭素数4〜22の4価の基であるが、当該Rxを有することにより、本発明のポリイミド樹脂組成物は特に透明性に優れ、さらには耐熱性及び低熱線膨張係数を有するものとなる。脂環式炭化水素構造は飽和であっても不飽和であってもよいが、透明性の観点から、飽和脂環式炭化水素構造であることが好ましい。
Rxは、脂環式炭化水素構造を少なくとも1つ有していればよい。脂環式炭化水素構造としては、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環等のシクロアルカン環、シクロヘキセン等のシクロアルケン環、ノルボルナン環等のビシクロアルカン環、及びノルボルネン等のビシクロアルケン環等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはシクロアルカン環及びビシクロアルカン環であり、より好ましくは環員炭素数4〜6のシクロアルカン環及びビシクロアルカン環であり、更に好ましくはシクロヘキサン環及びビシクロヘキサン環であり、より更に好ましくはシクロヘキサン環である。
Rxの炭素数は4〜22であり、好ましくは4〜18、より好ましくは6〜16である。なお、ポリイミド樹脂の透明性の観点から、Rxは脂環式炭化水素構造のみで構成されることが好ましい。
【0019】
ポリイミド樹脂の透明性(さらに、耐熱性及び低熱線膨張係数)の観点から、Rxは下記一般式(X1−1)及び(X1−2)又は(X1−3)で表される4価の基から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、下記一般式(X1−2)で表される4価の基であることがより好ましい。
【0021】
(R
3〜R
8は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基又はハロゲン化アルキル基である。)
一般式(X1−2)及び(X1−3)において、R
3〜R
8は、水素原子又はメチル基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。Rxは、更に好ましくは下記構造式(X1−4)で表される4価の基である。
【0023】
また、一般式(1)中のカルボキシル基の存在により、後述の架橋剤との架橋が進行して、透明性を阻害せずに、形成された膜の硬度を向上させることができる。一般式(1)においては、下記式(1−1)〜式(1−7)のいずれかであることが好ましい。下記各式のうち、実用的な観点から、式(1−1)で表される構成単位が好ましい。
【0031】
また、ポリイミド樹脂がさらに下記式(2)で表される構成単位を含むことが好ましい。下記式(2)で表される構成単位を含むことで、黄変を防止して無色透明な膜を形成することができる。
【0033】
(式(2)中のRyは脂環式炭化水素環構造を含む炭素数4〜22の4価の基であり、Yは単結合又は2価のアリール基の残基であり、q1及びq2はそれぞれ独立に1〜4の整数であり、Ra及びRbはそれぞれ独立に、メチル基、トリフルオロメチル基、クロロ基、ヒドロキシル基又はメトキシ基を表し、Ra及びRbは互いに結合してメチレン基を形成してもよい。Ra及びRbがそれぞれ複数ある場合、それらは同一でも異なっていてもよい。なお、Ra及びRbはメチル基又はトリフルオロメチル基であることが好ましい。)
【0034】
上記式(2)中、Yの2価のアリール基の残基としては、下記のような2価の基が挙げられる。
【0035】
【化15】
式(2)で表される構成単位は、形成される膜の良好な硬度、無色透明性、耐溶剤性といった物性の観点から、下記式(2−1)〜式(2−3)のいずれかで表される構成単位であることが好ましく、下記式(2−1)で表される構成単位がより好ましく、当該式(2−1)中、Ra及びRbがメチル基又はトリフルオロメチル基であることが好ましい。
【0039】
本発明に係るポリイミドは、式(1)で表される構成単位で構成されていても、さらに式(2)で表される構成単位を含んでいてもよい。式(2)で表される構成単位を含む場合は、式(1)で表される構成単位及び式(2)で表される構成単位の合計に対する式(1)で表される構成単位の割合が、40モル%以上であることが好ましく、45モル%以上であることがより好ましく、50モル%以上であることがさらに好ましい。40モル%以上であることで、無色透明な膜を形成することができる。
また、式(2)で表される構成単位を含む場合は、式(1−1)で表される構成単位と式(2−1)で表される構成単位との組み合わせが、形成される膜の良好な硬度と無色透明性との両立の観点から好ましい。特に、式(2−1)は、下記式で表されることが好ましい。
【0041】
また、本発明のポリイミド樹脂組成物は、下記一般式(3)で示される繰り返し構成単位を含んでもよい。
【0043】
(式(3)中、X
2は、芳香環を含む炭素数6〜22の4価の基である。R
2は、それぞれ独立に、2価の有機基である。)
【0044】
一般式(3)において、X
2は、芳香環を含む炭素数6〜22の4価の基である。芳香環を含むX
2を有することにより、本発明のポリイミド樹脂は特に低熱線膨張係数となり、かつ透明性及び耐熱性にも優れるものとなる。
X
2は、芳香環を少なくとも1つ有していればよい。該芳香環は単環でも縮合環でもよく、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、及びテトラセン環等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはベンゼン環及びナフタレン環であり、より好ましくはベンゼン環である。
X
2の炭素数は6〜22であり、好ましくは6〜18、より好ましくは6〜12である。
【0045】
ポリイミド樹脂の透明性(さらに、耐熱性及び低熱線膨張係数)の観点から、X
2は下記一般式(X2−1)〜(X2−3)で表される4価の基から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、下記一般式(X2−3)で表される4価の基であることがより好ましい。
【0047】
(R
9〜R
20は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基又はハロゲン化アルキル基である。R
21は、単結合、−CH
2−、−C(CH
3)
2−、−O−、−S−、−SO
2−、−CONH−、−CO−、又は−C(CF
3)
2−である。)
一般式(X2−1)〜(X2−3)において、R
9〜R
20は、水素原子又はメチル基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。また一般式(X2−3)において、R
21は単結合、−CH
2−、又は−C(CH
3)
2−であることが好ましく、単結合であることがより好ましい。X
2は、低熱線膨張係数の観点から、より更に好ましくは下記構造式(X2−4)で表される4価の基である。
【0049】
一般式(3)において、2価の有機基であるR
2としては、6〜28の炭素原子を含む芳香族ジアミン化合物から誘導される2価の有機基、又は2〜28の炭素原子を含む脂肪族ジアミン化合物から誘導される2価の有機基である。上記芳香族ジアミン化合物としては、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジメチルビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジトリフルオロメチルビフェニル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレンなどの芳香族ジアミン化合物が挙げられる。
上記脂肪族ジアミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ポリエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、ポリプロピレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、3(4),8(9)−ビス(アミノメチル)−トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミン、シロキサンジアミン類などの脂肪族ジアミン化合物を挙げることができる。これらは1種類単独かあるいは2種類以上を混合して使用することができる。これらのジアミン化合物のうち、好ましいのは芳香族ジアミン化合物では4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジトリフルオロメチルビフェニル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、脂肪族ジアミン化合物では4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、3(4),8(9)−ビス(アミノメチル)−トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカンが挙げられる。
【0050】
本発明に係るポリイミド樹脂の数平均分子量は、得られるポリイミドフィルムの機械的強度の観点から、好ましくは5,000〜100,000である。なお、ポリイミド樹脂の数平均分子量は、ゲルろ過クロマトグラフィー等により測定することができる。
【0051】
(2)ポリイミド樹脂の製造:
本発明に係るポリイミド樹脂は、特定のテトラカルボン酸成分と特定のジアミン成分とを反応させることにより製造することができる。
テトラカルボン酸成分は、脂環式炭化水素構造を含むテトラカルボン酸又はその誘導体(及び、必要に応じて芳香環を含むテトラカルボン酸又はその誘導体)を含有する。また、ジアミン成分は下記構造式(A1)で表されるジアミン(及び、必要に応じて下記構造式(A2)で表されるジアミン)を含有する。
【0054】
なお、構造式(A1)中のX、m1、m2、p、及び構造式(A2)中のY、Ra、Rb、q1、q2は既述の式(1)及び式(2)の同一符号のものと同様である。
【0055】
脂環式炭化水素構造を含むテトラカルボン酸は4つのカルボキシル基が直接脂環式炭化水素に結合した化合物であることが好ましく、構造中にアルキル基を含んでいてもよい。また該テトラカルボン酸は、炭素数8〜26であるものが好ましい。
前記脂環式炭化水素構造を含むテトラカルボン酸としては、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,4,5−シクロペンタンテトラカルボン酸、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸、ビシクロ[2.2.2]オクタ−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸、ジシクロヘキシルテトラカルボン酸、又はこれらの位置異性体等が挙げられる。
【0056】
脂環式炭化水素構造を含むテトラカルボン酸の誘導体としては、該テトラカルボン酸の無水物又はアルキルエステルが挙げられる。該テトラカルボン酸誘導体は、炭素数8〜38であるものが好ましい。脂環式炭化水素構造を含むテトラカルボン酸の無水物としては、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタ−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物、又はこれらの位置異性体等が挙げられる。
また、脂環式炭化水素構造を含むテトラカルボン酸のアルキルエステルとしては、アルキルの炭素数が1〜3であることが好ましく、例えば、上述した脂環式炭化水素構造を含むテトラカルボン酸のジメチルエステル、ジエチルエステル、及びジプロピルエステルが挙げられる。
脂環式炭化水素構造を含むテトラカルボン酸又はその誘導体は、上記から選ばれる少なくとも1つの化合物を単独で用いてもよく、2つ以上の化合物を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
上記脂環式炭化水素構造を含むテトラカルボン酸成分のうち、シクロアルカンテトラカルボン酸、ビシクロアルカンテトラカルボン酸又はこれらの酸二無水物が好ましく、環員炭素数が4〜6のシクロアルカンテトラカルボン酸、環員炭素数が4〜6のビシクロアルカンテトラカルボン酸又はこれらの酸二無水物がより好ましく、1,2,4,5−シクロへキサンテトラカルボン酸又はその酸二無水物が更に好ましい。
【0058】
芳香環を含むテトラカルボン酸は4つのカルボキシル基が直接芳香環に結合した化合物含んでいてもよく、構造中にアルキル基を含んでいてもよい。また該テトラカルボン酸は、炭素数10〜26であるものが好ましい。該テトラカルボン酸としては、ピロメリット酸、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、4,4’−オキシジフタル酸、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン、1,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン、1,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン、4,4’−(p−フェニレンジオキシ)ジフタル酸、4,4’−(m−フェニレンジオキシ)ジフタル酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸等が挙げられる。
【0059】
芳香環を含むテトラカルボン酸の誘導体としては、該テトラカルボン酸の無水物又はアルキルエステルが挙げられる。前記テトラカルボン酸誘導体は、炭素数10〜38であるものが好ましい。芳香環を含むテトラカルボン酸の無水物としては、ピロメリット酸一無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパンの二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパンの二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシフェニル)プロパンの二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタンの二無水物、1,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタンの二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタンの二無水物、1,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタンの二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタンの二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタンの二無水物、4,4’−(p−フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物、4,4’−(m−フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
また、芳香環を含むテトラカルボン酸のアルキルエステルとしては、アルキルの炭素数が1〜3であることが好ましく、例えば、上述した芳香環を含むテトラカルボン酸のジメチルエステル、ジエチルエステル、及びジプロピルエステルが挙げられる。
芳香環を含むテトラカルボン酸又はその誘導体は、上記から選ばれる少なくとも1つの化合物を単独で用いてもよく、2つ以上の化合物を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
上記芳香環を含むテトラカルボン酸成分のうち、ピロメリット酸、2,3,5,6−トルエンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸又はこれらの二無水物から選ばれる1種以上が好ましく、透明性、耐熱性及び低線膨張係数の観点から、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸又はその二無水物がより好ましい。
【0061】
本発明に係るポリイミド樹脂を製造する際、脂環式炭化水素構造を含むテトラカルボン酸成分と芳香環を含むテトラカルボン酸成分の合計量に対する、該芳香環を含むテトラカルボン酸成分の仕込み量は40モル%以下であることが好ましい。
【0062】
なお、本発明に係るポリイミド樹脂に用いられるテトラカルボン酸成分は、ポリイミド樹脂の各種物性を損なわない範囲で、脂環式炭化水素構造及び芳香環をいずれも含まないテトラカルボン酸成分を含んでもよい。該テトラカルボン酸成分としては、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−ペンタンテトラカルボン酸又はこれらの誘導体等が挙げられる。
脂環式炭化水素構造及び芳香環をいずれも含まないテトラカルボン酸成分の使用量は、全テトラカルボン酸成分に対して、好ましくは10モル%以下、より好ましくは5モル%以下、更に好ましくは1モル%以下である。
【0063】
本発明に係るポリイミド樹脂に用いられるジアミン成分は、既述のように構造式(A1)で表されるジアミン、必要に応じて構造式(A2)で表されるジアミンを含む。
【0064】
構造式(A1)で表されるジアミンとしては、下記のようなジアミンが挙げられる。
【0066】
構造式(A2)で表されるジアミンとしては、下記のようなジアミンが挙げられる。なかでも、A2−1及びA2−4が好ましい。
【0069】
本発明に係るポリイミド樹脂に用いられるジアミン成分は、ポリイミド樹脂の各種物性を損なわない範囲で、構造式(A1)及び構造式(A2)で表されるジアミン以外の、その他のジアミン成分を含んでもよい。該その他のジアミンとしては特に制限はなく、脂肪族ジアミン、芳香環含有ジアミン等が挙げられる。ポリイミド樹脂の耐熱性の観点からは、芳香環含有ジアミンが好ましい。
【0070】
脂肪族ジアミンとしては、脂環式炭化水素構造含有ジアミン及び鎖状脂肪族ジアミンが挙げられ、例えば、1,2−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,2−シクロヘキサンジアミン、1,3−シクロヘキサンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4’−メチレンビス(2−メチルシクロヘキシルアミン)、カルボンジアミン、リモネンジアミン、イソフォロンジアミン、ノルボルナンジアミン、ビス(アミノメチル)トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルプロパン、1,5−ペンタメチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,7−ヘプタメチレンジアミン、1,8−オクタメチレンジアミン、1,9−ノナメチレンジアミン、1,10−デカメチレンジアミン、1,11−ウンデカメチレンジアミン、1,12−ドデカメチレンジアミン、2,2’−(エチレンジオキシ)ビス(エチレンアミン)等が挙げられる。
芳香環含有ジアミンとしては、オルトキシリレンジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、1,2−ジエチニルベンゼンジアミン、1,3−ジエチニルベンゼンジアミン、1,4−ジエチニルベンゼンジアミン、1,2−ジアミノベンゼン、1,3−ジアミノベンゼン、1,4−ジアミノベンゼン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、α,α’−ビス(4−アミノフェニル)1,4−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(3−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,6−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,4’−ジアミノベンズアニリド等が挙げられる。
上記ジアミン成分は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0071】
上記その他のジアミン成分の使用量は、全ジアミン成分に対して20モル%以下であり、好ましくは10モル%以下、より好ましくは5モル%以下、更に好ましくは1モル%以下である。
【0072】
本発明に係るポリイミド樹脂を製造する際、前記テトラカルボン酸成分と前記ジアミン成分の仕込み量比は、テトラカルボン酸成分1モルに対してジアミン成分が0.9〜1.1モルであることが好ましい。
【0073】
また本発明に係るポリイミド樹脂を製造する際、前記テトラカルボン酸成分、前記ジアミン成分の他に、末端封止剤を用いてもよい。末端封止剤としてはモノアミン類あるいはジカルボン酸類が好ましい。導入される末端封止剤の仕込み量としては、テトラカルボン酸成分1モルに対して0.0001〜0.1モルが好ましく、特に0.001〜0.06モルが好ましい。モノアミン類末端封止剤としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ベンジルアミン、4−メチルベンジルアミン、4−エチルベンジルアミン、4−ドデシルベンジルアミン、3−メチルベンジルアミン、3−エチルベンジルアミン、アニリン、3−メチルアニリン、4−メチルアニリン等が推奨される。これらのうち、ベンジルアミン、アニリンが好適に使用できる。ジカルボン酸類末端封止剤としては、ジカルボン酸類が好ましく、その一部を閉環していてもよい。例えば、フタル酸、無水フタル酸、4−クロロフタル酸、テトラフルオロフタル酸、2,3−ベンゾフェノンジカルボン酸、3,4−ベンゾフェノンジカルボン酸、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸、シクロペンタン−1,2−ジカルボン酸、4−シクロへキセン−1,2−ジカルボン酸等が推奨される。これらのうち、フタル酸、無水フタル酸が好適に使用できる。
【0074】
前述のテトラカルボン酸成分とジアミン成分とを反応させる方法には特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。
具体的な反応方法としては、(1)テトラカルボン酸成分、ジアミン成分、及び反応溶剤を反応器に仕込み、必要に応じて室温〜80℃で0.5〜30時間撹拌し、その後に昇温してイミド化反応を行う方法、(2)ジアミン成分及び反応溶剤を反応器に仕込んで溶解させた後、テトラカルボン酸成分を仕込み、必要に応じて室温〜80℃で0.5〜30時間撹拌し、その後に昇温してイミド化反応を行う方法、(3)テトラカルボン酸成分、ジアミン成分、及び反応溶剤を反応器に仕込み、直ちに昇温してイミド化反応を行う方法等が挙げられる。
【0075】
ポリイミド樹脂の製造に用いられる反応溶剤は、イミド化反応を阻害せず、生成するポリイミド樹脂を溶解できるものであればよい。例えば、非プロトン性溶剤、フェノール系溶剤、エーテル系溶剤、カーボネート系溶剤等が挙げられる。
【0076】
非プロトン性溶剤の具体例としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタム、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、テトラメチル尿素等のアミド系溶剤、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等のラクトン系溶剤、ヘキサメチルホスホリックアミド、ヘキサメチルホスフィントリアミド等の含リン系アミド系溶剤、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄系溶剤、アセトン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等のケトン系溶剤、ピコリン、ピリジン等のアミン系溶剤、酢酸(2−メトキシ−1−メチルエチル)等のエステル系溶剤等が挙げられる。
【0077】
フェノール系溶剤の具体例としては、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール等が挙げられる。
エーテル系溶剤の具体例としては、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、1,2−ビス(2−メトキシエトキシ)エタン、ビス〔2−(2−メトキシエトキシ)エチル〕エーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等が挙げられる。
また、カーボネート系溶剤の具体的な例としては、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等が挙げられる。
上記反応溶剤の中でも、アミド系溶剤又はラクトン系溶剤が好ましい。また、上記の反応溶剤は単独で又は2種以上混合して用いてもよい。
【0078】
イミド化反応では、ディーンスターク装置などを用いて、製造時に生成する水を除去しながら反応を行うことが好ましい。このような操作を行うことで、重合度及びイミド化率をより上昇させることができる。
【0079】
上記のイミド化反応においては、公知のイミド化触媒を用いることができる。イミド化触媒としては、塩基触媒又は酸触媒が挙げられる。
塩基触媒としては、ピリジン、キノリン、イソキノリン、α−ピコリン、β−ピコリン、2,4−ルチジン、2,6−ルチジン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、イミダゾール、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン等の有機塩基触媒、水酸化カリウムや水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム等の無機塩基触媒が挙げられる。
また、酸触媒としては、クロトン酸、アクリル酸、トランス−3−ヘキセノイック酸、桂皮酸、安息香酸、メチル安息香酸、オキシ安息香酸、テレフタル酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸等が挙げられる。上記のイミド化触媒は単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記のうち、取り扱い性の観点から、塩基触媒を用いることが好ましく、有機塩基触媒を用いることがより好ましく、トリエチルアミンを用いることが更に好ましい。
【0080】
イミド化反応の温度は、反応率及びゲル化等の抑制の観点から、好ましくは120〜250℃、より好ましくは160〜210℃である。また、反応時間は、生成水の留出開始後、好ましくは0.5〜10時間である。
【0081】
本発明に係るポリイミド樹脂は通常、有機溶剤への溶解性を有するが、ポリイミド樹脂の構造によっては有機溶剤への溶解性が低い場合がある。その際には、取り扱い性や加工性の観点から、ポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミド酸を含む組成物(後述するポリアミド酸組成物)を用いてフィルム等の所望の形状に加工した後、前述のイミド化反応を行ってもよい。
【0082】
当該ポリアミド酸は下記一般式(1a)で示される繰り返し構成単位を含み、好ましくは下記一般式(2a)で示される繰り返し構成単位を含み、より好ましくは下記一般式(3a)で示される繰り返し構成単位を含む。これらの含有量は、所望のポリイミドの組成に応じて適宜調整される。また、その他の好ましい態様は前記ポリイミド樹脂と同じである。
【0084】
(上記式(1a)、(2a)、(3a)中の各符号は、前記と同じである。R
31及びR
32は、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基であり、好ましくは水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基である。)
【0085】
ポリアミド酸は、前述のテトラカルボン酸成分とジアミン成分とを反応させることにより得られる。反応させる方法には特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。
具体的な反応方法としては、(1)テトラカルボン酸成分、ジアミン成分、及び溶剤を反応器に仕込み、0〜120℃、好ましくは5〜80℃の範囲で1〜72時間撹拌する方法、(2)ジアミン成分及び溶剤を反応器に仕込んで溶解させた後、テトラカルボン酸成分を仕込み、0〜120℃、好ましくは5〜80℃の範囲で1〜72時間撹拌する方法、等が挙げられる。上記のうち、(2)の製造方法が好ましい。
80℃以下で反応させる場合には、得られるポリアミド酸の分子量が重合時の温度履歴に依存して変動することなく、また熱イミド化の進行も抑制できるため、ポリアミド酸を安定して製造できる。
【0086】
ポリアミド酸の製造に用いられる溶剤は、生成するポリアミド酸を溶解できるものであればよい。例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ジメチルスルホキシド、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン等が挙げられる。上記溶剤は単独で又は2種以上混合して用いてもよい。
【0087】
上記(1)の製造方法では、ジアミン成分及びテトラカルボン酸成分を上記溶剤に溶解させた溶液を攪拌しながら、0〜120℃、好ましくは5〜80℃の範囲で1〜72時間撹拌することでポリアミド酸を含む溶液が得られる。また上記(2)の製造方法では、ジアミン成分を上記溶剤に溶解させた溶液を攪拌しながら、テトラカルボン酸成分を徐々に添加し、0〜120℃、好ましくは5〜80℃の範囲で1〜72時間撹拌することでポリアミド酸を含む溶液が得られる。
得られるポリアミド酸溶液中のポリアミド酸の濃度は、ポリアミド酸組成物として使用する観点から、通常ポリアミド酸溶液中の1〜50質量%であり、好ましくは3〜35質量%、より好ましくは10〜30質量%の範囲である。
【0088】
ポリアミド酸組成物は、上記のようにして得られたポリアミド酸を含む。このポリアミド酸組成物を用いても、本発明に係るポリイミド樹脂を得ることができる。ポリアミド酸組成物は、特にポリイミドフィルムの作製に好適に用いられる。
ポリアミド酸組成物は、効率よくイミド化を進行させる観点から、更にイミド化触媒及び脱水触媒を含むことが好ましい。イミド化触媒としては、沸点が40℃以上180℃以下であるイミド化触媒であればよく、沸点が180℃以下のアミン化合物が好ましいものとして挙げられる。沸点が180℃以下のイミド化触媒であれば、フィルム形成後、高温での乾燥時に該フィルムが着色し、外観が損なわれるおそれがない。また、沸点が40℃以上のイミド化触媒であれば、十分にイミド化が進行する前に揮発する可能性を回避できる。
イミド化触媒として好適に用いられるアミン化合物としては、ピリジン又はピコリンが挙げられる。上記のイミド化触媒は単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
脱水触媒としては、無水酢酸、プロピオン酸無水物、n−酪酸無水物、安息香酸無水物、トリフルオロ酢酸無水物等の酸無水物;ジシクロヘキシルカルボジイミド等のカルボジイミド化合物;等を挙げることができる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0089】
ポリアミド酸組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、酸化防止剤、光安定剤、界面活性剤、難燃剤、可塑剤等の添加剤を含有していてもよい。
【0090】
上記ポリアミド酸組成物を加熱、脱水閉環することにより、本発明に係るポリイミド樹脂を得ることができる。
加熱温度は通常100〜400℃であり、好ましくは200〜350℃、より好ましくは250〜300℃の範囲から選択することができる。また、加熱時間は、通常1分〜6時間であり、好ましくは5分〜2時間、より好ましくは15分〜1時間である。
加熱雰囲気は、空気ガス、窒素ガス、酸素ガス、水素ガス、窒素/水素混合ガス等が挙げられるが、得られるポリイミド樹脂の着色を抑えるためには、酸素濃度が100ppm以下の窒素ガス、水素濃度が0.5%以下含む窒素/水素混合ガスが好ましい。
【0091】
ポリアミド酸組成物を用いてポリイミドフィルムを作製する方法としては、例えば、ガラス基板等にポリアミド酸組成物を塗布した後、上記条件下で加熱乾燥・脱水閉環し、次いで基板から剥離することにより得られる。ポリアミド酸組成物の塗布方法には特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。
ポリアミド酸組成物を用いて作製されるポリイミドフィルムの膜厚は、通常0.1〜500μmであり、好ましくは1〜250μm、より好ましくは5〜100μm、更に好ましくは10〜50μmである。
【0092】
(3)架橋剤:
本発明に係る架橋剤としては、多官能架橋性化合物である、分子内に2以上のオキサゾリル基(オキサゾリン環)を有する多官能オキサゾリン化合物を用いる。この場合、多官能オキサゾリン化合物のオキサゾリル基が、ポリイミド樹脂のカルボキシル基との間で反応して、三次元的な架橋(アミドエステル化)が進行し、フィルムの高透明性を維持しつつ、表面硬度といった機械物性を向上させることができる。
【0093】
多官能オキサゾリン化合物としては、2以上のオキサゾリル基を有する各種の多官能オキサゾリン化合物を用いることができるが、なかでも、ベンゼン環骨格を含み、当該ベンゼン環骨格が少なくとも2つオキサゾリル基有する多官能オキサゾリン化合物が好ましい。
【0094】
多官能オキサゾリン化合物の具体例としては、1,3−ビス(4,5−ジヒドロ−2−オキサゾリル)ベンゼン、1,4−ビス(4,5−ジヒドロ−2−オキサゾリル)ベンゼン、2,2’−ビス(2−オキサゾリン)、日本触媒社製のK−2010E、K−2020E、K−2030E、2,6−ビス(4−イソプロピル−2−オキサゾリン−2−イル)ピリジン、2,6−ビス(4−フェニル−2−オキサゾリン−2−イル)ピリジン、2,2’−イソプロピリデンビス(4−フェニル−2−オキサゾリン)、2,2’−イソプロピリデンビス(4−ターシャルブチル−2−オキサゾリン)などが挙げられる。これらの多官能オキサゾリン化合物は、単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0095】
架橋剤中のオキサゾリル基と、ポリイミド樹脂中のカルボキシル基とのモル比(オキサゾリル基:カルボキシル基)は1:4〜1:1であることが好ましく、1:2〜1:1であることがより好ましい。モル比が1:4〜1:1であることで、良好な透明性及び高い硬度(表面硬度)有することができる。
【0096】
本発明の樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、種々の添加剤を含有していてもよい。例えば、酸化防止剤、光安定剤、界面活性剤、難燃剤、可塑剤、前記ポリイミド樹脂以外の高分子化合物等が挙げられる。
また、本発明の樹脂組成物の調製方法には特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。
【0097】
また、本発明の樹脂組成物の固形分濃度は、後述するポリイミドフィルムや積層体を形成する際の作業性等に応じて適宜選択することができ、有機溶剤を添加することにより該組成物の固形分濃度や粘度を調整してもよい。該有機溶剤は、ポリイミド樹脂を溶解させることができるものであれば特に限定されない。
【0098】
[ポリイミドフィルム]
本発明のポリイミドフィルムは、本発明の前記ポリイミド樹脂組成物中の前記ポリイミドが前記架橋剤により架橋されてなる。本発明のポリイミドフィルムは良好な透明性及び高い硬度(表面硬度)を有する。
【0099】
本発明の第2のポリイミドフィルムの作製方法については特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。例えば、有機溶剤を含有する本発明のポリイミド樹脂組成物をフィルム状に塗布又は成形した後、100〜400℃で1〜360分間保持して該有機溶剤を揮発させ、前記ポリイミドを前記架橋剤により架橋させる方法等が挙げられる。また、前述のポリアミド酸組成物を用いてポリイミドフィルムを作製してもよい。
【0100】
本発明の第2のポリイミドフィルムの厚みは用途等に応じて適宜選択することができるが、通常0.1〜500μmであり、好ましくは1〜250μm、より好ましくは5〜100μm、更に好ましくは10〜50μmの範囲である。
【0101】
本発明では、厚み30μmにおける全光線透過率が好ましくは85%以上のポリイミドフィルムとすることができる。該全光線透過率は88%以上であることがより好ましく、89%以上であることが更に好ましい。
表面硬度は、H以上であることが好ましく、2H以上であることがより好ましい。
また、黄色度(YI)は、11以下であることが好ましく、
3以下であることがより好ましい。
さらに、良好な耐溶剤性を有していることが好ましく、例えば、N,N−ジメチルアセトアミドのような有機溶媒に対して実質的に不溶であることが好ましい。
ポリイミドフィルムの全光線透過率、硬度、YI、耐溶剤性は、具体的には実施例に記載の方法で測定することができる。
【0102】
[積層体]
本発明の積層体は、基材上に、本発明の前記ポリイミド樹脂組成物中の前記ポリイミドが前記架橋剤により架橋されてなる架橋ポリイミド層が形成されてなる。
本発明の積層体の架橋ポリイミド層は良好な透明性及び高い硬度(表面硬度)を有する。 本発明の積層体は架橋ポリイミド層を少なくとも1層有していればよく、2層以上有していてもよい。
【0103】
本発明の積層体を構成する基材は、プラスチックフィルム、シリコンウェハー、金属箔及びガラスから選ばれる。
プラスチックフィルムを構成する樹脂としては、例えば、エチレン、プロピレン、イソブテン等の単独重合体又は共重合体等のポリオレフィン、環状ポリオレフィン等の非晶質ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、共重合ナイロン等のポリアミド、ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体部分加水分解物(EVOH)、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリアリレート、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリ乳酸等の生分解性樹脂等が挙げられる。これらのうち、耐熱性及び寸法安定性の観点から、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリカーボネートが好ましい。
金属箔を構成する金属としては、導電性を有するものであれば特に制限はなく、例えば、金、銀、銅、鉄、ニッケルが挙げられる。これらのうち、銀又は銅が好ましく、銅がより好ましい。
【0104】
本発明の積層体の製造方法には特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。
本発明の積層体の製造方法としては、本発明のポリイミド樹脂組成物溶液を公知の方法で塗布し、100〜400℃で1〜360分間保持して該有機溶剤を揮発させ、前記ポリイミドを前記架橋剤により架橋させる方法等が挙げられる。
【0105】
基材の厚みは、積層体の用途等に応じて適宜選択することができるが、好ましくは0.1〜500μm、より好ましくは1〜250μmの範囲である。
【0106】
本発明の第1の積層体を構成するポリイミド樹脂組成物層の厚みは、積層体の用途等に応じて適宜選択することができるが、好ましくは0.5〜50μm、より好ましくは1〜30μmの範囲である。なお、積層体がポリイミド樹脂組成物層を2層以上有する場合には、ポリイミド樹脂組成物層の厚みとは、各層の合計の厚みを意味する。
【0107】
本発明の第2の積層体を構成する架橋ポリイミド層の厚みは、積層体の用途等に応じて適宜選択することができるが、好ましくは1〜250μm、より好ましくは5〜100μmの範囲である。なお、積層体が架橋ポリイミド層を2層以上有する場合には、架橋ポリイミド層の厚みとは、各層の合計の厚みを意味する。
【0108】
本発明のポリイミドフィルムは、カラーフィルター、フレキシブルディスプレイ、半導体部品、光学部材等の各種部材用のフィルムとして好適に用いられる。特に、本発明の積層体は、フレキシブルディスプレイ用として好適に用いられる。
【実施例】
【0109】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【0110】
実施例および比較例で得たポリイミドフィルムの評価は以下のように行った。
(1)全光線透過率、イエローインデックス(YI)
日本電色工業株式会社製の色彩・濁度同時測定器(COH400)を用いて測定した。
(2)鉛筆硬度
鉛筆引っかき硬度試験機を用い、試験用鉛筆は,一般財団法人日本塗料検査協会検定の鉛筆引っかき値用鉛筆を用いた。
(3)耐有機溶剤性
50mLの三角フラスコへポリイミドフィルム0.1gとN,N−ジメチルアセトアミドを20mL入れ、マグネチックスターラーで24時間攪拌し耐有機溶剤性を評価した。ポリイミドフィルムが溶解しなかった場合を“Good”とし、溶解した場合を“NG”として表1に示した。
【0111】
(1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物の合成)
内容積5リットルのハステロイ製(HC22)オートクレーブにピロメリット酸552g、活性炭にロジウムを担持させた触媒(エヌ・イーケムキャット株式会社(N.E.Chemcat Corporation)製)200g、水1656gを仕込み、攪拌をしながら反応器内を窒素ガスで置換した。次に水素ガスで反応器内を置換し、反応器の水素圧を5.0MPaとして60℃まで昇温した。水素圧を5.0MPaに保ちながら2時間反応させた。反応器内の水素ガスを窒素ガスで置換し、反応液をオートクレーブより抜き出し、この反応液を熱時濾過して触媒を分離した。濾過液をロータリーエバポレーターで減圧下に水を蒸発させて濃縮し、結晶を析出させた。析出した結晶を室温で固液分離し、乾燥して1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸481g(収率85.0%)を得た。
続いて、得られた1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸450gと無水酢酸4000gとを、5リットルのガラス製セパラブルフラスコ(ジムロート冷却管付)に仕込み、攪拌しながら反応器内を窒素ガスで置換した。窒素ガス雰囲気下で溶媒の還流温度まで昇温し、10分間溶媒を還流させた。攪拌しながら室温まで冷却し、結晶を析出させた。析出した結晶を固液分離し、乾燥して一次結晶を得た。更に分離母液をロータリーエバポレーターで減圧下に濃縮し、結晶を析出させた。この結晶を固液分離し、乾燥して二次結晶を得た。一次結晶、二次結晶を合わせて1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物375gが得られた(無水化の収率96.6%)。
【0112】
(ポリイミド樹脂溶液Aの作製)
温度計、撹拌器、窒素導入管、側管付き滴下ロート、ディーンスターク、冷却管を備えた300mL5つ口フラスコに、窒素気流下、3,5−ジアミノ安息香酸17.9g(0.118モル)と、溶剤としてγ―ブチロラクトン51.2gおよびN,N−ジメチルアセトアミド15.2gを仕込んで溶解させた後、先に合成した1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物26.4g(0.118モル)およびイミド化触媒としてトリエチルアミン0.5g(0.005モル)を一括で添加した。滴下終了後、180℃に昇温し、随時留出液を留去させながら5時間還流を行い、反応終了とし、内温が100℃になるまで空冷した後、希釈溶剤としてN,N−ジメチルアセトアミド93.6gを加え、攪拌しながら冷却し、固形分濃度20重量%のポリイミド樹脂溶液Aを得た。
【0113】
(ポリイミド樹脂溶液Bの作製)
温度計、撹拌器、窒素導入管、側管付き滴下ロート、ディーンスターク、冷却管を備えた500mL5つ口フラスコに、窒素気流下、3,5−ジアミノ安息香酸8.2g(0.054モル)、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル11.5g(0.054モル)と、溶剤としてγ―ブチロラクトン52.7gおよびN,N−ジメチルアセトアミド13.2gを仕込んで溶解させた後、先に合成した1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物25.3g(0.108モル)およびイミド化触媒としてトリエチルアミン0.5g(0.005モル)を一括で添加した。滴下終了後、180℃に昇温し、随時留出液を留去させながら5時間還流を行い、反応終了とし、内温が100℃になるまで空冷した後、希釈溶剤としてN,N−ジメチルアセトアミド94.2gを加え、攪拌しながら冷却し、固形分濃度20重量%のポリイミド樹脂溶液Bを得た。
【0114】
(ポリイミド樹脂溶液Cの作製)
温度計、撹拌器、窒素導入管、側管付き滴下ロート、ディーンスターク、冷却管を備えた500mL5つ口フラスコに、窒素気流下、3,5−ジアミノ安息香酸13.0g(0.086モル)、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル6.9g(0.021モル)と、溶剤としてγ―ブチロラクトン42.9gおよびN,N−ジメチルアセトアミド10.7gを仕込んで溶解させた後、先に合成した1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物24.0g(0.107モル)およびイミド化触媒としてトリエチルアミン5g(0.05モル)を一括で添加した。滴下終了後、180℃に昇温し、随時留出液を留去させながら5時間還流を行い、反応終了とし、内温が100℃になるまで空冷した後、希釈溶剤としてN,N−ジメチルアセトアミド106.4gを加え、攪拌しながら冷却し、固形分濃度20重量%のポリイミド樹脂溶液Cを得た。
【0115】
<実施例1>
ポリイミド樹脂溶液A200g中に、架橋剤としての1,3−ビス(4,5−ジヒドロ−2−オキサゾリル)ベンゼンを12.8g(0.059モル)添加し、室温で1時間攪拌後、架橋剤とポリイミド樹脂とを含むポリイミド樹脂組成物を得た。架橋剤中のオキサゾリル基と、ポリイミド樹脂中のカルボキシル基とのモル比は1:1であった。
続いてガラス板上へ、得られたポリイミド樹脂組成物をバーコーターにて塗布し、ホットプレートで100℃、60分間保持し、溶媒を揮発させることで自己支持性を有する無色透明な一次乾燥フィルムを得た。このフィルムをステンレス枠に固定し、熱風乾燥機中250℃で2時間加熱し溶媒を蒸発させ、厚み50μmのフィルムを得た。
得られたフィルムに対して既述の評価を行った。結果を表1に示す。
【0116】
<実施例2>
ポリイミド樹脂溶液A200g中に、架橋剤としての1,3−ビス(4,5−ジヒドロ−2−オキサゾリル)ベンゼンを10.0g(0.046モル)添加した以外は、実施例1と同様の方法で厚み50μmのポリイミドフィルムを得た。なお、架橋剤中のオキサゾリル基と、ポリイミド樹脂中のカルボキシル基とのモル比は1.0:1.3であった。
得られたフィルムに対して既述の評価を行った。結果を表1に示す。
【0117】
<実施例3>
ポリイミド樹脂溶液A200g中に、架橋剤としての1,3−ビス(4,5−ジヒドロ−2−オキサゾリル)ベンゼンを8.2g(0.038モル)添加した以外は、実施例1と同様の方法で厚み50μmのポリイミドフィルムを得た。なお、架橋剤中のオキサゾリル基と、ポリイミド樹脂中のカルボキシル基とのモル比は1.0:1.6であった。
得られたフィルムに対して既述の評価を行った。結果を表1に示す。
【0118】
<実施例4>
ポリイミド樹脂溶液B200g中に、架橋剤としての1,3−ビス(4,5−ジヒドロ−2−オキサゾリル)ベンゼンを5.8g(0.027モル)添加し、室温で1時間攪拌後、架橋剤とポリイミド樹脂とを含むポリイミド樹脂組成物を得た。架橋剤中のオキサゾリル基と、ポリイミド樹脂中のカルボキシル基とのモル比は1:1であった。
続いてガラス板上へ、得られたポリイミド樹脂組成物をバーコーターにて塗布し、ホットプレートで100℃、60分間保持し、溶媒を揮発させることで自己支持性を有する無色透明な一次乾燥フィルムを得た。このフィルムをステンレス枠に固定し、熱風乾燥機中250℃で2時間加熱し溶媒を蒸発させ、厚み50μmのフィルムを得た。
得られたフィルムに対して既述の評価を行った。結果を表1に示す。
【0119】
<実施例5>
ポリイミド樹脂溶液C200gを含む溶液中に、架橋剤1,3−ビス(4,5−ジヒドロ−2−オキサゾリル)ベンゼンを9.3g(0.045モル)添加し、室温で1時間攪拌後、架橋剤とポリイミド樹脂を含むポリイミド樹脂組成物を得た。架橋剤中のオキサゾリル基と、ポリイミド樹脂中のカルボキシル基とのモル比は1:1であった。
続いてガラス板上へ、得られたポリイミド樹脂組成物をバーコーターにて塗布し、ホットプレートで100℃、60分間保持し、溶媒を揮発させることで自己支持性を有する無色透明な一次乾燥フィルムを得た。このフィルムをステンレス枠に固定し、熱風乾燥機中250℃で2時間加熱し溶媒を蒸発させ、厚み50μmのフィルムを得た。
得られたフィルムに対して既述の評価を行った。結果を表1に示す。
【0120】
<比較例1>
ガラス板上へ、ポリイミド樹脂溶液Aを塗布し、ホットプレートで100℃、60分間保持し、溶媒を揮発させることで自己支持性を有する無色透明な一次乾燥フィルムを得た。このフィルムをステンレス枠に固定し、熱風乾燥機中250℃で2時間加熱し溶媒を蒸発させ、厚み50μmのフィルムを得た。
得られたフィルムに対して既述の評価を行った。結果を表1に示す。
【0121】
<比較例2>
ガラス板上へ、ポリイミド樹脂溶液Bを塗布し、ホットプレートで100℃、60分間保持し、溶媒を揮発させることで自己支持性を有する無色透明な一次乾燥フィルムを得た。このフィルムをステンレス枠に固定し、熱風乾燥機中250℃で2時間加熱し溶媒を蒸発させ、厚み50μmのフィルムを得た。
得られたフィルムに対して既述の評価を行った。結果を表1に示す。
【0122】
<比較例3>
ガラス板上へ、ポリイミド樹脂溶液Cを塗布し、ホットプレートで100℃、60分間保持し、溶媒を揮発させることで自己支持性を有する無色透明な一次乾燥フィルムを得た。このフィルムをステンレス枠に固定し、熱風乾燥機中250℃で2時間加熱し溶媒を蒸発させ、厚み50μmのフィルムを得た。
得られたフィルムに対して既述の評価を行った。結果を表1に示す。
【0123】
【表1】