特許第6451520号(P6451520)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6451520
(24)【登録日】2018年12月21日
(45)【発行日】2019年1月16日
(54)【発明の名称】金枠の位置決め装置及び位置決め方法
(51)【国際特許分類】
   B65G 47/29 20060101AFI20190107BHJP
【FI】
   B65G47/29 Z
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-118451(P2015-118451)
(22)【出願日】2015年6月11日
(65)【公開番号】特開2017-1839(P2017-1839A)
(43)【公開日】2017年1月5日
【審査請求日】2017年8月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】特許業務法人なじま特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 泰嗣
【審査官】 福島 和幸
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭51−054400(JP,Y1)
【文献】 実開昭56−055219(JP,U)
【文献】 実開昭60−133818(JP,U)
【文献】 特開2015−73996(JP,A)
【文献】 特開平2−112870(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 47/22−47/32
B65G 47/88
B65G 43/00−43/10
B22C 11/00−25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金枠が搬送されるコンベヤの側方に、金枠の側面に形成された凹部に差し込まれる楔状の先端部を有し、一次的な位置決めを行なう位置決めシリンダを配置するとともに、このコンベヤの下方に、上昇しながら金枠の位置決めを行なうリフトテーブルを配置し、このリフトテーブルの上昇途中で前記位置決めシリンダを後退させたうえ、更にリフトテーブルを上昇端まで上昇させてより高精度の二次的な位置決めを行なう構造としたことを特徴とする金枠の位置決め装置。
【請求項2】
前記リフトテーブルの上部に、位置決め用のピンまたはブッシュを設け、金枠の下部に、前記のピンまたはブッシュに係合する位置決め用のブッシュまたはピンを設けたことを特徴とする請求項1記載の金枠の位置決め装置。
【請求項3】
金枠が搬送されるコンベヤの側方に配置された位置決めシリンダの楔状の先端部を、金枠の側面に形成された凹部に差し込むことにより一次的な位置決めを行なったうえ、コンベヤの下方に配置されたリフトテーブルを上昇させ、その上昇途中で前記位置決めシリンダを後退させたうえ、更にリフトテーブルを上昇端まで上昇させてより高精度の二次的な位置決めを行なうことを特徴とする金枠の位置決め方法。
【請求項4】
二次的な位置決めを、リフトテーブルの上部に設けた位置決め用のピンまたはブッシュを、金枠の下部に設けたブッシュまたはピンに係合させることにより行うことを特徴とする請求項3に記載の金枠の位置決め方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンベヤ上を前後が密接した状態で搬送されてくる金枠を、所定位置で精度よく位置決めすることができる金枠の位置決め装置及び金枠の位置決め方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動鋳造設備の造型ラインにおいては、コンベヤ上に置かれた多数の金枠をプッシャによって1金枠分ずつ間欠的に送りながら、コンベヤの途中位置の鋳型加工ステーション等において必要な加工を行っている。しかし金枠の熱膨張その他の原因によって、コンベヤ上の金枠の停止位置にバラツキが生じることが避けられない。そこで従来から、鋳型加工ステーション等に金枠の位置決め装置を設け、位置決めを行なっている。
【0003】
例えば特許文献1には、コンベヤの側方に楔状の先端部を有する位置決めシリンダを配置し、金枠の側面に形成された凹部に楔状の先端部を差し込むことにより、位置決めを行なう装置が開示されている。このような位置決め装置を用いれば、プッシャによる金枠の移動量が送り足らずであっても、逆に送り過ぎであっても、位置決めが可能となるはずである。
【0004】
しかし実際には、重量の大きい金枠を位置決め装置によって正規位置まで強制的に移動させることとなるため、位置決め装置側の楔状の先端部と、それが嵌り合う金枠側の凹部が次第に摩耗することが避けられない。このため、高い位置決め精度を維持するためには、位置決め装置側の楔状の先端部と、それが嵌り合う金枠側の凹部とのメンテナンス作業や、交換作業を頻繁に行うことが必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公昭51−54400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って本発明の目的は上記した従来の問題点を解決し、位置決め装置側の楔状の先端部と、それが嵌り合う金枠側の凹部のメンテナンス作業や交換作業を頻繁に行わなくても、金枠の位置決め精度を高精度に維持することができる金枠の位置決め装置及び位置決め方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するためになされた本発明の金枠の位置決め装置は、金枠が搬送されるコンベヤの側方に、金枠の側面に形成された凹部に差し込まれる楔状の先端部を有し、一次的な位置決めを行なう位置決めシリンダを配置するとともに、このコンベヤの下方に、上昇しながら金枠の位置決めを行なうリフトテーブルを配置し、このリフトテーブルの上昇途中で前記位置決めシリンダを後退させたうえ、更にリフトテーブルを上昇端まで上昇させてより高精度の二次的な位置決めを行なう構造としたことを特徴とするものである。
【0008】
請求項2の発明は請求項1の発明において、前記リフトテーブルの上部に、位置決め用のピンまたはブッシュを設け、金枠の下部に、前記のピンまたはブッシュに係合する位置決め用のブッシュまたはピンを設けたことを特徴とするものである。
【0009】
また本発明の金枠の位置決め方法は、金枠が搬送されるコンベヤの側方に配置された位置決めシリンダの楔状の先端部を、金枠の側面に形成された凹部に差し込むことにより一次的な位置決めを行なったうえ、コンベヤの下方に配置されたリフトテーブルを上昇させながら、より高精度の二次的な位置決めを行なうことを特徴とするものである。
【0011】
請求項4の発明は請求項3の発明において、二次的な位置決めを、リフトテーブルの上部に設けた位置決め用のピンまたはブッシュを、金枠の下部に設けたブッシュまたはピンに係合させることにより行うことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、コンベヤ上を搬送される金枠に対して位置決めシリンダによって一次的な位置決めを行なった後に、リフトテーブルを上昇させ、その上昇途中で前記位置決めシリンダを後退させたうえ、更にリフトテーブルを上昇端まで上昇させてより高精度の二次的な位置決めを行なうので、位置決め装置側の楔状の先端部と金枠側の凹部が摩耗してきた場合にも、高精度の二次的な位置決めが可能である。このため、メンテナンス作業や交換作業を頻繁に行うことなく、高い位置決め精度を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1a】金枠搬送ラインを示す平面図である。
図1b】金枠搬送ラインを示す正面図である。
図2a】一次位置決め装置による金枠の位置決め開始時の状態を示す平面図である。
図2b】一次位置決め装置による金枠の位置決め完了時の状態を示す平面図である。
図3a】リフトテーブルが下降端にある状態を示す正面図である。
図3b】リフトテーブルが下降端にある状態を示す側面図である。
図4a】リフトテーブルが上昇途中位置にある状態を示す正面図である。
図4b】リフトテーブルが上昇途中位置にある状態を示す側面図である。
図5a】リフトテーブルが上昇端にある状態を示す正面図である。
図5b】リフトテーブルが上昇端にある状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に図面を参照しつつ、本発明の実施形態を説明する。
図1aは金枠搬送ライン1を示す平面図、図1bはその正面図である。金枠搬送ライン1は、コンベヤ7上に複数個直列に並んだ金枠2を1枠分ずつ送るために、コンベヤ7の後端に設けられたプッシャ3と、送られてくる金枠2の慣性力を吸収するためにコンベヤ7の前端に設けられたクッション4と、プッシャ3の直後位置に金枠2を搬入するトラバーサ5と、クッション4の直前位置から金枠2を搬出するトラバーサ6とを有する。コンベヤ7は好ましくはローラコンベヤであり、これらのトラバーサ5とトラバーサ6との間に位置している。
【0015】
コンベヤ7のトラバーサ5の直後位置と、トラバーサ6の直前位置には、一次的な位置決め装置8が設けられている。またコンベヤ7の途中位置には、1個または複数のガス穴明け装置のような鋳型加工ステーション9が設けられる。本実施形態では4か所に鋳型加工ステーション9が設けられており、各鋳型加工ステーション9には、二次的な位置決め装置20がそれぞれ設けられている。
【0016】
金枠2はプッシャ3によって1枠分ずつ図1aの右方向に送られるのであるが、図1bに記載したように、コンベヤ7上の金枠2、2の間には、搬入側金枠隙間X、熱膨張代金枠隙間Y、搬出側金枠隙間Z等が存在するため、各鋳型加工ステーション9において正確な鋳型加工を行なうためには、コンベヤ7上における金枠2の位置決めが必要となる。
【0017】
一次的な位置決め装置8は従来と同様、楔状の先端部11を有する位置決めシリンダ19からなり、図2a、図2bに示すように、楔状の先端部11を金枠2の側面に形成された凹部12に差し込んで位置決めを行なう。位置決めシリンダ19は、コンベヤ7の両側方に設けられている。
【0018】
図2aは金枠2が送り足らずの場合を示し、位置決めシリンダ19の楔状の先端部11を金枠2の側面に形成された凹部12に差し込むことにより、図2bに示す正規の位置まで金枠2を強制的に移動させて位置決めを行なっている。この際に楔状の先端部11と凹部12とがこすられるため、熱処理によって硬度アップを図っても、これらの部分が次第に摩耗して位置決め精度が低下して行くことは避けられない。
【0019】
しかし本発明では、各鋳型加工ステーション9において高い寸法精度が必要なガス穴明け等の鋳型加工を行なうため、以下に説明する二次的な位置決め装置20が設けられている。
【0020】
二次的な位置決め装置20は図3以下に示すように、コンベヤ7の下方に位置決めリフタ10の昇降シリンダ16によって昇降されるリフトテーブル15を設けたものである。リフトテーブル15はその上部の前後端部に位置決め用のブッシュ14を取付けたものである。また金枠2の下部の前後端部には、リフトテーブル15のブッシュ14に係合する位置決め用のピン13が設けられている。ピン13は先端にテーパ部18を備えている。
【0021】
図3a、図3bはリフトテーブル15が下降端にある状態を示している。この状態から位置決めリフタ10によってリフトテーブル15を上昇させると、図4のようにブッシュ14がピン13と係合し、ピン13のテーパ部18によって位置決めが行われる。そしてリフトテーブル15が図5に示す上昇端に達するまでに、二次的な位置決めが完了する。
【0022】
なお本実施形態では、上昇端におけるリフトテーブル15の横ブレを防止するため、リフトテーブル15から垂下する支柱21の下端部に横ブレ防止ストッパ17が設けられている。この横ブレ防止ストッパ17は図5bに示すように上昇端において位置決めリフタ10の上部フレーム22の下面に当接し、リフトテーブル15の横ブレを防止する。
【0023】
このように構成された本発明の金枠の位置決め装置は、コンベヤ7上をプッシャ3によって送られてくる金枠2を一次的な位置決め装置8によって位置決めした後に、リフトテーブル15を上昇させながらより高精度の二次的な位置決めを行なう。この二次的な位置決めの際には、金枠2の移動量はごく僅かであるため、ピン13やブッシュ14に大きな負荷が加わることがない。従ってピン13やブッシュ14の早期摩耗を防止することができる。
【0024】
なお、二次的な位置決めを行なう際に位置決めシリンダ19の楔状の先端部11が金枠2の側面に形成された凹部12に係合したままであると、金枠2の位置決めが行えない。従って、リフトテーブル15のブッシュ14が図4に示すようにピン13のテーパ部18の位置まで上昇したことを図示しない検出器で検出したうえ、位置決めシリンダ19の楔状の先端部11を後退させ、その後、さらにリフトテーブル15を図5に示す上昇端まで上昇させて、より高精度の二次的な位置決めを行なうものとする。
【0025】
上記の実施形態では、リフトテーブル15側にブッシュ14を設け、金枠2側にピン13を設けた。しかし逆に、リフトテーブル15側にピン13を設け、金枠2側にブッシュ14を設けることも可能である。
【0026】
以上に説明したように、本発明によれば、一次的な位置決め装置8側の楔状の先端部11や金枠2側の凹部12のメンテナンス作業や交換作業を頻繁に行わなくても、金枠2の位置決め精度を高精度に維持することができる利点がある。
【符号の説明】
【0027】
1 金枠搬送ライン
2 金枠
3 プッシャ
4 クッション
5 トラバーサ
6 トラバーサ
7 コンベヤ
8 一次的な位置決め装置
9 鋳型加工ステーション
10 位置決めリフタ
11 先端部
12 凹部
13 ピン
14 ブッシュ
15 リフトテーブル
16 昇降シリンダ
17 横ブレ防止ストッパ
18 テーパ部
19 位置決めシリンダ
20 二次的な位置決め装置
21 支柱
22 上部フレーム
図1a
図1b
図2a
図2b
図3a
図3b
図4a
図4b
図5a
図5b