(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基材と、前記基材の表面に貼着された表皮材と、を有し、展開膨張するエアバッグにより押圧された際の破断の起点となるテアラインが前記基材の裏面に形成されている自動車用エアバッグドアにおいて、
前記表皮材は、前記基材の表面に貼着された立体編クッション層と、前記立体編クッション層の表面に貼着された表皮と、からなり、
前記基材の表面には、少なくとも前記テアラインに隣接して突起が形成されているとともに、複数の前記突起が前記基材の表面全体に形成されている、
自動車用エアバッグドア。
前記ダブルラッセル編物は、前記基材の表面に接着剤により貼着される裏編地層、前記表皮の裏面が貼着される表編地層、及び前記裏編地層と前記表編地層とを連結する連結層からなり、
前記裏編地層の単位面積当たりの質量が150g/m2以上であり、300g/m2以下に設定されている、
請求項3に記載の自動車用エアバッグドア。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車には、助手席の乗員を保護する手段として助手席用エアバッグ装置が搭載されている(例えば特許文献1参照)。この助手席用エアバッグ装置では、自動車の助手席の前方に配置されたインストルメントパネルの一部がエアバッグドアとして用いられる。エアバッグドアは、心材としての基材と、基材の表面に貼着された表皮材とを有している。表皮材は、基材の表面に貼着されるクッション層と同クッション層の表面に貼着された表皮とを有する。また、表皮は、基布層と同基布層の表面に貼着された表皮層とを有する。
【0003】
こうしたエアバッグドアにおいては、エアバッグドアに弾力性を付与して触感を向上させるために、上記クッション層として例えばダブルラッセル編物などからなる立体編クッション層が用いられているものがある。
【0004】
また、エアバッグドアには、その開放のための破断を惹起させるために、複数の短い開裂溝、または単一の長い開裂溝からなるテアライン(破断予定線)が設けられている。このテアラインにより、エアバッグドアの円滑な開放、及びエアバッグの円滑な展開膨張が図られる。テアラインは、エアバッグドアの表面側から見えにくくするために、エアバッグドアの裏面側、例えば基材及びクッション層にそれぞれ形成される。またこれに加えて、表皮の裏面側にテアラインが形成されるものもある。
【0005】
こうした助手席用エアバッグ装置を備えた自動車においては、前面衝突などによって自動車に前方から衝撃が加わると、インフレータからエアバッグに対して膨張用ガスが供給されてエアバッグが展開膨張される。そして、そのエアバッグによってエアバッグドアが押圧されることにより、基材及び表皮材が各テアラインに沿って破断されて、エアバッグドアが開かれる。そして、エアバッグが、上記エアバッグドアの開放部分を通ってインストルメントパネルと助手席に着座している乗員との間で展開膨張することにより、乗員に前方から加わる衝撃が緩和される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来のエアバッグドアの場合、基材のテアラインに沿って表皮材を破断させるために、表皮材のうち少なくともクッション層にテアラインが形成されている。そのため、少なくともクッション層に対してテアラインを形成する工程が必要となるとともに、基材のテアラインとクッション層のテアラインとが重ね合わされるように基材の表面に対してクッション層を貼着する工程が必要となる。その結果、工数が増加するなどの問題が生じる。
【0008】
本発明の目的は、表皮材の裏面にテアラインを形成しなくとも展開膨張するエアバッグにより押圧された際に基材のテアラインに沿って表皮材を容易に破断させることのできる自動車用エアバッグドアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための自動車用エアバッグドアは、基材と、前記基材の表面に貼着された表皮材と、を有し、展開膨張するエアバッグにより押圧された際の破断の起点となるテアラインが前記基材の裏面に形成されている。前記表皮材は、前記基材の表面に貼着された立体編クッション層と、前記立体編クッション層の表面に貼着された表皮と、からなり、前記基材の表面には、少なくとも前記テアラインに隣接して突起が形成されている。
【0010】
同構成によれば、膨脹展開するエアバッグにより基材が押圧され、テアラインを起点として同基材が破断される際に、少なくともテアラインに隣接して基材の表面に形成された突起が立体編クッション層の裏面に引っ掛かる。これにより、立体編クッション層、すなわち表皮材が基材から剥がれにくくなる。このため、表皮材に作用する引張り応力がテアラインに対応した部位に集中しやすくなり、表皮材がテアラインに沿って破断されやすくなる。
【0011】
上記自動車用エアバッグドアにおいて、複数の前記突起が前記基材の表面全体に形成されていることが好ましい。
同構成によれば、基材の表面全体に形成された複数の突起が表皮材の裏面に引っ掛かることにより、表皮材が基材から一層剥がれにくくなる。このため、基材から表皮材に対して作用する引張り応力を表皮材におけるテアラインに対応した部位に適切に集中させることができる。
【0012】
上記自動車用エアバッグドアにおいて、前記突起が前記テアラインに沿って形成されていることが好ましい。
同構成によれば、突起がテアラインに沿って形成されているため、表皮材が基材から剥がれることをテアラインの広い範囲にわたって抑制することができる。
【0013】
上記自動車用エアバッグドアにおいて、少なくとも一対の前記突起が前記テアラインを挟んだ両側にそれぞれ形成されていることが好ましい。
同構成によれば、少なくとも一対の突起がテアラインを挟んだ両側にそれぞれ形成されているため、表皮材が基材から剥がれることを、テアラインを挟んだ両側においてそれぞれ抑制することができる。このため、基材から表皮材に対して作用する引張り応力を表皮材におけるテアラインに対応した部位に適切に集中させることができる。
【0014】
上記自動車用エアバッグドアにおいて、前記立体編クッション層はダブルラッセル編物からなることが好ましい。
上記自動車用エアバッグ装置において、前記ダブルラッセル編物は、前記基材の表面に接着剤により貼着される裏編地層、前記表皮の裏面が貼着される表編地層、及び前記裏編地層と前記表編地層とを連結する連結層からなり、前記裏編地層の単位面積当たりの質量が150g/m
2以上であり、300g/m
2以下に設定されていることが好ましい。
【0015】
同構成によれば、裏編地層における空隙の割合が小さくされて裏編地層及び連結層への接着剤の染み出しが抑制される。したがって、立体編クッション層のクッション性(弾力性)が接着剤によって損なわれることを適切に抑制することができる。また、裏編地層の引張強度が過度に大きくなることが回避されることで裏編地層を円滑に破断させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、表皮材の裏面にテアラインを形成しなくとも展開膨張するエアバッグにより押圧された際に基材のテアラインに沿って表皮材を容易に破断させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、
図1〜
図10を参照して、一実施形態について説明する。なお、以降の説明では、自動車の前進方向を前方と記載し、それを基準に前、後、上、下、左、右を規定している。したがって、左右方向は、自動車の幅方向(車幅方向)と合致している。
【0019】
図1及び
図2に示すように、自動車の運転席及び助手席の前方には、車幅方向に延びるインストルメントパネル10が配置されている。
図2に示すように、自動車には、前方から衝撃が加わった場合に、助手席に着座している乗員P1の前方でエアバッグ62を展開膨張させて乗員P1を衝撃から保護する助手席用エアバッグ装置(以下、エアバッグ装置61)が設けられている。
【0020】
図4に示すように、エアバッグ装置61は、インストルメントパネル10のうち助手席の前方部分の一部に形成された自動車用エアバッグドア(以下、エアバッグドア50)と、そのエアバッグドア50の裏面側に設けられたエアバッグモジュールAMとを備えている。エアバッグドア50は、エアバッグ装置61の作動時に展開膨張するエアバッグ62によって押圧されて助手席側へ開き、エアバッグ62の展開を許容する開口51を画成する。
【0021】
<エアバッグドア50の基本構造について>
図4及び
図5(a)に示すように、エアバッグドア50は、心材としての基材11及び表皮材15を備えている。
【0022】
基材11は、例えばサーモプラスチックオレフィン(TPO)やポリプロピレンなどの樹脂材料からなり、射出成形法によって成形されている。基材11は、例えば2.5〜3.5mmの厚みを有している。
【0023】
図5(a)に示すように、表皮材15は、基材11の表面に接着剤により貼着される立体編クッション層20と、立体編クッション層20の表面に貼着された表皮30とを備えている。
【0024】
立体編クッション層20は、エアバッグドア50に必要なクッション性(弾力性)を付与して触感を向上させるために用いられている。立体編クッション層20は、ダブルラッセル編物などの立体編物からなり、基材11の表面に貼着されている。
【0025】
立体編クッション層20は、表編地層21、裏編地層22及び連結層24を備えており、ダブルラッセル編機などを用いて形成されている。表編地層21は、単一の糸によって構成され、平面的で規則正しい編目で形成されている。裏編地層22は、単一の糸によって構成され、平面的で規則正しい編目で形成されている。
【0026】
表編地層21及び裏編地層22を形成する糸としては、例えば、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、アクリル系繊維、ポリプロピレン系繊維などの合成繊維、綿、麻、ウールなどの天然繊維、キュプラレーヨン、リヨセルなどの再生繊維からなるものが用いられている。
【0027】
表編地層21及び裏編地層22の編地の編み組織は特に限定されず、例えば、平坦な組織(例えば、経編みの三原組織であるトリコット編、コード編、アトラス編)が挙げられる。そのほかにも、四角、六角などのメッシュ編地や、マーキゼット編地などが挙げられる。表編地層21及び裏編地層22の編組織の組合わせとしては、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0028】
連結層24は、表編地層21及び裏編地層22を連結糸23で連結することによって形成されている。連結糸23は、ポリトリメチレンテレフタレート繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリアミド繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリエステル系エラストマー繊維などによって形成されている。なお、繰り返しや長時間圧縮後のクッション性の耐久性を良好にするために、連結糸23の少なくとも一部に、ポリトリメチレンテレフタレート繊維を用いることが好ましい。また、繊維の断面形状については、クッション性の耐久性を良好にする観点からは、丸型断面が好ましい。さらに、連結糸23は、ずれ力の緩和の観点からモノフィラメント糸が好ましい。
【0029】
連結糸23は、表編地層21及び裏編地層22の編地中にループ状の編目を形成してもよい。また、連結糸23は、両編地層21,22に挿入状態やタック状態で引っ掛けられてもよい。なかでも、少なくとも2本の連結糸23が両編地層21,22を互いに逆方向の斜めに傾斜してクロス状(X状)又はトラス状に連結することが、立体編クッション層20の形態安定性を向上させ、良好なクッション性を得るうえで好ましい。トラスは、三角形を基本単位としてその集合体で構成する構造形式であり、連結糸23と表編地層21とによって、又は連結糸23と裏編地層22とによって略三角形状を形成する。この場合、クロス状についてもトラス状についても、連結糸23が、2本の糸によって構成されてもよいし、1本の同一の連結糸23が表編地層21及び裏編地層22で折り返され、見かけ上2本となっていてもよい。
【0030】
このような立体編クッション層20は、積層構造となっていないため、通気性、クッション性などの点で優れている。立体編クッション層20の厚みは、連結糸23の長さを調整することで変更可能である。本実施形態では、立体編クッション層20は2.5mm以上の厚みに形成されている。
【0031】
図6に示すように、立体編クッション層20の原反20Aは、その面に沿った方向の引張強度に関して異方性を有している。すなわち、原反20Aは、その面に沿った所定の方向R1において引張強度が最小とされる一方、同方向R1に対して直交する方向R2において引張強度が最大とされている。
【0032】
基材11及び表皮30の間の層(クッション層)を立体編クッション層20によって構成したのは、次の理由による。すなわち、クッション層が織物によって形成されたものに比べて立体編クッション層20、ひいては表皮30の伸縮性や柔軟性を高めることができる。また、立体編クッション層20に代えて、発泡ウレタンなどによりクッション層を形成した場合よりもクッション性能を高め、エアバッグドア50の触感を向上させることができる。さらに、立体編クッション層20が経編みされた原反により形成されれば、編地を安定させることができる。
【0033】
図5(a)に示すように、表皮30は、主にエアバッグドア50の質感向上、触感向上などを図る目的で設けられており、本実施形態では合皮によって構成されている。合皮は、基布層31と、その基布層31の表面に貼着された表皮層32とからなる二層構造をなしている。
【0034】
基布層31は、例えば、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維などの合成樹脂繊維の編物または織物からなり、その生地を加工することによって形成されている。
図7に示すように、基布層31の原反31Aは、その面に沿った方向の引張強度に関して異方性を有している。すなわち、原反31Aは、その面に沿った所定の方向R1において引張強度が最小とされる一方、同方向R1に対して直交する方向R2において引張強度が最大とされている。
【0035】
図5(a)に示すように、表皮層32は、エアバッグドア50の外表面(意匠面)を構成するものであり、例えばポリウレタンによって形成されていて、基布層31に接着されている。
【0036】
表皮30(基布層31及び表皮層32)は、0.3mm〜1.0mmの厚みを有していることが好ましい。上記厚みが0.3mmよりも小さいと、立体編クッション層20の表面に対して表皮30を貼着させる際の強度を確保することが難しく、1.0mmよりも大きいと、表皮30を好適に破断させることが難しいからである。なお、表皮30の厚みは0.4mm〜0.7mmであることがより好ましい。
【0037】
また、表皮30の厚みを上記の範囲内に設定することで、表皮30の破断荷重を従来よりも小さくすることができる。
基布層31と立体編クッション層20とは、それらの引張強度が最小となる方向R1が一致するように、向きを合わせられた状態で互いに貼着されている。従って、基布層31及び立体編クッション層20の引張強度は上記方向R1において最小となっている。
【0038】
<エアバッグモジュールAMの概略構成について>
図4に示すように、エアバッグドア50の裏面側には、一対の壁部41を備えてなるリテーナ40が設けられている。両壁部41は、前後方向に間隔をおいて互いに対向して配置されている。両壁部41には、エアバッグ62が折り畳まれた状態で保持されるとともに、膨張用ガスを発生してエアバッグ62に供給するインフレータ63が保持されている。これらのリテーナ40、エアバッグ62及びインフレータ63によってエアバッグモジュールAMが構成されている。
【0039】
前側の壁部41における表側の端部には、エアバッグドア50の裏面に沿って前方へ延びる延出部42と、ヒンジ部431を介して後方へ延びる前側ドア部43とが連結されている。また、後側の壁部41における表側の端部には、エアバッグドア50の裏面に沿って後方へ延びる延出部42と、ヒンジ部441を介して前方へ延びる後側ドア部44とが連結されている。
【0040】
図3及び
図4に示すように、前側ドア部43と後側ドア部44との間には、貫通溝47の第1溝471が車幅方向に沿って延びている。
なお、図示を省略するが、エアバッグ62及びインフレータ63の車幅方向についての両側には、上記壁部41と同様な壁部が形成されている。
図3に示すように、左側の上記壁部における表側の端部には、エアバッグドア50の裏面に沿って左方へ延びる延出部42と、ヒンジ部451を介して右方へ延びる左側ドア部45とが連結されている。また、右側の壁部における表側の端部には、エアバッグドア50の裏面に沿って右方へ延びる延出部42と、ヒンジ部461を介して左方へ延びる右側ドア部46とが連結されている。
【0041】
また、第1溝471の車幅方向についての両端には、V字状をなす第2溝472がそれぞれ貫通して形成されている。各第2溝472は、第1溝471の各端から車幅方向外側に向けて前後方向に離間するように延びている。第2溝472のうち前側の部分は、前側ドア部43と左側ドア部45及び右側ドア部46との境界に位置している。また、第2溝472のうち後側の部分は、後側ドア部44と左側ドア部45及び右側ドア部46との境界に位置している。
【0042】
また、第1溝471と第2溝472とのなす角度αはいずれも鈍角とされている。これは、後述する第1開裂溝121が車幅方向についての中央部を起点として外側に沿って開裂される力を好適に利用して、第2開裂溝122を円滑に破断させるためである。本実施形態では、上記角度αはいずれも135度に設定されている。
【0043】
上記構成のリテーナ40は、例えばサーモプラスチックオレフィン(TPO)からなり、射出成形法によって成形されている。また、
図5(a)に示すように、前側ドア部43及び後側ドア部44の各表面には、複数の突部432,442が形成されている。なお、同図においては、突部432,442が1つずつ示されている。また、各延出部42、左側ドア部45、及び右側ドア部46の各表面にも前側ドア部43及び後側ドア部44と同様な複数の突部(図示略)が形成されている。これら突部432,442がエアバッグドア50における基材11の裏面に対して振動溶着法等により固着されている。
【0044】
<テアラインTLについて>
図5(a)及び
図8に示すように、基材11の裏面にはテアラインTLが形成されている。
図5(a)に示すように、テアラインTLは、車幅方向に沿って延びる第1開裂溝121と、その第1開裂溝121の両端から車幅方向外側かつ斜め前方または斜め後方に延びてV字状をなす第2開裂溝122とからなり、リテーナ40の貫通溝47の表側に位置している。したがって、基材11における第1開裂溝121及び第2開裂溝122の形成された箇所では、形成されていない箇所よりも肉厚が小さく、強度が低くなっている。
図5(a)に示すように、第1開裂溝121は、表側ほど幅の狭くなる台形の断面を有している。本実施形態では、第1開裂溝121の表側の端部の幅が約1.0mmに設定されている。また、各第2開裂溝122の断面形状は第1開裂溝121と同様に設定されている。
【0045】
一方、本実施形態の表皮材15(立体編クッション層20、基布層31、及び表皮層32)には、開裂溝が形成されていない。
図8及び
図9に示すように、テアラインTLは、第1開裂溝121の延びる方向が、立体編クッション層20の引張強度が最も大きい方向R2に沿うように形成されている。
【0046】
上記テアラインTLは、エアバッグドア50の開放のために、展開及び膨張するエアバッグ62によって押圧されてエアバッグドア50が破断される際の破断の起点となる。これらのテアラインTLは、エアバッグドア50の円滑な開放、及びエアバッグ62の円滑な展開及び膨張を確保するために設けられている。
【0047】
さらに、本実施形態では、エアバッグドア50が、展開及び膨張するエアバッグ62によって押圧された場合、テアラインTLのうち第1開裂溝121が第2開裂溝122よりも先に破断されるように設定されている。
【0048】
次に、本実施形態の特徴部分について説明する。
図5(b)及び
図10に示すように、基材11の表面全体には、円錐形状の複数の突起13が形成されている。突起13の先端は丸みを帯びている。突起13は、0.1mm〜1.5mmの高さを有していることが好ましい。また、突起13の高さは0.1mm〜0.8mmであることがより好ましい。突起13の高さが1.5mmよりも大きいと、立体編クッション層20では突起13に起因した基材11の表面の凸凹形状を吸収することができず、表皮材15の表面に突起13に起因した凹凸形状が生じてしまい、エアバッグドア50の外観が損なわれるおそれがあるためである。また、突起13の高さが0.1mmよりも小さいと、突起13が立体編クッション層20の裏面に引っ掛かりにくくなり、後述する作用効果を奏しにくくなるためである。これらのことを考慮して、本実施形態では突起13の高さが0.15mmに設定されている。
【0049】
また本実施形態では、表編地層21の単位面積当たりの質量が50g/m
2以上であり、500g/m
2以下に設定されている。また、裏編地層22の単位面積当たりの質量が150g/m
2以上であり、300g/m
2以下に設定されている。これは、裏編地層22の単位面積当たりの質量が150g/m
2よりも小さいと、裏編地層22における空隙の割合が大きくなって裏編地層22及び連結層24へ接着剤が染み出しやすくなり、その接着剤によって立体編クッション層20のクッション性(弾力性)が損なわれるおそれがあるためである。また、裏編地層22の単位面積当たりの質量が300g/m
2よりも大きいと、裏編地層22の引張強度が過度に大きくなって裏編地層22を円滑に破断させることが難しくなるためである。
【0050】
次に、本実施形態の作用について説明する。
膨脹展開するエアバッグ62により基材11が押圧され、テアラインTLを起点として基材11が破断される際に、基材11の表面全体に形成された複数の突起13が立体編クッション層20の裏面に引っ掛かることにより、立体編クッション層20、すなわち表皮材15が基材11から剥がれにくくなる。このため、表皮材15に作用する引張り応力がテアラインTLに対応した部位に集中しやすくなり、表皮材15がテアラインTLに沿って破断されやすくなる。
【0051】
以上説明した本実施形態に係る自動車用エアバッグドアによれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)基材11の表面全体に複数の突起13を形成するようにした。
【0052】
こうした構成によれば、上記作用を奏することにより、表皮材15をテアラインTLに沿って破断させることができる。したがって、表皮材15の裏面にテアラインTLを形成しなくとも展開膨張するエアバッグ62により押圧された際に基材11のテアラインTLに沿って表皮材15を容易に破断させることができる。
【0053】
(2)裏編地層22の単位面積当たりの質量を150g/m
2以上であり、300g/m
2以下に設定した。
このため、裏編地層22における空隙の割合が小さくされて裏編地層22及び連結層24への接着剤の染み出しが抑制される。したがって、立体編クッション層20のクッション性(弾力性)が接着剤によって損なわれることを適切に抑制することができる。また、裏編地層22の引張強度が過度に大きくなることが回避されることで裏編地層22を円滑に破断させることができる。
【0054】
<変形例>
なお、上記実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。
・上記実施形態では、複数の突起13の高さを一定としたが、複数の突起13の高さを異ならせることもできる。この場合、例えば複数の突起13のうちテアラインTLに近い突起13の高さをテアラインTLから遠い突起13の高さよりも高くするようにしてもよい。
【0055】
・立体編クッション層20として、その面に沿った方向の引張強度に関して異方性を有していないものを採用することもできる。
・基布層31として、その面に沿った方向の引張強度に関して異方性を有していないものを採用することもできる。
【0056】
・
図11及び
図12に示すように、基材11の表面においてテアラインTLに沿うように、且つテアラインTLを挟んだ両側にそれぞれ一列にて上記実施形態と同一の形状の複数の突起13を形成することもできる。なお、
図11においては、複数の突起13の列を実線にて示している。
【0057】
また、
図13に示すように、突起13はテアラインTLに沿うように連続して延びるものであってもよい。すなわち、各突起13はテアラインTLに沿ってテアラインTLの延設方向の略全体にわたって連続的に延びており、三角形の断面をなしている。
【0058】
また、
図14に示すように、突起13をテアラインTLに沿って断続的に形成することもできる。
これらの場合、突起13がテアラインTLに沿って連続的または断続的に形成されているため、表皮材15が基材11から剥がれることをテアラインTLの広い範囲にわたって抑制することができる。また、少なくとも一対の突起13がテアラインTLを挟んだ両側にそれぞれ形成されているため、表皮材15が基材11から剥がれることを、テアラインTLを挟んだ両側においてそれぞれ抑制することができる。このため、基材11から表皮材15に対して作用する引張り応力を表皮材15におけるテアラインTLに対応した部位に適切に集中させることができる。
【0059】
・
図15に示すように、テアラインTLを、車幅方向に沿って延びる第1開裂溝121と、第1開裂溝121の各端から前後方向に沿って前方及び後方にそれぞれ延びる第2開裂溝122とによって形成された、所謂H形をなすものにすることもできる。この場合であっても、基材11の表面において少なくとも一対の突起13をテアラインTLに沿うように、且つテアラインTLを挟んだ両側にそれぞれ形成すればよい。
【0060】
・
図16に示すように、テアラインTLを車幅方向に沿って延びる第1開裂溝121と、第1開裂溝121の各端から前後方向に沿って前方に延びる第2開裂溝122とによって形成された、所謂U形をなすものにすることもできる。この場合であっても、基材11の表面において少なくとも一対の突起13をテアラインTLに沿うように、且つテアラインTLを挟んだ両側にそれぞれ形成すればよい。