(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両の複数のタイヤにそれぞれ設けられており、該タイヤの空気圧を要求する要求信号に応じて前記タイヤの空気圧を検出して得られる空気圧情報を含む空気圧信号を無線送信する複数の検出装置と、該複数の検出装置へ前記要求信号を送信し、該要求信号に応じて前記検出装置から送信された前記空気圧信号を受信して各タイヤの空気圧を監視する監視装置とを備えるタイヤ空気圧監視システムであって、
前記検出装置は、
前記監視装置から送信された前記要求信号を受信する要求信号受信部と、
該要求信号受信部にて受信した前記要求信号の受信信号強度を測定する測定部と、
検出して得られる空気圧情報及び自身の識別子を含む空気圧信号並びに前記測定部にて測定された前記受信信号強度を、前記測定部にて測定された受信信号強度に応じた異なるタイミングで前記監視装置へ送信する空気圧信号送信部と
を備え、
前記監視装置は、
前記複数のタイヤがそれぞれ設けられる複数のタイヤ位置と、各タイヤ位置の前記タイヤに設けられる前記検出装置の識別子とを対応付けて記憶する識別子記憶部と、
前記タイヤが設けられる少なくとも一のタイヤ位置を含む領域へ、前記要求信号を送信する要求信号送信部と、
該要求信号送信部が送信した前記要求信号に応じて前記検出装置から送信された空気圧信号及び前記受信信号強度を受信する空気圧信号受信部と、
該空気圧信号受信部にて複数の空気圧信号を受信した場合、特定のタイミングで受信した一の前記空気圧信号を、前記一のタイヤ位置から送信された空気圧信号として選択する選択部と、
前記識別子記憶部が記憶する前記一のタイヤ位置に対応する識別子を、前記選択部にて選択した前記一の空気圧信号に含まれる識別子に更新する更新部と、
前記選択部によって選択された前記空気圧信号の送信元から送信された受信信号強度を記憶する受信信号強度記憶部と
を備え、
前記要求信号送信部は、
前記一のタイヤ位置を含む領域へ、前記受信信号強度記憶部が記憶する受信信号強度を含む前記要求信号を送信するようにしてあり、
前記検出装置は、
前記要求信号を受信した場合、受信した前記要求信号に含まれる受信信号強度と、前記測定部にて測定された受信信号強度とを比較する比較部を備え、
各受信信号強度が対応している場合、前記空気圧信号を前記監視装置へ送信する
タイヤ空気圧監視システム。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。また、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0016】
(1)本発明の一態様に係るタイヤ空気圧監視システムは、車両の複数のタイヤにそれぞれ設けられており、該タイヤの空気圧を要求する要求信号に応じて前記タイヤの空気圧を検出して得られる空気圧情報を含む空気圧信号を無線送信する複数の検出装置と、該複数の検出装置へ前記要求信号を送信し、該要求信号に応じて前記検出装置から送信された前記空気圧信号を受信して各タイヤの空気圧を監視する監視装置とを備えるタイヤ空気圧監視システムであって、前記検出装置は、前記監視装置から送信された前記要求信号を受信する要求信号受信部と、該要求信号受信部にて受信した前記要求信号の受信信号強度を測定する測定部と、検出して得られる空気圧情報を含む空気圧信号を、前記測定部にて測定された受信信号強度に応じた異なるタイミングで前記監視装置へ送信する空気圧信号送信部とを備え、前記監視装置は、前記タイヤが設けられる少なくとも一のタイヤ位置を含む領域へ、前記要求信号を送信する要求信号送信部と、該要求信号送信部が送信した前記要求信号に応じて前記検出装置から送信された空気圧信号を受信する空気圧信号受信部とを備える。
【0017】
本態様にあっては、要求信号送信部は、少なくとも一のタイヤ位置を含む領域へ要求信号を送信する。該一のタイヤ位置にあるタイヤに設けられた検出装置は要求信号に応じて空気圧信号を監視装置へ送信する。ところが、他のタイヤ位置にある検出装置又は他車両の検出装置も要求信号を受信することがある。この場合、前記一のタイヤ位置以外の他の箇所に設けられ、又は配された他のタイヤの検出装置から監視装置へ空気圧信号が送信される。
そこで、本態様に係る検出装置は、監視装置から送信された要求信号を受信した際、受信した要求信号の受信信号強度を測定部にて測定する。そして、検出装置は、測定部にて測定された受信信号強度に応じたタイミングで空気圧信号を監視装置へ送信する。要求信号の受信信号強度は、要求信号の送信元と、該要求信号を受信した検出装置との距離に依存する。従って、検出装置から空気圧信号が送信されるタイミングは、前記距離に依存する。
よって、本態様にあっては、要求信号に応じて複数の検出装置から空気圧信号が送信される状況にあっても、複数の検出装置から送信される空気圧信号が混信する可能性は低く、監視装置は、タイヤの空気圧を正常に監視することができる。
【0018】
(2)前記空気圧信号送信部は、前記測定部にて測定された受信信号強度が小さい程、遅いタイミングで前記空気圧信号を前記監視装置へ送信するようにしてある構成が好ましい。
【0019】
一般的に、前記一のタイヤ位置を含む領域へ送信される要求信号の送信元に最も近い検出装置は、該一のタイヤ位置のタイヤに設けられた検出装置である。本態様にあっては、検出装置は、要求信号を受信した場合、受信した要求信号の受信信号強度が小さい程、より長時間遅延させて空気圧信号を監視装置へ送信する。言い換えると、検出装置は、受信した要求信号の受信信号強度が大きい程、より短い遅延時間で空気圧信号を監視装置へ送信する。従って、監視装置は、一のタイヤ位置の検出装置から送信される空気圧信号を最初に受信することができる。
【0020】
(3)前記空気圧信号送信部は、前記タイヤの空気圧を検出して得られる空気圧情報及び自身の識別子を含む空気圧信号を送信するようにしてあり、前記監視装置は、前記複数のタイヤがそれぞれ設けられる複数のタイヤ位置と、各タイヤ位置の前記タイヤに設けられる前記検出装置の識別子とを対応付けて記憶する識別子記憶部と、前記空気圧信号受信部にて複数の空気圧信号を受信した場合、特定のタイミングで受信した一の前記空気圧信号を、前記一のタイヤ位置から送信された空気圧信号として選択する選択部と、前記識別子記憶部が記憶する前記一のタイヤ位置に対応する識別子を、前記選択部にて選択した前記一の空気圧信号に含まれる識別子に更新する更新部とを備える構成が好ましい。
【0021】
本態様にあっては、識別子記憶部は、複数のタイヤ位置と、各タイヤ位置のタイヤに設けられた検出装置の識別子とを対応付けて記憶している。一のタイヤ位置を含む領域へ要求信号が送信され、空気圧信号受信部が複数の空気圧信号を受信した場合、選択部は、特定のタイミングで受信した一の空気圧信号を、前記一のタイヤ位置から送信された空気圧信号として選択する。そして、更新部は、選択した空気圧信号に含まれる識別子を用いて、識別子記憶部が記憶する前記一のタイヤ位置に対応する識別子を更新する。
従って、監視装置は、要求信号に応じて複数の検出装置から空気圧信号が送信される状況にあっても、識別子記憶部が記憶する前記一のタイヤ位置に対応する識別子を正常に更新することができる。
【0022】
(4)前記監視装置は、前記空気圧信号受信部にて複数の空気圧信号を受信した場合、特定のタイミングで受信した一の前記空気圧信号を、前記一のタイヤ位置から送信された空気圧信号として選択する選択部と、該選択部にて選択した前記一の空気圧信号に含まれる空気圧情報を報知する報知部とを備える構成が好ましい。
【0023】
本態様にあっては、一のタイヤ位置を含む領域へ要求信号が送信され、空気圧信号受信部が複数の空気圧信号を受信した場合、選択部は、特定のタイミングで受信した一の空気圧信号を、前記一のタイヤ位置から送信された空気圧信号として選択する。そして、報知部は、前記一のタイヤ位置に設けられたタイヤの空気圧情報を報知する。
従って、監視装置は、要求信号に応じて複数の検出装置から空気圧信号が送信される状況にあっても、前記一のタイヤ位置に設けられたタイヤの空気圧情報を正常に報知することができる。
【0024】
(5)前記監視装置は、前記複数のタイヤがそれぞれ設けられる複数のタイヤ位置にそれぞれ偏倚した複数のアンテナを備え、前記要求信号送信部は、前記複数のアンテナから、各タイヤ位置の前記タイヤに設けられた前記検出装置へ前記要求信号を送信するようにしてあり、前記空気圧信号送信部は、前記測定部にて測定された受信信号強度が小さい程、遅いタイミングで前記空気圧信号を前記監視装置へ送信し、前記選択部は、各要求信号に応じて最初に受信した前記空気圧信号を選択する構成が好ましい。
【0025】
本態様にあっては、要求信号送信部が備える複数のアンテナは、各タイヤ位置にそれぞれ偏倚している。要求信号送信部は、各タイヤ位置に偏倚したアンテナから、該タイヤ位置を含む領域へ要求信号を送信する。従って、例えば、一のタイヤ位置に偏倚したアンテナから送信された要求信号に応じて最初に空気圧信号を送信する検出装置は、前記一のタイヤ位置のタイヤに設けられた検出装置である。従って、監視装置は、最初に受信した空気圧信号を選択することによって、一のタイヤ位置の検出装置から送信された空気圧信号を選択することができる。他のタイヤ位置についても同様であり、監視装置は、各タイヤ位置にそれぞれ偏倚したアンテナから要求信号を送信した際、最初に受信した空気圧信号を選択することによって、各タイヤ位置の検出装置から送信された空気圧信号を選択することができる。
【0026】
(6)前記空気圧信号送信部は、前記空気圧信号と共に前記測定部にて測定された前記受信信号強度を前記監視装置へ送信するようにしてあり、前記監視装置は、前記選択部によって選択された前記空気圧信号の送信元から送信された受信信号強度を記憶する受信信号強度記憶部を備え、前記要求信号送信部は、前記一のタイヤ位置を含む領域へ、前記受信信号強度記憶部が記憶する受信信号強度を含む要求信号を送信するようにしてあり、前記検出装置は、前記要求信号を受信した場合、受信した要求信号に含まれる受信信号強度と、前記測定部にて測定された受信信号強度とを比較する比較部を備え、各受信信号強度が対応している場合、前記空気圧信号を前記監視装置へ送信する構成が好ましい。
【0027】
本態様にあっては、検出装置は、空気圧信号と共に受信信号強度を監視装置へ送信する。監視装置の受信信号強度記憶部は、選択部によって選択された一の空気圧信号の送信元から送信された受信信号強度を記憶する。
以後、監視装置が一のタイヤ位置を含む領域へ要求信号を送信する際、記憶部が記憶する受信信号強度を要求信号と共に送信する。検出装置は、要求信号を受信した場合、該要求信号に含まれる受信信号強度と、該要求信号を受信して測定した受信信号強度とを比較し、各受信信号強度が対応している場合、空気圧信号を監視装置へ送信する。各受信信号強度が対応していない場合、検出装置は空気圧信号を送信しない。
他のタイヤ位置についても同様であり、各タイヤ位置を含む領域へ要求信号を送信した際、各タイヤ位置のタイヤに設けられた検出装置のみが応答し、空気圧信号を送信するようになる。
【0028】
(7)本発明の一態様に係る検出装置は、車両のタイヤに設けられており、該タイヤの空気圧を要求する要求信号に応じて前記タイヤの空気圧を検出して得られる空気圧情報を含む空気圧信号を無線送信する検出装置であって、前記要求信号を受信する要求信号受信部と、該要求信号受信部にて受信した前記要求信号の受信信号強度を測定する測定部と、検出して得られる空気圧情報を含む空気圧信号を、前記測定部にて測定された受信信号強度に応じた異なるタイミングで送信する空気圧信号送信部とを備える。
【0029】
本態様にあっては、検出装置は、要求信号に応じて複数の検出装置から空気圧信号が送信される状況にあっても、タイヤの空気圧を正常に監視することができるタイヤ空気圧監視システムを構成することができる。
【0030】
(8)本発明の一態様に係る監視装置は、車両の複数のタイヤにそれぞれ設けられており、該タイヤの空気圧を要求する要求信号に応じて複数の検出装置から送信された空気圧信号を受信して各タイヤの空気圧を監視する監視装置であって、前記タイヤが設けられる少なくとも一のタイヤ位置を含む領域へ、前記要求信号を送信する要求信号送信部と、該要求信号送信部が送信した前記要求信号に応じて前記検出装置から送信された空気圧信号を受信する空気圧信号受信部と、該空気圧信号受信部にて複数の空気圧信号を受信した場合、前記タイヤが設けられる一のタイヤ位置から送信された空気圧信号として、特定のタイミングで受信した一の前記空気圧信号を選択する選択部とを備える。
【0031】
本態様にあっては、監視装置は、要求信号に応じて複数の検出装置から空気圧信号が送信される状況にあっても、タイヤの空気圧を正常に監視することができるタイヤ空気圧監視システムを構成することができる。
【0032】
[本発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態に係るタイヤ空気圧監視システムの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0033】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係るタイヤ空気圧監視システムの一構成例を示す模式図である。本実施形態1に係るタイヤ空気圧監視システムは、車体の適宜箇所に設けられた監視装置1と、車両Cに設けられたタイヤ3のホイール夫々に設けられた検出装置2と、報知部4とを備える。本実施形態1のタイヤ空気圧監視システムでは、監視装置1が各検出装置2と無線通信を行うことにより、各タイヤ3の空気圧情報を取得し、報知部4は取得した空気圧情報に応じた報知を行う。監視装置1には、各タイヤ3に対応するLF送信アンテナ14aが接続されている。例えば、複数のLF送信アンテナ14aは車両Cの右前、左前、右後及び左後の部分に偏倚して設けられている。車両Cの右前に設けられたLF送信アンテナ14aは、右前のタイヤ位置を含む領域へ局所的に信号を無線送信することができる。他のLF送信アンテナ14aも同様にして、左前、右後及び左後をそれぞれ含む領域へ局所的に信号を無線送信することができる。監視装置1は、各LF送信アンテナ14aからLF帯の電波により空気圧情報を要求する要求信号を各検出装置2それぞれへ各別に送信する。検出装置2は、監視装置1の要求信号に応じて、タイヤ3の空気圧を検出して得た空気圧情報を含む空気圧信号をUHF(Ultra High Frequency)帯の電波により監視装置1へ送信する。また、監視装置1は、RF受信アンテナ13aを備え、各検出装置2から送信された空気圧信号をRF受信アンテナ13aにて受信し、該空気圧信号から各タイヤ3の空気圧情報を取得する。なおLF帯及びUHF帯は無線通信を行う際に用いる電波帯域の一例であり、必ずしもこれに限定されない。監視装置1には通信線を介して報知部4が接続されており、監視装置1は取得した空気圧情報を報知部4へ送信する。報知部4は監視装置1から送信された空気圧情報を受信し、各タイヤ3の空気圧情報を報知する。また、報知部4はタイヤ3の空気圧が所定の閾値未満である場合、警告を発する。
【0034】
図2は、監視装置1の一構成例を示すブロック図である。監視装置1は、該監視装置1の各構成部の動作を制御する制御部11を備える。制御部11には、記憶部12、車載受信部13、車載送信部14、計時部15及び車内通信部16が接続されている。
【0035】
制御部11は、例えば一又は複数のCPU(Central Processing Unit)、マルチコアCPU、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力インタフェース等を有するマイコンである。制御部11のCPUは入出力インタフェースを介して記憶部12、車載受信部13、車載送信部14、計時部15及び車内通信部16に接続している。制御部11は記憶部12に記憶されている制御プログラムを実行することにより、各構成部の動作を制御し、本実施形態に係る通信処理及びタイヤ空気圧監視処理を実行する。
【0036】
記憶部12は、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリである。記憶部12は、制御部11が監視装置1の各構成部の動作を制御することにより、通信処理及びタイヤ空気圧監視処理を実行するための制御プログラムを記憶している。また、記憶部12は、各LF送信アンテナ14aから送信された要求信号を、対応する検出装置2が受信して測定したときに得られる受信信号強度と、検出装置2のセンサ識別子とに対応付けて登録したセンサ識別子テーブルを記憶している。記憶部12は、識別子記憶部及び受信信号強度記憶部として機能する。なお、記憶部12は、タイヤ位置に、センサ識別子を対応付けたテーブルと、タイヤ位置に受信信号強度を対応付けたテーブルとを記憶するように構成しても良い。
【0037】
図3は、センサ識別子テーブルの一例を示す概念図である。センサ識別子テーブルには、タイヤ位置と、各LF送信アンテナ14aを識別するためのアンテナ識別子と、各LF送信アンテナ14aに対応する検出装置2を識別するセンサ識別子と、学習フラグと、受信信号強度とを対応付けて登録されている。
受信信号強度は、各LF送信アンテナ14aから送信された要求信号を、対応する検出装置2が受信したときに該検出装置2によって測定して得られる要求信号の強度である。例えば、車両Cの右前のタイヤ位置近傍に設けられたLF送信アンテナ14aから要求信号を送信した場合に、前記右前のタイヤ位置のタイヤ3に設けられた検出装置2が測定した前記要求信号の受信信号強度が、該右前のLF送信アンテナ14aに対応付けて登録されている。
学習フラグの値「1」は、受信信号強度の学習が完了していることを示し、値「0」は、受信信号強度の学習が完了していないことを示す。学習フラグは、例えば、イグニッションスイッチがオフ状態からオン状態になったときにリセットされ、「0」になる。なお、アクセサリー電源がオフ状態からオン状態になったとき、又はバッテリ電源がオフ状態からオン状態になったときに、完了フラグの値を「0」にしても良い。
受信信号強度は受信電力によって表されるが、ここでは受信電力を複数段階に区分し、センサ識別子テーブルには受信信号強度を示す区分の数字が登録されている。
【0038】
車載受信部13には、RF受信アンテナ13aが接続されている。車載受信部13は、検出装置2からRF帯の電波を用いて送信された信号を、RF受信アンテナ13aにて受信する。車載受信部13は、受信した信号を復調し、復調された信号を制御部11へ出力する回路である。搬送波としては300MHz〜3GHzのUHF帯を使用するが、この周波数帯に限定するものでは無い。
【0039】
車載送信部14は、制御部11から出力された信号をLF帯の信号に変調し、変調された信号を複数のLF送信アンテナ14aからそれぞれ各別に検出装置2へ送信する回路である。搬送波としては30kHz〜300kHzのLF帯を使用するが、この周波数帯に限定するものでは無い。
また、車載送信部14は、各LF送信アンテナ14aから送信する信号の送信強度を変更する送信強度変更部14bを備える。送信強度変更部14bは、例えば増幅器であり、制御部11の制御に従って、各LF送信アンテナ14aから送信される要求信号の送信強度を変更する。タイヤ空気圧を監視する場合、送信強度変更部14bは、各LF送信アンテナ14aから一定の送信強度で要求信号が送信されるように、該要求信号の強度を制御する。
【0040】
計時部15は、例えばタイマ、リアルタイムクロック等により構成され、制御部11の制御に従って計時を開始し、計時結果を制御部11に与える。
【0041】
車内通信部16は、CAN(Controller Area Network)又はLIN(Local Interconnect Network)等の通信プロトコルに従って通信を行う通信回路であり、報知部4に接続されている。車内通信部16は、制御部11の制御に従って、タイヤ3の空気圧情報を報知部4へ送信する。
【0042】
報知部4は、例えば、車内通信部16から送信されたタイヤ3の空気圧に係る情報を画像又は音声によって報知する表示部又はスピーカを備えたオーディオ機器、インスツルメントパネルの計器に設けられた表示部等である。表示部は液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、ヘッドアップディスプレイ等である。例えば、報知部4は、車両Cに設けられた各タイヤ3の空気圧を表示する。
【0043】
図4は、検出装置2の一構成例を示すブロック図である。検出装置2は、該検出装置2の各構成部の動作を制御するセンサ制御部21を備える。センサ制御部21には、センサ用記憶部22、センサ送信部23、センサ受信部24、空気圧検出部25及び計時部26が接続されている。
【0044】
センサ制御部21は、例えば一又は複数のCPU、マルチコアCPU、ROM、RAM、入出力インタフェース等を有するマイコンである。センサ制御部21のCPUは入出力インタフェースを介してセンサ用記憶部22、センサ送信部23、センサ受信部24、空気圧検出部25及び計時部26に接続している。センサ制御部21はセンサ用記憶部22に記憶されている制御プログラムを読み出し、各部を制御する。検出装置2は、図示しない電池を備え、当該電池からの電力により動作する。
【0045】
センサ用記憶部22は不揮発性メモリである。センサ用記憶部22には、センサ制御部21のCPUがタイヤ3の空気圧の検出及び送信に係る処理を行うための制御プログラムが記憶されている。
【0046】
空気圧検出部25は、例えばダイヤフラムを備え、圧力の大きさによって変化するダイヤフラムの変形量に基づき、タイヤ3の空気圧を検出する。空気圧検出部25は検出したタイヤ3の空気圧を示す信号をセンサ制御部21へ出力する。センサ制御部21は、制御プログラムを実行することにより、空気圧検出部25にてタイヤ3の空気圧を検出し、検出して得られた空気圧情報、検出装置2に固有のセンサ識別子等の情報を含む空気圧信号を生成し、センサ送信部23へ出力する。
なお、タイヤ3の温度を検出し、検出した温度を示す信号をセンサ制御部21へ出力する温度検出部(不図示)を備えても良い。この場合、センサ制御部21は、空気圧、温度、センサ識別子等の情報を含む空気圧信号を生成し、センサ送信部23へ出力する。
【0047】
センサ送信部23には、RF送信アンテナ23aが接続されている。センサ送信部23は、センサ制御部21が生成した空気圧信号をUHF帯の信号に変調し、変調した空気圧信号を、RF送信アンテナ23aを用いて送信する。
【0048】
センサ受信部24には、LF受信アンテナ24aが接続されている。センサ受信部24は、監視装置1からLF帯の電波を用いて送信された要求信号を、LF受信アンテナ24aにて受信し、受信した信号をセンサ制御部21へ出力する。
また、センサ受信部24には、該センサ受信部24にて受信した要求信号の受信信号強度を測定し、測定された受信信号強度をセンサ制御部21へ出力する受信信号強度測定部24bが設けられている。
【0049】
次に、要求信号の送信及び空気圧信号の選択に係る処理手順を説明する。
図5は、実施形態1に係る監視装置1の処理手順を示すフローチャートである。制御部11は、空気圧情報を要する任意のタイミングで以下の処理を実行する。制御部11は、まだ要求信号を送信していない一のLF送信アンテナ14aを選択する(ステップS11)。そして、制御部11は、選択された一のLF送信アンテナ14aに対応する学習フラグが「1」であるか否かを判定する(ステップS12)。学習フラグが「1」で無いと判定した場合(ステップS12:NO)、制御部11は、ステップS11にて選択した一のLF送信アンテナ14aから、学習フラグ=0にて要求信号を送信し(ステップS13)、計時を開始する(ステップS14)。例えば、要求信号は、学習フラグに対応するビットを含み、制御部11は、ビット=「0」を含む要求信号を一のLF送信アンテナ14aから送信させる。
【0050】
次いで、制御部11は、計時を開始してから所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS15)。ここで、所定時間を計時する理由は、他車両の検出装置は、要求信号に応じて直ちに空気圧信号を送信することがあり、このように他車両の検出装置から送信された空気圧信号の受信を排除するためである。
所定時間が経過していないと判定した場合(ステップS15:NO)、制御部11は、ステップS15の処理を再度実行する。所定時間が経過したと判定した場合(ステップS15:YES)、検出装置2から送信された空気圧信号を受信する(ステップS16)。ステップS16において制御部11は、一定時間、車載受信部13による受信状態を監視し、該一定時間の間に空気圧信号を受信する。検出装置2から送信される空気圧信号には、後述するように、検出装置2に固有のセンサ識別子、検出して得た空気圧情報、検出装置2にて測定された要求信号の受信信号強度等の情報が含まれている。
【0051】
次いで、制御部11は、複数の空気圧信号を受信したか否かを判定する(ステップS17)。複数の空気圧信号を受信したと判定した場合(ステップS17:YES)、最初に受信した空気圧信号を選択する(ステップS18)。ステップS18の処理を終えた場合、又はステップS17において単一の空気圧信号を受信したと判定した場合(ステップS17:NO)、制御部11は、選択された空気圧信号又は受信した単一の空気圧信号に含まれるセンサ識別子及び受信信号強度、学習フラグ=「1」、並びに当該タイヤ位置及びアンテナ識別子を対応付けて、記憶部12に記憶させる(ステップS19)。具体的には、制御部11は、センサ識別子、学習フラグ=「1」及び受信信号強度を、ステップS11にて選択したLF送信アンテナ14aに対応するタイヤ位置及びアンテナ識別子に対応付けてセンサ識別子テーブルに登録する。
【0052】
一方、ステップS12において、学習フラグが「1」であると判定した場合(ステップS12:YES)、制御部11は、ステップS11にて選択した一のLF送信アンテナ14aに対応する受信信号強度を、センサ識別子テーブルから読み出す(ステップS20)。次いで、制御部11は、学習フラグ=1にて、ステップS20で読み出した受信信号強度を含む要求信号を、ステップS11にて選択した一のLF送信アンテナ14aから送信し(ステップS21)、計時を開始する(ステップS22)。
【0053】
次いで、制御部11は、計時を開始してから所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS23)。所定時間が経過していないと判定した場合(ステップS23:NO)、制御部11は、ステップS23の処理を再度実行する。所定時間が経過したと判定した場合(ステップS23:YES)、検出装置2から送信された空気圧信号を受信する(ステップS24)。
【0054】
ステップS19又はステップS24の処理を終えた制御部11は、全タイヤ3の空気圧を検出したか否かを判定する(ステップS25)。空気圧が検出されていないタイヤ3があると判定した場合(ステップS25:NO)、制御部11は処理をステップS11へ戻し、空気圧が未検出のタイヤ3についでも上述の処理を実行する。全タイヤ3の空気圧を検出したと判定した場合(ステップS25:YES)、制御部11は、検出された空気圧に基づいて、各タイヤ3の空気圧の監視処理及び報知処理を実行し(ステップS26)、処理を終える。具体的には、制御部11は、各タイヤ3の空気圧情報を報知部4へ送信することによって、各タイヤ3の空気圧情報を報知する処理を実行する。また、制御部11は、各タイヤ3の空気圧が閾値以上であるか否かを判定し、閾値未満のタイヤ3がある場合、該タイヤ3の空気圧が閾値未満である旨の情報を報知部4へ送信することにより、警告を発する処理を実行する。
【0055】
図6は、実施形態1に係る検出装置2の処理手順を示すフローチャートである。センサ制御部21は、監視装置1から送信された要求信号を受信し(ステップS51)、受信した要求信号の受信信号強度を受信信号強度測定部24bにて測定する(ステップS52)。
【0056】
次いで、センサ制御部21は、要求信号に含まれる学習フラグのビットが「1」であるか否かを判定する(ステップS53)。学習フラグが「1」である場合(ステップS53:YES)、センサ制御部21は、ステップS51にて受信した要求信号に含まれる受信信号強度と、ステップS52にて測定した受信信号強度とが近似しているか否かを判定する(ステップS54)。各受信信号強度が近似していないと判定した場合(ステップS54:NO)、センサ制御部21は処理を終える。
【0057】
学習フラグが「0」であると判定した場合(ステップS53:NO)、又は各受信信号強度が近似していると判定した場合(ステップS54:YES)、センサ制御部21は、計時部26にて計時を開始する(ステップS55)。そして、センサ制御部21は、ステップS52にて測定した受信信号強度に応じた遅延時間を特定する(ステップS56)。実施形態1においては、センサ制御部21は、受信信号強度が小さい程、遅延時間が長くなるように該遅延時間を特定する。
【0058】
次いで、センサ制御部21は、計時開始後、ステップS56にて特定した遅延時間が経過したか否かを判定する(ステップS57)。遅延時間が経過していないと判定した場合(ステップS57:NO)、センサ制御部21は、再度ステップS57の処理を実行し、待機する。遅延時間を経過したと判定した場合(ステップS57:YES)、制御部11は、空気圧検出部25にてタイヤ3の空気圧を検出し(ステップS58)、検出して得た空気圧情報、自身のセンサ識別子、及びステップS52にて測定した受信信号強度等の情報を含む空気圧信号を、RF送信アンテナ23aから監視装置1へ送信し(ステップS59)、処理を終える。
【0059】
このように構成された実施形態1に係るタイヤ空気圧監視システムによれば、要求信号に応じて複数の検出装置2から空気圧信号が送信される状況にあっても、複数の検出装置2から異なるタイミングで空気圧信号が送信されるため、空気圧信号が混信する可能性は低く、監視装置1は、タイヤ3の空気圧を正常に監視することができる。
具体的には、監視装置1は、要求信号に応じて複数の検出装置2から空気圧信号が送信される状況にあっても、センサ識別子テーブルを誤り無く更新することができる。
また、監視装置1は、要求信号に応じて複数の検出装置2から空気圧信号が送信される状況にあっても、各タイヤ位置の検出装置2から送信された空気圧信号を誤り無く選択し、各タイヤ3の空気圧情報を報知することができる。
【0060】
また、検出装置2は、複数の空気圧信号を受信した場合、受信した要求信号の受信信号強度が大きい程、より短い遅延時間で空気圧信号を監視装置1へ送信し、監視装置1は、最初に受信した空気圧信号を選択する構成である。従って、各LF送信アンテナ14aから要求信号を送信後、速やかに各タイヤ3の空気圧信号を受信及び選択し、空気圧の監視処理を実行することができる。
【0061】
更に、監視装置1は、複数の空気圧信号を受信した場合、所定時間経過後、最初に受信した空気圧信号を選択する構成である。他車両の検出装置が、要求信号の受信後、遅延無く空気圧信号を監視装置1へ送信した場合であっても、監視装置1は、該他車両から送信された空気圧信号を除外し、自車両Cの検出装置2から送信された空気圧信号の中から、要求信号を送信したLF送信アンテナ14aに対応するタイヤ3の空気圧信号を受信することができる。
【0062】
更にまた、監視装置1は、各タイヤ位置に対応する検出装置2が要求信号を受信するときの受信信号強度を学習する。監視装置1が各LF送信アンテナ14aから要求信号を送信する場合、該要求信号を送信するLF送信アンテナ14aに対応する受信信号強度を要求信号に含めて送信する。検出装置2は、受信した要求信号の受信信号強度を測定し、該要求信号に含まれる受信信号強度と、測定した受信信号強度とが一致している場合に空気圧信号を監視装置1へ送信する。
従って、各タイヤ3へ送信した要求信号に応答して、該タイヤ3以外の検出装置2から空気圧信号が送信される可能性を低減することができる。よって、各タイヤ3の空気圧をより誤り無く監視することができる。
【0063】
なお、実施形態1においては、主にタイヤ空気圧監視システムに係る実施形態を説明したが、タイヤ空気圧監視システムの無線通信に係るハードウェアを、他の通信システムと兼用しても良い。例えば、無線通信に係るハードウェアを共用し、TPMS及びパッシブエントリシステムの車両用通信システムを構成しても良い。
パッシブエントリシステムは、監視装置1と、パッシブエントリシステムに係る携帯機とによって構成される。監視装置1は、使用者が所持する携帯機との間で無線通信を行い、携帯機を認証し、該携帯機の位置を検出する。車両Cのドアハンドルには図示しないタッチセンサが設けられており、タッチセンサによって使用者の手がドアハンドルに触れたことを検出した場合、又はドアスイッチが押された場合等、正規の携帯機が車外に位置するとき、監視装置1は、車両Cのドアの施錠及び解錠等の処理を実行する。監視装置1は、携帯機と無線通信を行うときは、LF送信アンテナ14aから送信される信号の送信強度を高く設定し、検出装置2へ要求信号を送信するときは、LF送信アンテナ14aから送信される信号の送信強度を低く設定する。
なお、車両用通信システムを構成するパッシブエントリシステムは一例であり、携帯機と、監視装置1との間で無線通信を行い、各種車両制御を行うシステムに本発明を適用することができる。例えば、車両用通信システムは、TPMSと共に、キーレスエントリシステム、メカニカルキーを用いること無く、車輌に搭載された原動機の始動を可能にするスマートスタートシステム等を構成しても良い。
【0064】
(実施形態2)
実施形態2に係るタイヤ空気圧監視システムの構成は実施形態1と同様であり、空気圧信号の送受信のタイミングのみが実施形態1と異なるため、以下では主にかかる相違点を説明する。その他の構成及び作用効果は実施形態1と同様であるため、対応する箇所には同様の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0065】
実施形態2に係る検出装置2は、実施形態1と同様、
図6に示した処理を実行し、受信信号強度に応じたタイミングで空気圧信号を送信する。ただし、実施形態2に係るセンサ制御部21は、ステップS56において、受信信号強度が小さい程、遅延時間が短くなるように該遅延時間を特定する。言い換えると、センサ制御部21は、測定された受信信号強度が大きいほど、より長い遅延時間を設定する。
【0066】
図7は、実施形態2に係る監視装置1の処理手順を示すフローチャートである。実施形態2に係る監視装置1は、実施形態1におけるステップS11〜ステップS13と同様の処理をステップS211〜ステップS213にて実行する。そして、制御部11は、要求信号の送信後、所定時間が経過するのを待つことなく、検出装置2から送信された空気圧信号を受信する(ステップS214)。
【0067】
次いで、制御部11は、複数の空気圧信号を受信したか否かを判定する(ステップS215)。複数の空気圧信号を受信したと判定した場合(ステップS215:YES)、最後に受信した空気圧信号を選択する(ステップS216)。ステップS216の処理を終えた場合、又はステップS215において単一の空気圧信号を受信したと判定した場合(ステップS215:NO)、制御部11は、選択された空気圧信号又は受信した単一の空気圧信号に含まれるセンサ識別子及び受信信号強度、学習フラグ=「1」、並びに当該タイヤ位置及びアンテナ識別子を対応付けて、記憶部12に記憶させる(ステップS217)。
【0068】
一方、ステップS212において、学習フラグが「1」であると判定した場合(ステップS212:YES)、制御部11は、実施形態1におけるステップS20及びステップS21と同様の処理をステップS218及びステップS219にて実行する。そして、制御部11は、要求信号の送信後、所定時間が経過するのを待つことなく、検出装置2から送信された空気圧信号を受信する(ステップS220)。
【0069】
ステップS217又はステップS220の処理を終えた制御部11は、実施形態1のステップS25及びステップS26と同様の処理をステップS221及びステップS222にて実行し、処理を終える。
【0070】
このように構成された実施形態2に係るタイヤ空気圧監視システムによれば、実施形態1と同様、要求信号に応じて複数の検出装置2から空気圧信号が送信される状況にあっても、空気圧信号が混信する可能性は低く、監視装置1は、タイヤ3の空気圧を正常に監視することができる。
【0071】
また、検出装置2は、複数の空気圧信号を受信した場合、受信した要求信号の受信信号強度が大きい程、より長時間遅延させて空気圧信号を監視装置1へ送信する構成である。
従って、他車両の検出装置が、要求信号の受信後、直ちに空気圧信号を監視装置1へ送信するようなことがあっても、監視装置1は、該他車両から送信された空気圧信号を除外し、自車両Cの検出装置2から送信された空気圧信号の中から、要求信号を送信したLF送信アンテナ14aに対応するタイヤ3の空気圧信号を選択することができる。
【0072】
なお、本実施形態1及び2では、要求信号に応じて複数の検出装置2から空気圧信号が送信され得る状況において、各タイヤ3に対応する空気圧信号を選別する処理を、主にセンサ識別子テーブルの更新処理に適用しているが、当該処理は、監視装置1が各検出装置2との間で情報の送受信を行う任意の処理に適用することができる。例えば、センサ識別子テーブルの更新を行うこと無く、各タイヤ3に設けられた検出装置2から空気圧情報を取得する処理において、前記処理を適用しても良い。