特許第6451821号(P6451821)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6451821
(24)【登録日】2018年12月21日
(45)【発行日】2019年1月16日
(54)【発明の名称】検査システム及び検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/88 20060101AFI20190107BHJP
   G01N 21/84 20060101ALI20190107BHJP
   G01B 11/24 20060101ALI20190107BHJP
【FI】
   G01N21/88 Z
   G01N21/84 E
   G01B11/24 K
【請求項の数】5
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2017-233858(P2017-233858)
(22)【出願日】2017年12月5日
【審査請求日】2018年3月19日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】715007004
【氏名又は名称】マシンビジョンライティング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】増村茂樹
【審査官】 蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2017/051447(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0262007(US,A1)
【文献】 特開2011−232087(JP,A)
【文献】 特開2010−112941(JP,A)
【文献】 特開平7−306023(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84−21/958
G01B 11/00−11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象に検査光を照射する検査用照明装置であって、前記検査対象の各点に照射される検査光の照射立体角を、異なる光属性を持つ複数の立体角領域が光軸を中心として放射状に配置され、円周方向に於いて隣接するように設定できる検査用照明装置と、前記検査対象の各点において反射又は透過する物体光を撮像する撮像装置であって、前記物体光の異なる光属性を選択的に撮像可能な撮像装置とを備え、前記検査対象の各点において、前記物体光の光軸の変化、若しくは、撮像装置によって形成される前記検査対象の各点に対する観察立体角に対する前記物体光の立体角の変化を、前記観察立体角との包含関係において、前記検査光の前記複数の立体角領域に起因する複数の光属性を持つ前記物体光の変化として検知し、その複数の光属性ごとの前記物体光の変化量によって、前記検査対象の各点における複数方向の傾きに対して傾きの方向と、その傾きの角度を特定し、前記検査対象の表面の三次元性状を特定することが可能なことを特徴とする検査システム。
【請求項2】
前記検査用照明装置において、前記検査光の照射方向を変え、なおかつ前記検査対象からの光を透過して前記撮像装置で撮像できるようにするためのハ−フミラ−を備え、前記検査光の前記検査対象の各点に対する照射立体角として、前記立体角領域と前記撮像装置の前記検査対象の各点に対する観察立体角の光軸を略一致させたことを特徴とする請求項1に記載の検査システム。
【請求項3】
前記検査用照明装置で前記検査対象に照射される検査光の照射立体角において、前記撮像装置の前記検査対象の各点における観察立体角の形状及び大きさ及び傾きに基づいて、前記検査対象の各点における前記立体角領域の形状及び大きさ及び傾きが、所望の濃淡情報を得るために好適に設定、若しくは相対的に前記立体角領域と前記観察立体角の形状及び大きさ及び傾きが略均一に設定されていることを特徴とする請求項1、又は請求項2に記載の検査システム。
【請求項4】
前記検査対象の各点における前記観察立体角が、前記照射立体角より小さく設定され、前記検査対象の各点から返される前記物体光の光軸の傾きが変化したときに、その変化を、複数の光属性を持つ前記物体光の変化として検知することができるよう、前記照射立体角内に形成される異なる光属性を持つ複数の立体角領域を、略連続的に変化させたことを特徴とする請求項1に記載の検査システム。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れかに記載の検査システムを用いて、前記検査対象の三次元形状を、前記物体光の複数の光属性の変化をもって特定する検査方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば検査対象に検査光を照射し、その製品の外観や傷、欠陥等の検査を行うために用いられる検査用照明装置、及び検査システム、及び検査方式に関するものである。
【背景技術】
【0002】
製品の外観検査等に用いられる検査用照明装置の一例としては、特許文献1に示されるような、検査対象に対する照射立体角の形状や角度、並びにその光属性の異なる立体角領域を、略均一に制御して照射できるものがある。
【0003】
ところで、上述したような検査用照明装置を用いても検出する事が難しい欠陥などの特徴点を、撮像された画像により検出できるようにすることが求められている。より具体的には、検査対象である製品の表面性状が完全なミラー面ではないために、検査対象面の特徴点における所望の濃淡情報を得るために、光軸や照射立体角の形状等を精密に制御する事が難しく、検査光を照射できたとしても、特徴点が検査対象のどの位置にあるかによって明暗差が大きく変化してしまい、特徴点を判別することが難しい事例がある。また、ミラー面であったとしても、その特徴点のきわめて微小な傾きを伴うものや、立体形状をしているような物体表面においては、その特徴情報から得られる光の変化量が極めて微小となり、そのような面から得られる画像の明暗差も極めて微小となって、特徴点を判別することが難しい事例もある。
【0004】
そのような事例に対しては、例えば、抽出したい特徴点での変化が、物体から返される物体光の立体角と、その物体光を観察する結像光学系が、物体の各点に形成する観察立体角との包含関係の変化によって特定できるように、物体の各点に対する照射立体角を適切に設定することが考えられる。
【0005】
しかしながら、このような手法により各点から返される物体光の濃淡において、特徴点での変化が実現できたとしても、その他の個所でも同様の濃淡情報が存在し、それが所望の特徴点なのかどうかを特定できない場合がある。
【0006】
より具体的には、検査対象上の微小な欠陥等により、物体の各点から発せられる物体光の光軸の変化はまちまちであり、その特定の方向の特定の傾きの特徴点だけを、その濃淡情報として抽出することは難しい。なんとなれば、照射立体角の形状等が反映される物体光の立体角と、これを観察する立体角の包含関係は、結局その包含部分に含まれる光エネルギーの総量の変化としてしか検出されないことから、まず均質な照射立体角においては、その包含関係による濃淡情報が光軸の傾き変化だけによってもたらされるために、その光軸の傾きの方向すべてにおいて、傾き角が等しければ同じ濃淡差となり、識別できないし、照射立体角に異方性を持たせても、その方向に対しては濃淡差が得られても、他の方向に対しては得られないので、詳細な立体形状を特定しなければ抽出できない特徴点においては、その特徴点においてだけ特有の濃淡差を生じさせることは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第5866586号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上述したような課題を鑑みてなされたものであり、欠陥などの特徴点が複雑な立体構造をしていて、その特徴点で生じる反射や散乱の変化が複合的で他のノイズと分離できないような場合であっても、検査対象の撮像範囲の各点において、その特徴点が視野内のどこにあっも、撮像装置の観察立体角内における光量を一定量だけ変化させることができ、ひいては、このような微小で大きな特徴情報を持たない特徴点の詳細を検出する事が可能となる検査用照明装置、及び、検査システム、及び検査方式を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は、検査用照明装置から射出される検査光の照射立体角の大きさや、その形状、傾き等の様態を均一にし、その照射立体角内で光の伝搬方向以外の変化要素、たとえば異なる波長や偏波面、若しくは光量等を任意に区分して照射し、しかもこれを調節できるようにすることで、検査対象における欠陥等が微小であり、その欠陥等による反射や散乱の変化量がごくわずかであったり、他と区別が付きにくいものであっても、撮像装置の観察立体角内で、区分した異なる波長帯域や偏波面、若しくは光量の領域毎にそれぞれの光量の変化として、その方向依存性なく捉えることができ、この変化を明暗情報とする画像が得られるようにするという新規な発想に基づいてなされたものである。
【0010】
より具体的には、本発明の検査用照明装置は、検査対象に検査光を照射する検査用照明装置であって、前記検査対象において反射又は透過又は散乱する光、すなわち物体から返される物体光を撮像する撮像装置とからなる検査システムに適用され、前記検査用照明装置において、検査光を射出する面光源と、前記面光源と前記検査対象との間に設けられ、前記面光源から放射された光を前記検査対象に照射する検査光として、前記検査対象に対する照射立体角を形成するためのレンズと、前記面光源と前記レンズとの間であって、前記レンズの焦点位置を中心としてその前後に設けられ、前記検査対象の各点に照射される検査光の照射立体角を遮光形成する第1の遮光マスク、及び前記検査光を異なる波長帯域の光や異なる偏波面、若しくは異なる光量をもつ光で部分的に異なる光属性をもつ任意の立体角度領域に区分する第1のフィルター手段の少なくともいずれかひとつを備えており、前記撮像装置で前記検査対象からの光を撮像するときに形成される前記検査対象の各点に対する観察立体角に対して、各点の明暗に、異なる波長帯域や異なる偏波面、若しくは異なる光量をもつ等の、光属性の異なる立体角度領域ごとに所望の変化が得られるように、照射立体角全体の形状又は大きさや傾き、及び光属性の異なる前記立体角度領域が照射立体角内で、その照射立体角を元にして物体から返される物体光の立体角と観察立体角との関係でその包含関係の変化が連続的に漏れなく、光物性の異なる光の明るさの変化の組み合わせ情報として得られるように設定したことを特徴とする検査用照明、及び検査システム、及び検査方式である。
【0011】
また、前記第1の遮光マスクと前記面光源との間であって、前記レンズが前記検査対象に対して結像する近傍に、第2の遮光マスク、及び特定の属性をもつ光のみを透過する第4のフィルター手段の少なくともいずれかひとつをさらに備え、前記第2の遮光マスク若しくは第4のフィルター手段によって、前記検査対象に対する検査光の照射領域や照射パターンを任意に生成可能なことを特徴とする。
【0012】
このような検査方式及び検査システム及び検査用照明装置であれば、前記レンズと前記第1の遮光マスク若しくは前記第1のフィルター手段により、前記検査対象の各点に照射される検査光の照射立体角を略均一に形成しつつ、異なる波長帯域や偏波面、若しくは光量等の、異なる光属性をもつ前記立体角度領域を任意に形成し、その上で、前記レンズと前記第2の遮光マスク若しくは第4のフィルター手段により、前記検査対象の必要な部分にのみ前記検査光を照射したり、その検査光の照射範囲を任意の光属性をもつ領域によって、前記物体から返される物体光の立体角と前期観察立体角との包含関係によって、両者の包含関係がどの方向にどれだけ変化しても、それを識別し、前期検査対象の微小で複雑な立体形状をした特徴点に対して、それを抽出するに足る濃淡情報を得ることができる
【0013】
言い換えると、例えば通常の面光源等の照明装置を用いる場合であれば、前記検査対象の各点に対する照射立体角の形状や傾きは、前記検察対象の各点と前記照明装置の光源面の形状との関係でそれぞれ決まることから、均一な検査光を得ることが難しいし、特許文献1に挙げた検査用照明装置では、前期検査対象の各点に対する照射立体角の形状や傾きは略均一に設定することができるものの、照射立体角内に形成される前記複数の光属性を持つ立体角領域に起因して、前期検査対象の各点から返される物体光の立体角内に同様に形成される複数の光属性を持つ立体角領域が、前期観察立体角との包含関係において連続的に変化しなければ、前期検査対象上の微小で複雑な立体形状をした特徴点を抽出することはできないのに対して、前記本願発明であれば前記検査対象の各点に対する照射立体角の形状や傾きを略均一とし、しかもその照射立体角内を異なる波長帯域や偏波面、若しくは光量をもつ等の、異なる光属性をもつ適切な立体角度領域に区分することによって、前記観察立体角との包含関係がどの方向に変化した場合でも、それを前記複数の立体角領域と観察立体角との包含関係の変化による変化量として、連続的に捕捉することができる。
【0014】
さらに、前記検査対象における微小な欠陥等により反射光や透過光又は散乱光の強度や方向がわずかに変化した場合でも、その変化する部分によって前記撮像装置の観察立体角内と包含関係にある前記異なる光属性をもつ立体角度領域ごとにその光量に変化が生じるように、前記第1の遮光マスク若しくは前記第1のフィルター手段によって、前記検査対象の各点に照射される検査光の照射立体角形状及びその角度を、前記撮像装置の観察立体角の大きさや形状及び角度との相対関係で適切に設定し、被写体面の特徴点の表面性状に合わせて適切に設定することができ、微小な欠陥等を検出しやすくしたり、または逆に検出されなくしたりすることができる。
【0015】
また、検査対象の各点における照射立体角の中央部のみが暗部領域になり、周辺部のみが明部領域とする等、様々な態様の照射立体角を形成することができると共に、その照射立体角の内部を更に、異なる光属性をもつ前記立体角度領域を、前記観察立体角とのどの方向での包含関係においてもそれぞれが連続的に変化するように形成することにより、前記検査対象における反射光や透過光が前記撮像装置の観察立体角内に入らないようにして、散乱光のみを撮像したり、前記反射光や透過光が前記観察立体角との包含関係で、どの方向に対する包含関係の変化であっても、これをその方向ごとに抽出できるように、前記検査対象における前記反射光や前記透過光の伝搬方向の変化を前記検査対象の各点の明暗情報として観察し、更に前記撮像装置において、前記反射光や前記透過光の立体角に反映される前記照射立体角内の異なる光属性をもつ前記立体角度領域を選択的に撮像可能な第2のフィルター手段を備えることで、前記任意の立体角度領域ごとに、前記検査対象の特徴点において生じた変化を捕捉することができ、様々な検査対象や検出すべき様々な特徴点で生じる微小な光の変化に応じた的確な様態の照射立体角で検査光を照射することができる。
【0016】
ここでいう第2のフィルター手段としては、前記撮像装置において、たとえば、前記検査対象における前記反射光や前記透過光を、異なる光属性ごとに選択的に分光したあとでそのそれぞれの光量を光センサーで撮像しても良いし、光センサーの各ピクセルごとにそれぞれ異なる光属性の光のみ選択的に透過するフィルターを備えても構わない。
【0017】
本発明による、略均一な照射立体角をもつ検査光を前記検査対象に照射した場合に、欠陥等によりその反射方向又は透過方向が変化する際に生じる前記反射光又は透過光の立体角の変化に関し、ごくわずかであってもその変化を捉えられるようにするには、その立体角の変化に対して、前記観察立体角内の光量変化が最大となり、それ以外の変化に対しては最小となるように、前記検査光の照射立体角と前記撮像装置の観察立体角との相対関係を、その形状や角度及び大きさに対して調整することにより、前記反射光又は透過光の立体角の変化のみを選択的に捉えることが可能となる。また、さらに前記照射立体角内に異なる光属性をもつ任意の前記立体角度領域を適切に設定することにより、その立体角度領域ごとの光量変化を同時に観察することができ、前記検査対象の複雑な立体構造を持つ様々な特徴点における光の変化に対応して、その立体構造の各方向における変化に対して、連続的に光の変化を補足することが可能となる。したがって、このように微小な複雑な立体構造を持つ欠陥等によるごくわずかな光の変化を捉えることは、その検査光の照射立体角の形状や角度及び大きさが前記検査対象面の各点に対して異なってしまう従来の照明装置では極めて難しく、特許文献1に示された検査用照明でも、前記物体光の立体角内に含まれる光属性の異なる複数の立体角領域と前期観察立体角との包含関係において、その包含関係が生じるどの方向に対してもその変化が検出できる立体角構造は示されていないが、、本発明による照明装置においては、どの方向に対する包含関係の変化であっても、その変化を連続的に異なる濃淡差として捉えることができるようになる。
【0018】
前記検査対象の各点に照射される検査光の照射立体角の大きさを略均一に制御するとともに、照射立体角の傾き分布を光軸中心に対して調節できるようにするには、前記第1の遮光マスク、及び前記第1のフィルター手段、若しくは両者の機能を統合した前記第3のフィルター手段を、前記レンズの焦点位置を中心とする前後の位置に配置すればよい。以降、前記第1の遮光マスクに代表させて記述すると、すなわち、前記第1の遮光マスクの開口部を変化させることで、前記検査対象の各点における照射立体角を所望の形状や大きさに設定することができる。また、前記第1の遮光マスクを、前記レンズの焦点位置に配置すれば、前記検査光の照射立体角の光軸はすべて前記検査光の光軸に平行となり、前記レンズの焦点位置よりレンズ側に配置すれば前記検査光が広がる方向へ、前記レンズの焦点位置より外側に配置すれば前記検査光が狭まる方向へ、それぞれ前記検査光の照射立体角を傾かせることができる。このように、前記第1の遮光マスクの配置と、その開口部を変化させることにより、前記検査対象からの反射光や透過光の立体角に直接影響を及ぼす前記検査光の照射立体角について様々な調節が可能となり、検査対象と検査対象からの反射光又は透過光又は散乱光を観察する前記撮像装置の観察立体角との相対関係を、所望の明暗情報を得るために適した様態とすることができる。すなわち、このようにすれば、使用する観察光学系がテレセントリック光学系ではなく、視野範囲の外側と光軸中心でその観察立体角の光軸傾きが変化するような光学系に対しても、視野全体に対して、その各点に対する照射立体角と観察立体角が正反射方向になるように設定することが可能となる。
【0019】
またさらに、前記照射立体角内に設定された、異なる光属性をもつ任意の前記立体角度領域は、前記検査対象に対して均一に設定された前記照射立体角内をさらに任意の立体角度領域として設定可能であり、単に照射立体角と観察立体角との相対関係で前記検査対象の各点の明るさが決まるだけでなく、前記立体角度領域ごとのさらに微小な光の変化を、別途前記照射立体角と前記観察立体角との形状や光軸等に関する相対関係を設定しなおすことなく、前記検査対象の視野範囲のすべての点で略同じ条件で、前記観察立体角に対する相対関係の変化として同時に観察することが可能となる。
【0020】
このようにして、本発明による検査用照明装置、及び前記検査用照明装置を使用し、前記検査対象において反射又は透過または散乱する光を撮像する撮像装置とからなる検査システムにおいて、微小で、複雑な立体形状をした特徴点に対する所望の明暗情報をその立体形状のどの方向に対する傾きに対しても連続的に得ることができるのは、前記検査対象の各点における明暗が、前記検査対象の各点からの反射光又は透過光又は散乱光の前記撮像装置に向かう光量で決まっており、その前記光量が前記検査対象の各点からの反射光又は透過光又は散乱光の立体角と前記撮像装置の観察立体角との包含関係で決まっていることから、前記検査対象の各点からの反射光又は透過光に直接影響する前記検査光の照射立体角を略均一に調節する機能を備え、なおかつその照射立体角内を異なる光属性、すなわち波長帯域や偏波面、若しくは光量をもつ任意の立体角度領域に区分し、その立体角度領域を光軸を中心として放射状に配置することによって、前記撮像装置がその区分領域ごとに選択的にその光量を観察でき、なおかつその観察立体角の光軸に対して前記検査対象の各点から返される物体光の光軸がどの方向に傾いても、その傾き方向と傾きの度合いの双方を、前記複数の異なる光属性を持つ区分領域ごとに、連続的な光量の変化として捕捉することができるようにしたことによる。
【0021】
前記撮像装置によって撮像される前記検査対象の明暗情報を、その撮像範囲全体に亘って略均一な変化を示すものとするためには、前記撮像装置によって前記検査対象の各点に形成される観察立体角と、前記検査対象の各点からの反射光又は透過光又は散乱光の立体角との包含関係が略一定に保たれなければならない。これは、前記第1の遮光マスク、及び前記第1のフィルター手段を、乃至は前記第3のフィルター手段を、前記レンズの焦点位置を中心とする前後の位置で移動させることによって、前記検査光の照射立体角、及びその照射立体角内に形成された前記立体角度領域を、略均一な形状及び大きさとし、その傾き角度を調節して前記検査対象の各点における前記観察立体角の傾きに合わせこむことで実現することができる。
【0022】
また、前記検査対象に対する検査光の前記照射立体角、及びその照射立体角内に形成された任意の前記立体角度領域を、その照射範囲の各点に対して前記観察立体角との相対関係を略一定に保ちながら、照射領域又は照射形状や照射パターンを任意に生成可能にするためには、前記第1の遮光マスク、若しくは前記第1のフィルター手段の少なくともいずれかひとつ、若しくは前記第3のフィルター手段に加えて、前記第2の遮光マスク若しくは前記第4のフィルター手段の少なくともいずれかひとつを備え、前記レンズによって前記検査対象に結像する位置近傍に配置すればよい。このようにすることで、前記検査光の前記照射立体角、及びその照射立体角内に形成された任意の前記立体角度領域の形状や大きさ及び傾きを略均一に保ちながら、前記検査光の前記検査対象に対する照射領域及びその照射領域の光属性と、前記検査対象の各点に対するその照射立体角及び特定の光属性をもつ前記立体角度領域の双方を独立に調節することができる。
【0023】
前記検査対象の立体形状等についても容易に検査できるようにするには、前記第1の遮光マスク及び第1のフィルター手段、若しくは第3のフィルター手段に加えて、所定のマスクパターンが形成された前記第2の遮光マスク及び第4のフィルター手段を用い、このパターンを前記検査対象に対して結像させてやればよい。このようなものであれば、前記第1の遮光マスク及び第1のフィルター手段で調節された略均一な照射立体角及び特定の光属性をもつ立体角領域によって、前記撮像装置で均一な明暗変化をもつ明暗情報を得ることができ、前記検査対象の形状に問題があれば前記撮像装置で明暗情報として得られるパターンに歪みが生じるので、容易に形状不良を検出することができる。
【0024】
前記検査対象の各点の反射光又は透過光の立体角と、前記撮像装置が前記検査対象の各点に形成する観察立体角とを、その形状及び大きさ及び傾きに関して略一致させると、前記検査対象に微小な特徴点がある場合でも前記反射光又は透過光の立体角と前記観察立体角との包含関係に変化が生じ、その微小な特徴点に対する明暗情報の変化を得ることできる。この包含関係の変化による明暗情報の変化率は、前記反射光又は透過光の立体角、及び前記観察立体角の大きさを適切に設定することで制御することが可能となるが、このままでは両者の立体角の大きさに依存する一定の明暗情報しか得ることができない。そこで、前記検査対象の各点に対する照射立体角内に異なる波長帯域や偏波面、若しくは光量をもつ任意の立体角度領域を形成すると、それが前記検査対象の各点の前記反射光又は前記透過光の立体角内に、それぞれ異なる波長帯域や偏波面、若しくは光量をもつ立体角度領域として反映されるので、前記特徴点に対する明暗情報の変化が、前記反射光又は前記透過光の立体角内に反映された前記立体角度領域と前記観察立体角との包含関係によって変化するようにすれば、それぞれの前記立体角度領域の分だけの微小な変化量を同時に検知することができる。
【0025】
このようにするためには、ひとつは、前記検査光の照射方向を変え、なおかつ前記検査対象からの光を透過して前記撮像装置で撮像できるようにするためのハーフミラーを備え、前記検査光の前記検査対象の各点に対する照射立体角を適切に調整して、前記撮像装置の前記検査対象の各点に対する観察立体角とその各点から発せられる前記反射光又は前記透過光の立体角の光軸を略一致させること、もうひとつは前記検査光の照射方向に対して前記検査対象に立てた法線に線対称な方向に前記撮像装置の観察立体角を設定し、前記検査対象の各点の反射光又は透過光の立体角と前記撮像装置の前記検査対象の各点に対する観察立体角の光軸を略一致させることで実現することができる
【0026】
さらに、前記撮像装置で、前記反射光又は前記透過光の立体角内に反映された、それぞれ異なる波長帯域や偏波面、若しくは光量をもつ前記立体角度領域の光を選択的に撮像可能な第2のフィルター手段を備えることで、それぞれの前記立体角度領域と前記観察立体角との包含関係によって発生する明暗変化を同時に検知することができる。
【発明の効果】
【0027】
このように本発明の検査用照明装置、検査システムによれば、検査対象の各点に照射される検査光の照射立体角及びその暗部領域、及びその照射立体角内に形成される異なる波長帯域や偏波面、若しくは光量をもつ立体角度領域の大きさや態様を自由に調整することができるので、前記検査対象の各点からの反射光又は透過光又は散乱光、すなわち物体から返される物体光の立体角、及びその立体角内に反映された、それぞれ異なる波長帯域や偏波面、若しくは光量をもつ前記立体角度領域と、前記撮像装置で前記検査対象の各点に形成される観察立体角との包含関係を略均一に設定することができ、従来検出の難しかった微小で複雑な立体構造を持つ欠陥等であっても、その立体構造に起因する前記物体光の光軸の傾きの変化を、その傾きがどの方向であっても、その傾き方向と傾き度合いの双方を、前期観察立体角と前期物体光の立体角、及びその立体角内に反映された、それぞれ異なる波長帯域や偏波面、若しくは光量をもつ前記立体角度領域と、前記撮像装置で前記検査対象の各点に形成される観察立体角との包含関係の変化をもって、光属性の異なる複数の光量変化として検出することができ、しかも前記欠陥が検査視野内のどこにあって略同一の検出条件で検出する事が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の一実施形態に係る検査用照明装置、及び検査システムの外観を示す模式的斜視図。
図2】同実施形態における検査用照明装置、及び検査システムの照射立体角を形成する主要部分の内部構造、及び検査対象の各点における照射立体角を示す模式図。
図3】同実施形態における検査用照明装置、及び検査対象を傾けて設置した検査システムの照射立体角を形成する主要部分の内部構造、及び検査対象の各点における照射立体角を示す模式図。
図4】第1遮光マスク及び第1フィルター手段、及び第3フィルター手段の構成例。
図5】従来の照明使用における検査用照明装置、及び検査システムの構造、及び検査対象の各点における照射立体角を示す模式図。
図6】本発明の一実施形態における検査用照明装置、及び検査システムの照射立体角を形成する主要部分の構造、及び検査対象の各点における照射立体角を示す模式図。
図7】第2の遮光マスク及び第4のフィルター手段を加えた実施形態における検査用照明装置、及び検査システムの構造、及び検査対象の各点における照射立体角を示す模式図。
図8】本発明の一実施形態に係る検査用照明装置の照射立体角を形成する主要部分、及び検査システムの検査対象との距離をパラメータとした検査対象の各点における照射立体角を示す模式図。
図9】本発明の一実施形態に係る検査用照明装置、及び検査システムの第1の遮光マスクの開口部の大きさをパラメータとした検査対象の各点における照射立体角を示す模式図。
図10】検査対象の部分的な傾きによる反射光の立体角の変化と照射立体角、及び観察立体角との相対関係。
図11】照射立体角中に異なる光属性の立体角領域がある場合の検査対象の部分的な傾きによる反射光の立体角の変化と照射立体角、及び観察立体角との相対関係。
図12】従来照明と本発明による照明の照射立体角の比較
図13】本発明による照射立体角形状の設定例
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の第1実施形態について説明する。
【0030】
第1実施形態の検査用照明装置100と、撮像装置Cにより構成される検査システム200は、ハーフミラー4を用いて、検査対象Wを撮像する方向と、検査対象Wを照明する方向とが一致する、いわゆる同軸照明であり、検査対象Wの欠陥などの特徴点が撮像装置Cにより撮像された画像中に明暗差として現れるようにするために用いられるものである。なお、図2、及び図5から図8では、ハーフミラーを有する場合を点線で、無い場合を実線で表記した。また、第1のフィルターF1は特定の属性をもつ光を選択的に透過させ、その属性をもつ光で構成される立体角領域を形成するための手段であり、光を遮蔽するか透過するかで照射立体角を形成する第1の遮光マスクM1と、立体角を形成するという作用では同じであり、両者の機能を統合して単一の部品とした第3のフィルター手段F3と共に、図1から図3、及び図6から図9では、第1の遮光マスクM1を代表として図示し、対応記号のみM1にF1,F3と並記した。ここで、検査対象Wの欠陥などの特徴点とは、例えば、表面の傷、凹み、歪み、外観の形状、穴の有無等多岐に亘る不具合やその他の特徴種を含むものである。
【0031】
前記検査用照明装置100は、図1の斜視図、及び図2の模式図に示すように、概略筒状の筐体を有するものであり、その内部と検査対象W、及び撮像装置Cに到る部分に、検査光を面光源1から検査対象Wに照射する照射光路L1と、検査対象Wからの反射光又は透過光が撮像装置Cに至るまでの反射・透過光路L2とが形成されており、ハーフミラー4が設置されている場合には、前記筐体の上面開口側に撮像装置Cが取り付けられ、前記筐体の下面開口側に検査対象Wが載置されるものである。
【0032】
なお、図1、及び図2に示すように、ハーフミラー4が設置されている場合には、照射光路L1は、面光源1からハーフミラー4に到る部分と、ハーフミラーによって部分的に反射されて検査対象に到る部分から構成され、ハーフミラー4が設置されていない場合には、照射光路L1によって直接検査対象に検査光が照射され、図2の場合、検査対象Wからの透過光が撮像装置Cに到るまでの光路がL2となる。
【0033】
前記照射光路L1上には、検査光が進む順番に、検査光を射出する面光源1と、レンズ2の焦点位置を中心とする前後の位置に設けられた第1の遮光マスクM1と、第1のフィルター手段の少なくともいずれかひとつ、若しくはその代わりに両者の機能を兼ね備えた第3のフィルター手段F3と、前記面光源1から射出された検査光から検査対象Wに対する照射立体角を形成するレンズ2とが配置され、ハーフミラーが設置される場合には、さらに加えて、前記検査光を下方へと部分反射するように、前記反射・透過光路L2及び照射光路L1に対して傾けて設けられたハーフミラー4を配置し、また、さらに、検査光の照射領域を形成する第2の遮光マスク及び第4のフィルター手段を設置する場合は、前記面光源1と前記第1の遮光マスク及び前記第1のフィルター手段若しくは第3のフィルター手段との間であって、前記レンズ2によって前記検査対象Wに結像される位置近辺に第2の遮光マスクM2若しくは特定の光属性をもつ照射領域を形成する第4のフィルター手段の少なくともいずれかひとつが設置され、前記検査光は、前記検査対象Wへと照射される。ただし、第2の遮光マスクが設置される場合は、図7でその具体的な機能を説明する。
【0034】
また、前記反射・透過光路L2上には、ハーフミラーが設置される場合には、ハーフミラー4が設置され、このハーフミラー4によって部分透過された反射光が撮像装置Cによって観察され、ハーフミラーが設置されない場合は、図2においては検査対象Wからの透過光が撮像装置Cに到るまでの光路がL2となり、この光路L2上には図1及び図2においてはハーフミラー4以外に存在するものはないが、場合によっては前記検査対象からの迷光をカットしたりする目的で、検査対象からの反射光又は透過光を部分的に遮光するマスク若しくは絞り等を設置してもよい。
【0035】
以下では各部材の配置や構成、機能について詳述する。
【0036】
前記面光源1は、例えばチップ型LEDや拡散板等により略均等拡散面をもつ光射出面11が形成されたものである。また、前記面光源1は、図1に示すように、筒状の筐体内を照射光軸方向に進退可能に取り付けられており、検査光の照射開始位置を調整できるようにしてある。このようにすると、後述する第1の遮光マスクM1、及び第1のフィルター手段F1、若しくは両者の機能を兼ね備えた第3のフィルター手段F3による照射立体角、及びその照射立体角内の異なる光属性を持つ任意の立体角度領域の制御や、第2の遮光マスクによる照射領域の制御とは独立して、前記第1の遮光マスクM1、及び前記第1のフィルター手段F1、若しくは両者の機能を兼ね備えた前記第3のフィルター手段F3と、前記第2の遮光マスクM2及び前記レンズ2及び前記面光源1の位置関係で決まる検査光の光路に対して、前記検査対象Wにおける検査光の均一度や輝度分布等を制御することができる。照射領域によって照射光路が異なるので、例えば、前記面光源1に所定の輝度分布、若しくは発光波長分布、偏光特性分布等を備えておくと、照射領域によってその分布を変化させることもできるし、均一にすることもできる。
【0037】
前記第2の遮光マスクM2、及び前記第4のフィルター手段は、図1に示すように、筒状の筐体内を照射光軸方向に進退可能に取り付けられており、前記レンズ2と前記検査対象との距離によって、前記第2の遮光マスク自身が前記検査対象に対する結像位置近傍に調整できるようにしてある。このようにすることによって、図7に示すように、前記面光源1からの照射光を部分的に遮光、若しくは特定の属性をもつ光のみを遮光することができ、前記第2の遮光マスクの開口部、若しくは前記第4のフィルターの特定の属性をもつ光のみを透過する部分の形状が検査対象Wに略結像されることから、前記第2の遮光マスクM2の開口部の形状や大きさ、若しくは前記第4のフィルター手段のパターン形状を変えることにより、前記検査対象Wにおける検査光の照射範囲、若しくは特定の属性をもつ光を照射する照射領域を任意に設定することができる。また、この調整や設定は、後述する前記第1の遮光マスクM1、及び前記第1のフィルター手段F1、若しくは両者の機能を兼ね備えた前記第3のフィルター手段F3による照射立体角の制御とは独立して行うことができる。
【0038】
前記第1の遮光マスクM1、及び前記第1のフィルター手段F1、若しくは両者の機能を兼ね備えた前記第3のフィルター手段F3は、前記レンズ2と前記面光源との間であって、前記レンズ2の焦点位置を中心とする前後の位置に設けられ、図1に示すように、筒状の筐体内を照射光軸方向に進退可能に取り付けられている。ここで、前記第1の遮光マスクM1を前記第1のフィルター手段F1、及び両者の機能を兼ね備えた前記第3のフィルター手段F3の代表例として説明すると、例えば、前記第1の遮光マスクM1を前記レンズ2の焦点位置に設けた場合は、図2のように、前記検査対象Wの各点における照射立体角ISの大きさと形状と傾き角がすべて同じになり、このことは、図3に示したように、前記検査対象の各点と前記レンズ2との距離が異なる場合でも同様である。また、このことは、図8に示すように、前記ハーフミラー4の有無に拘わらず、また前記検査対象Wと前記レンズ2との距離にも拘わらず、同様である。以上の前記第1の遮光マスクM1を代表例として説明したことは、前記第1のフィルター手段F1、及び両者の機能を兼ね備えた前記第3のフィルター手段F3によって形成される前記立体角領域についても同様である。
【0039】
次に、前記第1の遮光マスクM1、及び前記第1のフィルター手段F1、若しくは両者の機能を兼ね備えた前記第3のフィルター手段F3が、前記レンズ2の焦点位置の前後にある場合について、前記第1のフィルター手段F1を代表例として説明する。
【0040】
図9の(a)に示すように、まず、前記第1の遮光マスクM1が極微小な透過部分で焦点位置近傍にある場合、照射立体角はほぼ0に近くになり、前記第1の遮光マスクM1が前記レンズ2の焦点位置より前記レンズ2の側にあるとき、前記検査光は、図9の(a)の実線で示したように光軸中心より外側に広がっていくように傾いた光路で形成され、前記第1の遮光マスクM1が前記レンズ2の焦点位置より前記面光源1の側にあるとき、前記検査光は、図9の(a)の破線で示したように光軸中心に集光するように傾いた光路で形成される。一方で、前記検査光の前記検査対象の各点に対する照射立体角の形状及び大きさは、図9の(b)(c)に示すように、前記第1の遮光マスクM1の開口部の形状及び大きさで一律に決定され、これとは独立に、前記第1の遮光マスクM1の位置によって、その照射立体角の傾きを制御することができる。
【0041】
図9におけるP1、P2、P3は、前記レンズ2の物体側焦点位置の距離にある点であり、少なくともP1を通る光は前記レンズ2によって、前記面光源1より照射された光軸に平行な光路を取る光のみであり、前記第1の遮光マスクM1によってこの光路の開口部が例えば直径rである場合、P1における照射立体角は、図9下部に示したように前記レンズ2の焦点距離fと開口部の直径rのみによって一意に決まり、理想的にはレンズよりP1と同じ距離にあるP2、P3も同様である。また、前記レンズ2の焦点距離より遠い任意の点であるP4、P5でも、理想的には、その照射立体角はすべてP1での照射立体角と同じ形状、同じ大きさとなる。
【0042】
前記第1の遮光マスクM1、及び前記第1のフィルター手段F1、及び前記第3のフィルター手段F3は、たとえば図4に示したように、ほぼ光を遮断する遮光部M1が任意の形状で開口部を形成しており、図4では周囲が遮光部で中心部か開口部として図示しているが、その開口部の一部が更に遮光部となっても構わない。また、遮光部が特定の属性をもつ光のみを遮光する部分であってもよく、さらに図4では、M1の開口部に前記第1のフィルター手段F1が設定されており、ここでは3種類の光属性の異なる立体角領域を形成するためのパターンF11、F12、F13が設定されている。ここでは光軸を中心として放射状のパターンとなっているが、これも前記検査対象の着目する特徴点によって任意のパターンに最適化してもよい。この前記第1の遮光マスクM1と前記第1のフィルター手段F1を統合したものが前記第3のフィルター手段F3に相当する。
【0043】
図4に示した、前記第1の遮光マスクM1、及び前記第1のフィルター手段F1、若しくは前記第3のフィルター手段F3を使用すると、例えば図11に示すように、前記検査対象Wの1点Pに対して照射立体角ISを形成することができる。この照射立体角はISは、前記第1の遮光マスクM1の中心部の開口部によってその一番外側の形状が決定され、さらにその照射立体角内に、前記第1のフィルター手段F1によって、それぞれ前記第1のフィルター手段F1のマスクパターンF11、F12、F13に対応して、それぞれ異なる光属性を持つ立体角領域IS1、IS2、IS3が形成される。
【0044】
以上で述べた、照射立体角が略均一に形成できる本発明の検査用照明に対して、従来の通常の光源面のみを用いる照明では、図5に示したように、検査対象Wの各点に対する検査光の照射立体角ISは、各点によってその形状や大きさ、及び傾きが異なる。これは、前記検査対象Wの各点に対する照射立体角ISが、その各点から照明を逆に見たときの面光源1の射影形状、及び大きさ、及び角度で一意に決まっているからである。一方で、前記検査対象の各点における観察立体角OSは、前記撮像装置Cの瞳位置、及び瞳形状、及び瞳の大きさと前記検査対象の各点との相対関係で決まっている。撮像装置Cによる各点の明るさは、各点において照射立体角ISを直接反映する反射光の立体角RS若しくは透過光の立体角TSと前記観察立体角OSとの包含関係で決まっており、図5ではこの包含関係が場所によってまちまちであり、反射光の立体角RS若しくは透過光の立体角TSの変化が微小であると、検査領域の各点で、同じ光の変化量を得ることが難しくなることがわかる。
【0045】
一般に、主光軸以外の観察立体角の傾き度合いは、結像光学系の特性によって決まっており、それは通常のレンズの性質上、主光軸から同心円状に変化している。このような結像光学系に対して、均一な光の変化、特に前記検査対象の各点における反射、若しくは透過光の立体角の傾きの変化に対して均一な変化量を得るためには、前記検査対象に対する前記検査光の照射立体角の傾きを主光軸に対して同心円状に変化させれば、各点における照射立体角と観察立体角の相対関係を一定に保つことができる。
【0046】
図6は、本発明による第1実施形態の検査用照明装置100の一部を用い、撮像装置Cにより構成される検査システム200において、撮像装置Cによって形成される、前記検査対象の各点における観察立体角OSに対して、前記第1の遮光マスクM1、及び前記第1のフィルター手段F1、若しくは前記第3のフィルター手段F3の位置を、前記レンズ2の焦点位置よりずらせて設定することにより、前記検査対象W上の各点において照射立体角ISを直接反映する反射光の立体角RS若しくは透過光の立体角TSの光軸と前記観察立体角OSの光軸を一致させており、このようにすると、前記検査対象W上の各点で反射光の立体角RS若しくは透過光の立体角TSが変化したときに、各点において同じ変化率でその変化を、前記観察立体角OSとの包含関係の変化、すなわち各点の明るさ変化として補足することが可能となる。このとき、もし前記撮像装置Cによって形成される、前記検査対象の各点における観察立体角OSの光軸がすべて同じ方向を向くテレセントリック光学系であれば、前記第1の遮光マスクM1、及び前記第1のフィルター手段F1、若しくは前記第3のフィルター手段F3の位置を、前記レンズ2の焦点位置に設定して、形成される照射立体角ISの光軸をすべて同じ方向とすれば、前記検査対象W上の各点における観察立体角OSの光軸と一致させることができる。
【0047】
ここで、図10を用いて、照射立体角と観察立体角との包含関係と前記撮像装置が得られる明暗情報について説明する。
【0048】
図10の(a)は、前記検査対象W上の点Pに着目して、前記点Pに照射立体角ISなる検査光を照射した場合を考え、前記検査対象の点Pを含む面が部分的にφだけ傾いたときに、点Pの明るさがどのように変化するかを、前記撮像装置Cが点Pに形成する観察立体角OSに対して、点Pからの反射光の立体角RSが立体角RS′のように変化したときの、各立体角の相対関係がどのようになるかを示している。
【0049】
図10の(a)において、点Pからの前記反射光の立体角RS及びRS′の形状と大きさは、点Pに対する検査光の照射立体角ISに等しい。また、前記反射光の立体角RSの傾きは、点Pに立てた法線に対して前記検査光の照射立体角ISの線対称となる方向に、前記検査光の照射立体角ISの傾きθと同じだけ傾いている。このとき、前記撮像装置Cが点Pに対して形成する観察立体角OSが、前記反射光の立体角RSとその光軸が一致しており、なおかつ前記反射光の立体角RSに比べてその大きさがごく小さいとすると、前記撮像装置Cで捉えられる点Pの明るさは、その観察立体角OSの大きさで制限され、この包含関係が変わらない範囲で前記反射光の立体角RSが傾いても変化することはない。ただし、照射立体角IS、反射光の立体角RS及びRS′内の光エネルギーはその立体角内で均一に分布しているもと仮定する。
【0050】
次に、図10の(a)において、前記検査対象Wの点Pを含む面が部分的にφだけ傾いた場合を考えると、点Pからの反射光の立体角RSは、図中点線で示したRS′のように2φだけ傾くことになる。このときに、点Pからの反射光の立体角RS′が、前記撮像装置Cが点Pに対して形成する観察立体角OSとなんらの包含関係をもたなければ、前記撮像装置Cから見た点Pの明るさは0となるが、前記撮像装置Cが点Pに対して形成する前記観察立体角OSと部分的に包含関係があれば、両者が重なった立体角部分に含まれる光が点Pの明るさとして反映される。すなわち、点Pからの反射光の立体角RS′の平面半角が、前記反射光の傾き角2φから前記観察立体角OSの平面半角を差し引いた角度より大きく、なおかつ前記反射光の傾き角2φに前記観察立体角OSの平面半角を加えた角度より小さい場合は、点Pの明るさが前記反射光の傾き角2φによって変化する。しかし、もし前記照射立体角ISの平面半角が、前記検査対象Wの部分的な傾きによって生じる反射光の傾き角2φに前記観察立体角OSの平面半角を加えた角度より大きい場合は、点Pの明るさは変化しない。また、観察立体角OSの平面半角が、前記反射光の傾き角2φと前記反射光の立体角RSの平面半角を加えたものより大きければ、やはり点Pの明るさは変化しない。このことは、結局、点Pの明るさは、点Pからの反射光の立体角RSと点Pに対する観察立体角OSの包含関係で決まっており、点Pに照射される検査光の照射立体角ISと点Pに対する観察立体角OSとの、形状、及び大きさ、及び傾きに関する相対関係を設定することで、点Pの明るさの変化を制御できる、ということを示している。
【0051】
図10の(b)は、(a)において検査光の照射光軸と点Pの法線及び点Pからの反射光軸を含む面での断面図であり、各要素の傾きとその包含関係がより定量的に把握できる。ただし、図10の(b)では、観察立体角OSが、照射立体角IS、つまり反射光の立体角RSより大きい場合を図示した。検査対象Wが傾いて、点Pからの反射光の立体角RSが点線で示したRS′になると、本図では前記観察立体角OSとの包含関係がなくなり、その観察立体角OS内の光エネルギーは0となるので、この観察立体角OSに含まれる光を再び点に集めて結像させても、点Pは真っ暗にしか見えない。しかし、この場合も前記照射立体角ISと前記観察立体角OSの相対関係を調整することにより、前記反射光の立体角RSと前記観察立体角OSとの包含関係を生じさせると、その重なり部分の大きさの変化に従って、点Pの明るさが変化することになる。
【0052】
図10の(b)において、ここで、もし観察立体角OSの形状及び大きさが照射立体角ISと同じで、点Pからの反射光の立体角RSの傾きと一致しているとすると、その状態から少しでも検査対象Wが傾くと、少なくともその分だけ観察立体角OSと反射光の立体角RSの重なっている部分が減少するので、観察立体角OSを介して見た点Pの明るさはその分変化する。しかもその各立体角が小さければ小さいほど、検査対象Wが同じ角度だけ傾いたときの点Pの明るさの変化量は大きくなり、逆に大きければ大きいほど、検査対象Wが同じ角度だけ傾いたときの点Pの明るさの変化量は小さくなる。また、照射立体角ISと観察立体角OSの形状や大きさや傾き等を、検査対象の所望の特徴点で発生する光の変化に対応して適切に設定すれば、これまで安定に検出できなかった特徴点の検出が精度良くできるようになる。本発明では、この原理に着目し、照射立体角の形状や大きさ及び傾きを精度良く制御することが可能な検査用照明装置が考え出されるに到った。
【0053】
次に図11を用いて、検査対象に照射される照射立体角内に異なる光属性を持った立体角領域が
照射光の光軸に対して放射状に存在する場合に、前記検査対象上の点Pの明るさが、前記点Pより反射される反射光の立体角と撮像装置Cが前記点Pに対して形成する観察立体角との包含関係によってどのように変化するかを記述する。
【0054】
図11に示した照射立体角ISは、その内部が異なる光属性を持った立体角領域IS1、IS2、IS3で形成されている。このとき、検査対象W上の点Pから反射される反射光の立体角RSは、前記照射立体角ISと同じで、その光軸は前記検査対象W上の点Pに立てた法線に対して、前記照射立体角ISと線対称の方向であり、前記反射光の立体角RSの内部にも、前記照射立体角内に形成されていた異なる光属性を持った立体角領域IS1、IS2、IS3に対応して、そのそれぞれと同じ光属性を持つ立体角領域RS1、RS2、RS3が形成される。
【0055】
図11では、簡単のため、撮像装置Cによって前記検査対象W上の点Pに形成される観察立体角OSが、前記反射光の立体角RS、及び前記反射光の立体角RSないに形成されている異なる光属性を持つ立体角領域RS1、RS2、RS3に対して
その変化を捕捉するために十分な大きさを持つ場合を考えており、図11の(a)では、前記観察立体角OSが前記立体角領域RS1に完全に包含されている場合を示している。このときに、前記撮像装置Cにおいて、前記異なる光物性の光をそれぞれ選択的に検出できる第2のフィルター手段を備えておれば、前記検査対象上の点Pの明るさは、前記立体角領域RS1のもつ光属性の光と、前記立体角領域RS2のもつ光属性の光と、前記立体角領域RS3のもつ光属性の光の、ある割合で表される明るさになる。
【0056】
次に、図11の(b)に示すように、前記検察対象Wの面がφだけ傾いた場合を考えると、前記反射光の立体角RSの光軸は2φだけ方向き、前記観察立体角OSは、前記異なる光物性を持つ立体角領域のRS1とRS2、及びRS3に、或る割合で包含されており、その割合は、前記反射光の立体角RSの光軸がどの方向に傾いても、異なる割合となる。このとき、前記検査対象上の点Pの明るさが、前記立体角領域RS1とRS2、及びRS3のもつ光属性の光の或る割合で、それぞれがある明るさに補足されるので、その割合の変化によって、前記反射光の立体角RSの光軸がどの方向に傾いても、その方向と傾き度合いの双方を識別することが可能となる。
【0057】
今、分かりやすくするために、図11に示す、それぞれ異なる光物性を持つ前記立体角領域RS1、RS2、RS3が、たとえばそれぞれ赤色光、緑色光、青色光であるとして、前記撮像装置Cがカラーカメラだとすると、図11の(a)の場合は、前記検査対象W上の点Pは、赤と緑と青色の光が面積比ではほぼ等分の比率で捕捉されるので、その強度が同じであれば、白色で或る明るさに見え、図11の(b)の場合は、赤みが濃い白色で、ある明るさに見えることになる。また、前記検査対象Wの傾き角φが徐々に大きくなる場合を考えると、前記検査対象W上の点Pはその傾き角が大きくなるに従って、白色から徐々に赤色を帯びてきて連続的に変化することになるが、内部に異なる光属性を持つ立体角領域がない照射立体角だと、その照射立体角と観察立体角との包含関係で決まる明暗情報のみとなるが、本発明によると前記検査対象Wの傾き角φをより広い範囲で連続的に捕捉することが可能となるばかりでなく、その傾きの方向性も識別することが可能となる。
【0058】
次に、本発明における前記ハーフミラー4は、概略正方形状の枠体により支持された円形状のごく薄いものである。このようなハーフミラー4を用いることで、ハーフミラー4の反射又は透過が起こる表面と裏面の乖離部分をごく薄く形成することができ、前記検査対象Wからの反射光がハーフミラー4を透過する際に、生じる微小な屈折や内面反射等によるゴーストを最小限にすることができる。
【0059】
前記第1の遮光マスク、及び前記第2の遮光マスクは、一般的な光学材料である複数枚の羽根を使用した絞りであってもよく、または任意の開口部をもつごく薄い遮光板と絞りを組み合わせてもよく、さらには電子的にその開口部の設定が可能な液晶等の部材を用いても良い。
【0060】
また、前記第1の遮光マスクの開口部の別な実施形態として、例えば、その開口部が円状ではなく、楕円、若しくは細長いスリット状にすることで、前記検査対象の特徴点を検出するに当たり、その検出感度に異方性をもたせることができる。すなわち、このとき、前記検査対象の各点に対する照射立体角は前記第1の遮光マスクのスリットと同じ長手方向に広がり、短手方向にはごく薄い照射立体角となり、この場合は長手方向の前記検察対象の傾きの検知感度は低く、短手方向の検知感度のみが高く設定できる。ただし、この場合は前記撮像装置が前記検査対象の各点に形成する観察立体角の形状や大きさ及び傾きを、照射立体角の短手方向に合わせて、相対的にほぼ同等になるように設定する必要がある。若しくは、前記撮像装置が前記検査対象の各点に形成する観察立体角の大きさを十分小さく設定すると、照射立体角の広がっている分、検出する傾きにしきい値を設定することが可能となる。
【0061】
また、前記第1の遮光マスクの開口部の別な実施形態として、例えば、その開口部が同心円状の遮光部と開口部とを備えることによって、その幅を適当にとれば、前記検査対象の部分的な傾きに対して、或る一定の傾き角度範囲だけを検出することもできるし、必要な方向にその幅を必要なだけ設定すると、その検出角度に異方性をもたせることもできる。若しくは、このような検査用照明を多段に設ければ、表面の傾き度合いに応じて、これを分類検出することができ、さらに加えて、前記第1の遮光マスクを電子的にその開口部の設定が可能な前記液晶等の部材とすれば、この開口パターンを動的に切り替えることによって、複数種類の明暗情報が得られ、さらに詳細な分類検出を行うことができる。
【0062】
さらにまた、前記第1のフィルター手段F1においては、その異なる光属性として、波長帯域や偏光状態、輝度等が考えられ、たとえば前記光源1を白色光を発する光源として、前記第1のフィルター手段F1で、それを異なる波長帯域の光で構成される任意の立体角領域を形成することができ、同時に異なるパターンで異なる波長帯域の光を任意の方向から任意の形状で、しかも前記検査対象Wの視野範囲のすべての点において同一条件で照射することが可能となる。さらに加えて、前記第1のフィルター手段F1を電子的にそのパターンや透過率等の設定が可能なカラー液晶等の部材とすれば、このフィルターパターンを動的に切り替えることによって、複数種類の明暗情報が得られ、さらに詳細な分類検出を行うことができる。
【0063】
また、前記第2のフィルターの構成例として、異なる光属性を持つ立体角領域を、放射状に明確に区分しても良いし、徐々に異なる光属性を持つようにグラデーションをもたせることもできる。このようにすると、たとえば、前記検査対象からの反射光、若しくは透過光が、照射角度、または観察角度によって輝度の異なる場合、これを均一な輝度にすることも逆に輝度の変化を付けることもできるようになる。たとえば前記検査対象Wの表面から直接反射される光と、キズなどの散乱光を発する部分との輝度差を自在に調整することが可能となる。これは、正反射光として前記検査対象Wの表面から直接反射される光の角度範囲に対応する照射立体角領域の光量を少なくし、徐々にそれ以外の立体角領域の光量を大きくすることにより、実現することができ、さらにどんな方向へのどんな傾き角に対しても、それを観察立体角との包含関係において連続的に変化させることができる。
【0064】
本発明による顕著な効果は、前記第1の遮光マスク及び前記第1のフィルター手段による任意のパターンによって、任意の形状の照射立体角が、しかもその光属性を任意に変化させながら、前記撮像装置Cの撮像する前記検査対象Wの視野範囲全体のすべての位置において、すべて同条件で照射光を照射することができ、しかもその照射光軸や照射立体角を、前記撮像装置の光学特性に好適な状態に設定することができる点にある。図12の(a)は、一般的な従来照明で、検査対象Wを照射したときに、その検査対象Wの異なる位置P、P′におけるそれぞれの照射立体角IS、IS′を示しているが、両者で照射立体角の形状や光軸が異なっていることが分かる。また、図12の(b)は、本発明による照射光の様態を示しており、前記検査対象Wの視野範囲全体のすべての位置において、すべて同条件で照射光を照射することができる。このようにすることによって、特に前記検査対象Wから返される反射光や透過光を観察する明視野照明法において、顕著な効果を期待することができる。ここで、反射光とは鏡面などから返される正反射光のことを指し、透過光とは透明物体を透過してくる正透過光を指す。また、散乱光を観察する暗視野照明法においても、その散乱光が照射される光属性や照射立体角に依存して変化するものも多く、従来照明では実現できなかった微小な変化を検出することが可能となる。
【0065】
図13に、前記第1の遮光マスク及び前記第1のフィルター手段、若しくは前記第3のフィルター手段による任意のパターンと、その結果形成される照射立体角の形状例を示す。図13の(a)は、前記第1の遮光マスク及び前記第1のフィルター手段で、光属性の異なる立体角領域が、光軸を中心に放射状に形成されるものであるが、(b)は、一定の角度変化に対して、その変化を抑制する効果があり、(c)も同様である。(d)に関しては、放射状に配置された光属性の異なる立体角領域に対して同心円状に、さらに放射状に配置された光属性の異なる立体角領域が配置されており、傾きの方向を識別するするとともに、さらにその傾きの度合いを精密に識別し、或いはより大きな傾き角までを捕捉することができる。
【0066】
また、前記第2の遮光マスクは、前記検査対象に結像されることから、前記遮光マスクの開口部に、特定の属性を持つ光のみを透過する第4のフィルター手段を設けることにより、前記検査光の照射範囲ごとにその光属性を設定することが可能となる。このとき、光を照射しない範囲を設定する必要がなければ、前記第4のフィルター手段のみによって、透過する特定の光属性ごとにその照射範囲を設定してもよい。
【0067】
さらに、前記第2の遮光マスクに、電子的にその開口部の設定が可能な前記液晶等の部材とすれば、この開口パターンを動的に切り替えることによって前記検査光の照射領域を変更し、前記検査対象に異なる照射領域必要とするものがあっても、それぞれの領域に合わせて検査光を照射し、複数種類の明暗情報を得ることができる。
【0068】
さらに、また、前記面光源を、その照射面の発光波長分布や輝度分布、偏光状態分布を動的に変更できるカラー液晶等と白色光源を組み合わせて構成することにより、さらに様々な種類の検査対象に対応することが可能になる。
【0069】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な変形や実施形態の組み合わせを行っても構わない。たとえば、検査対象の各点から返される物体光の立体角に対して十分小さな観察立体角を用い、照射立体角の全領域を、この観察立体角の大きさ相応に小さな領域に区分して、その必要な部分の光物性を異なるものとすることで、検査対象の傾き面の内、ある特定の傾き方向のある特定の傾き度合いの領域だけを捕捉するようにすることなどである。
【符号の説明】
【0070】
200 :検査システム
100 :検査用照明装置
1 :面光源
11 :光射出面
2 :レンズ
4 :ハーフミラー
C :撮像装置
L1 :照射光路
L2 :反射・透過光路
M1 :第1遮光マスク(及びその遮光部)
F1 :第1フィルター手段
F11 :第1フィルター手段の或る光属性1を持つ光を透過する部分
F12 :第1フィルター手段の或る光属性2を持つ光を透過する部分
F13 :第1フィルター手段の或る光属性3を持つ光を透過する部分
F2 :第2フィルター手段
F3 :第3フィルター手段
F4 :第4フィルター手段
M2 :第2遮光マスク
W :検査対象
P :検査対象W上の或る点
P′ :検査対象W上の別の点
P1 :レンズ2の物体側焦点
P2 :レンズ2からPIと同一距離の点
P3 :レンズ2からPIと同一距離の点
P4 :レンズ2の物体側焦点以遠の任意の点
P5 :レンズ2の物体側焦点以遠の任意の点
IS :照射立体角
IS′ :別の照射立体角
IS1 :照射立体角内の異なる光属性を持つ立体角領域1
IS2 :照射立体角内の異なる光属性を持つ立体角領域2
IS3 :照射立体角内の異なる光属性を持つ立体角領域3
OS :観察立体角
RS :反射光の立体角
RS′ :反射光の立体角
RS1 :反射光の立体角内の異なる光属性を持つ立体角領域1
RS2 :反射光の立体角内の異なる光属性を持つ立体角領域2
RS3 :反射光の立体角内の異なる光属性を持つ立体角領域3
TS :透過光の立体角
【要約】
【課題】被検査対象の特徴点で生じる光の変化がわずかであっても、その光の変化量をその全視野範囲で判別可能とし、その特徴点を、同条件で検出する事が可能な検査用照明装置を提供する。
【解決手段】前記検査用照明装置100において、面光源1と、前記面光源1と検査対象Wとの間に、遮光マスクM1及びフィルター手段F1の少なくともいずれかひとつがそのレンズの焦点位置を中心として位置するように、前記検査対象Wに近い側にレンズ2を配置し、前記面光源1から放射された光が前記レンズ2によって前記検査対象Wに照射される際の照射立体角が、特定の光属性を持つ、光軸を中心に放射状に配置された立体角領域をもつようにして、被検査対象の特徴点で生じる変化に合わせ、前記検査光の照射立体角の形状や大きさ及び傾き角と前記照射立体角内の特定の光属性をもつ立体角領域を、その視野全域において略均一に設定できるようにした。
【選択図】図1
図1
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図13