(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の負極活物質の重量Aに対する前記第2の負極活物質の重量Bの比率がA:B=99:1〜65:35である、請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池用負極。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに以下に記載した構成要素は、適宜組み合わせることができる。
【0023】
(リチウムイオン二次電池)
図1は、本実施形態とするリチウムイオン二次電池を示す模式断面図である。
図1に示すように、リチウムイオン二次電池100は、主として、積層体30、積層体30を密閉した状態で収容するケース50、及び積層体30に接続された一対のリード60、62を備えている。
【0024】
積層体30は、一対の正極10、負極20が、セパレータ18を挟んで対向配置されたものである。正極10は、板状(膜状)の正極集電体12上に正極活物質層14が設けられたものである。負極20は、板状(膜状)の負極集電体22上に負極活物質層24が設けられたものである。正極活物質層14の主面及び負極活物質層24の主面が、セパレータ18の主面にそれぞれ接触している。正極集電体12及び負極集電体22の端部には、それぞれリード60、62が接続されており、リード60、62の端部はケース50の外部にまで延びている。
【0025】
以下、正極10及び負極20を総称して、電極10、20といい、正極集電体12及び負極集電体22を総称して集電体12、22といい、正極活物質層14及び負極活物質層24を総称して活物質層14、24ということがある。まず、電極10、20について具体的に説明する。
【0026】
(正極集電体)
正極集電体12は、導電性の板材であればよく、例えば、アルミニウム又はそれらの合金、ステンレス等の金属薄板(金属箔)を用いることができる。
【0027】
(正極活物質層)
正極活物質層14は、正極活物質、正極バインダー、及び、必要に応じた量の導電助剤から主に構成されるものである。
【0028】
(正極活物質)
正極活物質としては、リチウムイオンの吸蔵及び放出、リチウムイオンの脱離及び挿入(インターカレーション)、又は、リチウムイオンと該リチウムイオンのカウンターアニオン(例えば、PF
6−)とのドープ及び脱ドープを可逆的に進行させることが可能であれば特に限定されず、公知の電極活物質を使用できる。例えば、コバルト酸リチウム(LiCoO
2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO
2)、リチウムマンガンスピネル(LiMn
2O
4)、及び、一般式:LiNi
xCo
yMn
zMaO
2(x+y+z+a=1、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、0≦a≦1、MはAl、Mg、Nb、Ti、Cu、Zn、Crより選ばれる1種類以上の元素)で表される複合金属酸化物、リチウムバナジウム化合物(LiV
2O
5、LiVOPO
4)、オリビン型LiMPO
4(ただし、Mは、Co、Ni、Mn、Fe、Mg、Nb、Ti、Al、Zrより選ばれる1種類以上の元素)、チタン酸リチウム(Li
4Ti
5O
12)、LiNi
xCo
yAl
zO
2(0.9<x+y+z<1.1)、Li
2MnO
3−LiMO
2(ただしMはMn、Co,Niより選ばれる1種類以上の元素)で表されるLi過剰系固溶体等の複合金属酸化物が挙げられる。
【0029】
これらの中でも、正極活物質としてLiNi
xCo
yMn
zMaO
2(x+y+z+a=1、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、0≦a≦1、MはAl、Mg、Nb、Ti、Cu、Zn、Crより選ばれる1種類以上の元素)を用いることが好ましい。これを用いた正極と、本発明に係るリチウムイオン二次電池用負極を組み合わせることで、高い放電容量と良好なサイクル特性を両立することが可能となる。
【0030】
特に、LiNi
xCo
yAl
1−x−yO
2(0.7≦x≦0.9、0.05≦y≦0.2)、LiNi
xCo
yMn
zO
2(0.5≦x≦0.8、0.1≦y≦0.2、0.1≦z≦0.3)で表される、遷移金属中のNi含有率が高い層状酸化物を用いることが好ましい。これらを用いることで容量なサイクル特性を維持しつつ、特に高い放電容量を得ることができる。
【0031】
上記正極活物質の具体的な例としては、LiNi
0.85Co
0.10Al
0.05O
2、LiNi
0.80Co
0.10Mn
0.10O
2、LiNi
0.60Co
0.20Mn
0.20O
2、LiNi
0.50Co
0.20Mn
0.30O
2などが挙げられる。
【0032】
(正極バインダー)
バインダーは、正極活物質同士を結合すると共に、正極活物質と集電体12とを結合している。バインダーは、上述の結合が可能なものであればよく、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂が挙げられる。更に、上記の他に、バインダーとして、例えば、セルロース、スチレン・ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等を用いてもよい。また、バインダーとして電子伝導性の導電性高分子やイオン伝導性の導電性高分子を用いてもよい。電子伝導性の導電性高分子としては、例えば、ポリアセチレン等が挙げられる。この場合は、バインダーが導電助剤粒子の機能も発揮するので導電助剤を添加しなくてもよい。イオン伝導性の導電性高分子としては、例えば、リチウムイオン等のイオンの伝導性を有するものを使用することができ、例えば、高分子化合物(ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル系高分子化合物、ポリフォスファゼン等)のモノマーと、LiClO
4、LiBF
4、LiPF
6等のリチウム塩又はリチウムを主体とするアルカリ金属塩と、を複合化させたもの等が挙げられる。複合化に使用する重合開始剤としては、例えば、上記のモノマーに適合する光重合開始剤または熱重合開始剤が挙げられる。
【0033】
正極活物質層14中のバインダーの含有量は特に限定されないが、正極活物質、導電助剤及びバインダーの質量の和を基準にして、1〜10質量%であることが好ましい。正極活物質とバインダーの含有量を上記範囲とすることにより、得られた正極活物質層14において、バインダーの量が少なすぎて強固な正極活物質層を形成できなくなる傾向を抑制できる。また、電気容量に寄与しないバインダーの量が多くなり、十分な体積エネルギー密度を得ることが困難となる傾向も抑制できる。
【0034】
(正極導電助剤)
導電助剤も、正極活物質層14の導電性を良好にするものであれば特に限定されず、公知の導電助剤を使用できる。例えば、黒鉛、カーボンブラック等の炭素系材料や、銅、ニッケル、ステンレス、鉄等の金属微粉、炭素材料及び金属微粉の混合物、ITO等の導電性酸化物が挙げられる。
【0035】
正極活物質層14中の導電助剤の含有量も特に限定されないが、添加する場合には正極活物質の質量に対して0.5〜5質量%であることが好ましい。
【0036】
(負極集電体)
負極集電体22は、導電性の板材であればよく、例えば、銅、ニッケル、ステンレス又はそれらの合金の金属薄板(金属箔)を用いることができる。
【0037】
(負極活物質層)
負極活物質層24は、負極活物質、負極バインダー、及び、必要に応じた量の導電助剤から主に構成されるものである。
【0038】
(負極活物質)
本実施形態における負極活物質は、炭素材料からなる第1の負極活物質と、リチウムと合金を形成可能な金属元素あるいは半金属元素を構成元素として含む第2の負極活物質、とを備えるものである。
【0039】
(第1の負極活物質)
本実施形態における第1の負極活物質は炭素材料からなり、球状黒鉛であることを特徴としている。球状黒鉛は鱗片状黒鉛や破砕状黒鉛などと比較して嵩密度が高く、粉体の取り扱いがしやすく、また比表面積が比較的低いことからバインダーの消費を抑えることができる点などから好適である。
【0040】
球状黒鉛としては、球状メソフェーズ炭素を熱処理することにより得られる球状黒鉛や、鱗片状の黒鉛を造粒処理により球状化して得られる球状黒鉛などがあるが、球状であればいずれでも良い。
【0041】
黒鉛の球状の度合いを表すものとして円形度が挙げられる。円形度とは(粒子面積相当円の周囲長/撮像された粒子投影像の周囲長)で表され、1に近いほどより滑らかで真円に近く、なる。円形度の測定は、例えばSEMなどで黒鉛粒子を観察し、二次電子像または反射電子像を画像処理により算出すればよい。球状黒鉛の円形度は0.80以上が好ましく、より好ましくは0.85以上が好ましい。円形度がこの範囲であれば、過度なバインダーの付着を抑制すると共にこれを用いた負極活物質層の充填性が向上し塗料性も良くなる。
【0042】
黒鉛は天然黒鉛、人造黒鉛、等を用いることができる。中でも、良好な負極容量及びサイクル特性を示すことから人造黒鉛が好ましい。
【0043】
炭素材料は球状黒鉛単独が最も好ましいが、鱗片状黒鉛や破砕状黒鉛と混合してもかまわない。その際の球状黒鉛の含有率は50%〜100%が好ましい。
【0044】
球状黒鉛の含有率を上記とすることで、第1の負極活物質に対する過度なバインダーの付着を抑制すると共に、第1の負極活物質の空隙を補填することが可能となり、より高い負極活物質層の充填性を実現することができる。
【0045】
黒鉛の黒鉛化度は1.0〜1.5であり、より好ましくは1.2〜1.4であるとなお良い。ここで言う黒鉛化度とは、X線回折パターンにおける(101)面のピーク強度P101と(100)面のピーク強度P100との比(P101/P100)であり、これは炭素の六方網平面の規則的配列の程度を表すものであり、この値が大きいほど乱層構造が少なく、炭素の六方網平面がより規則的に配列している。黒鉛化度がこの範囲にあれば黒鉛結晶構造に適度な乱層構造が付与されるため、充放電時の電池セルの膨張収縮が抑制される。
【0046】
黒鉛の配向度は40〜200であり、より好ましくは50〜170であるとなお良い。ここで言う配向度とは、X線回折パターンにおける(002)面のピーク強度P002と(110)面のピーク強度P110との比(P002/P110)であり、これは負極表面に対する黒鉛結晶の配向性を表し、この値が小さいほど、炭素の六方網平面は負極表面に対してあまり配向していない状態であり、大きいほど負極表面に対して平行方向に炭素の六方網平面が配向していることを示す。黒鉛の配向度がこの範囲にあると、Liイオンの挿入サイトが増加し、電池セルのレート特性が向上する。
【0047】
球状黒鉛の平均粒径は5μm〜30μmであり、より好ましくは9μm〜25μmであるとなお良い。ここで言う平均粒径とはレーザー回折式粒度分布測定におけるD50の値である。この範囲であれば負極電極の充填性が向上し塗料性も良くなる。
【0048】
(第2の負極活物質)
本実施形態における第2の負極活物質は、リチウムと合金を形成可能な金属元素あるいは半金属元素を構成元素として含むことを特徴としている。
【0049】
かかる構成によればよりサイクル特性が向上する。これは構成元素としてリチウムと合金を形成可能な金属元素あるいは半金属元素を含む第2の負極活物質は、アクリル樹脂の親和性高く、充放電時の膨張収縮を抑える効果を効率的に得られるためであると推察される。
【0050】
また、本実施形態における第2の負極活物質として、Si、Sn、Fe、Ge、Mo、Zn等を構成元素として含むものが挙げられる。これらの中でも、Si、Snから選ばれる1種以上を含むことが好ましい。
【0051】
Si、Snから選ばれる少なくとも1種を含む材料は、SiB
4、SiB
6、Mg
2Si、Ni
2Si、TiSi
2、MoSi
2、NiSi
2、CaSi
2、CrSi
2、Cu
5Si、FeSi
2、MnSi
2、NbSi
2、TaSi
2、VSi
2、WSi
2、ZnSi
2、SiC、Si
3N
4、Si
2N
2O、LiSiO、SiO
x(0<x≦2)、SnO
y(0<y≦2)、SnSiO
3、LiSnOまたはMg
2SnFeOなどが挙げられる。
【0052】
上記の材料の中でも、エネルギー密度や低膨張収縮率などの観点からシリコンを含むことが好ましく、特にシリコン単体または酸化シリコンが好ましい。酸化シリコンとしては、一酸化シリコン、二酸化シリコン及び、これらとシリコン単体との混合物である下記一般式(1)で表される化合物から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。
SiO
x(0<x≦2)・・・(1)
【0053】
上記SiO
x(0<x≦2)は非晶質であることが好ましい。非晶質であることによって、アクリル樹脂との親和性が向上し、膨張収縮による体積変化を抑える効果がより高まるため、サイクル特性がより優れる。
【0054】
また、本実施形態における第2の負極活物質は、SiO
x(0<x≦2)を含む複数の化合物を混合してもよい。
【0055】
前記第1の負極活物質の重量Aに対する前記第2の負極活物質の重量Bの比率がA:B=99:1〜65:35であることが好ましい。かかる構成によればより優れたサイクル特性を得ることができる。
【0056】
第2の負極活物質として、複数の化合物を用いる場合、第2の負極活物質の重量の総和を第2の負極活物質の重量Bとすればよい。
【0057】
(負極バインダー)
負極バインダーは、負極活物質層24中の構成する部材同士または、負極活物質層24と負極集電体22とを密着させて電極構造を維持する目的で添加される。
【0058】
本実施形態における負極バインダーはアクリル樹脂を含有することを特徴としている。前記アクリル樹脂はアクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルの重合体の合成樹脂である。かかる構成によれば、サイクル特性に優れたリチウム二次電池用負極を得ることができる。その原因は必ずしも明らかではないが、アクリル樹脂の第1の負極活物質と、第2の負極活物質に対する吸着性が異なり、中でも球状黒鉛にはより点接触に近い状態で結着し、第2の負極活物質には面で覆うように結着することにより、球状黒鉛に対する過度なバインダーの付着を抑制すると共に、第2の負極活物質の充放電に伴う膨張収縮を抑制できるものであると推察される。
【0059】
また、負極バインダーの含有量は、前記第1の負極活物質の重量A及び前記第2の負極活物質の重量Bの総和に対する前記バインダーの重量Cの比率がA+B/C=6〜20になることが好ましい。
【0060】
第1の負極活物質の重量A及び第2の負極活物質の重量Bの総和に対するバインダーの含有量を上記範囲とすることにより、負極の十分な結着性を保持するとともに、余剰なバインダーによる負極中の負極活物質間のLiイオン導電パスを阻害することを抑制することができる。
【0061】
また、負極活物質の重量Bに対する前記バインダーの重量Cの比率がB/C=1.4〜3であることが好ましい。
【0062】
第2の負極活物質の重量に対するバインダーの含有量を上記範囲とすることで、充放電に伴う第2の負極活物質の体積膨張を抑制することができる。
【0063】
負極バインダーは前記アクリル樹脂単独であることが好ましいが、既知の負極バインダーと混合してもかまわない。既知の負極バインダーと混合して使用する場合、負極バインダーの全重量に対して、70質量%以上アクリル樹脂を含むことが好ましい。
【0064】
これによって、第1の負極活物質及び第2の負極活物質それぞれに対する効果を十分に発揮することができる。
【0065】
(負極導電助剤)
負極導電助剤は、導電性を向上させるため炭素材料を添加することができる。炭素材料は電気化学的安定性が高い、低密度で嵩高いことから少量添加でも導電性向上に十分効果を発揮する、などの特徴がある。炭素材料として例えば、アセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック、気相成長炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ等の炭素繊維、およびグラファイトなどの炭素材料が挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0066】
また、導電助剤の含有量も、負適宜調整し、上述した正極10における含有量と同様の含有量を採用すればよい。導電助剤の添加量は、負極活物質の質量に対して0.5〜5質量%であることが好ましい。
【0067】
このように上述した部材を用い、本実施形態における負極は、集電体と、前記集電体上に設けられた活物質含有層と、を備え、前記活物質含有層は、炭素材料からなる第1の負極活物質と、リチウムと合金を形成可能な金属元素あるいは半金属元素を構成元素として含む第2の負極活物質と、バインダーと、を有し、前記第1の負極活物質は球状黒鉛を含有し、前記バインダーはアクリル樹脂を含有する構成としている。上記構成の負極を用いることで、サイクル特性が向上する。
【0068】
一般に負極活物質として黒鉛とリチウムと合金可能な金属元素あるいは半金属元素を構成元素として含む材料を用いる場合には、バインダーに求められる作用が異なる。すなわち黒鉛を負極活物質として用いる場合には、黒鉛は充放電時の体積変化が少なく、Liイオンがエッジ面から挿入脱離を行うため、負極を結着するバインダーは少ない面積での点接触が求められる。一方、リチウムと合金可能な金属元素あるいは半金属元素を構成元素として含む材料は充放電時における体積変化が大きく、充放電サイクルが繰り返されると導電経路の分断による集電不良が発生じるため、体積変化を抑えるために面接触による結着が求められる。
【0069】
黒鉛とリチウムと合金可能な金属元素あるいは半金属元素を構成元素として含む材料にバインダーとしてアクリル樹脂を用いることで、アクリル樹脂の第1の負極活物質と、第2の負極活物質に対する吸着性の違いから、中でも球状黒鉛にはより点接触に近い状態で結着し、第2の負極活物質には面で覆うように結着することにより、球状黒鉛に対する過度なバインダーの付着を抑制すると共に、第2の負極活物質の充放電に伴う膨張収縮を抑制できるものであると推察される。
【0070】
上述した構成要素により、電極10、20は、通常用いられる方法により作製できる。例えば、活物質(正極活物質または負極活物質)、バインダー(正極バインダーまたは負極バインダー)、溶媒、及び、導電助剤(正極導電助剤または負極導電助剤)を含む塗料を集電体上に塗布し、集電体上に塗布された塗料中の溶媒を除去することにより製造することができる。
【0071】
溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、水等を用いることができる。
【0072】
塗布方法としては、特に制限はなく、通常電極を作製する場合に採用される方法を用いることができる。例えば、スリットダイコート法、ドクターブレード法が挙げられる。
【0073】
集電体12、22上に塗布された塗料中の溶媒を除去する方法は上述した方法にて、例えば赤外線乾燥炉や電熱式熱風乾燥炉を用いて80℃〜300℃の範囲で熱処理すればよい。
【0074】
そして、このようにして活物質層14、24が形成された電極を、その後、必要に応じて例えば、ロールプレス装置等によりプレス処理すればよい。ロールプレスの線圧は例えば、10〜50kgf/cmとすることができる。このようにして電極が完成する。
【0075】
次に、リチウムイオン二次電池100の他の構成要素を説明する。
【0076】
(セパレータ)
セパレータは、電解液に対して安定であり、保液性に優れていれば特に制限はないが、一般的にはポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンの多孔質シート、又は不織布が挙げられる。
【0077】
(電解質)
電解質は、正極活物質層14、負極活物質層24、及び、セパレータ18の内部に含有させるものである。電解質としては、特に限定されず、例えば、本実施形態では、リチウム塩を含む電解液(電解質水溶液、有機溶媒を使用する電解質溶液)を使用することができる。ただし、電解質水溶液は電気化学的に分解電圧が低いことにより、充電時の耐用電圧が低く制限されるので、有機溶媒を使用する電解液(非水電解質溶液)であることが好ましい。電解液としては、リチウム塩を非水溶媒(有機溶媒)に溶解したものが好適に使用される。リチウム塩としては特に限定されず、リチウムイオン二次電池の電解質として用いられるリチウム塩を用いることができる。例えば、リチウム塩としては、LiPF
6、LiBF
4、LiBETI、LiFSI、LiBOB等の無機酸陰イオン塩、LiCF
3SO
3、(CF
3SO
2)
2NLi等の有機酸陰イオン塩等を用いることができる。
【0078】
また、有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート等の非プロトン性高誘電率溶媒や、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、等の酢酸エステル類あるいはプロピオン酸エステル類等の非プロトン性低粘度溶媒が挙げられる。これらの非プロトン性高誘電率溶媒と非プロトン性低粘度溶媒を適当な混合比で併用することが望ましい。更には、イミダゾリウム、アンモニウム、及びピリジニウム型のカチオンを用いたイオン性液体を使用することができる。対アニオンは特に限定されるものではないが、BF
4−、PF
6−、(CF
3SO
2)
2N
−等が挙げられる。イオン性液体は前述の有機溶媒と混合して使用することが可能である。
【0079】
本実施形態に係る有機溶媒として、環状カーボネートと鎖状カーボネートを混合して用いることが好ましく、放電容量とサイクル特性のバランスの観点から少なくともエチレンカーボネートとジエチルカーボネートとフルオロエチレンカーボネートから選ばれる1種以上を含有することが好ましい。
【0080】
また、有機溶媒全体に対するフルオロエチレンカーボネートの含有量が5〜10重量%であることがより好ましい。これによって、より高いサイクル特性を得ることができる。
【0081】
電解液のリチウム塩の濃度は、電気伝導性の点から、0.5〜2.0Mが好ましい。なお、この電解質の温度25℃における導電率は0.01S/m以上であることが好ましく、電解質塩の種類あるいはその濃度により調整される。
【0082】
電解質を固体電解質やゲル電解質とする場合には、ポリ(ビニリデンフルオライド)等を高分子材料として含有することが可能である。
【0083】
更に、本実施形態の電解液中には、必要に応じて各種添加剤を添加してもよい。添加剤としては、例えば、サイクル寿命向上を目的としたビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート等や、過充電防止を目的としたビフェニル、アルキルビフェニル等や、脱酸や脱水を目的とした各種カーボネート化合物、各種カルボン酸無水物、各種含窒素及び含硫黄化合物が挙げられる。
【0084】
(ケース)
ケース50は、その内部に積層体30及び電解液を密封するものである。ケース50は、電解液の外部への漏出や、外部からのリチウムイオン二次電池100内部への水分等の侵入等を抑止できる物であれば特に限定されない。例えば、ケース50として、
図1に示すように、金属箔52を高分子膜54で両側からコーティングした金属ラミネートフィルムを利用できる。金属箔52としては例えばアルミ箔を、高分子膜54としてはポリプロピレン等の膜を利用できる。例えば、外側の高分子膜54の材料としては融点の高い高分子、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド等が好ましく、内側の高分子膜54の材料としてはポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等が好ましい。
【0085】
(リード)
リード60、62は、アルミ等の導電材料から形成されている。
そして、公知の方法により、リード60、62を正極集電体12、負極集電体22にそれぞれ溶接し、正極10の正極活物質層14と負極20の負極活物質層24との間にセパレータ18を挟んだ状態で、電解液と共にケース50内に挿入し、ケース50の入り口をシールすればよい。
【0086】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、リチウムイオン二次電池は
図1に示した形状のものに限定されず、コイン形状に打ち抜いた電極とセパレータとを積層したコインタイプや、電極シートとセパレータとをスパイラル状に巻回したシリンダータイプ等であってもよい。
【実施例】
【0087】
(実施例1)
<リチウムイオン二次電池用負極の作製>
まず、第1の負極活物質として球状人造黒鉛(平均粒形11μm)を、第2の負極活物質としてSiO
xを用意し、第1の負極活物質と第2の負極活物質を重量比で99:1になるように秤量した。次にプラネタリーミキサーにおいて30分乾式混合を行い、実施例1に係るリチウムイオン二次電池用負極活物質を作製した。
【0088】
上記のリチウムイオン二次電池用負極活物質を93重量%と、導電助剤としてアセチレンブラックを2重量%と、バインダーとしてアクリル酸エステル重合体を5重量%と、水とを混合分散させてペースト状の負極スラリーを作製した。そして、コンマロールコーターを用いて、この負極スラリーを厚さ10μmの銅箔の両面に所定の厚みとなるように、均一に負極活物質層を塗布した。次いで、乾燥炉内にて90℃の大気雰囲気下で上記負極活物質層を乾燥させた。なお、銅箔の両面に塗布された負極活物質層の塗膜の厚みは、ほぼ同じ膜厚に調整した。上記負極活物質が形成された負極をロールプレス機によって、負極活物質層を負極集電体の両面に圧着させ、所定の密度を有する負極シートを得た。
【0089】
上記負極シートを、金型を用いて21×31mmの電極サイズに打ち抜き、リチウムイオン二次電池用負極電極を作製した。
【0090】
<リチウムイオン二次電池用正極の作製>
正極活物質としてコバルト酸リチウム(LiCoO
2)を96重量%と、導電助剤としてケッチェンブラックを2重量%と、バインダーとしてPVDFを2重量%と、溶媒としてN−メチル−2−ピロリドンとを混合分散させて、ペースト状の正極スラリーを作製した。そして、コンマロールコーターを用いて、この正極スラリーを厚さ20μmのアルミニウム箔の両面に所定の厚みとなるように、均一に正極活物質層を塗布した。次いで、乾燥炉内にて、110℃の大気雰囲気下でN−メチル−2−ピロリドン溶媒を乾燥させた。なお、アルミニウム箔の両面に塗布された正極活物質層の塗膜の厚みは、ほぼ同じ膜厚に調整した。正極活物質が形成された正極をロールプレス機によって、正極活物質層を正極集電体の両面に圧着させ、所定の密度を有する正極シートを得た。
【0091】
上記正極シートを、金型を用いて20×30mmの電極サイズに打ち抜き、リチウムイオン二次電池用正極電極を作製した。
【0092】
<リチウムイオン二次電池の作製>
上記作製した負極電極と正極電極とを、厚さ16μmの22×33mmサイズのポリプロピレン製のセパレータを介して積層し、電極体を作製した。負極電極3枚と正極電極2枚とを負極電極と正極電極が交互に積層されるようセパレータ4枚を介して積層した。さらに、上記電極体の負極電極において、負極活物質層を設けていない銅箔の突起端部にニッケル製の負極リードを取り付け、一方、電極体の正極電極においては、正極活物質層を設けていないアルミニウム箔の突起端部にアルミニウム製の正極リードを超音波溶接機によって取り付けた。そしてこの電極体を、アルミニウムのラミネートフィルムの外装体内に挿入して周囲の1箇所を除いてヒートシールすることにより閉口部を形成し、上記外装体内にEC/DECが3:7の割合で配合された溶媒中に、リチウム塩として1M(mol/L)のLiPF6が添加された電解液を注入した後に、残りの1箇所を真空シール機によって減圧しながらヒートシールで密封し、実施例1に係るリチウムイオン二次電池を作製した。
【0093】
(実施例2)
実施例2に係るリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池は、第1の負極活物質として球状人造黒鉛を、第2の負極活物質としてSiO
xを用意し、第1の負極活物質と第2の負極活物質を重量比95:5になるように秤量した以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池を作製した。
【0094】
(実施例3)
実施例3に係るリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池は、第1の負極活物質として球状人造黒鉛を、第2の負極活物質としてSiO
xを用意し、第1の負極活物質と第2の負極活物質を重量比90:10になるように秤量した以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池を作製した。
【0095】
(実施例4)
実施例4に係るリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池は、第1の負極活物質として球状人造黒鉛を、第2の負極活物質としてSiO
xを用意し、第1の負極活物質と第2の負極活物質を重量比80:20になるように秤量した以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池を作製した。
【0096】
(実施例5)
実施例5に係るリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池は、第1の負極活物質として球状人造黒鉛を、第2の負極活物質としてSiO
xを用意し、第1の負極活物質と第2の負極活物質を重量比70:30になるように秤量した以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池を作製した。
【0097】
(実施例6)
実施例6に係るリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池は、第1の負極活物質として球状人造黒鉛を、第2の負極活物質としてSiO
xを用意し、第1の負極活物質と第2の負極活物質を重量比65:35になるように秤量した以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池を作製した。
【0098】
(実施例7)
実施例7に係るリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池は、第1の負極活物質として球状人造黒鉛を、第2の負極活物質としてSiO
xを用意し、第1の負極活物質と第2の負極活物質を重量比60:40になるように秤量した以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池を作製した。
【0099】
(実施例8)
実施例8に係るリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池は、第1の負極活物質として球状人造黒鉛を、第2の負極活物質としてSnを用意し、第1の負極活物質と第2の負極活物質を重量比80:20になるように秤量した以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池を作製した。
【0100】
(実施例9)
実施例9に係るリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池は、第1の負極活物質として球状人造黒鉛を、第2の負極活物質としてMoO
3を用意し、第1の負極活物質と第2の負極活物質を重量比80:20になるように秤量した以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池を作製した。
【0101】
(実施例10)
実施例10に係るリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池は、リチウムイオン二次電池用負極活物質を94重量%と、導電助剤としてアセチレンブラックを2重量%と、バインダーとしてアクリル酸エステル重合体を4重量%と、水とを混合分散させてペースト状の負極スラリーを作製した以外は、実施例4と同様にしてリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池を作製した。
【0102】
(実施例11)
実施例11に係るリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池は、リチウムイオン二次電池用負極活物質を91重量%と、導電助剤としてアセチレンブラックを2重量%と、バインダーとしてアクリル酸エステル重合体を7重量%と、水とを混合分散させてペースト状の負極スラリーを作製した以外は、実施例4と同様にしてリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池を作製した。
【0103】
(実施例12)
実施例12に係るリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池は、リチウムイオン二次電池用負極活物質を88重量%と、導電助剤としてアセチレンブラックを2重量%と、バインダーとしてアクリル酸エステル重合体を10重量%と、水とを混合分散させてペースト状の負極スラリーを作製した以外は、実施例4と同様にしてリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池を作製した。
【0104】
(実施例13)
実施例13に係るリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池は、リチウムイオン二次電池用負極活物質を84重量%と、導電助剤としてアセチレンブラックを2重量%と、バインダーとしてアクリル樹脂としてアクリル酸エステル重合体を14重量%と、水とを混合分散させてペースト状の負極スラリーを作製した以外は、実施例4と同様にしてリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池を作製した。
【0105】
(実施例14)
実施例14に係るリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池は、リチウムイオン二次電池用負極活物質を82重量%と、導電助剤としてアセチレンブラックを2重量%と、バインダーとしてアクリル樹脂としてアクリル酸エステル重合体を16重量%と、水とを混合分散させてペースト状の負極スラリーを作製した以外は、実施例4と同様にしてリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池を作製した。
【0106】
(実施例15)
実施例15に係るリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池は、リチウムイオン二次電池用負極活物質を81重量%と、導電助剤としてアセチレンブラックを2重量%と、バインダーとしてアクリル樹脂としてアクリル酸エステル重合体を17重量%と、水とを混合分散させてペースト状の負極スラリーを作製した以外は、実施例4と同様にしてリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池を作製した。
【0107】
(実施例16)
実施例16に係るリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池は、バインダーとしてアクリル樹脂として、アクリル酸エステル重合体とSBR/CMC樹脂を70:30で混合したものを5重量%と、水とを混合分散させてペースト状の負極スラリーを作製した以外は、実施例4と同様にしてリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池を作製した。
【0108】
(実施例17)
実施例17に係るリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池は、バインダーとしてアクリル樹脂として、アクリル酸エステル重合体とSBR/CMC樹脂を65:35で混合したものを5重量%と、水とを混合分散させてペースト状の負極スラリーを作製した以外は、実施例4と同様にしてリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池を作製した。
【0109】
(実施例18)
実施例18に係るリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池は、正極活物質としてニッケルーコバルト―マンガン三元系正極活物質(LiNi
0.80Co
0.10Mn
0.10O
2、以下NCMと記載)を用いた以外は、実施例11と同様にしてリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池を作製した。
【0110】
(実施例19)
実施例19に係るリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池は、電解液としてEC/DEC/FECが25:65:10の割合で配合された溶媒中に、リチウム塩として1M(mol/L)のLiPF
6が添加された電解液を用いた以外は、実施例11と同様にしてリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二電池を作製した。
【0111】
(実施例20)
実施例20に係るリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池は、電解液としてEC/DEC/FECが25:65:10の割合で配合された溶媒中に、リチウム塩として1M(mol/L)のLiPF
6が添加された電解液を用いた以外は、実施例18と同様にしてリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池を作製した。
【0112】
(実施例21)
実施例21に係るリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池は、電解液としてEC/DEC/FECが23:72:5の割合で配合された溶媒中に、リチウム塩として1M(mol/L)のLiPF
6が添加された電解液を用いた以外は、実施例18と同様にしてリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池を作製した。
【0113】
(実施例22)
実施例22に係るリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池は、正極活物質としてニッケルーコバルト―アルミニウム三元系正極活物質(LiNi
0.85Co
0.10Al
0.05O
2、以下NCAと記載)を用いた以外は、実施例11と同様にしてリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池を作製した。
【0114】
(比較例1)
比較例1に係るリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池は、第1の負極活物質として鱗片状人造黒鉛を用いたこと以外は、実施例4と同様にしてリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池を作製した。
【0115】
(比較例2)
比較例2に係るリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池は、バインダーとしてSBR/CMC樹脂を用いた以外は、実施例4と同様にしてリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池を作製した。
【0116】
(比較例3)
比較例3に係るリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池は、バインダーとしてPVDF樹脂を用いた以外は、実施例4と同様にしてリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池を作製した。
【0117】
(比較例4)
比較例4に係るリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池は、負極活物質として球状人造黒鉛のみを用い、導電助剤としてアセチレンブラックを2重量%と、バインダーとしてアクリル樹脂としてアクリル酸エステル重合体を5重量%と、水とを混合分散させてペースト状の負極スラリーを作製した以外は実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池を作製した。
【0118】
(比較例5)
比較例5に係るリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池は、負極活物質としてSiO
xのみを用い、導電助剤としてアセチレンブラックを2重量%と、バインダーとしてアクリル樹脂としてアクリル酸エステル重合体を20重量%と、水とを混合分散させてペースト状の負極スラリーを作製した以外は実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池用負極およびリチウムイオン二次電池を作製した。
【0119】
<特性の評価方法>
実施例及び比較例で作製した評価用リチウムイオン二次電池について、二次電池充放電試験装置(北斗電工株式会社製)を用い、サイクル特性の測定を行った。サイクル特性の測定条件は、室温において、0.5Cで4.2Vまで定電流定電圧充電し、1Cで2.5Vまで定電流放電する充放電サイクルを300サイクル繰り返し、初回サイクルから300サイクルまでの放電容量を測定した。各実施例及び比較例のリチウムイオン二次電池において、初回サイクルの放電容量及び初回サイクルの放電容量に対する300サイクル後の放電容量を測定し、それぞれ初回放電容量、容量維持率として放電容量とサイクル特性を評価した。このときの初回放電容量は正極活物質の単位重量辺りの容量とし、容量維持率は百分率で示した。
【0120】
表1には、実施例1〜22及び比較例1〜5の正極活物質、第1の負極活物質、第2の負極活物質、バインダー種、電解液組成を示した。また、表2には、第1の活物質と第2の活物質の混合比、バインダー量、第1の負極活物質の重量A及び第2の負極活物質の重量Bの総和に対する前記バインダーの重量Cの比率(A+B)/C、第2の負極活物質の重量Bに対する前記バインダーの重量Cの比率B/C、300サイクル後の容量維持率(以下容量維持率[%])、初回放電容量(mAh/g)についてまとめたものである。
【0121】
【表1】
【0122】
【表2】
【0123】
上記表1及び表2からもわかるように、炭素材料からなる第1の負極活物質と、リチウムと合金を形成可能な金属元素あるいは半金属元素を含む第2の負極活物質と、バインダーと、を有し、前記第1の負極活物質は球状黒鉛を含有し、前記バインダーはアクリル樹脂を含有することによって、サイクル特性が向上することが明らかになった。
【0124】
実施例1〜7を見ると、第1の負極活物質の重量Aに対する前記第2の負極活物質の重量Bの比率がA:B=99:1〜65:35であるとサイクル特性がより向上することが明らかとなった。これは第1の負極活物質と第2の負極活物質がこの範囲で混合されることで容量とサイクルのバランスが好適となり、サイクル特性が向上したものと推察される。
【0125】
実施例10〜15および実施例4を見ると、第1の負極活物質の重量A及び前記第2の負極活物質の重量Bの総和に対する前記バインダーの重量Cの比率が(A+B)/C=6〜20であると、サイクル特性がより向上することが明らかとなった。
【0126】
また第2の負極活物質の重量Bに対する前記バインダーの重量Cの比率がB/C=1.4〜3であると、さらにサイクル特性が向上することが明らかとなった。これは第2の負極活物質の重量Bに対する前記バインダーの重量Cの比率がこの範囲にあると、第2の負極活物質の膨張収縮が抑制され、サイクル特性が向上したものと推察される。
【0127】
実施例4と比較例1を比較すると、炭素材料からなる第1の負極活物質球状黒鉛であることによってサイクル特性が向上することが明らかとなった。これは鱗片状黒鉛がアクリル樹脂を過剰に消費し、結果として第2の負極活物質を結着するのに必要なバインダー量が減少し、第2の負極活物質の膨張収縮を抑制しきれなくなったのに対し、球状黒鉛はアクリル樹脂との接着が点接触に近い状態となり、第1の負極活物質と第2の負極活物質を結着するバインダー量が好適となり、サイクル特性が向上したものと推察される。
【0128】
実施例4と比較例2、比較例3を見ると、バインダーがアクリル樹脂を含有することでサイクル特性が向上していることが明らかとなった。これは、アクリル樹脂が第1の負極活物質と第2の負極活物質との接結着状態が適度であり、その結果サイクル特性が向上したものと考えられる。
【0129】
実施例4、実施例8と実施例9を見ると、第2の負極活物質が構成元素としてSi、Snから選ばれる少なくとも1種を含むことでサイクル特性が向上していることが明らかとなった。これは構成元素としてSi、Snから選ばれる少なくとも1種を含む第2の負極活物質とアクリル樹脂の親和性が適度になるため、充放電時の膨張収縮をより抑える効果が増えるため、サイクル特性が向上したものと考えられる。
【0130】
比較例4、比較例5を見ると、第1の負極活物質単独電極または第2の負極活物質単独電極では十分なサイクル特性を得ることができず、球状黒鉛からなる第1の負極活物質と、リチウムと合金を形成可能な金属元素あるいは半金属元素を構成元素として含む第2の負極活物質からなる負極活物質と、アクリル樹脂を混合することでサイクル特性が向上することが明らかとなった。
【0131】
実施例16、実施例17および実施例4を見ると、既知の負極バインダーと混合して使用する場合、負極バインダーの全重量に対して70質量%以上アクリル樹脂を含むことで十分な効果が得られることが明らかとなった。
【0132】
実施例11および実施例18、実施例22を見ると、正極活物質としてニッケルーコバルト―マンガン(NCM)三元系正極活物質、または正極活物質としてニッケルーコバルト―アルミニウム(NCA)三元系正極活物質、を用いることで初回放電容量とサイクル特性が向上し、高容量とサイクル特性が両立できることが明らかとなった。
【0133】
実施例11および実施例19を見ると、電解液の溶媒組成をEC/DECが30/70からEC/DEC/FECが25/65/10の割合で配合された溶媒を用いることで、さらにサイクル特性が向上することが明らかとなった。
【0134】
実施例20、実施例21を見ると、NCMを用い、電解液の溶媒組成としてFECが5〜10重量%配合された溶媒を適宜組み合わせることで、初回放電容量とサイクル特性が向上し、高容量とサイクル特性が両立できることが明らかとなった。
【0135】
(符号の説明)
100・・・リチウムイオン二次電池、10・・・正極(同義:リチウムイオン二次電池用正極)、12・・・正極集電体、14・・・正極活物質層、60・・・正極リード、20・・・負極(同義:リチウムイオン二次電池用負極)、22・・・負極集電体、24・・・負極活物質層、62・・・負極リード、18・・・セパレータ、30・・・電極体、50・・・外装体、52・・・金属箔、54・・・高分子膜
【解決手段】集電体と集電体上に設けられた活物質含有層と、を備え、前記活物質含有層は、炭素材料からなる第1の負極活物質と、リチウムと合金を形成可能な金属元素あるいは半金属元素を構成元素として含む第2の負極活物質と、バインダーと、を有し、前記第1の負極活物質は球状黒鉛を含有し、前記バインダーはアクリル樹脂を含有する。