【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 株式会社 ワーカム北海道 敷地内充填設備(〒054−0014 北海道勇払郡むかわ町米原489番地),平成28年6月24日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記充填装置は効果的に機能するが、現時点ではLNGに対応可能な自動車が少ないため、充填装置を利用する自動車が少なく、充填間隔が比較的長くなっている。充填間隔が長く、一定時間充填が行われないと、外部からの自然入熱等によって配管や流量計の温度が次第に上昇する。このような状態で自動車にLNGの充填を行うと、LNGが大量に蒸発して流量計内に気体が混入して計量精度が低下したり、車載タンク内に気体が混入して圧力が上昇し、規定量の充填ができなくなるという問題があった。さらに、急激な温度変化によって配管等が変形したり破損するおそれもあった。
【0005】
そこで、本発明は、上記従来技術における問題点に鑑みてなされたものであって、充填間隔が長くても、LNGの計量精度を高く維持しながら安全に充填することが可能な自動車用LNG充填装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の自動車用LNG充填装置は、LNGを貯留するLNG貯留槽に連通する配管の途中に充填機構を介装し、前記LNGを自動車に搭載された燃料タンクに充填する充填装置において、前記LNGの非充填時に前記LNG貯留槽と前記配管との間に循環路を形成し
て前記LNGを循環させ
、前記配管を流れる前記LNGの密度が所定値以上になった場合に該循環を終了することを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、非充填時にLNG貯留槽内のLNGを循環路内で循環させることで、自動車用LNG充填装置内の配管や充填機構を予冷することができるため、充填間隔が長くても、上述のような配管等の温度上昇に起因する障害を回避することができ、安全に充填することができる。
また、前記循環路を介した予冷動作の制御に密度を用い、密度は配管内のLNGの状態、すなわち液体か気体かを瞬時に反映するため、迅速かつ正確な制御に寄与することができる。
【0008】
上記自動車用LNG充填装置において、前記循環路を、前記配管を流れる前記LNGの流量を計測する流量計を含むように構成することができる。これにより、流量計を含む配管をLNGによって予冷し、流量計の計量精度を高く維持することができる。
【0009】
一方、前記循環路を、
前記燃料タンクに前記LNGを充填するための充填ノズルと、非充填時に前記充填ノズルと接続されるレセプタクルを含むように構成することもできる。これにより、充填時に利用する配管のすべてをLNGによって予冷することができるため、充填時において、蒸発したLNGが流量計内に混入して計量精度が低下したり、車載タンク内に気体が混入することを防止することができる。
【0010】
前記充填ノズルと前記レセプタクルとの接続部にエア吹き出し口を向けることができる。充填ノズルとレセプタクルとの接続部は、予冷によって低温に保たれるために凍結し易いが、エア吹き出し口からエアを吹き付けることで接続部の温度を上昇させ、充填ノズルを取り外し易くすることができる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によれば、充填間隔が長くても、LNGの計量精度を高く維持しながら安全にLNGを自動車に充填することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明に係る自動車用LNG充填装置の一実施の形態を示し、このLNG充填装置1は、一端がLNG貯留槽(不図示)に接続され、他端が充填ノズル3が接続された充填ホース4に安全接手5を介して接続される供給管2と、一端に充填ノズル3が接続されるレセプタクル7を有し、他端がLNG貯留槽に接続される回収管6等を備える。
【0016】
供給管2には、供給管2の内部の圧力を計測する圧力計10と、供給管2を流れるLNGの流量を計測する流量計11と、LNGの充填を行っていない非充填時に閉となってLNGを遮断する遮断弁12とが設けられる。流量計11としては、密度と温度の両方を計測することが可能なコリオリ流量計を用いることが好ましい。
【0017】
回収管6には、他の部分よりも小径に形成され、回収管6内の圧力を維持してLNGの液化状態を維持するための絞り部(抵抗部)13と、回収管6の温度を測定する温度計14とが設けられる。
【0018】
循環管20は、供給管2と回収管6とを繋ぐために設けられ、非充填時に開となる循環弁21が設けられる。
【0019】
遮断弁12、循環弁21及びエア吹き出し口9には、エア源からこれらに対するエアの供給を制御するために電磁弁23A〜23Cが付設される。遮断弁12(常時閉弁)は、電磁弁23Aが開いてエアが供給されると開き、循環弁21(常時開弁)は、電磁弁23Bが開いてエアが供給されると閉じるように構成される。また、電磁弁23Cは、充填ノズル3とレセプタクル7の接続部8の外周にエアを吹き付けるためのエア吹き出し口9へのエアの供給停止を切り換える。
【0020】
ガスセンサ25は、LNG充填装置1の内部におけるLNGの漏洩を検知するために設けられる。モード切換スイッチ(以下「スイッチ」を「SW」と略記する。)26は、後述する予冷動作をガス充填所の作業員が切り換えるためのダイアル式のSWである。充填開始/停止SW27、28は、ユーザが充填開始/停止時に押圧することでLNG充填装置1の充填機構の作動/停止を制御するために設けられ、緊急停止SW29は、異常時にユーザが押圧することでLNG充填装置1の動作を緊急停止させるために設けられる。
【0021】
制御装置30は、圧力計10等から計測値を取得してLNG充填装置1全体を制御したり、エアを遮断弁12及び循環弁21に供給したり、充填ノズル3とレセプタクル7の接続部8に吹き付けたりするか否かを電磁弁23の開閉制御によって制御するためなどに設けられる。制御盤31は、LNG充填装置1の構成要素ではなく、LNG充填装置1が設置される充填所に設けられ、外部からLNG充填装置1を制御するものである。
【0022】
次に、上記構成を有するLNG充填装置1の充填動作について、
図1及び
図2を参照しながら説明する。尚、実際の充填動作の前に行う予冷動作については後述する。
【0023】
ステップS1において、充填ノズル3が自動車の充填口(不図示)に接続された後、ユーザによって充填開始SW27が押圧されると(ステップS1;Yes)、制御装置30には、充填開始SW27からLNG圧送開始を指示する信号が入力される(ステップS2)。
【0024】
制御装置30は、LNG圧送開始を指示する信号に基づいて、電磁弁23Bを開くと共に、電磁弁23Aを開くことで、循環弁21を閉じると共に、遮断弁12を開き、LNGの充填を開始する(ステップS3)。
【0025】
LNGを満充填する際には、ステップS4において、圧力計10の指示値Pを監視し、指示値Pが所定の圧力P1(例えば、1〜1.5MPa程度)に達した場合には(ステップS4;Yes)、電磁弁23Aを閉じて遮断弁12を閉じた後(ステップS5)、表示部(不図示)を介してユーザに充填終了を報知して(ステップS6)充填動作を終了する。
【0026】
LNGをユーザが所望する量だけ充填するフリー充填を行う際には、ステップS3からステップS4を経てステップS7へと進み、ステップS7において充填停止SW28が押圧されるまで待機し、ユーザによって充填停止SW28が押圧されると(ステップS7;Yes)、電磁弁23Aを閉じて遮断弁12を閉じた後(ステップS5)、表示部(不図示)を介してユーザに充填終了を報知して(ステップS6)充填動作を終了する。
【0027】
上記ステップS4における満充填又はステップS7におけるフリー充填の最中に、ユーザが異常を感じて緊急停止SW29を押圧した場合には(ステップS8;Yes)、電磁弁23Aを閉じて遮断弁12を閉じた後(ステップS9)、表示部を介してガス充填所の作業員に異常を報知して(ステップS10)充填動作を終了する。
【0028】
次に、上記充填動作を行う前、及び自動車に上記充填動作を行ってから次の自動車に充填動作を行うまでの間隔が長い場合に行う予冷動作について説明する。この予冷動作は、上述のように、外部からの自然入熱等によって配管や流量計の温度が上昇してLNGの計量精度が低下することを防止したり、安全性を確保するために行うものであり、供給管2等の配管や供給管2に付設される流量計11等を予冷する。この予冷動作は、LNG貯留槽と配管の間で循環路を形成し、LNGを循環させて行う。
【0029】
循環路は2種類存在し、第1循環路は、次の充填動作をいつ行うか未定の場合の予冷(待機予冷)時に用いられるものであって、第2循環路は、充填動作を行う直前の予冷(充填準備)時に用いられるものである。以下、この2種類の循環路について
図1を参照しながら説明する。
【0030】
第1循環路は、供給管2の遮断弁12を閉じ、循環管20の循環弁21を開くことで形成され、LNG貯留槽、供給管2、循環管20、回収管6及びLNG貯留槽を連通させるものである。この第1循環路では、供給管2から循環管20へ分岐する分岐点40と遮断弁12との間のLNG、及び循環管20から回収管6に合流する合流点41と流量計11を含むLNG充填装置1の配管の一部を低温に保つことが可能になる。
【0031】
第2循環路は、供給管2の遮断弁12を開き、循環管20の循環弁21を閉じ、充填ノズル3をレセプタクル7に接続することで形成され、LNG貯留槽、供給管2、安全接手5、充填ホース4、充填ノズル3、レセプタクル7、回収管6及びLNG貯留槽を連通させるものである。この第2循環路では、充填時に使用する供給管2及びこれに設けられる充填機構のすべてを予冷することができる。
【0032】
次に、上記第1又は第2循環路を用いた予冷動作について、
図1及び
図3〜
図8のフローチャートを参照しながら説明する。以下の説明においては、予冷動作の4つ
の例について述べるが、まず、上記第1循環路を用いた待機中の予冷動作(待機予冷)である第1
参考例及び第
1実施例について説明する。
【0033】
予冷動作の第1
参考例について
図3及び
図4を参照しながら説明する。この第1
参考例は、
図3に示すように、ステップS11において、第1
参考例の予冷動作を行うようにモード切換SW26が切り換えられると(ステップS11;Yes)、制御装置30にモード切換SW26からLNG圧送開始を指示する信号が入力され、制御装置30が電磁弁23Aを閉じると共に電磁弁23Bを閉じることで、遮断弁12を閉じると共に循環弁21を開き、LNGの圧送を開始する(ステップS12)。
【0034】
LNGの圧送により第1循環路内が冷却されることで、ステップS13において、流量計11の温度の指示値Tが、LNG充填装置1の内部の配管内においてLNGが液化する温度X1(例えば−100℃(配管内に1MPa程度に加圧されているため液化温度が上昇する))以下になるまで待機し、流量計11の温度の指示値Tが温度X1以下になった場合には(ステップS13;Yes)、制御装置30に流量計11からLNG圧送終了を知らせる信号が入力され、制御装置30が電磁弁23Bを開くことで、循環弁21を閉じてLNGの圧送を終了し(ステップS14)、表示部(不図示)等を介して待機予冷の終了を報知する(ステップS15)。
【0035】
予冷動作が終了した後すぐに充填動作が行われないと、LNG充填装置1の内部の配管内の温度が時間の経過に伴って上昇してしまうため、
図4に示すように、ステップS16において、予冷動作が終了した後のLNG充填装置1の内部の配管内の温度を監視し、流量計11の温度の指示値Tが所定の温度X2(例えば−30℃)以上となった場合には(ステップS16;Yes)、制御装置30に流量計11からLNG圧送開始を指示する信号が入力され、制御装置30が電磁弁23Bを閉じることで、循環弁21を開いてLNGの圧送を繰り返し行う(ステップS17)。ステップS17の後は、
図3のステップS13へと進み(
図4のAから
図3のAへ)、上述のようにステップS13〜S15の動作を行って、LNGの圧送を終了する。
【0036】
上記第1
参考例によれば、流量計11を含むLNG充填装置1の配管の一部を低温に保つことができるため、流量計11の計量精度を高く維持することができる。特に、流量計11にコリオリ流量計を用い、流量計11内のLNGが上記予冷によって液で満たされた場合には、計量精度がさらに向上する。
【0037】
次に、予冷動作の第
1実施例について
図5及び
図6を参照しながら説明する。この第
1実施例は、主に、流量計11の密度の指示値Dを予冷動作の終了及び開始の判断に用いる点で、
図3及び
図4に示した第1
参考例と相違する。本実施例において、第1
参考例と同一のステップについては同一の参照番号を付して説明を省略する。
【0038】
図5に示すステップS18において、第
1実施例の予冷動作を行うようにモード切換SW26が切り換えられると(ステップS18;Yes)、上記ステップS12と同様に、第1循環路においてLNGの圧送を開始する。
【0039】
ステップS19において予冷動作を終了するのは、流量計11の密度の指示値Dが、LNG充填装置1の内部の配管内においてLNGが液化する密度Y1(例えば300kg/m
3)以上になった場合であり(ステップS19;Yes)、予冷動作終了後に再度予冷動作を開始するのは、
図6に示すステップS20において、流量計11の密度の指示値Dが、所定の密度Y2(例えば10kg/m
3)以下になった場合である(ステップS20;Yes)。尚、ステップS17において予冷動作を再開した後は、
図5のステップS19へと進み(
図6のBから
図5のBへ)、ステップS14、S15を行って予冷動作を終了する。
【0040】
このように、
参考例1では、予冷動作の制御に温度を用いているが、実施例
1では予冷動作の制御に密度を用いている。
【0041】
上記LNG充填装置では、配管の熱容量が大きいため、配管内のLNGがガス化しているにも関わらず温度変化が小さい。また、LNGは圧力条件によりガス化する温度が異なる。例えば、大気圧下では−162℃程度であるが、1.0MPa加圧下では−120℃程度である。さらに、LNGの組成が異なると上記ガス化温度も異なる。そのため、ガス化しない温度を制御パラメータに使用することは容易ではない。同様に、液密度もLNGの組成等により変化するが、液密度とガス密度には大きな差があり、配管内のLNGの状態、すなわち液体か気体かを瞬時に反映し、迅速かつ正確な制御に寄与するため、予冷動作の制御には密度を用いることが好ましい。
【0042】
次に、上記第2循環路を用いた充填動作の直前に行われる予冷動作(充填準備)として、第
2参考例及び第
2実施例について説明する。
【0043】
図7は、予冷動作の第
2参考例を示し、この第
2参考例は、充填ノズル3がレセプタクル7に接続された状態で、ステップS21において、第
2参考例の予冷動作を行うようにモード切換SW26が切り換えられると(ステップS21;Yes)、制御装置30にモード切換SW26からLNG圧送開始を指示する信号が入力され、制御装置30が電磁弁23Bを閉じると共に電磁弁23A、23Cを開くことで、循環弁21を閉じると共に遮断弁12を開き、充填ノズル3とレセプタクル7の接続部8に電磁弁23Cからエアを吹き付けながらLNGの圧送を開始する(ステップS22)。
【0044】
LNGの圧送により第2循環路内が冷却されることで、ステップS23において、温度計14の温度の指示値tが、LNG充填装置1の内部の配管内においてLNGが液化する温度X1(例えば−100℃)以下になるまで待機し、温度計14の温度の指示値tが温度X1以下になった場合には(ステップS23;Yes)、制御装置30に温度計14からLNG圧送終了を指示する信号が入力され、制御装置30が電磁弁23Aを閉じることで、遮断弁12を閉じてLNGの圧送を終了する(ステップS24)。
【0045】
そして、ステップS25において、充填ノズル3をレセプタクル7から安全に取り外せるようにするため、LNGの圧送が終了してから経過した時間T1が、所定時間t1(例えば60sec)に達するまで待機し、時間T1が時間t1に達した場合には(ステップS25;Yes)、電磁弁23Cを閉じてエアの吹き付けを終了し、表示部(不図示)等を介して充填準備終了を報知する(ステップS26)。
【0046】
上記第
2参考例によれば、充填時に利用する供給管2全体にLNGを循環させることができるため、充填時に流量計11の内部に気体が混入することによって計量精度が低下したり、車載タンク内に気体が混入することを防止することができる。
【0047】
予冷動作の第
2実施例を
図8に示すが、この第
2実施例は、第
1実施例と同様に、主に、流量計11の密度の指示値dを予冷動作を終了する判断材料にする点で、
図7に示した第
2参考例と相違する。第
2参考例と同一のステップについては同一の参照番号を付して説明を省略する。
【0048】
図8に示すステップS27において、第
2実施例の予冷動作を行うようにモード切換SW26が切り換えられると(ステップS27;Yes)、上記ステップS22と同様にLNGの圧送を開始する。
【0049】
予冷動作を終了するのは、ステップS28において、流量計11の密度の指示値dが、LNG充填装置1の内部の配管内においてLNGが液化する密度Y1(例えば300kg/m
3)以上になった場合である(ステップS28;Yes)。この第
2実施例によれば、第
2参考例の効果に加え、第
1実施例と同様に、配管内のLNGが液化しているか否か、すなわち、配管が十分に冷えているか否かを瞬時に判断することができる。
【0050】
前記の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。例えば、第
2参考例での温度計14の温度の代わりに、流量計11の温度を用いることも可能である。