(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このようなスロープ装置は、段差部における車椅子の走行路の確保を主たる目的とするものであるが、実際の使用状況を調査したところ、車椅子の走行路として利用されるほかに、人の歩行路として使用される場合も多く、その使用頻度は車椅子の走行路としての使用頻度に匹敵するほどのものであった。
【0006】
また、歩行路として使用する場合の使用者は、車椅子を使用するまでもなく少しの距離なら自力で歩行できる人とか、介助者の介助を受けながら歩行できる人、及び介助者が大半であった。そして、これらのうち、前二者は、特に足腰に不安がある人で、例えば、摺り足状態で小さな歩幅でしか歩けないような人であった。
【0007】
これらの事情を勘案すれば、スロープ装置に手摺を付けて歩行者の自力歩行、あるいは介助歩行(介助あを受けながらの歩行)をサポートし、歩行の安全性を確保することが必要であると言える。
【0008】
しかるに、現在のところ、携帯用のスロープ装置に付設される手摺装置については、有用な提案はなされていない。
【0009】
なお、このように携帯用のスロープ装置に付設される手摺装置の開発が遅れている背景には、介護保険の給付対象に関する問題が存在していると考えられる。即ち、介護保険制度においは、携帯用のスロープ装置は貸与用品として保険給付の対象であるため、このスロープ装置に付設される手摺装置についても保険給付の対象としたいと考えるのが通例である。しかし、保険給付の対象とすべく、手摺装置を非対地固定式とする場合には、その構造上、手摺強度の確保が難しく、これが遠因となって、携帯用のスロープ装置に付設される手摺装置の開発が遅れているものと考えられる。
【0010】
そこで本願発明は、携帯用のスロープ装置に付設するに好適な、強度性能に優れた手摺装置を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願の第1の発明に係る手摺装置では、
板材でなりその表面を歩行面としたスロープ板の側縁部に、該歩行面より上方へ突出し且つ歩行方向へ延びる側壁体を備えたスロープ装置
に設置される手摺装置において、上記手摺装置は、上記側壁体に対し
て取り付けられる複数の取付基台と、該取付基台を介して上記側壁体部分に上方へ立設状態で取り付けられた複数の手摺支柱と、該複数の手摺支柱の上部間に跨って取り付けられた手摺棒と、上記複数の手摺支柱から上記スロープ装置の幅方向外方へ延出して接地される複数の補助脚を備え
る一方、上記取付基台が、上記側壁体に対してその上方から嵌合されるフック状の嵌合部を備え且つその外面側には上記手摺支柱を受ける受け面を形成した第1受具と、該第1受け具の下面側に配置されるとともにその外面側には上記手摺支柱を受ける受け面を形成し且つ上記側壁体の下面に当接する当接部を備えた第2受具と、上下方向に隣接配置された上記第1受具と第2受具の外周面に跨って対向配置されるとともにこの対向面には上記手摺支柱を受ける受け面が設けられ、上記第1受具と第2受具に対して固定された状態では上記第1及び第2受具の受け面との間に上記手摺支柱の抱持空間を形成する押圧具を備えて構成されたことを特徴としている。
【0012】
本願の第2の発明に係る手摺装置では、上記第1の発明において、上記手摺支柱を、上記取付基台に固定される固定柱と、該固定柱に対してその軸方向へ相対移動可能に内挿される可動柱で構成するとともに、該固定柱と可動柱を共に円形の筒体で構成したことを特徴としている。
【0013】
本願の第3の発明に係る手摺装置では、上記第1の発明において、上記手摺支柱を、上記取付基台に固定される固定柱と、該固定柱に対してその軸方向へ相対移動可能に内挿される可動柱で構成するとともに、該固定柱と可動柱を共に非円形の筒体で構成したことを特徴としている。
【0014】
本願の第4の発明に係る手摺装置では、上記第3の発明において、上記固定柱と可動柱を、共に略楕円形の断面形状とし、且つ該断面の長軸を上記スロープ装置の歩行方向に指向させたことを特徴としている。
【0015】
本願の第5の発明に係る手摺装置では、上記第1、第2、第3または第4の発明において、上記手摺棒を上下二段に配置するとともに、下段側の手摺棒を上段側の手摺棒よりも上記スロープ装置の幅方向内側に位置させたことを特徴としている。
【0016】
本願の第6の発明に係る手摺装置では、上記第1、第2、第3、第4または第5の発明において、上記補助脚を、上記手摺支柱に対して着脱自在に取り付けるとともに、上記手摺支柱に対する取付位置を調整可能としたことを特徴としている。
【0017】
本願の第7の発明に係る手摺装置では、上記第1、第2、第3、第4第5または第6の発明において、上記手摺支柱に対して上記手摺棒を手摺ブラケットを介して取り付けるとともに、該手摺ブラケットにより上記手摺棒を挟着保持することを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
(a)本願の第1の発明に係る手摺装置によれば、
板材でなりその表面を歩行面としたスロープ板の側縁部に、該歩行面より上方へ突出し且つ歩行方向へ延びる側壁体を備えたスロープ装置
に設置される手摺装置において、上記手摺装置は、上記側壁体に対し
て取り付けられる複数の取付基台と、該取付基台を介して上記側壁体部分に上方へ立設状態で取り付けられた複数の手摺支柱と、該複数の手摺支柱の上部間に跨って取り付けられた手摺棒と、上記複数の手摺支柱から上記スロープ装置の幅方向外方へ延出して接地される複数の補助脚を備え
る一方、上記取付基台が、上記側壁体に対してその上方から嵌合されるフック状の嵌合部を備え且つその外面側には上記手摺支柱を受ける受け面を形成した第1受具と、該第1受け具の下面側に配置されるとともにその外面側には上記手摺支柱を受ける受け面を形成し且つ上記側壁体の下面に当接する当接部を備えた第2受具と、上下方向に隣接配置された上記第1受具と第2受具の外周面に跨って対向配置されるとともにこの対向面には上記手摺支柱を受ける受け面が設けられ、上記第1受具と第2受具に対して固定された状態では上記第1及び第2受具の受け面との間に上記手摺支柱の抱持空間を形成する押圧具を備えて構成されているので、以下のような効果が奏せられる。
【0019】
(イ)上記手摺支柱を上記スロープ装置側に取り付ける上記取付基台が、該スロープ装置の歩行面の側縁部に該歩行面より上方へ突出し且つ歩行方向へ延びる側壁体を上下方向に挟持して取り付ける構成であるため、該取付基台における上下の挟持点間の距離、即ち、上記手摺支柱に負荷される横方向荷重に対して上記取付基台30部分に発生する抵抗モーメントのアーム長さが、例えば、上記スロープ装置の歩行面部分を直接上下方向に挟持する構成の場合よりも長くなり、その分だけ上記手摺支柱の横方向荷重に対する支持剛性が向上し、延いては上記手摺装置の強度上の信頼性が向上し、仮設的に設置される携帯用スロープ装置に備えられる手摺装置として好適なものとなる。
【0020】
(ロ)上記補助脚を備えたことで、該補助脚の突っ張り作用によって、上記手摺支柱の横方向荷重に対する強度性能が格段に向上し、上記取付基台による上記手摺支柱40の支持剛性の向上作用と相俟って、上記手摺装置の強度上の信頼性の更なる向上が期待できる。
【0021】
(b)本願の第2の発明に係る手摺装置によれば、上記(a)に記載の効果に加えて、以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記手摺支柱を、上記取付基台に固定される固定柱と、該固定柱に対してその軸方向へ相対移動可能に内挿される可動柱で構成するとともに、該固定柱と可動柱を共に円形の筒体で構成したので、例えば、該固定柱と可動柱を多角形の筒体で構成する場合に比して、手摺装置を安価に提供することができる。
【0022】
(c)本願の第3の発明に係る手摺装置によれば、上記(a)に記載の効果に加えて、以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記手摺支柱を、上記取付基台に固定される固定柱と、該固定柱に対してその軸方向へ相対移動可能に内挿される可動柱で構成するとともに、該固定柱と可動柱を共に非円形の筒体で構成しているので、上記可動柱の上記固定柱からの引出量を調整することで手摺棒の設置高さを任意に変更できるとともに、これら両者の相対回動が自動的に規制されるので、上記手摺棒の高さ調整に伴う作業を簡易迅速に行うことができる。
【0023】
また、スロープ装置が設置される段差部の段差の大きさに応じて手摺棒の必要高さが異なるが(即ち、設置状態でのスロープ装置の傾斜が大きいほどスロープ装置から手摺棒までの高さ寸法が小さくなる)、この発明の手摺装置では上記手摺支柱の高さ調整が容易であることから、例えば、異なる高さの段差部へのスロープ装置の架け替え作業が容易となる。
【0024】
(d)本願の第4の発明に係る手摺装置では、上記(c)に記載の効果に加えて以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記固定柱と可動柱を、共に略楕円形の断面形状とし、且つ該断面の長軸を上記スロープ装置の歩行方向に指向させているので、例えば、上記手摺支柱の断面の長軸を上記スロープ装置の横幅方向に指向させた場合に比して、上記手摺装置の上記スロープ装置側への延出幅が小さくなり、それだけ上記スロープ装置の歩行面の利用可能な有効幅が拡大され、該スロープ装置の使用上の利便性が向上する。
【0025】
(e)本願の第5の発明に係るスロープ装置では、上記(a)、(b)、(c)または(d)に記載の効果に加えて以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記手摺棒を上下二段に配置するとともに、下段側の手摺棒を上段側の手摺棒よりも上記スロープ装置の幅方向内側に位置させているので、下段側の手摺棒も上段側の手摺棒もお互いの存在を気にすることなく的確にこれを把持することができ、手摺装置の利用価値が向上する。
【0026】
また、上記スロープ装置上を人が車椅子に乗って通る場合と歩いて通る場合を比較すると、車椅子に乗って人が通る場合には、着座姿勢であることから把持できる高さが低く、且つ容易に横方向に移動できないことから下段側の手摺棒を使用するのが好適であり、人が歩行して通る場合には、車椅子に乗って通る場合とは逆であるため上段側の手摺棒を使用するのが好適であるところ、本願発明ではこれら何れの要請にも応えることができ、上記スロープ装置及び手摺装置の使用上における利便性が向上する。
【0027】
(f)本願の第6の発明に係る手摺装置では、上記(a)、(b)、(c)、(d)または(e)に記載の効果に加えて以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記補助脚を、上記手摺支柱に対して着脱自在に取り付けるとともに、上記手摺支柱に対する取付位置を調整可能としているので、上記手摺装置の設置条件によって上記補助脚の必要長さが変化する場合(即ち、上記スロープ装置の架設状態での傾斜角が大きくなるほど上記補助脚の必要長さが長くなる)、これに的確に対処して、該補助脚45を接地させることができ、上記補助脚の機能を常時有効に利用して上記手摺装置の信頼性の向上を図ることができる。
【0028】
(g)本願の第7の発明に係るスロープ装置では、上記(a)、(b)、(c)、(d)、(e)または(f)に記載の効果に加えて以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記手摺支柱に対して上記手摺棒を手摺ブラケットを介して取り付けるとともに、該手摺ブラケットにより上記手摺棒を挟着保持するようにしているので、例えば、上記手摺ブラケットを上記手摺棒に対してその軸方向から嵌挿させて取り付ける構成の場合に比して、該手摺棒の着脱作業が容易であり、上記手摺装置を分解及び組立する機会の多い携帯用スロープ装置に付設される手摺装置として好適である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本願発明を好適な実施形態に基づいて具体的に説明する。
「第1の実施形態」
図〜
図4には、本願発明の実施形態に係る手摺装置Y及びこれが付設されたスロープ装置Xを示している。このスロープ装置Xは、例えば、玄関アプローチとか玄関内の上り框等の段差部Gの高位部Gaと低位部Gbの間に架設されるものであって、この実施形態においては、該スロープ装置Xの一方の側縁部に上記手摺装置Yを取り付けて上記スロープ装置Xの利用者の使用に供している。以下、上記スロープ装置X及び手摺装置Yについてそれぞれ構造等を説明する。
【0031】
1:スロープ装置X
上記スロープ装置Xは、縦長の板材でなる二枚のスロープ板1を、その長辺を対向させて並置するとともに該長辺同士を可撓性のヒンジ5によって連結して折曲可能に構成したものである。また、上記各スロープ板1の一端には端部材2が、他端には端部材3が、それぞれ設けられている。
【0032】
このスロープ装置Xは、その表面、即ち、上記スロープ板1を展開した状態での該スロープ板1の表面を歩行面としている。そして、上記各スロープ板1の外側の側縁部1aには、上記歩行面側に突出する車輪止4(特許請求の範囲中の「側壁体」に該当する)を設けている。
【0033】
上記車輪止4は、
図7に示すように、アルミ押出成形により一体成形されたもので、上方に向けて幅寸法が漸減する略台形空状の突出部4aと、該突出部4aの下側に連接されて側方に開口する嵌合溝部4bを備えて構成される。一方、上記スロープ板1は、所定厚さの樹脂発泡板材の表裏両面に薄いFRP板を接着固定して構成されている。そして、上記車輪止4は、その嵌合溝部4b内に上記スロープ板1の側縁部1aを嵌合固定することで該スロープ板1に固定されており、このスロープ板1への固定状態において上記突出部4aは上記スロープ板1の表面、即ち、歩行面から上方へ突出した状態となっており、この突出部4aが車輪止機能を発揮するものである。
【0034】
このように構成された上記スロープ装置Xは、一対のスロープ板1を左右に展開させて平板状の使用時形態とした状態で、段差部Gの高位部Gaと低位部Gbの間に架設され、例えば、車椅子の走行路、あるいは歩行者の歩行路として機能するものである。
【0035】
そして、上記スロープ装置Xを段差部Gに架設して車椅子の走行路、あるいは歩行者の歩行路として利用する場合、これらの利用者が高齢者とか障害者であることが多く、該スロープ装置Xを走行あるいは歩行する際の安全性が危惧されるところであり、係る使用者の安全性を確保するという観点から、次述する手摺装置Yが上記スロープ装置Xの一方の側縁部1aに備えられたものである。
【0036】
なお、以下においては、上記手摺装置Yを上記スロープ装置Xの一方の側縁部1aのみに取り付けた場合を例にとって説明するが、本願発明は係る構成に限定されるものではなく、例えば、上記スロープ装置Xの左右の側縁1aにそれぞれ取り付けることもできるものである。
【0037】
2:手摺装置Y
上記手摺装置Yは、
図1〜
図4に示すように、複数(この実施形態では二本)の手摺支柱40と、該各手摺支柱40間に跨って取り付けられた手摺棒51、52と、上記各手摺支柱40に取り付けられた複数(実施形態では二本)の補助脚45を備えて構成される。
【0038】
2−1:手摺支柱40
上記手摺支柱40は、
図5及び
図6に示すように、略楕円形の断面形状をもつ大径の固定柱41と、該固定柱41と同様に略楕円形の断面形状をもち該固定柱41に内挿される小径の可動柱42で構成され、該可動柱42の上記固定柱41からの引出量を調整することで、その長さ(高さ)が増減調整され、且つ固定ビス(図示省略)によって所要長さで固定保持される。
【0039】
また、上記固定柱41と可動柱42は、上述のように共に略楕円形の断面形状の筒体で構成されているので、上記手摺支柱40の高さ調整時には、これら両者の相対回動が自動的に規制され、したがって、高さ調整作業を簡易迅速に行うことができる。
【0040】
上記固定柱41の幅方向の両側面には、その全長に亘って縦溝49が形成されている。この縦溝49は、後述のように、補助脚45の固定具46の取付部として機能する。また、上記可動柱42にも、上記固定柱41に対応するように、その幅方向の両側面には、その全長に亘って縦溝50が形成されている。この縦溝50は、後述のように、手摺ブラケット44を支持する延出腕48の取付部として機能する。
【0041】
上記手摺支柱40は、次述の取付基台30によって上記スロープ装置Xの一方のスロープ板1の側縁部1aに立設状態で固定される。
【0042】
上記取付基台30は、
図5及び
図6に示すように、第1受具31と第2受具32及び押圧具33で構成される。
【0043】
上記第1受具31は、その一側面に上記固定柱41の一側面に略合致する略弧状面で構成される受面31aを備える一方、該受面31aに背向する他側面には上記車輪止4の上記突出部4aにその上方側から嵌合する(
図7参照)フック状の嵌合部31bを備えている。
【0044】
上記第2受具32は、その一側面に上記固定柱41の一側面に略合致する略弧状面で構成される受面32aを備える一方、該受面32aに背向する他側面には上記車輪止4の上記嵌合溝部4bの下面に当接する(
図7参照)平板状の当接部32bを備えている。
【0045】
上記押圧具33は、その一側面に上記固定柱41の他側面に略合致する略弧状面で構成される受面33aを備えており、上下方向に隣接配置された上記第1受具31の受面31aと第2受具32の受面32aに上記受面33aを対向させたとき、これら三者間に上記固定柱41の断面形状に対応する抱持空間が形成されるように構成されている。
【0046】
そして、上記第1受具31と上記第2受具32は、
図6及び
図7に示すように、上記第1受具31はその嵌合部31bを上記車輪止4の突出部4aにその上方側から嵌合させた状態でその下端面31cを、また上記第2受具32はその当接部32bを上記車輪止4の上記嵌合溝部4bの下面に当接させた状態でその上端面32cを、相互に衝合させた合体状態で、上記スロープ装置Xの上記車輪止4部分に装着される。
【0047】
さらに、この第1受具31と第2受具32の各受面32a、32aに上記固定柱41の一側面を嵌合当接させるとともに、該固定柱41の他側面に上記押圧具33の受面33aを嵌合当接させ、この状態で、該押圧具33を上記第1受具31と第2受具32に固定ビス72で緊締する。これで、上記固定柱41(即ち、上記手摺支柱40)は上記スロープ板1の側縁部1aに設けた上記車輪止4部分に立設状態で固定されることになる。即ち、上記車輪止4は、上記第1受具31と第2受具32によって上下方向から挟持された状態となる。なお、この固定状態においては、上記手摺支柱40は、その断面の長軸を上記スロープ装置Xの歩行方向に指向させた状態となっている。
【0048】
このように、上記スロープ板1の上記車輪止4を上下方向から挟持する上記取付基台30を介して上記手摺支柱40を該スロープ板1側に取り付けることで、該取付基台30における上下の挟持点(上記車輪止4の突出部4aの上面と嵌合溝部4bの下面)間の距離、即ち、上記手摺支柱40に負荷される横方向荷重に対して上記取付基台30部分に発生する抵抗モーメントのアーム長さが、例えば、上記スロープ装置Xの歩行面部分(即ち、上記スロープ板1)を直接上下方向に挟持する構成の場合よりも長くなる。この結果、上記アーム長さの増加分だけ、上記手摺支柱40の横方向荷重に対する支持剛性が向上することになる。
【0049】
また、上記手摺支柱40が、その断面の長軸を上記スロープ装置Xの歩行方向に指向させた状態で固定されているので、例えば、上記手摺支柱40の断面の長軸を上記スロープ装置Xの横幅方向に指向させた場合に比して、上記手摺装置Yの上記スロープ装置X側への延出幅が小さくなり、それだけ上記スロープ装置Xの歩行面の利用可能な有効幅が拡大され、該スロープ装置X使用上の利便性が向上することになる。
【0050】
なお、この実施形態では上記手摺支柱40を二本備えた手摺装置Yを例示しているが、本願発明は係る構成に限定されるものではなく、該手摺装置Yが装着される上記スロープ装置Xの長さとか、手摺装置Yに負荷される横荷重の大きさ等の条件に対応して該手摺支柱40の設置個数を適宜設定すればよい。
【0051】
2−2:手摺ブラケット43,44
上記可動柱42の先端側には、次述の手摺ブラケット43と手摺ブラケット44が取り付けられている。
【0052】
上記手摺ブラケット43は、
図6に示すように、弧状面を持つ一対の把持ピース43a,43bを備え、これら一対の把持ピース43a,43bを上記可動柱42の上端に取り付けられた基台61に固定ボルト56によって締着固定している。そして、上記一対の把持ピース43a,43b間に手摺棒51を挟んだ状態で上記固定ボルト56を緊締することで、手摺棒51を上記可動柱42の上端側に固定することができる。
【0053】
なお、上記手摺ブラケット43は、上記固定ボルト56を中心として回動でき、この回動角度の調整によって上記手摺支柱40に対する上記手摺棒51の相対角度(即ち、上記手摺支柱40に対する上記手摺棒51の姿勢)を調整できるようになっている。また、上記固定ボルト56を緩めることで、上記手摺支柱40に対する上記手摺棒51の軸方向位置を変更できることは言うまでもない。
【0054】
上記手摺ブラケット44は、
図6に示すように、弧状面を持つ一対の把持ピース44a,44bを備え、これら一対の把持ピース44a,44bを上記可動柱42の軸方向中間位置に取り付けられた延出腕48の先端に固定ボルト57によって締着固定している。そして、上記一対の把持ピース44a,44b間に手摺棒52を挟んだ状態で上記固定ボルト57を緊締することで、手摺棒52を上記可動柱42の中段位置に固定することができる。
【0055】
上述のように、上記手摺ブラケット43及び手摺ブラケット44とも、一対の把持ピース43a,44b間、同44a,44b間で手摺棒51、同52を挟着保持するようにしているので、例えば、上記手摺ブラケット43,44を上記手摺棒51,52に対してその軸方向から嵌挿させて取り付ける構成の場合に比して、該手摺棒51,52の着脱作業が容易であり、上記手摺装置Yを分解及び組立する機会の多い携帯用スロープ装置Xに付設される手摺装置として好適である。
【0056】
なお、上記手摺ブラケット44は、上記固定ボルト57を中心として回動でき、この回動角度の調整によって上記手摺支柱40に対する上記手摺棒52の角度(即ち、上記手摺支柱40に対する上記手摺棒52の姿勢)を調整できるようになっている。
【0057】
また、上記延出腕48は、その固定部48aを上記可動柱42の上記縦溝50に嵌合させた状態で固定ビス74により固定されている。そして、上記固定ビス74を緩めて上記延出腕48を上記縦溝50に沿って上下方向へ移動させることで、上記手摺棒53の高さ位置を調整することができる。
【0058】
2−3:手摺棒51、52
上記手摺棒51、52は、ともにその両端を略U形に屈曲させた形状をもち、この実施形態では、上記スロープ装置Xの一側に立設された二本の上記手摺支柱40間に跨って取り付けられる。この場合、上記手摺棒51は上記各手摺支柱40の手摺ブラケット43側に取り付けられ、上記手摺棒52は上記各手摺支柱40の上記手摺ブラケット44側に取り付けられ、これによって上記手摺装置Yは上下二段に手摺棒を備えることになる。
【0059】
2−4:補助脚45
上記補助脚45は、上記手摺支柱40に付設されて上記手摺装置Yの横方向外方への倒れを規制して該手摺装置Yの安定性、延いては上記スロープ装置Xを含む装置全体の信頼性を担保するものであって、その両端部45a,45bを相互に略直交方向へ屈曲させた管体で構成される。そして、この補助脚45の一端部45aには、上記手摺支柱40の上記可動柱42の上記縦溝50部分に掛止される固定具46が取り付けられるとともに、その他端部45bには接地材47が取り付けられている。
【0060】
上記補助脚45は、その一端部45aに設けた上記固定具46を上記手摺支柱40の上記可動柱42に掛止し、さらに固定ビス73で固定することで上記端面板4側に取り付けられる。そして、この補助脚45は、上記固定ビス73を緩めて上記固定具46を上記縦溝50に沿って上下方向を移動させることで、上記手摺支柱40に対する取付高さを調整して、上記接地材47を的確に接地させることができるものである。
【0061】
このように、上記補助脚45を備えたことで、該補助脚45の突っ張り作用によって、上記手摺支柱40の横方向荷重に対する強度性能が格段に向上し、上記取付基台30による上記手摺支柱40の支持剛性の向上作用と相俟って、上記手摺装置Yの強度上の信頼性の更なる向上が期待できる。
【0062】
3:スロープ装置X及び手摺装置Yの設置作業
スロープ装置X及び手摺装置Yの設置作業を、
図1〜
図4に示すように、該スロープ装置Xを段差部Gの高位部Gaと低位部Gbの間に架設し、さらにこのスロープ装置Xに対して上記手摺装置Yを取り付ける場合を例にとって説明する。
【0063】
先ず、上記スロープ装置Xを、単体で上記段差部Gの高位部Gaと低位部Gbの間に架設する。このスロープ装置Xの段差部Gへの架設状態においては、その一方の端部材2が上記高位部Gaに接地し、他方の端部材3が低位部Gbに接地し、該スロープ装置Xの上面側への荷重を支持し得る状態とされる。
【0064】
次に、上記手摺装置Yの一方の側縁部、即ち、上記スロープ板1の側縁部1aに上記手摺装置Yを取り付ける。先ず、上記スロープ装置Xの一側の前後二か所にそれぞれ上記取付基台30を介して上記手摺支柱40を取り付ける。さらに、これら各手摺支柱40の各手摺ブラケット43部分と、各手摺ブラケット44部分に、それぞれ手摺棒51,52を取り付ける。しかる後、上記手摺装置Yの各手摺支柱40のそれぞれに上記補助脚45を取り付けて、その接地材47を上記手摺支柱40から側方へ大きく張り出した状態で接地させる(
図3参照)。以上で、上記スロープ装置Xと上記手摺装置Yの設置作業が完了する。
【0065】
「第2の実施形態」
図8〜
図11には、本願発明の第2の実施形態に係る手摺装置Y及びこれが付設されたスロープ装置Xを示している。
【0066】
ここで、上記スロープ装置Xは、上記第1の実施形態におけるスロープ装置Xと同様構造をもつものであり、該第1の実施形態における該当説明を援用することでその説明を省略し、ここでは上記手摺装置Yについてのみ説明をする。
【0067】
1:手摺装置Y
上記手摺装置Yは、
図8〜
図11に示すように、前後二本の手摺支柱60と、該各手摺支柱60間に跨って取り付けられた手摺棒68、69と、上記各手摺支柱60に取り付けられた補助脚65を備えて構成される。
【0068】
1−1:手摺支柱60
上記手摺支柱60は、
図12及び
図13に示すように、円形の断面形状をもつ大径の固定柱61と、該固定柱61と同様に円形の断面形状をもち該固定柱61に内挿される小径の可動柱22で構成され、該可動柱62の上記固定柱61からの引出量を調整することで、その長さ(高さ)が増減調整され、且つ固定ビス(図示省略)によって所要長さで固定保持される。
【0069】
上記手摺支柱60は、次述の取付基台35によって上記スロープ装置Xの一方のスロープ板1の側縁部1aに立設状態で固定される。
【0070】
上記取付基台35は、
図12及び
図13に示すように、第1受具36と第2受具37及び押圧具38で構成される。
【0071】
上記第1受具36は、その一側面に上記固定柱61の一側面に略合致する略弧状面で構成される受面36aを備える一方、該受面36aに背向する他側面には上記車輪止4の上記突出部4aにその上方側から嵌合する(
図7参照)フック状の嵌合部36bを備えている。
【0072】
上記第2受具37は、その一側面に上記固定柱61の一側面に略合致する略弧状面で構成される受面37aを備える一方、該受面37aに背向する他側面には上記車輪止4の上記嵌合溝部4bの下面に当接する(
図7参照)平板状の当接部37bを備えている。
【0073】
上記押圧具38は、その一側面に上記固定柱61の他側面に略合致する略弧状面で構成される受面38aを備えており、上下方向に隣接配置された上記第1受具36の受面36aと第2受具37の受面37aに上記受面38aを対向させたとき、これら三者間に上記固定柱61の断面形状に対応する抱持空間が形成されるように構成されている。
【0074】
そして、上記第1受具36と上記第2受具37は、
図7及び
図13に示すように、上記第1受具36はその嵌合部36bを上記車輪止4の突出部4aにその上方側から嵌合させた状態でその下端面36cを、また上記第2受具37はその当接部37bを上記車輪止4の上記嵌合溝部4bの下面に当接させた状態でその上端面37cを、相互に衝合させた合体状態で、上記スロープ装置Xの上記車輪止4部分に装着される。
【0075】
さらに、この第1受具36と第2受具37の各受面36a、37aに上記固定柱61の一側面を嵌合当接させるとともに、該固定柱61の他側面に上記押圧具38の受面38aを嵌合当接させ、この状態で、該押圧具38を上記第1受具36と第2受具37に固定ビス72で緊締する。これで、上記固定柱61(即ち、上記手摺支柱60)は上記スロープ板1の側縁部1aに設けた上記車輪止4部分に立設状態で固定されることになる。即ち、上記車輪止4は、上記第1受具36と第2受具37によって上下方向から挟持された状態となる。
【0076】
このように、上記スロープ板1の上記車輪止4を上下方向から挟持する上記取付基台35を介して上記手摺支柱60を該スロープ板1側に取り付けることで、該取付基台35における上下の挟持点(上記車輪止4の突出部4aの上面と嵌合溝部4bの下面)間の距離、即ち、上記手摺支柱60に負荷される横方向荷重に対して上記取付基台35部分に発生する抵抗モーメントのアーム長さが、例えば、上記スロープ装置Xの歩行面部分(即ち、上記スロープ板1)を直接上下方向に挟持する構成の場合よりも長くなる。この結果、上記アーム長さの増加分だけ、上記手摺支柱60の横方向荷重に対する支持剛性が向上することになる。
【0077】
なお、この実施形態では上記手摺支柱60を二本備えた手摺装置Yを例示しているが、本願発明は係る構成に限定されるものではなく、該手摺装置Yが装着される上記スロープ装置Xの長さとか、手摺装置Yに負荷される横荷重の大きさ等の条件に対応して該手摺支柱60の設置個数を適宜設定すればよい。
【0078】
1−2:手摺ブラケット63
上記可動柱62の先端側には、手摺ブラケット63が取り付けられている。この手摺ブラケット63は、
図13に示すように、U形の受体で構成され、基台77を介して上記可動柱62の先端に固定されている。そして、この手摺ブラケット63には、相互に折曲自在に構成された一対の連結ピース67a、67bでなる連結具67が、固定ボルト75によって連結された状態で上記手摺ブラケット63側に枢着されている。
【0079】
また、上記連結具の一方の連結ピース67aの外端側には、直棒状の手摺体68の端部がその軸方向に移動可能に嵌挿されている。また、他方の連結ピース67bの外端側には、大きくU形に屈曲形成された端部手摺体69の一端がその軸方向に移動可能に嵌挿されている。したがって、上記手摺体68と上記端部手摺体69は、上記手摺ブラケット63の固定ボルト75を中心として上下方向に相対回動可能となっている。
【0080】
なお、この実施形態では、上記スロープユニットXの長さが短いため、上記手摺ユニットYにおいては上記手摺支柱60を上記スロープユニットXの前後両端部にそれぞれ配置し、これら一対の手摺支柱60間に跨るようにして1本の手摺棒68を配置したが、例えば、上記スロープユニットXの長さが長くなった場合には、該スロープユニットXの長さ方向の中間位置にも手摺支柱60を配置することになるが、係る場合には複数の手摺棒68同士を中間位置の手摺支柱60部分において連結する。
【0081】
2:補助脚65
上記補助脚65は、上記手摺支柱60に付設されて上記手摺ユニットYの横方向外方への倒れを規制して該手摺ユニットYの安定性、延いては上記スロープユニットXを含むスロープ装置Z全体の信頼性を担保するものであって、その両端部65a,65bを相互に略直交方向へ屈曲させた管体で構成される。
【0082】
そして、この補助脚65は、その一端部65aを、上記固定柱61の上端部に取り付けた固定具64に連結することで上記手摺支柱60側に取り付けられる。また、この補助脚65の他端部65bには接地材66が取り付けられている。
【0083】
なお、この実施形態の手摺ユニットYを備えたスロープ装置Zの設置作業の作業手順等は上記第1の実施形態の場合特許同様であるので、ここでの説明は省略する。また、この手摺ユニットYを備えたスロープ装置Zの作用効果は、上記第1の実施形態の場合と同様であり、該第1の実施形態の該当説明を援用し、ここでの説明を省略する。