特許第6452232号(P6452232)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6452232
(24)【登録日】2018年12月21日
(45)【発行日】2019年1月16日
(54)【発明の名称】磁石解析装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 33/12 20060101AFI20190107BHJP
【FI】
   G01R33/12 M
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-221174(P2014-221174)
(22)【出願日】2014年10月30日
(65)【公開番号】特開2016-90255(P2016-90255A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2017年8月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】597046487
【氏名又は名称】株式会社ディー・エム・ティー
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】特許業務法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平澤 正幸
【審査官】 續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−286723(JP,A)
【文献】 特開2011−208971(JP,A)
【文献】 特開2013−145193(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0253106(US,A1)
【文献】 特開2010−078340(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/076839(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 33/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着磁された磁石の磁束量を第1の方向で検出する磁束検出部と、
基準軸を中心とする軌道上において前記磁石を回転させる磁石回転部と、
前記磁束検出部を前記第1の方向及び当該第1の方向と平面視において直交する第2の方向に移動自在に支持する位置決め部と、
前記磁石回転部により前記磁石を回転させたときに、前記磁束検出部で検出される磁束量の変化を正弦波信号として取得する信号取得部と、
前記信号取得部で取得された正弦波信号のN極側のピーク値及びS極側のピーク値が互いに近づくように、前記位置決め部において前記磁束検出部の前記第1の方向における位置を補正する共に、前記信号取得部で取得された正弦波信号に波形歪みが生じる範囲に設定された第1電気角における磁束量と、前記第1電気角と位相が180度異なる第2電気角における磁束量とが互いに近づくように、前記位置決め部において前記磁束検出部の前記第2の方向における位置を補正する位置補正部と、
を備える磁石解析装置。
【請求項2】
請求項1に記載の磁石解析装置において、
前記位置補正部は、前記信号取得部で取得された正弦波信号の電気角15度から75度までの間又は電気角115度から165度までの間に設定される第1の電気角における磁束量と、前記第1の電気角と位相が180度異なる第2の電気角における磁束量とが互いに近づくように、前記位置決め部において前記磁束検出部の前記第2の方向における位置を補正すること、
を特徴とする磁石解析装置。
【請求項3】
請求項2に記載の磁石解析装置において、
前記位置補正部は、前記信号取得部で取得された正弦波信号の電気角45度又は電気角135度のいずれかを前記第1の電気角とし、当該第1の電気角における磁束量と、前記第1の電気角と位相が180度異なる第2の電気角における磁束量とが互いに近づくように、前記位置決め部において前記磁束検出部の前記第2の方向における位置を補正すること、
を特徴とする磁石解析装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の磁石解析装置において、
前記位置補正部は、前記磁束検出部の前記第1の方向における位置の補正と、前記磁束検出部の前記第2の方向における位置の補正と、を交互に実行すること、
を特徴とする磁石解析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁石解析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、測定対象物の磁束分布を測定するために磁石解析装置が用いられている。この磁石解析装置において、磁気センサの中心を検査ステージの基準軸上に位置決めする方法が各種提案されている。この位置決め方法の一例として、1軸型の磁気センサを中心として回転する磁石の磁束量を正弦波信号として取得することにより、磁気センサの中心を検査ステージの基準軸上に位置決めする方法が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−286723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載された位置決め方法では、磁気センサのY軸(側面)方向において、正弦波信号のゼロクロス点における磁束量の変動、及びピーク値における磁束量の変動がそれぞれ極めて小さいため、磁束検出部としての磁気センサを正確に位置決めすることが困難であった。
本発明は、磁束検出部をより正確に位置決めすることができる磁石解析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明は、着磁された磁石の磁束量を第1の方向で検出する磁束検出部と、基準軸を中心とする軌道上において前記磁石を回転させる磁石回転部と、前記磁束検出部を前記第1の方向及び当該第1の方向と平面視において直交する第2の方向に移動自在に支持する位置決め部と、前記磁石回転部により前記磁石を回転させたときに、前記磁束検出部で検出される磁束量の変化を正弦波信号として取得する信号取得部と、前記信号取得部で取得された正弦波信号のN極側のピーク値及びS極側のピーク値が互いに近づくように、前記位置決め部において前記磁束検出部の前記第1の方向における位置を補正する共に、前記信号取得部で取得された正弦波信号に波形歪みが生じる範囲に設定された第1電気角における磁束量と、前記第1電気角と位相が180度異なる第2電気角における磁束量とが互いに近づくように、前記位置決め部において前記磁束検出部の前記第2の方向における位置を補正する位置補正部と、を備える磁石解析装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、磁束検出部をより正確に位置決めすることができる磁石解析装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る磁石解析装置1の全体構成図である。
図2】磁石Mとプローブ14との位置関係を示す模式図である。
図3】XY方向に位置ずれがない場合に取得される正弦波信号の波形図である。
図4】XY方向に位置ずれがある場合に取得される正弦波信号の一例を示す波形図である。
図5】制御部10においてプローブ14の位置決め処理を実行する場合の処理手順を示すフローチャートである。
図6】プローブ14のXY方向における位置ずれ量と磁束量との関係を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る磁石解析装置1の全体構成図である。図2は、磁石Mとプローブ14との位置関係を示す模式図である。
図1に示すように、本実施形態に係る磁石解析装置1は、制御部10、チャック11、モータ12、エンコーダ13、及びプローブ14、を備える。また、磁石解析装置1は、モータドライバ15、D/A変換器16、カウンタ17、センサ出力検出部18、A/D変換器19、及び位置決め部20を備える。更に、磁石解析装置1は、表示装置21、入力装置22、及び出力装置23を備える。
【0010】
チャック11は、着磁された磁石Mを、回転軸A1(後述)を中心として回転させる装置であり、例えば、着磁された円筒形の磁石を固定可能な3爪のスクロール型のチャックが用いられる。チャック11には、通常の磁石解析においては、モータに組み込まれるロータ、ステータ等が固定される。一方、プローブ14の位置決めにおいては、位置決め用の磁石Mが固定される。チャック11に固定された磁石Mは、図2に示すように、チャック11の回転軸A1(基準軸)を中心とする軌道OR上を一定周期で回転する。チャック11及びモータ12(後述)は、本実施形態において、磁石回転部を構成する。
【0011】
モータ12は、チャック11を回転させる動力源である。モータ12の出力軸(符号省略)は、チャック11の回転軸A1に連結されている。モータ12は、モータドライバ15、D/A変換器16を介して制御部10と電気的に接続されている。モータ12の回転速度は、制御部10から出力された速度信号により制御される。
エンコーダ13は、モータ12の出力軸の回転角度に対応したパルス信号を出力する装置(ロータリーエンコーダ)である。エンコーダ13から出力されたパルス信号は、カウンタ17を介して、制御部10に入力される。後述する制御部10は、エンコーダ13から出力されるパルス信号に基づいて、磁石M(チャック11)の回転角度を判断することができる。
【0012】
プローブ14は、測定対象物となる磁石Mの磁束量を検出する装置であり、プローブセンサ24(磁束検出部)を備える。プローブセンサ24は、チャック11に固定された磁石Mの磁束量を検出し、その大きさに応じた電圧を検出信号として出力する磁気センサである。本実施形態のプローブセンサ24は、図2に示すように、X+方向(第1の方向)が正面となり、X−方向が背面となる。また、プローブセンサ24は、X方向と平面視において直交するY+及びY−方向(第2の方向)が側面となる。
【0013】
プローブセンサ24は、センサ出力検出部18、A/D変換器19を介して制御部10と電気的に接続されている。プローブセンサ24から出力された検出信号は、センサ出力検出部18で増幅され、A/D変換器19を介して制御部10に送信される。なお、センサ出力検出部18は、プローブセンサ24から出力された検出信号を増幅するアンプ回路、及び増幅した検出信号を正弦波信号として表示するモニタ装置を備える(いずれも不図示)。なお、図2は、チャック11の回転軸A1とプローブセンサ24の中心A2とが一致した状態を示している。
【0014】
位置決め部20は、プローブ14(プローブセンサ24)を、X方向及びY方向に移動自在に支持する装置である。位置決め部20は、制御部10と電気的に接続されている。位置決め部20によるプローブ14の移動は、制御部10から出力される位置制御信号により制御される。
【0015】
制御部10は、磁石解析装置1の全体的な動作を制御する電子部品であり、マイクロコンピュータ及びその周辺回路(メモリ等)により構成される。図1において、制御部10と各部との信号、データ等の送受信は、I/Oポート(不図示)を介して行われる。なお、本実施形態では、制御部10によるプローブ14の位置決め処理について説明し、通常の磁石解析処理についての説明を省略する。
【0016】
制御部10(信号取得部)は、モータドライバ15を介してモータ12を制御することにより、磁石Mが固定されたチャック11を回転させて、プローブ14から出力される検出信号の変化を、連続する正弦波信号として取得する。
制御部10(位置補正部)は、プローブ14から得た正弦波信号のN極側のピーク値及びS極側のピーク値(以下、「NSのピーク値」ともいう)が互いに近づくように位置決め部20を制御して、プローブ14(プローブセンサ24)のX方向における位置を補正する。また、制御部10(位置補正部)は、プローブ14から得た正弦波信号の電気角45°(度)における磁束量及び電気角225°における磁束量が互いに近づくように位置決め部20を制御して、プローブ14のY方向における位置を補正する。
【0017】
ここで、チャック11の回転軸A1とプローブセンサ24の中心A2との位置ずれについて説明する。図3は、XY方向に位置ずれがない場合に取得される正弦波信号の波形図(理論上の信号波形)である。図4は、XY方向に位置ずれがある場合に取得される正弦波信号の一例を示す波形図である。図4(a)は、X方向に±0.5mmの位置ずれがある場合に取得される正弦波信号の一例を示す。また、図4(b)は、Y方向に±0.5mmの位置ずれがある場合に取得される正弦波信号の一例を示す。
【0018】
なお、図4(a)では、Y方向に位置ずれがないものとする。また、図4(b)では、X方向に位置ずれがないものとする。また、図4(a)、(b)において、実線で示す信号波形は、チャック11の回転軸A1とプローブセンサ24の中心A2とが一致している場合に取得される正弦波信号(図3に示す理論上の信号波形)を示す。更に、図3及び図4において、横軸は、磁石Mが回転軸A1を中心として一回転したときの電気角(360°)を示す。また、縦軸は、プローブ14で検出されるN極側及びS極側の磁束量(磁束密度)を示す。
【0019】
プローブセンサ24の中心A2がチャック11の回転軸A1と一致している場合、プローブ14から取得される正弦波信号は、図3に示すように、NSのピーク値が同じで、且つ電気角45°における磁束量及び電気角225°における磁束量も同じ信号波形となる。以下の説明では、電気角45°及び電気角225°を「検出電気角」ともいう。また、以下の説明では、電気角45°における磁束量と電気角225°における磁束量との差分を、「検出電気角における磁束量の差分」ともいう。
【0020】
一方、プローブセンサ24の中心A2がチャック11の回転軸A1に対してX方向に位置ずれている場合、プローブ14から取得される正弦波信号は、図4(a)に示すように、NSのピーク値が互いに異なる信号波形となる。即ち、プローブセンサ24のX方向の位置ずれは、NSのピーク値において最も顕著に表れる。そのため、制御部10において、プローブ14から取得される正弦波信号のNSのピーク値を検出することにより、プローブセンサ24のX方向における位置ずれの方向、及び位置ずれ量(ピーク値の差分)をより正確に判定することができる。
【0021】
具体的には、プローブセンサ24の中心A2がチャック11の回転軸A1に対してX+方向(図2参照)に位置ずれている場合、図4(a)に示すように、プローブ14から取得される正弦波信号(一点鎖線)において、N極側のピーク値は、S極側のピーク値よりも大きくなる。この場合、制御部10は、プローブセンサ24がX+方向に位置ずれしていると判定し、プローブ14(プローブセンサ24)がX−方向に所定量だけ移動するように位置決め部20を制御して、プローブ14のX方向における位置を補正する。
【0022】
プローブセンサ24の中心A2がチャック11の回転軸A1に対してX−方向(図2参照)に位置ずれている場合、図4(a)に示すように、プローブ14から取得される正弦波信号(破線)において、N極側のピーク値は、S極側のピーク値よりも小さくなる。この場合、制御部10は、プローブセンサ24がX−方向に位置ずれしていると判定し、プローブ14(プローブセンサ24)がX+方向に所定量だけ移動するように位置決め部20を制御して、プローブ14のX方向における位置を補正する。なお、プローブ14のX方向の位置を補正する際の移動量については、後述する。
【0023】
また、プローブセンサ24の中心A2がチャック11の回転軸A1に対してY方向に位置ずれている場合、図4(b)に示すように、プローブ14から取得される正弦波信号には、各半周期において波形歪みが生じる。特に、正弦波信号において、電気角0(360)°、90°、180°、270°の近傍を除く範囲は、正弦波信号に波形歪みが生じる範囲となり、プローブ14のY方向の位置ずれが顕著に表れる。そのため、プローブ14から取得される正弦波信号に波形歪みが生じる範囲で磁束量を検出することにより、プローブセンサ24のY方向における位置ずれの方向、及び位置ずれ量(検出電気角における磁束量の差分)をより正確に判定することができる。
【0024】
なお、正弦波信号における波形歪みは、図4(b)に示すように、N極側では、電気角15°から75°の範囲、又は電気角115°から165°までの範囲において顕著となる。また、S極側では、電気角195°から225°の範囲、又は電気角295°から345°までの範囲において顕著となる。
N極側において正弦波信号に波形歪みが生じる範囲と、S極側において正弦波信号に波形歪みが生じる範囲は、位相が180°異なる。そのため、N極側の範囲において設定した電気角(以下、「第1電気角」ともいう)における磁束量と、この第1電気角と位相が180°異なるS極側の電気角(以下、「第2電気角」ともいう)における磁束量とを比較することにより、プローブセンサ24のY方向における位置ずれの方向、及び位置ずれ量をより正確に判定することができる。
【0025】
以下、具体例について説明する。本例では、プローブ14のY方向の位置ずれが最も顕著に表れる電気角として、第1電気角を45°に設定した例について説明する。
プローブセンサ24の中心A2がチャック11の回転軸A1に対してY+方向(図2参照)に位置ずれている場合、図4(b)に示すように、プローブ14から取得される正弦波信号において、第1電気角45°における磁束量は、位相が180°異なる第2電気角225°における磁束量よりも大きくなる。この場合、制御部10は、プローブセンサ24がY+方向に位置ずれしていると判定し、プローブ14(プローブセンサ24)がY−方向に所定量だけ移動するように位置決め部20を制御して、プローブ14のY方向における位置を補正する。
【0026】
また、プローブセンサ24の中心A2がチャック11の回転軸A1に対してY−方向(図2参照)に位置ずれている場合、図4(b)に示すように、プローブ14から取得される正弦波信号において、第1電気角45°における磁束量は、第2電気角225°における磁束量よりも小さくなる。この場合、制御部10は、プローブセンサ24がY−方向に位置ずれしていると判定し、プローブ14(プローブセンサ24)がY+方向に所定量だけ移動するように位置決め部20を制御して、プローブ14のY方向の位置を補正する。なお、プローブ14のY方向の位置を補正する際の移動量については、後述する。
【0027】
上記例では、プローブ14のY方向の位置ずれが最も顕著に表れる電気角として、第1電気角を45°に設定した例について説明したが、第1電気角は、この例に限定されない。プローブ14のY方向の位置ずれが最も顕著に表れる電気角として、第1電気角を135°に設定してもよい。この場合、第2電気角は、位相が180°異なる315°となる(図4(b)参照)。
【0028】
また、正弦波信号において、波形歪みがより顕著に表れる第1電気角の範囲は、電気角15°から75°の範囲、又は電気角115°から165°までの範囲となる。そのため、第1電気角は、これらの範囲から任意に設定することができる。
なお、本出願人による実験では、第1電気角を上記範囲において設定した場合、プローブ14の位置ずれ精度を50μm以下にできることが確認された。即ち、本実施形態に係る磁石解析装置1では、先に説明した特許文献1(特開2008−286723号公報)に記載された装置よりも更に高い位置ずれ精度を達成できることが立証された。
【0029】
制御部10は、プローブ14の位置決め処理として、NSのピーク値及び検出電気角における磁束量が互いに近づくように、プローブ14のX(+又は−)方向の位置の補正とY(+又は−)方向の位置の補正とを交互に実行する。
【0030】
次に、制御部10において、プローブ14の位置決め処理を実行する場合の動作について説明する。図5は、制御部10において、プローブ14の位置決め処理を実行する場合の処理手順を示すフローチャートである。図6は、プローブ14のXY方向における位置ずれ量と磁束量との関係を示す特性図である。図6(a)は、プローブ14のX方向における位置ずれ量と磁束量との関係を示す特性図である。また、図6(b)は、プローブ14のY方向における位置ずれ量と磁束量との関係を示す特性図である。図6(b)では、第1電気角を45°(第2電気角を225°)とした場合の特性を示している。
【0031】
図5に示すステップS1において、制御部10は、モータドライバ15を介してモータ12を制御して、磁石Mが固定されたチャック11を回転させる。なお、プローブ14の位置決め処理を実行する際、プローブ14は、初期位置として、チャック11の回転軸A1のほぼ真上の位置に移動しているものとする。
ステップS2において、制御部10は、プローブ14から出力された検出信号の変化を正弦波信号として取得し、その正弦波信号におけるNSのピーク値の差分(X方向の差分)が規定値未満か否かを判定する。ステップS2の判定がYESであれば、処理は、ステップS4へ移行する。また、ステップS2の判定がNOであれば、処理は、ステップS3へ移行する。
【0032】
ステップS3において、制御部10は、プローブ14から出力された検出信号の変化を正弦波信号として取得し、その正弦波信号のNSのピーク値に基づいて、プローブ14を移動させる方向を決定する。そして、制御部10は、プローブ14がX(+又は−)方向に所定量だけ移動するように位置決め部20を制御して、プローブ14のX方向の位置を補正する。ステップS1及びS2の処理は、本実施形態における信号取得ステップ及び第1の補正ステップの処理に対応する。
【0033】
ここで、ステップS3におけるプローブ14のX方向の移動量について説明する。図6(a)において、横軸は、X方向の位置ずれ量を示す。横軸において、0(ゼロ)を中心として、右側がX+方向、左側がX−方向の位置ずれ量(mm)を示す。縦軸は、NSのピーク値の差分に相当する磁束量(mT)を示す。図6(a)に示すように、プローブ14のX+方向の位置ずれ量が大きくなるにつれて、NSのピーク値の差分はプラス側に大きくなる。また、プローブ14のX−方向の位置ずれ量が大きくなるにつれて、NSのピーク値の差分はマイナス側に大きくなる。このように、X方向の+/−の位置ずれ量とNSのピーク値の差分とは比例関係にある。図6(a)に示す特性データは、予めメモリ(不図示)に記憶されている。
【0034】
制御部10は、取得した正弦波信号のNSのピーク値の差分がプラス値であれば、プローブ14がX+方向に位置ずれしていると判定する。そして、制御部10は、図6(a)に示す特性データに基づいて、NSのピーク値の差分に応じた移動量を設定する。例えば、図6(a)に示すように、NSのピーク値の差分に相当する磁束量が30mTであれば、プローブ14の位置ずれは、X+方向に0.4mmとなる。そのため、制御部10は、プローブ14を移動させる方向をX−方向とし、プローブ14の移動量を−0.4mmに設定する。また、図6(a)に示すように、NSのピーク値の差分に相当する磁束量が−40mTであれば、プローブ14の位置ずれは、X−方向に−0.5mmとなる。そのため、制御部10は、プローブ14を移動させる方向をX+方向とし、プローブ14の移動量を+0.5mmに設定する。
【0035】
ステップS4において、制御部10は、プローブ14から出力された検出信号の変化を正弦波信号として取得し、その正弦波信号における検出電気角45°(第1電気角)及び225°(第2電気角)での磁束量の差分(Y方向の差分)が規定値未満か否かを判定する。ステップS4の判定がYESであれば、処理は、ステップS6へ移行する。また、ステップS4の判定がNOであれば、処理は、ステップS5へ移行する。
【0036】
ステップS5において、制御部10は、プローブ14から出力された検出信号の変化を正弦波信号として取得し、その正弦波信号の検出電気角における磁束量に基づいて、プローブ14を移動させる方向を決定する。そして、制御部10は、プローブ14がY(+又は−)方向に所定量だけ移動するように位置決め部20を制御して、プローブ14のY方向の位置を補正する。ステップS1及びS3の処理は、本実施形態における信号取得ステップ及び第2の補正ステップの処理に対応する。
【0037】
ここで、ステップS5におけるプローブのY方向の移動量について説明する。図6(b)において、横軸の項目及び単位は、図6(a)と同じである。縦軸は、検出電気角45°及び225°での磁束量の差分に相当する磁束量(mT)を示す。図6(b)に示すように、プローブ14のY+方向の位置ずれ量が大きくなるにつれて、磁束量の差分はプラス側に大きくなる。また、プローブ14のY−方向の位置ずれ量が大きくなるにつれて、磁束量の差分はマイナス側に大きくなる。即ち、Y方向の+/−の位置ずれ量とNSにおける磁束量の差分とは比例関係にある。図6(b)に示す特性データは、予めメモリ(不図示)に記憶されている。
【0038】
制御部10は、取得した正弦波信号の検出電気角での磁束量の差分がプラス値であれば、プローブ14がY+方向に位置ずれしていると判定する。そして、制御部10は、図6(b)に示す特性データに基づいて、磁束量の差分に応じた移動量を設定する。例えば、図6(b)に示すように、磁束量の差分に相当する磁束量が30mTであれば、プローブ14の位置ずれは、Y+方向に0.5mmとなる。そのため、制御部10は、プローブ14を移動させる方向をY−方向とし、プローブ14の移動量を−0.5mmに設定する。また、図6(b)に示すように、磁束量の差分に相当する磁束量が−20mTであれば、プローブ14の位置ずれは、Y−方向に−0.3mmとなる。そのため、制御部10は、プローブ14を移動させる方向をY+方向とし、プローブ14の移動量を+0.3mmに設定する。
【0039】
ステップS6において、制御部10は、プローブ14から出力された検出信号の変化を正弦波信号として取得し、その正弦波信号におけるNSのピーク値の差分(X方向の差分)が規定値未満か否かを判定する。後述するように、プローブ14のX方向の位置を補正すると、プローブ14のY方向において僅かな位置ずれが発生する。そのため、Y方向の位置を補正した時点で、X方向の差分が規定未満であれば、XY方向共に差分が規定値未満であると判定することができる。ステップS6の判定がYESであれば、処理は、ステップS7へ移行する。また、ステップS6の判定がNOであれば、処理は、ステップS3へ戻る。
【0040】
ステップS7において、制御部10は、プローブ14のXY方向の位置データ(座標データ)をメモリ(不図示)に記憶すると共に、モータドライバ15を介してモータ12を制御して、チャック11の回転を停止させる。この後、制御部10は、本フローチャートの処理を終了する。
【0041】
上述した本実施形態に係る磁石解析装置1は、例えば、以下のような効果を奏する。
磁石解析装置1において、制御部10は、プローブ14から得た正弦波信号のNSのピーク値が互いに近づくようにプローブ14のX方向における位置を補正すると共に、プローブ14から得た正弦波信号の検出電気角(電気角45°及び電気角225°)における磁束量が互いに近くようにプローブ14のY方向における位置を補正する。これによれば、プローブ14のXY方向の位置ずれが最も顕著に表れる位置で検出された値に基づいてプローブ14の位置が補正されるため、本実施形態に係る磁石解析装置1は、チャック11の回転軸A1に対してプローブ14をより正確に位置決めすることができる。
【0042】
磁石解析装置1において、制御部10は、プローブ14のX方向の位置の補正とY方向の位置の補正とを交互に実行する。プローブ14のX方向の位置を補正すると、プローブ14のY方向において僅かな位置ずれが発生する。同様に、プローブ14のY方向の位置を補正すると、プローブ14のX方向において僅かな位置ずれが発生する。そのため、プローブ14のX方向の位置の補正とY方向の位置の補正とを交互に(必要に応じて繰り返し)実行することにより、プローブ14の位置決め精度をより高めることができる。
【0043】
本発明は、上述した実施形態に限定されることなく、以下に示すような形態においても実施可能であり、それらも本発明の範囲内である。
本実施形態では、プローブ14の位置決め処理(図5参照)において、取得した正弦波信号におけるNSのピーク値の差分及び検出電気角での磁束量の差分が、それぞれ規定値未満となるようにプローブ14の位置を補正する例について説明した。これに限らず、取得した正弦波信号におけるNSのピーク値及び検出電気角での磁束量が、それぞれ最小値となるようにプローブ14の位置を補正してもよい。
【0044】
本実施形態では、プローブ14のXY方向の位置を補正する際の移動量を、図6に示す特性データに基づいて設定する例について説明した。これに限らず、プローブ14を移動する方向を判定し、プローブ14をその方向に一定量(例えば、0.02mm)だけ移動させるようにしてもよい。本例において、1回の補正におけるプローブ14の移動量は、プローブセンサ24の検出精度等に応じて適宜に設定することができる。
【0045】
本実施形態では、磁石Mが固定されたチャック11を回転させて、プローブ14から出力される検出信号の変化を、連続する正弦波信号として取得する例について説明した。これに限らず、プローブ14から出力される検出信号の変化として、NSのピーク値のみ、及び電気角45°における磁束量及び電気角225°における磁束量のみを正弦波信号の一部として取得するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1:磁石解析装置、10:制御部、11:チャック、12:モータ、20:位置決め部、24:プローブセンサ、M:磁石
図1
図2
図3
図4
図5
図6