特許第6452257号(P6452257)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6452257
(24)【登録日】2018年12月21日
(45)【発行日】2019年1月16日
(54)【発明の名称】音場を生成するための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/40 20060101AFI20190107BHJP
   H04R 3/00 20060101ALI20190107BHJP
【FI】
   H04R1/40 310
   H04R3/00 310
【請求項の数】19
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-512412(P2016-512412)
(86)(22)【出願日】2014年4月29日
(65)【公表番号】特表2016-530740(P2016-530740A)
(43)【公表日】2016年9月29日
(86)【国際出願番号】GB2014051319
(87)【国際公開番号】WO2014181084
(87)【国際公開日】20141113
【審査請求日】2017年4月26日
(31)【優先権主張番号】1308274.8
(32)【優先日】2013年5月8日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】515310940
【氏名又は名称】ウルトラハップティックス リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ULTRAHAPTICS LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100109634
【弁理士】
【氏名又は名称】舛谷 威志
(74)【代理人】
【識別番号】100129263
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100163991
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 慎司
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【弁理士】
【氏名又は名称】有馬 百子
(74)【代理人】
【識別番号】100153947
【弁理士】
【氏名又は名称】家成 隆彦
(72)【発明者】
【氏名】カーター,トーマス アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ロング,ベンジャミン ジョン オリバー
(72)【発明者】
【氏名】スブラマニアン,スリラム
【審査官】 須藤 竜也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−172074(JP,A)
【文献】 特開2010−109579(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/40
H04R 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)既知の相対位置及び配向を有するトランスデューサのアレイからの音場を生成することと、
ii)前記トランスデューサのアレイと相対的な既知の空間的関係を複数個の制御点の各々が有する、前記複数個の制御点を定めることと、
iii)前記複数個の制御点の各々に振幅を割り当てることと、
iv)前記複数個の制御点の各々における、前記制御点における特定の位相を持つ前記割り当てられた振幅を有するモデル化された音場の生成が、前記複数個の制御点における前記モデル化された音場の結果として起こる振幅及び位相に与える影響を示す要素を含有する行列を計算することと、
v)前記複数個の制御点の各々における前記モデル化された音場の相対位相及び相対振幅のセットをその各々が表す、前記行列の複数の固有ベクトルを決定することと、
vi)前記音場の相対位相及び相対振幅のセットのうちの一つを選択し、前記複数個の制御点の各々における結果として生じる音場の前記位相及び振幅が、前記選択したセットの前記相対位相及び相対振幅に一致するように、前記トランスデューサの一つ以上に初期振幅及び真の音場の位相を各々が有する音響波を出力させるよう前記トランスデューサアレイを動作することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記複数の固有ベクトルがスケーリングファクタを表し、前記複数の固有ベクトルのいくつかのセクションは相対的に高く、前記複数の固有ベクトルのいくつかのセクションは相対的に低く、相対的に高い対応する固有値を持つ位相及び相対振幅のセットが前記モデル化された音場の相対位相及び相対振幅のセットとして選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記制御点の一つにおける前記割り当てられた振幅の生成が、前記他の制御点の各々における前記振幅及び位相に基づく前記影響が、前記音響波の前記振幅及び位相が減衰及び伝播に起因して空間的にどの程度変化するかを定めるルックアップ関数を使用して計算される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記初期振幅及び位相の出力にエラーを取り込む正則化ステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記正則化法において、加重したTikhonov正則化が用いられる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記トランスデューサアレイによって出力される電力が、前記初期振幅の最大値を出力する前記トランスデューサが実質的にフルパワーで動作するように、スケールを変える、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記音響波が超音波である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記音響波が0.1Hz〜500Hzの周波数に調節される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記複数の制御点が、第一のグループの制御点と、第二のグループの制御点と、を備えており、前記音場が前記第二のグループの制御点における前記音場の前記振幅と比較して相対的に高い振幅を有し、前記音場が前記第一のグループの制御点における前記音場の前記振幅と比較して相対的に低い振幅を有し、前記音場の振幅における勾配が生成されるように、前記第一のグループの制御点は前記第2のグループの制御点と隣接する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記複数の制御点は、一つ以上の低振幅制御点のグループにオブジェクトを保持できるポケットを画定するように、一つ以上の高振幅制御点によりサポートされる一つ以上の低振幅制御点のグループを備える、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記制御点の少なくとも一つの位置が、前記音場が存在し得る容積内の仮想三次元形状の一部を画定するように選出される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも一つの制御点が、オブジェクトが前記仮想形状に交わる地点の前記領域内に位置付けられる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
音場を生成するための装置であって、
既知の相対位置及び配向を有するトランスデューサのアレイ
データプロセッサと、を備え前記データプロセッサが、
前記トランスデューサのアレイと相対的な既知の空間的関係を各々が有し、それらに割り当てられた振幅を各々が有する複数個の制御点の各々における、前記制御点における特定の位相を持つ前記割り当てられた振幅を有するモデル化された音場の生成が、他の制御点における前記モデル化された音場の結果として起こる振幅及び位相に与える影響を示す要素を含有する行列と、
前記複数個の制御点の各々における前記モデル化された音場の位相及び相対振幅のセットをその各々の前記複数の固有ベクトルが表す、前記行列の前記複数の固有ベクトルと、
を備え、
前記データプロセッサが、前記制御点における前記結果生じる音場の前記位相及び振幅が複数の固有ベクトルのセットの、前記位相及び相対振幅に一致するように、一つ以上の前記トランスデューサに初期振幅及び位相を各々が有する音響波を真の音響波として出力させるように設定された装置。
【請求項14】
相対的に高い対応する固有値を持つ位相及び相対振幅のセットが、前記複数の固有ベクトルのセットである請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記データプロセッサが、更に前記トランスデューサのアレイによって出力された初期振幅及び位相にエラーを取り込むレギュレータを備える請求項13に記載の装置。
【請求項16】
前記レギュレータが加重したTikhonov正則化を用いる、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記音響波は超音波周波数を含む、請求項13に記載の装置。
【請求項18】
0.1Hz〜500Hzの周波数に前記音響波を調節する変調器を更に備えた、請求項13に記載の装置。
【請求項19】
前記オブジェクト追跡によって記録されたデータに基づいて、前記複数個の制御点の位置を選出するように設定されたオブジェクト追跡をさらに備えた、請求項13に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
触覚フィードバックを含む応用範囲において、「音場」として本明細書に言及される音響エネルギの連続分布を使用することが公知となっている。
【背景技術】
【0002】
その内部に音場が存在し得る空間内において一つ以上の制御点を定めることによって音場を制御することが公知となっている。各制御点には、制御点における音場の所望の振幅と等しい振幅値が割り当てられる。次に、トランスデューサが、制御点の各々における所望の振幅を示す音場を作り出すように制御される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、制御点を使用して音場を生成するための公知のシステムは、数多くの制御点を使用する場合に制限を受ける。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第一の態様に従い、既知の相対位置及び配向を有するトランスデューサのアレイを使用した音場の生成方法が提供される。この方法は、
−トランスデューサのアレイと相対的な既知の空間的関係を各々が有する複数個の制御点を定めることと、
−各制御点に振幅を割り当てることと、
−制御点の各々における、制御点における特定の位相を持つ割り当てられた振幅を有するモデル化された音場の生成が、他の制御点におけるモデル化された音場の結果として起こる振幅及び位相に与える影響を示す要素を含有する行列を計算することと、
−制御点におけるモデル化された音場の位相及び相対振幅のセットをその固有ベクトルの各々が表す、行列の固有ベクトルを決定することと、
−セットのうちの一つを選択し、制御点における結果生じる音場の位相及び振幅が、選択したセットの位相及び相対振幅に一致するように、トランスデューサの一つ以上に初期振幅及び位相を各々が有する音響波を出力させるようトランスデューサアレイを動作することと、を含む。
【0005】
それ故に、本発明の第一の態様は、解決することによって制御点における有効な位相を検出できる固有値問題を公式化することを含む。発明者らは、本発明の実施形態における固有値問題の使用によって、既知の方法と比較してより早くかつより予測可能な解決時間が得られ、これは立ち代わって、より大きい数の制御点をサポートできることを意味し、かつ制御点のリアルタイムの更新が可能になることを発見した。より早くかつより予測可能な解決時間は、既知の方法と比較してより大きい容積の音場を制御できることも意味する。
【0006】
制御点は、特定の位置におけるマーカである。隣接する制御点間の距離は、ある制御点からの位相シフトに応じた音場内の音波が次の制御点にマッチできるのに十分であるべきである。いくつかの実施形態では、分離距離は、音場内の音波の波長と等しくてもよい。
【0007】
本発明の実施形態では、トランスデューサアレイは、並列に配置された一つ以上の二次元配列などの任意の適切な構成における一つ以上のトランスデューサを備える。
【0008】
制御点における割り当てられた振幅及び特定の位相を有するモデル化された音場は、制御点の真下に位置する仮想トランスデューサによって生成されるものとしてモデル化することができる。いくつかの実施形態では、仮想トランスデューサは、実際のトランスデューサアレイの平面に位置してもよい。しかしながら、当業者は、音場を、他の配置の仮想トランスデューサによって生成されるものとしてモデル化することができ、つまり、制御点の真下に位置付けられ得る、または制御点に対して異なる空間的関係を有し得る一つ以上の仮想トランスデューサを使用して、モデル化された音場を生成できることを認識する。仮想トランスデューサの使用によって、ルックアップテーブルを事前計算することが可能になる。好ましくは、仮想トランスデューサは、トランスデューサアレイの複数のトランスデューサにマッチする。
【0009】
方法は、行列の固有値を算出するステップを含むことができる。この固有値は、互いに対してそれらのいくつかが相対的に高く、かつそれらのいくつかが相対的に低いスケーリングファクタを表す。方法は、選択したセットとして、相対的に高い対応する固有値を持つ位相及び相対振幅のセットを選択することを含むことができる。好ましくは、方法は、選択したセットとして、最大の対応する固有値を持つ位相及び相対振幅のセットを選択することを含むことができる。
【0010】
固有値は、対応する固有ベクトルが、行列によって変形されるときにどの程度スケールを変えるかを定める。換言すれば、固有値は、他の制御点において割り当てられた振幅を生成することによってもたらされる、各制御点における振幅への間接的寄与が考慮された場合に、制御点における音場の相対振幅がどの程度スケールアップするのかを表す。故に、大きな固有値の検出は、大きな量の建設的干渉を使用する相対振幅及び位相の対応するセットを示唆する。行列のすべての固有値の相対値を考慮した、相対的に高い対応する固有値を持つ相対振幅及び位相のセットの選出は、故に、トランスデューサによって出力される電力がより効率的に使用されるため、相対的に低い固有値の選出を上回る利点を有する。
【0011】
方法は、音響波の振幅及び位相が減衰及び伝播に起因して空間的にどの程度変化するかを定めるルックアップ関数を使用して、制御点の一つにおける割り当てられた振幅の生成が、他の制御点の各々における振幅及び位相に与える影響を計算することを含むことができる。ルックアップ関数は、振幅及び位相変化が起こる二つの原因のいずれかまたは両方を考慮することができる。すなわち、第一に、トランスデューサからの距離に伴い増大する、トランスデューサによって出力される音響波の振幅の減衰、第二に、音響波が空間内を伝播するときに生じる位相の変化を考慮する。
【0012】
そのようなルックアップ関数を使用する場合には、減衰及び伝播に起因する音波の位相の空間的変動を、特定のトランスデューサアレイに関して一度だけ計算すればよく、これにより、音場をモデル化するのに必要な時間、並びに結果生じる音場の位相及び振幅を生成するトランスデューサの初期振幅及び位相を算出するのに必要な時間が短縮される。
【0013】
方法は、トランスデューサによって出力された初期振幅及び位相にエラーを取り込む正則化ステップを含むことができる。
【0014】
正則化ステップを含むことの利点は、トランスデューサのより多くをより高い振幅にするようにそれらの平均振幅を増大することによって、アレイの出力効率を改善できることにある。例えば、一つのトランスデューサが100%で動作し、他のすべてが0.1%で動作するような状況を回避するために、トランスデューサの平均振幅を例えば80%まで上げる代わりに、正則化ステップにおいていくつかのエラーを取り込む。
【0015】
正則化法は、加重したTikhonov正則化であってもよい。加重したTikhonov正則化を使用することの利点は、容易に規定された行列増加を有することにある。
【0016】
トランスデューサアレイによって出力される電力は、初期振幅の最大値を出力するトランスデューサが実質的にフルパワーで動作するように、スケールを変えることができる。この方法による電力出力のスケーリングは、結果として、初期振幅の既定のセットにおけるトランスデューサアレイの電力出力を可能な限り高くし、その一方で、互いに対する初期振幅のレベルを維持するという利点を有する。
【0017】
トランスデューサは、超音波トランスデューサであってもよい。
【0018】
超音波トランスデューサの使用は、音場によって生成される音響放射力をユーザが知覚するようにトランスデューサアレイを動作できる場合、または例えば、生産ライン上で製品における接着剤を乾燥させるための製造業における場合などの触覚フィードバックの分野において利点を生み出す。
【0019】
音響波は、0Hzと搬送周波数の半分との間の周波数に調節することができる。いくつかの実施形態では、搬送周波数は、40kHzである。いくつかの実施形態では、音響波は、0.1Hz〜500Hz、場合によっては200Hz〜300Hzの周波数に調節することができる。
【0020】
0.1Hz〜500Hzの周波数への音響波の調節は、皮膚の触覚受容器がこれらの周波数において皮膚変形の変化に最も敏感であるため、触覚フィードバック用途で用いる方法の適合性を増大するという利点を生み出す。
【0021】
制御点の位置は、音場における容積を占有する、仮想三次元形状の一部を画定するように選出することができる。例えば、制御点は、形状の端または形状の端に隣接して位置してもよいし、形状の容積内に位置してもよい。制御点は、形状の全体、より好ましくは形状の一部を画定することができる。例えば、制御点は、ユーザが触れている形状の一部のみを画定する必要があり得る触覚フィードバックシステムの一部として、ユーザによって知覚される形状を画定することができる。または、この形状は、接着剤の乾燥などの製造業での用途において音響放射力の焦点を合わし得る、関心のある地点を有する製品の形状であってもよい。
【0022】
制御点は、音場が相対的に高い振幅を有する第一のグループの制御点と、高い振幅と比較して音場が相対的に低い振幅を有する第二のグループの制御点とに分けることができる。仮想形状の端は、第一のグループの制御点によって画定することができる。第二のグループにおける制御点は、仮想形状の端に音場の振幅における勾配が生成されるように、第一のグループの制御点に隣接することができる。いくつかの実施形態では、第一のグループの制御点は、音場内の音波の少なくとも半分の波長だけ、第二のグループからの隣接する制御点から間隔をあけてもよい。
【0023】
仮想形状の端に音場の振幅における勾配を提供するような、音場が相対的に高い振幅を有する制御点のグループと音場が相対的に低い振幅を有する制御点のグループとの提供は、音場の振幅においてより検出可能な差異を生成するため、ユーザによってより容易に検出できる仮想形状の端をレンダリングするという、触覚フィードバック用途における利点を提供する。また、触覚フィードバックの場合において、相対的に低い振幅の制御点は、形状に接触しないユーザの手の一部が、形状を取り囲む残留超音波を知覚しないことを確実にすることができる。低振幅制御点が存在しない場合には、それらの地点における超音波が制御されないため、手が知覚できるいくらかの構成的領域が存在し得る。
【0024】
制御点の少なくともいくつかは、オブジェクトが仮想形状と交わる地点に位置付けることができる。制御点の少なくともいくつかは、交点に隣接して位置付けることができる。
【0025】
ユーザの手などのオブジェクトが仮想形状に交わるところの領域内の地点に制御点を位置付けることは、オブジェクトが触れている仮想形状上の地点においてのみ音場を制御すればよく、それらの制御点においてより高い振幅を生成できるという利点を提供する。オブジェクトが仮想形状と交わるところの地点は、オブジェクト追跡によってリアルタイムで観測することができ、制御点は、オブジェクト位置に応じて音場内の種々の地点に位置付けることができる。
【0026】
いくつかの実施形態では、低振幅制御点は、高振幅制御点によってサポートされ、低振幅制御点にオブジェクトを保持することができるポケットを画定することができる。
【0027】
制御点の数は、少なくとも10であってもよく、好ましくは少なくとも50であってもよい。制御点の数の上限値は、どの程度大きい行列線形代数アルゴリズムを処理できるかに応じて管理することができる。
【0028】
より大きい数の制御点によって、生成される音場は、振幅を制御できるより多くの地点を有することができる。この特徴によって、例えば、より複雑な三次元または二次元仮想形状を画定することができ、または仮想形状の一部のみが画定される場合には、形状のその一部についてより詳細を表すことができる。
【0029】
方法は、触覚フィードバックの生成方法、小さいオブジェクトの浮揚方法、製造方法、または非破壊検査のための方法を含むことができる。
【0030】
本発明の第二の態様に従い、既知の相対位置及び配向を有するトランスデューサのアレイ、及びデータプロセッサを備えた、音場を生成するための装置が提供される。このデータプロセッサは、
−トランスデューサのアレイと相対的な既知の空間的関係を各々が有し、それらに割り当てられた振幅を各々が有する複数個の制御点の各々における、制御点における特定の位相を持つ割り当てられた振幅を有するモデル化された音場の生成が、他の制御点におけるモデル化された音場の結果として起こる振幅及び位相に与える影響を示す要素を含有する行列を計算し、
−セットのうちの一つを選択し、制御点における結果生じる音場の位相及び振幅が選択した制御セットの位相及び相対振幅に一致するように、トランスデューサの一つ以上に初期振幅及び位相を各々が有する音響波を出力させるようトランスデューサアレイを動作できるように、制御点におけるモデル化された音場の位相及び相対振幅のセットをその各々が表す、行列の固有ベクトルを決定するように構成される。
【0031】
それ故に、第二の態様に従う装置は、解決することによって制御点における有効な位相を検出できる固有値問題を公式化するように構成される。発明者らは、本発明の実施形態における固有値問題の使用によって、既知の装置と比較してより早くかつより予測可能な解決時間が得られ、これは立ち代わって、より大きい数の制御点をサポートできることを意味し、かつ数多くの制御点のリアルタイムの更新が可能になることを発見した。制御点における有効な位相を検出するために、例えば反復法を実行するようにデータプロセッサが構成された場合よりも、必要なデータプロセッサはより性能が低いものであってもよい。より早くかつより予測可能な解決時間は、既知の方法と比較してより大きい容積の音場を制御できることも意味する。
【0032】
装置は、行列の固有値を決定するように設計できる。この固有値は、それらのいくつかが相対的に高く、かつそれらのいくつかが相対的に低いスケーリングファクタを表し、選択したセットとして、相対的に高い対応する固有値を持つ位相及び相対振幅のセットが選択される。
【0033】
固有値は、対応する固有ベクトルが、行列によって変形されるときにどの程度スケールを変えるかを定める。換言すれば、固有値は、他の制御点において割り当てられた振幅を生成することによってもたらされる、各制御点における振幅への間接的寄与が考慮された場合に、制御点における音場の相対振幅がどの程度スケールアップするのかを表す。故に、大きな固有値の検出は、大きな量の建設的干渉を使用する相対振幅及び位相の対応するセットを示唆する。行列のすべての固有値の相対値を考慮した、相対的に高い対応する固有値を持つ相対振幅及び位相のセットを選出するように設計された装置は、故に、トランスデューサによって出力される電力がより効率的に使用されるため、相対的に低い固有値を選出し得る装置を上回る利点を有する。
【0034】
データプロセッサは、トランスデューサによって出力された初期振幅及び位相にエラーを取り込む正則化ステップを実行するように設計できる。
【0035】
正則化ステップを実行することの利点は、トランスデューサのより多くをより高い振幅にするようにそれらの平均振幅を増大することによって、アレイの出力効率を改善できることにある。例えば、一つのトランスデューサが100%で動作し、他のすべてが0.1%で動作するような状況を回避するために、トランスデューサの平均振幅を例えば80%まで上げる代わりに、正則化ステップにおいていくつかのエラーを取り込む。
【0036】
正則化ステップは、加重したTikhonov正則化であってもよい。加重したTikhonov正則化を使用することの利点は、容易に規定された行列増加を有することにある。
【0037】
装置は、0Hzと搬送周波数の半分との間の周波数に音響波を調節するように設計できる。いくつかの実施形態では、搬送周波数は、40kHzである。いくつかの実施形態では、音響波は、0.1Hz〜500Hz、場合によっては200Hz〜300Hzの周波数に調節することができる。
【0038】
0.1Hz〜500Hzの周波数への音響波の調節は、皮膚の触覚受容器がこれらの周波数において皮膚変形の変化に最も敏感であるため、触覚フィードバック用途で用いる装置の適合性を増大するという利点を生み出す。
【0039】
装置は、オブジェクト追跡を備えており、オブジェクトがモデル化された形状と交わる箇所に基づいて、制御点を定めるように構成することができる。
【0040】
ハンド追跡などのオブジェクト追跡の使用は、例えば移動中であり得るユーザの手の位置に応じて、制御点の位置をリアルタイムで更新できるという利点を提供する。
【0041】
本発明の第三の態様に従い、本発明の第一の態様の方法を実行するように構成されたデータプロセッサが提供される。
【0042】
第三の態様に従うデータプロセッサは、より早くかつより予測可能な解決時間が得られ、これは立ち代わって、より大きい数の制御点をサポートできることを意味し、かつデータプロセッサによる制御点のリアルタイムの更新が可能になる。さらに、反復法を実行するようにデータプロセッサが構成された場合よりも、本発明の第一の態様の方法を実行するのに必要なデータプロセッサはより性能が低いものであってもよい。より早くかつより予測可能な解決時間は、既知の方法と比較してより大きい容積の音場を制御できることも意味する。
【0043】
本発明の実施形態を、単なる実施例として、以下の添付図面を参照してここに記述する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】本発明の実施形態に従う方法を概略的に示すフローチャートである。
図2】本発明の実施形態に従う装置を示す略図である。
図3】本発明のさらなる実施形態に従う方法を概略的に示すフローチャートである。
図4】本発明のさらなる実施形態に従う装置を示す略図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1は、本発明の第一の実施形態に従う音場の生成方法を概略的に示すフローチャートを示す。
【0046】
方法は、複数個の制御点を定めるステップ10で開始する。制御点は、音場がそこを通り伝播できる空間内に位置付けられた点であり、そこにおいて音場の振幅または位相を制御できる。制御点は、特定の位置におけるマーカである。隣接する制御点間の距離は、ある制御点からの位相シフトに応じた音場内の音波が次の制御点にマッチできるのに十分であるべきである。いくつかの実施形態では、分離距離は、音場内の音波の波長と等しくてもよい。例えば、40kHz搬送波では分離は8.5mmである。いくつかの実施形態では、分離距離は、音場内の音波の波長の半分と等しくてもよい。いくつかの実施形態では、分離は、音場内の音波の波長よりも大きくてもよい。当業者は、他の適切な分離距離を使用できることを認識する。
【0047】
トランスデューサのアレイは、音場を生成するように配置される。本発明の実施形態では、トランスデューサアレイは、並列に配置された一つ以上の二次元配列などの任意の適切な構成における一つ以上のトランスデューサを備える。
【0048】
トランスデューサのアレイと相対的な制御点の位置が決定される。音場を制御するような制御点の使用は、L.R.Gavrilov,2008,Acoustical Physics Volume54,Issue2,pp269−278,Print ISSN 1063−7710における「The possibility of generating focal regions of complex configurations in application to the problems of stimulation of human receptor structures by focused ultrasound」と題された研究論文から公知である。
【0049】
第一の実施形態では、空中に音場が生成される。しかしながら、いくつかの実施形態では、音場は、音波が通り抜けることができる水などの別の媒体に生成することができる。
【0050】
ステップ12において、制御点に振幅が割り当てられる。割り当てられた振幅は、音場をモデリングするための基礎を形成する、制御点における音場の目標振幅を表す。制御点は、ユーザが割り当てる。しかしながら、他の実施形態では、制御点は、自動処理によって割り当てることができる。
【0051】
ステップ14において、各制御点における音場がモデル化される。第一の実施形態に従う、制御点における音場のモデリングは、実際のトランスデューサアレイの平面内の、制御点の真下に位置する仮想トランスデューサによって生成される音場をモデリングすることを含み、モデル化された音場が制御点において割り当てられた振幅を有するように、仮想トランスデューサの初期振幅及び位相がモデル化される。しかしながら、いくつかの実施形態では、音場をモデリングする代替的な方法、例えば、異なる配置の仮想トランスデューサを使用することができる。つまり、制御点の真下に位置付けられ得る、または制御点に対して異なる空間的関係を有し得る一つ以上の仮想トランスデューサを使用して、モデル化された音場を生成することができる。第一の実施形態では、ステップ14は、各制御点において別々に音場をモデリングすることを含む。
【0052】
ステップ16において、制御点の各々における、制御点における特定の位相を持つステップ12において割り当てられた振幅を有する、ステップ14においてモデル化された音場の生成が、他の制御点におけるモデル化された音場の結果として起こる振幅及び位相に与える影響を示す要素を含有する行列が計算される。第一の実施形態では、ステップ16において計算された行列は、Nが制御点の数と等しいNxN行列である。ただし、他の適切な形態の行列が明らかである。
【0053】
ステップ18において、行列の固有ベクトルが決定される。第一の実施形態では、ステップ18は、制御点におけるモデル化された音場の位相及び相対振幅のセットをその各々が表す、行列の右固有ベクトルを決定することを含む。
【0054】
ステップ20において、ステップ18において決定した固有ベクトルの一つを選択することによって、相対位相及び振幅のセットが選択される。
【0055】
ステップ22において、トランスデューサのアレイの個々のトランスデューサによって出力される初期位相及び振幅が算出される。選択したセットの位相及び相対振幅に一致する位相及び振幅を持つ結果生じる音場を、個々のトランスデューサが生成するような初期位相及び振幅が算出される。本発明の実施形態では、「一致する」という用語は、正則化ステップの一部として取り込まれ得るいくらかのエラーを考慮して、制御点における結果生じる音場の位相及び振幅が、選択したセットの位相及び相対振幅と実質的に等しいことを意味するのに使用され得る。それ故に、本発明の実施形態に従うアルゴリズムは、制御点の割り当てられた振幅にベストマッチする音場を作り出すアレイ内のトランスデューサにおける位相遅延及び振幅を計算することができる。
【0056】
ステップ24において、ステップ22において算出された初期振幅及び位相を有する音響波をトランスデューサアレイが出力するように、トランスデューサアレイの複数のトランスデューサを動作させる。
【0057】
いくつかの実施形態では、トランスデューサは、一つ以上の音響波の出力を継続するように動作できる。いくつかの実施形態では、制御点を再び定めることができ、方法は、異なるセットの制御点において繰り返すことができる。
【0058】
いくつかの実施形態では、方法は、行列の固有値を算出するステップを含むことができる。固有値は、互いに対してそれらのいくつかが相対的に高く、かつそれらのいくつかが相対的に低いスケーリングファクタを表す。いくつかの実施形態では、方法は、選択したセットとして、相対的に高い対応する固有値を持つ位相及び相対振幅のセットを選択することを含むことができる。いくつかの実施形態では、方法は、選択したセットとして、最大の対応する固有値を持つ位相及び相対振幅のセットを選択することを含むことができる。
【0059】
固有値は、対応する固有ベクトルが、行列によって変形されるときにどの程度スケールを変えるかを定める。換言すれば、固有値は、他の制御点において割り当てられた振幅を生成することによってもたらされる、各制御点における振幅への間接的寄与が考慮された場合に、制御点における音場の相対振幅がどの程度スケールアップするのかを表す。故に、大きな固有値の検出は、大きな量の建設的干渉を使用する相対振幅及び位相の対応するセットを示唆する。
【0060】
行列のすべての固有値の相対値を考慮した、相対的に高い対応する固有値を持つ相対振幅及び位相のセットの選出は、トランスデューサによって出力される電力がより効率的に使用されるため、相対的に低い固有値の選出を上回る利点を有する。
【0061】
いくつかの実施形態では、方法は、音響波の振幅及び位相が減衰及び伝播に起因して空間的にどの程度変化するかを定めるルックアップ関数を使用して、制御点の一つにおける割り当てられた振幅の生成が、他の制御点の各々における振幅及び位相に与える影響を計算することを含むことができる。
【0062】
ルックアップ関数を使用するいくつかの実施形態では、減衰及び伝播に起因する音波の位相の空間的変動を、特定のトランスデューサアレイに関して一度だけ計算すればよく、これにより音場をモデル化するのに必要な時間、並びに結果生じる音場の位相及び振幅を生成するトランスデューサの初期振幅及び位相を算出するのに必要な時間が短縮される。
【0063】
いくつかの実施形態では、方法は、トランスデューサによって出力された初期振幅及び位相にエラーを取り込む正則化ステップを含むことができる。
【0064】
正則化ステップを含むことの利点は、トランスデューサのより多くをより高い振幅にするようにそれらの平均振幅を増大することによって、アレイの出力効率を改善できることにある。例えば、一つのトランスデューサが100%で動作し、他のすべてが0.1%で動作するような状況を回避するために、トランスデューサの平均振幅を例えば80%まで上げる代わりに、正則化ステップにおいていくつかのエラーを取り込む。
【0065】
いくつかの実施形態では、正則化法は、加重したTikhonov正則化であってもよい。加重したTikhonov正則化を使用することの利点は、容易に規定された行列増加を有することにある。
【0066】
いくつかの実施形態では、トランスデューサアレイによって出力される電力は、初期振幅の最大値を出力するトランスデューサが実質的にフルパワーで動作するように、スケールを変えることができる。この方法による電力出力のスケーリングは、結果として、初期振幅の既定のセットにおけるトランスデューサアレイの電力出力を可能な限り高くし、その一方で、互いに対する初期振幅のレベルを維持するという利点を有する。
【0067】
いくつかの実施形態では、トランスデューサは、超音波トランスデューサであってもよい。
【0068】
超音波トランスデューサの使用は、音場によって生成される音響放射力をユーザが知覚するようにトランスデューサアレイを動作できる場合、または例えば、生産ライン上で製品における接着剤を乾燥させるための製造業における場合などの触覚フィードバックの分野において利点を生み出す。
【0069】
いくつかの実施形態では、音響波は、0Hzと搬送周波数の半分との間の周波数に調節することができる。いくつかの実施形態では、搬送周波数は、40kHzである。いくつかの実施形態では、音響波は、0.1Hz〜500Hz、場合によっては200Hz〜300Hzの周波数に調節することができる。
【0070】
0.1Hz〜500Hzの周波数への音響波の調節は、皮膚の触覚受容器がこれらの周波数において皮膚変形の変化に最も敏感であるため、触覚フィードバック用途で用いる方法の適合性を増大するという利点を生み出す。
【0071】
いくつかの実施形態では、制御点の位置は、音場における容積を占有する、仮想三次元形状の一部を画定するように選出することができる。いくつかの実施形態では、制御点は、形状の端または形状の端に隣接して位置してもよい。いくつかの実施形態では、制御点は、形状の容積内に位置してもよい。いくつかの実施形態では、制御点は、形状全体を画定することができる。いくつかの実施形態では、制御点は、形状の一部を画定することができる。いくつかの実施形態では、制御点は、ユーザが触れている形状の一部のみを画定する必要があり得る触覚フィードバックシステムの一部として、ユーザによって知覚される形状を画定することができる。いくつかの実施形態では、この形状は、接着剤の乾燥などの製造業での用途において音響放射力の焦点を合わせ得る、関心のある地点を有する製品の形状であってもよい。
【0072】
いくつかの実施形態では、制御点は、音場が相対的に高い振幅を有する第一のグループの制御点と、高い振幅と比較して音場が相対的に低い振幅を有する第二のグループの制御点とに分けることができる。制御点の振幅は、最大値と最小値との間であってもよい。例えば、いくつかの制御点は、振幅の半分であってもよい。いくつかのアプリケーションは、例えば、領域にわたる触覚フィードバックの強度を異ならせるために、制御点の全範囲にわたって振幅の広範な分布を有することができる。
【0073】
いくつかの実施形態では、仮想形状の端は、第一のグループの制御点によって画定することができる。第二のグループにおける制御点は、仮想形状の端に音場の振幅における勾配が生成されるように、その各々が第一のグループの制御点に隣接して配置することができる。
【0074】
仮想形状の端に音場の振幅における勾配を提供するような、音場が相対的に高い振幅を有する制御点のグループと音場が相対的に低い振幅を有する制御点のグループとの提供は、音場の振幅においてより検出可能な差異を生成するため、ユーザによってより容易に検出できる仮想形状の端をレンダリングするという、触覚フィードバック用途における利点を提供する。
【0075】
制御点の少なくともいくつかは、オブジェクトが仮想形状と交わる地点に位置付けることができる。制御点の少なくともいくつかは、交点に隣接して位置付けることができる。
【0076】
ユーザの手などのオブジェクトが仮想形状に交わるところの地点の領域内に制御点を位置付けることは、オブジェクトが触れている仮想形状上の地点においてのみ音場を制御すればよく、それらの制御点においてより高い振幅を生成できるという利点を提供する。オブジェクトが仮想形状と交わるところの地点は、オブジェクト追跡によってリアルタイムで観測することができ、制御点は、オブジェクト位置に応じて音場内の種々の地点に位置付けることができる。
【0077】
いくつかの実施形態では、制御点の数は、少なくとも10であってもよく、好ましくは少なくとも50であってもよい。
【0078】
より大きい数の制御点によって、生成される音場は、振幅を制御できるより多くの地点を有することができる。この特徴によって、例えば、より大きいまたはより複雑な三次元または二次元仮想形状を画定することができ、または仮想形状の一部のみが画定される場合には、形状のその一部についてより詳細を表すことができる。
【0079】
図2は、音場を生成するための、本発明の実施形態に従う装置26を示す。
【0080】
装置26は、既知の相対位置及び配向を有するトランスデューサのアレイ68を備える。アレイ68は、二次元平面アレイであってもよいし、規則的アレイであってもよいし、任意の適切な配置を有する任意の他の適切なトランスデューサのセットであってもよく、16×16アレイなどの任意の適切な数のトランスデューサを備えることができる。アレイは、少なくとも四個のトランスデューサを備えていることが好ましい。muRata MA40S4S超音波トランスデューサなどの任意の適切なタイプの音響トランスデューサを使用してもよい。muRata MA40S4Sトランスデューサは、比較的大量の音圧(30cmの距離において20パスカル)を生成し、比較的広角の指向性(60度)を有するという利点を提供する。
【0081】
図2に示す実施形態では、トランスデューサによって出力される音響波は、40kHzの周波数を有する。この周波数の音響波を使用することの利点は、この周波数の音響波が、空中の放射面から400mmの距離においてもそれらのエネルギの90%を維持することにある。さらなる利点は、40kHzの周波数を有する音響波を放出する圧電トランスデューサが、駐車場センサにおけるそれらの使用の故に市販されていることにある。しかしながら、任意の適切な周波数の音響波を使用してもよい。図2に示す実施形態では、音場を生成するのに使用される音響波のすべてが、同一の周波数を有する。しかしながら、いくつかの実施形態では、二つ以上の異なる周波数の音響波を使用して音場を生成してもよい。
【0082】
トランスデューサ68は、プロセッサ64及び増幅器66をその各々が含むドライバボード62によって駆動される。400MHzで作動するXMOS Ll−128プロセッサなどの任意の適切なタイプのプロセッサを使用してもよい。データプロセッサ64は、同期クロックを有し、各トランスデューサに送信される信号を生成する。この信号によって、トランスデューサが、音場を生成するのに必要な初期振幅及び位相を有する音響波を出力する。図2に示す実施形態では、データプロセッサは、各トランスデューサに方形波を出力する。増幅器66は、データプロセッサによって出力された信号を、トランスデューサを駆動するのに適したレベルに増幅する。図2に示す実施形態では、方形波信号は、増幅器66によって、5Vピークトゥピークから15Vに増幅される。
【0083】
図2に示す実施形態では、装置は、データプロセッサを含むPC74をさらに備える。このデータプロセッサは、トランスデューサのアレイと相対的な既知の空間的関係を各々が有し、それらに割り当てられた振幅を各々が有する複数個の制御点の各々における、制御点における特定の位相を持つ割り当てられた振幅を有するモデル化された音場の生成が、他の制御点におけるモデル化された音場の結果として起こる振幅及び位相に与える影響を示す要素を含有する行列を計算するように設定される。データプロセッサは、また、制御点におけるモデル化された音場の位相及び相対振幅のセットをその各々の固有ベクトルが表す、行列の固有ベクトルを決定するようにも設定される。いくつかの実施形態では、データプロセッサは、一つ以上の離散データプロセッサを備えることができる。マイクロコントローラまたはASICなどの任意の適切なタイプのデータプロセッサを、本発明の実施形態に使用してもよい。
【0084】
いくつかの実施形態では、制御点は、ユーザが定めることができる。いくつかの実施形態では、制御点は、ハンド追跡などの、装置の別のピースによって収集されたデータに応じて自動的に定めることができる。いくつかの実施形態では、制御点の振幅は、ユーザが割り当てることができる。いくつかの実施形態では、制御点の振幅は、自動処理によって割り当てることができる。
【0085】
いくつかの実施形態では、行列を計算するように設定されたデータプロセッサは、PC74の一部であってもよい。いくつかの実施形態では、行列を計算するように設定されたデータプロセッサは、位相及び相対振幅のセットのうちの一つを選択し、制御点における結果生じる音場の位相及び振幅が、選択したセットの位相及び相対振幅に一致するように、トランスデューサの一つ以上に初期振幅及び位相を各々が有する音響波を出力させるようトランスデューサアレイを動作するようにさらに設定できるスタンドアロンユニットであってもよい。
【0086】
図2に示す実施形態では、PC74によって処理されたデータは、イーサネットコントローラ76を経由してドライバボード62に送信される。イーサネットコントローラは、イーサネットインターフェース及びプロセッサを備える。イーサネットコントローラ76は、受信したデータを分類し、それをドライバボード62のプロセッサ64に転送する。しかしながら、例えば、Thunderbolt、USB、Firewireなどの他のプロトコルを使用することもできる。
【0087】
いくつかの実施形態では、データプロセッサは、行列の固有値を決定するように設計できる。この固有値は、それらのいくつかが相対的に高く、かつそれらのいくつかが相対的に低いスケーリングファクタを表し、選択したセットとして、相対的に高い対応する固有値を持つ位相及び相対振幅のセットが選択される。いくつかの実施形態では、装置は、最大の対応する固有値を持つ固有ベクトルを選択するように設計することができる。
【0088】
固有値は、対応する固有ベクトルが、行列によって変形されるときにどの程度スケールを変えるかを定める。換言すれば、固有値は、他の制御点において割り当てられた振幅を生成することによってもたらされる、各制御点における振幅への間接的寄与が考慮された場合に、制御点における音場の相対振幅がどの程度スケールアップするのかを表す。故に、大きな固有値の検出は、大きな量の建設的干渉を使用する相対振幅及び位相の対応するセットを示唆する。行列のすべての固有値の相対値を考慮した、相対的に高い対応する固有値を持つ相対振幅及び位相のセットを選出するように設計された装置は、故に、トランスデューサによって出力される電力がより効率的に使用されるため、相対的に低い固有値を選出し得る装置を上回る利点を有する。
【0089】
行列の固有ベクトル及び固有値を算出する任意の適切な方法を使用することができる。例えば、MAGMA GPU線形代数ライブラリのCGEEVルーチンを使用することができる。音場を生成する初期振幅及び位相を算出する任意の適切な方法を使用することができる。例えば、MAGMA GPU線形代数ライブラリのCGELS LAPACKルーチンを使用することができる。
【0090】
いくつかの実施形態では、装置は、トランスデューサによって出力された初期振幅及び位相にエラーを取り込む正則化ステップを実行するように設計できる。
【0091】
正則化ステップを実行することの利点は、トランスデューサのより多くをより高い振幅にするようにそれらの平均振幅を増大することによって、アレイの出力効率を改善できることにある。例えば、一つのトランスデューサが100%で動作し、他のすべてが0.1%で動作するような状況を回避するために、トランスデューサの平均振幅を例えば80%まで上げる代わりに、正則化ステップにおいていくつかのエラーを取り込む。図2に示す実施形態では、正則化ステップは、PC74によって実行される。
【0092】
いくつかの実施形態では、正則化ステップは、加重したTikhonov正則化であってもよい。加重したTikhonov正則化を使用することの利点は、容易に規定された行列増加を有することにある。
【0093】
いくつかの実施形態では、装置は、0Hzと搬送周波数の半分との間の周波数に音響波を調節するように設計できる。いくつかの実施形態では、搬送周波数は、40kHzである。いくつかの実施形態では、音響波は、0.1Hz〜500Hz、場合によっては200Hz〜300Hzの周波数に調節することができる。
【0094】
0.1Hz〜500Hzの周波数への音響波の調節は、皮膚の触覚受容器がこれらの周波数において皮膚変形の変化に最も敏感であるため、触覚フィードバック用途で用いる装置の適合性を増大するという利点を生み出す。
【0095】
装置は、オブジェクト追跡を備えており、オブジェクトがモデル化された形状と交わる箇所に基づいて、制御点を定めるように構成することができる。
【0096】
図3は、本発明の実施形態に従う、触覚フィードバック用途のための方法を概略的に示すフローチャートを示す。
【0097】
ステップ30において、音響波の振幅及び位相が減衰及び伝播に起因して空間的にどの程度変化するかを定めるルックアップ関数が算出される。図3に示す本発明の実施形態のルックアップ関数は、振幅及び位相変化が起こる二つの原因を考慮する。すなわち、第一に、トランスデューサからの距離に伴い増大する、トランスデューサによって出力される音響波の振幅の減衰、第二に、音響波が空間内を伝播するときに生じる位相の変化を考慮する。
【0098】
ステップ32において、音場によって占有される容積内において三次元仮想形状が定められる。三次元形状は、ユーザが定めてもよいし、自動処理によって定められてもよい。
【0099】
ステップ34において、音場によって占有される容積内の手の位置が追跡される。ハンドトラッキングは、100cmの範囲及び140度の視角を有する、Leap Motion Incによって生産されたLeap Motion(RTM) Controllerなどの公知のハンド追跡によって実行することができる。図3に示す実施形態では、追跡データは、60fpsで記録される。ただし、いくつかの実施形態では、追跡データは、他の速度で記録することができる。ステップ34は、手が仮想形状に交わっている任意の地点の位置を決定することを追加的に含む。
【0100】
ステップ36において、制御点が定められる。図3に示す実施形態では、制御点の位置は、三次元仮想形状の少なくとも一部分を画定するように選出される。例えば、制御点は、仮想三次元形状の端に位置してもよいし、その上にまたはそこに隣接して位置してもよい。手が交わる仮想三次元形状の部分に制御点が定められる。
【0101】
いくつかの実施形態では、ステップ32を除外し、制御点を、ユーザの手の寸法に応じて定めることができる。ステップ32を除外する実施形態において、例えば、ユーザの手に点字を伝えるなどの用途では、制御点を、ユーザの手の指先または手のひらに位置付けることができる。
【0102】
図3に示す実施形態では、制御点は、二つのグループに分けられる。第一のグループの制御点は、仮想三次元形状の端に位置付けられ、第二のグループの制御点は、例えば、手の周囲に境界ボックスを作り出し、その後、すぐ近くの制御点を含むようにそれをわずかに拡大することによって、三次元形状によって占有される容積の外側において、第一のグループの制御点に隣接して位置付けられる。図3に示す実施形態では、三次元形状は、形状の端に位置付けられた制御点によって画定される。しかしながら、いくつかの実施形態では、三次元形状は、追加的または代替的に、形状の容積内に位置付けられた制御点を有することによって画定されてもよい。
【0103】
ステップ38において、制御点に振幅が割り当てられる。三次元仮想形状の端に勾配を作り出すために、第一のグループの制御点には相対的に高い振幅が割り当てられ、第二のグループの制御点には相対的に低い振幅が割り当てられる。
【0104】
ステップ40において、各制御点における音場がモデル化される。制御点における音場のモデリングは、実際のトランスデューサアレイの平面内の、制御点の真下に位置する仮想トランスデューサによって生成される音場をモデリングすることを含み、モデル化された音場が制御点において割り当てられた振幅を有するように、仮想トランスデューサの初期振幅及び位相がモデル化される。この算出は、ステップ30において算出されたルックアップ関数を使用して行われる。ステップ40は、このように、各制御点において別々に音場をモデリングすることを含む。
【0105】
ステップ42において、制御点の各々における、制御点における特定の位相を持つステップ38において割り当てられた振幅を有する、ステップ40においてモデル化された音場の生成が、他の制御点におけるモデル化された音場の結果として起こる振幅及び位相に与える影響を示す要素を含有する行列が計算される。図3に示す実施形態では、ステップ42において計算された行列は、Nが制御点の数と等しいNxN行列である。ただし、他の適切な形態の行列が明らかである。
【0106】
ステップ44において、行列の固有ベクトルが決定される。図3に示す実施形態では、ステップ44は、制御点におけるモデル化された音場の位相及び相対振幅のセットをその各々の固有ベクトルが表す、行列の右固有ベクトルを決定することを含む。
【0107】
図3に示す実施形態は、行列の固有値を決定することを含むステップ46を追加的に含む。いくつかの実施形態では、行列の固有ベクトル及び固有値の決定は、方法において単一のステップを含むことができる。
【0108】
ステップ48において、相対位相及び振幅のセットが選択される。図3に示す実施形態では、行列のすべての固有値の相対値を考慮した、相対的に高い対応する固有値を持つ固有ベクトルを選択することによって、相対位相及び振幅のセットが選択される。好ましくは、最大の対応する固有値を持つ固有ベクトルが選択される。
【0109】
ステップ50において、制御点における結果生じる音場の位相及び振幅が、選択したセットの位相及び相対振幅に一致するような、トランスデューサのアレイの個々のトランスデューサによって出力される初期位相及び振幅が算出される。図3に示す実施形態では、ステップ50の算出は、ステップ30において以前に算出されたルックアップテーブルを使用して実行される。図3に示す実施形態では、トランスデューサのアレイは、単一面に位置付けられた64個のトランスデューサを備える。しかしながら、代替的な実施形態では、トランスデューサアレイを形成するのに異なる数及び配置のトランスデューサを使用することができる。
【0110】
ステップ52において、トランスデューサによって出力される音響波がトランスデューサの電力制限を確実に超えないようにするために、正則化ステップが実行される。正則化ステップは、トランスデューサがアレイの電力制限を超えず、かつ方法が正則化ステップを実行しなかった場合よりもアレイに使用できる全電力が効率的に使用されるような、トランスデューサによって出力された初期振幅及び位相にエラーを取り込む加重したTikhonov正則化である。
【0111】
ステップ52において、また、アレイの電力出力を正規化するためのゲインも取り込まれ、このゲインを取り込むことによってトランスデューサを最大の算出された初期振幅において実質的にフルパワーで動作させ、かつ振幅の相対値を変化させないように、アレイの他のトランスデューサによって出力される電力を増す。相対振幅の値は、正則化ステップ期間に取り込まれるエラーの故に、ステップ52期間にわずかに変化させることができる。故に、ステップ54において使用される初期振幅及び位相は、ステップ50における初期振幅及び位相の調整された値であり、そしてステップ52期間において与えられる初期振幅及び位相の値に対する任意の調整が考慮されたものである。
【0112】
ステップ54において、ステップ52において算出された調整された初期振幅及び位相を有する一つ以上の音響波をトランスデューサアレイが出力するように、トランスデューサアレイの複数のトランスデューサを動作させる。図3に示す実施形態では、トランスデューサアレイは、超音波トランスデューサアレイであり、周波数200Hz〜300Hzに調節された音響波を出力する。
【0113】
図4は、図3を参照して記述した方法を実行するように配置された装置60を図示する。図2に示す装置の部品と同等であるこの装置の部品は、同様の参照数字で番号付けされる。
【0114】
装置60は、トランスデューサのアレイ68、データプロセッサ64及び増幅器66を備えたドライバボード62、PC75、並びにイーサネットコントローラ76を備える。
【0115】
装置は、ハンド追跡70をさらに備える。ハンド追跡70は、例えば、Leap Motion(RTM) Controllerであってもよい。ハンド追跡70は、音場におけるユーザの手72の位置を検出するように設定される。
【0116】
図4に示す実施形態では、PC74は、ハンド追跡によって測定されたデータを受信し、ハンド追跡データを処理し、そして処理データを、イーサネットコントローラ76を経由してドライバボード62に送信するように設定される。
【0117】
音場を生成できる空間内に、三次元仮想形状78が画定される。ハンド追跡70は、手72が仮想形状78と触れている時を検出するように設定される。次に、図3に示す実施形態の方法に従い、トランスデューサアレイ68が、手72と仮想形状78との間の交点80、82に相対的に高い振幅を有する音場を生成するように動作する。
【0118】
図4に示す実施形態では、トランスデューサアレイ68は、超音波トランスデューサアレイであり、個々のトランスデューサは、周波数200Hz〜300Hzに調節された超音波を出力するように構成される。
【0119】
ハンド追跡などのオブジェクト追跡の使用は、例えば移動中であり得るユーザの手の位置に応じて、制御点の位置をリアルタイムで更新できるという利点を提供する。
【0120】
本発明の実施形態は、既知の方法と比較してより早くかつより予測可能な制御点解決時間が得られ、これは立ち代わって、より大きい数の制御点をサポートできることを意味し、かつ制御点のリアルタイムの更新が可能になる。より早くかつより予測可能な解決時間は、既知の方法と比較してより大きい容積の音場を制御できることも意味する。
【0121】
図3を参照して記述した実施例から明らかとなるように、本発明の実施形態を使用して、触覚フィードバックを提供することができる。本発明の実施形態において「触覚フィードバック」という用語の使用は、フィードバックとして触感を与えることを意味する。触覚フィードバックは、多くの用途を有する。触覚フィードバックの可能性がある用途の一つの実施例は、車内の制御を動作させるためのコンピュータ、モバイルデバイスまたはインターフェースなどの、ジェスチャによって制御できるシステム内のフィードバックを提供することである。触覚フィードバックの別の用途には、ゲームまたは手術の訓練に使用できる医療シミュレーションなどのバーチャルリアリティシミュレーションがある。触覚フィードバックの別の用途には、触覚フィードバックを活用した空中の三次元モデリングにユーザが取り組める可能性がある三次元CADがある。触覚フィードバックは、ユーザの手に伝えられる点字の生成などの、視覚障害者に合図を与えるためにも使用することができる。触覚フィードバックの別の用途には、タッチレスボタンが押されたことを知らせるためのフィードバックの提供がある。タッチレスボタンは、セキュリティ及び衛生的な理由のために、ATMなどの公共のインターフェースなどに用途を有し得る。触覚フィードバックのさらなる可能性がある用途には、顕微鏡スケールにおいて研究されるオブジェクトをユーザが知覚できるように、顕微鏡オブジェクト及び顕微鏡面を示すために触覚フィードバックを使用できる研究がある。
【0122】
本発明の実施形態は、オブジェクトを浮揚させるために使用することができる。例えば、汚染を回避するために、薬剤のサンプルに触れることなく、それらを実験できることが有利である場合がある。トランスデューサが変化することなく連続的に動作する場合には、結果生じる音響波は、概して一定の形状を有する。それ故に、小さなオブジェクトは、高振幅制御点の上方において水平に取り囲まれかつ垂直に位置する低振幅制御点によって画定されたポケット内に保持することができる。複数個のそのようなポケットを画定することができる。制御点は、三次元空間内において小さなオブジェクトを独立して移動させるために、動的に再び割り当てることができる。浮揚のために音場を使用する別の用途には、すべての角度からデータを視認できるような大きなデータセットを示すために、数多くの小さなオブジェクトを三次元空間内で浮揚させることができるデータ可視化がある。小さいオブジェクトの浮揚に関する公知のシステムを上回る本発明の利点は、反射板表面を必要としないということにある。いくつかの実施形態では、オブジェクトの厚さは、音場内の音波の一つの波長よりも短くてもよく、オブジェクトの幅は、一つの波長よりも大きくてもよい。
【0123】
本発明の実施形態は、製造業において使用することができる。例えば、アルゴリズムを使用して、表面を迅速に乾燥させるための、生産ラインの特定のエリアにおいて目標となり得る目標気流を作り出し、製造時間を迅速化することができる。
【0124】
本発明の実施形態は、非破壊検査に応用することができる。
【0125】
本発明を一つ以上の好ましい実施形態を参照して前述したが、添付の特許請求の範囲に規定されるような本発明の範囲から逸脱することなく、さまざまな変更または修正を行うことができることが認識される。「備えている」という言葉は、「含んでいる」または「からなる」を意味し得、故に、あらゆる請求項または総じて明細書に列挙されたもの以外の要素またはステップの存在を排除しない。ある手段が互いに異なる従属クレームに説明されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせを、利点を有するように使用できないことを示唆するものではない。
図1
図2
図3
図4