(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
採血された血液を、該血液が凝固する前に4〜37℃の条件下で2000〜7000gの遠心加速度で3〜10分遠心分離することにより、液性成分からなる上層と、その他の成分からなる下層とに分離する第一の分離工程と、
前記第一の分離工程において、前記上層と前記下層とに分離された前記血液から、前記上層の30〜90%を除去する除去工程と、
前記除去工程において、前記上層の30〜90%が除去された前記血液に、血液凝固促進材を添加することによって、前記下層に含まれる血小板を活性化し、前記血液を凝固させるとともに、前記血小板から増殖因子を放出させる活性化工程と、
前記活性化工程において放出された前記増殖因子を含む前記血液を、遠心分離することにより、前記増殖因子を含む血清と、前記血液の成分が凝固した凝固成分とに分離する第二の分離工程と、
前記第二の分離工程によって分離された前記血清を回収する回収工程と、を有する血清の調製方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について説明する。
まず、本発明に係る血清の調製方法の好ましい一実施態様について、
図1に沿って説明する。
【0014】
本実施態様の血清の調製方法は、第一の分離工程(S1)と、除去工程(S2)と、活性化工程(S3)と、第二の分離工程(S4)と、回収工程(S5)と、を備える。
【0015】
本実施態様に係る血清の調製方法では、採血された血液が血清の原料として用いられる。
本実施態様における「血液」とは、血球成分(赤血球、白血球、血小板)と液性成分である血漿(血清)からなる全血をいう。また、採取した血液は放置することによって流動性が低下し、赤い凝固塊(血餅)と淡黄色の液体とに分離される。この淡黄色の液体を「血清」という。
【0016】
本実施態様に係る血清の調製方法で用いられる容器(遠沈管)の大きさや形は、遠心分離器に用いることができるものであれば特に限定されない。
本実施態様に係る血清の調製方法で用いられる容器の材質としては、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ABS樹脂等が挙げられる。本実施態様に係る血清の調製方法では、耐遠心性が強いことから、ポリプロピレン(PP)製の容器を用いることが好ましい。
【0017】
本実施態様においては、採血された血液を、該血液が凝固する前に後述する第一の分離工程に供する。つまり、本実施態様において、血清の原料として用いられる血液は抗凝固剤を含有しない。血液が抗凝固剤を含有しないことによって、抗凝固剤や、抗凝固剤を中和する物質(血液凝固促進材)を含有しない血清を調製することが可能となる。
【0018】
前記第一の分離工程(S1)では、採血された血液(
図1(a))を、該血液が凝固する前に遠心分離することにより、液性成分からなる上層2と、その他の成分からなる下層3とに分離する(
図1(b))。
【0019】
上層2は、血漿等を含有する。
下層3は、赤血球層31と、バフィーコート層32とからなる(
図1(b))。
赤血球層31は、主に赤血球を含有し、バフィーコート層32は、主に白血球及び血小板を含有する。
【0020】
第一の分離工程(S1)における遠心分離の遠心加速度は2000〜7000gであることが好ましい。第一の分離工程(S1)において、2000gよりも小さい遠心加速度で遠心分離を行うと、血液の分離に時間がかかってしまい、血液1が上層2と下層3とに分離する前に血液1が凝固してしまう場合があり、7000gよりも大きな遠心加速度で遠心分離を行うと、血小板が遠沈管の壁面に付着してしまい、後述する活性化工程(S3)において血小板から放出される増殖因子が減少してしまう場合がある。
【0021】
第一の分離工程(S1)における遠心分離は、3〜10分行うことが好ましい。第一の分離工程(S1)における遠心分離を、3分よりも短い時間行うと血液1が上層2と下層3に分離し難くなる傾向にあり、10分よりも長い時間行うと、血液1が上層2と下層3とに分離する前に血液1が凝固してしまう場合がある。
【0022】
第一の分離工程(S1)における遠心分離は、4〜37℃の条件下で行うことが好ましい。第一の分離工程(S1)における遠心分離を、4℃未満の条件下で行うと、低温刺激により血小板の活性化が進行する、あるいは溶血する傾向にあり、37℃よりも高い温度のもとで行うと、増殖因子の生理活性が低下する、あるいは溶血する傾向にある。
第一の分離工程(S1)における遠心分離の最適な条件は、5000g×5分、25℃である。
【0023】
前記除去工程(S2)では、第一の分離工程(S1)において、上層2と下層3とに分離された血液1(
図1(b))から、上層2の一部を除去する。
【0024】
除去工程(S2)では、上層2の全部ではなく一部を除去する。後述する、血清6の含有する増殖因子はバフィーコート層32に含まれる血小板から放出される。従って、血清6の含有する増殖因子を減少させないために、除去工程(S2)では、バフィーコート層32の一部を廃棄することのないように、また、バフィーコート層32をできる限り乱さないように上層2の一部を除去する。
【0025】
除去工程(S2)において、除去する上層2の量を調整することによって最終的に得られる血清6の濃度を調整することもできる。すなわち、除去する上層2の量を多くすると血清6の増殖因子の濃度は高くなり、除去する上層2の量を少なくすると血清6の増殖因子の濃度は低くなる。また、上層2の一部が除去された血液1に、必要に応じて少量の生理食塩水を加えてもよい。
【0026】
除去工程(S2)において除去する上層2の量は、上層2(血漿)全体の量の30〜90%が好ましく、50〜80%がより好ましい。除去する上層2の量が、上層2(血漿)全体の量の20%未満であると、高濃度の増殖因子を含有する血清を得ることが困難になり、上層2(血漿)全体の量の90%よりも多いと、最終的に得られる血清の容量が少なくなってしまう。
除去工程(S2)における上層2の除去手段としては、ピペットによる吸引等を挙げることができるが、これに限定されない。
【0027】
除去工程(S2)において上層2の一部が除去された血液1は、懸濁をした上で後述する活性化工程(S3)に供することが好ましい。懸濁することによって、後述する活性化工程(S3)における血小板の活性化が円滑に進行する。
【0028】
前記活性化工程(S3)では、除去工程(S2)において、上層2の一部が除去された血液1(
図1(c))に、血液凝固促進材4を添加することによって、血液1を凝固させるとともに、下層3に含まれる血小板を活性化し、前記血小板から増殖因子を放出させる。
【0029】
活性化工程(S3)においては、血小板が活性化され、増殖因子が放出される。また、血小板が活性化されることにより、血液成分が凝固して血餅5が生成される。
【0030】
血小板にはα顆粒と呼ばれる顆粒状の構造物が含まれている。血小板は、α顆粒中に血小板由来の成長因子(PDGF)、トランスフォーミング成長因子−β(TGF−β)、上皮成長因子(EGF)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)等の増殖因子を含有する。活性化工程(S3)においては、血小板を活性化することにより、これら増殖因子を放出させる。
【0031】
活性化工程(S3)において用いられる血液凝固促進材4は、ガラスビーズ、シリカ、珪藻土、カオリン等の二酸化ケイ素を含む物質や、塩化カルシウム、トロンビン、コラーゲン等が挙げられる。血液凝固促進材4としては、血漿への溶解性が低く後述する第二の分離工程(S5)において分離することが可能な二酸化ケイ素を含む物質を用いることが好ましい。血液凝固促進材4としては、ガラスビーズを用いることがより好ましく、直径1〜4mmのガラスビーズを用いることが更に好ましい。
【0032】
活性化工程(S3)では、血小板の活性化を10分〜24時間行うことが好ましく、5〜15分行うことがより好ましい。血小板の活性化の時間が10分に満たない場合には、血小板から十分に増殖因子が放出されない傾向にあり、血小板の活性化の時間が24時間を超えても、血小板から放出される増殖因子の量は大幅には増加しない。
【0033】
活性化工程(S3)における、血小板の活性化温度は4〜37℃であることが好ましく、20〜30℃であることがより好ましい。血小板の活性化温度が4℃未満あるいは37℃を超える場合、血小板の活性化が円滑に進行し難い傾向にある。
活性化工程(S3)では、容器を振とうすることによって血小板の活性化を促進してもよい。
【0034】
前記第二の分離工程(S4)では、活性化工程(S3)において放出された前記増殖因子を含む血液1(
図1(d))を、遠心分離することにより、前記増殖因子を含む血清6と、血液1の成分が凝固した凝固成分(血餅5)とに分離する(
図1(e))。
【0035】
第二の分離工程(S4)における遠心分離の遠心加速度は2000〜7000gであることが好ましく、3000〜5000gであることがより好ましい。第二の分離工程(S4)において、2000gよりも小さい遠心加速度で遠心分離を行うと、血餅5が十分に分離し難くなる傾向にあり、7000gよりも大きな遠心加速度で遠心分離を行っても、分離の効率はそれほど向上しない。
【0036】
第二の分離工程(S4)における遠心分離は、4〜37℃の条件下で行うことが好ましい。第二の分離工程(S4)における遠心分離を、4℃未満の条件下で行うと、
溶血する傾向にあり、37℃よりも高い温度のもとで行うと、増殖因子の生理活性が低下する、あるいは溶血する傾向にある。
【0037】
前記回収工程(S5)では、前記第二の分離工程(S4)によって分離された血清6(
図1(e))を回収する。
回収工程(S5)における血清6の回収手段としては、ピペットによる吸引等を挙げることができるが、これに限定されない。
【0038】
以上、説明したような血清の調製方法によって調製される血清は、高濃度の増殖因子を含有する。
【0039】
本実施態様の血清の含有する増殖因子のうち、PDGF−ABの濃度は、13ng/mL以上であり、29ng/mL以上であることが好ましい。PDGF−ABの濃度を13ng/mL以上とした血清は、医療分野において好ましく用いることができる。
【0040】
本実施態様の血清の含有する増殖因子のうち、PDGF−BBの濃度は、5ng/mL以上であることが好ましく、7ng/mL以上であることがより好ましい。PDGF−BBの濃度を5ng/mL以上とした血清は、医療分野において好ましく用いることができる。
【0041】
本実施態様の血清の含有する増殖因子のうち、TGF−β1の濃度は、63ng/mL以上であることが好ましく、80ng/mL以上であることがより好ましい。TGF−β1の濃度を63ng/mL以上とした血清は、医療分野において好ましく用いることができる。
【0042】
PDGF−AB、PDGF−BB、TGF−β1は、市販の定量キットを用いた酵素結合免疫吸着法によって求めることができる。市販の定量キットとしては、R&D system社製の「Quantikine human ELISA」が挙げられる。
【0043】
このように、本実施形態の血清は、高濃度の増殖因子を含有する。上に列挙した、本実施形態の血清の含有する増殖因子の濃度は、全血をそのまま活性化して凝固させた後に遠心分離をすることによって得られる通常の血清の含有する増殖因子の濃度と比較して、概ね3倍以上の値となる。
【0044】
ところで、本実施態様の血清の含有するタンパク質の濃度は、全血をそのまま活性化して凝固させた後に遠心分離をすることによって得られる通常の血清の含有するタンパク質の濃度とほぼ同等である。つまり、本実施態様の血清は増殖因子を高濃度で含有するが、タンパク質についてはほとんど濃縮されておらず、通常の生体におけるタンパク質濃度に近い。
なお、全血をそのまま活性化して凝固させた後に遠心分離をすることによって得られる通常の血清を濃縮することによっても濃縮血清を得ることは可能である。しかし、通常の血清を濃縮した濃縮血清は、タンパク質についても濃縮されてしまう。タンパク質濃度の高い血清は、粘度が高いことから取り扱いが困難である上に、細胞や組織との浸透圧の差が大きく、そのまま細胞培養等に用いると細胞や組織を破壊してしまうおそれもある。
一方、本発明に係る血清は、増殖因子を高濃度で含有する上にタンパク質濃度は通常の生体におけるタンパク質濃度とそれほど差はないので、細胞培養だけでなく、創傷治癒、骨再生、美容等の様々な医療分野においても利用することが可能である上に、粘性が低く、扱いやすい。
【0045】
また、本実施態様の血清は、上記のように抗凝固剤を含有しない。従って、本実施態様の血清は、高濃度の増殖因子を含有する上に、血液に由来する成分以外の成分の含有量が少ないことから、医療分野において、より好ましく利用することができる。
【実施例】
【0046】
次に、本発明を実施例に基づいて更に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、特に断りがない限り「%」は、全て質量基準である。
【0047】
[実施例1]
<採血>
3名の健常者(表1では、それぞれドナーI,J,Kと表記)から採血し、それぞれ10mlの全血を、容量が15mLの遠沈管(材質:ポリプロピレン、株式会社サンプラテック製)に入れた。
【0048】
<1回目の遠心分離>
採血した全血をただちに遠心分離した(条件:5000g×5分、25℃)。遠心分離によって、血液は上層(血漿)と下層(赤血球層及びバフィーコート層)に分離された。
<上層の除去>
上層と下層に分離した血液の上層(血漿)をピペットで少しずつ採取し、上層(血漿)の80%を除去することによって約1mLの上層(血漿)を残した。残りの血液成分(赤血球、バフィーコート及び約1mLの血漿)は、よく懸濁した。
【0049】
<血小板の活性化>
上記の残りの血液成分に、血液凝固促進材としてガラスビーズ(粒径4mm、ブライト標識工業株式会社製、表1では「ガラスビーズ(大)」と表記)を2個加えて、1時間室温で振とうすることにより、血液成分を凝固させた。
<2回目の遠心分離及び濃縮血清の回収>
続いて、血小板の活性化後の血液成分を遠心分離した(条件:5000g×10分、25℃)。遠心分離によって、血液成分は上層(濃縮血清)と下層(血餅)に分離される。
遠心分離後に濃縮血清をピペットにより回収した。
【0050】
[実施例2]
粒径4mmのガラスビーズの代わりに、血液凝固促進材として、粒径1mmのガラスビーズ(ブライト標識工業株式会社製、表1では「ガラスビーズ(小)」と表記)を0.3g用いたこと以外は、実施例1の手順と同様の手順で血清を調製した。
【0051】
[実施例3]
塩化カルシウム(和光純薬工業株式会社)を超純水に溶解し、2%塩化カルシウム水溶液を調製した。
粒径4mmのガラスビーズの代わりに、血液凝固促進材として、2%塩化カルシウム水溶液を0.148mL用い、血液成分と血液凝固促進材とをよく混和した後、1時間室温で静置することにより、血液成分を凝固させたこと以外は、実施例1の手順と同様の手順で血清を調製した。
【0052】
[実施例4]
ドナーI,J,K以外のドナーから採血し、10mlの全血を、ガラスビーズ(粒径4mm、ブライト標識工業株式会社製)が2個入った、容量15mLの遠沈管(材質:ポリプロピレン、株式会社サンプラテック製)に入れた。続いて、全血を1時間振とうし、遠心分離(条件:2330g×10分、25℃)することにより得られた上層(血清)をトロンビン溶液とした。
粒径4mmのガラスビーズの代わりに、血液凝固促進材として、上記トロンビン溶液を0.1mL用い、血液成分と血液凝固促進材とをよく混和した後、1時間室温で静置することにより、血液成分を凝固させたこと以外は、実施例1の手順と同様の手順で血清を調製した。
【0053】
[比較例]
<採血>
3名の健常者(上記実施例1のドナーI,J,Kと同じ)から採血し、それぞれ10mlの全血を、ガラスビーズ(粒径4mm、ブライト標識工業株式会社製、表1では「ガラスビーズ(大)」と表記)が2個入った、容量15mLの遠沈管(材質:ポリプロピレン、株式会社サンプラテック製)に入れた。
【0054】
<血小板の活性化>
上記の全血を1時間室温で振とうすることにより、血液成分を凝固させた。
<遠心分離及び血清の回収>
続いて、血小板の活性化後の全血を遠心分離した(条件:2330g×10分、25℃)。遠心分離によって、血液成分は上層(血清)と下層(血餅)に分離される。
遠心分離後に血清をピペットにより回収した。
【0055】
[参考例]
<抗凝固剤の調製>
クエン酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)を超純水に溶解し、3.2%クエン酸ナトリウム水溶液を調製した。
<採血>
3名の健常者(上記実施例1のドナーI,J,Kと同じ)から採血し、それぞれ9mlの全血を、容量が15mLの遠沈管(材質:ポリプロピレン、株式会社サンプラテック製)に入れた。続いて、全血の入った遠沈管に、調製した3.2%クエン酸ナトリウム水溶液を1mL加えて混合した。
【0056】
<1回目の遠心分離>
続いて、抗凝固剤入りの全血を遠心分離した(条件:900g×5分、25℃)。遠心分離によって、血液は上層(血漿)と下層(赤血球層及びバフィーコート層)に分離される。
<血漿とバフィーコートの回収>
上層(血漿)とバフィーコート層をピペットにより回収して、別の遠沈管(材質:ポリプロピレン、容量:15mL、株式会社サンプラテック製)に移した
<2回目の遠心分離及び上層の除去>
上層(血漿)とバフィーコート層を再度遠心分離して、上層(血漿)と下層(バフィーコート層)に分離した。続いて、上層(血漿)をピペットで少しずつ採取し、上層(血漿)約1mL及びバフィーコート層を残した。残った血漿及びバフィーコートはよく懸濁することで活性化前の(血小板を含有する)PRPとした。
【0057】
<血小板の活性化>
塩化カルシウム(和光純薬工業株式会社)を超純水に溶解し、2%塩化カルシウム水溶液を調製した。
上記活性化前の(血小板を含有する)PRPに、0.148mLの2%塩化カルシウム水溶液を添加し、よく混和した後、1時間室温で静置した。
<3回目の遠心分離及びPRPの回収>
続いて、活性化後の(血小板を含有する)PRPを遠心分離した(条件:5000g×10分、25℃)。遠心分離によって、血液成分は上層(PRP)と下層に分離される。
遠心分離後に上層(PRP)をピペットにより回収した。
【0058】
[評価方法]
<血小板の利用率>
実施例1〜4(濃縮血清の調製)での血小板の利用率については、次の式(1)により求めた。
【0059】
【数1】
【0060】
比較例(血清の調製)での血小板の利用率は100%とした。
参考例(PRPの調製)での血小板の利用率については、次の式(2)により求めた。
【0061】
【数2】
【0062】
上記式(1)及び上記式(2)において用いられる血小板数は、多項目自動血球分析装置(XT−1800i、シメックス社製)を用いて測定した値である。求められた血小板の利用率は、表1に示す。
【0063】
<増殖因子の濃度>
実施例、比較例及び参考例でそれぞれ調製した濃縮血清、血清及びPRPの含有する濃縮因子の濃度(PDGF−AB、PDGF−BB、TGF−β1)は、これらの濃度を測定するキット(Quantikine human ELISA、R&D system社製)を用いて測定した。測定された増殖因子の濃度は、表1に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
表1に示すように、実施例1〜4の(濃縮)血清の調製方法では、全血中の98%以上の血小板を利用できた。一方、参考例に示したPRPの調製方法では、血小板の利用率がドナーごとにばらつきがあり、平均でも30%を下回った。このように、実施例1〜4の(濃縮)血清の調製方法では、全血に含まれる血小板を有効利用することができる。
【0066】
また、表1に示すように、実施例の(濃縮)血清の調製方法で調製された血清は、比較例で調製された通常の血清と比較して、平均でPDGF−ABは約3.9倍、PDGF−BBは約7.5倍、TGF−β1は約4.2倍濃縮され、参考例で調製されたPRPと同等か、それ以上の増殖因子を含有していた。なお、表1には示していないが、実施例の血清の調製方法において除去された血漿には、ほとんど増殖因子が含まれていなかった。このことからも、実施例の血清の調製方法における増殖因子の損失は非常に少ないと言える。
【0067】
上記のように、実施例1〜4において調製された血清は高濃度の増殖因子を含有する。このような高濃度の増殖因子を含有する血清は、細胞培養だけでなく、創傷治癒、骨再生、美容等の様々な医療分野において利用することが可能である。
【0068】
更に、実施例1〜4において調製された血清は、抗凝固剤を含有しない。また、実施例1及び2では、血液凝固促進材としてガラスビーズを用いているので、2回目の遠心分離によって血液凝固促進材を血清から分離することができる。従って、実施例1及び2において調製された血清は、血液に由来する成分以外の成分を含有しないので、医療分野においてより好ましく利用することが可能である。