【文献】
HORIKE, Satoshi, et al.,Journal of the American Chemical Society,2012年,134(24),pp. 9852-9855
【文献】
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【文献】
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【文献】
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【文献】
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2価の遷移金属イオンに、第一配位子2座配位のカルボキシル基1個、1座配位のカルボキシル基1個が配位し、さらに第二配位子が配位して、梯子状のネットワークが形成され、さらにこの梯子状平面ネットワークが、第二配位子により架橋されることで、三次元構造のネットワークが形成されており、かつ梯子状平面ネットワークが相互貫入している構造である、請求項1に記載の多孔性高分子金属錯体。
Yが、ピラジン、4,4’−ビピリジン、3,4’−ビピリジン、3,3’−ビピリジン、3,6−ジ(4−ピリジル)−1,2,4,5−テトラジン、(E)−4,4’−(ジアゼン−1,2−ジイル)ジピリジン、N-(ピリジン-4-イル)イソニコチンアミド、4,4’−(1,4−フェニレン)ジピリジン、4,4’−(1,2−エタンジイル)ビスピリジン、(E)−4,4’−(エテン−1,2−ジイル)ジピリジン、4,4’−(ビフェニル−4,4’-ジイルビス(エチン−2,1−ジイル)ジピリジン、4,4’−(エチン−1,2−ジイル)ジピリジンから選ばれる、請求項1又は2に記載の多孔性高分子金属錯体。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000-109493号公報
【特許文献2】特許第4427236号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】北川進、集積型金属錯体、講談社サイエンティフィク、2001年214-218頁
【非特許文献2】Robsonら、Angew. Chem. Int. Ed. 1998, 37, 1460 ± 1494
【非特許文献3】Robsonら、Angew. Chem. Int. Ed. 1998, 37, 1460
【非特許文献4】北川ら、Angew. Chem. Int. Ed. 2003, 42, No. 4、428
【非特許文献5】Carlucciら、Chem. Eur. J. 2002, 8, No.7,1519
【非特許文献6】Cohenら、Chem. Commun., 2005, 5506
【非特許文献7】北川ら、Angew. Chem. Int. Ed. 2004, 43, 192
【非特許文献8】Linら、Angew. Chem. Int. Ed. 2005, 44, 72
【非特許文献9】北川ら、Angw. Chem. Int. Ed. 2003, 42, No. 4、428
【非特許文献10】Loye ら、Inorganic Chemistry, Vol. 44, No. 14, 2005 5047
【非特許文献11】Omaryら、J. Am. Chem. Soc., 2007,129, 15454
【非特許文献12】Omaryら、Angew. Chem. Int. Ed.2009,48,2500
【非特許文献13】Liら、J. Am. Chem. Soc., 2004, 126, 1308
【非特許文献14】Fereyら、J. Am. Chem. Soc., 2010, 132, 1127-1136
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、ふっ素原子を含有する配位子で合成され、梯子状ネットワーク構造が相互貫入した構造を有している新規な多孔性高分子金属錯体及びこれを用いた優れた特性を有するガス吸着材を提供することである。また本発明は、前記特性を有するガス吸着材を内部に収容してなるガス貯蔵装置およびガス分離装置を併せて提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、前述のような問題点を解決すべく、鋭意研究を積み重ねた結果、第一配位子として、炭素数が1〜10のパーフルオロアルキル基を5位に有するイソフタル酸誘導体を使用し、また第二配位子として、分子の両末端に窒素配位点を有する第二配位子を用いて、遷移金属イオンと反応させる際に、一定時間低温で保持した後に加熱して反応させる事で、ふっ素原子を含む相互貫入型多孔性高分子金属錯体(Interpenetrated networkPCP)が得られ、さらに本PCPは特有のガス吸着能を有する事を見いだし、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、金属イオンに、イソフタル酸誘導体(第一配位子)の2座配位のカルボキシル基1個、1座配位のカルボキシル基1個に配位さし、さらに第二配位子が配位して、梯子状のネットワークが形成され、さらにこの梯子状平面ネットワークが、第二配位子により架橋されることで、三次元構造のネットワークが形成されている多孔性高分子金属錯体であって、ふっ素原子を含有し、相互貫入型のネットワーク構造を有している多孔性高分子金属錯体にかんする発明である。また、本発明多孔性高分子金属錯体の製造方法と、ガス吸蔵材料としての利用及び本ガス吸着材を内部に収容してなるガス貯蔵装置およびガス分離装置に関する発明である。
【0014】
すなわち本発明は下記にある。
(1)下記式(1)
[MXY]
n (1)
(式中、Mは
亜鉛イオン、銅イオン、コバルトイオン、ニッケルイオンから選ばれる2価の遷移金属イオンを示す。Xは第一配位子を示し、
下記式:
【化1】
(式中、Rfは炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基である。)
で表される炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基を5位に有するイソフタル酸誘導体である。Yは第二配位子を示し、ピラジン、ビピリジンまたは4−ピリジル基を分子両末端に有
し、下記式:
【化2】
(この式において、RはC1〜C4アルキレン基、C2〜C4アルケニレン基、C2〜C4アルキニレン基、アミド結合、エーテル結合、エステル結合、ジアゾ結合、
【化3】
を示し、Xは−S−、−O−または−NH−であり、Yはアリーレン基である。)で表されるビピリジン類縁体である。nは、[MXY]から成る構成単位が多数集合しているという特性を示すもので、nの大きさは特に限定されない。)
で表され、ふっ素原子を含有し、相互貫入型のネットワーク構造を有している多孔性高分子金属錯体。
【0015】
(2)2価の遷移金属イオンに、第一配位子の2座配位のカルボキシル基1個、1座配位のカルボキシル基1個が配位し、さらに型第二配位子が配位して、梯子状のネットワークが形成され、さらにこの梯子状平面ネットワークが第二配位子により架橋されることで、三次元構造のネットワークが形成されており、かつ梯子状平面ネットワークが相互貫入している構造である、上記(1)に記載の多孔性高分子金属錯体。
【0016】
(3)Yが、ピラジン、4,4’−ビピリジン、3,4’−ビピリジン、3,3’−ビピリジン、3,6−ジ(4−ピリジル)−1,2,4,5−テトラジン、(E)−4,4’−(ジアゼン−1,2−ジイル)ジピリジン、N-(ピリジン-4-イル)イソニコチンアミド、4,4’−(1,4−フェニレン)ジピリジン、4,4’−(1,2−エタンジイル)ビスピリジン(E)−4,4’−(エテン−1,2−ジイル)ジピリジン、4,4’−(ビフェニル−4,4’-ジイルビス(エチン−2,1−ジイル)ジピリジン、4,4’−(エチン−1,2−ジイル)ジピリジンから選ばれる、上記(1)、(2)に記載の多孔性高分子金属錯体。
【0017】
(4)パーフルオロアルキル基が、CF
3,C
2F
5,n−C
3F
7,n−C
4F
9,n−C
5F
11,n−C
8F
17,n−C
10F
21から選ばれる、上記(1)〜(3)に記載の多孔性高分子金属錯体。
【0019】
(
5)上記(1)−(
4)のいずれかに記載の多孔性高分子金属錯体を含むガス吸着材。
【0020】
(
6)上記(
5)に記載のガス吸着材を用いるガス分離装置。
【0021】
(
7)上記(
5)に記載のガス吸着材を用いるガス貯蔵装置。
【0022】
(
8)
亜鉛イオン、銅イオン、コバルトイオン、ニッケルイオンから選ばれる2価の遷移金属イオン、
下記式:
【化4】
(式中、Rfは炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基である。)
で表される炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基を5位に有するイソフタル酸誘導体(第一配位子)、及びピラジン、ビピリジン及び4−ピリジル基を分子両末端に有
し、下記式:
【化5】
(この式において、RはC1〜C4アルキレン基、C2〜C4アルケニレン基、C2〜C4アルキニレン基、アミド結合、エーテル結合、エステル結合、ジアゾ結合、
【化6】
を示し、Xは−S−、−O−または−NH−であり、Yはアリーレン基である。)で表されるビピリジン類縁体からなる群から選ばれる第二配位子とを、まず、−20〜40℃で反応し、その後、50℃〜150℃で反応することを特徴とする、上記(1)〜(
4)に記載の多孔性高分子金属錯体の製造方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明の多孔性高分子金属錯体は多量のガスを吸着、吸蔵、放出し、かつ、ガスの選択的吸着を行うことが可能である。また本発明の多孔性高分子金属錯体からなるガス吸着材料を内部に収容してなるガス貯蔵装置およびガス分離装置を製造することが可能になる。
【0024】
本発明の多孔性高分子金属錯体は、また例えば、圧力スイング吸着方式(以下「PSA方式」と略記)のガス分離装置として使用すれば、非常に効率良いガス分離が可能である。また、圧力変化に要する時間を短縮でき、省エネルギーにも寄与する。さらに、ガス分離装置の小型化にも寄与しうるため、高純度ガスを製品として販売する際のコスト競争力を高めることができることは勿論、自社工場内部で高純度ガスを用いる場合であっても、高純度ガスを必要とする設備に要するコストを削減できるため、結局、最終製品の製造コストを削減する効果を有する。
【0025】
本発明の多孔性高分子金属錯体の他の用途としては、ガス貯蔵装置が挙げられる。本発明のガス吸着材をガス貯蔵装置(業務用ガスタンク、民生用ガスタンク、車両用燃料タンクなど)に適用した場合には、搬送中や保存中の圧力を劇的に低減させることが可能である。搬送時や保存中のガス圧力を減少させ得ることに起因する効果としては、形状自由度の向上がまず挙げられる。従来のガス貯蔵装置においては、保存中の圧力を維持しなくてはガス吸着量を高く維持できない。しかしながら、本発明のガス貯蔵装置においては、圧力を低下させても充分なガス吸着量を維持できる。
【0026】
ガス分離装置やガス貯蔵装置に適用する場合における、容器形状や容器材質、ガスバルブの種類などに関しては、特に特別の装置を用いなくてもよく、ガス分離装置やガス貯蔵装置に用いられているものを用いることが可能である。ただし、各種装置の改良を排除するものではなく、いかなる装置を用いたとしても、本発明の多孔性高分子金属錯体を用いている限りにおいて、本発明の技術的範囲に包含されるものである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、下記式(1)
[MXY]
n (1)
(式中、Mは2価の遷移金属イオンを示す。Xは第一配位子を示し、炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基を5位に有するイソフタル酸誘導体である。Yは第二配位子を示し、ピラジン、ビピリジンまたは4−ピリジル基を分子両末端に有するビピリジン類縁体である。nは、[MXY]から成る構成単位が多数集合しているという特性を示すもので、nの大きさは特に限定されない。)
で表され、ふっ素原子を含有し、相互貫入型のネットワーク構造を有している多孔性高分子金属錯体を提供する。
【0029】
本発明の相互貫入型のネットワーク構造を有している多孔性高分子金属錯体において、2価の遷移金属イオンに、イソフタル酸誘導体(第一配位子)の2座配位のカルボキシル基1個、1座配位のカルボキシル基1個に配位し、さらにピラジン、ビピリジンまたは4−ピリジル基を分子両末端に有するビピリジン類縁体(第二配位子)が配位して、梯子状のネットワークが形成されている様子を平面図として
図1に示す。さらにこの梯子状平面ネットワークが、第二配位子により架橋されることで、三次元構造のネットワークが形成されている様子を側面図として
図2に示す。すなわち、金属イオンは、2座配位のカルボキシル基1個、1座配位のカルボキシル基1個、さらに上下にそれぞれ第二配位子の窒素2個の配位を受けた5配位状態にある。
【0030】
図1、2は見易くするために相互貫入ネットワークの1ネットワークだけを切り出して図示したものであるが、実際は格子が貫入しあった相互貫入状態にある。
図3(a)及び3(b)に、それぞれ
図1及び
図2にほぼ対応するネットワークを、貫入しあったネットワークの格子2種を色違いで示す。
【0031】
本発明の多孔性高分子金属錯体は、相互貫入型のネットワーク構造を有しているとともに、イソフタル酸誘導体(第一配位子)の5位が炭素数〜10のパーフルオロアルキル基で置換されていることを特徴とする。理論に拘束されるものではないが、ネットワーク構造上のふっ素原子の影響で、相互貫入状態にあるネットワーク構造が、通常の相互貫入型PCPと比較して容易に滑りやすく、そのために独特のガス吸着特性が発現されると考えられる。
【0032】
本発明の多孔性高分子金属錯体は多孔体であるため、水やアルコールやエーテルなどの有機分子に触れると孔内に水や有機溶媒を含有し、たとえば式(2)
[MXY]
n(G)m (2)
(式中、Mは2価の遷移金属イオンを示す。Xは第一配位子を示し、炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基を5位に有するイソフタル酸誘導体である。Yは第二配位子を示し、ピラジン、ビピリジンまたは4−ピリジル基を分子両末端に有するビピリジン類縁体である。Gは後述のような合成に使用した溶媒分子や空気中の水分子であり、通常ゲスト分子と呼ばれる。nは、[MXY]から成る構成単位が多数集合しているという特性を示すもので、nの大きさは特に限定されない。mは金属イオン1に対して0.2から6である。)であるような複合錯体に変化する場合がある。
【0033】
しかし、上記式(2)で表される複合錯体中の上記Gで表されるゲスト分子は、多孔性高分子金属錯体に弱く結合しているだけであり、ガス吸着材として利用する際の減圧乾燥などの前処理によって除かれ、元の前記式(1)で表される多孔性高分子金属錯体に戻る。そのため、式(2)で表されるような錯体であっても、本質的には本発明の多孔性高分子金属錯体と同一物と見なすことができる。
【0034】
また本発明の多孔性高分子金属錯体は、2価の遷移金属イオンに後述の合成に使用した溶媒分子や空気中の水分子が配位し、たとえば式(3)
[MXYLz]
n (3)
(式中、Mは2価の遷移金属イオンを示す。Xは第一配位子を示し。炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基を5位に有するイソフタル酸誘導体である。Yは第二配位子を示し、ピラジン、ビピリジンまたは4−ピリジル基を分子両末端に有するビピリジン類縁体である。Lは後述のような合成に使用した溶媒分子や空気中の水分子である。nは、[MXYLz]から成る構成単位が多数集合しているという特性を示すもので、nの大きさは特に限定されない。zは金属イオン1に対して1または2である。)であるような複合錯体に変化する場合がある。
【0035】
しかし、上記式(3)で表される複合錯体中の上記Lで表される配位性の分子は、2価の遷移金属イオンに弱く結合しているだけであり、ガス吸着材として利用する際の減圧乾燥などの前処理によって除かれ、元の前記式(1)で表される本発明の多孔性高分子金属錯体に戻る。そのため、式(3)で表されるような錯体であっても、本質的には本発明の多孔性高分子金属錯体と同一物と見なすことができる。
【0036】
相互貫入型構造の、前記式(1)で表される本発明多孔性高分子金属錯体は、2価の遷移金属塩、炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基を5位に有するイソフタル酸誘導体(第一配位子)及びピラジン、ビピリジンまたは4−ピリジル基を分子両末端に有するビピリジン類縁体(第二配位子)を、溶媒に溶かして溶液状態で混合し、一定時間低温で保持し反応した後に加熱して反応させることで製造できる。本発明の相互貫入型構造の多孔性高分子金属錯体を製造するには、反応温度を上記のように二段階に変更して反応を行うことが重要である。詳細な温度条件については後述する。
【0037】
溶媒としては、アルコール類などのプロトン系溶媒とジメチルホルムアミドなどのアミド系溶媒の混合溶媒を利用すると良好な結果が得られる。アルコールなどのプロトン系溶媒及びジメチルアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド系溶媒は2価の遷移金属塩をよく溶解し、さらに2価の遷移金属イオンや対イオンに配位結合や水素結合することで2価の遷移金属塩を安定化し、配位子との急速な反応を抑制することで、副反応を抑制する。アルコール類の例としてはメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノールなどの脂肪族系1価アルコール及びエチレングリコールなどの脂肪族系2価アルコール類を例示できる。安価でかつ2価遷移金属塩の溶解性が高いという点でメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、エチレングリコールが好ましい。またこれらのアルコール類は単独で用いてもよいし、複数を混合使用してもよい。アミド系溶媒の例としては、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジブチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどが例示出来る。2価遷移金属塩の溶解性が高いという点で、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミドが好ましい。
【0038】
アルコール類とアミド系溶媒の混合比率は1:99〜99:1(体積比)で任意である。配位子、金属塩の両方の溶解性が高まり、副生成物の発生を抑制出来るという点で、混合比率は90:10〜10:90(体積比)、反応を加速できるという観点から80:20〜20:80(体積比)が好ましい。
【0039】
溶媒として前記のアルコール類やアミド系溶媒とからなる混合溶媒にさらに別種の有機溶媒を混合して使用することもできるが、アルコール類とアミド系溶媒からなる混合溶媒の他の有機溶媒に対する混合比率は、50体積%以上にすることが、金属塩および配位子の溶解性を向上させる観点と相互貫入型多孔性高分子金属錯体を得るという観点から好ましい。
【0040】
本発明のふっ素を含有し、相互貫入型のネットワーク構造を有する新規な多孔性高分子金属錯体を形成するのに必要な2価の遷移金属イオンは、上記の配位構造を安定的に形成し、さらにピラジン、ビピリジンまたは4−ピリジル基を分子両末端に有するビピリジン類縁体(第二配位子)と安定的な架橋構造を形成する。2価の遷移金属イオンの具体例としてはコバルトイオン、ニッケルイオン、亜鉛イオン、銅イオンが挙げられる。得られた多孔性高分子金属錯体の化学的安定性の観点から、亜鉛イオンが特に好ましい。
【0041】
本発明の方法で使用する亜鉛塩としては、2価の亜鉛イオンを含有している塩類であればよく、溶媒への溶解性が高いという点で、硝酸亜鉛、酢酸亜鉛、硫酸亜鉛、ぎ酸亜鉛、塩化亜鉛、臭化亜鉛が好ましく、反応性が高いという点で、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛が特に好ましい。
【0042】
本発明の方法で使用するコバルト塩としては、2価のコバルトイオンを含有している塩類であればよく、溶媒への溶解性が高いという点で、硝酸コバルト、酢酸コバルト、硫酸コバルト、ぎ酸コバルト、塩化コバルト、臭化コバルトが好ましく、反応性が高いという点で、硝酸コバルト、硫酸コバルトが特に好ましい。
【0043】
本発明の方法で使用するニッケル塩としては、2価の銅イオンを含有している塩類であればよく、溶媒への溶解性が高いという点で、硝酸ニッケル、酢酸ニッケル、硫酸ニッケル、ぎ酸ニッケル、塩化ニッケル、臭化ニッケルが好ましく、反応性が高いという点で、硝酸ニッケル、硫酸ニッケルが特に好ましい。
【0044】
本発明の方法で使用する銅塩としては、2価の銅イオンを含有している塩類であればよく、溶媒への溶解性が高いという点で、硝酸銅、酢酸銅、硫酸銅、ぎ酸銅、塩化銅、臭化銅が好ましく、反応性が高いという点で、硝酸銅、硫酸銅が特に好ましい。
【0045】
以下、第一配位子である5位に置換基を有するイソフタル酸誘導体に関して説明する。5位の置換基としては直鎖状または枝分かれのある炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基が挙げられ、特にガス分離特性が優れる点で、CF
3,C
2F
5,n−C
3F
7,n−C
4F
9,n−C
5F
11,n−C
8F
17,n−C
10F
21基が好ましい。ベンゼン環へのパーフルオロアルキル基の導入方法としては、たとえば、柴崎ら、Chem. Asian J. 2006, 1, 314 - 321を参照することができる。
【0046】
本発明の第二配位子には、ピラジン、ビピリジンまたは4−ピリジル基を分子両末端に有するビピリジン類縁体が使用できる。
【0047】
ビピリジンには、
4,4’−ビピリジン、3,4’−ビピリジン、3,3’−ビピリジン等のビピリジン異性体が好ましく使用できる。
【0048】
4−ピリジル基を分子両末端に有するビピリジン類縁体には、下記式で表される化合物を挙げることができる。
【化7】
(式中、RはC1〜C4アルキレン基、C2〜C4アルケニレン基、C2〜C4アルキニレン基、アミド結合、エーテル結合、エステル結合、ジアゾ結合、
【化8】
を示し、Xは−S−、−O−または−NH−であり、Yはアリーレン基である。)
【0049】
好ましくは、第二配位子は、化合物の安定性から、ピラジン、4,4’-ビピリジン、又は、上記化学式でRが、ジアゼン−1,2−ジイル基、アミド基、エチレン基(−CH
2CH
2−)、ビニレン基(−CH=CH−)、エチニレン基(−C≡C−)、チオフェン−2,5−ジイル基、p−フェニレン基、ビフェニル−1,4−ジイル基、1,2,4,5−テトラジン−1,4-ジイル基であるビピリジン類縁の化合物である。
【0050】
第二配位子はその芳香環に置換基を有していてもよく、置換基の種類としては、メチルなどの低級アルキル基、ヒドロキシメチル基などの極性官能基を有する計九アルキル基、ジメチルアミノ基などの低級アルキルアミノ基類が好ましく、置換基の個数は1〜4個である。
【0051】
具体的には、本発明で使用される第二配位子には、ピラジン、4,4’−ビピリジン、3,4’−ビピリジン、3,3’−ビピリジン、3,6−ジ(4−ピリジル)−1,2,4,5−テトラジン、(E)−4,4’−(ジアゼン−1,2−ジイル)ジピリジン、N-(ピリジン-4-イル)イソニコチンアミド、4,4’−(1,4−フェニレン)ジピリジン、4,4’−(1,2−エタンジイル)ビスピリジン(別称4,4'-エチレンジピリジン) (E)−4,4’−(エテン−1,2−ジイル)ジピリジン、4,4’−(ビフェニル−4,4’-ジイルビス(エチン−2,1−ジイル))ジピリジン、(E)−4,4’−(エテン−1,2−ジイル)ビピリジン、4,4’−(エチン−1,2−ジイル)ジピリジンから選ばれる化合物が好ましい。より好ましくは、第二配位子は、4,4’−ビピリジン、(E)−4,4’−(ジアゼン−1,2−ジイル)ジピリジン、N-(ピリジン-4-イル)イソニコチンアミド、4,4’−(1,4−フェニレン)ジピリジン、4,4’−(エチン−1,2−ジイル)ジピリジン、(E)−4,4’−(エテン−1,2−ジイル)ジピリジンが好ましい。さらには第二配位子は、耐熱性が高いという点で、特に4,4’-ビピリジンが好ましい。
【0052】
これらの代表的な第二配位子の構造式を下記に示す。
【化9】
【0053】
本発明の方法では、反応促進剤として塩基を添加することも可能である。塩基は、配位子のカルボキシル基を陰イオンに変換する事で、反応を加速すると推定される。塩基としてはたとえば無機塩基として水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが例示できる。有機塩基としては、トリエチルアミン、ジエチルイソプロピルアミン、ピリジン、2,6−ルチジンなどが例示出来る。反応加速性が高いという点で、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、およびピリジンが好ましい。添加量としては、使用するイソフタル酸の総モルに対し、反応の加速効果が顕著であるという点で好ましくは0.1〜6.0モル、副反応少ないという点でさらに好ましくは0.5から4.0モルである。
【0054】
本発明の方法では、反応制御剤として有機酸を添加することも可能である。有機酸は、配位子のカルボキシル基の酸としての解離を制御することで、反応が適切に進む事を制御していると考えられる。脂肪族の有機酸としては、酢酸、プロピオン酸などの1価の酸、シュウ酸、マロン酸などの2価の酸、ビシクロ[2,2,2」-オクタン-1,4-ジカルボン酸などの環状カルボン酸が挙げられる。芳香族の有機酸としては、安息香酸、4−メチル安息香酸などの1価の酸が挙げられる。これらの内、溶解性が高く、金属イオンに配位が強すぎない酢酸、安息香酸、ビシクロ[2,2,2」-オクタン-1,4-ジカルボン酸が好ましい。添加量としては、使用する配位子の総モルに対し、反応の効果が顕著であるという点で好ましくは0.1〜12.0モル、副反応が少ないという点でさらに好ましくは0.5から8.0モルである。
【0055】
金属塩の溶液および配位子を反応させるに当たり、金属塩および配位子を容器に装填した後、溶媒を添加する方法以外に、金属塩、配位子をそれぞれ別個に溶液として調製した後、これらの溶液を混合してもよい。溶液の混合方法は、金属塩溶液に配位子溶液を添加しても、その逆でもよい。また、金属塩溶液と配位子溶液を、積層した後に自然拡散による方法で混合してもよい。混合法としては、必ずしも溶液で行う必要はなく、例えば、金属塩溶液に固体の配位子を投入し、同時に溶媒を入れる方法や、反応容器に金属塩を装填した後に、配位子の固体または溶液を注入し、さらに金属塩を溶かすための溶液を注入するなど、最終的に反応が実質的に溶媒中で起こる方法であれば、種々の方法が可能である。ただし、金属塩の溶液と配位子の溶液を滴下混合する方法が、工業的には最も操作が簡便であり、好ましい。
【0056】
溶液の濃度は、金属塩溶液は10μmol/L〜4mol/Lが好ましく、100μmol/L〜2mol/Lであることがより好ましい。配位子の有機溶液は10μmol/L〜3mol/Lが好ましく、100μmol/L〜2mol/Lであることがより好ましい。これより低い濃度で反応を行っても目的物は得られるが、製造効率が低下するため好ましくない。また、これより高い濃度では、吸着能が低下するため好ましくない。
【0057】
反応温度は、二段階に変更して反応を行う必要がある。金属イオンと第一配位子を混合してから30分以上、24時間未満、好ましくは3時間以上12時間未満は、−20〜40℃に保ち、この後50℃、好ましくは50℃以上、150℃以下で、30分以上240時間未満、好ましくは3時間以上96時間未満反応させる。初期の低温での反応を行わないと、相互貫入構造が得られにくい。二段階目の反応は、オートクレーブなどを用いて、より高温で反応を行うことも可能であるが、加熱などのエネルギーコストの割には、収率は向上しないため実質的な意味はない。
【0058】
本発明の反応で用いられる金属塩と第一配位子の混合比率は、金属:配位子の比が1:5〜5:1のモル比、好ましくは1:3〜3:3のモル比の範囲内である。これ以外の範囲では、目的物の収率が低下し、また、未反応の原料が残留して、目的物の取り出しが困難となる。
【0059】
本発明の反応で用いられる金属塩と第一配位子と第二配位子の混合比率は、金属:2種配位子の合計の比が1:5〜5:1のモル比、好ましくは1:3〜3:3のモル比の範囲内である。さらに、第一配位子と第二配位子の比が1:3〜3:1のモル比、好ましくは1:2〜2:1のモル比の範囲内である。これ以外の範囲では、目的物の収率が低下し、また、未反応の原料が残留して、目的物の取り出しが困難となる。
【0060】
反応は通常のガラスライニングのSUS製の反応容器および機械式攪拌機を使用して行うことができる。反応終了後は濾過、乾燥を行うことで目的物質と原料の分離を行い、純度の高い目的物質を製造することが可能である。
【0061】
上記の反応により得られた多孔性高分子金属錯体が目的とする相互貫入型のネットワーク構造を有しているかどうかは、単結晶X線結晶解析により得られた反射を解析することで確認することが出来る。上記の反応により得られた多孔性高分子金属錯体のガス吸着能は、市販のガス吸着装置を用いて測定が可能である。
【0062】
本発明の多孔性高分子金属錯体は、相互貫入型のネットワーク構造であり、さらに本ネットワーク構造はふっ素を含む第一配位子を含有している。ネットワーク構造上のふっ素原子の影響で、相互貫入状態にあるネットワーク構造が、通常の相互貫入型PCPと比較して容易に滑りやすく、そのために独特のガス吸着特性が発現しうると考えられる。しかし、本発明は理論に拘束されるものではなく、本発明の多孔性高分子金属錯体の特性もこの理論によって制限されるものではない。
【実施例】
【0063】
多孔性高分子金属錯体の調製方法は種々の条件があり、一義的に決定できるものではないが、ここでは実施例に基づき説明する。
粉末X線回折測定には、ブルカーAX(株)社製粉末X線装置DISCOVER D8 with GADDSを用いた。
【0064】
実施例1
硝酸亜鉛3水和物0.01ミリモル、5−ペンタフルオロエチルイソフタル酸(5位にC
2F
5基を有するイソフタル酸)0.01ミリモル、(E)−4,4’−(ジアゼン−1,2−ジイル)ジピリジン0.01ミリモル、エタノール1mL、ジメチルホルムアミド1mLを直径5ミリのガラス試験管に入れ、蓋をして、オイルバスにて35℃で6時間保持したのち、80℃で3日間加熱した。得られた単結晶を大気に暴露させないようにパラトンにてコーティングした後、(株)リガク社製単結晶測定装置(極微小結晶用単結晶構造解析装置VariMax、MoK・線(λ=0.71069Å))にて測定し(照射時間8秒、d=45ミリ、2θ=−20,温度=−180℃)、得られた回折像を解析ソフトウエア、リガク(株)製解析ソフトウエア「CrystalStructure」を使用して解析し、
図1〜3に示すように、相互貫入構造を有していることを確認した(a=13.3308(16), b=19.931(2), c=18.994(2); α=90, β=103.8274(17), γ=90; 空間群=P21/c)。
【0065】
実施例2
硝酸亜鉛3水和物0.01ミリモル、5−ペンタフルオロエチルイソフタル酸(5位にC
2F
5基を有するイソフタル酸)0.01ミリモル、N-(ピリジン-4-イル)イソニコチンアミド0.01ミリモル、エタノール1mL、ジメチルホルムアミド1mLを直径5ミリのガラス試験管に入れ、蓋をして、オイルバスにて35℃で6時間保持したのち、80℃で3日間加熱した。得られた単結晶からX線回折分析により、実施例1と同様に、相互貫入構造を有していることを確認した(a=9.72(2), b=10.47(2), c=12.46(2); α=109.131(17), β=96.752(5), γ=114.70(2); 空間群=P1)。
【0066】
実施例3
硝酸亜鉛3水和物0.01ミリモル、5−ノナフルオロブチルイソフタル酸(5位にC
4F
9基を有するイソフタル酸)0.01ミリモル、4,4’−(1,4−フェニレン)ジピリジン0.01ミリモル、エタノール1mL、ジメチルホルムアミド1mLを直径5ミリのガラス試験管に入れ、蓋をして、オイルバスにて35℃で6時間保持したのち、80℃で3日間加熱した。得られた単結晶からX線回折分析により、実施例1と同様に、相互貫入構造を有していることを確認した(a=9.783(19), b=11.0610(18), c=15.766(2); α=90.722(5), β=98.477(6), γ=110.112(9); 空間群=P1)。
【0067】
実施例4
硝酸亜鉛3水和物0.01ミリモル、5−ウンデカフルオロペンチルイソフタル酸(5位にC
5F
11基を有するイソフタル酸)0.01ミリモル、4,4’−(1,4−フェニレン)ジピリジン0.01ミリモル、メタノール1mL、ジメチルホルムアミド1mLを直径5ミリのガラス試験管に入れ、蓋をして、オイルバスにて35℃で6時間保持したのち、80℃で3日間加熱した。得られた単結晶からX線回折分析により、実施例1と同様に、相互貫入構造を有していることを確認した(a=9.7296(14), b=11.5884(18), c=15.748(2); α=95.375(4), β=98.034(6), γ=109.178(5); 空間群=P1)。
【0068】
実施例5
硝酸亜鉛3水和物0.01ミリモル、5−トリフルオロメチルイソフタル酸(5位にCF
3基を有するイソフタル酸)0.01ミリモル、4,4’−ビピリジン0.01ミリモル、エタノール1mL、ジメチルホルムアミド1mLを直径5ミリのガラス試験管に入れ、蓋をして、オイルバスにて35℃で6時間保持したのち、80℃で3日間加熱した。得られた単結晶からX線回折分析により、実施例1と同様に、梯子状ネットワーク構造が第二配位子で架橋された三次元ネットワークが相互陥入したネットワーク構造を有している事が明らかになった。(a=9.4428(9), b=11.8769(11), c=15.2975(8); α=95.496(3), β=99.043(6), γ=108.043(7); 空間群=P1)。
【0069】
実施例6
硝酸亜鉛3水和物0.01ミリモル、5−ヘプタデカフルオロオクチルイソフタル酸(5位にC
8F
17基を有するイソフタル酸)0.01ミリモル、4,4’−ビピリジン0.01ミリモル、エタノール1mL、ジメチルホルムアミド1mLを直径5ミリのガラス試験管に入れ、蓋をして、オイルバスにて35℃で6時間保持したのち、100℃で3日間加熱した。得られた単結晶からX線回折分析により、実施例1と同様に、梯子状ネットワーク構造が第二配位子で架橋された三次元ネットワークが相互陥入したネットワーク構造を有している事が明らかになった。(a=9.3195(7), b=12.1472(8), c=15.1835(8); α=95.171(6), β=100.014(8), γ=104.529(7); 空間群=P1)。
【0070】
実施例7
硝酸銅3水和物0.01ミリモル、5−ヘプタフルオロプロピルイソフタル酸(5位にC
3F
7基を有するイソフタル酸)0.01ミリモル、(E)−4,4’−(エテン−1,2−ジイル)ジピリジン0.01ミリモル、エタノール1mL、ジメチルホルムアミド1mLを直径5ミリのガラス試験管に入れ、蓋をして、オイルバスにて35℃で6時間保持したのち、80℃で1日間加熱した。得られた単結晶からX線回折分析により、実施例1と同様に、梯子状ネットワーク構造が第二配位子で架橋された三次元ネットワークが相互陥入したネットワーク構造を有している事が明らかになった。(a=9.2294(5), b=10.9195(9), c=14.1573(9); α=95.396(5), β=98.336(7), γ=106.477(7); 空間群=P1)。
【0071】
実施例8
硝酸コバルト3水和物0.01ミリモル、5−ノナフルオロブチルイソフタル酸(5位にC
4F
9基を有するイソフタル酸)0.01ミリモル、4,4’−(ビフェニル−4,4’−ジイルビス(エチン−2,1−ジイル)ジピリジン0.01ミリモル、メタノール1mL、ジメチルホルムアミド1mLを直径5ミリのガラス試験管に入れ、蓋をして、オイルバスにて35℃で6時間保持したのち、80℃で3日間加熱した。得られた単結晶からX線回折分析により、実施例1と同様に、梯子状ネットワーク構造が第二配位子で架橋された三次元ネットワークが相互陥入したネットワーク構造を有している事が明らかになった。(a=9.9573(5), b=12.8629(9), c=16.7936(4); α=95.937(6), β=99.396(8), γ=104.386(8); 空間群=P1)。
【0072】
実施例9
硝酸ニッケル3水和物0.01ミリモル、5−ヘプタフルオロプロピルイソフタル酸(5位にC
3F
7基を有するイソフタル酸)0.01ミリモル、(E)−4,4’−(エテン−1,2−ジイル)ジピリジン0.01ミリモル、エタノール1mL、ジメチルホルムアミド1mLを直径5ミリのガラス試験管に入れ、蓋をして、オイルバスにて35℃で6時間保持したのち、80℃で3日間加熱した。得られた単結晶からX線回折分析により、実施例1と同様に、梯子状ネットワーク構造が第二配位子で架橋された三次元ネットワークが相互陥入したネットワーク構造を有している事が明らかになった。(a=10.3627(5), b=12.6338(9), c=15.8365(5); α=97.482(7), β=99.844(6), γ=103.357(9); 空間群=P1)。
【0073】
実施例10
硝酸亜鉛3水和物0.01ミリモル、5−ヘプタフルオロプロピルイソフタル酸(5位にC
3F
7基を有するイソフタル酸)0.01ミリモル、4,4’−(エチン−1,2−ジイル)ジピリジン0.01ミリモル、エタノール1mL、ジメチルホルムアミド1mLを直径5ミリのガラス試験管に入れ、蓋をして、オイルバスにて35℃で6時間保持したのち、80℃で3日間加熱した。得られた単結晶からX線回折分析により、実施例1と同様に、梯子状ネットワーク構造が第二配位子で架橋された三次元ネットワークが相互陥入したネットワーク構造を有している事が明らかになった。(a=11.0364(7), b=12.2478(4), c=18.3605(7); α=95.363(5), β=103.377(8), γ=101.336(8); 空間群=P1)。
【0074】
比較例1
実施例1と同様の反応条件で硝酸亜鉛3水和物と5-メチルイソフタル酸とを反応して多孔性高分子金属錯体を合成した。得られた粉末を粉末X線装置により測定したところ、実施例1で得られた単結晶X線データからの粉末パターンシミュレーション結果とは異なっており、相互貫入型構造がえられなかった事が判った。
【0075】
比較例2
実施例1と同様の反応条件で硝酸亜鉛3水和物と5-ニトロイソフタル酸とを反応して多孔性高分子金属錯体を合成した。得られた粉末を粉末X線装置により測定したところ、実施例1で得られた単結晶X線データからの粉末パターンシミュレーション結果とは異なっており、相互貫入型構造がえられなかった事が判った。
【0076】
<ガス吸着の結果>
得られたガス吸着材の二酸化炭素吸着性および窒素の吸着性をBET自動吸着装置(日本ベル株式会社製ベルミニII)をもちいて評価した(測定温度:二酸化炭素は195K、および273K、酸素及び窒素は77K)。測定に先立って試料を423Kで6時間真空乾燥して、微量残存している可能性がある溶媒分子などを除去した。
【0077】
表1に、実施例1〜10で得られた多孔性高分子金属錯体のガス吸着特性吸を示す。
いずれも二酸化炭素を良く吸蔵し、ガス貯蔵材として利用可能であることが判った。ふっ素原子を含んでいる物は、273Kでの二酸化炭素の吸着量及び酸素ガス吸着量が特に多いと言う優れた特性を有しており、これらはふっ素原子の特性が反映された物と考えられる。
【0078】
【表1】