【実施例】
【0012】
以下に、流体加熱ヒータにかかる実施例について、図面を参照して説明する。
本例の流体加熱ヒータ1は、
図1に示すように、複数のPTC素子2、一対の電極板3A,3B、一対の押圧部材としての樹脂プレート4及び板バネ5A、並びにケース6を備えている。複数のPTC(Positive temperature coefficient)素子2は、通電によって発熱し、かつ温度によって抵抗値が変化する性質を有している。一対の電極板3A,3Bは、複数のPTC素子2を両側から挟み込み、複数のPTC素子2に通電を行うよう構成されている。樹脂プレート4及び板バネ5Aは、一対の電極板3A,3Bの両側から一対の電極板3A,3Bを複数のPTC素子2に押圧するよう構成されている。ケース6は、複数のPTC素子2、一対の電極板3A,3B、樹脂プレート4及び板バネ5Aを収容するよう構成されている。
一対の電極板3A,3B同士の間、第1電極板3Aと樹脂プレート4との間、及び第2電極板3Bと板バネ5Aとの間には、複数のPTC素子2によって加熱される流体Rが通過する流体流路7A,7B,7Cが形成されている。
【0013】
以下に、本例の流体加熱ヒータ1について、
図1〜
図8を参照して詳説する。
図1に示すように、本例の流体加熱ヒータ1は、流体Rとしての燃料を加熱するために用いられる。燃料は、燃料タンクからポンプによって流体加熱ヒータ1に供給され、流体加熱ヒータ1によって一定の温度に加熱された後、インジェクタから噴射される。また、流体加熱ヒータ1は、フィルタ13と一体化されており、流体加熱ヒータ1によって加熱された燃料は、フィルタ13を通過してインジェクタに供給される。
【0014】
図8は、流体加熱ヒータ1における主要部の周方向Cに沿った断面を、直線状に展開して模式的に示す。同図に示すように、本例の流体流路7A,7B,7Cは、流体加熱ヒータ1の中心部11の回りを回る流路として形成されている。複数のPTC素子2は、中心部11の回りの周方向Cに並んで配置されている。流体流路7A,7B,7Cは、第1電極板3Aと樹脂プレート4との間、第1電極板3Aと第2電極板3Bとの間、及び第2電極板3Bと板バネ5Aとの間の順に流体Rを通過させる構造に形成されている。
【0015】
第1押圧部材としての樹脂プレート4は、PTC素子2に対面する、第1電極板3Aの部分に対向して突出する複数の対向突起41を有している。第2押圧部材としての板バネ5Aは、PTC素子2に対面する、第2電極板3Bの部分に弾性力を付与する複数の弾性変形爪51を有している。弾性変形爪51は、第1板バネ5Aの一部を切り開くようにして形成されている。板バネ5Aの外側面には、板バネ5Aを補強するための剛性プレート5Bが積層されている。剛性プレート5Bには、必要な剛性が確保されれば、金属、樹脂、セラミック等のいずれの部材を使用してもよい。また、剛性プレート5Bは、板バネ5Aの剛性を高めるものであり、板バネ5Aの剛性が確保できれば廃止することができる。
各PTC素子2は、板バネ5Aから各PTC素子2に付与される弾性力が各対向突起41によって受け止められることによって、樹脂プレート4と板バネ5Aとの間に挟持される。
【0016】
図3に示すように、ケース6には、流体Rの入口70が形成されている。
図4に示すように、樹脂プレート4には、第1電極板3Aと樹脂プレート4との間に流体Rを流入させるための第1流入口71が形成されている。また、樹脂プレート4の内周側部分と外周側部分とには、流体流路7A,7B,7Cを形成するための立壁43が形成されている。
図4、
図5に示すように、第1電極板3Aには、第1流入口71から周方向Cの一方側C1に回った位置において、第1電極板3Aと樹脂プレート4との間から第1電極板3Aと第2電極板3Bとの間へ流体Rを流入させるための第2流入口72が形成されている。
図5、
図6に示すように、第2電極板3Bには、第2流入口72から周方向Cの他方側C2に回った位置において、第1電極板3Aと第2電極板3Bとの間から第2電極板3Bと板バネ5Aとの間へ流体Rを流入させるための第3流入口73が形成されている。
図6、
図7に示すように、板バネ5A及び剛性プレート5Bには、第3流入口73から周方向Cの一方側C1に回った位置において、第2電極板3Bと板バネ5A及び剛性プレート5Bとの間からフィルタ13へ流体Rを流出させるための流出口74が形成されている。
【0017】
図2は、流体加熱ヒータ1を、ケース6、樹脂プレート4、第1電極板3A、第2電極板3B、板バネ5A及び剛性プレート5Bに分解した状態を、下側(フィルタ13側)から見た状態で示す。
図2、
図4に示すように、樹脂プレート4には、複数のPTC素子2の位置決めをするための複数のガイド突起42が設けられている。複数のガイド突起42は、円盤形状を有する各PTC素子2の側面の外周の複数個所(本例では3か所)に対向して、各PTC素子2を規定の位置にガイドする。
図2、
図5、
図6に示すように、第1電極板3A及び第2電極板3Bには、複数のガイド突起42が挿通される複数のガイド穴31が形成されている。各ガイド突起42が、第1電極板3A及び第2電極板3Bの各ガイド穴31に挿入されることにより、各PTC素子2を第1電極板3Aと第2電極板3Bとの間に安定して維持することができる。
【0018】
図1に示すように、第1電極板3A及び第2電極板3Bは、PTC素子2に対面していることにより、PTC素子2から発生される熱を放熱する放熱板としても機能する。ケース6は、PTC素子2及び一対の電極板3A,3Bに対して樹脂プレート4が配置された側から、PTC素子2、一対の電極板3A,3B、樹脂プレート4及び板バネ5Aを覆っている。ケース6は、アルミニウム材料から構成されている。ケース6、樹脂プレート4、一対の電極板3A,3B、板バネ5A及び剛性プレート5Bの各中心部11には、フィルタ13を通過した後の流体Rが通過する出口流路12が形成されている。
【0019】
次に、流体加熱ヒータ1の動作及び作用効果について説明する。
流体加熱ヒータ1を動作させるに当たっては、
図2、
図3に示すように、一対の電極板3A,3Bを介して各PTC素子2に通電がされ、また、ケース6の入口70を経由して第1流入口71へ流体Rが流入する。このとき、各PTC素子2が加熱されてその温度が上昇するとその抵抗値も上昇する。そして、この各PTC素子2の抵抗値の変化を測定しつつ、一対の電極板3A,3Bへの通電量を決定する。
図2、
図4に示すように、第1流入口71から第1電極板3Aと樹脂プレート4との間の第1流体流路7Aに流入する流体Rは、この第1流体流路7Aを周方向Cの一方側C1へ回るようにして流れる。このとき、各PTC素子2によって発生する熱は、第1電極板3Aから放熱されて第1流体流路7Aを流れる流体Rに伝熱される。そして、第1流体流路7Aを流れる流体Rは、
図5に示すように、第2流入口72へ流入する。
【0020】
次いで、同図に示すように、第2流入口72から第1電極板3Aと第2電極板3Bとの間の第2流体流路7Bに流入する流体Rは、この第2流体流路7Bを周方向Cの他方側C2へ回るようにして流れる。このとき、各PTC素子2によって発生する熱は、第1電極板3A、第2電極板3B及び各PTC素子2の側面から放熱されて第2流体流路7Bを流れる流体Rに伝熱される。そして、第2流体流路7Bを流れる流体Rは、
図6に示すように、第3流入口73へ流入する。
【0021】
次いで、同図に示すように、第3流入口73から第2電極板3Bと板バネ5Aとの間の第3流体流路7Cに流入する流体Rは、この第3流体流路7Cを周方向Cの一方側C1へ回るようにして流れる。このとき、各PTC素子2によって発生する熱は、第2電極板3Bから放熱されて第3流体流路7Cを流れる流体Rに伝熱される。そして、第3流体流路7Cを流れる流体Rは、
図7に示すように、流出口74へ流出する。
その後、流体Rは、フィルタ13を通ってろ過され、流体加熱ヒータ1の中心部11に形成された出口流路12を通って外部へ流出する。
【0022】
このように、本例の流体加熱ヒータ1においては、流体Rが3つの流体流路7A,7B,7Cを通過する際に、各PTC素子2から一対の電極板3A,3Bを介して流体Rが加熱される。これにより、流体Rは、一対の電極板3A,3Bの間を通過する時間だけでなく、各電極板3A,3Bの外側を通過する時間も加熱される。そして、各PTC素子2から発生する熱を、第1電極板3Aの両面及び第2電極板3Bの両面から、3つの流体流路7A,7B,7Cを通過する流体Rに伝達することができる。そのため、各PTC素子2から発生する熱を流体Rに伝達するための各電極板3A,3Bの面積を、効果的に増やすことができる。
【0023】
それ故、本例の流体加熱ヒータ1によれば、各PTC素子2による流体Rの加熱効率を更に高めることができる。
【0024】
本例において示した流体加熱ヒータ1の3つの空間における流体流路7A,7B,7Cの構造は、
図9(a)に模式的に示すように、流体Rが、1つの空間における流体流路7Aを一方から他方へ通過した後、他の1つの空間における流体流路7Bを他方から一方へ通過し、その後、残りの1つの空間における流体流路7Cを一方から他方へ通過する構造とした。
これ以外にも、3つの空間における流体流路7A,7B,7Cの構造は、次のようにすることができる。具体的には、3つの空間における流体流路7A,7B,7Cの構造は、
図9(b)に模式的に示すように、3つの空間における流体流路7A,7B,7Cの一方から他方へ、流体Rが同時に並行して通過する構造とすることができる。
【0025】
また、3つの空間における流体流路7A,7B,7Cの構造は、
図9(c)に模式的に示すように、流体Rが、2つの空間における流体流路7A,7Bを一方から他方へ同時に並行して通過した後、残りの1つの空間における流体流路7Cを他方から一方へ通過する構造とすることもできる。
また、3つの空間における流体流路7A,7B,7Cの構造は、
図9(d)に模式的に示すように、流体Rが、1つの空間における流体流路7Aを一方から他方へ通過した後、残りの2つの空間における流体流路7B,7Cを他方から一方へ同時に並行して通過する構造とすることもできる。