(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の透析液供給システムは、腹膜透析で使用されている乳酸透析液の取り扱いを想定しており、現在、血液透析治療に多用されている重炭酸透析液の取り扱いは全く想定されていない。また、特許文献2の透析液供給システムは、重炭酸透析液の取り扱いを想定しているが、比較的短時間(例えば2時間)の透析治療にしか使用できないという問題があった。すなわち、重炭酸透析液は、A剤およびB剤と呼ばれる二種類の薬剤と希釈液とを混合して生成される。しかし、この重炭酸透析液は、A剤およびB剤は混合後、一定時間(例えば2時間)経過すると析出物が発生し、血液透析治療に使用できなくなる。したがって、一つのタンクで透析液を生成する特許文献2の技術では、この一定時間内に使いきれる量の透析液しか出力できず、それ以上の量の透析液を出力できない。しかし、患者の容体やライフスタイルによっては、より長時間(例えば6時間等)、連続して透析治療を受けたいという要望もあり、特許文献2の技術では、患者の要望に十分に応えられない。
【0006】
また、特許文献3には、二つのタンクを備え、一方のタンクで透析液を出力している間に、他方のタンクで透析液を生成し、一方のタンクの透析液が無くなれば、他方のタンクから透析液を出力するとともに当該一方のタンクで透析液を生成するシステムが開示されている。しかし、特許文献3の透析液供給システムは、重炭酸透析液の取り扱いを想定していない。また、特許文献3の透析液供給システムでは、希釈液を計量するために計量ポンプを設けており、システムが高価になるばかりでなく、メンテナンスの手間が多いという問題もあった。さらに、特許文献3の技術では、透析液を生成するためのタンクと、出力するタンクとを交互に切り替えている。そのため、特許文献3の技術では、二つのタンクそれぞれに、透析液生成用タンクおよび透析液貯留用タンクの両方の機能を持たせなければならない。結果として、特許文献3の技術では、バルブや、計量用のポンプ、薬剤投入機構等を二タンク分設けなければならず、無駄が多かった。
【0007】
そこで、本発明では、複数の薬剤を混合して得られる透析液を生成・出力する透析液供給システムであって、安価でありながら、多量の透析液を出力できる透析液供給システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の透析液供給システムは、2以上の薬剤と、希釈液とを混合して透析液を生成し、出力する透析液供給システムであって、前記薬剤および希釈液を混合して透析液を生成する混合タンクと、前記混合タンクで生成された透析液を貯留して出力する貯留タンクと、前記混合タンクで生成された透析液を前記貯留タンクに輸送する輸送機構と、前記貯留タンクに貯留された透析液を透析装置に出力する出力機構と、前記輸送機構および出力機構の駆動を制御する制御部と、を備え
、前記透析液供給システムは、一人の治療に用いられる個人用透析液供給システムであり、前記2以上の薬剤は、いずれも、予め、粉末状態で、1回の透析液生成に必要な量ごとに個別包装されており、さらに、セットされた前記個別包装された前記2以上の薬剤を、全て、計量することなく、前記混合タンクに投入する薬剤供給装置を備えている、ことを特徴とする。
【0009】
好適な態様では、前記制御部は、前記貯留タンクから透析装置に透析液を出力させている間に、前記混合タンクで透析液を生成させる。他の好適な態様では、前記混合タンクは、供給された液体の重量または液面レベルを計測する重量センサまたは液面レベルセンサを備え、前記制御部は、前記重量センサまたは液面レベルセンサでの検知結果に基づいて前記混合タンクへの前
記希釈液の投入量を監視する。
【0010】
他の好適な態様では、さらに、前記混合タンク内の液体を当該混合タンクの内外に循環させて撹拌する循環機構を備える。他の好適な態様では、前記貯留タンクの容量は、前記混合タンクの容量よりも大きい。他の好適な態様では、前記制御部は、前記混合タンク、貯留タンクの順に、洗浄用液体を流すことで、当該混合タンクおよび貯留タンクを洗浄する洗浄工程を実行させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、混合タンクで透析液を生成し、生成された透析液を貯留タンクで貯留して出力するため、計量ポンプを用いなくても、連続して長時間、透析液を生成・出力することができる。その結果、従来の透析液供給システムに比べて、安価でありながら、多量の透析液を出力できる
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態である透析システム1について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態である透析液供給システム10の構成を示す図である。
図1に示す透析システム1は、透析液供給システム10と、当該透析液供給システム10に接続された透析装置100と、を備えている。透析装置100は、半透膜を介して血液と透析液を接触させて血液を浄化するダイアライザと、患者から血液を導出してダイアライザに流入させる動脈側血液回路、ダイアライザから流出した血液を患者に戻す静脈側血液回路を有する血液循環系と、ダイアライザに対し透析液を給排液するラインを有する透析液給排液系と、動脈側血液回路に設けられた血液ポンプとによって、血液を体外循環させて血液を浄化する。透析液供給システム10は、複数の薬剤と希釈液を混合して透析液を生成し、生成された透析液を、透析装置100に供給する。
【0014】
この透析液供給システム10は、比較的小型で、少人数(例えば一人)の治療に適した構成となっており、比較的小規模な施設、例えば、透析専門クリニック以外の病院や家庭内等での使用が想定されている。ただし、当然のことながら、後述するタンクT1,T2の容量を変更することで、多人数の同時治療や、大規模施設での使用に適した構成に変更することもできる。また、透析液供給システム10および透析装置100は、システム全体を小型化するためには、一体化されることが好ましいが、別体であってもよい。
【0015】
透析液供給システム10は、混合タンクT1および貯留タンクT2と、混合タンクT1に薬剤および希釈液を供給する供給機構と、混合タンクT1で生成された透析液を貯留タンクT2に輸送する輸送機構と、貯留タンクT2に貯留された透析液を透析装置100に出力する出力機構と、各種機構の駆動を制御する制御部16と、に大別される。
【0016】
混合タンクT1は、水および薬剤を混合・希釈して透析液を生成するための容器である。混合タンクT1には、投入された液体の量を検知する液量センサ18、例えば、液面高さを検知するレベルスイッチや、投入された液重量を検知するロードセンサ等が設けられている。また、混合タンクT1内で生成された透析液の濃度を検知する濃度センサ(図示せず)を設けることも望ましい。
【0017】
貯留タンクT2は、混合タンクT1で生成された透析液を貯留するための容器である。混合タンクT1で生成された透析液は、後述する輸送機構により、貯留タンクT2に送られる。貯留タンクT2に貯留された透析液は、出力機構により、一定速度で透析装置100に出力される。貯留タンクT2にも、透析液の貯留タンクT2からの溢れや、透析液の残量検知のために、貯留されている液量を検知する液量センサ18を設けることが望ましい。ただし、後述する透析液の生成と使用のタイミングを正確に制御できるのであれば、貯留タンクT2における液量センサ18は、省略されてもよい。
【0018】
この混合タンクT1および貯留タンクT2の容量は、透析液の使用限度時間に応じて決定される。すなわち、本実施形態では、透析液として重炭酸透析液を採用している。重炭酸透析液は、周知の通り、二種類の薬剤、すなわち、A剤およびB剤を混合・希釈して得られる透析液である。A剤は、電解質成分(例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、酢酸ナトリウム)や、pH調整剤(例えば酢酸)、糖(例えばグルコース)等を含む薬剤である。また、B剤は、重炭酸ナトリウム等を含む薬剤である。
【0019】
かかる重炭酸透析液は、A剤とB剤とを混合してから一定時間が経過すると析出物が析出して濃度が変化するため、生成してから使用できる時間、すなわち、使用限度時間が定められている。この使用限度時間は、製品種類ごとに多少の違いはあるが、2時間前後であることが多い。本実施形態では、混合タンクT1の容量を、使用限度時間内で、生成し、使用できる透析液量以下としている。例えば、使用限度時間が2時間、透析治療に用いる透析液流量が500mL/minの場合、混合タンクT1の容量は、2時間の透析治療に用いる透析液量以下、すなわち、500mL×120min=60L以下とすることが望ましい。また、A剤とB剤とを混合してから析出物が析出するまでの時間は、液温等によって変化するという問題や、透析液を作成した後の貯留時間も考慮する必要があるので、析出を確実に防止するためには、使用限度時間を1時間に設定することが好ましい。この場合、透析液流量が500mL/minならば、混合タンクT1の容量は、500mL×60min=30L以下とすることが望ましい。なお、当然ながら、この混合タンクT1の容量は、透析液流量に応じて変更されてもよい。したがって、例えば、透析治療に用いる透析液流量が250mL/minの場合、混合タンクT1の最大容量は、250mL×60min=15L以下とすればよい。また、溶解不良による薬剤の残留を防止するために、透析液を作成する時間としては最低15分間は必要であるため、混合タンクT1の容量としては、15分間の透析治療に用いる透析液量以上が望ましい。つまり、混合タンクT1の容量は、透析液流量が500mL/minの場合には、7.5L以上、250mL/minの場合には、3.75L以上であることが望ましい。
【0020】
貯留タンクT2の容量は、混合タンクT1の容量よりも大きいことが望ましい。これは、貯留タンクT2からの透析液の溢れを防止するためである。すなわち、透析治療中に、貯留タンクT2から出力される透析液を途切れさせないためには、貯留タンクT2が完全に空になる前に、換言すれば、貯留タンクT2に残存透析液がある状態で、混合タンクT1から貯留タンクT2へ透析液を移送しなければならない。このとき、貯留タンクT2からの透析液の溢れを防止するためには、貯留タンクT2の容量は、混合タンクT1の容量に、残存透析液分を上乗せした容量以上でなければならない。
【0021】
供給機構は、希釈液である水を供給する水供給装置12、薬剤であるA剤およびB剤を供給する薬剤供給装置14、これらに接続された入力ラインLi、および、入力ラインLi上に設けられた第一入力バルブVi1等から構成される。水供給装置12は、高純度の水を供給できるのであれば、その構成は特に限定されない。したがって、水供給装置12としては、逆浸透膜(RO膜)を用いて水から不純物を除去して、純度の高いRO水を生成するRO装置や、イオン交換樹脂と限外ろ過膜(UF膜)を用いて高純度水を生成する水処理装置等を用いることができる。この水供給装置12は、ラインLw,Liを介して、混合タンクT1や、薬剤供給装置14に水を供給する。
【0022】
薬剤供給装置14は、透析液の薬剤を混合タンクT1に供給する装置である。本実施形態では、透析液として重炭酸透析液を採用しているため、供給される薬剤は、A剤およびB剤である。薬剤供給装置14には、このA剤およびB剤が予めセットされており、セットされたA剤およびB剤は、水とともに混合タンクT1に供給される。薬剤供給装置14にセットされているA剤およびB剤は、予め、1回の透析液生成に必要な量ごとに個別包装されていることが望ましい。ただし、透析液供給システム10に、A剤およびB剤の計量機構を設けているのであれば、A剤およびB剤は、事前に計量・包装されていなくてもよい。
【0023】
また、この薬剤供給装置14にセットされているA剤およびB剤は、粉末状態や錠剤状態でもよいし、少量の水で溶解した濃縮液状態でもよい。また、この薬剤供給装置14にセットされているA剤およびB剤は、いずれか一方のみが液体で、他方が個体(粉末または錠剤)でもよい。また、薬剤供給装置14は、粉末または錠剤状態でセットされたA剤およびB剤を、直接、混合タンクT1に供給してもよいし、少量の水で溶解して濃縮液にしたうえで混合タンクT1に供給してもよい。この場合、水供給装置12は、ラインLwを介して薬剤供給装置14に水を供給して、A剤およびB剤を水で溶解した濃縮液が混合タンクT1に供給される。いずれにしても、薬剤供給装置14は、透析液の薬剤を、必要な量だけ混合タンクT1に供給できればよい。また、本実施形態では、重炭酸透析液を例に挙げて説明しているが、透析液は、複数の薬剤を混合・希釈して生成されるのであれば、他の種類の透析液であってもよい。
【0024】
水供給装置12からの水および薬剤供給装置14からの薬剤は、入力ラインLiに出力される。入力ラインLiは、混合タンクT1に接続されており、当該入力ラインLiを介して混合タンクT1に薬剤および水が供給される。入力ラインLiには、制御部16により開閉駆動される第一入力バルブVi1が設けられている。
【0025】
輸送機構は、混合タンクT1で生成された透析液を貯留タンクT2に輸送する機構で、中継ラインLmや、第二入力バルブVi2、輸送ポンプ20等を備えている。中継ラインLmは、混合タンクT1と貯留タンクT2とを連結するラインで、当該中継ラインLm上には、輸送ポンプ20および第二入力バルブVi2が設けられている。制御部16は、この輸送ポンプ20を駆動して、混合タンクT1から貯留タンクT2に、透析液を輸送させる。また、輸送の際には、第二入力バルブVi2を開状態とする。
【0026】
中継ラインLmには、循環ラインLrが接続されている。循環ラインLrは、中継ラインLmと入力ラインLiとを連結するラインであり、当該循環ラインLr上には、循環用バルブVrが設けられている。薬剤および水を撹拌したい場合には、この循環ラインLrを介して、混合タンクT1内の液体を、タンクの内外に循環させる。すなわち、薬剤および水を撹拌したい場合には、循環用バルブVrを開状態、第一、第二入力バルブVi1,Vi2を閉状態にしたうえで、輸送ポンプ20を駆動する。これにより、混合タンクT1内の液体は、中継ラインLm、循環ラインLr、入力ラインLiを経て、混合タンクT1に戻ることになり、この液体の流入出により、混合タンクT1内の液体が撹拌される。これにより、溶解不良を防止して透析剤の残留をなくすことができる。
【0027】
出力機構は、貯留タンクT2に貯留された透析液を透析装置100に出力する機構で、出力ラインLoや、出力バルブVo等を備えている。出力ラインLoは、貯留タンクT2と透析装置100とを連結するラインで、当該出力ラインLo上には、出力バルブVoが設けられている。透析液を出力する際、すなわち、透析治療を実施している間は、出力バルブVoは、開状態が維持される。出力ラインLoには、廃棄ラインLdが接続されている。廃棄ラインLdは、出力ラインLoとドレンとを連結するラインで、当該廃棄ラインLd上には、廃棄用バルブVdが設けられている。透析治療終了後の残存透析液や、タンクT1,T2の洗浄に使用した液体(洗浄液およびすすぎ液)は、この廃棄ラインLdを介して廃棄される。
【0028】
制御部16は、上述した水供給装置12や薬剤供給装置14、各種バルブVi1,Vi2,Vo,Vr等の駆動を制御する。本実施形態において、制御部16は、貯留タンクT2から透析液を出力している間に、混合タンクT1で透析液を生成し、貯留タンクT2の透析液の残量が少なくなれば、混合タンクT1の透析液を貯留タンクT2に輸送するように、各種バルブの開閉状態を切り替えている。
図2は、この透析液供給システム10で6時間連続して透析治療を行う場合の各種バルブVi1,Vi2,Vo,Vrの開閉のタイミングを示すタイミングチャートである。
【0029】
透析治療を開始する際には、まず、混合タンクT1において透析液を生成する。透析液を生成する場合には、混合タンクT1への注水、混合タンクT1へのB剤投入、撹拌、混合タンクT1へのA剤投入、撹拌を順番に行う。具体的には、まず、混合タンクT1に、第一入力バルブVi1を開放して、一定量の水を注入する。この水の投入量は、混合タンクT1に設けられた液量センサ18での検知結果に基づいて制御される。続いて、第一入力バルブVi1を開放した状態で、B剤を投入する。B剤投入の際には、B剤とともに水も注入されるが、この水の量も、液量センサ18での検知結果に基づいて制御される。B剤投入後は、第一入力バルブVi1を閉鎖、循環用バルブVrを開放した状態で、輸送ポンプ20を駆動し、タンクT1内の液体を循環(撹拌)させる。撹拌が完了すれば、混合タンクT1内の濃度を濃度センサ(図示せず)で検知する。検知された濃度が規定の基準範囲にあれば、続いて、第一入力バルブVi1を開放、循環用バルブVrを閉鎖して、混合タンクT1にA剤を投入する。このA剤とともに注入される水の量も、液量センサ18での検知結果に基づいて制御される。A剤投入後は、再度、第一入力バルブVi1を閉鎖、循環用バルブVrを開放した状態で、輸送ポンプ20を駆動し、タンクT1内の液体を循環(撹拌)させる。そして、再度、濃度センサで、混合タンクT1内の濃度を検知し、検知された濃度に問題が無ければ、透析液の生成は完了となる。
【0030】
混合タンクT1において透析液が生成できれば、第二入力バルブVi2を開放するとともに輸送ポンプ20を駆動して、混合タンクT1から貯留タンクT2へ透析液を移送する。透析液が貯留タンクT2に移送できれば、透析治療を開始する。すなわち、出力バルブVoを開放して、貯留タンクT2に貯留された透析液を透析装置100へと出力する。以降、透析治療が終了となる6hまで、出力バルブVoを開放状態とし、一定量の透析液を透析装置100に送り続ける。なお、既述した通り、混合タンクT1では、1時間の透析治療に使用する量の透析液を生成している。したがって、貯留タンクT2において(N−1)h〜Nh(Nは、1〜6の整数)の間に出力する透析液(使用N)は、混合タンクT1においてN回目に生成した透析液(生成N)である。
【0031】
生成した透析液を貯留タンクT2に移送した後、混合タンクT1では、2回目の透析液の生成が開始される。生成後、貯留タンクT2内の透析液の残量が、規定の閾値を下回れば、生成された透析液を混合タンクT1から貯留タンクT2へと移送する。以降、同様の処理を繰り返し、合計で6回の透析液の生成・移送を行う。
【0032】
なお、こうした透析液の生成・出力に先だって、混合タンクT1および貯留タンクT2は、洗浄される。洗浄時には、まず、混合タンクT1に洗浄液を投入・貯留し、混合タンクT1を洗う。続いて、混合タンクT1の洗浄液を貯留タンクT2に送り、貯留タンクT2に、洗浄液を貯留する。貯留タンクT2が洗浄できれば、貯留されていた洗浄液をドレンへと排出する。続いて、水洗用の水を、混合タンクT1、貯留タンクT2に順次、送り、ドレンへと排出する。
【0033】
以上のように、本実施形態では、二つのタンクT1,T2を設け、一方を透析液を生成するタンクT1とし、他方を透析液を出力するためのタンクT2としている。かかる構成とするのは次の理由による。
【0034】
従来、透析液供給システムの多くは、透析液を連続的に生成し、連続的に供給していた。すなわち、従来の透析液供給システムでは、予め濃縮液状態にしたA剤およびB剤と水を、計量ポンプを用いて正確に計量してライン内に流し、ライン内で混合し、所望濃度の透析液を生成していた。こうした連続式の透析液供給システムの場合、液量を正確に計量して輸送できる計量ポンプが必要であった。しかし、一般に、計量ポンプは、非常に高価であり、また、こまめなメンテナンスが必要であり、小規模な施設での取り扱いが困難であった。
【0035】
そこで、一部では、まとまった量の薬剤および水をタンクに投入して透析液を生成するバッチ式の透析液供給システムが提案されていた。かかるバッチ式の透析液供給システムの場合、タンク側に液量センサを設けておけば、計量ポンプを用いる必要が無くなるため、システム全体の価格を低減でき、また、メンテナンスの手間を低減できる。しかしながら、従来のバッチ式の透析液供給システムでは、透析液を生成するタンクは一つしかなかった。そのため、多量の透析液を生成できなかった。
【0036】
すなわち、既述した通り、重炭酸透析液では、使用限度時間が定められている。かかる重炭酸透析液を、使用限度時間分以上、一つのタンクで生成したとしても、結局、使用限度時間で使いきれなかった透析液は、廃棄されることになる。つまり、一つのタンクで透析液を生成する構成の場合、使用限度時間(約2時間)分の治療で使用する量以上の透析液は、出力できないことになる。結果として、タンクを一つしか持たない透析液供給システムを用いた場合、連続してできる透析治療の時間は、使用限度時間未満になる。
【0037】
しかし、透析治療の時間は、患者の容体やライフスタイルによっては、より長時間連続して行うこともあり得る。特に、患者が睡眠をとっている時間に、長時間(例えば6時間等)の透析治療を行い、透析治療の頻度を減らしたいという要望がある。しかし、タンクを一つしか有さない従来の透析液供給システムでは、こうした患者の要望に十分に応えられなかった。
【0038】
そこで、本実施形態では、既述したように、二つのタンクT1,T2を設け、混合タンクT1で透析液を生成し、生成された透析液を貯留タンクT2に貯留する構成としている。かかる構成とすることで、使用制限時間以内に生成された透析液を、途切れることなく、連続して出力することができる。結果として、患者の容体やライフスタイルに合わせて、治療時間の自由度を高めることができる。また、本実施形態では、混合タンクT1に液量センサ18を設けているため、水等を輸送するポンプに計量機能を持たせる必要が無く、システム全体の価格を低減でき、また、メンテナンスの手間を低減できる。
【0039】
ここで、特許文献3には、二つのタンクを設け、透析液を生成するタンクおよび透析液を出力するタンクを順次、切り替える技術が開示されている。かかる技術でも、使用制限時間以内に生成された透析液を、途切れることなく、連続して出力することができる。しかしながら特許文献3の技術は、一つのタンクに、透析液生成用タンクおよび透析液出力用タンクの両方の機能を持たせている。その結果、特許文献3の技術の場合、透析液生成用タンクとして機能するのに必要な各種バルブやセンサおよび透析液貯留用タンクとして機能するのに必要な各種バルブやセンサを2タンク分設けなければならなかった。一方、本実施形態では、一方のタンクT1には透析液生成用の、他方のタンクT2には透析液出力用の機能のみを持たせている。そのため、透析液生成用タンクとして機能するのに必要な各種バルブやセンサは、タンク一つ分だけ設ければよく、また、透析液貯留用タンクとして機能するのに必要な各種バルブやセンサも、タンク一つ分だけ設ければよい。結果として、本実施形態によれば、構成がよりシンプルとなり、システム全体のコストをより低減できる。
【0040】
なお、これまで説明した構成は、一例であり、透析液を生成する混合タンクT1と、混合タンクで生成された透析液を貯留して出力する貯留タンクT2と、を備えるのであれば、その他の構成は、適宜、変更されてもよい。例えば、本実施形態では、薬剤(A剤およびB剤)は、薬剤供給装置14を用いて自動投入されているが、薬剤は、手動投入されてもよい。また、本実施形態では、混合タンクT1から貯留タンクT2に透析液を送るために輸送ポンプ20を設けているが、ポンプを設けず、タンク間の落差を利用して透析液を移送させてもよい。また、上述の実施形態では、混合タンクT1内の液体を内外に循環させることで、混合タンクT1内の液体を撹拌しているが、撹拌方法は、これに限るものではなく、他の方法で撹拌してもよい。例えば、タンク内に撹拌用の羽根車を設けて撹拌してもよい。