(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6452435
(24)【登録日】2018年12月21日
(45)【発行日】2019年1月16日
(54)【発明の名称】S撚りされた糸からの円錐形の綾巻きパッケージの製造
(51)【国際特許分類】
B65H 54/28 20060101AFI20190107BHJP
B65H 54/02 20060101ALI20190107BHJP
【FI】
B65H54/28 C
B65H54/02 D
B65H54/02 C
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-258038(P2014-258038)
(22)【出願日】2014年12月19日
(65)【公開番号】特開2015-120600(P2015-120600A)
(43)【公開日】2015年7月2日
【審査請求日】2017年9月27日
(31)【優先権主張番号】10 2013 021 972.8
(32)【優先日】2013年12月20日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】513209338
【氏名又は名称】ザウラー ジャーマニー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Saurer Germany GmbH & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】アンスガー パッシェン
【審査官】
佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−236169(JP,A)
【文献】
特開平11−292394(JP,A)
【文献】
特開2000−007219(JP,A)
【文献】
独国特許出願公開第102008015908(DE,A1)
【文献】
米国特許第05002234(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 54/00−54/553
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
S撚りされた糸から円錐形の綾巻きパッケージ(5)を製造する方法であって、
S撚りされた前記糸を、p巻きが形成されるように巻管(18)に巻き取り、
対称比、つまり操作側から見て前記綾巻きパッケージ(5)の左側端面と右側端面との間における綾振り速度の比を、パッケージ形成過程中に増大させることを特徴とする、S撚りされた糸から円錐形の綾巻きパッケージを製造する方法。
【請求項2】
S撚りされた前記糸を、円錐形の巻管(18)に巻き取る、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記対称比を、指数的に、直線的に又は階段状に増大させる、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
円錐形の綾巻きパッケージ(5)であって、該円錐形の綾巻きパッケージ(5)は、巻管(18)と、S撚りされた糸から成る糸体とを有しており、この場合前記糸体がp巻きとして形成されていて、綾巻きパッケージ(5)の径方向で見て下の糸層の円錐度が、綾巻きパッケージ(5)の径方向で見て上の糸層の円錐度よりも小さいことを特徴とする、円錐形の綾巻きパッケージ(5)。
【請求項5】
前記巻管は円錐形の巻管(18)として形成されている、請求項4記載の円錐形の綾巻きパッケージ(5)。
【請求項6】
S撚りされた糸からp巻きとして形成された円錐形の綾巻きパッケージ(5)を製造する巻取り装置(4)であって、円錐形の巻管(18)を保持するためのパッケージフレーム(8)と、前記綾巻きパッケージ(5)において糸(16)を綾振りするための、個別モータによって駆動される綾振り装置(10)と、前記綾巻きパッケージ(5)を駆動するための装置と、を有している巻取り装置(4)において、
前記綾振り装置(10)を制御するための制御装置(28)が設けられていて、該制御装置(28)は、対称比、つまり操作側から見て前記綾巻きパッケージ(5)の左側端面と右側端面との間における綾振り速度の比が、パッケージ形成過程中に増大するように形成されていることを特徴とする、巻取り装置(4)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、S撚りされた糸から円錐形の綾巻きパッケージを製造する方法に関する。本発明はさらに、綾巻きパッケージ及び綾巻きパッケージを製造する巻取り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、円錐形の綾巻きパッケージを製造する巻取り装置を備えた、巻取り機の作業部が開示されている。この巻取り機の作業部において、リング紡績機で製造された紡績コップが、大きな体積の綾巻きパッケージに巻き返される。このような綾巻きパッケージはしばしば、円錐形の綾巻きパッケージとして形成されている。すなわち綾巻きパッケージは、一方の端面に向かって小さくなる直径を有し、他方の端面に向かって大きくなる直径を有している。後続の処理において綾巻きパッケージの糸は、小さな直径の側から引き出される。これによって、綾巻きパッケージの糸体における、引き出される糸の摩擦は小さくなる。
【0003】
巻取り装置は、綾巻きパッケージもしくは巻管を保持するためのパッケージフレームと、綾巻きパッケージにおいて糸を綾振りするための、個別モータによって駆動されるフィンガ糸ガイドとして形成された綾振り装置と、綾巻きパッケージを駆動するための、パッケージ駆動ローラとして形成された装置と、を有している。円錐形の綾巻きパッケージの両端面における異なった周囲長さに基づいて、大きな直径を有する側では、小さな直径を有する側に比べてより多くの糸が巻き取られる。糸の整然とした配置を保証するために、綾振り装置は、大きな直径を有する側において、小さな直径を有する側に比べて低い速度を有することが必要である。操作側から見て綾巻きパッケージの左側端面と右側端面との間における綾振り速度の比は、円錐度ファクタ又は対称比と呼ばれる。
【0004】
単繊維から成る紡績された糸は、Z撚りされた糸又はS撚りされた糸として形成することができる。Z撚りされた糸では、糸における単繊維は、糸が垂直に保持されている場合、文字Zの斜線の方向に位置している。S撚りされた糸は、それとは逆向きの撚りを有している。そして単繊維は、糸が垂直に保持されている場合、文字Sの斜線の方向に位置している。糸は多くの場合Z撚りされているので、Z撚りされた糸では通常、撚りの明確な記載は省略される。
【0005】
巻取り装置は通常、綾巻きパッケージの、小さな直径を有する端面側が、操作側から見て巻取り装置の左側に配置され、かつ相応に綾巻きパッケージの、大きな直径を有する端面側が、操作側から見て巻取り装置の右側に配置されているように形成されている。上に述べた定義によれば、綾巻きパッケージが巻成される対称比は、1よりも大きい。この配置形態では、いわゆるp巻き(p-Wicklung)された円錐形の綾巻きパッケージが形成されている。つまり綾巻きパッケージの小径部を介して糸が引き出される場合に、巻成体に対して接線方向に保持された糸は、綾巻きパッケージの小径部への視線方向で、文字pの形を示す。p巻きで綾巻きパッケージに巻かれたZ撚りされた糸に対しては、最適な引出し特性が生じる。糸が綾巻きパッケージ表面からの引出し時に持ち上げられる前に、糸はまず円弧状に綾巻きパッケージの周囲に位置している。そして引出し時に糸は回転方向において一緒に転動し、糸の撚りを強める方向でさらに撚られる。
【0006】
S撚りされた糸をp巻きされた綾巻きパッケージから引き出す場合には、転動によって加えられる撚りは、糸撚りとは逆向きに作用し、その結果糸の撚りは解されてしまう。これによって、より強く繊維が糸から突出することになる。このような突出した繊維によって、個々の糸は互いに絡まることがあり、これにより、綾巻きパッケージからの引出し時に困難を生ぜしめることがある。さらに、糸のS撚りはp巻きの引出し時に糸バルーンの巻込みを生ぜしめることがあり、これによって糸の絡まりがさらに助長される。
【0007】
S撚りされた糸を綾巻きパッケージから最適に引き出すことができるようにするために、綾巻きパッケージをq巻き(q-Wicklung)として形成することができる。綾巻きパッケージの小径部を介して糸を引き出す場合、巻成体に対して接線方向で保持された糸は、綾巻きパッケージの小径部への視線方向において、文字qの形を示す。円錐形の綾巻きパッケージをq巻きで製造するために、綾巻きパッケージは、巻取り時に操作側から見て、左側に大径部がかつ右側に小径部が形成されるように巻成されねばならない。すなわち対称比は、1よりも小さい。つまり円錐形の巻管は、p巻きの巻成に比べて逆向きにセットされねばならない。そのためにはパッケージフレームの改造が必要である。
【0008】
特許文献2には、円筒形の巻管に綾巻きパッケージを巻成するための巻取り装置が開示されている。円錐形の綾巻きパッケージを製造するために、Z撚りされた糸では、パッケージ形成過程中に対称比は値1を起点として高められる。これによって、p巻きの綾巻きパッケージが形成される。S撚りされた糸では、対称比はパッケージ形成過程中に値1を起点として低下させられる。これによって、q巻きの円錐形の綾巻きパッケージが形成される。円筒形の巻管に基づいて、確かに、巻管収容部はZ撚りされた糸に対してもS撚りされた糸に対しても変更なしに使用することができるが、しかしながらパッケージフレームの特別な構成が必要である。q巻きで綾巻きパッケージを巻成する場合には、水平に対するパッケージフレームの傾きが必要であり、この傾きは、p巻きを巻成するための巻取り装置における通常の値を超過するものである。
【0009】
さらに特許文献1に基づいて、円錐形の巻管にZ撚りされた糸をp巻きで巻成する際に、綾巻きパッケージの所望の円錐度のために必要な値よりも大きな対称比で巻成を開始し、次いでこの対称比をパッケージ形成過程中に所望の値に低下させることが公知である。このようにすることによって、パッケージ形成過程の開始時により多くの糸が、大きな直径を有する側に巻成され、これにより駆動される直径をこの側に移動させることができるようになっている。これによって、回転速度の変化、ひいては反転点での綾振り時におけるドラッグエラーが減じられる。特許文献1には、S撚りされた糸の巻成については記載がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】独国特許出願公開第102008015907号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102008015908号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ゆえに本発明の課題は、良好な引出し特性を有し、かつZ撚りされた糸のための汎用の巻取り装置に対する大きな変更なしに製造することができる、S撚りされた糸による円錐形の綾巻きパッケージを、巻成する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題を解決するために、本発明に係る、S撚りされた糸から円錐形の綾巻きパッケージを製造する方法では、S撚りされた糸を、p巻きが形成されるように巻管に巻き取り、対称比、つまり操作側から見て綾巻きパッケージの左側端面と右側端面との間における綾振り速度の比を、パッケージ形成過程中に増大させるようにした。
【発明の効果】
【0013】
本発明は主として、互いに組み合わせられる2つの認識に基づいている。一方において、小さなパッケージ直径ではS撚りされた糸の引出し特性は、p巻きによっても受け入れ可能であり、他方において、引出し時における糸の引っ掛かりは、可能な限り大きな対称比による巻成によって十分に回避することができる。しかしながら綾巻きパッケージの大きな対称比もしくは強い円錐度は、最大直径を制限する。また小さい綾巻きパッケージ直径は、糸処理の生産性を低下させ、ゆえに望まれていない。従って本発明によれば、綾巻きパッケージは、パッケージ形成過程の開始時には小さな対称ファクタで巻成される。直径の増大に連れて、対称比は高められる。このようにして、十分な直径と良好な引出し特性を兼ね備えた綾巻きパッケージが生じる。
【0014】
p巻きされた綾巻きパッケージが巻成されるので、Z撚りされた糸から成る綾巻きパッケージのための汎用のパッケージフレームを使用することができる。単に汎用の巻取り装置の制御装置を、パッケージ形成過程にわたって増大する対称比を設定できるように、適合させるだけでよい。このことは通常、ソフトウェアを適合させることによって可能である。
【0015】
好適な態様では、S撚りされた糸を円錐形の巻管に巻き取る。このようにすると、既に、巻管の円錐度に相応して1よりも大きな対称比で巻成を開始することができ、その結果、パッケージ形成過程の終わりには、円筒形のパッケージにおけるよりも大きな対称ファクタが可能になる。これによって引出し特性はさらに改善される。
【0016】
対称比は、指数的に、直線的に又は階段状もしくは飛躍的に増大させることができる。
【0017】
本発明はさらに、本発明に係る方法を用いて製造された円錐形の綾巻きパッケージにも関する。このような円錐形の綾巻きパッケージは、巻管と、S撚りされた糸から成る糸体とを有しており、この場合前記糸体がp巻きとして形成されていて、下の糸層の円錐度が、上の糸層の円錐度よりも小さく設定されている。
【0018】
本発明に係る円錐形の綾巻きパッケージの巻管は、好ましくは、円錐形の巻管として形成されている。
【0019】
本発明はさらにまた、p巻きとして形成された円錐形の綾巻きパッケージを製造する巻取り装置に関し、当該巻取り装置は、円錐形の巻管を保持するためのパッケージフレームと、綾巻きパッケージにおいて糸を綾振りするための、個別モータによって駆動される綾振り装置と、綾巻きパッケージを駆動するための装置とを有しており、綾振り装置を制御するための制御装置が設けられていて、該制御装置は、対称比、つまり操作側から見て綾巻きパッケージの左側端面と右側端面との間における綾振り速度の比を、パッケージ形成過程中に増大させることができるように形成されている。
【0020】
巻取り装置には、入力手段を対応配置させることができ、この入力手段を介して操作員は、パッケージ形成過程中における対称比の上昇する推移を設定することができる。この推移もしくは変化は、巻取り装置に対応配置された記憶手段において記憶することができる。制御装置は、設定された推移を綾巻きパッケージ直径に関連して自動的に調節するように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】綾巻きパッケージを製造する繊維機械の1つの作業部を概略的に示す側面図である。
【
図2】
図1に示した巻取り装置を斜め前から見た図である。
【
図5】対称比の階段状もしくは飛躍的な推移を示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。
【0023】
図1には、綾巻きパッケージを製造する繊維機械(図示の実施形態では自動綾巻きワインダ1)の作業部2が側面図で概略的に示されている。このような自動綾巻きワインダ1の作業部2において、リング精紡機において製造された比較的僅かな糸材料を有する紡績コップ3が、大きな体積の綾巻きパッケージ5に巻き返される。綾巻きパッケージ5はその完成後に、好ましくは綾巻きパッケージ交換装置である自動作動式のサービスユニット(図示せず)を用いて、機械長さ方向に延在する綾巻きパッケージ搬送装置7に引き渡され、機械端部側に配置されたパッケージ積込みステーション又はこれに類した箇所に搬送される。
【0024】
このような自動綾巻きワインダ1は、通常さらに、コップ・巻管搬送システム6として形成された補給装置(Logistikeinrichtung)を有している。このコップ・巻管搬送システム6においては、搬送皿11に載って紡績コップ3もしくは空管が循環する。このコップ・巻管搬送システム6のうち、
図1には単に、コップ供給区間24、可逆式に駆動可能な貯え区間25、作業部2に通じる横搬送区間26及び空管戻し区間27だけが示されている。
【0025】
自動綾巻きワインダ1の各作業部2は、制御装置、いわゆる作業部計算機28を有しており、この作業部計算機28は、特にバス29を介して自動綾巻きワインダ1の中央制御ユニット30に接続され、かつ制御ライン15,35を介して巻取り装置4の個別駆動装置14,33に接続されている。
【0026】
巻取り装置4は特にパッケージフレーム8を有しており、このパッケージフレーム8は、
図1に略示するように、少なくとも綾巻きパッケージ5の回転軸線に対して平行に延びる旋回軸12を中心にして可動に支持されている。さらにパッケージフレーム8は、原則的に公知でありゆえに図面を見易くするために図示しないが、旋回軸12に直交して延びる別の旋回軸を中心にして、制限されて回転可能に支持されていてよい。図示の実施形態では、パッケージフレーム8は、円錐形の綾巻きパッケージを巻成するための円錐形の巻管を受容できるように形成されている。
【0027】
図1においてさらに示すように、パッケージフレーム8に自由回転可能に保持された綾巻きパッケージ5は、巻取り運転中にその表面がパッケージ駆動ローラ9に接触しており、このパッケージ駆動ローラ9は、個別駆動装置である電動機33によって個別に駆動される。この場合電動機33は、制御ライン35を介して作業部計算機28に接続されている。
【0028】
さらに、巻取り過程中に糸16を綾振りするために、綾振り装置(Verlegevorrichtung)10が設けられている。
図1には単に略示されているこのような綾振り装置10は、好ましくは、フィンガ糸ガイド13を有しており、このフィンガ糸ガイド13は、可逆式の個別駆動装置14によって作動させられて、綾巻きパッケージ5に乗り上げる糸16を、綾巻きパッケージ5の両端面の間において高速で綾振りする。この場合糸ガイド駆動装置14は、制御ライン15を介して同様に作業部計算機28に接続されている。
【0029】
このような作業部2は、通常さらに、糸継ぎ装置42、好ましくは空気力式のスプライシング装置、下糸を取り扱うグリッパ管43及びサクションノズル17を有しており、このサクションノズル17を用いて、綾巻きパッケージ5に乗り上げた上糸を受容して糸継ぎ装置42に挿入することができる。
【0030】
図2には、1つの作業部2の巻取り装置4が、斜め正面から見た斜視図で示されている。つまり
図2は、操作側から見た巻取り装置4を示す。図示のように、各作業部2は、入力装置32を備えた作業部ハウジング31を有しており、この作業部ハウジング31は、特に作業部計算機28を収容している。作業部ハウジング31にはさらに巻取り装置4が固定されている。この巻取り装置4は、主として、綾巻きパッケージ5の円錐形の巻管18を保持するためのパッケージフレーム8と、円錐形の巻管18もしくはこの巻管18に形成された綾巻きパッケージ5を回転させるためのパッケージ駆動ローラ9と、綾巻きパッケージ5に乗り上げる糸16を綾振りするための綾振り装置10と、から成っている。
【0031】
綾振り装置10は、フィンガ糸ガイド13を有しており、このフィンガ糸ガイド13の個別駆動装置14は、制御ライン15を介して作業部計算機28に接続されている。フィンガ糸ガイド13は、作業部計算機28によって確定されて制御可能であり、これにより特に、糸綾振り速度を正確に調節することができる。
【0032】
パッケージ駆動ローラ9もまた同様に、個別駆動装置33を有しており、この個別駆動装置33は、制御ライン35を介して作業部計算機28に接続されていて、これによって個別駆動装置33の確定された制御が可能である。少なくとも1つの旋回軸12を中心にして制限されて回転可能に支持されているパッケージフレーム8は、2つのパッケージフレームアーム20,21を有しており、両パッケージフレームアーム20,21はそれぞれ、回転可能に支持された巻管受容皿を備えている。
【0033】
円錐形の巻管18へのS撚りされた糸16の巻取りは、製造される円錐形の綾巻きパッケージ5の均一なパッケージ形成を保証するために、巻管18のジオメトリを考慮して行われる。そのために、巻管18の円錐度に関連して、速度比が計算される。この速度比は、綾巻きパッケージ5の両端面における糸綾振り速度の比を表し、作業部計算機28又は中央制御ユニット30において予め調節される。以下において対称ファクタSと呼ぶこの速度比は、円錐形の巻管18の両端面の間において該巻管18に巻き取られる糸16の量に、ひいては綾巻きパッケージ5のパッケージ形成に影響を及ぼす。円錐形の巻管18は、p巻き(p-Wicklung)で綾巻きパッケージ5を巻成するためにセットされる。つまり小径の側は左側に配置され、大径の側は右側に配置されている。この場合左側における糸綾振り速度は、右側におけるよりも高く調節される。対称比(Symmetrieverhaeltnis)は、操作側から見て綾巻きパッケージの左側端面と右側端面との間における綾巻き速度の比として定義されている。従って、図示の実施形態では、円錐形の巻管18への綾巻きパッケージ5の巻成時に、1よりも大きい、対称比Sのスタート値が生ぜしめられる。糸綾振り速度は、所定の対称比Sに関連して、巻管18の一方の側から他方の側へのフィンガ糸ガイド13の綾振り行程内において変化し、その結果、巻管18に巻き取られた糸16の巻き取られた糸量は、巻管18の幅に関して相応に変化する。パッケージ幅にわたる行程内における糸綾振り速度の適合は、巻成体の均一な構成を得るのに役立つ。
【0034】
図3〜
図5は、綾巻きパッケージ5の直径Dに関連した対称比Sの可能な変化もしくは推移(Verlauf)を示す。図示されたすべての推移は、円錐形の巻管18にp巻きで円錐形の綾巻きパッケージ5を巻成することに関している。対称比Sのスタート値は、すべての図において既に1よりも大きい。円筒形の巻管にS撚りされた糸をp巻きで巻成する場合、対称比Sのスタート値は、好ましくは1に等しい。いずれにせよ、直径Dの増大につれて対称比Sは大きくなる。これによって綾巻きパッケージ5もしくは綾巻きパッケージ5の個々の糸層の円錐度は、パッケージ形成過程(Spulenreise)にわたって相応に増大する。対称比Sの増大は、
図3及び
図4におけるように連続的に行うこと、又は
図5におけるように階段状に行うことが可能である。適合は、
図3におけるように直線的に行うことも、又は
図4におけるように指数的に行うことも可能である。
図4では、対称比Sは、直径Dが小さい場合には僅かしか高くならず、大きな直径では相応に大きくなる。つまりこの場合、綾巻きパッケージ直径Dに関連して対称比Sの逓増的な適合が行われる。
【0035】
対称比の推移は、作業部計算機28又は中央制御ユニット30において、操作員によって設定することができる。そのために特別な入力ルーチンが存在している。推移は例えば数値表として又は関数として設定することができる。次いで推移は、作業部計算機28又は中央制御ユニット30のメモリにおいて記憶される。作業部計算機28はこの推移を用いてフィンガ糸ガイド13の個別駆動装置14を制御し、対称比Sはパッケージ形成過程中に、設定された推移に相応して増大させられる。
【符号の説明】
【0036】
1 繊維機械、自動綾巻きワインダ、 2 作業部、3 紡績コップ、 4 巻取り装置、 5 綾巻きパッケージ、 6 コップ・巻管搬送システム、 7 綾巻きパッケージ搬送装置、 8 パッケージフレーム、 9 パッケージ駆動ローラ、 10 綾振り装置、 11 搬送皿、 12 旋回軸、 13 フィンガ糸ガイド、 14 個別駆動装置、糸ガイド駆動装置、 15 制御ライン、 16 糸、 17 サクションノズル、 18 巻管、 20,21 パッケージフレームアーム、 24 コップ供給区間、 25 貯え区間、 26 横搬送区間、 27 空管戻し区間、 28 作業部計算機、 29 バス、 30 中央制御ユニット、 31 作業部ハウジング、 32 入力装置、 33 個別駆動装置、電動機、 35 制御ライン、 42 糸継ぎ装置、 43 グリッパ管