特許第6452511号(P6452511)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6452511
(24)【登録日】2018年12月21日
(45)【発行日】2019年1月16日
(54)【発明の名称】アースドリルにおける中子支持構造
(51)【国際特許分類】
   E21B 17/07 20060101AFI20190107BHJP
【FI】
   E21B17/07
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-54423(P2015-54423)
(22)【出願日】2015年3月18日
(65)【公開番号】特開2016-173011(P2016-173011A)
(43)【公開日】2016年9月29日
【審査請求日】2018年2月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(72)【発明者】
【氏名】冨田 庸公
(72)【発明者】
【氏名】高山 浩司
(72)【発明者】
【氏名】奥村 高好
【審査官】 荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−054769(JP,A)
【文献】 実開平02−097487(JP,U)
【文献】 特開2001−164859(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 1/00−49/10
F16B 5/00−5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下端に掘削具を装着したケリーバをケリーバ回転駆動装置によって回転させながら掘削具を下降させて掘削作業を行うアースドリルにおける前記ケリーバ回転駆動装置のドライブ軸内に、小径ケリーバ用の中子を挿入して支持する中子支持構造において、前記ドライブ軸の上端面に、前記中子の上端部外周に設けた支持フランジを載置し、該支持フランジの上面にリング状の押さえブラケットを配置し、該押さえブラケットに設けたボルト挿通孔及び前記支持フランジに設けたボルト遊嵌孔を挿通した支持ボルトを前記ドライブ軸の上端面に設けた雌ねじ孔に螺着し、前記支持フランジをドライブ軸の上端面と押さえブラケットとの間に挟着するとともに、前記支持ボルトのボルト軸とボルト遊嵌孔との間の寸法を、ドライブ軸の内面に設けられたキー溝と中子の外面に設けられたキーとの遊び寸法より大きくボルト軸が移動可能な形状に形成したことを特徴とするアースドリルにおける中子支持構造。
【請求項2】
前記押さえブラケットの下面に、下端面が前記ドライブ軸の上端面に当接して前記支持ボルトの締付量を規制するスペーサが設けられていることを特徴とする請求項1記載のアースドリルにおける中子支持構造。
【請求項3】
前記押さえブラケットの上面にゴム製リング材を設けたことを特徴とする請求項1又は2記載のアースドリルにおける中子支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アースドリルにおける中子支持構造に関し、詳しくは、ケリーバの軸線方向に突設したキーをケリーバ回転駆動装置のドライブ軸に形成したキー溝に係合させて回転力を伝達するアースドリルにおける中子支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
アースドリルは、一般に、下端に掘削具を装着したケリーバをケリーバ回転駆動装置のドライブ軸で回転させながら地中に押し込んで掘削作業を行うもので、円筒状のドライブ軸に形成したキー溝に、ケリーバに突設したキーを係合させてケリーバ回転駆動装置からケリーバへ回転力を伝達するようにしている。キー溝の周方向開口幅は、キーの周方向幅より大きく形成され、ドライブ軸内へのケリーバの挿入を容易するための遊びを設けている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、通常のケリーバに代えて外径の小さなケリーバ(小径ケリーバ)を使用する際には、キーを形成した外面がドライブ軸の内径に対応し、キー溝を形成した内面が小径ケリーバの外径に対応した円筒状の中子をドライブ軸内に挿入し、中子内に小径ケリーバを挿入するようにしている。押込力及び回転力は、ドライブ軸から中子を介して小径ケリーバに伝達される。中子のキーの周方向幅も、前記同様に、ドライブ軸のキー溝の幅に比べて小さく形成され、遊びが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−11199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のような中子をドライブ軸にボルトで直接支持すると、キーとキー溝とに遊びがあるため、ドライブ軸のキー溝から中子のキーに回転力が伝達される前に、ドライブ軸の回転力がボルトを介して中子に伝達される状態になることがある。このため、ボルトに剪断力が作用してボルトが破損するおそれがある。また、ドライブ軸上部に設けられているアッパバッファに中子をボルトで支持すると、アッパバッファ自体が破損するおそれがある。
【0006】
そこで本発明は、ボルトの破損を防止しながら中子をドライブ軸内に確実に支持することができる中子支持構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明のアースドリルにおける中子支持構造は、下端に掘削具を装着したケリーバをケリーバ回転駆動装置によって回転させながら掘削具を下降させて掘削作業を行うアースドリルにおける前記ケリーバ回転駆動装置のドライブ軸内に、小径ケリーバ用の中子を挿入して支持する中子支持構造において、前記ドライブ軸の上端面に、前記中子の上端部外周に設けた支持フランジを載置し、該支持フランジの上面にリング状の押さえブラケットを配置し、該押さえブラケットに設けたボルト挿通孔及び前記支持フランジに設けたボルト遊嵌孔を挿通した支持ボルトを前記ドライブ軸の上端面に設けた雌ねじ孔に螺着し、前記支持フランジをドライブ軸の上端面と押さえブラケットとの間に挟着するとともに、前記支持ボルトのボルト軸とボルト遊嵌孔との間の寸法を、ドライブ軸の内面に設けられたキー溝と中子の外面に設けられたキーとの遊び寸法より大きくボルト軸が移動可能な形状に形成したことを特徴としている。
【0008】
さらに、本発明のアースドリルにおける中子支持構造は、前記押さえブラケットの下面に、下端面が前記ドライブ軸の上端面に当接して前記支持ボルトの締付量を規制するスペーサが設けられていること、また、前記押さえブラケットの上面にゴム製リング材を設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明のアースドリルにおける中子支持構造によれば、中子の支持フランジに設けたボルト遊嵌孔をキー溝とキーとの遊び寸法より大きく形成しているので、キー溝とキーとが係合して回転力を伝達する状態になるまで、ボルト遊嵌孔内を支持ボルトが移動することができ、支持ボルトに回転力が作用することがなく、支持ボルトの破損を防止できる。また、支持ボルトの締付量を規制することにより、ドライブ軸の上端面と押さえブラケットとの間で支持フランジを移動可能な状態で挟着することができ、中子を確実に回動させてキー溝とキーとを確実に当接させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明のアースドリルにおける中子支持構造の一形態例を示す断面図である。
図2】要部の分解斜視図である。
図3】要部の平面図である。
図4図3のIV−IV断面図である。
図5図3のV−V断面図である。
図6図3のVI−VI断面図である。
図7】アースドリルの一例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
まず、図7に示すように、アースドリルは、クローラクレーンからなるベースマシン11に設けられたブーム12の先端部からケリーバ13を回転可能に吊持するとともに、ブーム12の基部からシリンダ14などでケリーバ回転駆動装置15を支持し、該ケリーバ回転駆動装置15に設けられている中空円筒状のドライブ軸内に挿通したケリーバ13の下端部に掘削バケットや拡底バケット16を装着している。
【0012】
アースドリルによる縦穴の形成は、ケリーバ回転駆動装置15でケリーバ13を回転させることによって掘削バケットや拡底バケット16を回転させながら掘削バケットや拡底バケット16を地中に押し込んで掘削する工程と、掘削バケットや拡底バケット16を引上げて掘削した土砂を排出する工程とを交互に繰り返すことによって行われる。
【0013】
通常、ケリーバ回転駆動装置15のドライブ軸とケリーバ13とは、対応した形状を有するものが用いられるが、何らかの事情で通常使用するケリーバ13より細いケリーバ(以下、小径ケリーバという。)を使用する際には、ドライブ軸内に小径ケリーバに対応した中子を挿入し、回転力や押込力を中子を介して小径ケリーバに伝達するようにしている。
【0014】
図1乃至図6は、ロッキング式のドライブ軸内に中子を挿入して支持した一形態例を示している。ケリーバ回転駆動装置15は、油圧モータ17の回転を減速ギア18を介してドライブ軸19を回転駆動するもので、ドライブ軸19は、中空円筒状に形成された内周面の周方向の3箇所に、上下方向に連続したキー溝20が等間隔で設けられている。また、ドライブ軸19の上端面には、中子取付用の支持ボルト21を螺着するための雌ねじ孔22が周方向の6箇所に設けられている。
【0015】
ドライブ軸19に中子23を装着する際には、中子23をドライブ軸19内に支持するための押さえブラケット24と制震用のゴム製リング材25とを使用する。中子23は、小径ケリーバ26が挿通される中空円筒状の中子本体23aと、該中子本体23aの上端部外周に設けられた支持フランジ23bとを有しており、中子本体23aの外周面には、前記キー溝20に対応するキー27が設けられ、中子本体23aの内周面には、小径ケリーバ26の外周面に設けられているキー(以下、小径キーという)28に対応したキー溝(以下、小径キー溝という)29が周方向の3箇所に、等間隔で上下方向に連続して設けられている。
【0016】
また、中子23の前記キー27の周方向寸法は、ドライブ軸19の前記キー溝20の周方向寸法より小さく形成し、キー溝20とキー27との間に遊びを設けることにより、ドライブ軸19内への中子23の挿入を容易に行えるようにしている。
【0017】
前記支持フランジ23bには、ドライブ軸19の前記雌ねじ孔22に対応した位置に、前記支持ボルト21が移動可能な状態で挿通するボルト遊嵌孔30が設けられている。このボルト遊嵌孔30は、前記支持ボルト21のボルト軸とボルト遊嵌孔30の内面孔壁との間の寸法を、前記キー溝20と前記キー27との間に設定された遊び寸法より大きくボルト軸が移動可能に形成している。
【0018】
押さえブラケット24は、前記支持フランジ23bをドライブ軸19の上端面との間で挟着して中子23をドライブ軸19内に支持するためのもので、支持フランジ23bと同程度の厚さを有するリング状に形成されている。この押さえブラケット24には、前記雌ねじ孔22及び前記ボルト遊嵌孔30に対応した位置に支持ボルト挿通孔31が6箇所に設けられるとともに、前記ゴム製リング材25を固着するための固定ボルト32が螺着する雌ねじ部33が6箇所に設けられている。
【0019】
また、押さえブラケット24の下面には、前記支持ボルト21の締付量を規制するスペーサ34が周方向の3箇所に設けられるとともに、前記支持フランジ23bの外周には、スペーサ34が通過可能な切欠部35が設けられている。このスペーサ34は、支持フランジ23bに押さえブラケット24を重ねて支持ボルト21を前記雌ねじ孔22に締め付ける際に、スペーサ34の下端面がドライブ軸19の上端面に当接し、ドライブ軸19の上端面と押さえブラケット24との間で支持フランジ23bが移動可能な状態の挟着力になるように支持ボルト21の締付量を規制する。
【0020】
押さえブラケット24の上に固定ボルト32でカラー36を介して固着されるゴム製リング材25は、施工時にドライブ軸19、中子23、押さえブラケット24、小径ケリーバ26の衝突や擦れなどによって発生する振動を抑えて周辺の騒音を低減するために設けられている。
【0021】
ロッキング式の小径ケリーバ26の外周面には、中子23の前記小径キー溝29より僅かに幅狭の押し込み部37と、該押し込み部37の上端におけるドライブ軸19の回転方向前端部から上方に突設した前記小径キー28とが設けられている。小径ケリーバ26は、小径キー溝29に押し込み部37を挿通して中子23の下方に通過した状態まで中子23内に挿入される。この状態では、小径キー28は、図3において、符号Aで示すように、小径キー溝29の回転方向前端部に位置している。
【0022】
油圧モータ17を掘削方向に作動させてドライブ軸19を、図3において時計回りに回転させると、押し込み部37が小径キー溝29の下方から中子23の下端面下方に移動するとともに、小径キー28は、図3において、符号Bで示すように、小径キー溝29の回転方向後端部に移動する。これにより、中子23の下面と押し込み部37の上端面とが係合して押込力が伝達され、小径キー28と小径キー溝29の回転方向後端部とが係合して回転力が伝達される。これにより、ドライブ軸19の押込力と回転力とが中子23から小径ケリーバ26に伝達されて所定の掘削作業が行われる。
【0023】
このとき、小径ケリーバ26の押込力は、中子23の支持フランジ23bを介して押さえブラケット24から支持ボルト21に軸方向の引抜力として作用するので、支持ボルト21が十分に耐えることができる。一方、小径ケリーバ26の回転力は、キー溝20とキー27との係合、小径キー溝29と小径キー28との係合により、ドライブ軸19から中子23を介して小径ケリーバ26に伝達される。
【0024】
このとき、支持フランジ23bに設けた支持ボルト21の挿通孔が、従来の一般的なボルト挿通孔に比べて大きく、キー溝20とキー27との間に設定されている遊び寸法より大きくボルト軸が移動可能な形状のボルト遊嵌孔30となっているので、ドライブ軸19の回転開始とともに支持ボルト21が回転方向に移動したときに、ボルト軸がボルト遊嵌孔30の孔壁に当接する前にキー溝20とキー27とが係合することになる。したがって、キー溝20とキー27との係合によってドライブ軸19から中子23に回転力が伝達されるので、支持ボルト21に回転力が作用することがなくなり、支持ボルト21に大きな剪断力が作用して破損するおそれがなくなる。
【0025】
さらに、スペーサ34を設けることにより、中子23の支持フランジ23bを回転可能な状態で支持ボルト21を強い力で締め付けることができるので、小径ケリーバ26の押込力に対して十分な引抜力を確保することができる。また、押さえブラケット24の上にゴム製リング材25を設けることにより、小径ケリーバ26がケリーバ回転駆動装置15に金属同士で衝突することを防止するクッションとして作用する。
【0026】
なお、スペーサに代えて段付ボルトやカラーなどを用いて支持ボルトの締付量を規制することも可能であり、ボルト遊嵌孔の形状は、支持フランジの曲率に対応した円弧状であってもよい。
【符号の説明】
【0027】
11…ベースマシン、12…ブーム、13…ケリーバ、14…シリンダ、15…ケリーバ回転駆動装置、16…拡底バケット、17…油圧モータ、18…減速ギア、19…ドライブ軸、20…キー溝、21…支持ボルト、22…雌ねじ孔、23…中子、23a…中子本体、23b…支持フランジ、24…押さえブラケット、25…ゴム製リング材、26…小径ケリーバ、27…キー、28…小径キー、29…小径キー溝、30…ボルト遊嵌孔、31…ボルト挿通孔、32…固定ボルト、33…雌ねじ部、34…スペーサ、35…切欠部、36…カラー、37…押し込み部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7