(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記(D)成分が、分子内に2個以上のアルケニル基及び1個以上のアリール基を有し、ヒドロシリル基を有さないラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(数平均分子量:500〜1500、分子量分散度(Mw/Mn):1.00〜1.40)と、ヒドロシリル基を2個以上有する直鎖状シリコーンをヒドロシリル化反応させて得られる化合物である請求項1に記載の硬化性シリコーン樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<硬化性シリコーン樹脂組成物>
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物は、下記(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、及び(E)成分を必須成分として含有する、ヒドロシリル化反応により硬化する付加硬化型のシリコーン樹脂組成物である。本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物は、前記成分以外の任意成分を含有していてもよい。
【0025】
[(A)成分]
(A)成分は、分子内に2個以上のアルケニル基及び1個以上のアリール基を有するポリオルガノシロキシシルアルキレンである。本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物において(A)成分は、ヒドロシリル基を有する成分(例えば、(B)成分等)とヒドロシリル化反応を生じる。但し、(A)成分には後述の(D)成分や(E)成分に含まれる化合物は含まれない。
【0026】
(A)成分は、分子内に2個以上のアルケニル基及び1個以上のアリール基を有し、主鎖として−Si−O−Si−(シロキサン結合)に加えて、−Si−R
A−Si−(シルアルキレン結合:R
Aはアルキレン基を示す)を含むポリオルガノシロキシシルアルキレンである。(A)成分は、主鎖がシロキサン結合のみからなり、シルアルキレン結合を有しないポリオルガノシロキサンと比較して、製造工程において低分子量の環を生じ難く、また、加熱等により分解してシラノール基(−SiOH)を生じ難い。そのため、(A)成分を含む硬化性シリコーン樹脂組成物は、硫黄バリア性と耐熱衝撃性に優れ、黄変し難く、表面粘着性(タック性)の低い又は無い硬化物を形成することができる。
【0027】
(A)成分が分子内に有するシルアルキレン結合におけるアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等の直鎖状又は分岐鎖状のC
1-12アルキレン基等が挙げられ、なかでも、C
2-4アルキレン基(特に、エチレン基)が好ましい。
【0028】
(A)成分としては、直鎖状、分岐鎖状(例えば、一部分岐を有する直鎖状、分岐鎖状、網目状等)の分子構造を有するもの等が挙げられる。なかでも、(A)成分としては、分岐鎖状の分子構造を有するものが、機械強度に優れた硬化物が得られる点で好ましい。
【0029】
(A)成分が分子内に有するアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等の置換又は無置換アルケニル基が挙げられる。当該置換アルケニル基における置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基等が挙げられる。なかでも、上記アルケニル基としては、ビニル基が好ましい。また、(A)成分は、1種のみのアルケニル基を有するものであってもよいし、2種以上のアルケニル基を有するものであってもよい。(A)成分が有するアルケニル基は、ケイ素原子に結合した基であることが好ましい。
【0030】
(A)成分が分子内に有するアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基等)等の置換又は無置換C
6-14アリール基等が挙げられる。当該置換アリール基における置換基としては、置換又は無置換C
1-8アルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基等が挙げられる。なかでも、上記アリール基としては、フェニル基が好ましい。また、(A)成分は、1種のみのアリール基を有するものであってもよいし、2種以上のアリール基を有するものであってもよい。(A)成分が有するアリール基は、ケイ素原子に結合した基であることが好ましい。(A)成分は、分子内に1個以上のアリール基を有することにより、アリール基を有しない場合と比較して、硫黄バリア性に優れた硬化物を形成できる。
【0031】
(A)成分は、ケイ素原子に結合した基として、アルケニル基及びアリール基以外にも、例えば、水素原子、有機基等を有していてもよい。前記有機基としては、例えば、アルキル基[例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等]、シクロアルキル基[例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロドデシル基等]、シクロアルキル−アルキル基[例えば、シクロへキシルメチル基、メチルシクロヘキシル基等]、炭化水素基における1以上の水素原子がハロゲン原子で置換されたハロゲン化炭化水素基[例えば、クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基等]等が挙げられる。なかでも、アルキル基(特にメチル基)が好ましい。尚、本明細書において「ケイ素原子に結合した基」とは、通常、ケイ素原子を含まない基を指すものとする。
【0032】
また、(A)成分は、ケイ素原子に結合した基として、ヒドロキシル基、アルコキシ基を有していてもよい。
【0033】
(A)成分の性状は、特に限定されず、例えば25℃において、液状であってもよいし、固体状であってもよい。
【0034】
(A)成分としては、下記平均単位式:
(R
12SiO
2/2)
a1(R
13SiO
1/2)
a2(R
1SiO
3/2)
a3(SiO
4/2)
a4(R
A)
a5(X
1O)
a6
で表されるポリオルガノシロキシシルアルキレンが好ましい。上記平均単位式中、R
1は、同一又は異なって、一価の置換又は無置換炭化水素基であり、例えば、アルキル基[例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等]、シクロアルキル基[例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロドデシル基等]、シクロアルキル−アルキル基[例えば、シクロへキシルメチル基、メチルシクロヘキシル基等]、炭化水素基における1以上の水素原子がハロゲン原子で置換されたハロゲン化炭化水素基[例えば、クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基等]、アルケニル基[例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等の置換又は無置換アルケニル基等]、及びアリール基[例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基等)等の置換又は無置換C
6-14アリール基等]が挙げられる。但し、R
1の一部はアルケニル基(特にビニル基)であり、その割合は、分子内に2個以上となる範囲に制御される。例えば、R
1の全量(100モル%)に対するアルケニル基の割合は、0.1〜40モル%が好ましい。アルケニル基の割合を上記範囲に制御することにより、硬化性シリコーン樹脂組成物の硬化性がより向上する傾向がある。また、R
1の一部はアリール基(特にフェニル基)であり、その割合は、分子内に1個以上となる範囲に制御される。例えば、R
1の全量(100モル%)に対するアリール基の割合は、10〜60モル%が好ましい。アリール基の割合を上記範囲に制御することにより、硬化物の硫黄バリア性がより向上する傾向がある。アルケニル基、アリール基以外のR
1としては、アルキル基(特にメチル基)が好ましい。
【0035】
上記平均単位式中、R
Aは、上述のようにアルキレン基である。特にエチレン基が好ましい。
【0036】
上記平均単位式中、X
1は、水素原子又はアルキル基である。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、特にメチル基が好ましい。
【0037】
上記平均単位式中、a1は正数、a2は正数、a3は0又は正数、a4は0又は正数、a5は正数、a6は0又は正数である。なかでも、a1は1〜200、a2は1〜200、a3は0〜10、a4は0〜5、a5は1〜100が好ましい。特に、(a3+a4)が正数の場合には、(A)成分が分岐鎖(分岐状の主鎖)を有し、硬化物の機械強度がより向上する傾向がある。
【0038】
(A)成分としては、より具体的には、例えば、下記式(a-1)で表される構造を有するポリオルガノシロキシシルアルキレンが挙げられる。
【化2】
【0039】
上記式(a-1)中、R
11は、同一又は異なって、水素原子、又は一価の置換若しくは無置換炭化水素基である。R
11としては、水素原子と、上述の一価の置換又は無置換炭化水素基の具体例が挙げられる。但し、R
11の少なくとも2個はアルケニル基(特にビニル基)であり、R
11の少なくとも1個はアリール基(特にフェニル基)である。また、アルケニル基及びアリール基以外のR
11としては、アルキル基(特にメチル基)が好ましい。
【0040】
上記式(a-1)中、R
Aは、上記と同じくアルキレン基を示し、なかでも、C
2-4アルキレン基(特に、エチレン基)が好ましい。尚、複数のR
Aが存在する場合、これらは同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0041】
上記式(a-1)中、r1は1以上の整数(例えば、1〜100)を示す。尚、r1が2以上の整数の場合、r1が付された括弧内の構造はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0042】
上記式(a-1)中、r2は1以上の整数(例えば、1〜400)を示す。尚、r2が2以上の整数の場合、r2が付された括弧内の構造はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0043】
上記式(a-1)中、r3は0又は1以上の整数(例えば、0〜50)を示す。尚、r3が2以上の整数の場合、r3が付された括弧内の構造はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0044】
上記式(a-1)中、r4は0又は1以上の整数(例えば、0〜50)を示す。尚、r4が2以上の整数の場合、r4が付された括弧内の構造はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0045】
上記式(a-1)中、r5は0又は1以上の整数(例えば、0〜50)を示す。尚、r5が2以上の整数の場合、r5が付された括弧内の構造はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0046】
また、上記式(a-1)における各構造単位の付加形態は特に限定されず、ランダム型であってもよいし、ブロック型であってもよい。また、各構造単位の配列の順番も特に限定されない。
【0047】
式(a-1)で表される構造を有するポリオルガノシロキシシルアルキレンの末端構造は、特に限定されないが、例えば、シラノール基、アルコキシシリル基、トリアルキルシリル基(例えば、r5が付された括弧内の構造、トリメチルシリル基等)等が挙げられる。上記ポリオルガノシロキシシルアルキレンの末端には、アルケニル基やヒドロシリル基等の各種の基が導入されていてもよい。
【0048】
(A)成分は公知乃至慣用の方法により製造することができ、その製造方法は特に限定されないが、例えば、特開2012−140617号公報に記載の方法により製造できる。また、(A)成分を含む製品として、例えば、商品名「ETERLED GD1130」、「ETERLED GD1125」、「ETERLED GS5155」、「ETERLED GS5145」、「ETERLED GS5135」「ETERLED GS5120」(いずれも長興材料工業製)等が入手可能である。
【0049】
尚、本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物において(A)成分は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0050】
[(B)成分]
(B)成分は、分子内に1個以上(好ましくは2個以上)のヒドロシリル基(Si−H)を有し、なおかつ主鎖として−Si−O−Si−(シロキサン結合)を有し、脂肪族不飽和基(例えば、エチレン性不飽和基、アセチレン性不飽和基等の非芳香族性の炭素−炭素二重結合を有する脂肪族炭化水素基)とシルアルキレン結合を有しないをポリオルガノシロキサン(単に「ポリオルガノシロキサン(B)」と称する場合がある)である。本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物において(B)成分は、アルケニル基を有する成分(例えば、(A)成分、(D)成分、(E)成分等)とヒドロシリル化反応を生じる。本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物は(B)成分を含むことにより、ヒドロシリル化反応を効率的に進行させることができ、優れた硫黄バリア性を有する硬化物が得られる。
【0051】
(B)成分が分子内に有するヒドロシリル基の数は1個以上であればよく、特に限定されないが、硬化性シリコーン樹脂組成物の硬化性の観点で、2個以上(例えば2〜50個)が好ましい。
【0052】
ポリオルガノシロキサン(B)としては、直鎖状、分岐鎖状(一部分岐を有する直鎖状、分岐鎖状、網目状等)の分子構造を有するもの等が挙げられる。これらは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0053】
ポリオルガノシロキサン(B)は分子内に1個以上のヒドロシリル基(Si−H)を有するが、ケイ素原子に結合した基としては水素原子以外にも、例えば、上述の一価の置換又は無置換炭化水素基の具体例(但し、アルケニル基は除く)が挙げられる。なかでも、アルキル基(特にメチル基)、アリール基(特にフェニル基)が好ましい。
【0054】
また、(B)成分は、ケイ素原子に結合した基として、ヒドロキシル基、アルコキシ基を有していてもよい。
【0055】
ポリオルガノシロキサン(B)の性状は、特に限定されず、例えば25℃において、液状であってもよいし、固体状であってもよい。なかでも液状であることが好ましく、25℃における粘度が0.1〜10億mPa・sの液状であることがより好ましい。
【0056】
ポリオルガノシロキサン(B)としては、下記平均単位式:
(R
2SiO
3/2)
b1(R
22SiO
2/2)
b2(R
23SiO
1/2)
b3(SiO
4/2)
b4(X
2O
1/2)
b5
で表されるポリオルガノシロキサンが好ましい。上記平均単位式中、R
2は、同一又は異なって、水素原子、又は、一価の置換若しくは無置換炭化水素基(但し、脂肪族不飽和基は除く)であり、例えば、水素原子、上述の一価の置換又は無置換炭化水素基の具体例(但し、アルケニル基は除く)が挙げられる。但し、R
2の一部は水素原子(ヒドロシリル基を構成する水素原子)であり、その割合は、ヒドロシリル基が分子内に1個以上(好ましくは2個以上)となる範囲に制御される。例えば、R
2の全量(100モル%)に対する水素原子の割合は、0.1〜40モル%が好ましい。水素原子の割合を上記範囲に制御することにより、硬化性シリコーン樹脂組成物の硬化性がより向上する傾向がある。また、水素原子以外のR
2としては、アルキル基(特にメチル基)、アリール基(特にフェニル基)が好ましい。
【0057】
上記平均単位式中、X
2は上記X
1と同じく水素原子又はアルキル基である。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、特にメチル基が好ましい。
【0058】
上記平均単位式中、b1は0又は正数、b2は0又は正数、b3は0又は正数、b4は0又は正数、b5は0又は正数であり、かつ、(b1+b2+b3)は正数である。
【0059】
ポリオルガノシロキサン(B)の一例としては、例えば、分子内に1個以上(好ましくは2個以上)のヒドロシリル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンが挙げられる。上記直鎖状ポリオルガノシロキサンにおける水素原子以外のケイ素原子に結合した基としては、例えば、上述の一価の置換又は無置換炭化水素基の具体例(但し、アルケニル基は除く)が挙げられるが、なかでも、アルキル基(特にメチル基)、アリール基(特にフェニル基)が好ましい。
【0060】
上記直鎖状ポリオルガノシロキサンにおける、ケイ素原子に結合した基の全量(100モル%)に対する水素原子(ケイ素原子に結合した水素原子)の割合は、特に限定されないが、0.1〜40モル%が好ましい。また、ケイ素原子に結合した基の全量(100モル%)に対するアルキル基(特にメチル基)の割合は、特に限定されないが、20〜99モル%が好ましい。さらに、ケイ素原子に結合した基の全量(100モル%)に対するアリール基(特にフェニル基)の割合は、特に限定されないが、40〜80モル%が好ましい。特に、上記直鎖状ポリオルガノシロキサンとして、ケイ素原子に結合した基の全量(100モル%)に対するアリール基(特にフェニル基)の割合が40モル%以上(例えば、45〜70モル%)であるものを使用することにより、硬化物の硫黄バリア性がより向上する傾向がある。また、ケイ素原子に結合した基の全量(100モル%)に対するアルキル基(特にメチル基)の割合が90モル%以上(例えば、95〜99モル%)であるものを使用することにより、硬化物の耐熱衝撃性がより向上する傾向がある。
【0061】
上記直鎖状ポリオルガノシロキサンは、例えば、下記式(b-1)で表される。
【化3】
[上記式中、R
21は、同一又は異なって、水素原子、又は、一価の置換若しくは無置換炭化水素基(但し、脂肪族不飽和基は除く)である。但し、R
21の少なくとも1個(好ましくは、少なくとも2個)は水素原子である。m1は、1〜1000の整数である]
【0062】
尚、上記式(b-1)で表される直鎖状ポリオルガノシロキサンにおいて、上記R
21は、ヒドロキシル基、アルコキシ基であってもよい。また、上記R
21における一価の置換若しくは無置換炭化水素基(但し、脂肪族不飽和基は除く)がヒドロキシル基やアルコキシ基を有していてもよい。
【0063】
ポリオルガノシロキサン(B)の他の例としては、分子内に1個以上(好ましくは2個以上)のヒドロシリル基を有する分岐鎖状ポリオルガノシロキサンが挙げられる。分岐鎖状ポリオルガノシロキサンは、前記平均単位式における[R
2SiO
3/2]で表されるシロキサン単位(T単位)を少なくとも含む。分岐鎖状ポリオルガノシロキサンには、網目状等の三次元構造のポリオルガノシロキサンも含まれる。
【0064】
上記分岐鎖状ポリオルガノシロキサンにおける水素原子以外のケイ素原子に結合した基としては、例えば、上述の一価の置換又は無置換炭化水素基の具体例(但し、アルケニル基は除く)が挙げられるが、なかでも、アルキル基(特にメチル基)、アリール基(特にフェニル基)が好ましい。さらに、上記T単位中のR
2としては、水素原子、上述の一価の置換又は無置換炭化水素基の具体例(但し、アルケニル基は除く)が挙げられるが、なかでも、アルキル基(特にメチル基)、アリール基(特にフェニル基)が好ましい。上記T単位中のR
2の全量(100モル%)に対するアリール基(特にフェニル基)の割合は、特に限定されないが、硬化物の硫黄バリア性の観点で、30モル%以上が好ましい。
【0065】
上記分岐鎖状ポリオルガノシロキサンにおける、ケイ素原子に結合した基の全量(100モル%)に対するアルキル基(特にメチル基)の割合は、特に限定されないが、70〜95モル%が好ましい。さらに、ケイ素原子に結合した基の全量(100モル%)に対するアリール基(特にフェニル基)の割合は、特に限定されないが、10〜70モル%が好ましい。特に、上記分岐鎖状ポリオルガノシロキサンとして、ケイ素原子に結合した基の全量(100モル%)に対するアリール基(特にフェニル基)の割合が10モル%以上(例えば、10〜70モル%)であるものを使用することにより、硬化物の硫黄バリア性がより向上する傾向がある。また、ケイ素原子に結合した基の全量(100モル%)に対するアルキル基(特にメチル基)の割合が50モル%以上(例えば、50〜90モル%)であるものを使用することにより、硬化物の耐熱衝撃性がより向上する傾向がある。
【0066】
分岐鎖状ポリオルガノシロキサンとしては、上記平均単位式で表され、b1が正数であるポリオルガノシロキサンが好ましい。この場合、特に限定されないが、b2/b1は0〜10の数、b3/b1は0〜0.5の数、b4/(b1+b2+b3+b4)は0〜0.3の数、b5/(b1+b2+b3+b4)は0〜0.4の数であることが好ましい。また、上記分岐鎖状ポリオルガノシロキサンの分子量は特に限定されないが、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量が300〜1万であることが好ましく、より好ましくは500〜3000である。
【0067】
尚、本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物において(B)成分は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0068】
[(C)成分]
(C)成分は、白金族金属を含むヒドロシリル化触媒である。すなわち、(C)成分は、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、及び白金からなる群より選択される少なくとも1種の金属(白金族金属)を含むヒドロシリル化触媒である。本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物は(C)成分を含むため、加熱により硬化性シリコーン樹脂組成物中のアルケニル基とヒドロシリル基の間のヒドロシリル化反応を効率的に進行させることができる。
【0069】
(C)成分としては、公知乃至慣用のヒドロシリル化触媒(例えば、白金系触媒、ロジウム系触媒、パラジウム系触媒等)を使用することができ、具体的には、白金微粉末、白金黒、白金担持シリカ微粉末、白金担持活性炭、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトン等との錯体、白金のオレフィン錯体、白金−カルボニルビニルメチル錯体等の白金のカルボニル錯体、白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体や白金−シクロビニルメチルシロキサン錯体等の白金−ビニルメチルシロキサン錯体、白金−ホスフィン錯体、白金−ホスファイト錯体等の白金系触媒、並びに上記白金系触媒において白金原子の代わりにパラジウム原子又はロジウム原子を含有するパラジウム系触媒又はロジウム系触媒等が挙げられる。なかでも、(C)成分としては、白金系触媒(白金を含むヒドロシリル化触媒)が好ましく、特に、白金−ビニルメチルシロキサン錯体や白金−カルボニルビニルメチル錯体や塩化白金酸とアルコール、アルデヒドとの錯体が、反応速度が良好であるため好ましい。
【0070】
尚、本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物において(C)成分は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0071】
[(D)成分]
(D)成分は、ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン構造(数平均分子量:500〜1500、分子量分散度(Mw/Mn):1.00〜1.40)と、前記ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン構造に結合する1個以上のアルケニル基と、1個以上のアリール基と、1個以上の直鎖状シリコーン構造を有する化合物である。(D)成分は、アルケニル基及びアリール基以外の基(例えば、メチル基等のアルキル基)を有していていてもよい。前記アルケニル基、アリール基、及びこれら以外の基は、ケイ素原子に結合した基であることが好ましい。
【0072】
前記直鎖状シリコーン構造には、主鎖として−Si−O−Si−(シロキサン結合)を少なくとも含有する。前記直鎖状シリコーン構造には、主鎖として−Si−O−Si−(シロキサン結合)に加えて、−Si−R
B−Si−(シルアルキレン結合:R
Bはアルキレン基を示し、例えばエチレン基等を挙げることができる)を含有していてもよい。
【0073】
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物は、(D)成分を含むため、硫黄バリア性(特に、SO
Xバリア性)に特に優れ、且つ耐熱衝撃性に優れた硬化物が得られる。
【0074】
(D)成分全量に占めるアルケニル基(特にビニル基)の割合は、例えば1.0〜5.0重量%、好ましくは1.5〜4.5重量%、特に好ましくは2.0〜4.0重量%、最も好ましくは2.5〜4.0重量%である。また、(D)成分全量に占めるアリール基(特にフェニル基)の割合は、例えば15〜60重量%、好ましくは20〜55重量%、特に好ましくは25〜50重量%、最も好ましくは25〜40重量%である。アルケニル基の割合が上記範囲を下回り、相対的にアリール基の割合が上記範囲を上回ると、耐熱衝撃性を得るために、より多量の(D)成分を要する傾向があり、(D)成分の使用量の増加に伴い硫黄バリア性(特に、SO
Xバリア性)が低下する傾向がある。尚、アルケニル基、アリール基の割合は、例えば、NMRスペクトル(例えば、
1H−NMRスペクトル)測定等により算出することができる。
【0075】
(D)成分の数平均分子量(Mn)(GPCによる、標準ポリスチレン換算)は、例えば1000〜5000、好ましくは1000〜4500、特に好ましくは1500〜4000、最も好ましくは1500〜3000である。Mnが1000以上であると、耐熱性、硫黄バリア性に優れた硬化物が得られる。一方、Mnが5000以下であると、室温で液体を呈するため、取り扱い性に優れる。また、他の成分との相溶性にも優れる。
【0076】
(D)成分の分子量分散度(GPCによる、標準ポリスチレン換算;Mw/Mn)は、例えば1.00〜40.00であり、好ましくは1.50〜20.00、特に好ましくは2.00〜10.00、最も好ましくは2.00〜5.00である。分子量分散度が40.00以下であると、低分子シロキサンの含有量が少ないため、密着性や硫黄バリア性に優れた硬化物が得られる。一方、分子量分散度が1.00以上であると、室温で液状を呈するため、取り扱い性に優れる。
【0077】
尚、数平均分子量、分子量分散度は、以下の装置を使用し、下記条件下で測定される。
<数平均分子量及び重量平均分子量の測定方法>
数平均分子量及び重量平均分子量の測定は以下の条件で行った。
Alliance HPLCシステム 2695(Waters製)
Refractive Index Detector 2414(Waters製)
カラム:Tskgel GMH
HR−M(東ソー(株)製)×2個
ガードカラム:Tskgel guard column H
HRL(東ソー(株)製)
カラムオーブン:COLUMN HEATER U−620(Sugai製)
溶媒:THF
測定温度:40℃
【0078】
また、(D)成分はラダー構造を有するが、前記構造は、FT−IRスペクトルにおいて1050cm
-1付近(例えば、1000〜1100cm
-1)と1150cm
-1付近(例えば、1100cm
-1を超え1200cm
-1以下)にそれぞれ固有吸収ピークを有する(すなわち、1000〜1200cm
-1に少なくとも2本の吸収ピークを有する)ことから確認できる[参考文献:R.H.Raney, M.Itoh, A.Sakakibara and T.Suzuki, Chem. Rev. 95, 1409(1995)]。尚、FT−IRスペクトルは、例えば、下記の装置及び条件により測定することができる。
測定装置:商品名「FT−720」((株)堀場製作所製)
測定方法:透過法
分解能:4cm
-1
測定波数域:400〜4000cm
-1
積算回数:16回
【0079】
(D)成分としては、例えば、下記式(d)で表される化合物等を挙げることができる。
【化4】
【0080】
上記式(d)中、nは0以上の整数を示し、通常は0以上の偶数(例えば、2以上の偶数)である。上記nは、後述のラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(a)の数平均分子量が500〜1500、分子量分散度が1.00〜1.40に制御される限り特に限定されない。ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(a)の分子量分散度が1.00を超える場合、該ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(a)は、一般に、後述の式(d-a)で表されるポリオルガノシルセスキオキサンであってnが異なる2種以上の混合物である。特に、ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(a)は、nが1以上(特に2以上)の成分を必須成分として含有することが好ましい。
【0081】
上記式(d)中、R
41は、同一又は異なって、水素原子、又は、一価の置換若しくは無置換炭化水素基であり、水素原子と上述の一価の置換又は無置換炭化水素基の具体例が挙げられる。R
41としては、なかでも、メチル基等のアルキル基が好ましい。
【0082】
上記式(d)中、R
42は、同一又は異なって、水素原子、一価の置換若しくは無置換炭化水素基(特にアルキル基)、下記式(d-1)で表される一価の基、下記式(d-2)で表される一価の基、又は下記式(d-3)で表される一価の基を示す。尚、R
42の少なくとも1つは下記式(d-3)で表される一価の基である。
【化5】
【0083】
上記式(d-1)、式(d-2)、式(d-3)中、R
43は同一又は異なって、水素原子、又はアルキル基であり、前記アルキル基としてはなかでもメチル基が好ましい。R
44はアルケニル基であり、なかでもビニル基が好ましい。n1、n2は同一又は異なって0以上の整数を示す。なかでも0〜5が好ましく、特に好ましくは0〜3、最も好ましくは0である。
【0084】
上記式(d-3)中、Lは下記式で表される構造単位を有する直鎖状シリコーン構造を示す。
【化6】
【0085】
上記式中、R
45は、同一又は異なって、水素原子、又は、一価の置換若しくは無置換炭化水素基(但し、脂肪族不飽和基は除く)であり、上述の一価の置換又は無置換炭化水素基の具体例(但し、アルケニル基は除く)が挙げられるが、なかでも、アルキル基(特にメチル基)、アリール基(特にフェニル基)が好ましい。
【0086】
上記式中、R
Bはアルキレン基を示し、なかでも、C
2-4アルキレン基(特に、エチレン基)が好ましい。尚、複数のR
Bが存在する場合、これらは同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0087】
上記式中、s1は0又は1以上の整数、s2は1以上の整数(例えば、1〜100)である。
【0088】
各構造単位の付加形態は特に限定されず、ランダム型であってもよいし、ブロック型であってもよい。また、各構造単位の配列の順番も特に限定されない。
【0089】
(D)成分は、例えば、分子内に2個以上のアルケニル基及び1個以上のアリール基を有し、ヒドロシリル基を有さないラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(a)と、ヒドロシリル基を2個以上有し、脂肪族不飽和基を有さない直鎖状シリコーン(b)をヒドロシリル化反応させることにより得られる。
【0090】
(ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(a))
本発明におけるラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(a)は、分子内に2個以上のアルケニル基及び1個以上のアリール基を有し、ヒドロシリル基を有さない、ラダー構造の−Si−O−Si−骨格を有するポリオルガノシルセスキオキサンである。ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(a)は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0091】
前記ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(a)としては、なかでも、分子内に2個以上のビニル基及び1個以上のフェニル基を有し、ヒドロシリル基を有さない、ラダー構造の−Si−O−Si−骨格を有するポリオルガノシルセスキオキサンが好ましい。
【0092】
但し、ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(a)は、ラダー構造に加えて、さらにその他のシルセスキオキサン構造(例えば、カゴ構造やランダム構造等)を有するものであってもよい。
【0093】
ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(a)の、GPCによる標準ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は、例えば500〜1500、好ましくは550〜1450、より好ましくは600〜1400である。
【0094】
ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(a)の、GPCによる標準ポリスチレン換算の分子量分散度(Mw/Mn)は、例えば1.00〜1.40、好ましくは1.35以下(例えば、1.05〜1.35)、より好ましくは1.30以下(例えば、1.10〜1.30)である。
【0095】
ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(a)は、特に限定されないが、室温(25℃)で液体であることが好ましい。具体的には、その25℃における粘度は、特に限定されないが、30000Pa・s以下(例えば、1〜30000Pa・s)が好ましく、特に好ましくは25000Pa・s以下、最も好ましくは10000Pa・s以下である。上記粘度は、粘度計(商品名「MCR301」、アントンパール社製)を用いて、振り角5%、周波数0.1〜100(1/s)、温度25℃の条件で測定される。
【0096】
ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(a)は、例えば下記式(d-a)で表される。
【化7】
【0097】
上記式(d-a)中、R
41、nは上記式(d)中のR
41、nに同じ。
【0098】
上記式(d-a)におけるR
41の全量(100重量%)に占める、フェニル基、ビニル基、及びメチル基の割合(合計割合)は、特に限定されないが、50〜100重量%が好ましく、特に好ましくは70〜100重量%、最も好ましくは80〜100重量%である。
【0099】
上記式(d-a)におけるR
41の全量(100重量%)に占めるフェニル基の割合(含有量)は、特に限定されないが、0〜100重量%が好ましく、特に好ましくは1〜100重量%、最も好ましくは5〜100重量%である。上記式(d-a)におけるR
41の全量(100重量%)に占めるビニル基の割合(含有量)は、特に限定されないが、0〜100重量%が好ましく、特に好ましくは1〜100重量%、最も好ましくは5〜90重量%、特に好ましくは10〜80重量%である。上記式(d-a)におけるR
41の全量(100重量%)に占めるメチル基の割合(含有量)は、特に限定されないが、0〜100重量%が好ましく、特に好ましくは1〜100重量%、最も好ましくは5〜100重量%である。
【0100】
尚、上記式(d-a)におけるR
41の組成(例えば、フェニル基、ビニル基、メチル基の割合等)は、例えば、NMRスペクトル(例えば、
1H−NMRスペクトル)測定等により算出することができる。
【0101】
上記式(d-a)中、R
46は、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、上記式(d-1)で表される一価の基、又は上記式(d-2)で表される一価の基を示す。
【0102】
ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(a)は、周知慣用の方法により製造でき、例えば、特開平4−28722号公報、特開2010−518182号公報、特開平5−39357号公報、特開2004−99872号公報、国際公開第1997/007156号、特開平11−246662号公報、特開平9−20826号公報、国際公開第2006/033147号、特開2005−239829号公報、国際公開第2013/176238号等の文献に開示された方法等により製造できる。
【0103】
(直鎖状シリコーン(b))
本発明における直鎖状シリコーン(b)は、ヒドロシリル基を2個以上有する直鎖状のシリコーンである。直鎖状シリコーン(b)は脂肪族不飽和基を有さないことが好ましい。直鎖状シリコーン(b)は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0104】
前記直鎖状シリコーン(b)は、主鎖として−Si−O−Si−(シロキサン結合)を少なくとも含有する。前記直鎖状シリコーン(b)には、主鎖として−Si−O−Si−(シロキサン結合)のみを有する化合物(すなわち、ポリオルガノシロキサン)や、主鎖として−Si−O−Si−(シロキサン結合)に加えて、−Si−R
B−Si−(シルアルキレン結合:R
Bはアルキレン基を示す)を含む化合物(すなわち、ポリオルガノシロキシシルアルキレン)が含まれる。すなわち、直鎖状シリコーン(b)としては直鎖状ポリオルガノシロキサン及び/又は直鎖状ポリオルガノシロキシシルアルキレンを使用することができる。
【0105】
前記直鎖状シリコーン(b)は、例えば、下記式(d-b)で表される構造を有する化合物が挙げられる。
【化8】
【0106】
上記式中、R
45、R
B、s1、s2は上記に同じ。s3は、同一又は異なって、1以上の整数である。
【0107】
前記R
47は、水素原子、又は一価の置換若しくは無置換炭化水素基(但し、脂肪族不飽和基は除く)であり、水素原子と上述の一価の置換又は無置換炭化水素基の具体例(但し、アルケニル基は除く)が挙げられる。なかでも、アルキル基(特にメチル基)、アリール基(特にフェニル基)が好ましい。
【0108】
また、上記式(d-b)における各構造単位の付加形態は特に限定されず、ランダム型であってもよいし、ブロック型であってもよい。また、各構造単位の配列の順番も特に限定されない。
【0109】
式(d-b)で表される構造を有する直鎖状シリコーンの末端構造は、例えば、シラノール基、アルコキシシリル基、トリアルキルシリル基(例えば、s3が付された括弧内の構造、トリメチルシリル基等)等が挙げられる。
【0110】
前記直鎖状シリコーン(b)としては、例えば、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジフェニルトリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン等を挙げることができる。
【0111】
(ヒドロシリル化反応)
本発明における(D)成分は、上記ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(a)と直鎖状シリコーン(b)をヒドロシリル化反応に付して得られる。
【0112】
直鎖状シリコーン(b)の使用量(SiH基当量)は、ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(a)におけるビニルシリル基1モルに対して、例えば0.1〜0.8モル、好ましくは0.1〜0.7モル、特に好ましくは0.2〜0.6モルである。直鎖状シリコーン(b)の使用量が上記範囲を下回ると、得られる硬化物の耐熱衝撃性が低下する傾向がある。一方、直鎖状シリコーン(b)の使用量が上記範囲を上回ると、得られる硬化物の硫黄バリア性(特に、SO
Xバリア性)や耐熱性が低下する傾向がある。
【0113】
前記ヒドロシリル化反応は、ヒドロシリル化触媒(例えば、上述の(C)成分としての白金系触媒等を挙げることができる)の存在下で行うことが好ましい。ヒドロシリル化触媒の使用量は、上記ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(a)と直鎖状シリコーン(b)の合計100重量部に対して、0.00001〜0.01重量部程度、好ましくは0.0001〜0.001重量部である。
【0114】
前記ヒドロシリル化反応は、溶媒の存在下で行ってもよい。前記溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒を挙げることができる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0115】
前記溶媒の使用量としては、上記ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(a)と直鎖状シリコーン(b)の総量に対して、例えば50〜300重量%程度である。溶媒の使用量が上記範囲を上回ると反応成分の濃度が低くなり、反応速度が低下する傾向がある。
【0116】
反応雰囲気としては反応を阻害しない限り特に限定されず、例えば、空気雰囲気、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気等の何れであってもよい。
【0117】
反応温度は、例えば60〜100℃程度である。反応時間は、例えば0.5〜20時間程度である。反応終了後は、熟成工程を設けてもよい。熟成工程を設ける場合、熟成温度は例えば60〜100℃程度、熟成時間は例えば3〜10時間程度である。また、反応はバッチ式、セミバッチ式、連続式等の何れの方法でも行うことができる。
【0118】
反応終了後、得られた反応生成物は、例えば、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、吸着、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製できる。
【0119】
[(E)成分]
(E)成分は、分子内に1個以上のアルケニル基を有する分岐鎖状のポリオルガノシロキサンである。本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物において(E)成分は、(A)成分と共に、ヒドロシリル基を有する成分(例えば、(B)成分等)とヒドロシリル化反応を生じる。本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物は(E)成分を含有するため、耐熱性、耐熱衝撃性、及び硫黄バリア性に優れた硬化物が得られる。
【0120】
(E)成分は、分子内に1個以上のアルケニル基を有し、なおかつ主鎖として−Si−O−Si−(シロキサン結合)を有し、シルアルキレン結合を有しない分岐鎖状のポリオルガノシロキサン(分岐状の主鎖を有するポリオルガノシロキサン)である。尚、分岐鎖状には、網目状等の三次元構造も含まれる。但し、(E)成分には、上述の(D)成分に含まれる化合物は含まれない。
【0121】
(E)成分が分子内に有するアルケニル基としては、上述の置換又は無置換アルケニル基が挙げられ、なかでも、ビニル基が好ましい。また、(E)成分は、1種のアルケニル基を有するものであってもよいし、2種以上のアルケニル基を有するものであってもよい。(E)成分が有するアルケニル基は、特に限定されないが、ケイ素原子に結合したものであることが好ましい。
【0122】
(E)成分が分子内に有するアルケニル基の数は1個以上であればよく、特に限定されないが、硬化性シリコーン樹脂組成物の硬化性の観点で、2個以上(例えば2〜50個)が好ましい。
【0123】
(E)成分が有するアルケニル基以外のケイ素原子に結合した基は、特に限定されないが、例えば、水素原子、有機基等が挙げられる。有機基としては、例えば、上述の一価の置換又は無置換炭化水素基の具体例が挙げられる。
【0124】
また、(E)成分は、ケイ素原子に結合した基として、ヒドロキシル基、アルコキシ基を有していてもよい。
【0125】
(E)成分の性状は、特に限定されず、例えば25℃において、液状であってもよいし、固体状であってもよい。
【0126】
(E)成分としては、下記平均単位式:
(R
5SiO
3/2)
c1(R
52SiO
2/2)
c2(R
53SiO
1/2)
c3(SiO
4/2)
c4(X
3O
1/2)
c5
で表されるポリオルガノシロキサンが好ましい。上記平均単位式中、R
5は、同一又は異なって、一価の置換又は無置換炭化水素基であり、上述の一価の置換又は無置換炭化水素基の具体例が挙げられる。但し、R
5の一部はアルケニル基(特にビニル基)であり、その割合は、分子内に1個以上(好ましくは2個以上)となる範囲に制御される。例えば、R
5の全量(100モル%)に対するアルケニル基の割合は、0.1〜40モル%が好ましい。アルケニル基の割合を上記範囲に制御することにより、硬化性シリコーン樹脂組成物の硬化性がより向上する傾向がある。また、アルケニル基以外のR
5としては、アルキル基(特にメチル基)、アリール基(特にフェニル基)が好ましい。
【0127】
上記平均単位式中、X
3は上記X
1と同様に水素原子又はアルキル基である。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、特にメチル基が好ましい。
【0128】
上記平均単位式中、c1は0又は正数、c2は0又は正数、c3は0又は正数、c4は0又は正数、c5は0又は正数であり、かつ、(c1+c2+c3)及び(c1+c4)がそれぞれ正数である。
【0129】
(E)成分の具体例としては、分子内に2個以上のアルケニル基を有し、前記平均単位式における[R
5SiO
3/2]で表されるシロキサン単位(T単位)を有する分岐鎖状ポリオルガノシロキサンが挙げられる。この分岐鎖状ポリオルガノシロキサンが有するアルケニル基としては、上述のアルケニル基の具体例が挙げられるが、なかでもビニル基が好ましい。尚、1種のみのアルケニル基を有するものであってもよいし、2種以上のアルケニル基を有するものであってもよい。また、上記分岐鎖状ポリオルガノシロキサンにおけるアルケニル基以外のケイ素原子に結合した基としては、例えば、上述の一価の置換又は無置換炭化水素基の具体例(但し、アルケニル基は除く)が挙げられるが、なかでも、アルキル基(特にメチル基)、アリール基(特にフェニル基)が好ましい。さらに、上記T単位中のR
5としては、なかでも、アルキル基(特にメチル基)、アリール基(特にフェニル基)が好ましい。
【0130】
上記分岐鎖状ポリオルガノシロキサンにおける、ケイ素原子に結合した基の全量(100モル%)に対するアルケニル基の割合は、特に限定されないが、硬化性シリコーン樹脂組成物の硬化性の観点で、0.1〜40モル%が好ましい。また、ケイ素原子に結合した基の全量(100モル%)に対するアルキル基(特にメチル基)の割合は、特に限定されないが、10〜40モル%が好ましい。さらに、ケイ素原子に結合した基の全量(100モル%)に対するアリール基(特にフェニル基)の割合は、特に限定されないが、5〜70モル%が好ましい。特に、上記分岐鎖状ポリオルガノシロキサンとして、ケイ素原子に結合した基の全量(100モル%)に対するアリール基(特にフェニル基)の割合が40モル%以上(例えば、45〜60モル%)であるものを使用することにより、硬化物の硫黄バリア性がより向上する傾向がある。また、ケイ素原子に結合した基の全量(100モル%)に対するアルキル基(特にメチル基)の割合が50モル%以上(例えば、60〜99モル%)であるものを使用することにより、硬化物の耐熱衝撃性がより向上する傾向がある。
【0131】
上記[R
5SiO
3/2]で表されるシロキサン単位(T単位)を有する分岐鎖状ポリオルガノシロキサンとしては、上記平均単位式中のc1が正数である化合物が挙げられる。この場合、特に限定されないが、c2/c1は0〜10の数、c3/c1は0〜0.5の数、c4/(c1+c2+c3+c4)は0〜0.3の数、c5/(c1+c2+c3+c4)は0〜0.4の数であることが好ましい。また、上記分岐鎖状ポリオルガノシロキサンの分子量は特に限定されないが、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量が500〜1万であることが好ましく、より好ましくは700〜3000である。
【0132】
(E)成分の具体例としては、その他に、上記平均単位式中のc1及びc2が0であり、X
3が水素原子である下記平均単位式:
(R
5a2R
5bSiO
1/2)
c6(R
5a3SiO
1/2)
c7(SiO
4/2)
c8(HO
1/2)
c9
で表されるポリオルガノシロキサンが挙げられる。上記平均単位式中、R
5aは、同一又は異なって、炭素数1〜10のアルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基を示し、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基等が挙げられ、なかでもメチル基が好ましい。また、R
5bは、同一又は異なって、アルケニル基を示し、なかでもビニル基が好ましい。さらに、c6、c7、c8及びc9はいずれも、c6+c7+c8=1、c6/(c6+c7)=0.15〜0.35、c8/(c6+c7+c8)=0.53〜0.62、c9/(c6+c7+c8)=0.005〜0.03を満たす正数である。尚、c7は0であってもよい。硬化性シリコーン樹脂組成物の硬化性の観点で、c6/(c6+c7)は0.2〜0.3であることが好ましい。また、硬化物の硬度や機械強度の観点で、c8/(c6+c7+c8)は0.55〜0.60であることが好ましい。さらに、硬化物の密着性や機械強度の観点で、c9/(c6+c7+c8)は0.01〜0.025であることが好ましい。このようなポリオルガノシロキサンとしては、例えば、SiO
4/2単位と(CH
3)
2(CH
2=CH)SiO
1/2単位とで構成されるポリオルガノシロキサン、SiO
4/2単位と(CH
3)
2(CH
2=CH)SiO
1/2単位と(CH
3)
3SiO
1/2単位とで構成されるポリオルガノシロキサン等が挙げられる。
【0133】
尚、本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物において(E)成分は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0134】
[(F)成分]
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物は、イソシアヌル酸骨格を有し、下記式(f-1)で表される基及び下記式(f-2)で表される基の何れか一方又は両方を少なくとも有するイソシアヌレート化合物(「(F)成分」と称する場合がある)を含んでいてもよい。本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物が(F)成分を含むことにより、硬化物の硫黄バリア性が著しく向上し、さらに、硬化物の被着体に対する密着性が向上する傾向がある。
【化9】
【0135】
式(f-1)中のR
61、式(f-2)中のR
62は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜8の直鎖若しくは分岐鎖状のアルキル基を示す。炭素数1〜8の直鎖若しくは分岐鎖状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、エチルヘキシル基等が挙げられる。上記アルキル基のなかでも、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等の炭素数1〜3の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましい。
【0136】
式(f-1)及び式(f-2)におけるR
61、R
62としては、水素原子であることが特に好ましい。
【0137】
(F)成分としては、下記式(f)で表される化合物が好ましい。
【化10】
【0138】
式(f)中、R
63、R
64、及びR
65は、同一又は異なって、アルキル基、式(f-1)で表される基、又は式(f-2)で表される基を示す。但し、R
63、R
64、及びR
65のうち少なくとも1つは、式(f-1)で表される基及び式(f-2)で表される基からなる群より選択される基である。前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数1〜12のアルキル基等が挙げられる。なかでも、硬化物の硫黄バリア性向上の観点で、式(f)中のR
63、R
64、及びR
65は、同一又は異なって、式(f-1)で表される基又は式(f-2)で表される基であることが好ましい。特に、式(f)におけるR
63、R
64、及びR
65のうち、何れか1つ以上(好ましくは1つ又は2つ、より好ましくは1つ)が式(f-2)で表される基であることが好ましい。
【0139】
(F)成分は、他の成分との相溶性を向上させる観点で、後述の(G)成分やその部分縮合物とあらかじめ混合してから他の成分への配合(混合)することが好ましい。
【0140】
(F)成分としては、具体的には、例えば、モノアリルジメチルイソシアヌレート、ジアリルモノメチルイソシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、トリグリシジルイソシアヌレート、1−アリル−3,5−ビス(2−メチルエポキシプロピル)イソシアヌレート、1−(2−メチルプロペニル)−3,5−ジグリシジルイソシアヌレート、1−(2−メチルプロペニル)−3,5−ビス(2−メチルエポキシプロピル)イソシアヌレート、1,3−ジアリル−5−(2−メチルエポキシプロピル)イソシアヌレート、1,3−ビス(2−メチルプロペニル)−5−グリシジルイソシアヌレート、1,3−ビス(2−メチルプロペニル)−5−(2−メチルエポキシプロピル)イソシアヌレート、トリス(2−メチルプロペニル)イソシアヌレート等が挙げられる。なかでも、モノアリルジグリシジルイソシアヌレートが好ましい。
【0141】
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物において(F)成分は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0142】
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物における(F)成分の含有量(配合量)は、硬化性シリコーン樹脂組成物に含まれるシロキサン化合物100重量部に対して、0.01〜10重量部が好ましく、特に好ましくは0.01〜1.5重量部、最も好ましくは0.05〜1.0重量部である。
【0143】
また、(F)成分の含有量(配合量)は、硬化性シリコーン樹脂組成物(100重量%)に対して、0.01〜10重量%が好ましく、特に好ましくは0.01〜5重量%、最も好ましくは0.05〜3重量%である。(F)成分の含有量を0.01重量%以上とすることにより、硬化物の硫黄バリア性、被着体に対する密着性がより向上する傾向がある。一方、(F)成分の含有量を10重量%以下とすることにより、均一であって、より優れた硬化性を有する硬化性シリコーン樹脂組成物が得られやすい傾向がある。
【0144】
[(G)成分]
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物は、シランカップリング剤(「(G)成分」と称する場合がある)を含んでいてもよい。本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物が(G)成分を含むことにより、被着体に対する硬化物の密着性が向上し、硫黄バリア性が一層向上する傾向がある。(G)成分は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0145】
(G)成分は、(A)成分、(B)成分、(D)成分、(E)成分、及び(F)成分等との相溶性が良好であるため、あらかじめ(F)成分と(G)成分の組成物を形成した上で、その他成分と配合すると、均一な硬化性シリコーン樹脂組成物が得られやすい。
【0146】
(G)成分としては、公知乃至慣用のシランカップリング剤を使用することができ、特に限定されないが、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤;N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤;テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(メトキシエトキシシラン)、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、メルカプトプロピレントリメトキシシラン、メルカプトプロピレントリエトキシシラン等が挙げられる。なかでも、エポキシ基含有シランカップリング剤(特に、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)が好ましい。
【0147】
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物における(G)成分の含有量(配合量)は、硬化性シリコーン樹脂組成物に含まれるシロキサン化合物100重量部に対して、0.01〜10重量部が好ましく、特に好ましくは0.1〜5重量部、最も好ましくは0.2〜2重量部である。
【0148】
また、(G)成分の含有量(配合量)は、硬化性シリコーン樹脂組成物(100重量%)に対して、0.01〜15重量%が好ましく、特に好ましくは0.1〜10重量%、最も好ましくは0.5〜5重量%である。(G)成分の含有量を0.01重量%以上とすることにより、被着体に対する密着性が向上し、特に、(F)成分を相溶させて使用する際に、硬化がより十分になりやすい。一方、(G)成分の含有量を15重量%以下とすることにより、硬化が不十分となりにくく、硬化物の硫黄バリア性、耐熱衝撃性がより向上しやすい。
【0149】
[その他のポリオルガノシロキサン]
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物は、上述の(A)成分、(D)成分、及び(E)成分以外にも、分子内にアルケニル基を有するその他のポリオルガノシロキサン(「その他のポリオルガノシロキサン」と称する場合がある)を1種又は2種以上含んでいてもよい。その他のポリオルガノシロキサンを含むことにより、硬化性シリコーン樹脂組成物の粘度を調整したり、硬化物の物性(例えば、機械物性)のバランスを調整することができる場合がある。
【0150】
その他のポリオルガノシロキサンとしては、例えば、分子内に1個以上のアルケニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサン(分子内に1個以上のアルケニル基を有し、主鎖としてシロキサン結合を有し、シルアルキレン結合を有しない直鎖状のポリオルガノシロキサン)等が挙げられる。
【0151】
上記直鎖状ポリオルガノシロキサンが分子内に有するアルケニル基としては、上述の置換又は無置換アルケニル基が挙げられ、なかでも、ビニル基が好ましい。また、上記直鎖状ポリオルガノシロキサンは、1種のみのアルケニル基を有するものであってもよいし、2種以上のアルケニル基を有するものであってもよい。上記直鎖状ポリオルガノシロキサンが有するアルケニル基は、特に限定されないが、ケイ素原子に結合したものであることが好ましい。
【0152】
上記直鎖状ポリオルガノシロキサンが分子内に有するアルケニル基の数は1個以上であればよく、特に限定されないが、硬化性シリコーン樹脂組成物の硬化性の観点で、2個以上(例えば2〜50個)が好ましい。
【0153】
上記直鎖状ポリオルガノシロキサンが有するアルケニル基以外のケイ素原子に結合した基は、特に限定されないが、例えば、水素原子、有機基等が挙げられる。有機基としては、例えば、上述の一価の置換又は無置換炭化水素基の具体例が挙げられるが、なかでも、アルキル基(特にメチル基)、アリール基(特にフェニル基)が好ましい。
【0154】
また、上記直鎖状ポリオルガノシロキサンは、ケイ素原子に結合した基として、ヒドロキシル基、アルコキシ基を有していてもよい。
【0155】
上記直鎖状ポリオルガノシロキサンにおける、ケイ素原子に結合した基の全量(100モル%)に対するアルケニル基の割合は、特に限定されないが、0.1〜40モル%が好ましい。また、ケイ素原子に結合した基の全量(100モル%)に対するアルキル基(特にメチル基)の割合は、特に限定されないが、1〜20モル%が好ましい。さらに、ケイ素原子に結合した基の全量(100モル%)に対するアリール基(特にフェニル基)の割合は、特に限定されないが、30〜90モル%が好ましい。特に、上記直鎖状ポリオルガノシロキサンとして、ケイ素原子に結合した基の全量(100モル%)に対するアリール基(特にフェニル基)の割合が40モル%以上(例えば、45〜80モル%)であるものを使用することにより、硬化物の硫黄バリア性がより向上する傾向がある。また、ケイ素原子に結合した基の全量(100モル%)に対するアルキル基(特にメチル基)の割合が90モル%以上(例えば、95〜99モル%)であるものを使用することにより、硬化物の耐熱衝撃性がより向上する傾向がある。
【0156】
上記直鎖状ポリオルガノシロキサンの性状は、特に限定されず、例えば25℃において、液状であってもよいし、固体状であってもよい。
【0157】
上記直鎖状ポリオルガノシロキサンとしては、下記平均単位式:
(R
82SiO
2/2)
d1(R
83SiO
1/2)
d2(X
4O
1/2)
d3
で表されるポリオルガノシロキサンが挙げられる。上記平均単位式中、R
8は、同一又は異なって、一価の置換又は無置換炭化水素基であり、上述の一価の置換又は無置換炭化水素基の具体例が挙げられる。但し、R
8の一部はアルケニル基(特にビニル基)であり、その割合は、分子内に1個以上(好ましくは2個以上)となる範囲に制御される。例えば、R
8の全量(100モル%)に対するアルケニル基の割合は、0.1〜40モル%が好ましい。また、アルケニル基以外のR
8としては、アルキル基(特にメチル基)、アリール基(特にフェニル基)が好ましい。
【0158】
上記平均単位式中、X
4は上記X
1と同様に水素原子又はアルキル基である。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、特にメチル基が好ましい。
【0159】
上記平均単位式中、d1は正数、d2は0又は正数、d3は0又は正数である。
【0160】
上記直鎖状ポリオルガノシロキサンは、例えば、下記式(h)で表される。
【化11】
[上記式中、R
8は、同一又は異なって、一価の置換又は無置換炭化水素基である。但し、R
8の少なくとも1個(好ましくは、少なくとも2個)はアルケニル基である。m2は、5〜1000の整数である]
【0161】
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物におけるその他のポリオルガノシロキサンの含有量(配合量)は、特に限定されないが、硬化性シリコーン樹脂組成物(100重量%)に対して、0.01〜30重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜20重量%である。その他のポリオルガノシロキサンの含有量を上記範囲に制御することにより、硬化性シリコーン樹脂組成物の粘度や硬化物の物性のバランスの調整が可能となる場合がある。
【0162】
[ヒドロシリル化反応抑制剤]
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物は、硬化反応(ヒドロシリル化反応)の速度を調整するために、ヒドロシリル化反応抑制剤を含んでいてもよい。上記ヒドロシリル化反応抑制剤としては、公知乃至慣用のヒドロシリル化反応抑制剤を使用でき、特に限定されないが、例えば、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、フェニルブチノール等のアルキンアルコール;3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン等のエンイン化合物;チアゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0163】
上記ヒドロシリル化反応抑制剤は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。上記ヒドロシリル化反応抑制剤の含有量(配合量)は、硬化性シリコーン樹脂組成物の架橋条件等により異なるが、実用上、硬化性シリコーン樹脂組成物(100重量%)に対する含有量として、0.00001〜5重量%の範囲内が好ましい。
【0164】
[環状シロキサン]
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物は、上述のポリオルガノシロキサン((A)成分、(B)成分、(D)成分、(E)成分、その他のポリオルガノシロキサン)以外のシロキサン化合物として、例えば、分子内に2個以上の脂肪族炭素−炭素二重結合(特に、アルケニル基)を有する環状シロキサンを含んでいてもよい。また、本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物は、上記シロキサン化合物として、分子内に2個以上のヒドロシリル基を有する環状シロキサンを含んでいてもよい。上記各環状シロキサンは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0165】
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物における上記環状シロキサンの含有量(配合量)は、特に限定されないが、硬化性シリコーン樹脂組成物(100重量%)に対して、0.01〜30重量%が好ましく、特に好ましくは0.1〜20重量%、最も好ましくは0.5〜10重量%である。
【0166】
[溶媒]
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物は溶媒を含んでいてもよい。溶媒としては、公知乃至慣用の有機溶媒や水等が挙げられ、特に限定されないが、例えば、トルエン、ヘキサン、イソプロパノール、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。尚、溶媒は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。また、その含有量は特に限定されず、適宜選択できる。
【0167】
[蛍光体]
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物は蛍光体を含んでいてもよい。蛍光体としては、公知乃至慣用の蛍光体(例えば、光半導体装置分野で周知の蛍光体等)を使用することができ、特に限定されないが、例えば、青色光の白色光への変換機能を封止材に対して付与したい場合には、一般式A
3B
5O
12:M[式中、Aは、Y、Gd、Tb、La、Lu、Se、及びSmからなる群より選択された1種以上の元素を示し、Bは、Al、Ga、及びInからなる群より選択された1種以上の元素を示し、Mは、Ce、Pr、Eu、Cr、Nd、及びErからなる群より選択された1種以上の元素を示す]で表されるYAG系の蛍光体微粒子(例えば、Y
3Al
5O
12:Ce蛍光体微粒子、(Y,Gd,Tb)
3(Al,Ga)
5O
12:Ce蛍光体微粒子等);シリケート系蛍光体微粒子(例えば、(Sr,Ca,Ba)
2SiO
4:Eu等)等が挙げられる。尚、蛍光体は、周知慣用の表面処理がされたものであってもよい。また、蛍光体は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0168】
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物における蛍光体の含有量(配合量)は、特に限定されないが、硬化性シリコーン樹脂組成物(100重量%)に対して、0.01〜20重量%が好ましく、より好ましくは0.5〜10重量%である。蛍光体を上記範囲で含有することにより、光半導体装置において封止材による光の波長変換機能を十分に発揮させることができ、なおかつ、硬化性シリコーン樹脂組成物の粘度が高くなり過ぎず、硬化物作製(特に、封止作業)時の作業性がより向上する傾向がある。
【0169】
[その他の成分]
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物は、上述の成分以外の成分(「その他の成分」と称する場合がある)を含んでいてもよい。その他の成分としては、特に限定されないが、例えば、シリカフィラー、酸化チタン、アルミナ、ガラス、石英、アルミノケイ酸、酸化鉄、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、カーボンブラック、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素等の無機質充填剤や、これらの充填剤をオルガノハロシラン、オルガノアルコキシシラン、オルガノシラザン等の有機ケイ素化合物により処理した無機質充填剤;シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂等の有機樹脂微粉末;銀、銅等の導電性金属粉末等の充填剤、安定化剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤、熱安定化剤等)、難燃剤(リン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、無機系難燃剤等)、難燃助剤、補強材(他の充填剤等)、核剤、シランカップリング剤以外のカップリング剤、滑剤、ワックス、可塑剤、離型剤、耐衝撃性改良剤、色相改良剤、流動性改良剤、着色剤(染料、顔料等)、表面調整剤(例えば、各種ポリエーテル変性シリコーン、ポリエステル変性シリコーン、フェニル変性シリコーン、アルキル変性シリコーン等の化合物)、分散剤、消泡剤、脱泡剤、抗菌剤、防腐剤、粘度調整剤、増粘剤、その他の機能性添加剤(例えば、カルボン酸の亜鉛塩等の亜鉛化合物等)等の周知慣用の添加剤等が挙げられる。これらは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。尚、その他の成分の含有量(配合量)は、特に限定されず、適宜選択することが可能である。
【0170】
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物は、特に限定されないが、硬化性シリコーン樹脂組成物中に存在するヒドロシリル基1モルに対して、アルケニル基が0.2〜4モルとなるような組成(配合組成)であることが好ましく、特に好ましくは0.5〜1.5モル、最も好ましくは0.8〜1.2モルである。ヒドロシリル基とアルケニル基との割合を上記範囲に制御することにより、硬化物の耐熱衝撃性、硫黄バリア性が一層向上する傾向がある。
【0171】
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物における(A)成分の含有量(配合量)は、硬化性シリコーン樹脂組成物(100重量%)に対して、0.1〜60重量%が好ましく、より好ましくは0.5〜50重量%、さらに好ましくは1〜40重量%、特に好ましくは5〜30重量%、最も好ましくは10〜20重量%である。(A)成分の含有量を0.1重量%以上とすることにより、硬化物の硫黄バリア性がより向上する傾向がある。また、硬化物のタックが低減され、耐黄変性が向上するため、光半導体装置の品質及び耐久性が向上する傾向もある。一方、(A)成分の含有量を60重量%以下とすることにより、硬化物の耐熱衝撃性がより向上する傾向がある。
【0172】
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物に含まれるシロキサン化合物[(A)成分、(B)成分、(D)成分、(E)成分、及びその他のポリオルガノシロキサン]の総量(100重量%)に対する、(A)成分の割合は、特に限定されないが、5重量%以上が好ましく、より好ましくは10重量%以上、特に好ましくは15〜50重量%、最も好ましくは15〜30重量%である。上記割合を5重量%以上とすることにより、硬化物のタックがより低減し、硫黄バリア性、耐熱衝撃性が良好となる傾向がある。
【0173】
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物に含まれるアルケニル基をするシロキサン化合物[(A)成分、(D)成分、(E)成分、及びその他のポリオルガノシロキサンの総量](100重量%)における(A)成分の含有割合は、特に限定されないが、10重量%以上(例えば、10〜100重量%)が好ましく、特に好ましくは15重量%以上(例えば、15〜90重量%)、最も好ましくは20重量%以上(例えば20〜80重量%、好ましくは20〜50重量%、特に好ましくは20〜40重量%、最も好ましくは20〜35重量%)である。(A)成分の割合を10重量%以上とすることにより、耐熱衝撃性が良好となる傾向がある。
【0174】
また、(A)成分の含有量(配合量)は、硬化性シリコーン樹脂組成物に含まれる(B)成分100重量部に対して、50〜100重量部が好ましく、より好ましくは60〜90重量部、特に好ましくは70〜85重量部、最も好ましくは75〜85重量部である。
【0175】
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物における(B)成分の含有量(配合量)は、硬化性シリコーン樹脂組成物(100重量%)に対して、1〜60重量%が好ましく、より好ましくは5〜55重量%、特に好ましくは10〜50重量%、最も好ましくは15〜40重量%である。(B)成分の含有量を1重量%以上とすることにより、硬化性シリコーン樹脂組成物の硬化性がより向上し、硫黄バリア性がより向上する傾向がある。一方、(B)成分の含有量を60重量%以下とすることにより、硬化物の耐熱衝撃性がより向上する傾向がある。
【0176】
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物に含まれるシロキサン化合物[(A)成分、(B)成分、(D)成分、(E)成分、及びその他のポリオルガノシロキサン]の総量(総含有量;100重量%)に対する、(B)成分の割合は、特に限定されないが、10〜50重量%が好ましく、より好ましくは15〜40重量%、特に好ましくは20〜30重量%である。(B)成分を上記範囲で含有することにより、硫黄バリア性が良好となる傾向がある。
【0177】
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物におけるヒドロシリル基を有するシロキサン化合物[例えば、(B)成分]の含有量(配合量)は、特に限定されないが、アルケニル基を有するシロキサン化合物[(A)成分、(D)成分、(E)成分、及びその他のポリオルガノシロキサンの総量]100重量部に対して、15〜50重量部が好ましく、より好ましくは20〜45重量部、特に好ましくは25〜40重量部、最も好ましくは25〜35重量部が好ましい。(B)成分の含有量を上記範囲に制御することにより、硬化性シリコーン樹脂組成物の硬化性がより向上し、効率的に硬化物を形成することができる傾向がある。
【0178】
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物における(D)成分の含有量(配合量)は、硬化性シリコーン樹脂組成物(100重量%)に対して、0.1〜20重量%が好ましく、より好ましくは0.5〜10重量%、特に好ましくは0.8〜5重量%である。(D)成分の含有量が上記範囲を下回ると、得られる硬化物の耐熱衝撃性が低下する傾向がある。一方、(D)成分の含有量が上記範囲を上ると、相対的に(E)成分の含有量が低下するため、硫黄化合物(特にSO
X)に対するバリア性が低下する傾向がある。
【0179】
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物に含まれるアルケニル基を有するするシロキサン化合物[(A)成分、(D)成分、(E)成分、及びその他のポリオルガノシロキサンの総量](100重量%)における(D)成分の含有割合は、特に限定されないが、1〜30%が好ましく、特に好ましくは1〜20重量%、最も好ましくは1〜10重量%である。上記割合を30重量%以下とすることにより、相対的に(A)成分を増量できるため、硬化物の硫黄化合物(特にSO
X)に対するバリア性がより向上し、また、タックが低減し、黄変が抑制される場合がある。一方、上記割合を1重量%以上とすることにより、耐熱衝撃性が良好となる場合がある。
【0180】
また、(D)成分の含有量(配合量)は、硬化性シリコーン樹脂組成物に含まれる(B)成分100重量部に対して、1〜35重量部が好ましく、特に好ましくは3〜30重量部、最も好ましくは4〜25重量部である。
【0181】
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物における(E)成分の含有量(配合量)は、特に限定されないが、(A)成分及び(B)成分の合計100重量部に対して、50〜200重量部が好ましく、特に好ましくは75〜175重量部、最も好ましくは100〜150重量部である。
【0182】
また、(E)成分の含有量(配合量)は、アルケニル基をするシロキサン化合物[(A)成分、(D)成分、(E)成分、及びその他のポリオルガノシロキサンの総量](100重量%)において、55〜85重量%が好ましく、特に好ましくは60〜75重量%である。(E)成分の含有量を上記範囲に制御することにより、硬化物の耐熱衝撃性、硫黄バリア性、及び耐熱性がさらに向上する場合がある。
【0183】
また、(E)成分の含有量(配合量)は、硬化性シリコーン樹脂組成物に含まれる(B)成分100重量部に対して、100〜400重量部が好ましく、特に好ましくは150〜300重量部、最も好ましくは200〜300重量部である。
【0184】
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物に含まれるシロキサン化合物[(A)成分、(B)成分、(D)成分、(E)成分、及びその他のポリオルガノシロキサン]の総量(総含有量)は、特に限定されないが、硬化性シリコーン樹脂組成物(100重量%)に対して、70重量%以上(例えば、70重量%以上100重量%未満)が好ましく、特に好ましくは80重量%以上(例えば、80〜99重量%)、最も好ましくは90重量%以上(例えば、90〜99重量%)である。上記総量を70重量%以上とすることにより、硬化物の耐熱性、透明性がより向上する傾向がある。
【0185】
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物に含まれるアルケニル基を有するシロキサン化合物[(A)成分、(D)成分、(E)成分、及びその他のポリオルガノシロキサンの総量]は、特に限定されないが、硬化性シリコーン樹脂組成物(100重量%)に対して、40〜90重量%が好ましく、特に好ましくは50〜85重量%、最も好ましくは60〜80重量%である。上記総量を40重量%以上とすることにより、硬化物の耐久性、透明性がより向上する傾向がある。一方、上記総量を90重量%以下とすることにより、硬化性がより向上する傾向がある。
【0186】
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物に含まれるシロキサン化合物[(A)成分、(B)成分、(D)成分、(E)成分、及びその他のポリオルガノシロキサン]の総量(総含有量;100重量%)に対する、(B)成分と(E)成分の割合(合計割合)は、特に限定されないが、50重量%以上(例えば、50〜90重量%)が好ましく、特に好ましくは60重量%以上、最も好ましくは65〜85重量%である。
【0187】
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物における(C)成分の含有量(配合量)は、特に限定されないが、硬化性シリコーン樹脂組成物に含まれるアルケニル基の全量1モル(1モル当たり)に対して、1×10
-8〜1×10
-2モルが好ましく、特に好ましくは1.0×10
-6〜1.0×10
-3モルである。(C)成分の含有量を1×10
-8モル以上とすることにより、より効率的に硬化物を形成させることができる。一方、(C)成分の含有量を1×10
-2モル以下とすることにより、より色相に優れた(着色の少ない)硬化物を得ることができる。
【0188】
また、(C)成分の含有量(配合量)は、ヒドロシリル化触媒中の白金族金属が重量単位で、例えば0.01〜1000ppmの範囲内となる量が好ましく、0.1〜500ppmの範囲内となる量がより好ましい。(C)成分を上記範囲で含有すると、より効率的に硬化物を形成させることができ、より色相に優れた硬化物を得ることができる。
【0189】
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物は、特に限定されないが、例えば、上記の各成分を室温で(又は必要に応じて加熱しながら)撹拌・混合することにより調製することができる。尚、本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物は、各成分があらかじめ混合されたものをそのまま使用する1液系の組成物として使用することもできるし、例えば、別々に調製しておいた2以上の成分を使用前に所定の割合で混合して使用する多液系(例えば、2液系)の組成物として使用することもできる。
【0190】
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物は、特に限定されないが、常温(約25℃)で液体であることが好ましい。より具体的には、本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物の25℃における粘度としては、300〜2万mPa・sが好ましく、特に好ましくは500〜1万mPa・s、最も好ましくは1000〜8000mPa・sである。上記粘度が300mPa・s以上であることにより、硬化物の耐熱性がより向上する傾向がある。一方、上記粘度が2万mPa・s以下であることにより、硬化性シリコーン樹脂組成物の調製がしやすく、その生産性や取り扱い性がより向上し、また、硬化物に気泡が残存しにくくなるため、硬化物(特に、封止材)の生産性や品質がより向上する傾向がある。尚、硬化性シリコーン樹脂組成物の粘度は、上述のラダー型ポリオルガノシルセスキオキサンの粘度と同様の方法で測定される。
【0191】
<硬化物>
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物を硬化(特に、ヒドロシリル化反応により硬化)させることによって、硬化物(「本発明の硬化物」と称する場合がある)が得られる。硬化の際の条件は、特に限定されず、従来公知の条件より適宜選択することができるが、例えば、反応速度の点から、温度(硬化温度)は25〜180℃(より好ましくは60〜150℃)が好ましく、時間(硬化時間)は5〜720分が好ましい。本発明の硬化物は、ポリシロキサン系材料特有の高い耐熱性及び透明性を有することに加え、耐熱衝撃性、被着体に対する密着性、及び硫黄バリア性に優れた硬化物が得られる。
【0192】
<封止剤、封止材、光半導体装置>
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物は、特に、光半導体装置における光半導体素子(LED素子)の封止用樹脂組成物(光半導体封止用樹脂組成物)(「本発明の封止剤」と称する場合がある)として好ましく使用できる。本発明の封止剤を硬化させることにより得られる封止材(硬化物)は、ポリシロキサン系材料特有の高い耐熱性及び透明性を有することに加え、耐熱衝撃性、被着体に対する密着性、及び硫黄バリア性に優れる。このため、本発明の封止材は、特に、高輝度、短波長の光半導体素子の封止材等として好ましく使用できる。本発明の封止材を使用して光半導体素子を封止することにより、光半導体装置(「本発明の光半導体装置」と称する場合がある)を得ることができる。すなわち、本発明の光半導体装置は、光半導体素子と、該光半導体素子を封止する封止材とを少なくとも含み、上記封止材が本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物(本発明の封止剤)の硬化物(本発明の硬化物)である光半導体装置である。尚、光半導体素子の封止は、公知乃至慣用の方法により実施でき、特に限定されないが、例えば、本発明の封止剤を所定の成形型内に注入し、所定の条件で加熱硬化することで実施できる。硬化温度と硬化時間は、特に限定されず、硬化物の調製時と同様の範囲で適宜設定することができる。本発明の光半導体装置の一例を
図1に示す。
【0193】
<光半導体用レンズの形成用組成物、光半導体装置>
また、本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物は、光半導体装置に備えられるレンズ(光半導体用レンズ)を形成するための組成物(光半導体用レンズの形成用組成物)(「本発明のレンズ形成用組成物」と称する場合がある)としても好ましく使用できる。本発明のレンズ形成用組成物を硬化させることにより得られるレンズは、高い耐熱性及び透明性を有することに加えて、被着体に対する密着性及び硫黄バリア性に優れる。本発明のレンズ形成用組成物を使用することにより、光半導体装置(これも「本発明の光半導体装置」と称する場合がある)を得ることができる。すなわち、本発明の光半導体装置は、光半導体素子とレンズとを少なくとも含み、上記レンズが本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物(本発明のレンズ形成用組成物)の硬化物(本発明の硬化物)である光半導体装置である。尚、本発明のレンズ形成用組成物を用いた光半導体用レンズの製造は、公知乃至慣用の方法により実施でき、特に限定されないが、例えば、本発明のレンズ形成用組成物を所定の成形型内に注入して所定の条件で加熱硬化する方法や、ディスペンサー等によって塗布して所定の条件で加熱硬化する方法等によって実施できる。硬化温度と硬化時間は、特に限定されず、硬化物の調製時と同様の範囲で適宜設定することができる。本発明の光半導体装置が上記レンズを備える態様は特に限定されず、例えば、本発明の光半導体装置が封止材を有する場合には、該封止材の表面上の一部又は全部に配置された態様、上記光半導体装置の光半導体素子を封止する態様(すなわち、本発明の硬化物が封止材とレンズとを兼ねる態様)等であってもよい。より具体的には、例えば、国際公開第2012/147342号、特開2012−188627号公報、特開2011−233605号公報等に開示された態様等が挙げられる。
【0194】
本発明の光半導体装置は、光半導体素子と、該光半導体素子を封止する封止材と、レンズとを含み、上記封止材が本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物(本発明の封止剤)の硬化物(本発明の硬化物)であり、なおかつ、上記レンズが本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物(本発明のレンズ形成用組成物)の硬化物(本発明の硬化物)である光半導体装置であってもよい。
【0195】
本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物は、上述の封止材用途(光半導体素子の封止材用途)及びレンズ形成用途(光半導体装置におけるレンズ形成用途)に限定されず、例えば、光半導体装置以外の半導体装置における半導体素子の封止材、機能性コーティング剤、耐熱プラスチックレンズ、透明機器、接着剤(耐熱透明接着剤等)、電気絶縁材(絶縁膜等)、積層板、コーティング剤、インク、塗料、シーラント、レジスト、複合材料、透明基材、透明シート、透明フィルム、光学素子、光学レンズ、光学部材、光造形、電子ペーパー、タッチパネル、太陽電池基板、光導波路、導光板、ホログラフィックメモリ等の光学関連や半導体関連の用途に好ましく使用できる。
【0196】
特に、本発明の硬化性シリコーン樹脂組成物は、従来の樹脂材料では対応することが困難であった、高輝度・短波長の光半導体装置において光半導体素子を被覆する封止材、高耐熱・高耐電圧の半導体装置(パワー半導体等)において半導体素子を被覆する封止材等の用途に好ましく使用できる。
【実施例】
【0197】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0198】
<
1H−NMR測定方法>
1H−NMRの測定はCDCl
3(和光純薬工業(株)製、032−18013)中、CHCl
3を内部標準として(δ=7.26)、核磁気共鳴装「JNM ECA−500」(日本電子(株)製)で測定した。
<ビニル基重量率、フェニル基重量率の算出方法>
ビニル基重量率及びフェニル基重量率はCDCl
3(和光純薬工業(株)製、032−18013)中、内部標準物質として1,1,1,2,2,3,3−ヘプタクロロプロパン(東京化成工業(株)製、H0015)、(δ=6.51)を用いて
1H−NMRで算出した。
<数平均分子量及び重量平均分子量の測定方法>
数平均分子量及び重量平均分子量の測定は以下の条件で行った。
Alliance HPLCシステム 2695(Waters製)
Refractive Index Detector 2414(Waters製)
カラム:Tskgel GMH
HR−M(東ソー(株)製)×2個
ガードカラム:Tskgel guard column H
HRL(東ソー(株)製)
カラムオーブン:COLUMN HEATER U−620(Sugai製)
溶媒:THF
測定温度:40℃
【0199】
合成例1((D)成分の合成)
(工程1)
反応容器に、フェニルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製)15.86g及びメチルイソブチルケトン(MIBK)6.16gを仕込み、これらの混合物を10℃まで冷却した。上記混合物に水4.32g及び5Nの塩酸0.16g(塩化水素として2.4mmol)を1時間かけて滴下した。滴下後、これらの混合物を10℃で1時間保持した。その後、MIBKを26.67g添加して、反応溶媒を希釈した。
次に、反応容器の温度を70℃まで昇温し、70℃になった時点で5Nの塩酸0.16g(塩化水素として25mmol)を添加し、重縮合反応を窒素雰囲気下で4時間行った。
続いて、上記反応溶液にジビニルテトラメチルジシロキサン11.18g及びヘキサメチルジシロキサン3.25gを添加して、シリル化反応を70℃で4時間行った。その後、反応溶液を冷却し、下層液が中性になるまで水洗を行い、その後、上層液を分取した。
次に、当該上層液から、1mmHg、40℃の条件で溶媒を留去し、無色透明の液体のビニル基を有するラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(a)(ビニル基重量率:6.60重量%、数平均分子量:840、分子量分散度(Mw/Mn):1.06)13.0gを得た。
【0200】
(工程2)
窒素雰囲気下、冷却管、マグネチックスターラー、熱電対を備え付けた300mLの4口フラスコに、得られたラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(a)(50.05g、ビニルシリル基:122.1mmol)、トルエン(50.06g、543.3mmol)、Pt−vts−トルエン溶液(白金として2.0重量%含有)(0.0173g,1.773×10
-3mmol)を加え、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジフェニルトリシロキサン(12.01g、36.11mmol)とトルエン(40.05g、434.7mmol)の混合溶液を85℃に維持しながら50分かけて滴下した。85℃で6時間撹拌後、化合物(d-1)を含む反応液を得た。
得られた反応液を少量サンプリングして、
1H−NMRにより反応生成物の構造を確認した。その結果、ヒドロシリル基由来の
1H−NMRシグナルがないことが確認できた。
低沸点分を減圧留去して、60.3gの無色透明液状の化合物(d-1)を得た。
化合物(d-1)の
1H−NMRスペクトルは、以下の通りであった。
1H-NMR(JEOL ECA500(500MHz、CDCl
3))δ:0.31-0.61(br),5.49-6.19(br),7.05-7.86(br).
【0201】
合成例2((D)成分の合成)
窒素雰囲気下、冷却管、マグネチックスターラー、熱電対を備え付けた300mLの4口フラスコに合成例1の工程1と同様の方法で得られたラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(a)(55.07g、ビニルシリル基:134.4mmol)、トルエン(55.06g、597.6mmol)、Pt−vts−トルエン溶液(0.0172g、1.763×10
-3mmol)を加え、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジフェニルトリシロキサン(8.97g、26.97mmol)とトルエン(22.04g、239.2mmol)の混合溶液を85℃に維持しながら50分かけて滴下した。85℃で6時間撹拌後、化合物(d-2)を含む反応液を得た。
得られた化合物は合成例1と同様の方法で、ヒドロシリル基由来の
1H−NMRシグナルがないことを確認した。低沸点分を減圧留去して、61.1gの無色透明液状の化合物(d-2)を得た。
1H-NMR(JEOL ECA500(500MHz、CDCl
3))δ:0.31-0.55(br),5.49-6.25(br),6.99-7.87(br).
【0202】
合成例3((D)成分の合成)
窒素雰囲気下、冷却管、マグネチックスターラー、熱電対を備え付けた300mLの4口フラスコに合成例1の工程1と同様の方法で得られたラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(a)(50.02g、ビニルシリル基:122.1mmol)、トルエン(50.03g、543.0mmol)、Pt−vts−トルエン溶液(0.0143g、1.466×10
-3mmol)を加え、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン(7.53g、36.12mmol)とトルエン(19.02g、206.4mmol)の混合溶液を85℃に維持しながら50分かけて滴下した。85℃で6時間撹拌後、化合物(d-3)を含む反応液を得た。
得られた化合物は合成例1と同様の方法で、ヒドロシリル基由来の
1H−NMRシグナルがないことを確認した。
低沸点分を減圧留去して、54.1gの無色透明液状の化合物(d-3)を得た。
1H-NMR(JEOL ECA500(500MHz、CDCl
3))δ:0.27-0.35(br),5.49-6.18(br),7.05-7.81(br).
【0203】
合成例4((D)成分の合成)
窒素雰囲気下、冷却管、マグネチックスターラー、熱電対を備え付けた300mLの4口フラスコに合成例1の工程1と同様の方法で得られたラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(a)(50.30g、ビニルシリル基:122.7mmol)、トルエン(50.30g、545.9mmol)、Pt−vts−トルエン溶液(0.0142g、1.456×10
-3mmol)を加え、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン(5.09g、24.41mmol)とトルエン(16.02g、173.9mmol)の混合溶液を85℃に維持しながら50分かけて滴下した。85℃で6時間撹拌後、化合物(d-4)を含む反応液を得た。
得られた化合物は合成例1と同様の方法で、ヒドロシリル基由来の
1H−NMRシグナルがないことを確認した。
低沸点分を減圧留去して、53.1gの無色透明液状合の化合物(d-4)を得た。
1H-NMR(JEOL ECA500(500MHz、CDCl
3))δ:0.28-0.47(br),5.48-6.27(br),6.99-7.87(br).
【0204】
合成例5((D)成分の合成)
(工程1)
窒素雰囲気下、冷却管、マグネチックスターラー、熱電対を備え付けた500mLの4口フラスコに1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン(56.45g、270.8mmol)、トルエン(133.9g,1454.2mmol)、Pt−vts−トルエン溶液(0.0252g、2.584×10
-3mmol)を加え、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(40.37g,216.6mmol)を80℃に維持しながら50分かけて滴下した。80℃で6時間撹拌後、両末端にヒドロシリル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキシシルアルキレンを含む反応液を得た。反応生成物の構造は
1H−NMRにより確認した。その結果、ビニル基由来の
1H−NMRシグナルがないことが確認できた。その後、室温に冷却した。
【0205】
(工程2)
窒素雰囲気下、冷却管、マグネチックスターラー、熱電対を備え付けた300mLの4口フラスコに合成例1の工程1と同様の方法で得られたラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(a)(37.90g、ビニルシリル基:92.48mmol)、トルエン(40.03g、434.5mmol)、Pt−vts−トルエン溶液(0.0099g、1.015×10
-3mmol)、工程1で得られた反応液40.10g(反応液中のヒドロシリル基:18.53mmol)を85℃に維持しながら50分かけて滴下した。85℃で6時間撹拌後、化合物(d-5)を含む反応液を得た。
得られた化合物は合成例1と同様の方法で、ヒドロシリル基由来の
1H−NMRシグナルがないことを確認した。
低沸点分を減圧留去して、52.4gの無色透明液状の化合物(d-5)を得た。
1H-NMR(JEOL ECA500(500MHz、CDCl
3))δ:0.34-0.62(br),1.02-1.08(br),5.46-6.26(br),6.97-7.87(br).
【0206】
合成例6((D)成分の合成)
(工程1)
窒素雰囲気下、冷却管、マグネチックスターラー、熱電対を備え付けた500mLの4口フラスコに1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン(56.45g、270.8mmol)、トルエン(133.9g、1454.2mmol)、Pt−vts−トルエン溶液(0.0252g、2.584×10
-3mmol)を加え、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(40.37g、216.6mmol)を80℃に維持しながら50分かけて滴下した。80℃で6時間撹拌後、両末端にヒドロシリル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキシシルアルキレンを含む反応液を得た。反応生成物の構造は
1H−NMRにより確認した。その結果、ビニル基由来の
1H−NMRシグナルがないことが確認できた。その後、室温に冷却した。
【0207】
(工程2)
窒素雰囲気下、冷却管、マグネチックスターラー、熱電対を備え付けた300mLの4口フラスコに合成例1の工程1と同様の方法で得られたラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(a)(31.57g、ビニルシリル基:77.03mmol)、トルエン(35.04g、380.3mmol)、Pt−vts−トルエン溶液(0.0078g、7.966×10
-4mmol)、工程1で得られた反応液50.12g(反応液中のヒドロシリル基:23.16mmol)を85℃に維持しながら50分かけて滴下した。85℃で6時間撹拌後、化合物(d-6)を含む反応液を得た。
得られた化合物は合成例1と同様の方法で、ヒドロシリル基由来の
1H−NMRシグナルがないことを確認した。
低沸点分を減圧留去して、49.8gの無色透明液状の化合物(d-6)を得た。
1H-NMR(JEOL ECA500(500MHz、CDCl
3))δ:0.29-0.59(br),1.02-1.08(br),5.49-6.20(br),6.97-7.87(br).
【0208】
合成例7((D)成分の合成)
(工程1)
窒素雰囲気下、冷却管、マグネチックスターラー、熱電対を備え付けた500mLの4口フラスコに1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン(62.54g、300.0mmol)、トルエン(154.3g、1674.6mmol)、Pt−vts−トルエン溶液(0.0238g、2.440×10
-3mmol)を加え、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(31.15g、210.0mmol)を80℃に維持しながら50分かけて滴下した。80℃で6時間撹拌後、両末端にヒドロシリル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキシシルアルキレンを含む反応液を得た。反応生成物の構造は
1H−NMRにより確認した。その結果、ビニル基由来の
1H−NMRシグナルがないことが確認できた。低沸点分を減圧留去して、92.8gの無色透明液状ヒドロシリル基含有直鎖状ポリオルガノシロキシシルアルキレンを得た。
【0209】
(工程2)
窒素雰囲気下、冷却管、マグネチックスターラー、熱電対を備え付けた300mLの4口フラスコに合成例1の工程1と同様の方法で得られたラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(a)(35.43g、ビニルシリル基:86.45mmol)、トルエン(45.00g、486.6mmol)、Pt−vts−トルエン溶液(0.0092g、9.432×10
-4mmol)、工程1で得られたヒドロシリル基含有直鎖状ポリオルガノシロキシシルアルキレン(17.51g、ヒドロシリル基:26.07mmol)とトルエン(20.00g、217.1mmol)の混合溶液を85℃に維持しながら50分かけて滴下した。85℃で6時間撹拌後、化合物(d-7)を含む反応液を得た。
得られた化合物は合成例1と同様の方法で、ヒドロシリル基由来の
1H−NMRシグナルがないことを確認した。
低沸点分を減圧留去して、51.0gの無色透明液状の化合物(d-7)を得た。
1H-NMR(JEOL ECA500(500MHz、CDCl
3))δ:0.28-0.62(br),1.02-1.08(br),5.47-6.20(br),6.97-7.86(br).
【0210】
合成例8((D)成分の合成)
(工程1)
窒素雰囲気下、冷却管、マグネチックスターラー、熱電対を備え付けた500mLの4口フラスコに1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン(62.54g、300.0mmol)、トルエン(154.3g、1674.6mmol)、Pt−vts−トルエン溶液(0.0238g、2.440×10
-3mmol)を加え、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(31.15g、210.0mmol)を80℃に維持しながら50分かけて滴下した。80℃で6時間撹拌後、両末端にヒドロシリル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキシシルアルキレンを含む反応液を得た。反応生成物の構造は
1H−NMRにより確認した。その結果、ビニル基由来の
1H−NMRシグナルがないことが確認できた。低沸点分を減圧留去して、92.8gの無色透明液状ヒドロシリル基含有直鎖状ポリオルガノシロキシシルアルキレンを得た。
【0211】
(工程2)
窒素雰囲気下、冷却管、マグネチックスターラー、熱電対を備え付けた300mLの4口フラスコに合成例1の工程1と同様の方法で得られたラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(a)(30.50g、ビニルシリル基:74.59mmol)、トルエン(45.00g、488.7mmol)、Pt−vts−トルエン溶液(0.0080g、8.201×10
-4mmol)、工程1で得られたヒドロシリル基含有直鎖状ポリオルガノシロキシシルアルキレン(30.05g、ヒドロシリル基:44.74mmol)とトルエン(30.04g、326.0mmol)の混合溶液を85℃に維持しながら50分かけて滴下した。85℃で6時間撹拌後、化合物(d-8)を含む反応液を得た。
得られた化合物は合成例1と同様の方法で、ヒドロシリル基由来の
1H−NMRシグナルがないことを確認した。
低沸点分を減圧留去して、58.8gの無色透明液状の化合物(d-8)を得た。
1H-NMR(JEOL ECA500(500MHz、CDCl
3))δ:0.31-0.63(br),1.01-1.07(br),5.46-6.19(br),7.05-7.85(br).
【0212】
【表1】
【0213】
実施例1
[硬化性シリコーン樹脂組成物の製造]
まず、表1に示すように、「ETERLED GS5145A」20重量部及び合成例1で得られた化合物(d-1)5重量部を混合し、40℃で2時間撹拌して、A剤を調製した。
次に、上記で得たA剤に、B剤として「ETERLED GS5145B」80重量部を混合し、自公転式撹拌装置(商品名「あわとり練太郎」、(株)シンキー製、型番:ARE−310)を用いて撹拌5分、脱泡2分で混練し、硬化性シリコーン樹脂組成物を製造した。
【0214】
[光半導体装置の製造]
図1に示す態様のLEDパッケージ(硫黄腐食性試験、吸湿リフロー試験用:InGaN素子、3.5mm×2.8mm、熱衝撃性試験用:InGaN素子、5.0mm×5.0mm)に、上記で得られた硬化性シリコーン樹脂組成物を注入し、60℃で1時間、続いて80℃で1時間、さらに150℃で4時間加熱することで、上記硬化性シリコーン樹脂組成物の硬化物により光半導体素子が封止された光半導体装置を製造した。
【0215】
実施例2〜15、比較例1〜6
硬化性シリコーン樹脂組成物の組成を表1(単位:重量部)に示す通りに変更した以外は実施例1と同様にして、硬化性シリコーン樹脂組成物及び光半導体装置を製造した。
【0216】
実施例16、17
表2に示すように、「ETERLED GS5145A」20重量部、及び合成例5で得られた化合物(d-5)5重量部、「MA−DGIC」0.1重量部[実施例17ではさらに「OFS−6040」0.4重量部を混合し]、70℃で2時間撹拌して、A剤を調製した。
次に、上記で得たA剤に、B剤として商品名「ETERLED GS5145B」80重量部を混合し、自公転式撹拌装置(商品名「あわとり練太郎」、(株)シンキー製、型番:ARE−310)を用いて撹拌5分、脱泡2分で混練し、硬化性シリコーン樹脂組成物を製造した。
【0217】
(評価)
上記で得られた硬化性シリコーン樹脂組成物及び光半導体装置について、以下の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0218】
[硫黄腐食性試験]
上記で製造した光半導体装置を試料として用いた。
まず、上記試料について、全光束測定機(オプトロニックラボラトリーズ社製、マルチ分光放射測定システム「OL771」)を用いて、20mAの電流を流した際の全光束(単位:lm)を測定し、これを「腐食性試験前の全光束」とした。
次に、上記試料と硫黄粉末(キシダ化学(株)製)0.3gとを450mLのガラス瓶に入れ、さらに上記ガラス瓶をアルミ製の箱の中に入れた。続いて、上記アルミ製の箱を80℃のオーブン(ヤマト科学(株)製、型番:DN−64)に入れ、24時間後に取り出した。加熱後の試料について上記と同様に全光束を測定し、これを「腐食性試験後の全光束」とした。そして、腐食性試験前後における全光束の維持率(%)[=100×(腐食性試験後の全光束(lm))/(腐食性試験前の全光束(lm))]を算出した。
光度維持率が高いほど、硬化物(封止材)が腐食性ガスに対するバリア性に優れることを示す。尚、硬化性シリコーン樹脂組成物ごとに(各実施例・比較例ごとに)10個の光半導体装置について光度維持率を測定・算出し、表2にはこれらの光度維持率の平均値(N=10)を示した。
【0219】
[熱衝撃性試験]
上記で製造した光半導体装置を試料として用いた。試料は、硬化性シリコーン樹脂組成物ごとに10個ずつ用いた。尚、試料は、試験前に20mAの電流を通電した時に点灯するものであることを確認した上で用いた。
上記試料について、熱衝撃試験機(エスペック(株)製、型番:TSB−21)を用いて、温度−40℃で5分間、続いて温度100℃で5分間曝露することを1サイクルとした熱衝撃付与を100サイクル実施し、その後、100サイクルの熱衝撃を付与した後の試料について、20mAの電流を通電し、点灯しなかった試料の数を計測した。
上記試料について、熱衝撃付与を200サイクル、及び500サイクル実施した場合についても同様に行った。
【0220】
[総合判定]
実施例及び比較例で得られた硬化性シリコーン樹脂組成物について、上記硫黄腐食性試験、及び熱衝撃性試験の評価結果に基づき、以下の基準で総合判定を行った。
○(良好である):硫黄腐食性試験の評価結果が80%以上であり、且つ熱衝撃性試験において、200サイクルの熱衝撃を付与した後の評価結果が○である。
×(不良である):硫黄腐食性試験の評価結果が80%未満である、及び/又は熱衝撃性試験において、200サイクルの熱衝撃を付与した後の評価結果が×である。
【0221】
【表2】
【0222】
表2に記載の各成分を以下に説明する。
(A剤)
GS5145A:(A)成分を含むシリコーン樹脂[(C)成分(ヒドロシリル化触媒)を含む]、商品名「ETERLED GS5145A」、長興材料工業製
OE6630A:(A)成分を含まないシリコーン樹脂[(C)成分(ヒドロシリル化触媒)を含む]、商品名「OE−6630A」、東レ・ダウコーニング(株)製
OE6631A:(A)成分を含まないシリコーン樹脂[(C)成分(ヒドロシリル化触媒)を含む]、商品名「OE−6631A」、東レ・ダウコーニング(株)製
OE6650A:(A)成分を含まないシリコーン樹脂[(C)成分(ヒドロシリル化触媒)を含む]、商品名「OE−6650A」、東レ・ダウコーニング(株)製
化合物(d-1)〜(d-8):合成例1〜8で得られた化合物
ラダー型ポリオルガノシルセスキオキサン(a):合成例1の工程1で得られた化合物
MA−DGIC:モノアリルジグリシジルイソシアヌレート((F)成分)、商品名「MA−DGIC」、四国化成工業(株)製
OFS−6040:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン((G)成分)、商品名「XIAMETER OFS−6040」、ダウコーニング社製
(B剤)
GS5145B:(B)成分及び(E)成分を含むシリコーン樹脂、商品名「ETERLED GS5145B」、長興材料工業製
OE6630B:(B)成分及び(E)成分を含むシリコーン樹脂、商品名「OE−6630B」、東レ・ダウコーニング(株)製
OE6631B:(B)成分及び(E)成分を含むシリコーン樹脂、商品名「OE−6631B」、東レ・ダウコーニング(株)製
OE6650B:(B)成分及び(E)成分を含むシリコーン樹脂、商品名「OE−6650B」、東レ・ダウコーニング(株)製