特許第6452555号(P6452555)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6452555
(24)【登録日】2018年12月21日
(45)【発行日】2019年1月16日
(54)【発明の名称】張り車回転軸取外装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 7/06 20060101AFI20190107BHJP
   B66B 7/00 20060101ALI20190107BHJP
【FI】
   B66B7/06 J
   B66B7/00 K
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-114770(P2015-114770)
(22)【出願日】2015年6月5日
(65)【公開番号】特開2017-1775(P2017-1775A)
(43)【公開日】2017年1月5日
【審査請求日】2017年9月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルテクノサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100117776
【弁理士】
【氏名又は名称】武井 義一
(74)【代理人】
【識別番号】100188329
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 義行
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(74)【代理人】
【識別番号】100090011
【弁理士】
【氏名又は名称】茂泉 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100194939
【弁理士】
【氏名又は名称】別所 公博
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 純
【審査官】 羽月 竜治
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−301667(JP,A)
【文献】 実開平07−019281(JP,U)
【文献】 実開昭49−006298(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00− 7/12
B25B 25/00−33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
調速機ロープに張力を発生させる張り車装置の軸受支持部材から回転軸を取り外す張り車回転軸取外装置であって、
昇降路の壁と前記回転軸との間に設けられ、前記軸受支持部材に対して固定される基部と、
前記基部に設けられ、前記回転軸と前記基部とを繋ぐ直線に沿って前記基部に対して移動可能な押出可動部と、
前記押出可動部を移動させる変位部と
を備え、
前記押出可動部は、前記基部から前記回転軸に向かう方向に移動することによって、前記回転軸を前記軸受支持部材から押し出し、
前記基部は、前記基部が前記壁に接触した状態で前記押出可動部が前記基部から前記回転軸に向かう方向に前記回転軸を押すことによって、前記軸受支持部材に対して固定されることを特徴とする張り車回転軸取外装置。
【請求項2】
前記基部は、前記基部が前記壁に接触した状態で前記押出可動部が前記基部から前記回転軸に向かう方向に前記回転軸を押すことによって、前記基部と前記壁との間および前記押出可動部と前記回転軸との間に摩擦力が発生して、前記軸受支持部材に対して固定されることを特徴とする請求項1に記載の張り車回転軸取外装置。
【請求項3】
前記基部に設けられ、前記張り車装置の張り車を支持する下腕部をさらに備え
前記下腕部は、前記張り車に厚さ方向に延びて形成された貫通孔に挿入されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の張り車回転軸取外装置。
【請求項4】
調速機ロープに張力を発生させる張り車装置の軸受支持部材から回転軸を取り外す張り車回転軸取外装置であって、
昇降路の壁と前記回転軸との間に設けられ、前記軸受支持部材に対して固定される基部と、
前記基部に設けられ、前記回転軸と前記基部とを繋ぐ直線に沿って前記基部に対して移動可能な押出可動部と、
前記押出可動部を移動させる変位部と、
前記基部に設けられ、前記張り車装置の張り車を支持する下腕部と
を備え、
前記押出可動部は、前記基部から前記回転軸に向かう方向に移動することによって、前記回転軸を前記軸受支持部材から押し出し、
前記下腕部は、前記張り車に厚さ方向に延びて形成された貫通孔に挿入されることを特徴とする張り車回転軸取外装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、張り車装置の軸受支持部材から回転軸を取り外す張り車回転軸取外装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベータの調速機ロープに所定の張力を発生させるための張り車装置であって、調速機ロープが巻き掛けられる張り車と、張り車に設けられる回転軸と、回転軸に設けられる軸受と、軸受を介して回転軸を支持する軸受支持部材と、軸受支持部材に設けられる張り車おもりとを備え、張り車おもりの重量が張り車に加えられることによって、調速機ロープに所定の張力が発生する張り車装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−149390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、張り車装置のメンテナンスを行う場合などには、回転軸を軸受支持部材から取り外す作業が行われる。回転軸を軸受支持部材から取り外す場合には、作業者がハンマーを持ち、作業者がそのハンマーを用いて回転軸を軸方向にたたいて、回転軸を軸受支持部材に対して軸方向に移動させることが考えられる。しかしながら、昇降路の壁と回転軸との間のスペースがハンマーを挿入することができない程度に狭い場合には、作業者がハンマーを用いて回転軸を軸方向にたたくことができないので、回転軸を軸受支持部材から取り外すことが困難であるという問題点があった。
【0005】
この発明は、軸受支持部材から回転軸をより簡単に取り外すことができる張り車回転軸取外装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る張り車回転軸取外装置は、調速機ロープに張力を発生させる張り車装置の軸受支持部材から回転軸を取り外す張り車回転軸取外装置であって、昇降路の壁と回転軸との間に設けられ、軸受支持部材に対して固定される基部と、基部に設けられ、回転軸と基部とを繋ぐ直線に沿って基部に対して移動可能な押出可動部と、押出可動部を移動させる変位部とを備え、押出可動部は、基部から回転軸に向かう方向に移動することによって、回転軸を軸受支持部材から押し出し、基部は、基部が壁に接触した状態で押出可動部が基部から回転軸に向かう方向に回転軸を押すことによって、軸受支持部材に対して固定される
【発明の効果】
【0007】
この発明に係る張り車回転軸取外装置によれば、昇降路の壁と回転軸との間に設けられ、軸受支持部材に対して固定される基部と、基部に設けられ、回転軸と基部とを繋ぐ直線に沿って基部に対して移動可能な押出可動部と、押出可動部を移動させる変位部とを備え、押出可動部は、基部から回転軸に向かう方向に移動することによって、回転軸を軸受支持部材から押し出すので、作業者がハンマーを用いて回転軸を軸方向にたたくことなく、回転軸を軸受支持部材から取り外すことができる。これにより、軸受支持部材から回転軸をより簡単に取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】この発明の実施の形態1に係る張り車回転軸取外装置が用いられるエレベータの要部を示す正面図である。
図2図1の張り車装置を示す拡大図である。
図3図2のIII−III線に沿った矢視断面図である。
図4】この発明の実施の形態1に係る張り車回転軸取外装置を示す側面図である。
図5図4の押出可動部が変位した場合の張り車回転軸取外装置を示す側面図である。
図6】この発明の実施の形態2に係る張り車回転軸取外装置を示す側面図である。
図7図6の回転軸の軸方向に視た張り車回転軸取外装置を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る張り車回転軸取外装置3Aが用いられるエレベータの要部を示す正面図である。図において、エレベータは、かご(図示せず)と連動するつり合い重り装置1と、つり合い重り装置1と連動するつり合い重り用調速機2とを備えている。
【0010】
つり合い重り装置1は、つり合い重り本体11と、高さ方向に延びる一対のつり合い重り用ガイドレール12と、つり合い重り本体11に設けられ、つり合い重り用ガイドレール12に案内されるつり合い重り用ガイド13とを有している。つり合い重り装置1は、昇降路100に設けられている。
【0011】
つり合い重り用調速機2は、機械室101に設けられた調速機本体21と、昇降路100のピット102に設けられた張り車装置22と、調速機本体21と張り車装置22とに渡って設けられる調速機ロープ23と、調速機ロープ23とつり合い重り本体11とを連結する連結部材24とを有している。
【0012】
調速機本体21は、調速機ロープ23が巻き掛けられる綱車211と、綱車211が予め設定された回転速度以上の回転速度で回転する場合に、綱車211の回転を停止させる回転停止装置212とを有している。
【0013】
図2図1の張り車装置22を示す拡大図、図3図2のIII−III線に沿った矢視断面図である。張り車装置22は、調速機ロープ23の下端部が巻き掛けられた張り車221と、張り車221に設けられた回転軸222と、回転軸222に設けられた軸受223と、軸受223を介して回転軸222を支持する軸受支持部材224と、軸受支持部材224に対して固定された枠部材225と、枠部材225に支持された複数の張り車用おもり226と、枠部材225に固定されたガイド227と、高さ方向に延びて設けられ、ガイド227を案内する張り車用ガイドレール228とを有している。
【0014】
枠部材225は、張り車用おもり226を支持する下枠と、下枠に立てられ、高さ方向中間部に軸受支持部材224が固定された一対の縦枠と、一対の縦枠のそれぞれの上端部を連結する上枠とを有している。
【0015】
昇降路100の壁103と回転軸222との間の寸法は、数cm程度となっている。したがって、壁103と回転軸222との間にハンマーを挿入し、そのハンマーを用いて回転軸222を軸方向にたたくことは困難である。
【0016】
図4はこの発明の実施の形態1に係る張り車回転軸取外装置3Aを示す側面図である。図4では、図1のエレベータに張り車回転軸取外装置3Aが取り付けられた状態を示している。張り車回転軸取外装置3Aは、昇降路100の壁103と回転軸222との間に設けられ、軸受支持部材224に対して固定される基部31と、基部31に設けられ、回転軸222と基部31とを繋ぐ直線に沿って基部31に対して移動可能な押出可動部32と、押出可動部32を移動させる変位部33とを備えている。
【0017】
基部31は、基部31が壁103に接触した状態で押出可動部32が基部31から回転軸222に向かう方向に回転軸222を押すことによって、軸受支持部材224に対して固定される。
【0018】
押出可動部32は、押出可動部32の軸線が回転軸222の軸線と同一直線上に配置されるように配置される。押出可動部32の径方向の寸法は、回転軸222の径方向の寸法と以下となっている。なお、押出可動部32の径方向の寸法は、張り車221における軸受223が挿入される貫通孔の径方向の寸法よりも小さければよい。これにより、押出可動部32は、張り車221から回転軸222が軸方向に押し出されるように回転軸222を押すことができる。
【0019】
変位部33は、回転するように作業者に操作されるハンドルと、ハンドルに加えられる動力を用いて押出可動部32を変位させる駆動部とを有している。駆動部は、ハンドルの動力を押出可動部32に伝達するためのギヤを有している。なお、駆動部は、ギヤに限らず、例えば、油圧機構または蛇腹を有してもよい。
【0020】
次に、張り車装置22の交換作業について説明する。この例では、張り車装置22における回転軸222および軸受223を交換する作業について説明する。図5図4の押出可動部32が変位した場合の張り車回転軸取外装置3Aを示す側面図である。まず、作業者は、張り車回転軸取外装置3Aを昇降路100の壁103と回転軸222との間に配置し、張り車回転軸取外装置3Aを軸受支持部材224に対して固定する。具体的には、基部31が壁103に接触した状態で押出可動部32が基部31から回転軸222に向かう方向に回転軸222を押すことによって、基部31と壁103との間および押出可動部32と回転軸222との間に摩擦力を発生させ、基部31を軸受支持部材224に対して固定する。
【0021】
その後、作業者は、押出可動部32は、基部31から回転軸222に向かう方向に移動させることによって、回転軸222を軸受支持部材224から押し出す。
【0022】
その後、新規の回転軸222に新規の軸受223を取り付け、新規の回転軸222および新規の軸受223を張り車221に取り付ける。以上により、張り車装置22の交換作業が終了する。
【0023】
以上説明したように、この発明の実施の形態1に係る張り車回転軸取外装置3Aによれば、昇降路100の壁103と回転軸222との間に設けられ、軸受支持部材224に対して固定される基部31と、基部31に設けられ、回転軸222と基部31とを繋ぐ直線に沿って基部31に対して移動可能な押出可動部32と、押出可動部32を移動させる変位部33とを備え、押出可動部32は、基部31から回転軸222に向かう方向に移動することによって、回転軸222を軸受支持部材224から押し出すので、作業者がハンマーを用いて回転軸222を軸方向にたたくことなく、回転軸222を軸受支持部材224から取り外すことができる。これにより、軸受支持部材224から回転軸222をより簡単に取り外すことができる。
【0024】
また、基部31は、基部31が壁103に接触した状態で押出可動部32が基部31から回転軸222に向かう方向に回転軸222を押すことによって、軸受支持部材224に対して固定されるので、簡単な構成で、基部31を軸受支持部材224に対して固定することができる。
【0025】
実施の形態2.
図6はこの発明の実施の形態2に係る張り車回転軸取外装置3Bを示す側面図、図7図6の回転軸222の軸方向に視た張り車回転軸取外装置3Bを示す正面図である。図6および図7では、エレベータに張り車回転軸取外装置3Bが取り付けられた状態を示している。この発明の実施の形態2に係る張り車回転軸取外装置3Bは、張り車221に掛けられる上腕部34と、張り車221を支持する下腕部35とをさらに備えている。上腕部34および下腕部35は、基部31に設けられている。
【0026】
上腕部34は、基部31から張り車221に向かって延びる腕部本体341と、腕部本体341の先端部に設けられ、径方向内側に延びる爪部342とを有している。張り車221には、厚さ方向に延びる複数の貫通孔229が形成されている。腕部本体341は、貫通孔229に挿入されている。爪部342は、張り車221における基部31に対向する面とは反対側の面であって回転軸222よりも上側の部分に接触する。基部31は、上腕部34が張り車221に掛けられることによって、張り車221に支持される。
【0027】
下腕部35は、上腕部34と同様に、基部31から張り車221に向かって延びる腕部本体351と、腕部本体351の先端部に設けられ、径方向内側に延びる爪部352とを有している。腕部本体351は、貫通孔229に挿入されている。爪部352は、張り車221における基部31に対向する面とは反対側の面であって回転軸222よりも下側の部分に接触する。下腕部35は、軸受支持部材224から回転軸222が押し出された場合に、張り車221を支持する。
【0028】
爪部342が、張り車221における基部31に対向する面とは反対側の面であって回転軸222よりも上側の部分に接触し、爪部352が、張り車221における基部31に対向する面とは反対側の面であって回転軸222よりも下側の部分に接触することによって、張り車221が基部31に対して離れる方向に移動することが規制される。これにより、基部31は、軸受支持部材224に対して固定される。その他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0029】
以上説明したように、この発明の実施の形態2に係る張り車回転軸取外装置3Bによれば、基部31に設けられ張り車221に掛けられる上腕部34を備えているので、上腕部34を張り車221に掛けることによって、基部31を軸受支持部材224に対して仮止めすることができる。これにより、作業者は、ハンドルを操作する際に基部31を支持する必要がなくなる。その結果、張り車回転軸取外装置3Bを容易に操作することができる。
【0030】
また、張り車回転軸取外装置3Bは、基部31に設けられ張り車221を支持する下腕部35を備えているので、軸受支持部材224から回転軸222が押し出された場合に、張り車221が軸受支持部材224から落下することを防止することができる。
【0031】
なお、各上記実施の形態では、つり合い重り用調速機2における張り車装置22の回転軸222を軸受支持部材224から取り外す張り車回転軸取外装置3A、3Bについて説明したが、かご用調速機における張り車装置の回転軸を軸受支持部材から取り外す張り車回転軸取外装置であってもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 つり合い重り装置、2 つり合い重り用調速機、3A、3B 張り車回転軸取外装置、11 つり合い重り本体、12 つり合い重り用ガイドレール、13 つり合い重り用ガイド、21 調速機本体、22 張り車装置、23 調速機ロープ、24 連結部材、31 基部、32 押出可動部、33 変位部、34 上腕部、35 下腕部、100 昇降路、101 機械室、102 ピット、103 壁、211 綱車、212 回転停止装置、221 張り車、222 回転軸、223 軸受、224 軸受支持部材、225 枠部材、226 張り車用おもり、227 ガイド、228 張り車用ガイドレール、229 貫通孔、341 腕部本体、342 爪部、351 腕部本体、352 爪部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7