特許第6452606号(P6452606)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6452606
(24)【登録日】2018年12月21日
(45)【発行日】2019年1月16日
(54)【発明の名称】温度計
(51)【国際特許分類】
   G01K 1/08 20060101AFI20190107BHJP
   G01K 7/02 20060101ALI20190107BHJP
【FI】
   G01K1/08 P
   G01K7/02 C
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-530965(P2015-530965)
(86)(22)【出願日】2014年8月7日
(86)【国際出願番号】JP2014070943
(87)【国際公開番号】WO2015020172
(87)【国際公開日】20150212
【審査請求日】2017年5月31日
(31)【優先権主張番号】特願2013-165040(P2013-165040)
(32)【優先日】2013年8月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000136561
【氏名又は名称】株式会社フルヤ金属
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(74)【代理人】
【識別番号】100128107
【弁理士】
【氏名又は名称】深石 賢治
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 厚
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 恭寛
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 智明
(72)【発明者】
【氏名】丸子 智弘
【審査官】 平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭63−187018(JP,U)
【文献】 特開昭63−300924(JP,A)
【文献】 実開昭62−102133(JP,U)
【文献】 特開昭57−101730(JP,A)
【文献】 特表平07−501144(JP,A)
【文献】 特開昭54−034876(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第0454846(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/08,7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の素線と前記素線それぞれ同士の測温接点と前記素線を被覆する絶縁体とを有する熱電対と、
前記熱電対の前記素線、前記測温接点及び前記絶縁体から少なくとも一部分を離隔しつつ、前記熱電対の前記素線、前記測温接点及び前記絶縁体を囲繞する第1保護管と、
前記第1保護管から少なくとも一部分を離隔しつつ前記第1保護管を囲繞する第2保護管と、
前記第1保護管の外側であって前記第2保護管の内側に位置し、前記第1保護管及び前記第2保護管から少なくとも一部分を離隔しつつ、前記第1保護管を囲繞する第3保護管と、
を備え
前記第1保護管は、Mo、W、Ta及びIrのいずれかを含み、前記第2保護管は、黒鉛、C/Cコンポジット、グラッシーカーボン、SiC及びBNのいずれかを含み、前記第3保護管は、Mo、W、Ta、Nb及びIrのいずれかを含む、温度計。
【請求項2】
一対の素線と前記素線それぞれ同士の測温接点と前記素線を被覆する絶縁体とを有する熱電対と、
前記熱電対の前記素線、前記測温接点及び前記絶縁体から少なくとも一部分を離隔しつつ、前記熱電対の前記素線、前記測温接点及び前記絶縁体を囲繞する第1保護管と、
前記第1保護管から少なくとも一部分を離隔しつつ前記第1保護管を囲繞する第2保護管と、
前記第1保護管の外側であって前記第2保護管の内側に位置し、前記第1保護管及び前記第2保護管から少なくとも一部分を離隔しつつ、前記第1保護管を囲繞する第3保護管と、
を備え
前記第1保護管は、Mo、W、Ta及びIrのいずれかを含み、前記第2保護管は、黒鉛、C/Cコンポジット、グラッシーカーボン、SiC、BN、Al、ガラス状炭素、熱分解炭素被覆黒鉛、ガラス状炭素被覆黒鉛及びPBNのいずれかを含み、前記第3保護管は、Mo、W、Ta、Nb、Ir、黒鉛、C/Cコンポジット、SiC、グラッシーカーボン、ガラス状炭素、熱分解炭素被覆黒鉛、ガラス状炭素被覆黒鉛、BN及びPBNのいずれかを含む、温度計。
【請求項3】
一対の素線と前記素線それぞれ同士の測温接点と前記素線を被覆する絶縁体とを有する熱電対と、
前記熱電対の前記素線、前記測温接点及び前記絶縁体から少なくとも一部分を離隔しつつ、前記熱電対の前記素線、前記測温接点及び前記絶縁体を囲繞する第1保護管と、
前記第1保護管から少なくとも一部分を離隔しつつ前記第1保護管を囲繞する第2保護管と、
前記第1保護管の外側であって前記第2保護管の内側に位置し、前記第1保護管及び前記第2保護管から少なくとも一部分を離隔しつつ、前記第1保護管を囲繞する第3保護管と、
を備え
前記第1保護管は、Al、MgO、CaO、BeO、ZrO及びHfOのいずれかを含み、前記第2保護管は、黒鉛、C/Cコンポジット、グラッシーカーボン、SiC及びBNのいずれかを含み、前記第3保護管は、Mo、W、Ta、Nb及びIrのいずれかを含む、温度計。
【請求項4】
一対の素線と前記素線それぞれ同士の測温接点と前記素線を被覆する絶縁体とを有する熱電対と、
前記熱電対の前記素線、前記測温接点及び前記絶縁体から少なくとも一部分を離隔しつつ、前記熱電対の前記素線、前記測温接点及び前記絶縁体を囲繞する第1保護管と、
前記第1保護管から少なくとも一部分を離隔しつつ前記第1保護管を囲繞する第2保護管と、
前記第1保護管の外側であって前記第2保護管の内側に位置し、前記第1保護管及び前記第2保護管から少なくとも一部分を離隔しつつ、前記第1保護管を囲繞する第3保護管と、
を備え
前記第1保護管は、Al、MgO、CaO、BeO、ZrO及びHfOのいずれかを含み、前記第2保護管は、黒鉛、C/Cコンポジット、グラッシーカーボン、SiC、BN、Al、ガラス状炭素、熱分解炭素被覆黒鉛、ガラス状炭素被覆黒鉛及びPBNのいずれかを含み、前記第3保護管は、Mo、W、Ta、Nb、Ir、SiC、BN及びPBNのいずれかを含む、温度計。
【請求項5】
前記第1保護管の内部、前記第1保護管と前記第3保護管との間及び前記第2保護管と前記第3保護管との間の少なくともいずれかには、不活性ガスが封入されている、請求項1〜4の何れか一項に記載の温度計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度計に関し、特に、熱電対と保護管とを備えた温度計に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、輸送関連部門や航空宇宙分野において、軽量化による省エネルギーやCO排出抑制を目的とし、炭素をベースとした材料開発が盛んに進められている。また、炭素と珪素の化合物であるSiCもエンジニアリングセラミックスやパワー半導体として非常に高い特性が認められており、既に実用化のレベルまで達している。炭素をベースとした材料の利点は、軽量で高強度であり比強度が高いこと、熱伝導性が良いこと、及び炭素自体が高融点であることから耐熱性が高いことが挙げられる。
【0003】
このような材料は一般的に1800℃を超える高温域で製造される。その際、製造時の温度管理を行うことで歩留まり良く安定した製造が可能となるため、高温域での測温方法の開発が急務となっている。従来の測温方法として放射温度計を用いる方法が知られている。しかし、放射温度計と測温対象との間に障害物がある場合には、測温は不可能となる。また、測温対象の発する赤外線がガスなどにより吸収された場合には、著しく測温精度が悪くなるといった問題がある。
【0004】
このような放射温度計の問題を解決する方法として、熱電対を用いた温度計を利用する方法がある。熱電対による測温は、異なる材質の線材を組み合わせ、回路内の温度差により生じる熱起電力を測定する方法である。熱電対による測温は、熱電対が線材であることから測温対象付近に設置することが可能であり、精度良く測温することができる。
【0005】
高温測定用の熱電対として、タングステンレニウム(WRe)熱電対が知られており、真空・還元・不活性雰囲気において3000℃付近の超高温を測定することができる。また、イリジウム‐イリジウムロジウム(Ir‐IrRh)熱電対は真空・還元・不活性雰囲気の他、短時間であれば酸化雰囲気でも2200℃付近まで測温することができる。しかしながら、高温において熱電対が炭素存在雰囲気に晒される状況下や、高温において熱電対が炭素に接触する状況下では、熱電対の素線と炭素とが反応し、熱起電力が変化してしまうため、素線を保護せずに使用することは困難である。
【0006】
そこで、熱電対を囲繞する保護管を設けることにより、熱電対を保護することが行われている。例えば、特許文献1には、熱電対を囲繞する保護管であって、保護管の内周壁と外周壁を構成する部分が異なる組成を有し、二層の構造を有する保護管が開示されている。特許文献1の保護管では、保護管の内周壁は、耐熱性に優れ熱伝導率が大きい窒化珪素(Si)などの材料から構成されている。保護管の外周壁は、測温体との反応性が乏しいマグネシア(MgO)粒子と炭素(C)粒子との混合物などのセラミックス材料から構成されている。保護管の内周壁及び外周壁はそれぞれ焼結体からなり、一体焼成されることにより、内側焼結体と外側焼結体とが互いに密着させられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−55740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1のような多層の構造の保護管では、特に高温域においては、外周壁の材料と内周壁の材料との間に反応が生じるため、長期間にわたり、熱電対の素線を保護することが困難である。
【0009】
本発明は上記課題を考慮してなされたものであり、保護管の各層同士が反応することを防ぎつつ、熱電対を外界から保護することが可能な温度計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態は、一対の素線と素線それぞれ同士の測温接点と素線を被覆する絶縁体とを有する熱電対と、熱電対の素線、測温接点及び絶縁体から少なくとも一部分を離隔しつつ、熱電対の素線、測温接点及び絶縁体を囲繞する第1保護管と、第1保護管から少なくとも一部分を離隔しつつ第1保護管を囲繞する第2保護管とを備えた温度計である。
【0011】
この構成によれば、温度計は、一対の素線と素線それぞれ同士の測温接点と素線を被覆する絶縁体とを有する熱電対と、熱電対の素線、測温接点及び絶縁体から少なくとも一部分を離隔しつつ、熱電対の素線、測温接点及び絶縁体を囲繞する第1保護管と、第1保護管から少なくとも一部分を離隔しつつ第1保護管を囲繞する第2保護管とを備える。第1保護管は、熱電対の素線、測温接点及び絶縁体から少なくとも一部分を離隔しつつ、熱電対の素線、測温接点及び絶縁体を囲繞する。このため、熱電対が第1保護管と反応することを防ぎつつ、熱電対を外界から保護することが可能となる。また、第2保護管は、第1保護管から少なくとも一部分を離隔しつつ第1保護管を囲繞する。このため、第1保護管が第2保護管と反応することを防ぎつつ、熱電対及び第1保護管を外界から保護することが可能となる。
【0012】
この場合、第1保護管の内部及び第1保護管と第2保護管との間の少なくともいずれかには、不活性ガスが封入されていることとしてもよい。
【0013】
この構成によれば、第1保護管の内部及び第1保護管と第2保護管との間の少なくともいずれかには、不活性ガスが封入されている。例えば、第1保護管の内部に不活性ガスを封入することにより、素線を被覆する絶縁体である絶縁管の内部、つまり、素線の周囲の雰囲気も不活性ガスとなる。測温接点の周囲に端面が開放あるいは閉鎖されている中空の部材が配置されていても、測温接点や素線の周囲の雰囲気は不活性ガスとなる。このため、熱電対と第1保護管との反応あるいは第1保護管と第2保護管との反応を効果的に防止することができる。
【0014】
また、第1保護管の外側であって第2保護管の内側に位置し、第1保護管及び第2保護管から少なくとも一部分を離隔しつつ、第1保護管を囲繞する第3保護管をさらに備えることとしてもよい。
【0015】
この構成によれば、第1保護管の外側であって第2保護管の内側に位置し、第1保護管及び第2保護管から少なくとも一部分を離隔しつつ、第1保護管を囲繞する第3保護管をさらに備える。このため、第1保護管及び第2保護管が第3保護管と反応することを防ぎつつ、第1保護管が第2保護管と反応することを効果的に防止することができる。
【0016】
この場合、第1保護管の内部、第1保護管と第3保護管との間及び第2保護管と第3保護管との間の少なくともいずれかには、不活性ガスが封入されていることとしてもよい。
【0017】
この構成によれば、第1保護管の内部、第1保護管と第3保護管との間及び第2保護管と第3保護管との間の少なくともいずれかには、不活性ガスが封入されている。上述したように、例えば、第1保護管の内部に不活性ガスを封入することにより、素線を被覆する絶縁体である絶縁管の内部、つまり、素線の周囲の雰囲気も不活性ガスとなる。測温接点の周囲に端面が開放あるいは閉鎖されている中空の部材が配置されていても、測温接点や素線の周囲の雰囲気は不活性ガスとなる。このため、熱電対と第1保護管との反応、第1保護管と第3保護管との反応あるいは第2保護管と第3保護管との反応を効果的に防止することができる。
【0018】
また、第1保護管と第2保護管とを備えた上記温度計において、第1保護管は、Mo、W、Ta及びIrのいずれかを含み、第2保護管は、黒鉛、C/Cコンポジット、グラッシーカーボン、SiC及びBNのいずれかを含むこととしてもよい。
【0019】
この構成によれば、第1保護管は熱電対及び第2保護管との反応性が低いMo、W、Ta及びIrのいずれかを含むため、熱電対を外界から確実に保護しつつ熱電対の寿命を向上させることができる。また、第2保護管は、雰囲気中の炭素及び第1保護管との反応性が低い黒鉛、C/Cコンポジット、グラッシーカーボン、SiC及びBNのいずれかを含むため、熱電対や第1保護管を外界から確実に保護することができる。
【0020】
また、第1保護管と第2保護管とを備えた上記温度計において、第1保護管は、Mo、W、Ta及びIrのいずれかを含み、第2保護管は、黒鉛、C/Cコンポジット、グラッシーカーボン、SiC、BN、Al、ガラス状炭素、熱分解炭素被覆黒鉛、ガラス状炭素被覆黒鉛及びPBN(熱分解窒化ホウ素)のいずれかを含むこととしてもよい。
【0021】
この構成によれば、第1保護管は熱電対及び第2保護管との反応性が低いMo、W、Ta及びIrのいずれかを含むため、熱電対を外界から確実に保護しつつ熱電対の寿命を向上させることができる。また、第2保護管は、上記の黒鉛、C/Cコンポジット、グラッシーカーボン、SiC及びBNの何れかを含むか、それらと同様の効果を有するAl、ガラス状炭素、熱分解炭素被覆黒鉛、ガラス状炭素被覆黒鉛及びPBNのいずれかを含むため、熱電対や第1保護管を外界から確実に保護することができる。
【0022】
また、第1保護管と第2保護管と第3保護管とを備えた上記温度計において、第1保護管は、Mo、W、Ta及びIrのいずれかを含み、第2保護管は、黒鉛、C/Cコンポジット、グラッシーカーボン、SiC及びBNのいずれかを含み、第3保護管は、Mo、W、Ta、Nb及びIrのいずれかを含むこととしてもよい。
【0023】
この構成によれば、第1保護管は、熱電対及び第3保護管との反応性が低いMo、W、Ta及びIrのいずれを含むため、熱電対の寿命を向上させることができる。また、第2保護管は、雰囲気中の炭素及び第3保護管との反応性が低い黒鉛、C/Cコンポジット、グラッシーカーボン、SiC及びBNのいずれかを含むため、熱電対、第1保護管及び第3保護管を外界から確実に保護することができる。さらに、第3保護管は、第1保護管及び第2保護管との反応性が低いMo、W、Ta、Nb及びIrのいずれかを含むため、熱電対及び第1保護管を外界から確実に保護することができる。
【0024】
また、第1保護管と第2保護管と第3保護管とを備えた上記温度計において、第1保護管は、Mo、W、Ta及びIrのいずれかを含み、第2保護管は、黒鉛、C/Cコンポジット、グラッシーカーボン、SiC、BN、Al、ガラス状炭素、熱分解炭素被覆黒鉛、ガラス状炭素被覆黒鉛及びPBNのいずれかを含み、第3保護管は、Mo、W、Ta、Nb、Ir、黒鉛、C/Cコンポジット、SiC、グラッシーカーボン、ガラス状炭素、熱分解炭素被覆黒鉛、ガラス状炭素被覆黒鉛、BN及びPBNのいずれかを含むこととしてもよい。
【0025】
この構成によれば、第1保護管は、熱電対及び第3保護管との反応性が低いMo、W、Ta及びIrのいずれを含むため、熱電対の寿命を向上させることができる。また、第2保護管は、上記の黒鉛、C/Cコンポジット、グラッシーカーボン、SiC及びBNの何れかを含むか、それらと同様の効果を有するAl、ガラス状炭素、熱分解炭素被覆黒鉛、ガラス状炭素被覆黒鉛及びPBNのいずれかを含むため、熱電対、第1保護管及び第3保護管を外界から確実に保護することができる。さらに、第3保護管は、上記のMo、W、Ta、Nb及びIrの何れかを含むか、それらと同様の効果を有する黒鉛、C/Cコンポジット、SiC、グラッシーカーボン、ガラス状炭素、熱分解炭素被覆黒鉛、ガラス状炭素被覆黒鉛、BN及びPBNのいずれかを含むため、熱電対及び第1保護管を外界から確実に保護することができる。
【0026】
また、第1保護管と第2保護管と第3保護管とを備えた上記温度計において、第1保護管は、Al、MgO、CaO、BeO、ZrO及びHfOのいずれかを含み、第2保護管は、黒鉛、C/Cコンポジット、グラッシーカーボン、SiC及びBNのいずれかを含み、第3保護管は、Mo、W、Ta、Nb及びIrのいずれかを含むこととしてもよい。
【0027】
この構成によれば、第1保護管は、熱電対及び第3保護管との反応性が低い安定酸化物であるAl、MgO、CaO、BeO、ZrO及びHfOのいずれかを含むため、熱電対の寿命を向上させることができる。また、第2保護管は、雰囲気中の炭素及び第3保護管との反応性が低い黒鉛、C/Cコンポジット、グラッシーカーボン、SiC及びBNのいずれかを含むため、熱電対、第1保護管及び第3保護管を外界から確実に保護することができる。さらに、第3保護管は、第1保護管及び第2保護管との反応性が低いMo、W、Ta、Nb及びIrのいずれかを含むため、熱電対及び第1保護管を外界から確実に保護することができる。
【0028】
また、第1保護管と第2保護管と第3保護管とを備えた上記温度計において、第1保護管は、Al、MgO、CaO、BeO、ZrO及びHfOのいずれかを含み、第2保護管は、黒鉛、C/Cコンポジット、グラッシーカーボン、SiC、BN、Al、ガラス状炭素、熱分解炭素被覆黒鉛、ガラス状炭素被覆黒鉛及びPBNのいずれかを含み、第3保護管は、Mo、W、Ta、Nb、Ir、黒鉛、C/Cコンポジット、SiC、グラッシーカーボン、ガラス状炭素、熱分解炭素被覆黒鉛、ガラス状炭素被覆黒鉛、BN及びPBNのいずれかを含むこととしてもよい。
【0029】
この構成によれば、第1保護管は、熱電対及び第3保護管との反応性が低い安定酸化物であるAl、MgO、CaO、BeO、ZrO及びHfOのいずれかを含むため、熱電対の寿命を向上させることができる。また、第2保護管は、上記の黒鉛、C/Cコンポジット、グラッシーカーボン、SiC及びBNの何れかを含むか、それらと同様の効果を有するAl、ガラス状炭素、熱分解炭素被覆黒鉛、ガラス状炭素被覆黒鉛及びPBNのいずれかを含むため、熱電対、第1保護管及び第3保護管を外界から確実に保護することができる。さらに、第3保護管は、上記のMo、W、Ta、Nb及びIrの何れかを含むか、それらと同様の効果を有する黒鉛、C/Cコンポジット、SiC、グラッシーカーボン、ガラス状炭素、熱分解炭素被覆黒鉛、ガラス状炭素被覆黒鉛、BN及びPBNのいずれかを含むため、熱電対及び第1保護管を外界から確実に保護することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の一実施形態に係る温度計によれば、保護管同士が反応することを防ぎつつ、熱電対を外界から保護することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】第1実施形態に係る炭素雰囲気用温度計を示す部分断面図である。
図2図1の絶縁管の熱電対測温接点付近の変形例を示す部分断面図である。
図3図1の絶縁管の熱電対測温接点付近の変形例を示す部分断面図である。
図4】第2実施形態に係る炭素雰囲気用温度計を示す部分断面図である。
図5図4の絶縁管の熱電対測温接点付近の変形例を示す部分断面図である。
図6図4の絶縁管の熱電対測温接点付近の変形例を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。本発明の第1実施形態の温度計は、特に1700℃を超える高温において炭素が存在する雰囲気下で測温可能な熱電対を用いた温度計である。熱電対を外部の炭素雰囲気から保護し、且つ、炉内や製品への悪影響を及ぼすことを防止するため、多重の保護管が用いられる。
【0033】
図1に示すように、本実施形態の炭素雰囲気用温度計10aは、絶縁管12、熱電対測温接点14、熱電対素線16,18、第1保護管20及び第2保護管22を備えている。一対の熱電対素線16,18と、熱電対素線16,18それぞれ同士の熱電対測温接点14と、熱電対素線16,18を被覆する絶縁管12とにより、熱電対が構成される。
【0034】
熱電対素線16,18は、それぞれ、例えば、タングステン(W)及びW−26%レニウム(Re)、W−5%Re及びW−26%Re、あるいはW−3%Re及びW−25%Reから構成することができる。あるいは、熱電対素線16,18は、それぞれ、例えばイリジウム(Ir)からなる熱電対素線16と、イリジウム及びロジウム(IrRh)とからなる熱電対素線18とで構成することができる。絶縁管12には、熱電対素線16,18が個別に挿通する挿通孔部13が軸方向に設けられている。絶縁管12は、絶縁性および耐熱性に優れた材料により形成され、例えばアルミナ(Al)、マグネシア(MgO)、ベリリア(BeO)、ハフニア(HfO)等のセラミックにより構成することができる。熱電対測温接点14は、絶縁管12の先端から露出している。なお、図1では、熱電対測温接点14が絶縁管12により保護されていない形態を示したが、図2に示すように、熱電対測温接点14の周囲を囲繞し、端面が開放されている中空状の絶縁管開放先端部15aが設置されていても良い。あるいは、図3に示すように、熱電対測温接点14の周囲を囲繞し、端面が閉鎖されている中空状の絶縁管閉鎖先端部15bが設置されていても良い。また、熱電対測温接点14とは反対側の端部にある絶縁管12の挿通孔部13は封止材40によって封止されている。
【0035】
第1保護管20は、熱電対の熱電対素線16,18、熱電対測温接点14及び絶縁管12から間隔をおいて少なくとも一部分を離隔しつつ、熱電対の熱電対素線16,18、熱電対測温接点14及び絶縁管12を囲繞する。第1保護管20は、内側の熱電対の熱電対素線16,18等や外側の第2保護管22との反応性が低いMo、W、Ta及びIrのいずれかから構成される。第1保護管20の一端は閉鎖されている。熱電対の熱電対測温接点14が、第1保護管20の閉鎖された端部の内面に接触しないようにして第1保護管20に挿入されている。第1保護管20の熱電対測温接点14とは反対側の端部からは熱電対の絶縁管12が露出している。第1保護管20の内部には、Ar等の不活性ガスが封入されている。絶縁管12が露出している第1保護管20の端部において、第1保護管20と絶縁管12との間の間隔は、封止材31により封止されている。
【0036】
第2保護管22は、第1保護管20から間隔をおいて少なくとも一部分を離隔しつつ、第1保護管20を囲繞する。第2保護管22は、内側の第1保護管20や外側の炭素雰囲気との反応性が低い気密性を有する黒鉛、C/Cコンポジット、グラッシーカーボン、SiC及びBNのいずれかから構成される。また、第2保護管22は、上記の黒鉛、C/Cコンポジット、グラッシーカーボン、SiC及びBNと同様の効果を有するAl、ガラス状炭素、熱分解炭素被覆黒鉛、ガラス状炭素被覆黒鉛、BN及びPBNのいずれかから構成される。即ち、第2保護管22は、黒鉛、C/Cコンポジット、グラッシーカーボン、SiC、BN、Al、ガラス状炭素、熱分解炭素被覆黒鉛、ガラス状炭素被覆黒鉛及びPBNのいずれかを含むこととしてもよい。第2保護管22の熱電対測温接点14の側の一端は閉鎖されているが、温度の測定や第1保護管20に影響を及ぼさなければ、第2保護管22の熱電対測温接点14とは反対側等については、閉鎖されずに開口されている箇所があってもよい。第1保護管20が、第1保護管20の外面が第2保護管22の内面に接触しないようにして第2保護管22の内部に挿入されている。第1保護管20と第2保護管22との間の空間には、Ar等の不活性ガスが封入されている。第1保護管20及び第2保護管22の熱電対測温接点14とは反対側の端部において、第1保護管20と第2保護管22との間の間隔は、封止材33により封止されている。
【0037】
本実施形態によれば、炭素雰囲気用温度計10aは、一対の熱電対素線16,18と熱電対素線16,18それぞれ同士の熱電対測温接点14と熱電対素線16,18を被覆する絶縁管12とを有する熱電対と、熱電対の熱電対素線16,18、熱電対測温接点14及び絶縁管12から少なくとも一部分を離隔しつつ、熱電対の熱電対素線16,18、熱電対測温接点14及び絶縁管12を囲繞する第1保護管20と、第1保護管20から少なくとも一部分を離隔しつつ第1保護管20を囲繞する第2保護管22とを備える。第1保護管20は、熱電対の熱電対素線16,18、熱電対測温接点14及び絶縁管12から少なくとも一部分を離隔しつつ、熱電対の熱電対素線16,18、熱電対測温接点14及び絶縁管12を囲繞する。このため、熱電対が第1保護管20と反応することを防ぎつつ、熱電対を外界から保護することが可能となる。また、第2保護管22は、第1保護管20から少なくとも一部分を離隔しつつ第1保護管20を囲繞する。このため、第1保護管20が第2保護管22と反応することを防ぎつつ、熱電対及び第1保護管20を外界から保護することが可能となる。
【0038】
また、第1保護管20の内部及び第1保護管20と第2保護管22との間には、不活性ガスが封入されている。第1保護管20の内部に不活性ガスを封入することにより、絶縁管12の内部、つまり、熱電対素線16,18の周囲の雰囲気も不活性ガスとなる。熱電対測温接点14の周囲に端面が開放されている中空の部材である絶縁管開放先端部15aあるいは端面が閉鎖されている中空の部材である絶縁管閉鎖先端部15bが配置されていても、熱電対測温接点14や熱電対素線16,18の周囲の雰囲気は不活性ガスとなる。このため、熱電対と第1保護管20との反応及び第1保護管20と第2保護管22との反応を効果的に防止することができる。
【0039】
また、第1保護管20は熱電対及び第2保護管22との反応性が低いMo、W、Ta及びIrのいずれかを含むため、熱電対を外界から確実に保護しつつ熱電対の寿命を向上させることができる。また、第2保護管22は、雰囲気中の炭素及び第1保護管20との反応性が低い黒鉛、C/Cコンポジット、グラッシーカーボン、SiC及びBNのいずれかを含むか、上記の黒鉛、C/Cコンポジット、グラッシーカーボン、SiC及びBNと同様の効果を有するAl、ガラス状炭素、熱分解炭素被覆黒鉛、ガラス状炭素被覆黒鉛及びPBNのいずれかを含むため、熱電対及び第1保護管20を外界から確実に保護することができる。
【0040】
熱電対の素線を外部環境から保護する目的で、特に高温域においては、Al、MgOのような安定酸化物の保護管を使用することが旧来から行われている。しかし、高温炭素雰囲気においては酸化物が還元され保護管が劣化するため、長期間にわたって、熱電対の素線を保護することが不可能である。また、酸化物保護管の劣化や、酸化物の還元による金属成分の露出により、熱処理炉内や熱処理工程における製品に悪影響を及ぼすことがある。このように、従来の手法では、超高温で炭素が存在する雰囲気において、長期間にわたって安定して精度良く測温することができない。しかしながら、本実施形態の炭素雰囲気用温度計10aは、従来の温度計では測定が困難である高温炭素雰囲気において、長期間にわたり安定して精度良く測温可能であり、且つ保護管の成分が被熱処理材へ影響を及ぼさない温度計を提供することができる。
【0041】
以下、本発明の第2実施形態について説明する。図4に示すように、本実施形態の炭素雰囲気用温度計10bでは、熱電対素線16,18等の熱電対の構成、第1保護管20の組成以外の構成及び第2保護管22の構成は上記第1実施形態と同様であるが、第1保護管20の外側であって第2保護管22の内側に位置し、第1保護管20及び第2保護管22から少なくとも一部分を離隔しつつ、第1保護管20を囲繞する第3保護管24をさらに備える点が上記第1実施形態と異なっている。本実施形態では、第1保護管20は、内側の熱電対の熱電対素線16,18等や外側の第3保護管との反応性が低いMo、W、Ta及びIrのいずれかから構成される。第3保護管24は、内側の第1保護管20や外側の第2保護管22との反応性が低いMo、W、Ta、Nb及びIrのいずれかから構成される。また、第3保護管24は、上記のMo、W、Ta、Nb及びIrと同様の効果を有する黒鉛、C/Cコンポジット、SiC、グラッシーカーボン、ガラス状炭素、熱分解炭素被覆黒鉛、ガラス状炭素被覆黒鉛、BN及びPBNのいずれかから構成される。即ち、第3保護管24は、Mo、W、Ta、Nb、Ir、黒鉛、C/Cコンポジット、SiC、グラッシーカーボン、ガラス状炭素、熱分解炭素被覆黒鉛、ガラス状炭素被覆黒鉛、BN及びPBNのいずれかを含むこととしてもよい。
【0042】
あるいは、本実施形態では、第1保護管20は、内側の熱電対の熱電対素線16,18等や外側の第3保護管24との反応性が低い安定酸化物であるAl、MgO、CaO、BeO、ZrO及びHfOのいずれかから構成されていても良い。この場合、第3保護管24は、内側の第1保護管20や外側の第2保護管22との反応性が低いMo、W、Ta、Nb及びIrのいずれかから構成される。また、第3保護管24は、上記のMo、W、Ta、Nb及びIrと同様の効果を有する黒鉛、C/Cコンポジット、SiC、グラッシーカーボン、ガラス状炭素、熱分解炭素被覆黒鉛、ガラス状炭素被覆黒鉛、BN及びPBNのいずれかから構成される。即ち、第3保護管24は、Mo、W、Ta、Nb、Ir、黒鉛、C/Cコンポジット、SiC、グラッシーカーボン、ガラス状炭素、熱分解炭素被覆黒鉛、ガラス状炭素被覆黒鉛、BN及びPBNのいずれかを含む、こととしてもよい。第3保護管24の熱電対測温接点14の側の一端は閉鎖されているが、第2保護管22が閉鎖されていれば、第3保護管24の当該一端は、閉鎖されず、開口となっていてもよい。また、熱電対測温接点14とは反対側の第3保護管24と第2保護管22との少なくとも1つの端部は、閉鎖されずに開口されている箇所があってもよい。即ち、温度の測定や第1保護管20に影響を及ぼさなければ、熱電対測温接点14とは反対側の第3保護管24と第2保護管22とのうち少なくとも1つの端部は、開口となっていてもよい。
【0043】
第1保護管20と第3保護管24との間の空間及び第2保護管22と第3保護管24との間の空間には、Ar等の不活性ガスが封入されている。第1保護管20及び第3保護管24の熱電対測温接点14とは反対側の端部において、第1保護管20と第3保護管24との間の間隔は、封止材33により封止されている。第2保護管22及び第3保護管24の熱電対測温接点14とは反対側の端部において、第2保護管22と第3保護管24との間の間隔は、封止材35により封止されている。なお、上記第1実施形態と同様に、第1保護管20の内部には、Ar等の不活性ガスが封入されている。絶縁管12が突出している第1保護管20の端部において、第1保護管20と絶縁管12との間の間隔は、封止材31により封止されている。また、図4では、熱電対測温接点14が絶縁管12により保護されていない形態を示したが、図5に示すように、熱電対測温接点14の周囲を囲繞し、端面が開放されている中空状の絶縁管開放先端部15aが設置されていても良い。あるいは、図6に示すように、熱電対測温接点14の周囲を囲繞し、端面が閉鎖されている中空状の絶縁管閉鎖先端部15bが設置されていても良い。また、熱電対測温接点14とは反対側の端部にある絶縁管12の挿通孔部13は封止材40によって封止されている。
【0044】
本実施形態では、第1保護管20の外側であって第2保護管22の内側に位置し、第1保護管20及び第2保護管22から少なくとも一部分を離隔しつつ、第1保護管20を囲繞する第3保護管24をさらに備える。このため、第1保護管20及び第2保護管22が第3保護管24と反応することを防ぎつつ、第1保護管20が第2保護管22と反応することを効果的に防止することができる。
【0045】
また、本実施形態では、第1保護管20の内部、第1保護管20と第3保護管24との間及び第2保護管22と第3保護管24との間には、不活性ガスが封入されている。上述したように、第1保護管20の内部に不活性ガスを封入することにより、絶縁管12の内部、つまり、熱電対素線16,18の周囲の雰囲気も不活性ガスとなる。熱電対測温接点14の周囲に端面が開放されている中空の部材である絶縁管開放先端部15aあるいは端面が閉鎖されている中空の部材である絶縁管閉鎖先端部15bが配置されていても、熱電対測温接点14や熱電対素線16,18の周囲の雰囲気は不活性ガスとなる。このため、熱電対と第1保護管20との反応、第1保護管20と第3保護管24との反応及び第2保護管22と第3保護管24との反応を効果的に防止することができる。
【0046】
また、本実施形態では、第1保護管20は、熱電対及び第3保護管24との反応性が低いMo、W、Ta及びIrのいずれを含むため、熱電対の寿命を向上させることができる。また、第2保護管22は、雰囲気中の炭素及び第3保護管24との反応性が低い黒鉛、C/Cコンポジット、グラッシーカーボン、SiC及びBNのいずれかを含むか、Al、ガラス状炭素、熱分解炭素被覆黒鉛、ガラス状炭素被覆黒鉛、PBNのいずれかを含むため、熱電対、第1保護管20及び第3保護管24を外界から確実に保護することができる。さらに、第3保護管24は、第1保護管20及び第2保護管22との反応性が低いMo、W、Ta、Nb及びIrのいずれかを含むか、黒鉛、C/Cコンポジット、SiC、グラッシーカーボン、ガラス状炭素、熱分解炭素被覆黒鉛、ガラス状炭素被覆黒鉛、BN及びPBNのいずれかを含むため、熱電対及び第1保護管20を外界から確実に保護することができる。
【0047】
あるいは、第1保護管20は、熱電対及び第3保護管24との反応性が低い安定酸化物であるAl、MgO、CaO、BeO、ZrO及びHfOのいずれかを含むため、熱電対の寿命を向上させることができる。また、第2保護管22は、雰囲気中の炭素及び第3保護管24との反応性が低い黒鉛、C/Cコンポジット、グラッシーカーボン、SiC及びBNのいずれかを含むか、Al、ガラス状炭素、熱分解炭素被覆黒鉛、ガラス状炭素被覆黒鉛、BN及びPBNのいずれかを含むため、熱電対、第1保護管20及び第3保護管24を外界から確実に保護することができる。さらに、第3保護管24は、第1保護管20及び第2保護管22との反応性が低いMo、W、Ta、Nb及びIrのいずれかを含むか、黒鉛、C/Cコンポジット、SiC、グラッシーカーボン、ガラス状炭素、熱分解炭素被覆黒鉛、ガラス状炭素被覆黒鉛、BN及びPBNのいずれかを含むため、熱電対及び第1保護管20を外界から確実に保護することができる。
【0048】
なお、本発明は上記実施形態に限定されず、様々な変形態様が可能である。例えば、上記実施形態では、熱電対を囲繞する第1保護管20と第1保護管を囲繞する第2保護管22との二重の保護管を備えた態様と、熱電対を囲繞する第1保護管20と第1保護管を囲繞する第3保護管24と第3保護管24を囲繞する第2保護管22との三重の保護管を備えた態様との二態様を中心に説明したが、本発明はこれらに限定されることがなく、さらに四重以上の保護管を備えた態様も本発明の範囲に含まれる。また、各保護管の肉厚や長さ、組成も自在に変更可能である。肉厚や長さの変更可能な理由としては、保護管の肉厚が薄いと、熱が伝わりやすくなり温度応答性を向上させることができる。反対に、肉厚を厚くすると、特に隣り合う保護管の材質が異なるときには、反応の進行をより遅延させることができる。また、保護管の長さに関して、必要な部位のみに必要な長さ分の保護管を配置することで、製造が容易になりコストを抑えることができる。例えば、測温対象炉の特定の部分において、熱電対に対して劣化、汚染等の異常が起こりやすい場合、その影響が及ぶ範囲にのみ各保護管を配置させることで、その影響を抑制することができ、かつ製造が容易になり、コストを抑えることができる。
【実施例】
【0049】
次に、高温において炭素が存在する雰囲気を本発明の熱電対を用いて測温した実験結果を示した実施例と従来の熱電対を用いて測温した実験結果を示した比較例とを比較して、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。なお、2000℃近傍でCやSiが存在する雰囲気は、ほとんどの金属が炭化や低融点化し劣化する非常に過酷な雰囲気である。白金を用いた熱電対の場合、大気雰囲気でさえ、上限温度付近の過酷な環境で使用されると、50時間程度まで寿命が短くなることがあることから、使用可能時間の判断の目安を50時間とした。このような雰囲気を測温するためには、適切な熱電対を選択するのはもちろんであるが、構成部材となる保護管の選択が重要である。過酷な雰囲気でも測温を可能とする保護管及びその構造を明らかにした。
【0050】
(実施例1)
本実施例では、第1実施形態に係る温度計を用いた。当該温度計を構成する黒鉛(第2保護管)/Ir(第1保護管)/HfO(絶縁管)/Ir及びIr−40wt%Rh(素線)の熱電対を、黒鉛を炉材とする炉内で、Siを主成分とする融液に対して20mm挿入し、Ar雰囲気において1900℃でこの融液温度測定を実施した。なお、黒鉛(第2保護管)は外径が10mm、肉厚が1.75mm、Ir(第1保護管)は外径4.8mm、肉厚が0.5mm、HfO(絶縁管)は外径3.2mm、内径0.9mmの2穴管、Ir及びIr−40wt%Rh(素線)は線径がいずれも0.5mmである。また、黒鉛(第2保護管)は内外が隔離されておらず、内部雰囲気は炉内雰囲気と同じであった。加えて、Ir(第1保護管)内部はArを充填し、外部と隔離した。上記の条件において、温度測定を開始し、63.7時間経過したところで、熱電対において熱起電力異常が生じたため、測定を中断した。この熱電対は、測温可能時間の目安となる50時間を越えても使用することができた。この熱電対を取り外し、部材の状態を確認したところ、Ir(第1保護管)の先端から20mm程度において、表面の荒れを確認した。
【0051】
(実施例2)
本実施例では、第1実施形態に係る温度計を用いた。当該温度計を構成するガラス状炭素(第2保護管)/Ir(第1保護管)/HfO(絶縁管)/Ir及びIr−40wt%Rh(素線)の熱電対を、黒鉛を炉材とする炉内で、Siを主成分とする融液に対して20mm挿入し、Ar雰囲気において1900℃でこの融液温度測定を実施した。なお、ガラス状炭素(第2保護管)は外径が10mm、肉厚が1.75mm、Ir(第1保護管)は外径4.8mm、肉厚が0.5mm、HfO(絶縁管)は外径3.2mm、内径0.9mmの2穴管、Ir及びIr−40wt%Rh(素線)は線径がいずれも0.5mmである。また、ガラス状炭素(第2保護管)は内外が隔離されておらず、内部雰囲気は炉内雰囲気と同じであった。加えて、Ir(第1保護管)内部はArを充填し、外部と隔離した。上記の条件において温度測定を開始し、100時間経過したところで温度測定を終了した。その間、熱起電力の異常は確認されなかった。また、測定後の外観観察においても、Ir(第1保護管)先端部から20mmの範囲で若干の変色(薄茶褐色)が見られたものの、その他の異常は確認されなかった。
【0052】
(実施例3)
本実施例では、第1実施形態に係る温度計を用いた。当該温度計を構成する熱分解炭素被覆黒鉛(第2保護管)/Ir(第1保護管)/HfO(絶縁管)/Ir及びIr−40wt%Rh(素線)の熱電対を、黒鉛を炉材とする炉内で、Siを主成分とする融液に対して20mm挿入し、Ar雰囲気において1900℃でこの融液の温度測定を実施した。なお、熱分解炭素被覆黒鉛(第2保護管)は外径が10mm、肉厚が1.75mm、Ir(第1保護管)は外径4.8mm、肉厚が0.5mm、HfO(絶縁管)は外径3.2mm、内径0.9mmの2穴管、Ir及びIr−40wt%Rh(素線)は線径がいずれも0.5mmである。また、熱分解炭素被覆黒鉛(第2保護管)は内外が隔離されておらず、内部雰囲気は炉内雰囲気と同じであった。加えて、Ir(第1保護管)内部はArを充填し、外部と隔離した。上記の条件において温度測定を開始し、100時間経過したところで温度測定を終了した。その間、熱起電力の異常は確認されなかった。また、測定後の外観観察においても、Ir(第1保護管)先端部から20mmの範囲で若干の変色(薄茶褐色)及び表面の荒れが見られたものの、その他の異常は確認されなかった。
【0053】
(実施例4)
本実施例では、第1実施形態に係る温度計を用いた。当該温度計を構成するガラス状炭素被覆黒鉛(第2保護管)/Ir(第1保護管)/HfO2(絶縁管)/Ir及びIr−40wt%Rh(素線)の熱電対を、黒鉛を炉材とする炉内で、Siを主成分とする融液に対して20mm挿入し、Ar雰囲気において1900℃でこの融液の温度測定を実施した。なお、ガラス状炭素被覆黒鉛(第2保護管)は外径が10mm、肉厚が1.75mm、Ir(第1保護管)は外径4.8mm、肉厚が0.5mm、HfO2(絶縁管)は外径3.2mm、内径0.9mmの2穴管、Ir及びIr−40wt%Rh(素線)は線径がいずれも0.5mmである。また、ガラス状炭素被覆黒鉛(第2保護管)は内外が隔離されておらず、内部雰囲気は炉内雰囲気と同じであった。加えて、Ir(第1保護管)内部はArを充填し、外部と隔離した。上記の条件において温度測定を開始し、100時間経過したところで温度測定を終了した。その間、熱起電力の異常は確認されなかった。また、測定後の外観観察においても、Ir(第1保護管)先端部から20mmの範囲で若干の変色(薄茶褐色)及び表面の荒れが見られたものの、その他の異常は確認されなかった。
【0054】
(実施例5)
本実施例では、第1実施形態に係る温度計を用いた。当該温度計を構成するBN(第2保護管)/Ir(第1保護管)/HfO(絶縁管)/Ir及びIr−40wt%Rh(素線)の熱電対を、黒鉛を炉材とする炉内で、Siを主成分とする融液に対して20mm挿入し、Ar雰囲気において1900℃でこの融液の温度測定を実施した。なお、BN(第2保護管)は外径が10mm、肉厚が1mm、Ir(第1保護管)は外径4.8mm、肉厚が0.5mm、HfO(絶縁管)は外径3.2mm、内径0.9mmの2穴管、Ir及びIr−40wt%Rh(素線)は線径がいずれも0.5mmである。また、BN(第2保護管)は内外が隔離されておらず、内部雰囲気は炉内雰囲気と同じであった。加えて、Ir(第1保護管)内部はArを充填し、外部と隔離した。上記の条件において温度測定を開始し、100時間経過したところで温度測定を終了した。その間、熱起電力の異常は確認されなかった。また、測定後の外観観察においても、特に異常は確認されなかった。
【0055】
(実施例6)
本実施例では、第1実施形態に係る温度計を用いた。当該温度計を構成するAl2O3(第2保護管)/Ir(第1保護管)/HfO2(絶縁管)/Ir及びIr−40wt%Rh(素線)の熱電対を、黒鉛を炉材とする炉内で、Siを主成分とする融液に対して20mm挿入し、Ar雰囲気において1800℃でこの融液の温度測定を実施した。なお、Al2O3(第2保護管)は外径が10mm、肉厚が2mm、Ir(第1保護管)は外径4.8mm、肉厚が0.5mm、HfO2(絶縁管)は外径3.2mm、内径0.9mmの2穴管、Ir及びIr−40wt%Rh(素線)は線径がいずれも0.5mmである。また、Al2O3(第2保護管)は内外が隔離されておらず、内部雰囲気は炉内雰囲気と同じであった。加えて、Ir(第1保護管)内部はArを充填し、外部と隔離した。上記の条件において温度測定を開始し、100時間経過したところで温度測定を終了した。その間、熱起電力の異常は確認されなかった。また、測定後の外観観察においても、Ir(第1保護管)先端部から20mmの範囲で若干の変色(薄茶褐色)及び表面の荒れが見られたものの、その他の異常は確認されなかった。
【0056】
(実施例7)
本実施例では、第2実施形態に係る温度計を用いた。当該温度計を構成する黒鉛(第2保護管)/ガラス状炭素(第3保護管)/Ir(第1保護管)/HfO(絶縁管)/Ir及びIr−40wt%Rh(素線)の熱電対を、黒鉛を炉材とする炉内で、Siを主成分とする融液に対して20mm挿入し、Ar雰囲気において1900℃でこの融液の温度測定を実施した。なお、黒鉛(第2保護管)は外径が30mm、肉厚が10mm、ガラス状炭素(第3保護管)は外径が8mm、肉厚が1mm、Ir(第1保護管)は外径4.8mm、肉厚が0.5mm、HfO(絶縁管)は外径3.2mm、内径0.9mmの2穴管、Ir及びIr−40wt%Rh(素線)は線径がいずれも0.5mmである。また、黒鉛(第2保護管)及びガラス状炭素(第3保護管)は内外が隔離されておらず、内部雰囲気は炉内雰囲気と同じであった。加えて、Ir(第1保護管)内部はArを充填し、外部と隔離した。上記の条件において温度測定を開始し、100時間経過したところで温度測定を終了した。その間、熱起電力の異常は確認されなかった。また、測定後の外観観察においても、特に異常は確認されなかった。
【0057】
(実施例8)
本実施例では、第2実施形態に係る温度計を用いた。当該温度計を構成する黒鉛(第2保護管)/熱分解炭素被覆黒鉛(第3保護管)/Ir(第1保護管)/HfO(絶縁管)/Ir及びIr−40wt%Rh(素線)の熱電対を、黒鉛を炉材とする炉内で、Siを主成分とする融液に対して20mm挿入し、Ar雰囲気において1900℃でこの融液の温度測定を実施した。なお、黒鉛(第2保護管)は外径が30mm、肉厚が10mm、熱分解炭素被覆黒鉛(第3保護管)は外径が8mm、肉厚が1mm、Ir(第1保護管)は外径4.8mm、肉厚が0.5mm、HfO(絶縁管)は外径3.2mm、内径0.9mmの2穴管、Ir及びIr−40wt%Rh(素線)は線径がいずれも0.5mmである。また、黒鉛(第2保護管)及び熱分解炭素被覆黒鉛(第3保護管)は内外が隔離されておらず、内部雰囲気は炉内雰囲気と同じであった。加えて、Ir(第1保護管)内部はArを充填し、外部と隔離した。上記の条件において温度測定を開始し、100時間経過したところで温度測定を終了した。その間、熱起電力の異常は確認されなかった。また、測定後の外観観察においても、Ir(第1保護管)先端部から20mmの範囲で若干の変色(薄茶褐色)が見られたものの、その他の異常は確認されなかった。
【0058】
(実施例9)
本実施例では、第2実施形態に係る温度計を用いた。当該温度計を構成する黒鉛(第2保護管)/ガラス状炭素被覆黒鉛(第3保護管)/Ir(第1保護管)/HfO2(絶縁管)/Ir及びIr−40wt%Rh(素線)の熱電対を、黒鉛を炉材とする炉内で、Siを主成分とする融液に対して20mm挿入し、Ar雰囲気において1900℃でこの融液の温度測定を実施した。なお、黒鉛(第2保護管)は外径が30mm、肉厚が10mm、ガラス状炭素被覆黒鉛(第3保護管)は外径が8mm、肉厚が1mm、Ir(第1保護管)は外径4.8mm、肉厚が0.5mm、HfO2(絶縁管)は外径3.2mm、内径0.9mmの2穴管、Ir及びIr−40wt%Rh(素線)は線径がいずれも0.5mmである。また、黒鉛(第2保護管)及びガラス状炭素被覆黒鉛(第3保護管)は内外が隔離されておらず、内部雰囲気は炉内雰囲気と同じであった。加えて、Ir(第1保護管)内部はArを充填し、外部と隔離した。上記の条件において温度測定を開始し、100時間経過したところで温度測定を終了した。その間、熱起電力の異常は確認されなかった。また、測定後の外観観察においても、Ir(第1保護管)先端部から20mmの範囲で若干の変色(薄茶褐色)が見られたものの、その他の異常は確認されなかった。
【0059】
(実施例10)
本実施例では、第2実施形態に係る温度計を用いた。当該温度計を構成する黒鉛(第2保護管)/BN(第3保護管)/Ir(第1保護管)/HfO(絶縁管)/Ir及びIr−40wt%Rh(素線)の熱電対を、黒鉛を炉材とする炉内で、Siを主成分とする融液に対して20mm挿入し、Ar雰囲気において1900℃でこの融液の温度測定を実施した。なお、黒鉛(第2保護管)は外径が30mm、肉厚が10mm、BN(第3保護管)は外径が8mm、肉厚が0.8mm、Ir(第1保護管)は外径4.8mm、肉厚が0.5mm、HfO(絶縁管)は外径3.2mm、内径0.9mmの2穴管、Ir及びIr−40wt%Rh(素線)は線径がいずれも0.5mmである。また、黒鉛(第2保護管)及び熱分解炭素被覆黒鉛(第3保護管)は内外が隔離されておらず、内部雰囲気は炉内雰囲気と同じであった。加えて、Ir(第1保護管)内部はArを充填し、外部と隔離した。上記の条件において温度測定を開始し、100時間経過したところで温度測定を終了した。その間、熱起電力の異常は確認されなかった。また、測定後の外観観察においても、特に異常は確認されなかった。
【0060】
(実施例11)
本実施例では、第1実施形態に係る温度計を用いた。当該温度計を構成するガラス状炭素(第2保護管)/Mo(第1保護管)/HfO(絶縁管)/Ir及びIr−40wt%Rh(素線)の熱電対を、黒鉛を炉材とする炉内で、Siを主成分とする融液に対して20mm挿入し、Ar雰囲気において1900℃でこの融液の温度測定を実施した。なお、ガラス状炭素(第2保護管)は外径が10mm、肉厚が1.75mm、Mo(第1保護管)は外径4.8mm、肉厚が0.5mm、HfO(絶縁管)は外径3.2mm、内径0.9mmの2穴管、Ir及びIr−40wt%Rh(素線)は線径がいずれも0.5mmである。また、ガラス状炭素(第2保護管)は内外が隔離されておらず、内部雰囲気は炉内雰囲気と同じであった。加えて、Mo(第1保護管)内部はArを充填し、外部と隔離した。上記の条件において温度測定を開始し、100時間経過したところで温度測定を終了した。その間、熱起電力の異常は確認されなかった。また、測定後の外観観察においては、Mo(第1保護管)先端部から20mmの範囲で、ガラス状炭素(第2保護管)に起因する黒色異物の付着が確認されたが、Mo(第1保護管)のリークは確認されなかった。
【0061】
(実施例12)
本実施例では、第1実施形態に係る温度計を用いた。当該温度計を構成するBN(第2保護管)/Mo(第1保護管)/HfO(絶縁管)/Ir及びIr−40wt%Rh(素線)の熱電対を、黒鉛を炉材とする炉内で、Siを主成分とする融液に対して20mm挿入し、Ar雰囲気において1900℃でこの融液の温度測定を実施した。なお、BN(第2保護管)は外径が10mm、肉厚が1mm、Ir(第1保護管)は外径4.8mm、肉厚が0.5mm、HfO(絶縁管)は外径3.2mm、内径0.9mmの2穴管、Ir及びIr−40wt%Rh(素線)は線径がいずれも0.5mmである。また、BN(第2保護管)は内外が隔離されておらず、内部雰囲気は炉内雰囲気と同じであった。加えて、Mo(第1保護管)内部はArを充填し、外部と隔離した。上記の条件において温度測定を開始し、100時間経過したところで温度測定を終了した。その間、熱起電力の異常は確認されなかった。また、測定後の外観観察においては、先端部から20mmの範囲で若干の表面の荒れが見られたものの、その他の異常は確認されなかった。
【0062】
(実施例13)
本実施例では、第1実施形態に係る温度計を用いた。当該温度計を構成するガラス状炭素(第2保護管)/Ta(第1保護管)/HfO(絶縁管)/Ir及びIr−40wt%Rh(素線)の熱電対を、黒鉛を炉材とする炉内で、Siを主成分とする融液に対して20mm挿入し、Ar雰囲気において1900℃でこの融液の温度測定を実施した。なお、ガラス状炭素(第2保護管)は外径が10mm、肉厚が1.75mm、Ta(第1保護管)は外径4.8mm、肉厚が0.5mm、HfO(絶縁管)は外径3.2mm、内径0.9mmの2穴管、Ir及びIr−40wt%Rh(素線)は線径がいずれも0.5mmである。また、ガラス状炭素(第2保護管)は内外が隔離されておらず、内部雰囲気は炉内雰囲気と同じであった。加えて、Ta(第1保護管)内部はArを充填し、外部と隔離した。上記の条件において温度測定を開始し、100時間経過したところで温度測定を終了した。その間、熱起電力の異常は確認されなかった。また、測定後の外観観察においても、特に異常は確認されなかった。
【0063】
(実施例14)
本実施例では、第1実施形態に係る温度計を用いた。当該温度計を構成するBN(第2保護管)/Ta(第1保護管)/HfO(絶縁管)/Ir及びIr−40wt%Rh(素線)の熱電対を、黒鉛を炉材とする炉内で、Siを主成分とする融液に対して20mm挿入し、Ar雰囲気において1900℃でこの融液の温度測定を実施した。なお、BN(第2保護管)は外径が10mm、肉厚が1mm、Ir(第1保護管)は外径4.8mm、肉厚が0.5mm、HfO(絶縁管)は外径3.2mm、内径0.9mmの2穴管、Ir及びIr−40wt%Rh(素線)は線径がいずれも0.5mmである。また、BN(第2保護管)は内外が隔離されておらず、内部雰囲気は炉内雰囲気と同じであった。加えて、Ta(第1保護管)内部はArを充填し、外部と隔離した。上記の条件において温度測定を開始し、100時間経過したところで温度測定を終了した。その間、熱起電力の異常は確認されなかった。また、測定後の外観観察においても、特に異常は確認されなかった。
【0064】
(比較例1)
本実施例では、第1実施形態に係る温度計から第2保護管を外した温度計を用いた。当該温度計を構成するIr(第1保護管)/HfO(絶縁管)/Ir及びIr−40wt%Rh(素線)の熱電対を、黒鉛を炉材とする炉内で、Siを主成分とする融液に対して20mm挿入し、Ar雰囲気において1900℃でこの融液の温度測定を実施した。なお、Ir(第1保護管)は外径4.8mm、肉厚が0.5mm、HfO(絶縁管)は外径3.2mm、内径0.9mmの2穴管、Ir及びIr−40wt%Rh(素線)は線径がいずれも0.5mmである。また、Ir(第1保護管)内部はArを充填した。上記の条件において、温度測定を開始し、7.6時間経過したところで、熱電対において熱起電力異常が生じたため、測定を中断した。その後、熱電対を取り外し、部材の状態を確認したところ、Ir(第1保護管)の先端から20mm程度において、表面の荒れを確認した。
【0065】
(比較例2)
本実施例では、第1実施形態に係る温度計から第2保護管を外した温度計を用いた。当該温度計を構成するIr(第1保護管)/HfO2(絶縁管)/Ir及びIr−40wt%Rh(素線)の熱電対を、黒鉛を炉材とする炉内で、Siを主成分とする融液に対して20mm挿入し、Ar雰囲気において1800℃でこの融液の温度測定を実施した。なお、Ir(第1保護管)は外径4.8mm、肉厚が0.5mm、HfO2(絶縁管)は外径3.2mm、内径0.9mmの2穴管、Ir及びIr−40wt%Rh(素線)は線径がいずれも0.5mmである。また、Ir(第1保護管)内部はArを充填した。上記の条件において、温度測定を開始し、8.1時間経過したところで、熱電対において熱起電力異常が生じたため、測定を中断した。その後、熱電対を取り外し、部材の状態を確認したところ、Ir(第1保護管)の先端から20mm程度において、表面の荒れを確認した。
【符号の説明】
【0066】
10a,10b…炭素雰囲気用温度計、12…絶縁管、13…挿通孔部、14…熱電対測温接点、15a…絶縁管開放先端部、15b…絶縁管閉鎖先端部、16,18…熱電対素線、20…第1保護管、22…第2保護管、24…第3保護管、31,33,35…封止材、40…封止材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6