特許第6452615号(P6452615)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6452615
(24)【登録日】2018年12月21日
(45)【発行日】2019年1月16日
(54)【発明の名称】ブラスト加工方法及びブラスト加工装置
(51)【国際特許分類】
   B24C 11/00 20060101AFI20190107BHJP
   B24C 5/02 20060101ALI20190107BHJP
【FI】
   B24C11/00 F
   B24C5/02 A
【請求項の数】2
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2015-543757(P2015-543757)
(86)(22)【出願日】2014年9月17日
(86)【国際出願番号】JP2014074515
(87)【国際公開番号】WO2015060043
(87)【国際公開日】20150430
【審査請求日】2017年9月11日
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2014/058044
(32)【優先日】2014年3月24日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-218715(P2013-218715)
(32)【優先日】2013年10月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000154129
【氏名又は名称】株式会社不二製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002398
【氏名又は名称】特許業務法人小倉特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100081695
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 正明
(74)【代理人】
【識別番号】100103414
【弁理士】
【氏名又は名称】戸村 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】間瀬 恵二
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 克幸
【審査官】 小川 真
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−146852(JP,A)
【文献】 特開2010−082798(JP,A)
【文献】 特開2002−103230(JP,A)
【文献】 米国特許第08500520(US,B1)
【文献】 特開2010−046770(JP,A)
【文献】 米国特許第05509849(US,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2006−0039847(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24C 11/00
B24C 5/02
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮気体供給源から供給される圧縮気体流を研磨材との混合流体としてブラストノズルより噴射するブラスト加工装置において,
前記ブラストノズルが,圧縮気体供給源に連通するジェットの噴射方向にノズルチップを備え,前記ジェットとノズルチップ間に研磨材供給源に連通する研磨材導入室を備え,前記ジェットからの圧縮気体流の噴射により前記研磨材導入室内に負圧を生じさせて前記研磨材供給源の研磨材を吸引して混合流体として噴射する,サクション式のブラストノズルであり,
ブラストノズルに,一端を液体供給源に連通可能と成すと共に,他端を前記ブラストノズル内の圧縮気体の流路内,又は前記ブラストノズルの噴射口において開口し,前記液体供給源より導入された液体を,前記ブラストノズル内を流れる圧縮気体流,又は前記ブラストノズルより噴射された圧縮気体流と衝突させて微粒化する液体導入路を設け,
前記液体導入路と前記液体供給源間に,流量制御手段を備えると共に,
前記液体導入路を,前記ジェット内に設けた前記圧縮気体流路内に同心状に挿入した管路によって形成し,該液体導入路の前記他端を,前記ジェットの噴射口において開口したことを特徴とするブラスト加工装置。
【請求項2】
前記液体供給源の液体を,前記液体導入路に対し定量供給する液体定量供給手段を設けたことを特徴とする請求項記載のブラスト加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,圧縮気体と共に研磨材を噴射し,被加工物の切削,表面研磨,バリ取り,塗膜落とし等を行うブラスト加工方法,及び,該ブラスト加工方法に使用するブラスト加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮気体と共に噴射された研磨材が被加工物への衝突時に発揮する切削力を利用して被加工物の加工を行うブラスト加工は,切削加工,表面研磨,表面の梨地化,バリ取り,塗膜の除去や錆等の汚れ落とし等,各種の用途で広く使用されている。
【0003】
このようなブラスト加工において,圧縮気体と共に研磨材を被加工物に噴射すると,被加工物との衝突時の摩擦,あるいは,作業空間であるキャビネット内壁との衝突による摩擦により静電気が発生し,噴射された研磨材や,被加工物が切削されて生じた切削粉等が,被加工物やキャビネットの内壁,その他,研磨材の循環系を構成するダクト,サイクロン,研磨材タンク等の内壁に付着してしまい,その結果,研磨材の回収や供給を円滑に行うことができなくなる。
【0004】
特にブラスト加工による微細加工への要求が高まるにつれて,使用する研磨材の微細化が進んだ結果,研磨材は静電気によってより一層,被加工物やキャビネット内壁等に付着し易くなっていると共に,一旦付着した研磨材は,エアブロー等によっては完全に除去することが困難で,ブラスト加工後に被加工物に付着した研磨材を除去するための洗浄工程を設ける必要が生じる等,生産性を低下させる一因ともなっている。
【0005】
このような静電気による研磨材の付着を防止するためには,ブラスト加工装置に電圧印加式除電器(「イオン発生器」:ionizer)を装備することも考えられる。
【0006】
しかし,このような高価な装置を装備すれば,ブラスト加工装置の価格を押し上げることとなり市場における価格競争力を失うことになるだけでなく,イオンを発生させるためにイオン発生器に設けられている電極針は汚れ易く,頻繁なメンテナンスが必要となると共に,研磨材が被処理対象等に付着した状態で除電(中和)するために研磨材が剥がれた所には静電気が残る。
【0007】
更に,イオンの発生のためコロナ放電を行うため,粉塵爆発等における発火源と成り得ることから,イオン発生器は構造的にブラスト加工装置に使用するに適していない。
【0008】
そのため,このような静電気による問題を解消するために,作業空間や研磨材の循環経路内に水分を与えることで静電気を除去することも提案されている。
【0009】
このような方法の一例として,加湿手段によって水分が与えられた圧縮気体を研磨材噴射用のブラストノズルに導入することで研磨材の循環系内における湿度を調整して静電気の発生を防止することが提案されている(特許文献1[0011]欄,図2参照)。
【0010】
また,このようにして研磨材噴射用のブラストノズルに導入する圧縮気体に対する水分の供給を,超音波ヒータや加熱を利用して水蒸気の形態で行うことも提案されている(特許文献2[0026]欄)。
【0011】
なお,粉塵の発生防止を目的とした湿式のブラスト加工に使用されるブラストノズルとして,内部に形成された室内において,圧縮気体と研磨材(メディア)及び水を重量比において略等量で混合して,気,液,固体(研磨材)の三相流を噴射するブラストノズルも提案されている(特許文献3,[0006],図1図2,表1[3]参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】日本国特許第3846842号公報
【特許文献2】日本国特開2011−237378号公報
【特許文献3】日本国特開2006−297568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
以上で説明した従来技術のうち,特許文献3に記載のブラストノズルを使用したブラスト加工方法は,160〜200cc/minという大量の水を噴射するもので(特許文献3,表1[2][3]参照),一般に「ウェットブラスト」あるいは「液体ホーニング」と呼ばれる,湿式のブラスト加工方法の一種である。
【0014】
このような湿式のブラスト加工方法で被加工物の加工を行う場合には,被加工物の表面は噴射された水によって濡れることとなるために,静電気の発生を低減することができる。
【0015】
しかし,このような湿式のブラスト加工方法で被加工物の加工を行う場合,被加工物の表面は確実に濡れることとなるために,錆びやすい材質の被加工物等,水との接触を嫌う被加工物に対し適用できず,また,加工後に被加工物の洗浄や乾燥工程が必要となる場合があり,これらの作業が生産性を低下させる一因となる。
【0016】
また,このように大量の水と共に研磨材を噴射する湿式のブラスト加工方法では,研磨材と共に噴射される水の存在によって被加工物の表面に研磨材が衝突する際の衝突エネルギーが吸収されてしまうことから,乾式のブラスト加工に比較して湿式のブラスト加工は加工量(切削速度)が低下するものとなっており,使用する研磨材の材質や粒径,噴射圧力等の条件が同一である場合,乾式によるブラスト加工に比較して,湿式のブラスト加工では加工量(切削量)が1/7〜1/14程度に低下する。
【0017】
一例として,図23及び図24は,乾式のブラスト加工と湿式のブラスト加工におけるカバレージの相違を測定したもので,乾式,湿式共に研磨材としてアルミナ系研磨材(不二製作所製「フジランダムWA」♯1000)を使用し,0.3MPaの噴射圧力で150mm角のガラス板に対し加工を行ったものである。
【0018】
図23はブラストノズルの先端と被加工物間の距離(ノズル距離)の変化に対するカバレージ100%と成る迄の処理時間の変化,図24は,研磨材の粒径の変化に対するカバレージ100%となる迄の処理時間の変化をそれぞれ表示したものであり,いずれの条件においても乾式のブラスト加工に比較して湿式のブラスト加工では,カバレージ100%を得るための加工時間が長くなっていることが判る。
【0019】
ここで,「カバレージ」とは,加工面積に対する総圧痕面積の比を%で表示したもので,カバレージの大小によって,加工量の大小を予測できることから,図23及び図24からも,湿式のブラストでは乾式ブラストに比較して加工量(切削速度)で劣ることが判る。
【0020】
以上の通りである湿式ブラスト加工に対し,前述した特許文献1に記載のブラスト加工方法では,研磨材を噴射する圧縮気体に水分を添加することで,作業空間であるキャビネット内の湿度を上昇させ,これにより静電気の発生,及び静電気による被加工物表面やキャビネット内面に対する研磨材の付着を防止している。
【0021】
しかし,特許文献1に記載のブラスト加工装置において,水の添加は圧縮空気供給源とブラストノズル間に設けられた圧縮空気の供給配管内を流れる圧縮空気に対し行うものとなっており,この圧縮空気供給配管を流れる圧縮空気は,ブラストノズル内の細径の流路内を流れる圧縮空気に比較して流速が遅いため,圧縮空気導入管内に液体の状態で水を導入しても,この水は,圧縮空気流との衝突によって噴霧等されることなく液体の状態でブラストノズル内に導入されることとなり,研磨材を凝集させる等してブラストノズルの目詰まりを発生させてしまい,ブラスト加工装置が正常に動作しなくなる。
【0022】
従って,特許文献1には水の添加方法に関する詳しい説明の記載はないが,圧縮空気導入管内を流れる圧縮空気に対し水を添加する場合には,このような目詰まりによる動作不良が生じないよう,特許文献2に記載されているように,水を超音波や加熱等の方法で水蒸気の状態として圧縮気体に添加することが必要で,このように水を水蒸気にするための機能を備えた水分付与機構を別途設ける必要があり,装置構成が複雑となると共に,高価となる。
【0023】
なお,このように特許文献1,2に記載の方法では,ブラストノズルに導入される前の圧縮気体に対し水分を添加するものの,水分の添加を水蒸気(気体)の状態で行うことから,ブラストノズルより噴射される流体は「液体」を含まず,従って,特許文献1,2に記載の発明は水の添加によっても「乾式」のブラスト加工であることが維持される。
【0024】
そのため,特許文献1,2に記載の方法では,被加工物の表面を濡らさずに加工を行うことができ,水との接触を嫌う被加工物に対しても適用可能であると共に,湿式のブラスト加工に比較して加工量(切削速度)が大きいというメリットがある。
【0025】
しかし,特許文献1,2に記載のブラスト加工方法において,供給する水の量が少なく,加工室内を十分に加湿することができなければ静電気の発生を十分に防止することができなくなる一方,飽和水蒸気量を超える水を供給すれば,作業空間内で結露して被加工物の表面やキャビネットの内壁を濡らすこととなり,静電気の発生は防止できるものの,乾式のブラスト加工としてのメリットが失われる。
【0026】
そのため,特許文献1に記載のブラスト加工方法では,加工室内の湿度を検知し,必要な水分量を算出して水分の供給を行うものとしており,制御が極めて複雑であるために,装置構成も複雑で高価となる。
【0027】
以上で説明したように,特許文献1,2に記載の発明では,乾式のブラスト加工を維持し,従って,湿式のブラスト加工に比較して大加工量(高切削速度)を維持しつつ,静電気の発生防止という課題を解消することができるものとなっているが,そのためには,特別な装置構成の採用と,複雑な制御が必要となる。
【0028】
一方,特許文献3に記載されているように,湿式のブラスト加工では,比較的簡単な装置構成によって,複雑な制御を伴うことなく静電気の発生を大幅に低減することができるものの,被加工物を濡らしてしまうために,加工後の洗浄や乾燥が必要となり,これらの工程の追加が生産性を低下させるだけでなく,湿式のブラスト加工では,乾式のブラスト加工に比較して加工量(切削速度)の大幅な低下が生じるため,この点でも加工性や生産性が大きく劣るものとなっており,いずれの方法を採用する場合においても一長一短がある。
【0029】
上記の点に鑑み,本発明の発明者は,加工量を犠牲とすることなく,静電気の発生を防止することのできるブラスト加工の実現を目指して鋭意研究を重ねた結果,水の供給をブラストノズルの噴射口直前で,微粒化した状態で行うと共に,添加する水の量を既知の湿式ブラストに比較して大幅に少ない所定の範囲に制限することで,静電気の発生を抑制することができるだけでなく,加工量の大幅な向上が得られることを見出した。
【0030】
しかも,この加工方法で得られる加工量の増加は,湿式のブラスト加工との比較において増加するというだけでなく,驚くべきことに,乾式のブラスト加工との比較においても大幅に向上するものであると共に,更には,加工量の向上だけでなく,特許文献1からは予期し得ない,更に別の種々の効果についても重畳的に得られることが確認された。
【0031】
本発明は,鋭意研究の結果得られた発明者らの上記知見に基づき成されたもので,既存の乾式のブラスト加工装置に対し僅かな構造変更を加えるだけで適用でき,ブラスト加工中の静電気の発生を防止できるだけでなく,従来の湿式ブラストは勿論,乾式ブラストとの比較においても加工量(切削速度)の向上が得られるブラスト加工方法及びブラスト加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0032】
以下に,課題を解決するための手段を,発明を実施するための形態で使用する符号と共に記載する。この符号は,特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態の記載との対応を明らかにするためのものであり,言うまでもなく,本願発明の技術的範囲の解釈に制限的に用いられるものではない。
【0033】
上記目的を達成するための,本発明のブラスト加工装置1は,
圧縮気体供給源(図示せず)から供給される圧縮気体流を研磨材との混合流体としてブラストノズル8より噴射するブラスト加工装置1において,
前記ブラストノズルが,圧縮気体供給源に連通するジェット83の噴射方向にノズルチップ82を備え,前記ジェット83とノズルチップ82間に研磨材供給源に連通する研磨材導入室85を備え,前記ジェットからの圧縮気体流の噴射により前記研磨材導入室内に負圧を生じさせて前記研磨材供給源の研磨材を吸引して混合流体として噴射する,サクション式のブラストノズルであり,
該ブラストノズル8に,一端を液体供給源(図示せず)に連通可能と成すと共に,他端を前記ブラストノズル8内の圧縮気体の流路内,又は前記ブラストノズルの噴射口において開口し,前記液体供給源より導入された液体を,前記ブラストノズル内を流れる圧縮気体流,又は前記ブラストノズルより噴射された圧縮気体流と衝突させて微粒化する液体導入路88を設け,
前記液体導入路88と前記液体供給源間に,流量調整弁7やポンプ等の流量制御手段を備えると共に,
前記液体導入路88を,前記ジェット83内に設けた前記圧縮気体流路86内に同心状に挿入した管路によって形成し,該液体導入路88の前記他端(先端88a)を,前記ジェット83内に設けた圧縮気体流路86内,又は該ジェット83の噴射口前方位置において開口したことを特徴とする(請求項1)
【0034】
なお上記液体としては,水道水,純水,精製水,アルカリイオン水等の所謂「水」の他,純水・硬水にスケール除去を目的としてスケール除去剤を添加したもの,加工済み部分のマーキング等を目的として塗料,蛍光塗料など添加したものを含むものであっても良い。
【0038】
なお,上記構成のブラスト加工装置1には,前記液体供給源の液体を,前記液体導入路88に対し定量供給する,ポンプなどの液体定量供給手段を設けるものとしても良い(請求項)。
【発明の効果】
【0039】
以上で説明した本発明の構成により,本発明のブラスト加工装置によれば,以下の顕著な効果を得ることができた。
【0040】
ブラストノズル8内を流れる圧縮気体,又はブラストノズル8より噴射された圧縮気体に水等の液体を衝突させて微粒化していることと,ブラストノズルに対する液体の導入量を0.06〜150cc/minに制限したことから,微粒化した液体は,ブラストノズル8によって噴射された際の圧力低下,被加工物Wに対し研磨材が衝突した際に生じる発熱によって,ブラストノズル8と被加工物W間の空間,又は被加工物Wの表面において急速に蒸発して水蒸気となることから,これにより加工室21内の湿度を上昇させることができ,静電気の発生を防止することができた。
【0041】
しかも,このような静電気の発生防止にも拘わらず,被加工物Wを濡らさず,又は,被加工物を濡らしたとしても既知の湿式ブラストに比較して濡れの程度が少ないことから,本発明のブラスト加工方法では,給水条件の調整により水との接触を嫌う材質の被加工物等に対しても適用可能であると共に,加工後に洗浄や乾燥等の工程を新たに追加する必要がない。
【0042】
更に,本発明のブラスト加工装置では,前述した静電気の発生防止という効果に加え,既知の乾式ブラスト加工方法で得られる以上の加工量(切削速度)の向上という効果を筆頭に,被加工物の表面に対する研磨材の刺さりの防止,研磨材の消費量の減少,切削速度や塗膜,バリ等の除去効率の向上,被加工物の伸びや反りの発生減少、被加工物の温度上昇を低下させることによる製品の焦げ減少等といった,予想を越えた新たな効果を得ることができた。
【0043】
このような切削速度の上昇等の効果が得られる原因は定かではないが,おそらく,圧縮気体流との衝突によって微粒化された状態で噴霧された液体が,ブラストノズルを出た際の急激な圧力低下により更にマイクロミスト化し,研磨材との衝突によって発熱した被加工物との接触によって被加工物の前面空間,あるいは被加工物の表面において急激に蒸発すること,この蒸発の際に周囲の空気や被加工物の表面から大量の気化熱を奪うこと(噴霧冷却)により得られる効果であると考えられる。
【0044】
すなわち,前述した効果のうち,一例として加工量(切削速度)の向上という点について考えると,湿式のブラスト加工が乾式のブラスト加工に比較して加工量(切削速度)が低くなる原因の一つとして,研磨材と共に噴射された水が,被加工物の表面に水膜を形成し,この水膜が被加工物の表面に衝突しようとする研磨材の衝突エネルギーを吸収してしまうことが考えられる。
【0045】
しかし,本発明では,微粒化して噴射された液体は,前述したようにブラストノズル8を出ると素早く蒸発するために,被加工物を濡らさず,又は,被加工物の表面を濡らしたとしても,既知の湿式ブラストに比較して濡れの程度は少ないことから,乾式のブラスト加工と同様の衝突エネルギーを維持できる結果,液体の噴射によっても大きな加工量を維持できたものと考えられる。
【0046】
一方,乾式のブラスト加工との比較では,乾式ブラスト加工では研磨材の衝突によって被加工物の表面温度が上昇し,この温度上昇が被加工物の表面を軟化させて研磨材の衝突エネルギーを吸収することが,切削速度の低下の一因となっているものと考えられる。
【0047】
これに対し本発明では,前述した噴霧冷却によって被加工物の表面温度の上昇が抑制され,被加工物の表面硬度が維持された状態で加工が行われる結果,乾式ブラスト加工との比較においても加工量(切削速度)の向上が得られたものと考えられる。
【0048】
以上で説明した本発明は,既存の乾式のブラスト加工装置の構成に対し,前述した液体の噴射を可能とするブラストノズル8への交換と,ブラストノズル8に対し液体の供給を行う液体供給源及びブラストノズル8に対する液体の供給量を制御する,流量調整弁7やポンプ等の流量制御手段の追加という比較的簡単な構造変更によって実現することができた。
【0049】
また,ブラストノズル8のジェット83に設けた前記圧縮気体流路86内に同心状に挿入した管路を前記液体導入路88とし,該管路88の他端(先端88a)を,前記ジェット83の噴射口で開口する構成とした構成では,ジェット83からの圧縮気体の噴射によって生じる負圧によって,液体導入路88を介した液体の導入を行うことが可能であり,別途,ポンプなどの液体を供給するための手段を設ける必要が無く,また,ブラストノズル8に対する圧縮気体の導入開始,導入停止に伴って,液体の導入開始,導入停止が連動して行われるために,液体の供給を開始及び停止するための,別途の手段を設ける必要が無く,しかも,ブラストノズル8のジェット83のみの交換によって既存設備の利用が可能である。
【0050】
もっとも,液体導入路88に対し液体供給源の液体を定量供給するポンプ等の定量供給手段を設ける構成を採用しても良く,この場合には,ブラストノズル8に対する液体の導入位置についての設計の自由度が増すと共に,液体をより安定して確実に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】本発明のブラスト加工装置の一構成例を示す説明図。
図2】本発明のブラスト加工装置に設けたブラストノズルの説明図であり,(A)はブラストノズル全体の断面図,(B)はノズルチップの変形例を示す説明図。
図3】ブラストノズル(サクション式)に対する液体導入位置の説明図であり,(A)は一般的なノズルチップを備えたブラストノズルに対する液体導入位置,(B)は二連式のノズルチップを設けた場合の導入位置の説明図。
図4】ブラストノズル(直圧式)に対する液体導入位置の説明図であり,(A)は一般的なノズルチップを備えたブラストノズルに対する液体導入位置,(B)は二連式のノズルチップを設けた場合の導入位置の説明図。
図5】本発明のブラスト加工装置に設けた別のブラストノズルの断面図。
図6】給水量の変化に対する加工量の変化(ボロン板)を示したグラフ。
図7】給水量の変化に対する加工量の変化(超硬板)を示したグラフ。
図8】給水量の変化に対する加工量の変化(ウレタンゴム板)を示したグラフ。
図9】給水量の変化に対する加工量の変化(アルミ板)を示したグラフ。
図10】給水量の変化に対する加工量の変化(ステンレス板)を示したグラフ。
図11】給水量の変化に対する加工量の変化(鉄板)を示したグラフ。
図12】給水量の変化に対する加工量の変化(アクリル板)を示したグラフ。
図13】給水量の変化に対する加工量の変化(エポキシガラス板)を示したグラフ。
図14】給水量の変化に対する加工量の変化(御影石)を示したグラフ。
図15】給水量の変化に対する研磨材の突き刺さり量の変化(ウレタンゴム)を示したグラフ。
図16】給水量の変化に対する研磨材の突き刺さり量の変化(ステンレス)を示したグラフ。
図17】給水量の変化に対する研磨材の突き刺さり量の変化(鉄)を示したグラフ。
図18】給水量の変化に対する研磨材の突き刺さり量の変化(アクリル)を示したグラフ。
図19】給水量の変化に対する研磨材の突き刺さり量の変化(エポキシガラス)を示したグラフ。
図20】本発明のブラスト加工の(実施例)で使用した後の研磨材と,乾式のブラスト加工方法(比較例)で使用した研磨材の粒子構造を撮影した写真。
図21】ブラスト加工で塗膜を剥離した後のポリカーボネイト製品の表面粗さデータであり,(A)は本願により処理したもの(実施例),(B)は乾式ブラストで処理したもの(比較例)。
図22】ブラスト加工でバリ取り処理をした後のポリフェニレンサンファイド製品の表面粗さデータであり,(A)は本願により処理したもの(実施例),(B)は乾式ブラストで処理したもの(比較例)。
図23】ノズル距離の変化に対するカバレージ100%となる迄の時間の変化を示した相関図。
図24】研磨材の粒径変化に対するカバレージ100%となる迄の時間の変化を示した相関図。
【発明を実施するための形態】
【0052】
次に,本発明の実施形態につき添付図面を参照しながら以下説明する。
【0053】
1.ブラスト加工装置
(1)全体構成
本発明のブラスト加工装置1の一構成例を図1に示す。
【0054】
このブラスト加工装置1は,図1に示すように,図示せざる圧縮気体供給源と,研磨材供給源である研磨材タンク3,及び,圧縮気体供給源より導入された圧縮気体と前記研磨材タンク3からの研磨材を合流させて噴射するブラストノズル8を備えており,図示の実施形態では圧縮気体供給源からの圧縮気体,本実施形態にあっては圧縮空気を導入することでブラストノズル8内に生じた負圧によって,研磨材タンク3からの研磨材が吸引され圧縮気体流と合流し,被加工物Wに対し噴射される,所謂「サクション式」のブラスト加工装置として構成されている。
【0055】
図示の実施形態にあっては,このブラストノズル8を収容するキャビネット2内に形成された加工室21と,加工室21の下端に形成されたホッパに研磨材回収管91を介して連通した,サイクロンである前述の研磨材タンク3と,前記研磨材タンク3内を吸引するダストコレクタ5を備え,ダストコレクタ5に設けられた排風機6を作動してサイクロンである研磨材タンク3内を吸引しつつ加工室21内に収容されたブラストノズル8より研磨材を噴射すると,噴射された研磨材が切削粉等と共に研磨材回収管91を介して研磨材タンク3に導入され,研磨材タンク3内における風力選別により,再使用可能な研磨材は研磨材タンク3の底部に回収されると共に,破砕した研磨材や粉塵は,ダストコレクタ5に吸引されて除去されるように構成されており,研磨材を循環使用することができるようになっている。
【0056】
もっとも,ブラスト加工装置1の基本構成は,このようにして研磨材を循環使用する循環型の構成に限定されず,例えば使用後の研磨材を再使用せずに1回限りで使い捨てる,バッチ式の構成とすることもでき,この場合,切削粉等の粉塵と研磨材とを風力選別するために設けている構成を省略して,ダストコレクタ5で加工室21内の使用後の研磨材や粉塵を共に除去・回収するようにしても良い。
【0057】
また,図示の例では,ブラスト加工装置をサクション式として構成するものとして説明したが,例えば加圧タンク内の圧縮気体と研磨材を共にブラストノズルに導入して噴射する,直圧式のブラスト加工装置に対し,本願発明を適用することも可能であり,ブラスト加工装置の基本構成については,既知のブラスト加工装置で採用されている各種の構造を採用可能である。
【0058】
本発明のブラスト加工装置1では,前述したブラストノズル8内に,液体,本実施形態では水を導入すると共に,この水を,ブラストノズル8内を流れる圧縮気体流と衝突させて平均粒径1mm以下,好ましくは300μm以下,より好ましくは100μm以下に微粒化し,この微粒化された液体を,被加工物Wに噴射される直前の圧縮気体に混入させており,これにより,被加工物Wに対し研磨材と共に微粒化した液体を噴霧することができるようになっている。
【0059】
このように,被加工物Wに向けて噴射する圧縮気体に微粒化した液体を混入可能とするために,本発明のブラスト加工装置1は,前述したブラストノズル8に対し液体(水)を供給するための,図示せざる液体供給源を設けると共に,前記液体供給源より供給された水をブラストノズル8の内部に導入する液体導入路88をブラストノズル8に設け,更に,前述の液体供給源と前記ブラストノズル8の液体導入路88間を連通する管路中に,流量調整弁7やポンプから成る流量制御手段を設けている。
【0060】
(2)ブラストノズル
本発明のブラスト加工装置1に設けたブラストノズル8の構成例を図2に示す。
【0061】
図2に示すブラストノズル8は,既存のサクション式のブラストノズルが備える基本構造を備えるもので,ブラストノズル8の本体部分を成すボディ81と,前記ボディ81に取り付けられるノズルチップ82及びジェット83によって構成されている。
【0062】
前述のボディ81は,研磨材の供給源である研磨材タンク3より供給された研磨材を導入する研磨材導入口84と,この研磨材導入口84に連通して形成された略円筒容器状の研磨材導入室85を内部に備えている。
【0063】
このボディ81に取り付けられる前述のノズルチップ82は,円錐状に絞られた円錐内面82aを有し,前述のボディ81の前端側にこのノズルチップ82を取り付けることで,ボディ81内に形成された研磨材導入室85と,前記円錐内面82aを備えたノズルチップ内の流路とが連通するように構成されている。
【0064】
このノズルチップ82は,図2(B)に示すように円形の開口を備えたもの(丸型)のみならず,スリット状の開口を備えたもの(スリット型)であっても良く,また,内部に形成された流路形状も,入口側から一旦狭まった後,出口側に向かって再度広がるベンチュリ型の形状を採用しても良い。
【0065】
そして,ボディ81の後端側には,先端をノズルチップ82の円錐内面82aの中心に向けてジェット83が取り付けられており,図示せざる圧縮気体供給源からの圧縮気体をこのジェット83より噴射すると,このジェット83による圧縮気体の噴射によって生じた負圧によって研磨材導入室85内に研磨材タンク3からの研磨材が吸い込まれると共に,この研磨材がジェット83より噴射された圧縮気体と合流して,ノズルチップ82の先端より噴射できるようになっている点は,既知のサクション式のブラストノズル8と構成を共通とする。
【0066】
本発明のブラスト加工装置1で使用するブラストノズル8にあっては,前述したように液体を微粒化して噴霧することができるようにするために,液体供給源(図示せず)からの液体をブラストノズル8に導入するための液体導入路88を備えており,この液体導入路88の先端88aを,ブラストノズル8内に設けた圧縮気体の流路,例えば,ジェット83内に設けた圧縮気体の流路86,ジェット83の吐出口前方,ノズルチップ82内の流路,更にはブラストノズルの噴射口で開口して,ブラストノズル8内を流れる高速の圧縮気体流,又はブラストノズル8から噴射された高速の圧縮気体流に液体を衝突させることにより,液体を微粒化して噴霧できるようにしている。
【0067】
なお,本発明では,前述の液体導入路88の先端88aから吐出された液体を高速の圧縮気体流に衝突させて微粒化させることについて,液体の微粒化がより好適に行われるように,液体導入路88の先端88aの開口にメッシュ材を設置しても良い。これにより,液体導入路88から供給される液体がこのメッシュ材を通過して一度微粒化された後,さらに,高速の圧縮気体流に衝突することで液体の微粒化がより好適に行われる。
【0068】
本発明に使用される前記メッシュ材は特に限定されず,例えば,金属又は樹脂からなる線材を網目状に編むことにより全体として平板状に形成したものや,プレ−トに微細孔を穿けて形成したものなど種々のものを使用できる。
【0069】
図2に示す実施形態にあっては,この液体導入路88となる管路を,ジェット83に形成された圧縮気体流路86内に同心状に配置し,圧縮気体流路86の内壁と液体導入路88の外壁間に圧縮気体が流れるようにすると共に,この液体導入路88の先端88aを,ジェット83の開口部と同一位置において開口し,液体導入路88の先端88aから出た液体を,その外周側を流れる高速,高圧の圧縮気体流と衝突させて微粒化させている。
【0070】
このように構成することで,本実施形態のブラスト加工装置1にあっては,研磨材導入室85内に生じる負圧によって液体導入路88の先端88aより液体が吸引されて圧縮気体流と合流されることから,液体タンク等の液体供給源(図示せず)からの液体をブラストノズル8内に供給するための,ポンプ等の液体定量供給装置を設けることなしにブラストノズル8内で液体の微粒化を行うことができると共に,ブラストノズル8に対する圧縮気体の導入開始,停止に連動して,液体供給源からの液体の導入も自動に開始,停止することから,液体の供給忘れや,供給停止を忘れることによる液垂れ等が生じない。
【0071】
なお,このように液体を圧縮気体流と衝突させる構成としては,図2に示す構成に限定されず,既知の各種のガスブラスト式の二流体ノズル(アトマイザー)の構成をジェット83の構成に適用するものとしても良く,また,ブラストノズル内に対する液体の導入は,前述したように研磨材導入室内の負圧を利用して行う構成に代えて,例えばポンプ等の液体定量導入手段を液体供給源であるタンク内や,液体供給源とブラストノズル間の配管中に設けることによって行うものとしても良い。
【0072】
ブラストノズル8に対する液体の供給位置は,図2に示した位置とは異なる位置で行っても良く,サクション式のブラストノズルに対する液体の導入位置としては,一例として図5に示すように,ブラストノズル8のジェット83先端部外周に,前述の液体導入路88となる空間を形成すると共に,この空間をジェット83の先方向に向けて開口し,液体導入路88内に液体を導入すると,この導入された液体が,ジェット83より噴射された圧縮気体の外周を包むように噴射されることで,液体を高速,高圧の圧縮気体流と衝突させて微細化するものとしても良い。
【0073】
更には,図3(A)に示すように,研磨材導入室85やブラストノズル8の噴射口の形成位置において液体導入路88の先端88aを開口し,圧縮気体流によって発生する負圧によって液体導入路88内の液体を吸引させてブラストノズル8内を流れる圧縮気体流,あるいはブラストノズル8より噴射された圧縮気体流と衝突させるように構成しても良く,又は,ジェット83内に形成された圧縮気体の流路やノズルチップ82内に形成された圧縮気体の流路内に,液体供給源の液体をポンプによって定量供給するようにしても良く,図2(A),図5を参照して説明した液体の導入位置に代え,又は図2(A),図5を参照して説明した液体の導入位置と共に,図3(A)に示す液体の導入位置のいずれか一又は複数箇所から液体を導入するようにしても良い。
【0074】
なお,ノズルチップ82の構成としては,図3(B)に示すように,2分割されたノズルチップ821,822を長手方向に同軸に連続して配置し,細径の流路が形成されたノズルチップ821から大径の流路が形成されたノズルチップ822に向けて流体を導入すると,2つのノズルチップ821,822の境界部分に形成した通気路823を介して空気を吸引して研磨材流と合流させて噴射する構成を採用することもでき,このような構造のノズルチップ82内に液体を導入する場合,このノズルチップ82に設けた通気路813部分に液体を導入するように構成しても良い。
【0075】
また,直圧式のブラストノズルに対する液体の導入位置としては,図4(A)に示すように,ブラストノズル8の噴射口の形成位置において液体導入路88の先端88aを開口し,圧縮気体の噴射に伴い発生する負圧によって液体導入路88内の液体を吸引させてブラストノズル8より噴射された圧縮気体と衝突させるように構成しても良く,又は,ブラストノズル本体81’内に設けられたジェット83’内の圧縮気体流路,又はブラストノズル8の先端に取り付けられたノズルチップ82’内に形成された圧縮気体流路内で液体導入路88の先端88aを開口し,液体供給源からの液体をポンプによってブラストノズル88内に導入するものとしても良く,このうちのいずれか1箇所,又は複数箇所を介して液体の導入を行うことができる。
【0076】
このような直圧式のブラストノズルの構成においても図4(B)に示すようにノズルチップ82’として長手方向に2分割されたノズルチップ821’,822’を同軸上に連続配置した2連式のノズルチップを使用することができ,この場合においても2つのノズルチップ821’,822’’の境界に設けた通気路823’を介して液体を導入するように構成しても良い。
【0077】
なお,液体供給源から液体導入路88に至る管路には,前記液体導入88に対して導入される液体の流量を制御する流量制御手段を設け,ブラストノズル8に対し導入される液体の量を調整可能としている。
【0078】
本実施形態にあっては,負圧の発生位置において先端88aを開口した液体導入路88と液体供給源間の管路には,この流量制御手段として流量調整弁7を設けている。本実施形態にあってはこの流量調整弁7として開度を8段階に調整可能なものを使用したが,無段階に開度を調整可能なものを使用しても良く,液体の流量を調整可能なものであれば各種の弁を使用することができる。
【0079】
また,負圧の発生位置以外の位置に先端88aを開口した液体導入路88と液体供給源間には,前述の流量制御手段としてポンプを設け,このポンプの運転速度,例えばポンプを駆動するモータの回転速度の制御によって,ブラストノズル8に対する液体の供給量を制御可能としている。
【0080】
なお,液体導入路88の先端88aを負圧の発生位置において開口した場合においても,液体導入路88と液体供給源との間に,図3(A),図4(A)中に変形例として示したようにポンプを設ける構成を採用しても良く,また,ポンプを設けた構成においてもポンプの二次側に流量調整弁を設け,これによりブラストノズル8に導入される液体の流量を調整するものとしても良い。
【0081】
更には,液体供給源として液体タンク等の容器を設けることなく,液体導入路88を上水道の取水口(蛇口)に連通して,上水道を液体供給源とすることもでき,この場合,上水道の給水圧力を利用して液体導入路88に対し液体を導入することで,前述したポンプの設置を省略することもできる。
【0082】
2.作用等
以上のように構成された図1に示すブラスト加工装置1に,図2に示すブラストノズル8を設けた場合を例にとりその動作を説明すると,以下の通りである。
【0083】
研磨材供給源である研磨材タンク3内に研磨材を投入すると共に,液体供給源である図示せざる液体タンク内に水等の液体を充填し,この状態で,ブラストノズル8に対し図示せざる圧縮気体供給源からの圧縮気体の導入を開始する。
【0084】
このようにして,圧縮気体の導入を開始すると,ブラストノズル8のジェット83先端からは高速の圧縮気体が噴射されることにより,ノズルチップ82内には噴射口方向に向かう高速の気流が発生する。
【0085】
そのため,このような圧縮気体の流れに引かれ,ノズルチップ82内に研磨材導入室85内の気体が吸引される結果,研磨材導入室85内が負圧となって,研磨材導入口84を介して研磨材タンク3からの研磨材が研磨材導入室85内に導入されると共に,この負圧は液体導入路88の先端88aより液体導入路88内の液体を吸い出し,吸い出された液体は,ジェット83より吹き出した高速の圧縮気体によって微粒化して圧縮気体中に混入すると共に,研磨材と共に圧縮気体中に混合されて,ブラストノズル8より噴霧される。
【0086】
本発明による処理において,好適な研磨材の噴射量は2g/min〜20kg/minであり,これに対し,ブラストノズル8に対する液体の導入量は,0.06cc〜150cc/minと比較的少量であること,及び,研磨材とともに噴射される液体は,ブラストノズル8内を流れる高速の圧縮気体との衝突によって微粒化され,ブラストノズル8より噴霧されることから,ブラストノズル8から噴射された圧縮気体の圧力が急激に低下することや,研磨材との衝突によって被加工物の表面が発熱していること等とも相俟って,噴霧された液体はブラストノズル8と被加工物W間の空間,あるいは,被加工物Wの表面において蒸発し,該空間及び被加工物Wの表面から大量の気化熱を奪う。
【0087】
その結果,本発明による処理のブラスト加工を行う場合,前記液体の蒸発に伴う湿度の増加によって静電気の発生が防止できるのみならず,液体の噴霧を伴わない,一般的なブラスト加工に比較して,切削速度の向上,塗膜やバリの除去効率の向上,被加工物Wの表面に対する研磨材の突き刺さりの防止,被加工物の反りや伸びの発生防止等の効果が得られるものと考えられる。
【0088】
すなわち,本発明による処理では,水の噴射を行うものの,噴射された水は前述のように素早く蒸発することから,被加工物の表面を濡らさず,又は濡らしたとしても,その程度は,既知の湿式のブラスト加工の場合に比較して僅かであり,研磨材の衝突エネルギーを吸収する水膜が被加工物の表面に形成されることが抑制されている。
【0089】
一方,前述した水膜の形成は抑制されるものの,噴霧された水は蒸発する際に多量の気化熱を奪うことから,被加工物の表面温度の上昇が抑えられ,その結果,被加工物の表面,除去対象となる被加工物表面に形成された塗膜,バリ等の軟化による研磨材の衝突エネルギーの吸収が抑制される結果,このような軟化が生じ得る乾式のブラスト加工に比較した場合においても加工量の向上や,塗膜やバリの除去効率の向上が得られるものと考えられる。
【0090】
また,前述の研磨材の突き刺さりも,同様に,被加工物の表面が温度上昇と共に軟化することで,噴射された研磨材が被加工物の表面に突き刺さり易くなるために生じるものと考えられる。
【0091】
更に,製品の寸法安定性を低下させる伸びや反りも,被加工物の温度上昇による伸び,表裏面における伸びの相違により反りが生じるものと考えられる。
【0092】
従って,本発明の方法でブラスト加工を行い,被加工物の濡れと温度上昇を抑制できたことにより,上記の効果が得られたものと考えられる。
【0093】
なお,本発明による処理では,原理は不明であるが液体を噴霧することなく行った従来のブラスト加工に比較して,回収した研磨材の割れや欠けが少なく,研磨材の消耗率についても低減できることが確認されている。
【0094】
このように,本発明による処理では,加工時に静電気が帯電することにより生じるスパークの発生を有効に防止することができ,製品,特に電子部品等の製品自体の破損,欠損を無くすことができ,また,製品に設けられた電極等の破損についても無くすことができた。
【0095】
また,製品の帯電が防止されるだけでなく,研磨材やキャビネットの内壁,ダクトの内壁等の研磨材の循環系内における静電気による帯電についても防止することができることから,キャビネット2内や研磨材タンク3内に対する研磨材の付着防止,サイクロン型の研磨材タンク3内に付着する研磨材に,旋回流中の研磨材が衝突することで,回収されずに集塵機に流れる研磨材量の低下による回収効率の向上等の効果も得ることもできた。
【0096】
加えて,本発明による処理では,静電気の発生防止という効果のみならず,一般的な乾式ブラスト加工との比較において加工量の向上,塗膜やバリの除去効率の向上、表面粗さの低下,焦げ等に伴う変色の防止,ブラスト加工後に行う塗装やめっきに際しコンタミとなる研磨材の突き刺さりの防止,製品の寸法安定性を低下させる被加工物の反りや伸びの発生防止等の効果が得られるという,従来技術からは予測できない優れた効果を得ることができた。
【実施例】
【0097】
本発明により前述した効果が得られることの確認試験を行った結果を以下に示す。
【0098】
なお,ブラスト加工装置としては,乾式ブラスト加工(比較例)及び本発明のブラスト加工(実施例)共にサクション式のブラスト加工装置を使用して行い(構造の概略については図1参照),液体(水)の供給を行いながらブラストする本願のブラスト加工(実施例)では,ブラストノズルとして図2(A)を参照して説明したようにジェット83の圧縮気体流路86中に液体導入路88を備えたもの,又は,図5を参照して説明したように,ジェット83の先端部外周に液体導入路88となる室を設けたもののいずれかを使用し,一方,乾式のブラスト加工(比較例)については,図2(A)及び図5に記載のブラストノズルに水を供給することなく研磨材を噴射して測定するか,又は,一般的なジェットを備えたブラストノズル〔図2(A)に示す構造のブラストノズルのジェット83から液体導入路88を除去した構造のもの〕を使用してブラスト加工を行い測定した。
【0099】
(1)帯電防止効果の確認
アクリル板(100×100×5mm)に対しブラスト加工を行った際の帯電量を測定した。
【0100】
研磨材として,不二製作所製のナイロンビーズ(NB)♯0303(平均粒径300μm)を使用し,ノズル距離を160mm,噴射圧力0.3MPa,噴射時間を40分間として研磨材の噴射を行った。
【0101】
加工は,図1に示す構造の循環式のブラスト加工装置に,図2(A)を参照して説明したブラストノズルを装着して行い,ブラストノズル8に対する水の導入量を調整する流量調整弁7を全閉の状態から徐々に開いて給水量を増やしていき,アクリル板の帯電量の変化(測定器:3M製709STATIC SENSORを使用),加工室内の温度と湿度の変化を測定すると共に,加工室内の様子を観察した。測定結果を表1に示す。
【0102】
【表1】
【0103】
以上の結果から,流量調整弁7を全閉として無給水で行った乾式ブラストにおける帯電量に対し,0.06cc/minという僅かな給水を行っただけで帯電量が40%以上低下することが確認されており,比較的少量の水の噴霧によっても高い静電気の発生防止効果が得られることが確認された。
【0104】
その後,給水量を増やすにつれて帯電量は更に減少し,15.0cc/minで,無給水時の帯電量に対し90%以上の低下が見られた。
【0105】
また,流量調整弁7を全閉として無給水で行ったブラスト加工では,ブラスト加工後のキャビネット内は,被加工物の表面,キャビネットの内壁,ゴムホースやブラストノズルの表面等の至る所に研磨材が付着したものとなっていたが,本発明装置によるブラスト加工を行った後のキャビネット内には,壁面の段差部等に対する研磨材の堆積は確認できたものの,静電気による研磨材の付着は確認することができなかった。
【0106】
(2)加工量(切削速度)増加の確認
(2-1) 給水量の変化に対する加工量変化の測定
図2(A)に示すブラストノズルを使用し,流量調整弁の開度を調整して,ブラストノズルに対する給水量を変化させると共に,ワークの加工量(切削量)の変化を測定した。
【0107】
測定は,噴射距離を120mm,研磨材をアルミナ研磨材〔不二製作所製「フジランダム A♯60」を使用し,噴射圧力を0.4MPaとして,下記の表2に示す材質のテストピースに対し,同表2に示した条件で加工を行い,加工前後における試験片の重量を測定して,減量を切削量として求めた。
【0108】
【表2】
【0109】
各テストピースに対する測定結果を,表3〜11,及び図6〜14に示す。なお,表3〜11において減量比は,無給水での加工時における減量に対する比を示す。
【0110】
【表3】
【0111】
【表4】
【0112】
【表5】
【0113】
【表6】
【0114】
【表7】
【0115】
【表8】
【0116】
【表9】
【0117】
【表10】
【0118】
【表11】
【0119】
以上の結果,いずれの材質のテストピースに対して加工を行った場合においても,水の供給を行うことなくブラスト処理を行った場合(比較例)に比較して,切削量の増大が得られることが確認できた。
【0120】
この切削量の増大は,水の供給量を増やすに従い増大するが,ある程度まで切削量が増大すると,給水量を増やしても更なる増大は生じずに横這いとなった。
【0121】
このことから,研磨材と共に比較的少量の液体を噴射することで,前述した帯電防止効果のみならず,加工量の増大という,予期しない効果が得られることが確認できた。
【0122】
しかも,このような効果は,被加工物の材質に拘わらず得られる効果であることが確認できた。
【0123】
(2-2) 研磨材の変更に対する加工量増加効果の確認
図5に示したブラストノズルを使用してジルコングリッド(不二製作所製「FZG 60」(粒径0.125〜0.250mm)を噴射してステンレス製のテストピース(SUS304)を加工した結果と,アルミナ製の研磨材(不二製作所製「フジランダムA ♯60」(平均粒径230μm)を噴射してテストピースを加工した結果を,それぞれ表12,13に示す。
【0124】
【表12】
【0125】
【表13】
【0126】
上記の結果から,研磨材としてジルコングリッド(FZG-60)を使用した場合,アルミナ製の研磨材(不二製作所製「フジランダムA ♯60」(粒径250〜212μm))を使用した場合のいずれにおいても,加工量の増大が確認されており,本願で得られる加工量の増加という効果が,使用する研磨材の種類を変更した場合であっても変わらずに得られる効果であることが確認された。
【0127】
加工量の増大は,ジルコングリッド(FZG-60)の使用で1.5倍以上,アルミナ研磨材(不二製作所製「フジランダムA ♯60」)の使用で1.3〜1.4倍であり,大幅な加工量の増大が得られることが確認できた。
【0128】
(3)研磨材突き刺さり状態の確認
前掲の「(2)」「(2-1)給水量の変化に対する加工量変化の測定」で加工したテストピースのうち,ウレタンゴム板,ステンレス板,鉄板,アクリル板,エポキシガラス板の加工箇所中心の成分を,EDX(エネルギー分散型X線分析)装置(Oxford社製 INCA Energy)を使用して測定し,使用したアルミナ研磨材(不二製作所製「フジランダムA ♯60」)の主成分であるアルミニウムの質量濃度をテストピースに対する研磨材の突き刺さり量として評価した。
【0129】
測定結果を,表14〜18及び図15〜19に示す。なお,表14〜18において,Al質量濃度比は,無給水でのAl質量濃度に対する比を示す。
【0130】
【表14】
【0131】
【表15】
【0132】
【表16】
【0133】
【表17】
【0134】
【表18】
【0135】
以上の結果から,液体の供給を行うことで,無給水でブラスト加工を行う場合に比較して,研磨材の刺さり込みが減少することが確認された。
【0136】
なお,既知のウェットブラスト法で加工を行う場合においても,研磨材の刺さり込み量を減少することはできるが,前述したように既知のウェットブラストでは,乾式のブラスト加工に比較して,切削量の減少が生じるものであり,加工性との両立を行い得るものとはなっていなかった。
【0137】
これに対し,本発明装置によるブラスト処理では,前述したように,従来のウェットブラストとの比較においてのみならず,無給水でのブラスト加工との比較においても切削量の向上が得られるものでありながら,同時に研磨材の刺さり込みを防止することができるという,予測し得ない効果が得られるものとなっている。
【0138】
(4)研磨材の消耗量と粒度の測定結果
図2(A)に示したブラストノズルを使用した本発明による処理(実施例),及び,既知のブラストノズル〔図2(A)のブラストノズルから液体導入路88を省略した構造のもの〕を使用した乾式ブラスト加工方法(比較例)により,研磨材としてジルコンビーズ(不二製作所製「FZB-60」(平均粒径200μm)を使用してSUS304製の試験片に対し噴射圧力0.5MPaでブラスト加工を行い,ブラスト加工後の研磨材の消耗量を測定すると共に,研磨材の粒子の状態を観察した。
【0139】
噴射は,連続噴射方式(図1に示す研磨材循環型のブラスト加工装置)にて行い,測定開始当初にブラスト加工装置の研磨材タンク内に投入した研磨材の重量と,回収された研磨材の重量をそれぞれ測定し,減少分の重量を消耗量として評価した。
【0140】
ブラスト加工時間は45分で,本発明における水の導入量は6cc/minである。
【0141】
上記による研磨材消耗量の測定結果を表19に,使用後の研磨材の粒子の状態を図20にそれぞれ示す。
【0142】
【表19】
【0143】
以上の結果から,本発明装置によるブラスト処理では,既知の乾式ブラスト加工方法に比較して,研磨材の消耗量が減少していることが確認された。
【0144】
また,回収された研磨材の粒度(図20参照)の観察結果から,本発明装置によるブラスト加工を行った後の研磨材に比較して,乾式のブラスト加工方法で使用した後の研磨材の方が破砕の進行が速く粒径が小さくなっており,この点でも研磨材の消耗に大きな差があることが確認された。
【0145】
(5)被加工物の表面温度の測定
(5-1) 熱電対による温度測定
噴射距離を100mm,噴射圧力を0.3MPaと0.5MPaとし,研磨材としてジルコビーズ(不二製作所製「FZB-400」:粒径<0.05mm)を使用して,15mm×15mm×0.5mmの銅板に研磨材を噴射して銅板の温度変化を測定した。
【0146】
温度の測定は,銅板の裏面に熱電対型の温度計を取り付けて温度変化を読み取り可能とした状態で,図2(A)のブラストノズルを使用して給水量を変化させながら数秒間に亘り研磨材の噴射を行い,研磨材の噴射中に表示された最も高い温度を測定値として採用した。測定結果を表20に示す。
【0147】
【表20】
【0148】
上記の結果から,本発明によれば,乾式ブラスト加工方法で加工する場合に比較して,被加工物の温度上昇を大幅に低下させることができることが確認された。
【0149】
(5-2) 発熱状態の確認
上記の試験で測定された温度は,あくまでも数秒間という極めて短時間の噴射で,且つ,処理対象とした銅板の裏面における温度を測定したものであり,研磨材の衝突が生じている表面側の温度上昇は,瞬間的に被加工物の表面を軟化させる程のより高温となっていることが予想される。
【0150】
そこで,本発明による処理と,乾式のブラスト加工方法における被加工物の表面温度の相違を感覚的に判り易く捉えるため,PC(ポリカーボネイト)製の樹脂製品の塗膜剥離と,PPS(ポリフェニレンサンファイド)製樹脂製品のバリ取り処理に,本発明のブラスト処理と,既知の乾式ブラスト処理を適用して,加工状態を比較した。
【0151】
なお,PC製の樹脂製品の塗膜剥離は,図2(A)に示すブラストノズルを使用して高純度アルミナ研磨材(不二製作所製「フジランダム WA ♯600」)を加工圧力0.4MPa,ノズル距離70mmで噴射して行い,本発明によれば(実施例)においては5cc/minの給水量で,比較例においては無給水にて加工を行った。
【0152】
また,PPS(ポリフェニレンサンファイド)製樹脂製品のバリ取り処理は,図2(A)に示すブラストノズルを使用して,ナイロンビーズ(不二製作所製「FNB -0303」)を加工圧力0.4MPa,ノズル距離20〜30mmで噴射し,本発明(実施例)においては3cc/minの給水量で,比較例においては無給水にて加工を行った。
【0153】
塗膜剥離後のPC製品の表面粗さを測定した結果を図21に,バリ取り後のPPS製品の表面粗さを測定した結果を図22にそれぞれ示す。
【0154】
いずれの処理結果においても,本発明装置で処理した樹脂製品〔図21(A),図22(A)参照〕は,乾式で行った比較例の樹脂製品〔図21(B),図22(B)〕に比較して表面の粗れが少ないことが判り,この結果から,乾式のブラスト加工では,発熱による軟化によって大きな変形を受けたものと考えられる。
【0155】
また,乾式ブラストによって処理がされた樹脂製品では,表面が焦げによって黒っぽく変色していたのに対し,本発明装置で加工がされた樹脂製品にあっては,このような焦げの発生は確認できず,この点からも,本発明の方法では,被加工物の発熱が好適に防止できていることが確認できた。
【0156】
なお,このような焦げの発生は,樹脂製品に対し処理を行う場合のみならず,アルミ等の金属製品に対する処理を行った場合にも同様に生じるものであったが,本発明装置による処理では,このような金属製品に対する処理においても焦げの発生を防止できるものであった。
【0157】
更に,乾式ブラスト加工では,11〜12秒かかった塗膜の剥離が,本発明装置による処理では6〜7秒に短縮されており,本発明のブラスト加工を行う場合には,塗膜の除去効率の向上が得られることが確認できた。
【0158】
なお,このような効果は,母材が樹脂だけではなく、アルミニウム合金・マグネシウム合金・亜鉛合金・真鍮合金・鉄等などの金属表面の塗装剥がしでも同じ効果が確認された。
【0159】
また,バリ取り処理にあっては,乾式ブラストでは取れなかったバリについてまで,本発明のブラスト加工では除去することができており,バリ取り処理に使用した際にも本発明のブラスト加工が有効であることが確認された。
【0160】
このような相違は,乾式のブラスト加工では被加工物の表面温度が上昇して,塗膜やバリが軟化することで研磨材の衝突時の衝撃を吸収してしまい剥離や除去が行われ難くなるのに対し,本発明による処理では,被加工物の表面が冷却されることで塗膜やバリの軟化が抑制され,塗膜やバリが硬い(従って脆い)状態を維持する結果,研磨材の衝突によって剥離や除去が行われ易いことが原因であると考えられる。
【0161】
(6)反りの発生状態の確認
図2(A)に示したブラストノズルを使用し,研磨材としてジルコンショット(不二製作所製「FZB-425」(0.425〜0.60mm平均粒径513μm))を使用してアルメンストリップ(Aストリップ)に対する加工を行った。
【0162】
加工圧力は0.3MPa,0.5MPaの2種類で行い,加工時間を20秒とし,給水量を変化させてアークハイト値(試験片の湾曲高さ)を測定し,これを「反り」として評価した。測定結果を表21に示す。
【0163】
【表21】
【0164】
以上の結果,本発明装置によるブラスト加工を行う場合には,被加工物に対し生じる反りについても僅かに減少させることができることが確認された。
【符号の説明】
【0165】
1 ブラスト加工装置
2 キャビネット
21 加工室
3 研磨材タンク(サイクロン)
5 ダストコレクタ
6 排風機
7 流量調整弁
8 ブラストノズル
81 ボディ
82 ノズルチップ
82a 円錐内面
83 ジェット
84 研磨材導入口
85 研磨材導入室
86 圧縮気体流路
88 液体導入路
88a 先端(液体導入路の)
91 研磨材回収管
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